(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】接合基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 37/02 20060101AFI20240207BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20240207BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20240207BHJP
H05K 3/20 20060101ALI20240207BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C04B37/02 B
H01L23/12 D
H01L23/36 M
H05K3/20 Z
H05K3/38 Z
(21)【出願番号】P 2021560820
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2019046302
(87)【国際公開番号】W WO2021106098
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】海老ヶ瀬 隆
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-214566(JP,A)
【文献】特開昭61-137688(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155014(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00-37/04
H05K 3/20、3/38
H01L 23/12、23/373
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 主面を有する窒化ケイ素セラミックス基板を準備する工程と、
b) 前記主面上にろう材層を形成する工程と、
c) 前記ろう材層上に銅板を配置して前記窒化ケイ素セラミックス基板、前記ろう材層及び前記銅板を備える中間品を得る工程と、
d) 前記中間品に対してホットプレスを行って、前記銅板を前記窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層を生成させる工程と、
を備え、
前記ろう材層は、活性金属としてのチタンと前記活性金属以外の金属としての銀とを含み、
前記工程d)は、
d-1) 接合のための加圧を前記中間品に対して行わずに前記中間品の温度を脱バインダ温度まで上げて前記バインダの脱バインダを行う工程と、
d-
2) 前記中間品に加える面圧を
、あらかじめ設定されている面圧プロファイルにおける5MPa以上30MPa以下の最高面圧まで上げ、前記中間品の温度を最高温度まで上げる工程と、
d-
3) 前記中間品に加える面圧を
6.3MPa以上30MPa以下に維持したまま、前記中間品の温度を前記最高温度から
室温以上70℃以下まで下げる工程と、
を備え、前記工程d-2)は、
d-2-1) 接合のための加圧を前記中間品に対して行うことを開始した後に、前記中間品に加える面圧を前記最高面圧よりも低い第1の面圧まで上げ前記第1の面圧で維持する工程と、
d-2-2) 前記中間品に加える面圧を前記第1の面圧から前記最高面圧まで上げる工程と、
を備える
接合基板の製造方法。
【請求項2】
前記工程d-
3)は、前記中間品に加える面圧を10MPa以上に維持する
請求項1の接合基板の製造方法。
【請求項3】
前記工程d-3)は、前記中間品に加える面圧を12.5MPa以上に維持する
請求項2の接合基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素セラミックスは、高い熱伝導性及び高い絶縁性を有する。このため、銅板が接合層を介して窒化ケイ素セラミックス基板に接合された接合基板は、パワー半導体素子が実装される絶縁放熱基板として好適に用いられる。
【0003】
当該接合基板は、多くの場合は、ろう材層を銅板と窒化ケイ素セラミックス基板との間に有する中間品を作製し、作製した中間品に対して熱処理を行って銅板と窒化ケイ素セラミックス板との間に接合層を生成させることにより製造される。
【0004】
また、中間品に対して熱処理を行う際に、中間品に対してホットプレスを行うことも提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1に記載された技術においては、窒化珪素基板の一方主面上にろう材が塗布され、塗布されたろう材の塗布面に銅板が重ね合わされ、加熱加圧接合によって接合基板が得られる(段落0024及び0025)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、窒化ケイ素セラミックス基板のふたつの主面の一方の主面上のみに銅板が接合される場合、窒化ケイ素セラミックス基板のふたつの主面にそれぞれ接合されるふたつの銅板の厚さが互いに異なる場合、窒化ケイ素セラミックス基板のふたつの主面にそれぞれ接合されるふたつの銅板が占める面積が互いに異なる場合等には、接合基板を製造する際に、接合基板に反り、クラック等が発生する場合がある。この反り、クラック等の発生は、銅の熱膨張率が窒化ケイ素セラミックスの熱膨張率と大きく異なることに起因する。クラックは、多くの場合は、窒化ケイ素セラミックス基板に発生し、銅板の端面の付近に発生する。
【0008】
本発明は、この問題に鑑みてなされた。本発明が解決しようとする課題は、銅板が接合層を介して窒化ケイ素セラミックス基板に接合された接合基板を製造する際に接合基板に発生する反り、クラック等を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
窒化ケイ素セラミックス基板が準備される。ろう材層が窒化ケイ素セラミックス基板の主面上に形成される。ろう材層上に銅板が配置される。ろう材層は、活性金属としてのチタンと前記活性金属以外の金属としての銀とを含む。これにより、窒化ケイ素セラミックス基板、ろう材層及び銅板を含む中間品が得られる。中間品に対してホットプレスが行われる。これより、銅板を窒化ケイ素セラミックス基板に接合する接合層が生成する。中間品に対してホットプレスが行われる際には、中間品に加えられる面圧が、あらかじめ設定されている面圧プロファイルにおける5MPa以上30MPa以下の最高圧力まで上げられ、中間品の温度が最高温度まで上げられた後に、中間品に加えられる面圧が6.3MPa以上30MPa以下に維持されたまま、中間品の温度が最高温度から室温以上70℃以下まで下げられる。中間品に加えられる面圧は、接合のための加圧を中間品に対して行うことを開始した後に最高面圧よりも低い第1の面圧まで上げられて維持されたうえで、最高面圧まで上げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、中間品の温度が下げられている間に中間品に加えられる面圧により中間品が有する銅板が塑性変形する。このため、銅の熱膨張率が窒化ケイ素セラミックスの熱膨張率と大きく異なることに起因する応力が接合基板に残留することを抑制することができる。これにより、銅板が接合層を介して窒化ケイ素セラミックス基板に接合された接合基板を製造する際に接合基板に発生する反り、クラック等を抑制することができる。
【0011】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の接合基板の例を模式的に図示する断面図である。
【
図2】第1実施形態の接合基板の製造の流れを図示するフローチャートである。
【
図3】第1実施形態の接合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
【
図4】第1実施形態の接合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
【
図5】第1実施形態の接合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
【
図6】参考例の温度プロファイル及び面圧プロファイルを示す図である。
【
図7】第1実施形態の接合基板の製造の途上でホットプレスが行われる際の温度プロファイル及び面圧プロファイルの例を示す図である。
【
図8】第1実施形態の接合基板の試作品を模式的に図示する断面図である。
【
図9】第1実施形態の接合基板の試作品に温度変化が与えられた際の反り量の温度変化を示すグラフである。
【
図10】第1実施形態の接合基板の試作品の破損例を図示する図である。
【
図11】第1実施形態の接合基板の試作品に備えられる窒化ケイ素セラミックス基板の他方の主面の形状プロファイルを示すグラフである。
【
図12】比較例の接合基板の断面を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1 接合基板
図1は、第1実施形態の接合基板の例を模式的に図示する断面図である。
【0014】
図1に図示される第1実施形態の接合基板1は、窒化ケイ素セラミックス基板11、銅板12及び接合層13を備える。接合基板1がこれらの要素以外の要素を備えてもよい。
【0015】
銅板12及び接合層13は、窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11s上に配置される。接合層13は、銅板12を窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11sに接合する。
【0016】
銅板12は、活性金属を含む接合層13を介して窒化ケイ素セラミックス基板11に接合される。接合層13に含まれる活性金属は、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の活性金属である。接合層13が活性金属以外の金属を含んでもよい。接合層13に含まれる活性金属以外の金属は、銀、銅、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属である。接合層13が、窒化ケイ素セラミックス基板11から供給された窒素及び/又はケイ素を含んでもよい。供給された窒素及び/又はケイ素が活性金属と化合物を形成していてもよい。接合層13が、銅板12から供給された銅を含んでもよい。
【0017】
接合基板1は、どのように用いられてもよいが、例えばパワー半導体素子が実装される絶縁放熱基板として用いられる。
【0018】
2 接合基板の製造方法
図2は、第1実施形態の接合基板の製造の流れを図示するフローチャートである。
図3、
図4及び
図5は、第1実施形態の接合基板の製造の途上で得られる中間品を模式的に図示する断面図である。
【0019】
第1実施形態の接合基板1の製造においては、
図2に示される工程S101からS105までが順次に実行される。
【0020】
工程S101においては、窒化ケイ素セラミックス基板11が準備される。
【0021】
工程S102においては、
図3に図示されるように、窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11s上に、ろう材層13iが形成される。
【0022】
ろう材層13iが形成される際には、活性金属ろう材、バインダ及び溶剤を含むペーストが調製される。ペーストが分散剤、消泡剤等をさらに含んでもよい。続いて、調製されたペーストが窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11s上にスクリーン印刷され、窒化ケイ素セラミックス基板11の主面11s上にスクリーン印刷膜が形成される。続いて、形成されたスクリーン印刷膜に含まれる溶剤が揮発させられる。これにより、スクリーン印刷膜が、ろう材層13iに変化する。ろう材層13iは、活性金属ろう材及びバインダを含む。ろう材層13iがこの方法とは異なる方法により形成されてもよい。
【0023】
活性金属ろう材は、水素化活性金属粉末及び金属粉末を含む。水素化活性金属粉末は、チタン及びジルコニウムからなる群より選択される少なくとも1種の活性金属の水素化物を含む。金属粉末は、銀を含む。金属粉末が、銀以外の金属を含んでもよい。銀以外の金属は、銅、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属である。銅、インジウム及びスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属が活性金属ろう材に含まれる場合は、活性金属ろう材の融点が低下する。
【0024】
活性金属ろう材は、望ましくは0.1μm以上10μm以下の平均粒子径を有する粉末からなる。平均粒子径は、市販のレーザー回折式の粒度分布測定装置により粒度分布を測定し、測定した粒度分布からD50(メジアン径)を算出することにより得ることができる。活性金属ろう材がこのように小さい平均粒子径を有する粉末からなることにより、ろう材層13iを薄くすることができる。
【0025】
ろう材層13iは、望ましくは0.1μm以上10μm以下の厚さを有し、さらに望ましくは0.1μm以上5μm以下の厚さを有する。
【0026】
工程S103においては、
図4に図示されるように、形成されたろう材層13i上に銅板12iが配置される。これにより、窒化ケイ素セラミックス基板11、銅板12i及びろう材層13iを備える中間品1iが得られる。
【0027】
工程S104においては、得られた中間品1iに対してホットプレスが行われる。これにより、
図5に図示されるように、接合層13jが生成する。これらにより、
図5に図示される、窒化ケイ素セラミックス基板11、銅板12j及び接合層13jを備える中間品1jが得られる。接合層13jは、銅板12jを窒化ケイ素セラミックス基板11に接合している。
【0028】
中間品1iに対してホットプレスが行われる場合は、望ましくは、中間品1iが、真空中又は不活性ガス中で、800℃以上900℃以下の最高温度TMAXを有する温度プロファイルにしたがって加熱されながら、5MPa以上30MPa以下の最高面圧PMAXを有する面圧プロファイルにしたがって窒化ケイ素セラミックス基板11の厚さ方向に加圧される。これにより、ろう材層13iが0.1μm以上10μm以下の厚さを有する場合のようなろう材層13iが薄い場合においても、ボイドを形成することなく銅板12iを窒化ケイ素セラミックス基板11に接合することができる。
【0029】
中間品1iに対してホットプレスが行われる間に、ろう材層13iに含まれる銀等の金属成分の全部又は一部が窒化ケイ素セラミックス基板11及び/又は銅板12iに拡散させられてもよい。中間品1iに対してホットプレスが行われる間に、窒化ケイ素セラミックス基板11に含まれる窒素及び/又はケイ素がろう材層13iに拡散させられてもよい。銅板11iに含まれる銅がろう材層13iに拡散させられてもよい。
【0030】
工程S105においては、銅板12j及び接合層13jがエッチング法等によってパターニングされる。これにより、銅板12jが、
図1に図示されるパターニングされた銅板12に変化する。また、接合層13jが、
図1に図示されるパターニングされた接合層13に変化する。銅板12j及び接合層13jのパターニングが省略されてもよい。
【0031】
3 温度プロファイル及び面圧プロファイル
図6は、参考例の温度プロファイル及び面圧プロファイルを示す図である。
図7は、第1実施形態の接合基板の製造の途上でホットプレスが行われる際の温度プロファイル及び面圧プロファイルの例を示す図である。
【0032】
図6及び
図7に図示される温度プロファイルにおいては、中間品1iの温度が、室温から最高温度TMAXまで上げられ、設定された時間に渡って最高温度TMAXで維持される。また、
図6及び
図7に図示される面圧プロファイルにおいては、中間品1iの温度が室温から最高温度TMAXまで上げられる間に、中間品1iに加える面圧が、面圧0付近から最高面圧PMAXまで上げられる。
【0033】
中間品1iの温度が室温から最高温度TMAXまで上げられる間においては、まず、中間品1iの温度が、室温から脱バインダ温度TBまで上げられる。また、中間品1iの温度が、設定された時間に渡って脱バインダ温度TBで維持される。これにより、ろう材層13iに含まれるバインダの脱バインダが行われる。続いて、中間品1iの温度が、脱バインダ温度TBから最高温度TMAXまで上げられる。また、中間品1iの温度が、設定された時間に渡って最高温度TMAXで維持される。
【0034】
この際、中間品1iに加える面圧が最高面圧PMAXまで上げられる間においては、中間品1iの温度が脱バインダ温度TBまで上げられた後に、中間品1iへの加圧が開始される。また、中間品1iへの加圧が開始された後に、まず、中間品1iに加えられる面圧が、第1の面圧P1まで上げられ、設定された時間に渡って第1の面圧P1で維持される。続いて、中間品1iに加えられる面圧が、第1の面圧P1から第2の面圧(最高面圧)PMAXまで上げられ、設定された時間に渡って第2の面圧PMAXで維持される。第2の面圧PMAXは、第1の面圧P1より高い。これにより、脱バインダが行われている間は、中間品1iへの加圧が行われない。このため、中間品1iへの加圧により脱バインダが阻害されることを抑制することができ、製造された接合基板1に備えられる接合層13への残炭を抑制することができる。また、銅板12iの温度が上がって銅板12iが塑性変形しやすくなる前は、比較的に弱い第1の面圧P1で銅板12iが窒化ケイ素セラミックス基板11に向かって押し付けられる。このため、窒化ケイ素セラミックス基板11が割れることを抑制することができる。また、銅板12iの温度が上がって銅板12iが塑性変形しやすくなった後に銅板12iへの加圧が開始される。このため、熱膨張しようとする銅板12iが拘束されることを抑制することができ、接合基板1が製造された後に銅板12の内部に応力が残留することを抑制することができる。これにより、銅板12の内部に残留する応力に起因する接合基板1の変形が生じることを抑制することができる。例えば、接合基板1のうねりが生じることを抑制することができる。ただし、中間品1iに加える面圧が最高面圧PMAXまで上げられる間の面圧プロファイルが変更されてもよい。例えば、中間品1iに加える面圧を設定された時間に渡って第1の面圧P1で維持することが省略されてもよい。
【0035】
続いて、
図6及び
図7に図示される温度プロファイルにおいては、中間品1iの温度が、最高温度TMAXから室温まで下げられる。また、
図6及び
図7に図示される面圧プロファイルにおいては、中間品1iに加える面圧が、最高面圧PMAXから面圧0付近まで下げられる。
【0036】
図6に図示される参考例の面圧プロファイルにおいては、中間品1iの温度を最高温度TMAXから下げることが開始された直後に、中間品1iへの加圧が終了させられる。これに対して、
図7に図示される第1実施形態の面圧プロファイルにおいては、中間品1iに加える面圧が0.1MPa以上30MPa以下に維持されたまま、中間品1iの温度が最高温度から70℃以下まで下げられる。中間品1iに加える面圧が0.1MPa以上に維持されることにより、中間品1iの温度が下げられている間に中間品1iに加えられる面圧により銅板12iが塑性変形する。このため、銅の熱膨張率が窒化ケイ素セラミックスの熱膨張率と大きく異なることに起因する応力が接合基板1に残留することを抑制することができる。これにより、接合基板1に発生する反り、クラック等を抑制することができる。上述の70℃という温度は、数時間以内で銅板12の内部の歪を除去することができる最低の温度である。また、中間品1iに加える面圧が30MPa以下に維持されることにより、中間品1iに加えられる面圧により中間品1iが損傷することを抑制することができる。例えば、中間品1iに備えられる窒化ケイ素セラミックス基板11が割れることを抑制することができる。
【0037】
望ましくは、中間品1iに加える面圧が10MPa以上に維持されたまま、前記中間品1iの温度が前記最高温度から70℃以下まで下げられる。
【0038】
4 実験
上述した接合基板1の製造方法にしたがって、
図8に図示される接合基板1の試作品を試作した。
図8に図示される接合基板1の試作品においては、窒化ケイ素セラミックス基板11の一方の主面11saのみに銅板12が接合されている。活性金属ろう材に含まれる活性金属としては、チタンを用いた。活性金属ろう材に含まれる活性金属以外の金属としては、銀を用いた。脱バインダ温度TBは、550℃とした。最高温度TMAXは、820℃とした。第1の面圧P1は、2.5MPaとした。第2の面圧(最高面圧)PMAXは、22MPaとした。中間品1iの温度を下げる間に中間品1iに加える面圧は、6.3MPa、12.5MPa、18.4MPa及び37.5MPaとした。
【0039】
中間品1iに加える面圧を6.3MPa、12.5MPa及び18.4MPaとして試作された接合基板1の試作品について、温度変化が与えられた際の反り量を測定した。その結果を
図9のグラフに示す。中間品1iに加える面圧を37.5MPaとして試作された接合基板1の試作品の反り量が
図9のグラフに示されていないのは、
図10に図示されるように窒化ケイ素セラミックス基板11が破損したためである。
【0040】
試作品の反り量は、レーザー変位計により測定された、
図11のグラフに示される窒化ケイ素セラミックス基板11の他方の主面11sbの形状プロファイルから算出された。その際には、窒化ケイ素セラミックス基板11の他方の主面11sbが凸状の面となっている場合は反り量に負の値を付与し、窒化ケイ素セラミックス基板11の他方の主面11sbが凹状の面となっている場合は反り量に正の値を付与した。反り量が負の値を有することは、窒化ケイ素セラミックス基板11に引張応力が残留していることを意味する。反り量が正の値を有することは、窒化ケイ素セラミックス基板11に圧縮応力が残留していることを意味する。
【0041】
図9のグラフに示される反り量の温度変化からは、中間品1iが試作される際に中間品1iに加えられる面圧が6.3MPaである場合は、室温の付近において、反り量が負の値を有し、窒化ケイ素セラミックス基板11に引張応力が残留していることを理解することができる。また、室温の付近における反り量の温度変化を外挿することにより、約300℃において反り量が0になると予想されることを理解することができる。
【0042】
また、
図9のグラフに示される反り量の温度変化からは、中間品1iが試作される際に中間品1iに加えられる面圧が12.5MPa又は18.4MPaである場合は、室温の付近において、反り量が0の付近の値を有し、窒化ケイ素セラミックス基板11にわずかな引張応力及び圧縮応力しか残留していないことを理解することができる。また、約70℃において反り量が0になることを理解することができる。
【0043】
また、中間品1iが試作される際に中間品1iに加えられる面圧が6.3MPaである場合の反り量の温度変化と中間品1iが試作される際に中間品1iに加えられる面圧が12.5MPa又は18.4MPaである場合の反り量の温度変化とを比較することにより、中間品1iに加える面圧を上げることにより、窒化ケイ素セラミックス基板11に残留する応力を低下させることができることを理解することができる。
【0044】
また、中間品1iが試作される際に中間品1iの温度を下げることを開始した直後に中間品1iへの加圧を終了した点を除いて、上述した接合基板1の製造方法にしたがって、
図1に図示される接合基板1の試作品を試作し、試作した接合基板1の試作品の断面を観察した。その結果を
図12に図示する。
図12からは、当該接合基板1の試作品に備えらえる窒化ケイ素セラミックス基板11に銅板12の端面の付近を起点とするクラックが発生していることを理解することができる。
【0045】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0046】
1 接合基板
11 窒化ケイ素セラミックス基板
12,12i 銅板
13 接合層
13i ろう材層