(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を製造するための装置および方法、並びにそれによって製造された繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布
(51)【国際特許分類】
D04H 1/00 20060101AFI20240207BHJP
D01G 25/00 20060101ALI20240207BHJP
D01G 11/00 20060101ALI20240207BHJP
A61L 15/28 20060101ALI20240207BHJP
A61L 15/42 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
D04H1/00
D01G25/00 E
D01G11/00
A61L15/28 100
A61L15/42 100
(21)【出願番号】P 2021569904
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 KR2019007068
(87)【国際公開番号】W WO2020241960
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0061369
(32)【優先日】2019-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521274533
【氏名又は名称】サムヤン ホールディングス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】SAMYANG HOLDINGS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】31,Jong-ro 33-gil,Jongno-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒェスン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジンス
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-103314(JP,A)
【文献】特表平10-504613(JP,A)
【文献】特表2014-504898(JP,A)
【文献】特開昭49-001855(JP,A)
【文献】特公昭55-014175(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H、D01G、A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織物から繊維ウェ
ブを製造するための
方法であって、
供給ローラー;平棒が表面上に備えられたシリンダー;ドッファー;及びストリッパー;を含
む装置に前記織物を通過させて繊維ウェブに加工するステップを含み、
前記シリンダー1個当たり3~8個の平棒が備えられ、
前記供給ローラー、平棒、シリンダー、ドッファー及びストリッパーのそれぞれの表面に歯(tooth)が形成され、
前記平棒の表面に形成された歯が、高さ0.5~5.0mm、角度50~90°、厚さ0.5~2.5mm、及び個数3~20個/インチの条件をすべて満たし、
前記織物が、前記供給ローラーを介して前記シリンダーに供給され、前記平棒とシリンダーとの間を通過した後、前記ドッファー及びストリッパーを順次に通過する
、繊維ウェブの製造方法。
【請求項2】
供給ローラーの表面に形成された歯が、高さ2.0~6.0mm、角度50~85°、厚さ0.5~2.5mm、個数3~20個/インチの1つ以上の条件を満たし、
シリンダーの表面に形成された歯が、高さ2.0~6.0mm、角度50~85°、厚さ0.5~2.5mm、個数3~20個/インチの1つ以上の条件を満たし
、
ドッファーの表面に形成された歯が、高さ2.0~6.0mm、角度30~80°、厚さ0.5~2.5mm、個数3~20個/インチの1つ以上の条件を満たし、
ストリッパーの表面に形成された歯が、高さ2.0~6.0mm、角度30~80°、厚さ0.5~2.5mm、個数3~20個/インチの1つ以上の条件を満たす請求項1に記載の
繊維ウェブの製造方法。
【請求項3】
供給ローラーが、0.1~1mpm(メートル/分)の速度で動作し、
シリンダーが、100~350rpm(毎分回転数)の速度で動作し、
ドッファーが2~4mpm(メートル/分)の速度で動作する請求項1に記載の
繊維ウェブの製造方法。
【請求項4】
製造された繊維ウェブの密度が、10g/m
2
~60g/m
2
である請求項1に記載の繊維ウェブの製造方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の
繊維ウェブの製造方法によって製造された複数の前記繊維ウェブをカレンダー加工するステップ;
を含むフィブリル状繊維集合体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の
繊維ウェブの製造方法によって製造された複数の前記繊維ウェブを非織り方法で結合するステップ;及び
前記結合された複数の繊維ウェブをカレンダー加工するステップ;
を含む不織布の製造方法。
【請求項7】
製造されたフィブリル状繊維集合体の密度が、100g/m
2
~600g/m
2
である請求項5に記載のフィブリル状繊維集合体の製造方法。
【請求項8】
製造された不織布の密度が、50g/m
2
~600g/m
2
である請求項6に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織物を用いて、繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を製造するための装置、その装置を使用して、繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を製造する方法、及びその方法で製造された繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布、特に、止血剤または癒着防止剤に使用するための繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
不織布は、撚糸、織り、編みなどの工程を経ることなく、様々な繊維をその相互特性に応じて絡み合わせてシート(布地)形状のウェブ(web)を形成し、機械的、物理的な方法で結合させて製造される繊維製品を指す。
【0003】
不織布の製造方法は、一般に、ウェブ形成→ウェブ結合→加工などの3つのステップからなる。ウェブ形成は、繊維をコンベヤー上に可能な限り均一な厚さで分散積層することによってウェブを作るステップである。ウェブ結合は、繊維が分離しないように、ウェブに適切な強力を与えて形状の安定性を提供するために繊維集合体を絡ませたり結合させたりするステップである。加工は、最終用途に必要な染色または加工を経て不織布を完成するステップである。
【0004】
不織布の製造は、ウェブ形成方法に応じて湿式法と乾式法とに分けられる。乾式法と湿式法は、ウェブが乾燥状態で形成されるか、湿潤状態で形成されるかによって区分される。即ち、乾式法では空気中の繊維からウェブが形成され、湿式法では繊維を液体に分散させてウェブを得ている。このように、ウェブ形成方法は、繊維が分散される媒体、即ち空気または液体によって区別される。あるいは、不織布は、繊維の種類に応じて長繊維不織布と短繊維不織布とに分けることができる。
【0005】
酸化再生セルロース(ORC)は、既知の吸水性止血物質である。酸化セルロース(OC)に基づいて、様々なタイプの止血剤を、粉末、織物、不織布、編物、他の形態およびそれらの組み合わせに形成するための多くの方法が開示されている。現在患部に使用されている止血包帯は、酸化再生セルロース(ORC)を含む織布または不織布を含む。
【0006】
特許文献1は、a)最小限の撚り(twist)のフィラメントを有するセルロース糸を提供するステップ;b)最小限の撚りを有する複数糸の単一供給円形編みセルロース布地(single feed circular knitted cellulose fabric)を形成するステップ;c)セルロース布地を洗浄(scouring)するステップ;d)前記洗浄された布地を酸化させるステップ;e)前記酸化された布地を柔軟化(pliabilizing)させるステップ;f)前記柔軟化した布地をほどき、約2.0捲縮/cm(約5捲縮/インチ)~約4.7捲縮/cm(約12捲縮/インチ)のけん縮を有する連続する撚り糸を形成するステップ;g)長さが約3.8~約10.8cm(約1+1/2~約4+1/4インチ)のステープルを形成するように前記連続する撚り糸を切断するステップ;h)前記ステープルをカードバットにカード処理するステップ;i)前記カードバットをニードルパンチし、三次元に絡ませて、単層の不織フェルトを形成するステップ、を含む、再吸収可能な止血用不織包帯を製造する方法を開示している。
【0007】
しかし、前記方法は、酸化布地を柔軟化させた後、柔軟化された布地を編んで連撚り糸を形成し、特定の長さのステープル繊維を形成するように切断するステップを含むので、製造工程が長くて複雑であるという問題があった。
【0008】
また、繊維ウェブ、不織布などの製造に一般に使用される機械の多くは、既に短繊維にスクラップされた繊維の房を原材料としており、織物を直接供給し、切断とコーミングを同時に行うことによって短い時間で繊維ウェブや不織布などを製造する方法はまだ知られていない。
【0009】
特に、繊維ウェブ、不織布などの製造機械の特性に応じて、形成される繊維ウェブと不織布の物理的特性が敏感に変化する。形成された繊維ウェブ及び不織布の物理的特性は、各構成の結合順序、機械の各構成に歯の存在有無、歯の形状、長さ、角度、配列などの物理的特性だけでなく、各構成の動作速度などの僅かな違いによっても決定される。従って、構成要素と動作条件の最適化された組み合わせを備えた、優れた繊維ウェブ及び不織布を製造することができる機械の開発と前記機械を使用して製造され、優れた止血または癒着防止効果を有する繊維ウェブ及び不織布の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国特許出願公開第10-2013-0101109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、織物から繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を簡単な工程で製造できる装置を提供することである。
本発明の別の目的は、前記装置を使用することによって、繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を製造する方法を提供することである。
本発明の更なる別の目的は、前記方法により製造され、特に、止血または癒着防止のために使用可能な繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、織物から繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を製造するための装置であって、供給ローラー;平棒が表面上に備えられたシリンダー;ドッファー;及びストリッパー;を含み、前記供給ローラー、平棒、シリンダー、ドッファー及びストリッパーのそれぞれの表面に歯(tooth)が形成され、織物が、前記供給ローラーを介して前記シリンダーに供給され、前記平棒とシリンダーとの間を通過した後、前記ドッファー及びストリッパーを順次に通過するように動作する装置が提供される。
【0013】
本発明の別の態様によれば、織物を本発明の前記装置に通過させて繊維ウェブに加工するステップを含む繊維ウェブの製造方法が提供される。
【0014】
本発明の更に別の態様によれば、織物を本発明の前記装置に通過させて繊維ウェブに加工するステップ;及び複数の前記繊維ウェブをカレンダー加工するステップ;を含むフィブリル状繊維集合体の製造方法が提供される。
【0015】
本発明の更に別の態様によれば、織物を本発明の前記装置に通過させて繊維ウェブに加工するステップ;複数の前記繊維ウェブを非織り方法で結合するステップ;及び前記結合された複数の繊維ウェブをカレンダー加工するステップ;を含む不織布の製造方法が提供される。
【0016】
本発明の更に別の態様によれば、本発明の繊維ウェブを製造するための前記の方法により製造され、密度が10g/m2~60g/m2である繊維ウェブが提供される。
【0017】
本発明の更に別の態様によれば、本発明の繊維ウェブを製造するための前記の方法により製造され、密度が100g/m2~600g/m2であるフィブリル状繊維集合体が提供される。
【0018】
本発明の更に別の態様によれば、本発明の繊維ウェブを製造するための前記の方法により製造され、密度が50g/m2~600g/m2である不織布が提供される。
【0019】
本発明の更に別の態様によれば、本発明の繊維ウェブを含む止血剤または癒着防止剤が提供される。
【0020】
本発明の更に別の態様によれば、本発明のフィブリル状繊維集合体を含む止血剤または癒着防止剤が提供される。
【0021】
本発明の更に別の態様によれば、本発明の不織布を含む止血剤または癒着防止剤が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、織物から簡単な工程で繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を製造することができ、そのように製造された繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布は、特に止血剤または癒着防止剤として適切に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を製造するための装置の実施形態を概略的に示した図である(供給ローラー、平棒、シリンダー、ドッファー及びストリッパーの表面に形成された歯(tooth)は図示されていない)。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0025】
本発明において、用語「織物(fabric)」は、編物(knit)を含む概念である。
【0026】
好ましい一実施形態では、前記織物の引張強度は、例えば、4kgf~20kgf(より具体的には、5kgf~18kgf、更に具体的には6kgf~15kgf)であってもよい。織物の引張強度が前記レベルよりも低い場合、効率的に切断できず、粉形状になる場合があり、逆に前記レベルよりも高い場合、切断が完了せず、そのため、製品に未整列の部分が含まれる可能性がある。
【0027】
一実施形態では、本発明で使用可能な織物の密度は、例えば、30g/m2~150g/m2(より具体的には40g/m2~120g/m2、更に具体的には50g/m2~100g/m2)であってもよい。織物の密度が前記レベルよりも高い場合、装置内の繊維量が多くなりすぎて、繊維ウェブへスムーズに加工できない可能性があり、逆に前記レベルよりも低い場合、装置内の繊維量が少なくなりすぎて、作られた繊維ウェブが破れたり、物性が弱くなったりして、生産性が低下する可能性がある。
【0028】
一実施形態では、前記織物は、酸化再生セルロース(ORC)、酸化セルロース(OC)又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0029】
本発明において、酸化(再生)セルロースは、カルボン酸基(-COOH)を有する酸化(再生)セルロースを意味する。一実施形態では、酸化(再生)セルロース内のカルボン酸基の量(即ち、酸化度)は、13重量%~24重量%であってもよい。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、製造された繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布の癒着防止効果を強化するために、酸化度が13重量%~17重量%を有する酸化(再生)セルロースを使用することができる。
【0031】
本発明の別の実施形態によれば、製造された繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布の止血効果を強化するために、酸化度が17重量%超~24重量%(例えば、18重量%~24重量%)を有する酸化(再生)セルロースを使用することができる。
【0032】
酸化(再生)セルロースは、この分野の既知の方法、例えば、米国特許第7,279,177号、米国特許第7,645,874号などに開示された方法に従って製造することができるが、特に限定されない。
【0033】
本発明の繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布製造装置は、織物をカーディング(carding)する作業を行う。
【0034】
本明細書で使用される用語「カーディング」又は「カーディング工程」とは、織物を構成する繊維を切断(cutting)及びコーミング(combing)(「ブラッシング(brushing)」とも呼ばれる)して繊維ウェブを形成する手順を包含する意味を有する。
【0035】
そのようなカーディング工程を行うための本発明の装置は、供給ローラー;平棒が表面上に備えられたシリンダー;ドッファー;及びストリッパー;を含み、前記供給ローラー、平棒、シリンダー、ドッファー及びストリッパーのそれぞれの表面に歯(tooth)が形成され、織物が前記供給ローラーを介して前記シリンダーに供給され、前記平棒とシリンダーとの間を通過した後、前記ドッファー及びストリッパーを順次に通過するように動作する。
【0036】
前記供給ローラーは、織物をシリンダーに供給する役割を果たす。一実施形態では、本発明の装置には、このような供給ローラーが1個以上(例えば、1~3個)含まれていてもよい。
【0037】
前記供給ローラーを介して前記シリンダーに供給された織物は、平棒とシリンダーとの間を通過する間に切断およびコーミング(combing)される。具体的には、織物は、歯が形成された金属線で包まれたシリンダーとシリンダー上に備えられた平棒の歯との間に投入され、互いに異なる特性の2種類の歯の間で、短繊維に切断・スクラップされ、同時にコーミング(combing)される。
【0038】
一実施形態では、本発明の装置には、そのような平棒が備えられたシリンダーが1個以上(例えば、1~2個)含まれていてもよい。また、一実施形態では、本発明の装置には、シリンダー毎に平棒が1個以上(例えば、2~10個、又は3~8個)備えられていてもよい。
【0039】
前記ドッファーは、シリンダーの表面に分布しているスクラップされた織物をはがし、最終的にコーミング(combing)して繊維ウェブを形成する役割を果たす。一実施形態では、本発明の装置には、そのようなドッファーが1個以上(例えば、1~2個)含まれていてもよい。
【0040】
前記ストリッパーは、ドッファーを介して形成された繊維ウェブをあるローラーから別のローラーに移動させる役割を果たす。一実施形態では、本発明の装置には、そのようなストリッパーが1個以上(例えば、1~3個)含まれていてもよい。
【0041】
一実施形態では、上記した構成要素と同様に、本発明の装置は、一つ以上の追加の構成要素、例えば、Take-inローラー(take-in roller)及び/又は生成された繊維ウェブの移動のための追加のローラーを更に含むことができる。
【0042】
本発明の装置において、前記供給ローラー、平棒、シリンダー、ドッファー及びストリッパーのそれぞれの表面には歯(tooth)が形成されている。
【0043】
前記歯は、織物中に入り、織物の内部を解きほぐし、織物を構成する繊維を混合する役割を果たし、それらの高さ、角度、厚さ、個数などは、発明の目的を達成できる範囲内のそれぞれの構成要素に対して適宜選択することができる。
【0044】
一実施形態では、前記供給ローラーの表面に形成された歯は、高さ2.0~6.0mm(より具体的には3.0~5.0mm、又は3.2~5.0mm)、角度50~85°(より具体的には55~80°、60~85°、又は65~80°)、厚さ0.5~2.5mm(より具体的には1.0~2.0mm、又は1.0~1.8mm)、個数3~20個/インチ(より具体的には4~18個/インチ、又は5~15個/インチ)の1つ以上の条件を満たすことができ、前記条件をすべて満たすのが好ましい。
【0045】
一実施形態において、前記シリンダーの表面に形成された歯は、高さ2.0~6.0mm(より具体的には3.0~5.0mm、又は2.0~4.0mm)、角度50~85°(より具体的には55~80°、60~85°、又は65~80°)、厚さ0.5~2.5mm(より具体的には0.5~1.5mm、又は0.5~1.2mm)、個数3~20個/インチ(より具体的には4~18個/インチ、又は6~12個/インチ)の1つ以上の条件を満たすことができ、前記条件をすべて満たすのが好ましい。
【0046】
一実施形態では、前記平棒の表面に形成された歯は、高さ0.5~5.0mm(より具体的には0.5~4.5mm、又は0.5~4.0mm)、角度50~90°(より具体的には60~90°、又は70~90°)、厚さ0.5~2.5mm(より具体的には0.5~1.5mm、又は0.8~1.2mm)、個数3~20個/インチ(より具体的には4~15個/インチ、又は4~10個/インチ)の1つ以上の条件を満たすことができ、前記条件をすべて満たすのが好ましい。
【0047】
一実施形態において、前記ドッファーの表面に形成された歯は、高さ2.0~6.0mm(より具体的には2.5~5.5mm、又は3.0~5.0mm)、角度30~80°(より具体的には35~70°、又は40~65°)、厚さ0.5~2.5mm(より具体的には0.5~1.5mm、又は0.6~1.2mm)、個数3~20個/インチ(より具体的には5~18個/インチ、又は8~14個/インチ)の1つ以上の条件を満たすことができ、前記条件をすべて満たすのが好ましい。
【0048】
一実施形態では、前記ストリッパーの表面に形成された歯は、高さ2.0~6.0mm(より具体的には2.5~5.5mm、又は3.0~5.0mm)、角度30~80°(より具体的には35~70°、又は35~55°)、厚さ0.5~2.5mm(より具体的には0.5~1.5mm、又は0.8~1.5mm)、個数3~20個/インチ(より具体的には5~18個/インチ、又は8~14個/インチ)の1つ以上の条件を満たすことができ、前記条件をすべて満たすのが好ましい。
【0049】
本発明の装置を使用して繊維ウェブを製造する際に、供給ローラーの速度、シリンダーの速度およびドッファーの速度の相互作用は、製造される繊維ウェブの物理的特性に影響を及ぼす。
【0050】
織物は、供給ローラーを経由してシリンダーに運ばれ、シリンダーと平棒を通過した織物は、短繊維状にスクラップされてコーミングされ、ドッファーの作用領域に到達する。ドッファーの表面の速度は、シリンダーの表面よりも比較的遅いため(通常1/30以下)、シリンダーと平棒から出てくる全ての織物は短繊維状にスクラップされてコーミングされ、最終的に、シリンダーとドッファーとの間でコーミングされる。スクラップされない織物は、シリンダーに戻り、ドッファー内の織物はコーミングされた後、ウェブとして容易に分離できる状態になる。即ち、シリンダー内の薄い層は、ドッファー内で厚い層になり、それを凝縮して厚い繊維ウェブを製造することができる。
【0051】
一実施形態では、シリンダーの速度が速い場合、シリンダーと平棒の歯によるスクラップ及びコーミング(combing)の作用が良好であり、カーディングがより効果的に行われる反面、ドープ作用効率は低い。また、ドッファーの速度の増減に応じて、ドッファーに集まる繊維層が厚くなったり薄くなったりすることがある。その結果、ドッファーでスクラップされた織物がシリンダーのコーミング作用を受けるまでの時間が増加または減少される。ドッファー速度が速すぎると、コーミング時間が短くなり、ウェブの品質が低下し、逆に、ドッファー速度が遅すぎると、ドープ効率が低くなる。
【0052】
一実施形態では、本発明の装置を使用した繊維ウェブの製造において、前記供給ローラー速度は0.1~1mpm(メートル/分)であり、より具体的には0.2~0.8mpmであり、更に具体的には0.3~0.7mpmであってもよい。
【0053】
一実施形態では、本発明の装置を使用した繊維ウェブの製造において、前記シリンダー速度は100~350rpm(毎分回転数)であり、より具体的には150~300rpmであり、更に具体的には170~230rpmであってもよい。
【0054】
一実施形態では、本発明の装置を使用した繊維ウェブの製造において、前記ドッファー速度は2~4mpm(メートル/分)であり、より具体的には2.5~4mpmであり、更に具体的には2.8~3.8mpmであってもよい。
【0055】
一実施形態では、本発明の装置を使用した繊維ウェブの製造において、好ましくは供給ローラー速度、シリンダー速度およびドッファー速度の2つ以上、より好ましくはそれらのすべてが、それぞれ前記した範囲内であってもよい。
【0056】
本発明による繊維ウェブの製造方法は、織物を前記本発明の装置に通過させて繊維ウェブに加工するステップを含む。即ち、本発明の繊維ウェブの製造方法において、織物は、前記装置内で切断およびコーミングされ、繊維ウェブの形態で加工(即ち、カーディング)される。
【0057】
一実施形態では、本発明の繊維ウェブの製造方法は、前記加工ステップの後に繊維ウェブをバット(batt)に層状化するステップを更に含むことができる。この層状化ステップでは、複数(例えば、5~15個、5~14個、5~13個、5~12個、又は5~11個)の繊維ウェブを層状に積み重ねて繊維ウェブバット(batt)を形成することができる。
【0058】
一実施形態において、前記本発明の方法に従って製造される繊維ウェブの密度は、好ましくは10g/m2~60g/m2、より好ましくは15g/m2~30g/m2である。繊維ウェブの密度が前記レベルよりも低い場合、ウェブ上での結束力が弱く、一定の形状を維持できないという問題がある可能性がある。逆に、繊維ウェブの密度が前記レベルよりも高い場合、嵩張りすぎて、ウェブ積層時にウェブ分離が発生できるという問題が生じる可能性がある。
【0059】
本発明によるフィブリル状繊維集合体の製造方法は、前記のように製造された複数の繊維ウェブをカレンダー(calendaring)加工するというステップ;を含む。
【0060】
前記カレンダー加工ステップの装置および運転条件は特に制限されず、本発明の目的を達成することができる範囲内で、既知の装置および運転条件から適切なものを選択することができる。
【0061】
一実施形態において、前記本発明の方法に従って製造されるフィブリル状繊維集合体の密度は、好ましくは100g/m2~600g/m2、より好ましくは150g/m2~300g/m2である。フィブリル状繊維集合体の密度が前記レベルよりも低い場合、止血効果が不十分になる可能性があり、逆にフィブリル状繊維集合体の密度が前記レベルよりも高い場合、結束力が低下し、使用中にウェブの分離が生じる可能性がある。
【0062】
本発明による不織布の製造方法は、前記のように製造された複数の繊維ウェブを非織り方法で結合するステップ;及び前記結合された複数の繊維ウェブをカレンダー加工するステップ;を含む。
【0063】
非織り方法で繊維ウェブを結合する方法としては、当業界で公知された方法、例えば、ニードルパンチ法、熱接着法、メルトブロー法、スパンレース法、ストレッチボンド法などを使用できるが、特にそれらに限定されない。一実施形態では、ニードルパンチによって複数の繊維ウェブを結合させる。ここでは、複数の繊維ウェブ(又は繊維ウェブバット)がニードルパンチ工程に供給され、ニードルパンチ機械を通過するとき、とげのある針のベッド(bed)がそれを貫通し、とげのある針が繊維を三次元的に絡ませ、構造密度を増加させる。
【0064】
次に、非織り方法で結合された複数の繊維ウェブは、カレンダー加工ステップにかけられる。前記カレンダー加工ステップの装置および運転条件は特に制限されず、本発明の目的を達成することができる範囲内で、既知の装置および運転条件から適切なものを選択することができる。
【0065】
一実施形態において、前記本発明の方法に従って製造される不織布の密度は、好ましくは50g/m2~600g/m2、より好ましくは80g/m2~300g/m2である。不織布の密度が前記レベルよりも低い場合、止血効果が不十分である可能性があり、逆に不織布の密度が前記レベルよりも高い場合、結束力が低下し、使用中にウェブの分離が生じる可能性がある。
【0066】
本発明に従って製造される繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体および/または不織布は、止血剤または癒着防止剤として適切に使用することができ、特に、止血剤として適切に使用することができる。
【0067】
従って、本発明の別の態様によれば、本発明による繊維ウェブ、フィブリル状繊維集合体または不織布を含む止血剤または癒着防止剤が提供される。
【0068】
本発明は、以下の実施例を参照して詳細に説明される。しかし、実施例は、本発明を説明するためだけのものであり、本発明はこれら実施例によっていかなる方法でも限定されない。
【実施例】
【0069】
実施例1
引張強度10kgfの織られた再生セルロースを二酸化窒素(酸化度:19%)で酸化乾燥した。次に、織られた酸化再生セルロース(ORC)が本発明の装置に供給され、シート形態の繊維ウェブに加工された。加工中の供給ローラー速度、シリンダー速度およびドッファー速度の条件は、下記表1のとおりであり、装置内の歯は、下記表2の規格を満たした。製造された単層繊維ウェブ密度は、約15g/m2と測定された。次に、フィブリル状繊維集合体は、下記表3に示される条件下で、カレンダー加工(calendaring)ステップを介して前記製造された繊維ウェブから形成された。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
実施例2
実施例1で得られた織られた酸化再生セルロース(ORC)は、実施例1で使用された装置に供給され、シート形態の繊維ウェブに加工された。加工中の供給ローラー速度、シリンダー速度およびドッファー速度条件は、下記表4に示されるとおりである。次に、製造された複数の繊維ウェブをニードルパンチで結合させた。ニードルパンチの条件は下記表5に示されるとおりである。次に、前記表3に示される条件のカレンダー加工(calendaring)ステップによって不織布を形成した。製造された不織布の密度は、約85g/m2と測定された。
【0074】
【0075】
【0076】
実施例3
実施例1で製造されたフィブリル状繊維集合体の止血効果を評価するために、腎摘出ラットを用いてモデル小動物試験を行った。その結果、出血が止まるまでの失血量(平均失血量)は下記表6のようになった。表6において、対照は腎部分切除後にラットを放置することによる自然止血の場合であり、サンプル1は、腎摘出後にフィブリル状繊維集合体を付着させることによる止血の場合である。
【0077】
【0078】
表6の結果からわかるように、本発明によるフィブリル状繊維集合体は優れた止血効果を示す。
【0079】
実施例4
実施例2で製造された不織布の止血効果を評価するために、腎臓摘出ラットを用いてモデル小動物試験を行った。その結果、出血が止まるまでの失血量(平均失血量)は下記表7のようになった。表7において、対照は腎部分切除後にラットを放置することによる自然止血の場合であり、サンプル2は腎摘出後に不織布を付着させることによる止血の場合である。
【0080】
【0081】
表7の結果からわかるように、本発明による不織布は優れた止血効果を示す。
【0082】
比較例1
引張強度4kgfの織られた再生セルロースを二酸化窒素(酸化度:19%)で酸化乾燥した。次に、織られた酸化再生セルロース(ORC)が、実施例1で使用された装置に供給され、シート形態の繊維ウェブに加工された。加工中の供給ローラー速度、シリンダー速度およびドッファー速度条件は、前記表1と同様である。次に、前記表3に示される条件下で、カレンダー加工(calendaring)ステップを通じて前記製造された繊維ウェブからフィブリル状繊維集合体を形成した。
前記製造されたフィブリル状繊維集合体の止血効果を評価するために、実施例3と同様の方法でモデル小動物試験を行った。その結果、出血が止まるまでの失血量(平均失血量)は下記表8に示されたとおりである。
【0083】
【0084】
表6及び表8の結果からわかるように、引張強度10kgfを有する織物から製造された実施例1のフィブリル状繊維集合体は、引張強度4kgfを有する織物から製造された比較例1のフィブリル状繊維集合体よりも著しく優れた止血効果を示した。
【0085】
比較例2
比較例1と同様に、引張強度21kgfの再生セルロースを用いてフィブリル状繊維集合体の製造を試みたが、加工中に切断が容易ではなく、ウェブが生成されず、未整列の部分が発生して、製造できなかった。
【符号の説明】
【0086】
1: 供給ローラー
2: シリンダー
3: ドッファー
4: 平棒
5: ストリッパー