(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】単回使用カセット組立体
(51)【国際特許分類】
A61M 5/30 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A61M5/30
(21)【出願番号】P 2021528978
(86)(22)【出願日】2019-11-22
(86)【国際出願番号】 GB2019053303
(87)【国際公開番号】W WO2020104812
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-10-19
(32)【優先日】2018-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518139339
【氏名又は名称】アバクスジペン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】グラント,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ローノワ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】コイン,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】ライアン,オーウェン
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504765(JP,A)
【文献】特表2014-509882(JP,A)
【文献】特表2014-515673(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0148775(US,A1)
【文献】国際公開第2017/139741(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0094147(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非経口送達アクチュエータと共に使用され、前記非経口送達アクチュエータとの動作的接続を可能にするように構成された単回使用カセット組立体であって、当該カセット組立体は、
再使用防止機構を備え、当該再使用防止機構は少なくとも、
前記カセットを前記
非経口送達アクチュエータと共に使用するのを許容する第1の構成及び前記
非経口送達アクチュエータとの再使用を防止し且つ前記カセットが前記
非経口送達アクチュエータの中へ作動を可能にし得る程度まで再挿入されるのを防止する第2の構成を有する1つ又はそれ以上のロックアウトクリップを備えるカセット、を含んでいる、
単回使用カセット組立体。
【請求項2】
前記第1の構成は非伸張状態であり、前記第2の構成は自然付勢伸張状態である、請求項1に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項3】
前記再使用防止機構は、
少なくとも1つのロックアウトクリップを備えている、請求項1に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項4】
前記再使用防止機構は、2つのロックアウトクリップを備えている、請求項3に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項5】
前記再使用防止機構は、4つのロックアウトクリップを備えている、請求項3に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項6】
前記カセット組立体は、前記
非経口送達アクチュエー
タに係合するためのカセット本体と、前記カセット本体内に収納された担持器であって固形製剤調合物を解放可能に保持するように構成されたチャネルを有する担持器と、を更に備えている、請求項
1から5の何れか一項に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項7】
各ロックアウトクリップは、前記カセット本体へクランプされた第1端及び引っ掛け部を備える第2端を有し
ている、請求項
6に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項8】
前記カセット本体は前記第2の構成での前記引っ掛け部に係合するための引っ掛け部保持性エッジを備えている、請求項7に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項9】
前記担持器及び前記カセット本体は前記ロックアウトクリップが座する整列された開口を備えている、請求項
1から8の何れか一項に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項10】
前記カセットが作動されて、前記ロックアウトクリップに、前記カセット本体を引っ掛け前記カセットの前記
非経口送達アクチュエータとの再使用を防止するその第2の構成又は自然付勢伸張状態へと外方に偏向するよう仕向けるまでは、前記ロックアウトクリップは第1の構成又は非伸張状態に留まる、請求項4に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項11】
前記カセットロックアウトクリップはばね鋼シートメタル又は他の形状記憶材料を備えている、請求項
1から10の何れか一項に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項12】
前記カセット組立体は、前記固形製剤から後方に位置付けられたカセットピン
と、前記カセットピンを一時的に固定するための1つ又はそれ以上のピン解放クリップとを更に備え
ており
、前記カセットピン
が前記ピン解放クリップによって一時的に固定され
るとき、前記
非経口送達アクチュエータの作動前に
前記カセットピンの何らの前進運動も前記固形製剤へ伝達されないようにして
いる、請求項
6から請求項
11の何れか一項に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項13】
前記担持器本体は、更に、少なくとも1つ又はそれ以上のピン
解放窓を画定しており
、前記担持器内での前記カセットピンの前進運動
が可能であり、作動中の前進運動の所望時点において、前記ピン解放クリップが前記ピン
解放窓の中へ偏向する
ことができるように構成されている、請求項
12に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項14】
前記担持器は、1つ又はそれ以上の予備解放脚部によって前記カセット本体内に解放可能に固定されており、前記予備解放脚部は前記カセット組立体が前記
非経口送達アクチュエータの中へ挿入されたときに前記
非経口送達アクチュエータ
の機構の特徴部によって解放される、請求項4に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項15】
前記担持器は前記カセット組立体内でレールによって案内されるように適合され
ている、請求項
6に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項16】
前記担持器は担持器顎部及びカセット開放性円錐部を備えている、請求項
6または15に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項17】
前記カセット組立体は固形製剤視認窓を更に備えている、請求項
6に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項18】
前記固形製剤は、破片
の形態又はインプラント
の形態をしている、請求項
1から17の何れか一項に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項19】
前記固形製剤は、ワクチンを含む、請求項1から18の何れか一項に記載の単回使用カセット組立体。
【請求項20】
非経口送達アクチュエータ
と請求項
1から18の何れか一項に記載の前記単回使用カセット組立体とを備えるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形製剤調合物(solid dose formulation)送達の改善に関するものであり、特に機能の強化されたワクチン送達カセットに関する。具体的には、発明は、再使用防止機構を備えた単回使用カセット組立体に関する。
【0002】
より具体的には、発明は再使用可能な固形製剤調合物送達アクチュエータデバイスと共に使用するための単回使用カセット組立体に関する。その様な改善は、ワクチンの様な少なくとも1つの療法化合物又は同療法化合物を備えた調合物の送達について、安全及び作用様式を向上させた送達を可能にする。発明は、更に、少なくとも1つの療法化合物又は同療法化合物を備えた調合物を送達するための改善された針なし方法に関わる。
【背景技術】
【0003】
非経口送達は、経口送達又は肺送達の様な他の標準経路に比較して療法化合物の送達にとってより効率的な経路の1つである。非経口投与は、液状形態の療法化合物の場合に送達システムとして針及びシリンジを使用して行われるのが最も一般的である。しかしながら、針ベースの方法は、患者の薬剤服用順守の問題や廃棄物処理安全性の問題を含め様々な理由で今もなお不都合である。加えて、液体調合物は典型的には水様形態である点で固形製剤形態よりも安定性に劣り、また大多数の療法剤又は予防剤は溶解性に乏しく、結果として最適とは言えない調合物の生成に至る場合が多い。
【0004】
固形製剤調合物は、粉末化された固形製剤調合物を皮膚の外層を穿通することのできる速度まで加速することによって投与されてきた。その様なシステムは、典型的には、直径100ミクロン未満の粉末化固形製剤調合物粒子を採用し、ヒト組織を穿通するために毎秒数百メートルの速度を要件とする。他のシステムには、針を必要とせずに比較的低速で皮膚の中へ押し出されることのできる療法化合物の固形棒又は破片を使用しているものもある。
【0005】
本出願人は、タンパク質及びワクチンを含む固形製剤療法を導入するための手段として使用される独自の針なし非経口送達デバイス技術を成功裏に発展させてきた。そのことは少なくとも国際公開第2003/023773号、同第2004/014468号、同第2006/082439号、同第2006/082439号、及び同第2017/068351号に記載されている。
【0006】
初発の方法は、先駆発射体を用いて皮膚を穿通し、発射体の後ろに、液体、半液体、又は固形の製剤形態をした関心の療法剤を導入することによって又は関心の療法剤を発射体そのものの一部として含ませることによって、化合物又は製剤を送達する工程を含んでいる。針なし注入のための諸デバイスが本出願人によって記載されており、例えば米国特許第8574,188号は、打撃器をガイドに沿って進ませるための力を生成する機構と別体の構成要素を記載しており、別体の構成要素は、出射器ピンと前記発射体/調合物を備えたパッケージとが搭載された開口を有するケーシングを、デバイスをトリガするための手段と共に備え、ハウジングは、使用時に打撃器が出射器ピンに接触し注入物が単一ユニットとしてケーシングの外へ押し出されてゆくように構成要素と動作的に連通する端部を有している。機構は、したがって力を生成する能力があり、デバイスからの注入物の押し出しを開始させる又は支援するためのパワー源を備えている。平坦な頭部と細長い本体を備える大頭型出射器ピン(カセット/ドライブピンとも呼ばれる)が注入物の後ろに次の様に位置付けられ、つまり、使用時に射出器ピンが打撃器に接触されたときに注入物が中央開口又はチャンバに沿って押し出され患者の中へ入るように位置づけられる。使い捨て式の組立体は作動デバイスの内ハウジングの前端部の中へ装填される。
【0007】
作動は、プッシュボタンを用いて又はデバイスを皮膚に押し付けることによってトリガされる。作動されたとき、打撃器又はハンマーは打撃器ガイドに沿って進み、ついには注入物に皮膚を刺し貫かせる力で出射器ピンの頭部に接触する。出射器ピンは調合物を患者の中へ要求された深さへと押し出し続け、要求される深さは注入物の長さ及び注入物が出射器ピンによって押し出される範囲によって決まる。
【0008】
記載の方法では、低速で投与される療法化合物に皮膚を穿通させることが可能である。低速とは100m/s未満を意味する。好適には、速度は10m/s未満である。注入物は高速で発射されるというよりむしろ低速で押し出されるので、投薬量(dosage)が常に皮膚下の正しい(及び同じ)深さへ送達されることを確約することが可能である。これは即ち、システムは異なった皮膚タイプ又は皮膚位置で使用されることができ、それでもなお投薬量は同じ深さへ送達されることになる、ということを意味する。
【0009】
アクチュエータとして知られるこの種のユーザー操作型再使用式デバイスの場合、ユーザーとレシピエント双方の安全を確保するためには、送達前の注入物を収容しているカセットとして知られる構成要素の偶発的再作動又は再使用が回避されることが望ましい。先行技術のデバイスは、カセットの状態(即ち使用済みか未使用か)が目視でしか識別できないという点で限定された機能を有する。使い果たされたカセットが少なくとも部分的にではあるがアクチュエータへ再接続され、アクチュエータ機構がリセットされたときに再作動されるかもしれないという可能性が依然として残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2003/023773号
【文献】国際公開第2004/014468号
【文献】国際公開第2006/082439号
【文献】国際公開第2017/068351号
【文献】米国特許第8574,188号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ゆえに本発明は、その様な動作システムを更に改善して、ワクチン並びに療法剤及び固形投与剤の送達のための信頼性高く安全で患者の薬剤服用順守に配慮したデバイスを提供したいとの思いから起こっている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の第1の態様では、改善されたカセット組立体が、先行技術に記載の型式の送達デバイスつまり「アクチュエータ」と共に使用するために、そしてまた同時に出願人の公開特許出願に記載されている改善されたデバイスと共に使用するために提供されている。
【0013】
発明は、非経口送達アクチュエータと共に使用され、非経口送達アクチュエータとの動作的接続を可能にするように構成された単回使用カセット組立体であって、少なくとも、カセットをアクチュエータと共に使用するのを許容する第1の構成及びアクチュエータとの再使用を防止する第2の構成を有する1つ又はそれ以上のロックアウトクリップ、を含んでいる再使用防止機構、を備えるカセット組立体に関わる。
【0014】
諸実施形態では、第1の構成は非伸張状態であり、第2の構成は自然付勢伸張状態である。好適には、いくつかの実施形態では、再使用防止機構は2つのロックアウトクリップ又は随意的には4つのロックアウトクリップを備えている。
【0015】
カセット組立体は、アクチュエータデバイスに係合するためのカセット本体と、カセット本体内に収納された担持器であって固形製剤調合物を解放可能に保持するように構成されたチャネルを有する担持器と、を更に備えていてもよい。
【0016】
諸実施形態では、各ロックアウトクリップは、カセット本体へクランプされた第1端及び引っ掛け部を備える第2端を有し、随意的にはカセット本体は引っ掛け部に係合するための引っ掛け部保持性エッジを備えている。担持器及びカセット本体はロックアウトクリップが座する整列された開口を備えていてもよい。
【0017】
諸実施形態では、カセットが作動されて、ロックアウトクリップに、カセット本体を引っ掛けカセットがアクチュエータと共に再使用されるのを防止するその第2の構成又は自然付勢伸張状態へと外方に偏向するよう仕向けるまでは、ロックアウトクリップは第1の構成又は非伸張状態に留まる。随意的には、ロックアウトクリップはその第2の構成では、更に、カセットがアクチュエータの中へ作動を引き起こし得る程度まで再挿入されるのを防止する。
【0018】
担持器及びカセット本体がロックアウトクリップの座す整列された開口を備えている場合、ロックアウトクリップはカセットが作動されるまでは非伸張状態に留まり、作動の作用がロックアウトクリップをカセット本体の引っ掛け部保持性エッジへ引っ掛かるその自然付勢伸張状態へと開口を介して外方に偏向させ、当該状態ではロックアウトクリップはカセットがアクチュエータの中へ完全に再挿入されるのを妨げ、したがってカセットの再作動を防止する。
【0019】
諸実施形態では、カセットロックアウトクリップは、クリップの自然形状が常に付勢され伸張位置に向かって撓むように、ばね鋼シートメタル又は他の形状記憶材料を備えているのが好適である。
【0020】
諸実施形態では、発明は更なる有用な機能性を有するように構成される。
【0021】
これに関し、いくつかの実施形態では、カセットは固形製剤から後方に位置付けられたカセットピンを更に備え、カセットピンは、デバイスの作動前は1つ又はそれ以上のピン解放クリップによってその場に一時的に固定されており、それにより担持器に対し前進運動が固形製剤へ伝達されることが防止される。
【0022】
出願人は、先行技術のデバイスは、固形製剤ワクチン又は療法剤又は製剤が、単純にもピンが何らかの前進運動を加えたときに固形製剤の解放を許してしまう可撓性アームによってカセット内に拘束される、という配設を備えていると断定した。残念ながら、この機構は、仮に貯蔵中にピンが前方へ動いたなら固形製剤の過早解放が起こりかねないことから信頼できないと考えられた。このように、カセットが作動されなくてもピンの意図しない運動が固形製剤を解放する可能性があった。
【0023】
よって、確実に固形製剤が過早に解放されないようにするため、出願人は、デバイスの2つの独立した特徴によって確実に保持/拘束機能及び解放機能が制御されるようにする有用な解決策を考案した。発明の中で定義されている様に、固形製剤は2つの担持器顎部の間に好適には圧縮によって拘束される。圧縮力は、貯蔵中、輸送中、及び作動中に、正式な解放の時点まで固形製剤を保持するための摩擦を生成する。また、カセットピンは固形製剤の後ろに挿入され、作動前は1つ又はそれ以上のピン解放クリップによって所定場所に拘束される。
【0024】
カセットが予備作動状態に入ったとき、ピン解放クリップはカセット本体の内側拘束性直径によって拘束されることで外へ偏向することを妨げられる。ピン解放クリップのV字形状とされ得る幾何学形状が担持器の中でのピンの軸方向位置を制御して、固形製剤の寿命中は確実に作動前に、例えばピン固有の些細な前進運動(デバイスの作動によって引き起こされるものではない)による、何らかの前進運動が固形製剤へ伝達されることのないようにする。いくつかの実施形態では、担持器へのピンの組み立て中に、ピン解放クリップは対応するピン溝へラッチを掛ける。
【0025】
諸実施形態では、担持器は予備解放脚部によってカセット本体内に解放可能に固定される。担持器は、作動前は予備解放脚部によってカセット本体内の所定場所に拘束される。これらの予備解放脚部は、担持器とピンと固形製剤の組立体をカセット本体の中の所定場所にて固定された軸方向位置に保つ。
【0026】
いくつかの実施形態では、カセット本体は、更に、作動前に担持器側の予備解放脚部が座する予備解放クリップ窓を画定している。作動シーケンス中、予備解放脚部は、アクチュエータ内に収納された金属製クリップとされ得るクリップと接触させられたときに、カセット本体内の予備解放クリップ窓の中へ偏向される。作動シーケンスのこの時点では、担持器-ピン-製剤組立体は、確実にそれらが一体に動き担持器からの固形製剤の過早解放がないようにするためにピン解放クリップによって一体に拘束されている。
【0027】
いくつかの実施形態では、確実に固形製剤が穿通のために解放される段階より前に回転することのないように、担持器はレールによって案内されるように適合されている。担持器は、典型的には、担持器顎部とカセット開放性円錐部(cassette opening cone)を備えていてもよい。担持器が前方へ加速されることで正式な作動が起こるとき、担持器顎部はカセット開放性円錐部に当たって開き、固形製剤へ加えられている横方向の拘束力を解放する。ただし、本発明によれば、固形製剤が解放されたとき、担持器のピン解放クリップはピン解放窓に達すると外へ偏向する。この作用は、ピン溝ランプ角と担持器減速時のスピンドルによってピンへ加えられる力に因るものである。ピン解放のタイミングは、固形製剤が、解放されたピンによって前方へ押し出されるまさに直前に担持器顎部によって解放されることを確約する。解放時点にて、固形製剤は、前方はカセット本体出口孔によって後方は担持器顎部によって案内される。開いた顎部はピンが最小限の摩擦で前方に進めるようにする。
【0028】
本願は、使用状態が目視で識別できる先行技術のカセットが使用された場合であっても、カセットが誤ってアクチュエータに再接続されカセットピンが再作動される可能性があることを考慮している。「使用済み」状態カセット及び先行技術によって記載されている他のその様な解決策は、再使用を防ぐには常に十分であるとは限らないだろう。一方、ロックアウトクリップを組み入れた本発明は偶発的な再使用を防ぐ働きをする。更にまた、諸実施形態では、注入可能な固形製剤調合物が注入に先立って視認できるようにするためにカセットは固形製剤視認窓又は開口を備えている。注入後は、カセットの内部構成要素がカラーコーディングによって使用カセットの状態が分かるようにしてこの窓を埋める。加えて、いくつかの実施形態では、ロックアウトクリップ又はその部分そのものが視認窓によって画定された空間内に位置づけられるようになっていてもよい。
【0029】
発明は、更に、固形製剤がインプラント又は破片である単回使用カセット組立体にまで及ぶ。好適には固形製剤はワクチンを備えている。
【0030】
発明は、更に、針なし非経口送達アクチュエータとの使用に供される単回使用カセット組立体にまで及ぶ。
【0031】
発明は、同じく、固形製剤送達アクチュエータと本明細書に記載の単回使用カセット組立体とを備えるキットにまで及ぶ。諸実施形態では、アクチュエータは針なしである。
【0032】
発明の様々な態様を、これより添付図面を参照しながら単に一例として説明してゆく。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】発明の或る実施形態による、未作動状態にあるカセット組立体を断面図に示す。
【
図2】予備作動状態の
図1のカセット組立体を、整列した作動スピンドルと共に示す。
【
図3】作動位置へ動かされ、ロックアウトクリップが起動され担持器がカセット本体内で動かされた状態の
図2のカセット組立体を示す。
【
図4b】
図4aの同じ作動されたカセットの等角投影図である。
【
図4c】作動直後のアクチュエータ本体に対して収納されている
図4aのカセットを示す。
【
図5】アクチュエータ本体からの使用済みカセットの過渡的解放位置を示しており、アクチュエータからのカセット組立体の解放を許容するためにロックアウトクリップは折り畳み構成にある。
【
図6】皮膚から解放された後でいつでも除去される態勢にある作動済み状態のカセットを示しており、カセットロックアウトクリップはアクチュエータハウジングを出て再挿入ひいては再作動を妨げている。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明のカセット組立体(1)は、典型的には、出願人のより早期の特許公開(本明細書の中で以上に参照済み)に記載の型式の非経口針なし固形製剤送達デバイスと共に使用され同デバイスによって作動されるものであり、同デバイスをこれ以降はアクチュエータと呼ぶ。
【0035】
カセットは、ワクチンの様な療法化合物を含有する固形製剤調合物を、アクチュエータによって供給されるエネルギーを使用してヒト又は動物の身体の中へ押し出すことによって送達するように適合されている。その様な使用では、固形製剤調合物を収納するカセット組立体は、使い切り式再使用不可カートリッジであるのが好ましい。ここに開示されているカセット組立体が全体としての送達機構へ授与する利点によって患者安全が強化される。
【0036】
図1は、発明の1つの実施形態に提供されているカセット組立体(1)を、固形製剤調合物(117)を収納している非作動状態で示している。
【0037】
その様な針なし送達デバイス(
図4a、
図5、及び
図6に部分的に示す)は、本体(200)を含むハウジング構成要素を備えている。使用中、固形製剤を収容したカセット組立体はアクチュエータ本体の前部分の中へ接続されていて、カセットとアクチュエータは互いと動作的に連通している。アクチュエータはばねの様な力生成手段を収納している。
【0038】
使用中、前部分は接続されたカセット組立体(1)を収納しており、本明細書に記載の発明によるカセット組立体(1)は、固形製剤調合物(117)と、固形製剤調合物(117)をカセット組立体(1)から身体の中へカセットピン(105)の変位を介して押し出すために力生成手段から提供される力を伝達するための手段と、を含んでいる。
【0039】
第1の未作動モードでは、カセット組立体(1)はアクチュエータ(図示せず)の前部分へ接続されていて軸方向の向きにある。
【0040】
組立体のカセット本体(103)はカセット担持器(117)を収納し、カセット担持器(107)はというと、中央に位置付けられたカセットピン(105)及び固形製剤調合物(117)を収納している。これらの構成要素は当初はカセット本体内の所定位置に固定されている。
【0041】
担持器は、カセット本体の予備解放窓(150)内に座する予備解放脚部(151)によってカセット本体内の所定位置に拘束されている。担持器は予備解放脚部によってカセット本体内に解放可能に固定されている。担持器は、作動前は予備解放脚部によってカセット本体内の所定場所に拘束されている。これらの予備解放脚部は、作動及び解放/送達が要求される時点まで、担持器とピンと固形製剤の組立体をカセット本体の中の所定場所にて固定された軸方向位置に保つ。
【0042】
担持器は、担持器(107)の前部に位置する2つの顎部(109)を含んでいる。固形製剤調合物(117)は、その外表面に圧縮が作用していることによって拘束される。具体的には、デバイスの貯蔵中及びデバイスの一般的な移動又は輸送中は、作動及び解放/送達が要求される時点まで固形製剤(117)を担持器(107)内のこの位置に保持するための十分な摩擦を、顎部の横方向圧縮力が生成するのである。
【0043】
2つ又はそれ以上のロックアウトクリップ(111)が、カセット本体(103)の外周囲へクランプされていて、各クリップは引っ掛け要素を備えている。クリップの引っ掛け要素は、その無偏向予備作動位置では、カセット本体(103)の開口部又は窓(113)を通って担持器(107)の内表面へ解放可能に係合されている。ただし、クリップの自然形状は伸張又は偏向位置にあって、そのこと自体が引っ掛け要素の一貫した拘束力を可能にしている。カセットのロックアウトクリップ(111)は、例えばばね鋼シートメタルから作られる。
【0044】
カセットピン(105)は、固形製剤調合物(117)の後ろにその後方向きの面に当接して位置付けられている。ピンは当初は一組のピン解放クリップ(115)によって担持器(107)内の所定場所に拘束されている。ピン解放クリップは、カセット(1)の組み立て中にピンの対応する溝又は複数溝へラッチ掛けされる。
【0045】
予備作動モードではピン解放クリップ(115)は、カセット本体(103)の内径サイズによって拘束され及び/又は締め付けられているので偏向する/外へ広がることはできない。ピン解放クリップは、担持器(103)の中でのカセットピン(105)の軸方向位置を制御するために「V字」形状をしている。確実なピンは、デバイスの意図的な制御された動作以前に、担持器に対し意図しない前進運動が固形製剤へ伝達されないことを確約する。
【0046】
カセットピンとアクチュエータはスピンドル(図示せず)を通じて動作的に連通している。スピンドル先端部(119)は、作動に際し、カセットピンを押し出すように適合されており、押し出されたカセットピンが今度は固形製剤調合物をカセット組立体からヒト又は動物の身体の中へ押し出すのである。
【0047】
動作においては、カセットがアクチュエータの中へ挿入されたら、アクチュエータはユーザーがデバイスのハウジングの周りを握ってデバイスを患者の皮膚に押し付けることによって作動されることができる。この押し付けは、皮膚をピンと張った状態にさせ、カセットにアクチュエータの前部分の中を上向きに滑走させる。この滑走作用を用いてプライミングがなされ、最終的にアクチュエータ内のばねが圧縮させられ、ついには必要な駆動力が達成され、完全な機構が作動する。
【0048】
デバイスの作動が完全に開始されると、スピンドル(119)は担持器(107)とカセットピン(105)と固形製剤(117)を前方へ押し出す。諸実施例では、アクチュエータの前端は、担持器の予備解放脚部(151)をカセット本体側の予備解放窓(150)から解放するための形状(図示せず)を含んでいてもよい。担持器が前方へ加速されてゆくと、固形製剤を保持する担持器顎部(109)はカセット本体(100)の開放性円錐部に当たって固形製剤を解放する。同時に、ピン解放クリップ(115)は、カセット本体側のピン解放窓(113)に至り、窓の中へ押し出されるので、カセットピンが担持部に対して前方へ動けるようになり、こうしてカセットピンが固形製剤を皮膚の中へ押し出すことが可能になる。担持器-ピン-固形製剤の組立体は、機構の回転を防止するためにレールによって案内されることができる。ピン解放のタイミングは、固形製剤がカセットピンによって前方へ押し出される前に担持器顎部から解放されることを確約する。開いた顎部はピンが最小限の摩擦で前方に進めるようにする。要求される加速と要求される速度がデバイスの作動機構から生成されることで、固形製剤は皮膚を穿通する。
【0049】
図3に示されている様に、作動中、担持器はカセット組立体内で前方に動き、ロックアウトクリップの引っ掛け部を担持器の内表面から解放する。これによりクリップは自由に外方偏向し、クリップの自然伸張状態をとることができる。クリップの引っ掛け部はこの時点でカセット本体(103)側の引っ掛け部保持性エッジ(123)に係合される。
【0050】
作動直後、カセットはアクチュエータの本体内に収納されていて、ロックアウトクリップは
図4cに示されている様にその自然引張状態にある。
【0051】
図5は、アクチュエータの1回目の作動直後にアクチュエータからカセットを取り出すために、どのようにロックアウトクリップが容易に最小限の力で一時的に内方偏向してアクチュエータの開口部直径を通り抜けるのかを示している。
【0052】
ただし、
図4a、
図4b、及び
図6に示されている様に、カセットが最前方位置にあるときに、たとえカセットが再度皮膚に押し付けられても、偏向されたロックアウトクリップは、カセット本体がアクチュエータの前部分の中で上方に滑走するのを妨げ、ひいてはアクチュエータ機構がプライミングされ作動されることを防止することで、カセットが再び作動されないようにする。
【符号の説明】
【0053】
1 カセット組立体
100 カセット本体
103 カセット本体
105 カセットピン
107 カセット担持器
109 顎部
111 ロックアウトクリップ
113 開口部又は窓
115 ピン解放クリップ
117 固形製剤調合物
119 スピンドル先端部
123 引っ掛け部保持性エッジ
150 予備解放窓
151 予備解放脚部
200 送達デバイスのハウジング構成要素の本体