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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】抽出飲料を調製する方法および機械
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/00 20060101AFI20240207BHJP
   A47J 31/10 20060101ALI20240207BHJP
   A47J 31/06 20060101ALI20240207BHJP
   A47J 31/44 20060101ALI20240207BHJP
   A47J 31/46 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A47J31/00 302
A47J31/10
A47J31/06 160
A47J31/44 193
A47J31/46 115
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021542216
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-16
(86)【国際出願番号】 EP2020051143
(87)【国際公開番号】W WO2020152052
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】102019101537.5
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517010507
【氏名又は名称】メリッタ シングル ポーションズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Melitta Single Portions GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Marienstrasse 88, D-32425 Minden, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ケアスティン フェルナンデス デ カルヴァーリョ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン パーンケ
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー フェルトマン
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-536497(JP,A)
【文献】特表2014-501164(JP,A)
【文献】特表2017-537718(JP,A)
【文献】特開2001-101521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00
A47J 31/10
A47J 31/06
A47J 31/44
A47J 31/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出飲料を調製する方法であって、以下のステップ、すなわち、
抽出材料(8)が充填された挿入フィルタ(1)をフィルタホルダ(10)内に配置するステップと、
加熱装置により水を加熱し、加熱した水を、前記挿入フィルタ(1)の上側の供給部(20)に送るステップと、
前記挿入フィルタ(1)に対して前記供給部(20)を移動させ、前記抽出材料(8)を熱湯で濡らすステップと、
を有する方法において、
a)挿入フィルタ(1)に対する前記供給部(20)の移動は、設定された抽出濃度に応じてそれぞれ異なる複数のパターンで行われ、
b)供給される前記熱湯の温度の高さは、設定された抽出濃度に応じてそれぞれ異なっており、かつ/または
c)前記供給部(20)を通流する熱湯の体積流量の多さは、設定された抽出濃度に応じてそれぞれ異なっており、
前記供給部(20)を介してまず少量の水を、まだ閉じられている前記挿入フィルタ(1)に供給し、熱湯の供給により、前記挿入フィルタの上面に設けられた閉鎖装置(4)を開放し、次いで前記供給部(20)を介して熱湯を供給して前記抽出材料(8)を濡らすことを特徴とする方法。
【請求項2】
抽出過程時に前記供給部(20)が上を通過する表面は、前記抽出材料(8)の総表面積(9)の少なくとも10%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抽出濃度をストロングに設定した場合には、前記供給部(20)を介して予抽出用の熱湯を前記挿入フィルタ(1)に供給し、引き続く抽出の前に、少なくとも10秒間中断して待機する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
抽出濃度をマイルドに設定した場合には、予抽出と抽出との間に中断は設けず、前記供給部(20)を介して前記抽出材料(8)に連続して熱湯を供給する、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記供給部(20)を前記挿入フィルタ(1)に対して、複数の円、渦巻き、放射状、蛇行状、および/または波状の形態のパターンで移動させる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
抽出過程用に、前記抽出材料(8)の抽出度がそれぞれ異なる3つの異なる抽出濃度を設定することができる、請求項1からまでのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
抽出飲料を調製する機械(14)であって、抽出材料(8)を含む、液体透過性の挿入フィルタ(1)の上側に配置された熱湯用の供給部(20)を備えており、該供給部(20)を介して、前記抽出材料(8)の表面(9)に熱湯を供給可能であり、これにより、前記挿入フィルタ(1)の下側の出口(13)において抽出飲料を捕集することができるようになっており、熱湯供給中に、前記抽出材料(8)を含む前記挿入フィルタ(1)と前記供給部(20)との間で相対的な移動が行われ、制御装置により異なる抽出濃度が設定可能である、機械において、
a)挿入フィルタ(1)と前記供給部(20)との間の相対的な移動は、設定された抽出濃度に応じてそれぞれ異なる複数のパターンで行われ、
b)供給される前記熱湯の温度の高さは、設定された抽出濃度に応じてそれぞれ異なっており、かつ/または
c)前記供給部(20)により圧送される熱湯の体積流量の多さは、設定された抽出濃度に応じてそれぞれ異なっており、
前記供給部(20)を介してまず少量の水を、まだ閉じられている前記挿入フィルタ(1)に供給し、熱湯の供給により、前記挿入フィルタの上面に設けられた閉鎖装置(4)を開放し、次いで前記供給部(20)を介して熱湯を供給して前記抽出材料(8)を濡らすことを特徴とする、機械。
【請求項8】
前記挿入フィルタ(1)は、当該機械の固定的な保持部(10)に配置されており、前記供給部(20)は、駆動装置により可動である、請求項記載の機械。
【請求項9】
前記供給部(20)は、当該機械に固定的に配置されており、前記挿入フィルタ(1)は、駆動装置により可動である、請求項記載の機械。
【請求項10】
前記抽出材料(8)を含む前記挿入フィルタ(1)と前記供給部(20)との間の前記相対的な移動は、前記挿入フィルタ(1)の移動と前記供給部(20)の移動とを組み合わせることにより生じる、請求項記載の機械。
【請求項11】
前記供給部(20)の前に温度センサが設けられており、前記供給部(20)における熱湯供給は、設定された抽出濃度に応じて異なる温度で実施可能である、請求項または記載の機械。
【請求項12】
前記挿入フィルタ(1)は、開放されるべき閉鎖装置(4)を上面に有するポーションパッケージとして形成されている、請求項から11までのいずれか1項記載の機械。
【請求項13】
前記供給部(20)はその下面に、熱湯が通流する単一の開口を有している、請求項から12までのいずれか1項記載の機械。
【請求項14】
当該機械では、抽出飲料において異なる抽出度を生じさせることができる3つの異なる抽出濃度が設定可能である、請求項から13までのいずれか1項記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の、抽出飲料を調製する方法、ならびに請求項8の上位概念に記載の、抽出飲料を調製する機械に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許発明第102015121634号明細書に開示されたコーヒーマシンでは、コーヒーを調製するために、フィルタ容器の上側の流出装置を介して熱湯が供給されている。この場合、セレクトスイッチを介してコーヒー濃度を設定することができるようになっており、切換位置に応じて異なる量の熱湯が、それぞれ異なる流出開口に供給される。流出開口および挿入フィルタの固定的な配置に基づき、コーヒー粉の表面は、例えば手動抽出の場合には可能であるように均一には濡らされない。
【0003】
固定されたフィルタホルダの上に複数の固定的な流出開口を備えたコーヒーマシンは、独国実用新案第202014104028号明細書にも記載されている。
【0004】
よって、独国特許出願公開第102018114588号明細書では、コーヒーマシンにおける熱湯の供給部を、抽出過程中に回転させることが提案される。これにより、コーヒー粉の均一な濡らしを得るために、複数の供給開口用の複数の環状の移動経路が設けられてよい。環状の移動経路に基づき、コーヒー粉の表面の一部のみが濡らされ、抽出濃度の設定は、流出開口の選択によってのみ達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、改良された抽出を達成すると共に、様々な抽出濃度を設定可能な、抽出飲料を調製する方法および機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1記載の特徴を有する方法、ならびに請求項8記載の特徴を有する機械によって解決される。
【0007】
本発明による方法では、抽出濃度を設定することができ、この場合、挿入フィルタペーパーに対する供給部の移動を、設定された抽出濃度に応じて選択的に、複数の異なるパターンで行い、供給される熱湯の温度の高さは、設定された抽出濃度に応じて異なっており、かつ/または供給部を通流する熱湯の体積流量の多さは、設定された抽出濃度に応じて異なっている。これにより、上述した各手段のうちの1つまたは複数に基づき、その他の点では同量の抽出材料および同量の飲料において、最適化された抽出飲料を製造するために、抽出濃度を変化させることができる。
【0008】
この場合、挿入フィルタペーパーに対する供給部の移動は、それぞれ異なる複数のパターンで行われてよい。供給部または挿入フィルタペーパーが選択的に、駆動装置により可動であってよく、任意には、供給部と挿入フィルタペーパーの両方が抽出過程中に移動されてもよい。挿入フィルタペーパーに対する供給部の移動に基づき、熱湯を抽出材料の表面に複数の異なるパターンで供給することができ、これにより、比較的大面積の抽出材料が熱湯で濡らされる。
【0009】
供給部が上を通過する表面積は、供給部の大きさと、抽出過程時の、つまり供給部から熱湯が流出している最中の、供給部と挿入フィルタペーパーとの間の相対的な移動に従って決められる。この場合、供給部の1つまたは複数の開口の大きさに、挿入フィルタに対する供給部の移動距離が掛けられ、これにより移動経路の面積が得られる。ここから、供給部が上を2回通過する面積が差し引かれる。抽出時に供給部が上を通過する表面は、好適には抽出材料の総表面積の少なくとも10%、特に20%~70%である。これにより、抽出材料の表面の幾何学形状に関係無く、抽出材料の特に均一な抽出を達成することができる。なぜなら、抽出材料のほぼ全ての領域を濡らすことができるからである。
【0010】
1つの好適な構成では、供給部を介してまず少量の水が、まだ閉じられている挿入フィルタに供給され、これにより、挿入フィルタの上面に設けられた閉鎖装置が、熱湯の供給により開放される。この開放は、例えば膨張過程により生じてよく、この場合、閉鎖装置は、膨張過程により上方に開く1つまたは複数のフラップを有していてよく、これにより、ポーションパッケージの上部開口が、抽出過程のために開放されるようになっている。開放後に、次いで供給部を介して熱湯を供給し、抽出材料を濡らすことができる。このことは、抽出飲料の調製時の操作を簡単にする。なぜなら、閉じられた挿入フィルタを、既に充填された状態で使用することができるからである。
【0011】
本発明による方法では、抽出濃度をストロングに設定した場合には、供給部を介して予抽出用の熱湯を供給し、次いで抽出前に少なくとも10秒、好適には15秒~30秒間中断して待機してから、引き続き熱湯を供給して抽出する。これにより、抽出材料が予抽出により膨張して盛り上がるための十分な時間を有することになるため、抽出が強められる。
【0012】
抽出濃度をマイルドに設定した場合には、好適には予抽出と抽出との間で中断は行われず、供給部を介して連続して熱湯が供給される。これにより、より低い抽出度が達成され、これは、よりマイルドな風味をもたらす。
【0013】
本発明による方法では、好適には3つの異なる抽出濃度が設定可能であり、この場合、設定された抽出濃度に応じて、抽出飲料において異なる抽出度が得られる。例えば、マイルドな抽出濃度は18%~20%の抽出度、ミディアムの抽出濃度は19~21%の抽出度、ストロングの抽出濃度は20~22%の抽出度を有していてよい。
【0014】
本発明による機械では、抽出濃度を設定することができ、この場合、挿入フィルタペーパーに対する供給部の移動は、設定された抽出濃度に応じてそれぞれ異なる複数のパターンで選択的に行われ、供給される熱湯の温度の高さは、設定された抽出濃度に応じて異なっており、かつ/または、供給部を介してポンプにより圧送されるかまたは重力により通過案内される熱湯の体積流量の多さは、設定された抽出濃度に応じて異なっている。このことは、ユーザの好みおよび設定された抽出濃度に応じて最適化された抽出度でもって抽出飲料を製造することを可能にする。
【0015】
供給される水の温度は、比較的高い抽出濃度の場合には、マイルドな抽出濃度の場合よりも高くてよく、この場合の温度差は、例えば2℃~8℃であってよい。体積流量、すなわち単位時間当たりに圧送される熱湯の体積も、抽出濃度に応じて、特に少なくとも10%だけ可変である。より多くの体積流量に基づき、抽出材料と熱湯との接触時間が比較的短くなり、その結果、比較的低い抽出度が達成されることになる。この効果は、調製中の挿入フィルタ内の液体レベルがより高くなるほど、結果として活性フィルタ面がより大きくなることによって強まり、より大きな活性フィルタ面を通り、単位時間当たりにやはりより多くの体積が流出可能である。
【0016】
本発明による機械では、好適には挿入フィルタは機械の固定的な保持部に配置されており、供給部のみが、駆動装置により可動である。供給部は、例えば曲線ガイドまたはその他の手段を介して複数の方向に駆動されていてよく、これにより、抽出時に様々なパターンを移動することができるようになっている。例えば、供給部は上から見て、それぞれ異なる直径を有する複数の円、渦巻き、放射状、蛇行状、および/または波状の形態のパターンを移動することができる。1つの代替的な構成では、挿入フィルタも駆動装置によって移動されてよく、この場合、供給部は選択的に、同様に移動されるかまたは固定的に配置される。
【0017】
好適には、供給部の前に温度センサが設けられており、これにより、所定の抽出濃度を得るために、熱湯供給時に所定の温度を設定することができる。
【0018】
本発明による機械では、好適には挿入フィルタは、上面に開放されるべき閉鎖装置を有しておりかつ充填された状態で使用されるポーションパッケージとして用いられる。挿入フィルタへの充填を機械において初めて行うことや、閉鎖装置無しの挿入フィルタを使用することも可能である。
【0019】
抽出飲料、特にコーヒーの調製において、手動での抽出に倣うようにするために、供給部はその下面に、熱湯が通流する単一の開口のみを有していてよい。この場合、供給部は、手動抽出を模倣するように、所定のパターンで抽出材料の表面にわたって移動されてよい。
【0020】
以下に、本発明を添付の図面に関する複数の実施例に基づき、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本発明による機械において使用するポーションパッケージを示す図である。
図1B】本発明による機械において使用するポーションパッケージを示す図である。
図2】抽出飲料の調製時のホルダを挿入フィルタと共に示す概略図である。
図3】抽出飲料の調製時のホルダを挿入フィルタと共に示す概略図である。
図4】抽出飲料の調製時のホルダを挿入フィルタと共に示す概略図である。
図5】抽出度に関して、挿入フィルタに対する供給部の各移動経路の間での対比を説明する図である。
図6】抽出度に関して、挿入フィルタに対する供給部の各移動経路の間での対比を説明する図である。
図7】抽出度に関して、挿入フィルタに対する供給部の各移動経路の間での対比を説明する図である。
図8】挿入フィルタに対して生じ得る供給部の移動経路を表すパターン図である。
図9】挿入フィルタに対して生じ得る供給部の移動経路を表すパターン図である。
図10】挿入フィルタに対して生じ得る供給部の移動経路を表すパターン図である。
図11】設定した抽出濃度に応じた抽出度を表す線図である。
図12】本発明による、抽出飲料を調製する機械を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
挿入フィルタ1は、ポーションパッケージとして形成されており、液体透過性の材料から成るフィルタ壁2を有しており、フィルタ壁2は、下側の先端部3において開口している。挿入フィルタ1は角錐状に形成されており、閉鎖状態では実質的に平らな上面に、旋回可能な複数のフラップから形成された閉鎖装置4を有している。フラップは、折曲げ縁部5を介して旋回可能であり、実質的に三角形に形成されている。フラップの端部側の先端部には、各フラップを閉鎖位置において互いに係止する保持手段6が設けられている。
【0023】
挿入フィルタ1を図1Aに示す閉鎖位置から開けようとする場合には、挿入フィルタの上面に少量の熱湯を供給すればよく、これにより、特に折曲げ縁部5での膨れ上がりをもたらす膨張過程を生じさせることができ、これは図1Bに示すように、フラップの旋回と挿入フィルタ1の開放とにつながる。この場合、挿入フィルタ1は、独国特許出願公開第102018101338号に開示されているように形成されていてよい。
【0024】
開放位置では、挿入フィルタ1の内部空間7に上方からアプローチすることができるようになっており、この場合、内部空間7内には抽出材料、特にコーヒー粉または茶葉が充填されている。
【0025】
抽出飲料を調製するために、挿入フィルタ1は図2に示すようなフィルタホルダ10に挿入されてよい。フィルタホルダ10は、上方に向かって開いた収容部11を有しており、収容部11では側壁から複数のリブ12が内側に向かって突出している。フィルタホルダ10の下側には、抽出飲料用の出口13が設けられている。
【0026】
図3に示すように、図1Aに示した挿入フィルタ1はフィルタホルダ10に挿入することができ、このとき挿入フィルタ1には既に抽出材料8が充填されている。
【0027】
図4において、挿入フィルタ1は、抽出材料と水との混合物8’に上方からアプローチすることができるようになっており、上側の表面9を水で濡らすことができる開放位置に至っている。抽出過程用に供給部20が設けられており、供給部20は、混合物8’の表面9上を様々なパターンで移動することができるように、駆動装置(略示)を介して移動可能である。供給部20からは、流出開口21を介して混合物8’の表面9に熱湯(略示)22が供給され、次いで出口13のところで、できあがった抽出飲料が捕集される。
【0028】
図5図7に挿入フィルタ1を上から見た図を示し、挿入フィルタ1に対する供給部20の動きが抽出結果をどのように変化させるのかを説明する。
【0029】
図5では、供給部は抽出材料の表面9の上側に不動に配置されており、熱湯は中心にのみ供給される。その下の図が示すように、中央領域に全ての熱湯が供給されるため、中央領域では過抽出が得られるのに対し、縁部領域において熱湯が抽出材料を通って案内されることはほとんどないため、そこでは極度に少ない抽出が行われる。縁部領域と中央領域との間の移行領域においてのみ、最適な量の熱湯が抽出材料を通って供給される。過抽出および未抽出の結果、味が損なわれる。
【0030】
図6には、環状の経路上を回転する供給部20が設けられた場合の挿入フィルタ1を上から見た図が示されている。これにより、抽出結果が改良される。なぜなら、確かに供給部の環状の経路の領域では依然として過抽出が得られるが、しかしながら今や複数の箇所において、抽出度は最適な範囲内にあるからである。縁部領域と中央とでは、そこでも極度に少ない熱湯が抽出材料を通って案内されるため、未抽出が行われる。
【0031】
図7には、挿入フィルタ1と供給部20との間の相対運動により得ることができる渦巻き状のパターンが示されている。このパターンにより、抽出度は最適化される。なぜなら、供給部20が上方を移動する表面9の表面積が拡大されており、その結果、最早過抽出または未抽出は生じず、抽出材料が理想範囲内で抽出されるからである。これは、最適化された抽出および抽出濃度の設定を可能にする。
【0032】
図8には、表面9に対する供給部20の移動経路の1つのパターンが示されており、このパターンでは、それぞれ異なる半径を有する複数の六角形の環状の経路を移動する。これにより、表面9を熱湯で最適に濡らすことができる。
【0033】
図9には、表面9を可能な限り全面的に水で濡らすための、抽出材料の表面9に対して移動される供給部の実質的に放射状の移動経路が示されている。
【0034】
図10には、渦巻き状の移動経路が略示されている。
【0035】
表面9に対する供給部20の移動により、好適には供給部に設けられた1つまたは複数の開口が、抽出過程において抽出材料の表面の少なくとも10%、好適には20%~70%の表面積の上を通過する。これにより、抽出材料の複数の領域が未抽出になることが回避される。
【0036】
図11に示す抽出線図では、X軸に抽出度、Y軸にTDS値がパーセントで示されている。TDS値は化学的なパラメータであり、英語表記「total dissolved solids」の略称として、溶媒中に溶解した全ての無機物質および有機物質の総量を表し、コーヒー粉の抽出では、コーヒー飲料の濃度を表す。欧州では、1.2%~1.45%の値がフィルタコーヒーの理想と見なされている。
【0037】
抽出パラメータを設定することにより、同じ抽出材料を含む挿入フィルタ1を用いて、異なる抽出度を有する異なる抽出飲料を得ることができる。例えば、「マイルド」に設定する場合、熱湯の温度は87~89℃に設定されてよい。熱湯の体積流量は、200ml/分~220ml/分であってよく、この場合、予抽出と抽出との間で中断は行われない。供給部20のパターンは、例えば図8に示したものを選択でき、この場合、角錐状の挿入フィルタ1の縁部領域をより強力に水で濡らし、ひいてはよりマイルドな抽出飲料を製造するために、内側よりも外側の経路を移動する頻度の方が高くなっている。
【0038】
中間の抽出設定である「ミディアム」が選択された場合、供給される熱湯の温度は、例えば91℃~93℃であってよい。体積流量を150~170ml/分に減少させることにより、抽出材料における熱湯の滞留時間が延長され、これにより抽出度が高まる。任意には、追加的に予抽出が行われてもよく、予抽出ではまず、所定量の熱湯を抽出材料8に供給する。次いで、抽出材料の膨張用の待機時間、例えば5秒~15秒が設けられており、その後の抽出において引き続き熱湯を挿入フィルタ1に供給する。供給部の移動パターンは、図8に示したパターンまたは図8の外側領域に示したパターンと図9に示したパターンとの組合せも選択することができる。
【0039】
抽出濃度を「ストロング」に設定した場合、供給される熱湯の温度は、例えば93℃~96℃の範囲に高められてよい。さらに、体積流量は100~120ml/分の量に減らされてよい。さらに、抽出度を上げるために、予抽出と本来の抽出過程との間に、例えば15秒~30秒の中断が設けられてよい。これにより、抽出度を上げるために、最初の熱湯供給後に抽出材料が膨張した後で初めて、引き続き熱湯が供給されることになる。供給部の移動は、例えば図9または図8に示した所定のパターンに従って、内側の経路に焦点を合わせて行われてよく、これにより、特に中央の領域に、縁部領域におけるよりも多くの水が供給されることになる。なぜなら、角錐形に基づき、抽出材料の高さが中央の領域ではより大きくなっているからである。
【0040】
つまり、様々なパラメータを設定することにより、抽出飲料の抽出度をユーザの好みに合わせることができ、この場合、抽出度は、「マイルド」に設定すると好適には19%の範囲内にあり、「ミディアム」に設定すると20%の範囲内にあり、「ストロング」に設定すると21%の範囲内にある。
【0041】
図12には、ホットドリンクを調製するための機械14が示されており、機械14は、ケーシングを備えたベースステーション15を有しており、ケーシング内には、加熱装置と、ポンプと、制御装置とが配置されている。ベースステーション15には、新鮮水用の取外し可能なタンク16が設けられており、タンク16を介して、ポンプと加熱装置と供給部20とに水を送ることができるようになっている。供給部20は、ベースステーション15から上方に向かって突出した導管として形成されている。供給部20は、ベースステーション15のケーシングに固定的に配置されているのではなく、駆動装置を介して可動である。このためには、ベースステーション15に設けられたスリット25に基づく案内経路に沿って直線的に移動可能なキャリッジ19が設けられている。さらに、キャリッジ19は別の駆動装置を介して回転されてもよく、これにより供給部20は鉛直方向軸線を中心として回転可能であると共に、追加的に案内経路に沿って直線的に移動可能でもある。供給部20を移動させるために、別の複数の駆動装置が使用されてもよい。
【0042】
供給部20は、鉛直方向部分と水平方向部分とを有しており、供給部20は、図1に示した挿入フィルタ1を挿入可能なフィルタホルダ10の上側に配置された流出開口21において開口している。流出開口21の上側において、供給部20にはさらにホルダ23が設けられており、ホルダ23には例えば、ベースステーション15内の制御装置を介して制御可能な照明手段、特にLED照明手段が設けられている。さらに、ホルダ23には、フィルタホルダ10が保持部18に装着されているか否かを検出する光学センサが設けられていてもよい。任意には、このようなセンサは、フィルタホルダ10内に挿入フィルタが配置されているか否か、かつ/または、抽出材料が挿入フィルタ内に配置されているか否かを検出することもできる。このためには例えば、相応する色識別手段を備えた光学センサを使用することができる。
【0043】
この機械は、ベースステーション15に固定された保持装置17を有しており、保持装置17には、フィルタホルダ10を取外し可能に挿入するための鉢状の保持部18が設けられている。
【0044】
保持部18の下面には、抽出飲料用、特にコーヒーまたは茶用の出口13が設けられている。出口13の下には、残留液を受け入れるための滴皿24が設けられている。
【符号の説明】
【0045】
1 挿入フィルタ
2 フィルタ壁
3 先端部
4 閉鎖装置
5 折曲げ縁部
6 保持手段
7 内部空間
8 抽出材料
8’ 混合物
9 表面
10 フィルタホルダ
11 収容部
12 リブ
13 出口
14 機械
15 ベースステーション
16 タンク
17 保持装置
18 保持部
19 キャリッジ
20 供給部
21 流出開口
22 水
23 ホルダ
24 滴皿
25 スリット
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12