(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂混合物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20240207BHJP
C08G 63/137 20060101ALI20240207BHJP
C08G 63/16 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C08L67/02
C08G63/137
C08G63/16
(21)【出願番号】P 2021570811
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(86)【国際出願番号】 KR2020006925
(87)【国際公開番号】W WO2021040194
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-01-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0105176
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0062919
(32)【優先日】2020-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513193923
【氏名又は名称】エスケー ケミカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォン ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヨジン
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-323107(JP,A)
【文献】特表2002-512289(JP,A)
【文献】特開2014-525965(JP,A)
【文献】特開2017-170902(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0233525(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0000299(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0044867(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0077219(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/02
C08G 63/137
C08G 63/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート;および
ジカルボン酸あるいはその誘導体とエチレングリコールおよびイソソルビドを含む共単量体を含むジオールが重合されて、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有する第1ポリエステル樹脂;および
ジカルボン酸あるいはその誘導体とシクロヘキサンジメタノールを含むジオールが重合されて、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびシクロヘキサンジメタノールを含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有する第2ポリエステル樹脂を含む、ポリエステル樹脂混合物。
【請求項2】
前記ポリエチレンテレフタレートは、バージンポリエチレンテレフタレート、リサイクルポリエチレンテレフタレートまたはこれらの混合物である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項3】
前記リサイクルポリエチレンテレフタレートは、固有粘度が0.6~0.8dl/gである、請求項2に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項4】
前記リサイクルポリエチレンテレフタレートは、95モル%以上のテレフタル酸から誘導された酸部分および95モル%以上のエチレングリコールから誘導されたジオール部分を含む、請求項2に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項5】
前記第1ポリエステル樹脂は、ジオールから誘導されたジオール部分全体に対してイソソルビドを含む共単量体から誘導されたジオール部分を5~20モル%で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項6】
前記第1ポリエステル樹脂は、ジオールから誘導されたジオール部分全体に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分を0.1~15モル%で含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項7】
前記共単量体は、シクロヘキサンジメタノールをさらに含む、請求項5に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項8】
前記第1ポリエステル樹脂は、イソソルビドから誘導されたジオール部分とシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を1:2~5モルの比率で含む、請求項7に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項9】
前記第2ポリエステル樹脂は、ジオール部分全体に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を0.1モル%以上50モル%未満含む第3ポリエステル樹脂;およびジオール部分全体に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を50モル%以上含む第4ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項10】
前記ポリエステル樹脂混合物は、全体固形分に対して5~50重量%のポリエチレンテレフタレート、5~90重量%の第1ポリエステル樹脂および1~80重量%の第2ポリエステル樹脂を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂混合物は、全体固形分に対して5~50重量%のポリエチレンテレフタレート、5~90重量%の第1ポリエステル樹脂、1~80重量%の第3ポリエステル樹脂および1~80重量%の第4ポリエステル樹脂を含む、請求項9に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項12】
前記ポリエステル樹脂混合物の示差走査熱量装置を用いて1次スキャン時に測定した融点が225~245℃である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【請求項13】
前記ポリエステル樹脂混合物は、前記樹脂混合物から得られた厚さ6mmの試験片に対してASTM D1003-97により測定されたヘイズが5%以下である、請求項1に記載のポリエステル樹脂混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル樹脂混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近来、海洋汚染の約70%を占める廃プラスチックは深刻な社会問題として浮上し、これにより、各国は使い捨てプラスチックの使用を規制すると同時に廃プラスチックの再利用を図っている。現在、廃プラスチックは、廃プラスチックを回収、粉砕および洗浄した後、溶融押出して再ペレット化した後、これを原料として用いて再利用されている。しかし、廃プラスチック中の異物によって良好な品質の製品を提供することが極めて難しい。したがって、廃プラスチックから良好な品質のプラスチック製品を生産するための研究が切実なのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、透明性および加工性に優れたポリエステル樹脂混合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート;およびジカルボン酸あるいはその誘導体とエチレングリコールおよびイソソルビドを含む共単量体を含むジオールが重合されて、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有する第1ポリエステル樹脂;およびジカルボン酸あるいはその誘導体とシクロヘキサンジメタノールを含むジオールが重合されて、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびシクロヘキサンジメタノールを含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有する第2ポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂混合物が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、バージンポリエチレンテレフタレートだけでなく、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでいても優れた混和性を示し、高透明性の成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の具体的な実施形態によるポリエステル樹脂混合物などについて説明する。
【0008】
本明細書において、特別な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定しようとする意図で使用されない。そして、明確に反対の意味が記載されていない限り、単数形態は複数形態を含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート;およびジカルボン酸あるいはその誘導体とエチレングリコールおよびイソソルビドを含む共単量体を含むジオールが重合されて、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびエチレングリコールおよび共単量体を含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有する第1ポリエステル樹脂;およびジカルボン酸あるいはその誘導体とシクロヘキサンジメタノールを含むジオールが重合されて、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分およびシクロヘキサンジメタノールを含むジオールから誘導されたジオール部分が繰り返される構造を有する第2ポリエステル樹脂を含むポリエステル樹脂混合物が提供される。
【0010】
本明細書において、ジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールが重合されて、ジカルボン酸あるいはその誘導体から誘導された酸部分(acid moiety)およびジオールから誘導されたジオール部分(diol moiety)が繰り返される構造を有し、このとき、前記ジオールにイソソルビドを含むジオールを使用してイソソルビドから誘導されたジオール部分を含む場合第1ポリエステル樹脂と称し、前記ジオールにイソソルビドを使用せず、シクロヘキサンジメタノールを含むジオールを使用してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含む場合第2ポリエステル樹脂と称する。
【0011】
本明細書において、用語「ジカルボン酸あるいはその誘導体」は、ジカルボン酸とジカルボン酸の誘導体の中から選択される1種以上の化合物を意味する。そして、「ジカルボン酸誘導体」は、ジカルボン酸のアルキルエステル(モノメチル、モノエチル、ジメチル、ジエチルまたはジブチルエステルなど炭素数1~4の低級アルキルエステル)あるいはジカルボン酸無水物を意味する。したがって、例えば、テレフタル酸あるいはその誘導体は、テレフタル酸;モノアルキルあるいはジアルキルテレフタレート;およびテレフタル酸無水物のようにジオールと反応してテレフタロイル部分(terephthaloyl moiety)を形成する化合物を通称する。
【0012】
本明細書において、酸部分(acid moiety)およびジオール部分(diol moiety)は、ジカルボン酸あるいはその誘導体およびジオールが重合され、これらから水素、ヒドロキシ基またはアルコキシ基が除去されて残った残基(residue)をいう。
【0013】
前記ポリエチレンテレフタレートは、安い価格および優れた物理/化学的性質によって商業的に広く使用されているが、結晶性が高くて加工時に高い温度を要求し、結晶化速度が速くて透明な製品を提供するのに限界がある。したがって、ポリエチレンテレフタレートにシクロヘキサンジメタノールなどの共単量体から誘導されたジオール部分を含むポリエステル樹脂を配合する技術が使用されていたが、このようなポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレートと構造上の差によってトランスエステル化反応レベル(trans-esterification level)が低くて優れた混和性を示すことができない。
【0014】
そこで、このような課題を解決するために鋭意研究の結果、ポリエチレンテレフタレート、およびシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含む第2ポリエステル樹脂にイソソルビドから誘導されたジオール部分を含む第1ポリエステル樹脂を配合すれば、トランスエステル化反応レベルが向上して透明で加工性に優れたポリエステル樹脂混合物を提供することができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
以下、このようなポリエステル樹脂混合物について詳しく説明する。
【0016】
本発明の一実施形態による第1ポリエステル樹脂は、汎用の多様なポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂と配合され、それらの透明性および加工性を向上させることができる。
【0017】
これにより、前記ポリエチレンテレフタレートの種類は特に限定されない。非制限的な例として、前記ポリエチレンテレフタレートは、ジカルボン酸あるいはその誘導体とジオールが重合されて製造されたもので、前記ジカルボン酸あるいはその誘導体は、主にテレフタル酸あるいはその誘導体であってもよく、前記ジオールは、主にエチレングリコールであってもよい。
【0018】
前記ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸あるいはその誘導体以外に他の共単量体から誘導された酸部分を含み得る。具体的には、前記共単量体は、炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体および炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体からなる群より選択される1種以上であってもよい。前記炭素数8~14の芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体としては、イソフタル酸、ジメチルイソフタレート、フタル酸、ジメチルフタレート、フタル酸無水物、2,6-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、ジメチル2,6-ナフタレンジカルボキシレートなどのジアルキルナフタレンジカルボキシレート、ジフェニルジカルボン酸などポリエステル樹脂の製造に通常使用される芳香族ジカルボン酸あるいはその誘導体が含まれる。前記炭素数4~12の脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体としては、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などのシクロヘキサンジカルボン酸、ジメチル1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート、ジメチル1,3-シクロヘキサンジカルボキシレートなどのシクロヘキサンジカルボキシレート、セバシン酸、コハク酸、イソデシルコハク酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、アジピン酸、グルタル酸、アゼライン酸などポリエステル樹脂の製造に通常使用される線状、分岐状または環状脂肪族ジカルボン酸あるいはその誘導体が含まれる。前記共単量体は、全体ジカルボン酸あるいはその誘導体に対して0~50モル%、0モル%~30モル%、0~20モル%あるいは0~10モル%で使用される。
【0019】
前記ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコール以外に他の共単量体から誘導されたジオール部分を含み得る。具体的には、前記共単量体は、炭素数8~40あるいは炭素数8~33の芳香族ジオール、炭素数2~20あるいは炭素数2~12の脂肪族ジオール、あるいはこれらの混合物などであってもよい。前記芳香族ジオールの具体例としては、ポリオキシエチレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、またはポリオキシプロピレン-(n)-ポリオキシエチレン-(n)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加されたビスフェノールA誘導体(ここで、nは、ポリオキシエチレンまたはポリオキシプロピレンユニット(unit)の数(number)を示し、例えば0~10である。)が挙げられ、前記脂肪族ジオールの具体例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール(1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオールなど)、1,4-ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール(1,6-ヘキサンジオールなど)、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、テトラメチルシクロブタンジオールなどの線状、分岐状または環状脂肪族ジオールが挙げられる。前記共単量体は、ジオール全体に対して0~50モル%、0モル%~30モル%、0~20モル%あるいは0~10モル%で使用される。
【0020】
本発明の一実施形態による第1ポリエステル樹脂は、バージン(virgin)ポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂の混合物だけでなく、リサイクル(recycled)ポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂の混合物の低透明度などの劣悪な物性も非常に優れた水準に補完することができる。
【0021】
リサイクルポリエチレンテレフタレートは使用された後、回収されたポリエチレンテレフタレートあるいはこれから得られたものをすべて含む意味で理解される。具体的には、前記リサイクルポリエチレンテレフタレートは、回収された廃プラスチックを一定の基準により分離し、粉砕および洗浄した後、溶融押出して再ペレット化したものであるか、あるいは回収された廃プラスチックを単量体水準に解重合(depolymerization)した後、これを再重合して得られたものであってもよい。このようなリサイクルポリエチレンテレフタレートは加工方法により再ペレット化した後、結晶化して使用されるか、あるいは結晶化した後、固体状態で追加的に重縮合された後に使用される。
【0022】
廃プラスチックを単量体水準に解重合して再重合したリサイクルポリエチレンテレフタレートは、バージンポリエチレンテレフタレートと容易に区別がつかないほど良好な物性を示すことができる。しかし、廃プラスチックを再ペレット化したものは、バージンポリエチレンテレフタレートに比べて透明度が低下し、結晶化速度が非常に速くてリサイクルポリエチレンテレフタレート単独であるいはバージンポリエチレンテレフタレートと混合しても、透明かつ適切な水準の厚さを有する容器を製作することは難しい。
【0023】
しかし、一実施形態による第1ポリエステル樹脂は、このようなリサイクルポリエチレンテレフタレートと第2ポリエステル樹脂の混合物とも優れた混和性を示し、高透明性および優れた加工性のポリエステル樹脂混合物を提供することができる。特に、一実施形態による第1ポリエステル樹脂は、リサイクルポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂と混和性が非常に優れているので、その他の添加剤なしでも優れた品質の成形品を提供することができる。
【0024】
これにより、前記ポリエチレンテレフタレートとしては、バージン(virgin)ポリエチレンテレフタレート、リサイクル(recycled)ポリエチレンテレフタレートまたはこれらの混合物を使用することができる。
【0025】
特に、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、リサイクルポリエチレンテレフタレートの中でも固有粘度が0.6~0.8dl/gである樹脂を含み、高透明性および優れた加工性を示すことができる。
【0026】
また、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、リサイクルポリエチレンテレフタレートの中でも、95モル%以上のテレフタル酸から誘導された酸部分および95モル%以上のエチレングリコールから誘導されたジオール部分を含む樹脂を含み、高透明性および優れた加工性を示すことができる。前記樹脂は、テレフタル酸とエチレングリコールで製造されるホモポリマー(homopolymer)であってもよいので、テレフタル酸から誘導された酸部分およびエチレングリコールから誘導されたジオール部分の上限は100モル%であり、テレフタル酸から誘導された酸部分およびエチレングリコールから誘導されたジオール部分が100モル%未満の場合、5モル%以内で上述した共単量体から誘導された酸部分あるいはジオール部分を含み得る。その中でも、5モル%以内のイソフタル酸から誘導された酸部分および/または5モル%以内のシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含み得る。
【0027】
前記ポリエステル樹脂混合物は、結晶化温度が130℃~160℃のリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、優れた加工性を示すことができる。
【0028】
前記ポリエステル樹脂混合物は、融点が250℃以上のリサイクルポリエチレンテレフタレートを含み、加工に容易な融点を有するポリエステル樹脂混合物を提供することができる。
【0029】
前記一実施形態による第1ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂と混合されて高透明性の成形品を提供するために、高透明度を有するのが有利である。具体的には、前記ポリエステル樹脂は、前記樹脂から得た厚さ6mmの試験片に対して、ASTM D1003-97により測定されたヘイズが5%未満、4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.5%以下、あるいは2%以下であってもよい。理論的には、ヘイズは0%であることが最も好ましいので、下限は0%以上であってもよい。
【0030】
前記第1ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂と混合されて優れた加工性を示すために、180℃で100分間結晶化させた後、測定した融点が210~245℃、220~240℃あるいは230~235℃であってもよい。
【0031】
前記第1ポリエステル樹脂は、結晶性および非晶性の性質をいずれも有し、置かれた環境に応じて結晶性あるいは非晶性を示すことができる。前記第1ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂混合物の製造、加工または成形工程条件で結晶性を示す結晶性樹脂であってもよい。しかし、これに限定されず、第1ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂と混合されて目的とする物性を実現できるものであれば非晶性樹脂であってもよい。
【0032】
一例として、前記第1ポリエステル樹脂は、ポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂と混合されて優れた加工性を示すために、結晶性樹脂であってもよく、半結晶化時間が7分~95分、7~80分、7~70分、7~60分、10~95分、30~95分、40~95分、10~80分、30~70分、30~60分あるいは40分~60分であってもよい。
【0033】
前記第1ポリエステル樹脂は、エチレングリコールおよび共単量体を含むジオールから誘導されたジオール部分を含み、前記共単量体から誘導されたジオール部分がジオール部分全体に対して5~20モル%であり、前記共単量体は、イソソルビド(isosorbide、1,4:3,6-dianhydroglucitol)を含むことによって、上述した特性を示すことができる。
【0034】
万一、共単量体から誘導されたジオール部分が5モル%未満であれば、ポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂の加工性を適切な水準に向上させることが難しくなり、共単量体から誘導されたジオール部分が20モル%を超えると、前記第1ポリエステル樹脂が非結晶性を示すので加工あるいは成形工程で容易に融着することができ、ポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂との混和性(miscibility)が減少することがある。
【0035】
前記第1ポリエステル樹脂は、リサイクルポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂とより優れた混和性を示すために、共単量体から誘導されたジオール部分を、ジオール部分全体に対して5~15モル%、7~15モル%、8~15モル%、10~15モル%、9~12モル%あるいは10~12モル%で含み得る。
【0036】
前記第1ポリエステル樹脂は、共単量体から誘導されたジオール部分として必須にイソソルビドから誘導されたジオール部分を含むが、このような構造によってポリエチレンテレフタレートと第2ポリエステル樹脂の混和性を改善することができる。
【0037】
前記第1ポリエステル樹脂は、イソソルビドから誘導されたジオール部分をジオールから誘導されたジオール部分全体に対して0.1~15モル%の範囲で含むことができ、特に0.1~12モル%、3~12モル%、5~12モル%あるいは7~11モル%で含み、上述した特性を極大化させることができる。
【0038】
また、前記エチレングリコール以外の共単量体は、イソソルビド以外にシクロヘキサンジメタノールをさらに含み得る。前記シクロヘキサンジメタノールは、ジオール全体に対して0.1~15モル%で使用され、上述した物性を有する第1ポリエステル樹脂を提供することができる。
【0039】
より優れた物性を担保するために、共単量体としてイソソルビドとシクロヘキサンジメタノールを使用する場合、1:2~5モルあるいは1:2~4モルの比率で使用することができる。
【0040】
前記エチレングリコール以外の共単量体としては、上述した単量体以外にポリエステル樹脂の製造に通常使用されるジオールが含まれる。このようなジオールの具体例としては、上述したポリエチレンテレフタレートに使用できると挙げられたジオールなどであってもよい。しかし、前記エチレングリコール以外の共単量体は、イソソルビドであるか、あるいはイソソルビドとシクロヘキサンジメタノールとを組み合わせたものが、上述した物性を満たすのに有利である。前記共単量体にイソソルビドおよびシクロヘキサンジメタノール以外の他のジオールが含まれる場合、その含有量は、共単量体全体に対して10モル%以下、5モル%以下、あるいは2モル%以下であってもよい。
【0041】
前記第1ポリエステル樹脂もまた、上述したポリエチレンテレフタレートと同様に、これを製造するためのジカルボン酸あるいはその誘導体が主にテレフタル酸あるいはその誘導体であってもよいし、テレフタル酸あるいはその誘導体以外の共単量体を含み得る。前記共単量体の種類および使用含有量は、上述したポリエチレンテレフタレートに使用できる共単量体の種類と使用含有量を参照して調節可能である。
【0042】
前記一実施形態による第2ポリエステル樹脂は、シクロヘキサンジメタノールを含むジオールから誘導されたジオール部分を含む。前記一実施形態による第1ポリエステル樹脂は、広い範囲のシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含む多様な第2ポリエステル樹脂の混和性を向上させて加工性に優れたポリエステル樹脂混合物を提供することができる。したがって、前記第2ポリエステル樹脂中のシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分は、ジオール部分全体に対して0.1~100モル%であり、残りのジオール部分は、エチレングリコールから誘導されたジオール部分であってもよい。しかし、これに限定されず、ポリエステル樹脂の製造に通常使用されるジオールから誘導されたジオール部分が含まれる。このようなジオールの具体例としては、上述したポリエチレンテレフタレートに使用できると挙げられたジオールなどであってもよい。前記第2ポリエステル樹脂中にシクロヘキサンジメタノールおよびエチレングリコール以外の他のジオールから誘導されたジオール部分が含まれる場合、その含有量は、ジオール部分全体に対して10モル%以下、5モル%以下、あるいは2モル%以下であってもよい。
【0043】
また、通常ジカルボン酸あるいはその誘導体とエチレングリコールを含むジオールを重合して製造されたポリエステル樹脂には、2個のエチレングリコールが反応して形成されたジエチレングリコールがジカルボン酸あるいはその誘導体と反応して導入されたジエチレングリコールから誘導されたジオール部分が含まれる。したがって、特に説明がない限り、エチレングリコールから誘導されたジオール部分は、ジエチレングリコールから誘導されたジオール部分も含む意味で理解される。
【0044】
前記第2ポリエステル樹脂もまた、上述したポリエチレンテレフタレートと同様に、これを製造するためのジカルボン酸あるいはその誘導体が主にテレフタル酸あるいはその誘導体であってもよいし、テレフタル酸あるいはその誘導体以外の共単量体を含み得る。前記共単量体の種類および使用含有量は、上述したポリエチレンテレフタレートに使用できる共単量体の種類と使用含有量を参照して調節可能である。
【0045】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は第2ポリエステル樹脂で、互いに異なる含有量のシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含む2種以上のポリエステル樹脂を含み得る。
【0046】
一例として、前記ポリエステル樹脂混合物は、ジオール部分全体に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を0.1モル%以上50モル%未満含む第3ポリエステル樹脂およびジオール部分全体に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を50モル%以上含む第4ポリエステル樹脂を含み得る。
【0047】
前記第3ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂混合物の透明性を向上させることができ、ジオール部分全体に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を40モル%以下、35モル%以下、31モル%以下、あるいは30モル%以下であり、0.1モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、15モル%以上、20モル%以上あるいは25モル%以上含み得る。
【0048】
また、前記第4ポリエステル樹脂は、ジオール部分全体に対してシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を50モル%以上あるいは55モル%以上であり、100モル%以下、あるいは60モル%以下含み得る。
【0049】
前記第1ポリエステル樹脂は、第2ポリエステル樹脂中に含まれているシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分の含有量にこだわらず、ポリエチレンテレフタレートと第2ポリエステル樹脂の混和性を向上させることができるので、前記ポリエステル樹脂混合物は、目的とする物性を実現するために多様な第2ポリエステル樹脂を含み得る。
【0050】
一方、前記第1および第2ポリエステル樹脂は、上述したジカルボン酸あるいはその誘導体と上述したジオールのエステル化反応またはエステル交換反応段階;および前記エステル化またはエステル交換反応生成物の重縮合反応段階により製造される。以下、第1および第2ポリエステル樹脂の製造方法の一例として、ポリエステル樹脂の製造方法について詳しく説明する。
【0051】
前記エステル化反応またはエステル交換反応では、触媒を使用することが使用できる。このような触媒としては、ナトリウム、マグネシウムのメチラート(methylate);Zn、Cd、Mn、Co、Ca、Baなどの酢酸塩、ホウ酸塩、脂肪酸塩、炭酸塩;金属Mg;Pb、Zn、Sb、Geなどの酸化物などが挙げられる。
【0052】
前記エステル化反応またはエステル交換反応は、バッチ(batch)式、半-連続式または連続式で行われ、それぞれの原料は別途に投入されてもよいが、ジオールにジカルボン酸あるいはその誘導体を混合したスラリー形態で投入することが好ましい。
【0053】
前記エステル化反応またはエステル交換反応開始前のスラリーに、あるいは反応完了後の生成物に、重縮合触媒、安定剤、呈色剤、結晶化剤、酸化防止剤、分岐化剤(branching agent)などを添加することができる。
【0054】
しかし、上述した添加剤の投入時期がこれに限定されるものではなく、ポリエステル樹脂の製造段階中の任意の時点で投入されてもよい。前記重縮合触媒としては、通常のチタン、ゲルマニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ系化合物などを1つ以上適切に選択して使用することができる。有用なチタン系触媒としては、テトラエチルチタネート、アセチルトリプロピルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、ポリブチルチタネート、2-エチルヘキシルチタネート、オクチレングリコールチタネート、ラクテートチタネート、トリエタノールアミンチタネート、アセチルアセトネートチタネート、エチルアセトアセチックエステルチタネート、イソステアリルチタネート、チタニウムジオキシド、チタニウムジオキシド/シリコンジオキシド共重合体、チタニウムジオキシド/ジルコニウムジオキシド共重合体などが挙げられる。また、有用なゲルマニウム系触媒としては、ゲルマニウムジオキシドおよびこれを用いた共重合体などがある。前記安定剤としては、一般に、リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェートなどのリン系化合物を使用することができ、その添加量はリン元素量を基準として最終ポリマー(ポリエステル樹脂)の重量に対して10~200ppmである。前記安定剤の添加量が10ppm未満であれば、安定化効果が不十分で、ポリマーの色が黄色に変わる恐れがあり、200ppmを超えると、所望する高重合度のポリマーが得られない恐れがある。さらに、ポリマーの色を向上させるために添加される呈色剤としては、コバルトアセテート、コバルトプロピオネートなどの通常の呈色剤が挙げられ、その添加量は、コバルト元素量を基準として最終ポリマー(ポリエステル樹脂)の重量に対して10~200ppmである。必要に応じて、有機化合物呈色剤として、アントラキノン(Anthraquionone)系化合物、ペリノン(Perinone)系化合物、アゾ(Azo)系化合物、メチン(Methine)系化合物などを使用することができ、市販の製品としては、Clarient社製のPolysynthren Blue RLSあるいはClarient社製のSolvaperm Red BBなどのトナーを使用することができる。前記有機化合物呈色剤の添加量は、最終ポリマーの重量に対して0~50ppmに調節可能である。万一、呈色剤を上記の範囲外の含有量で使用すると、ポリエステル樹脂の黄色が十分に薄れないか、物性を低下させることがある。
【0055】
前記結晶化剤としては、結晶核剤、紫外線吸収剤、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。前記酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。前記分岐化剤としては、3以上の官能基を有する通常の分岐化剤であって、例えば、無水トリメリット酸(trimellitic anhydride)、トリメチロールプロパン(trimethylol propane)、トリメリット酸(trimellitic acid)、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0056】
前記エステル化反応は、200~300℃あるいは230~280℃の温度、および0~10.0kgf/cm2(0~7355.6mmHg)、0~5.0kgf/cm2(0~3677.8mmHg)あるいは0.1~3.0kgf/cm2(73.6~2206.7mmHg)の圧力条件で行われる。そして、前記エステル交換反応は、150~270℃あるいは180~260℃の温度、および0~5.0kgf/cm2(0~3677.8mmHg)あるいは0.1~3.0kgf/cm2(73.6~2206.7mmHg)の圧力条件で行われる。ここで、括弧の外に記載された圧力は、ゲージ圧力を意味し(kgf/cm2の単位で記載)、括弧内に記載された圧力は、絶対圧力を意味する(mmHgの単位で記載)。
【0057】
前記反応温度および圧力が上記の範囲を外れる場合、ポリエステル樹脂の物性が低下する恐れがある。前記反応時間(平均滞留時間)は、通常1~24時間あるいは2~8時間であり、反応温度、圧力、使用するジカルボン酸あるいはその誘導体に対するジオールのモル比に応じて異なる。
【0058】
前記エステル化またはエステル交換反応により得られた生成物は、重縮合反応によってより高い重合度のポリエステル樹脂に製造される。一般に、前記重縮合反応は、150~300℃、200~290℃あるいは260~290℃の温度、および400~0.01mmHg、100~0.05mmHgあるいは10~0.1mmHgの減圧条件で行われる。ここで、圧力は、絶対圧力の範囲を意味する。前記400~0.01mmHgの減圧条件は、重縮合反応の副産物と未反応物などを除去するためである。したがって、前記減圧条件が上記の範囲を外れる場合、副産物および未反応物の除去が不十分である恐れがある。また、前記重縮合反応温度が上記の範囲を外れる場合、ポリエステル樹脂の物性が低下する恐れがある。前記重縮合反応は、所望の固有粘度に到達するまでに必要な時間、例えば、平均滞留時間1~24時間行われる。
【0059】
重縮合反応後のポリマーの固有粘度は、0.30~1.0dl/gであることが好ましい。固有粘度が0.30dl/g未満の場合、固相反応での反応速度が顕著に低くなり、固有粘度が1.0dl/gを超える場合、溶融重合中の溶融物の粘度が上昇することにより、撹拌機と反応器との間での剪断応力(Shear Stress)によってポリマーが変色する可能性が増加し、アセトアルデヒドなどの副反応物質も増加する。
【0060】
前記ポリエステル樹脂は、必要に応じて、重縮合反応後に固相反応をさらに行うことにより、さらに高い重合度を有する。
【0061】
具体的には、重縮合反応により得られたポリマーを反応器の外部に吐出して粒子化する。粒子化する方法は、Strand状に押し出し、冷却液で固化後、カッターで切断するStrand cutting法またはダイホールを冷却液に浸漬して直接冷却液中に押し出し、カッターで切断するunderwater cutting法を使用することができる。一般に、Strand cutting法では、冷却液の温度を低く維持して、Strandがよく固化してこそカッティングに問題がない。underwater cutting法では、冷却液の温度をポリマーに合わせて維持して、ポリマーの形状を均一にすることが望ましい。しかし、結晶性ポリマーの場合、吐出中の結晶化を誘導するために任意で冷却液の温度を高く維持することもできる。
【0062】
粒子化されたポリマーの水洗浄により、未反応原料中の水に溶解する原料の除去が可能である。粒子が小さいほど粒子の重量に比べて表面積が広くなるため、粒子の大きさは小さいほど有利である。この目的を達成するために、粒子は約15mg以下の平均重量を有するように製造される。一例として、前記粒子化されたポリマーは、ポリマーのガラス転移温度と同一であるか、あるいは約5~20℃程度低い温度の水に5分~10時間放置して水洗浄される。
【0063】
粒子化されたポリマーは、固相反応中に融着することを防止するために結晶化段階を経る。大気、不活性ガス、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気または溶液中で進行可能であり、110℃~210℃あるいは120℃~210℃で結晶化処理を行う。
【0064】
温度が低ければ、粒子の結晶が生成される速度が過度に遅くなり、温度が高ければ、結晶が作られる速度より粒子の表面が溶融する速度が速く、粒子同士がくっついて融着を発生させる。粒子の結晶化に伴って粒子の耐熱度が上昇するので、結晶化を複数の段階に分けて段階別に温度を上昇させて結晶化することも可能である。
【0065】
固相反応は、窒素、二酸化炭素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下、または400~0.01mmHgの減圧条件、および180~220℃の温度で平均滞留時間1~150時間行われる。このような固相反応により分子量がさらに上昇し、溶融反応で反応せずに残存している原料物質と反応中の生成された環状オリゴマー、アセトアルデヒドなどが除去される。
【0066】
前記結晶化されたポリマーは、オルトクロロフェノールに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させ、35℃で測定した固有粘度が0.65dl/g以上、0.70dl/g以上、0.75dl/g以上あるいは0.80dl/g以上の値に到達するように固相重合することができる。
【0067】
また、前記第1ポリエステル樹脂は、多様な比率で混合されたポリエチレンテレフタレートと第2ポリエステル樹脂の透明性および加工性を向上させることができるので、目的とする物性を実現するために、前記ポリエステル樹脂混合物は、ポリエチレンテレフタレート、第1および第2ポリエステル樹脂を多様な比率で配合して提供され得る。一例として、前記ポリエステル樹脂混合物は、全体固形分に対して5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上であり、50重量%以下、40重量%以下あるいは30重量%以下のポリエチレンテレフタレート、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上あるいは30重量%以上であり、90重量%以下、80重量%以下あるいは70重量%以下の第1ポリエステル樹脂および1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上あるいは20重量%以上であり、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下あるいは50重量%以下の第2ポリエステル樹脂を含み得る。前記固形分の含有量は、ポリエステル樹脂混合物に含まれている固体成分の総重量で、例えば、ポリエチレンテレフタレート、第1ポリエステル樹脂および第2ポリエステル樹脂の総重量であり得る。
【0068】
万一、前記ポリエステル樹脂混合物が第2ポリエステル樹脂に第3ポリエステル樹脂および第4ポリエステル樹脂を含む場合、全体固形分に対して5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上であり、50重量%以下、40重量%以下あるいは30重量%以下のポリエチレンテレフタレート、5重量%以上、10重量%以上、15重量%以上、20重量%以上あるいは30重量%以上であり、90重量%以下、80重量%以下あるいは70重量%以下の第1ポリエステル樹脂、1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上あるいは20重量%以上であり、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下あるいは50重量%以下の第3ポリエステル樹脂および1重量%以上、5重量%以上、10重量%以上あるいは20重量%以上であり、80重量%以下、70重量%以下、60重量%以下あるいは50重量%以下の第4ポリエステル樹脂を含み得る。
【0069】
また、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、非常に優れた混和性を示すことができる。本発明においては、ポリエステル樹脂混合物の混和性を評価するための尺度として、トランスエステル化反応レベル(trans-esterification level)を用いた。具体的には、示差走査熱量装置(DSC)を用いてポリエステル樹脂混合物の1次スキャン時に現れる融点(以下、1次融点)により混合物中のポリエステル樹脂間のトランスエステル化反応レベルを確認することができる。1次融点が低いほど混合物中のポリエステル樹脂間のトランスエステル化反応レベルが高いと評価することができ、したがって、混和性に優れていると評価することができる。ただし、1次融点が過度に低い場合、ポリエステル樹脂混合物の諸般物性が劣悪であるので、ポリエステル樹脂混合物の1次融点は225℃~245℃、225℃~242℃、230℃~242℃あるいは230℃~240℃であることが好ましい。前記ポリエステル樹脂混合物は、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでいても上述した範囲の融点を示すので、優れた加工性を示すことができる。
【0070】
また、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、前記樹脂混合物から得られた厚さ6mmの試験片に対してASTM D1003-97により測定されたヘイズが5%以下、4.5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2.5%以下、2%以下あるいは1%以下と高透明性を示すことができる。理論的には、ヘイズは0%であることが最も好ましいので、下限は0%以上であり得る。
【0071】
また、前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、結晶性あるいは非晶性であり得る。万一、前記ポリエステル樹脂混合物が非晶性を示す場合、必要に応じて結晶化過程により結晶化して結晶性を持たせる。
【0072】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでいても、リサイクルポリエチレンテレフタレートに対する第1および第2ポリエステル樹脂の混和性が非常に優れており、リサイクルポリエチレンテレフタレートの物性を補完するための添加剤を必要としないという利点がある。しかし、非制限的な例として、前記ポリエステル樹脂混合物は、本発明の属する技術分野にて通常採用する添加剤を含み得る。
【0073】
前記一実施形態によるポリエステル樹脂混合物は、バージンポリエチレンテレフタレートのみならず、リサイクルポリエチレンテレフタレートを含んでいても優れた混和性を示し、高透明性の成形品を提供することができる。
【0074】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲がいかなる意味でも限定されない。
【0075】
下記の物性は、次の方法により測定された。
【0076】
(1)固有粘度(IV)
試料をo-chlorophenolに1.2g/dlの濃度で150℃で15分間溶解させた後、ウベローデ(Ubbelohde)粘度計を用いて試料の固有粘度を測定した。具体的には、粘度計の温度を35℃に維持し、粘度計の特定の内部区間の間を溶媒(solvent)が通過するのにかかる時間(efflux time)t0と、溶液(solution)が通過するのにかかる時間tを求めた。その後、t0値とt値を式1に代入して比粘度(specific viscosity)を算出し、算出された比粘度の値を式2に代入して固有粘度を算出した。
【0077】
【0078】
【0079】
上記式2中、Aはハギンス(Huggins)定数であって0.247、cは濃度値であって1.2g/dlの値がそれぞれ使用された。
【0080】
(2)1次融点(First Melting Temperature;Tm)
ポリエステル樹脂混合物から製造されたペレットの1次融点をDSC(differential scanning calorimetry)により測定した。測定装置としては、Mettler Toledo社製のDSC1モデルを用いた。具体的には、ペレットを除湿乾燥機(モレット社、モデル名D2T)を用いて、65℃の窒素雰囲気下で6~12時間乾燥した。したがって、融点は、ペレット中に残留する水分含有量が500ppm未満の状態で測定された。乾燥されたペレット約6~10mgを取って、アルミニウムパンに満たし、30℃で3分間温度維持後、30℃から280℃まで10℃/minの速度で加熱した後、280℃で3分間温度を維持した(1次スキャン)。そして、Mettler Toledo社で提供する関連プログラム(STAReソフトウェア)のTAメニューにあるintegration機能により、DSCによる1次スキャンでTm peak(融点)値を分析した。1次スキャンの温度範囲は、プログラムで計算するonset point-10℃からTm peak+10℃までに設定された。
【0081】
(3)ビジュアルヘイズ(Visual Haze)
ポリエチレンテレフタレート、第1および第2ポリエステル樹脂がよく混合したかどうかを確認するために、ポリエステル樹脂混合物から製造されたペレットのヘイズ発生の有無を光源下、および光源が無い環境で肉眼で観察した。この時、ヘイズが観察されない場合、第1ポリエステル樹脂がポリエチレンテレフタレートおよび第2ポリエステル樹脂間の混和性を向上させ、ポリエステル樹脂混合物がよく混合されたと評価することができる。
【0082】
具体的には、実施例および比較例で製造したペレットのヘイズ発生の有無を肉眼で観察し、ヘイズが観察されず透明であると「no haze」と表示し、ヘイズが若干観察されると「slightly haze」と表示し、ヘイズが観察されてペレットが不透明であると「haze」と表示した。「slightly haze」および「haze」を区別しにくい場合にはcolorimeterを用いて測定した実施例および比較例で製造したペレットのcolor L値がポリエステル樹脂混合物に含まれている第1および第2ポリエステル樹脂中の最もcolor L値が高い樹脂ペレットのcolor L値に対して5未満に上昇した場合「slightly haze」と表示し、5以上に上昇した場合「haze」と表示した。
【0083】
(4)6Tヘイズ(Haze)
ポリエステル樹脂混合物を用いて厚さ6mmの試験片を準備し、ASTM D1003-97測定法でMinolta社製のCM-3600A測定装置を用いて前記試験片のHazeを測定した。
【0084】
製造例1:第1ポリエステル樹脂の製造
カラムと、水によって冷却可能なコンデンサとが連結されている10L容積の反応器に、3189.1gのテレフタル酸(19.2mol)、1334.1gのエチレングリコール(21.5mol)、504.9gのイソソルビド(3.5mol)を投入し、触媒として1.0gのGeO2、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)1.46g、呈色剤としてコバルトアセテート(cobalt acetate)0.7gを使用した。次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cm2ほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0085】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、260℃まで2時間にわたって上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して、混合物が透明になるまで反応器の温度を260℃に維持してエステル化反応を進行させた。エステル化反応が完了したら、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0086】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって下げ、同時に反応器の温度を280℃まで1時間にわたって上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を実施した。重縮合反応の初期には撹拌速度を速く設定するが、重縮合反応の進行に伴って反応物の粘度上昇により撹拌力が弱くなるか、あるいは反応物の温度が設定した温度以上に高くなる場合、撹拌速度を適切に調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.50dl/gになるまで進行した。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。このように得られた粒子を70℃の水で5時間保管して粒子に含まれている未反応原料を除去した。
【0087】
前記粒子を150℃で1時間放置して結晶化した後、20L容積の固相重合反応器に投入した。その後、前記反応器に窒素を50L/minの速度で流した。この時、反応器の温度を常温から140℃まで40℃/時間の速度で上げ、140℃で3時間維持した後、200℃まで40℃/時間の速度で昇温して200℃に維持した。前記固相重合反応は、反応器内の粒子の固有粘度(IV)が0.95dl/gになるまで進行した。
【0088】
このように製造されたポリエステル樹脂に含まれているジオール部分全体に対してイソソルビドから誘導されたジオール部分は10モル%であった。
【0089】
製造例2:第3ポリエステル樹脂の製造
カラムと、水によって冷却可能なコンデンサとが連結されている10L容積の反応器に、2950gのテレフタル酸(17.8mol)、1047gのエチレングリコール(16.9mol)、767.9gの1,4-シクロヘキサンジメタノール(5.3mol)を投入し、触媒として1.0gのGeO2、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)1.46g、呈色剤としてコバルトアセテート(cobalt acetate)1.1gを使用した。次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cm2ほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0090】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、250℃まで2時間にわたって上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して、混合物が透明になるまで反応器の温度を250℃に維持した。エステル化反応が完了したら、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0091】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって下げ、同時に反応器の温度を265℃まで1時間にわたって上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を実施した。重縮合反応の初期には撹拌速度を速く設定するが、重縮合反応の進行に伴って反応物の粘度上昇により撹拌力が弱くなるか、あるいは反応物の温度が設定した温度以上に高くなる場合、撹拌速度を適切に調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.80dl/gになるまで進行した。反応器内の混合物の固有粘度が所望の水準に到達すると、混合物を反応器の外部に吐出してストランド(strand)化し、これを冷却液で固化後、平均重量が12~14mg程度となるように粒子化した。このように得られた粒子を70℃の水で5時間保管して粒子に含まれている未反応原料を除去した。
【0092】
このように製造されたポリエステル樹脂に含まれているジオール部分全体に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分は30モル%であった。
【0093】
製造例3:第4ポリエステル樹脂の製造
カラムと、水によって冷却可能なコンデンサとが連結されている10L容積の反応器に、2951gのテレフタル酸(17.8mol)、827gのエチレングリコール(23.3mol)、1280gの1,4-シクロヘキサンジメタノール(8.9mol)を投入し、触媒として1.0gのGeO2、安定剤としてリン酸(phosphoric acid)1.46g、呈色剤としてコバルトアセテート(cobalt acetate)1.1gを使用した。次に、反応器に窒素を注入して反応器の圧力が常圧より1.0kgf/cm2ほど高い加圧状態に作った(絶対圧力:1495.6mmHg)。
【0094】
そして、反応器の温度を220℃まで90分にわたって上げ、220℃で2時間維持した後、250℃まで2時間にわたって上げた。その後、反応器内の混合物を肉眼で観察して、混合物が透明になるまで反応器の温度を250℃に維持した。エステル化反応が完了したら、加圧状態の反応器内の窒素を外部に排出して反応器の圧力を常圧に下げた後、反応器内の混合物を真空反応が可能な7L容積の反応器に移送させた。
【0095】
そして、反応器の圧力を常圧状態から5Torr(絶対圧力:5mmHg)まで30分にわたって下げ、同時に反応器の温度を265℃まで1時間にわたって上げ、反応器の圧力を1Torr(絶対圧力:1mmHg)以下に維持しながら重縮合反応を実施した。重縮合反応の初期には撹拌速度を速く設定するが、重縮合反応の進行に伴って反応物の粘度上昇により撹拌力が弱くなるか、あるいは反応物の温度が設定した温度以上に高くなる場合、撹拌速度を適切に調節することができる。前記重縮合反応は、反応器内の混合物(溶融物)の固有粘度(IV)が0.70dl/gになるまで進行した。
【0096】
このように製造されたポリエステル樹脂に含まれているジオール部分全体に対して1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分は50モル%であった。
【0097】
前記製造例1~製造例3で製造したポリエステル樹脂でイソソルビドから誘導されたジオール部分あるいは1,4-シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を除いた残りのジオール部分はエチレングリコールから誘導されたジオール部分である。前記エチレングリコールから誘導されたジオール部分には2個のエチレングリコールが反応してジエチレングリコールを形成し、このようなジエチレングリコールがジカルボン酸あるいはその誘導体と反応して導入されたジエチレングリコールから誘導されたジオール部分が含まれる。
【0098】
実施例および比較例:ポリエステル樹脂混合物の製造
前記製造例1~製造例3で製造したポリエステル樹脂をリサイクルPET樹脂と下記表1に記載された重量比で溶融混合してポリエステル樹脂混合物を製造した。具体的には、廃プラスチックを粉砕および洗浄して得られたフレークを溶融押出して再ペレット化したリサイクルPET樹脂を準備した。その後、前記リサイクルPET樹脂と前記製造例1~製造例3で製造したポリエステル樹脂を下記表1に記載された重量比で混合し、これを約260℃で完全に溶融させて混合した後、押出してペレット化したポリエステル樹脂混合物を製造した。
【0099】
リサイクルPET樹脂は、廃プラスチックが回収された地域、廃プラスチックを分類する方法、およびこれを再ペレット化する方法によってその組成が多様であり得る。本実験で用いたリサイクルPET樹脂は、テレフタル酸およびイソフタル酸とエチレングリコールから製造されるコポリマーであって、イソフタル酸の含有量は、ジカルボン酸全体に対して3モル%以内であり、固有粘度(IV)は0.75dl/gであり、結晶化温度は130℃であり、融点は250℃であった。
【0100】
【0101】
試験例:ポリエステル樹脂混合物の物性評価
上記で製造したポリエステル樹脂混合物ペレットを上述した方法により評価し、その結果を表2に示す。
【0102】
【0103】
上記表2を参照すると、リサイクルPET樹脂およびシクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含む第2ポリエステル樹脂を含む比較例1~比較例6による組成物に、実施例1~実施例7のように、イソソルビドから誘導されたジオール部分を含む第1ポリエステル樹脂を添加するか、あるいはリサイクルPET樹脂およびイソソルビドから誘導されたジオール部分を含む第1ポリエステル樹脂を含む比較例7~比較例9による組成物に、実施例8~実施例10のように、シクロヘキサンジメタノールから誘導されたジオール部分を含む第2ポリエステル樹脂を添加する場合、組成物のヘイズを低くし、組成物の融点を加工に有利な範囲に調節できることが確認された。