(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】撮像レンズ、撮像装置および電子機器
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20240207BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240207BHJP
G02B 3/14 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/18
G02B3/14
(21)【出願番号】P 2022042265
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517372494
【氏名又は名称】維沃移動通信有限公司
【氏名又は名称原語表記】VIVO MOBILE COMMUNICATION CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1, vivo Road, Chang’an, Dongguan,Guangdong 523863, China
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】大畑 篤
(72)【発明者】
【氏名】野田 英希
(72)【発明者】
【氏名】柿本 剛
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/048659(WO,A1)
【文献】特開2014-145869(JP,A)
【文献】特開2006-209122(JP,A)
【文献】特開2000-231009(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112684592(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0329151(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0321788(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
G02B 1/00 - 1/08
G02B 3/00 - 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5枚又は6枚のレンズからなる撮像レンズであって、
光軸に沿って、
前記撮像レンズの結像面に対して光軸方向に固定の
、前記5枚又は6枚のレンズに含まれない焦点可変レンズと、
前記焦点可変レンズと一体化または隣接して、前記撮像レンズの結像面に対して光軸方向に固定のFNOを決定する絞りであって、前記撮像レンズの全長をLとするとき、前記絞りと前記結像面との間の距離lが以下の条件式を満足する絞りとを含み、
正の屈折力を有し、光軸に沿って移動可能なフォーカスレンズをさらに含み、
前記撮像レンズの物体距離が変化したときに、前記焦点可変レンズによる像面湾曲の発生方向と、前記フォーカスレンズによる像面湾曲の発生方向とが逆であることを特徴とする、
l/L>0.4 (1)
撮像レンズ。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
前記焦点可変レンズは、前記撮像レンズの最も物体側に位置することを特徴とする撮像レンズ。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像レンズであって、
光軸に沿って順に配置されてその一部または全てのレンズが前記フォーカスレンズを構成する少なくとも1つの第1レンズを含み、前記焦点可変レンズの物体側に位置する正の屈折力を有する第1レンズ群と、
光軸に沿って順に配置された少なくとも1つの第2レンズを含む負の屈折力を有する第2レンズ群とを含むことを特徴とする撮像レンズ。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像レンズであって、
前記少なくとも1つの第1レンズのうちの全てのレンズで前記フォーカスレンズを構成する場合、前記フォーカスレンズの焦点距離fobと前記撮像レンズの焦点距離fとは、以下の条件式を満足することを特徴とする、
0.5<fob/f<1.5 (2)
撮像レンズ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の撮像レンズと、前記撮像レンズの像側に設けられたイメージセンサとを含むことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
筐体と、前記筐体に設けられた請求項5に記載の撮像装置とを含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、光学素子分野に係り、特に、撮像レンズ、撮像装置および電子機器に係る。
【背景技術】
【0002】
民生電子機器分野の急速な発展に伴い、電子機器の高性能化の発展傾向がますます顕著になっている。高性能の電子機器は、シーン撮影、探知認識などの応用機能を有することが多く、これらの機能は、前記高性能電子機器に搭載された撮像レンズを利用して撮影することで実現されることが知られている。しかしながら、従来の撮像レンズは、小型化と高性能の両立が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願の実施例の目的としては、撮像レンズ、撮像装置および電子機器を提供し、撮像レンズの小型化と高性能化の両立を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様としては、撮像レンズを提供し、光軸に沿って、前記撮像レンズの結像面に対して光軸方向に固定の焦点可変レンズと、前記焦点可変レンズと一体化または隣接して、前記撮像レンズの結像面に対して光軸方向に固定のFNOを決定する絞りであって、前記撮像レンズの全長をLとするとき、前記光軸方向に固定のFNOを決定する絞りと前記結像面との間の距離lが以下の条件式を満足する絞りとを含む。
l/L>0.4 (1)
【0005】
選択可能な実現方式としては、前記焦点可変レンズは、前記撮像レンズの最も物体側に位置する。
【0006】
選択可能な実現方式として、前記撮像レンズは、正の屈折力を有し、光軸に沿って移動可能なフォーカスレンズをさらに含み、前記撮像レンズの物体距離が変化したときに、前記焦点可変レンズによる像面湾曲の発生方向と、前記フォーカスレンズによる像面湾曲の発生方向とが逆である。
【0007】
選択可能な実現方式として、前記撮像レンズは、光軸に沿って順に配置されてその一部または全てのレンズが前記フォーカスレンズを構成する少なくとも1つの第1レンズを含み、前記焦点可変レンズの物体側に位置する正の屈折力を有する第1レンズ群と、光軸に沿って順に配置された少なくとも1つの第2レンズを含む負の屈折力を有する第2レンズ群とを含む。
【0008】
選択可能な実現方式として、前記少なくとも1つの第1レンズのうちの全てのレンズで前記フォーカスレンズを構成する場合、前記フォーカスレンズの焦点距離fobと前記撮像レンズの焦点距離fとは、以下の条件式を満足する。
0.5<fob/f<1.5 (2)
【0009】
選択可能な実現方式として、前記フォーカスレンズは、前記焦点可変レンズの像側に位置し、前記撮像レンズは、光軸に沿って順に配置された少なくとも1つの第3レンズを含み、前記フォーカスレンズと前記結像面との間に位置する負の屈折力を有する第3レンズ群をさらに含む。
【0010】
選択可能な実現方式として、前記フォーカスレンズの焦点距離f_fと前記撮像レンズの焦点距離fとは、以下の条件式を満足する。
0.6<f_f/f<1.2 (3)
【0011】
選択可能な実現方式として、前記フォーカスレンズが光軸に沿って移動することにより生じる前記結像面上のピント移動量Δpは、前記フォーカスレンズの光軸方向への移動量Δzとは、以下の条件式を満足する。
Δp/Δz>1 (4)
【0012】
第2の態様としては、上記の撮像レンズと、前記撮像レンズの像側に設けられたイメージセンサとを含む撮像装置を提供する。
【0013】
第3の態様としては、筐体と、前記筐体に設けられた上記の撮像装置とを含む電子機器を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本願の実施例において、光軸方向に移動しない焦点可変レンズを撮像レンズの一部として効果的に配置し、かつFnoを決定する絞りと焦点可変レンズを一体化または隣接させて結像面に対して固定して配置することにより、撮像レンズの小型化、高性能、最短撮影距離短縮および高速合焦などの効果を達成することができる。
【0015】
本願の他の特徴、目的および利点は、以下の図面を参照してなされた非限定的な実施例の詳細な説明を読むことにより、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の実施例1における撮像レンズの概略構成図である。
【
図2A-2C】
図2A、
図2B、
図2Cは、それぞれ、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離1000mm時の非点収差曲線、球面収差曲線、歪曲収差曲線の概略図である。
【
図2D-2F】
図2D、
図2E、
図2Fは、それぞれ、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離200mm時の非点収差曲線、球面収差曲線、歪曲収差曲線の概略図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施例2における撮像レンズの概略構成図である。
【
図4A-4C】
図4A、
図4B、
図4Cは、それぞれ、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離INF時の非点収差曲線、球面収差曲線、歪曲収差曲線の概略図である。
【
図4D-4F】
図4D、
図4E、
図4Fは、それぞれ、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離200mm時の非点収差曲線、球面収差曲線、歪曲収差曲線の概略図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施例3における撮像レンズの概略構成図である。
【
図6A-6C】
図6A、
図6B、
図6Cは、それぞれ、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離INF時の非点収差曲線、球面収差曲線、歪曲収差曲線の概略図である。
【
図6D-6F】
図6D、
図6E、
図6Fは、それぞれ、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離200mm時の非点収差曲線、球面収差曲線、歪曲収差曲線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本願の実施例における技術的解決策は、本願の実施例における図面と併せて明確かつ完全に説明される。説明される実施例は、本願の一部の実施例であり、全ての実施例ではないことが明らかである。本願における実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をすることなく得られる全ての他の実施例は、全て本願の保護範囲に属する。
【0018】
本願の明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」などの用語は、特定の順序または前後順序を記述するために使用されるのではなく、類似の対象を区別するために使用される。このように使用されるデータは、ここで図示または説明されるもの以外の順序でも本願の実施例が実施できるように、適切な場合には交換できることや、「第1」、「第2」などで区別される対象は、一般的に同類であり、対象の数が限定されず、例えば、第1対象は、1つであっても、複数であってもよいことを理解されたい。本願の教示から逸脱することなく、以下で論じられる第1レンズは、第2レンズまたは第3レンズとも呼ばれる。
【0019】
図面では、説明の便宜上、レンズの厚さ、大きさ、形状をやや誇張して示している。具体的には、図中に示す球面または非球面の形状を一例として示している。即ち、球面または非球面の形状は、図示したものに限定されない。図面は、単なる例示であり、厳密に縮尺通りに描かれていない。
【0020】
なお、特に断りのない限り、本願の実施例で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本願が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。用語(例えば、一般的な辞書で定義された用語)は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本願の実施例において明示的に定義されない限り、理想的または過度に正式的な意味で解釈されないことを理解されたい。
【0021】
分かりやすくするために、以下では、まず、本願の実施例に係る技術用語を解釈し、説明する。
光軸:光学系において光線を導く方向であり、中心視野の主光線を参考する。
焦点:光軸に平行な光線がレンズで屈折された後の集光点である。
焦点距離(focal length)は、焦点の長さとも呼ばれ、光学系における光の集束または発散を測る度量方式であり、無限遠の被写体がレンズを通過して焦点面で鮮明な像を形成するときの、レンズの光学中心から焦点までの距離を指す。
物体距離:被写体とレンズとの間の距離である。
レンズを境に被写体が位置する側を物体側とし、レンズの物体側に近い面を物体側の面と呼ぶ。
レンズを境に被写体の像が位置する側を像側とし、レンズの像側に近い面を像側面と呼ぶ。
絞り:光線がレンズを透過して本体内の感光面に入る光量を制御するための装置であり、通常はレンズ内にある。絞りは、絞り係数Fnoを制御/決定する。Fnoは、レンズ焦点距離fと通過開口Dとの比で測定される。Fno値が小さいほど、光束は、大きくなる。
【0022】
選択可能に、本願の実施例における焦点可変レンズは、光軸方向に移動せず、電圧を印加することにより焦点位置を変化させる素子を前提とし、液体レンズ、膜レンズおよび/または液晶レンズ等から選択されるが、これに限定するものではない。本願の実施例に膜レンズを記載しているが、本願は、膜レンズに限定されない。
【0023】
以下、本願の実施例における撮像レンズ、撮像装置および電子機器について詳細に説明する。
【0024】
本願の実施例において、撮像レンズは、光軸に沿って、焦点可変レンズと、この焦点可変レンズと一体化または隣接するFNOを決定する絞りとを含む。ここで、焦点可変レンズは、撮像レンズの結像面に対して光軸方向に固定である。すなわち、焦点可変レンズは、撮像レンズの結像面に対して光軸方向に移動せず、光軸方向に固定である。絞りは、撮像レンズの結像面に対して光軸方向に固定であり、すなわち、撮像レンズの結像面に対して光軸方向に移動せず、光軸方向に固定である。撮像レンズの全長をLとするとき、絞りと結像面との距離lは、以下の条件式を満足する。
l/L>0.4 (1)
【0025】
光軸方向に移動しない焦点可変レンズを撮像レンズの一部として効果的に配置し、かつFnoを決定する絞りと焦点可変レンズを一体化または隣接させて結像面に対して固定して配置することにより、撮像レンズの小型化、高性能、最短撮影距離短縮および高速合焦などの効果を達成することができる。
【0026】
仮に焦点可変レンズと絞りを離れた位置に配置する場合、周辺光量を十分に確保しようとすると、絞りと焦点可変レンズの距離が長くなるほど、焦点可変レンズの有効径が大きくなる。すなわち焦点可変レンズの小径化と周辺光量確保を両立する場合、焦点可変レンズと絞りは、より近くに配置した方が有利である。一方、絞りは、例えば結像面の近傍に配置する場合、光学系の前玉径が極端に大きくなったり、周辺光量の確保が困難になったりするなど課題が発生するため、本願では、焦点可変レンズと絞りを一体化または隣接して配置し、かつ絞りと結像面との間の距離が上記条件式(1)を満足する。
【0027】
具体的に、Fnoを決定する絞りと焦点可変レンズとを一体化または隣接させることで、軸上光線径と周辺光線径を略同一として焦点可変レンズの小径化を効果的に達成できる。また、焦点可変レンズの位置を適切に設定することにより、焦点可変レンズの小径化を達成することもできる。さらに、焦点可変レンズは、径が大きくなるほど、光軸方向の厚みが厚くなる傾向があるため、焦点可変レンズの小径化により、光軸方向の薄型化、高速合焦、高解像度、十分な周辺光量確保の達成にも寄与する。
【0028】
また、Fnoを決定する絞りを結像面に近づけすぎると、撮像レンズの前玉径が大きくなりすぎ、周辺光量確保が困難となる。そのため、Fnoを決定する絞りは、結像面から離間するように保持される必要があり、上記条件式(1)を満足することが好ましい。条件式(1)の下限を満足させつつ焦点可変レンズとFnoを決定する絞りを一体化することにより焦点可変レンズの小径化を達成することができ、撮像レンズ全体の小型化と前玉径を極端に大きくすることなく周辺光量も十分に確保することが可能となる。
【0029】
一部の実施例において、Fnoを決定する絞りが電気的に可変なアイリスの場合、焦点可変レンズと一体化することで、電気部品や基板の共通化も可能となり、撮像装置全体の小型化に寄与することが可能となる。
【0030】
一部の実施例において、上記撮像レンズは、焦点可変レンズの像側に配置された少なくとも1つのレンズを含んでもよい。
【0031】
一部の実施例において、焦点可変レンズを撮像レンズの最も物体側に配置する。これにより、撮像レンズの製造組立性を容易とし、組立時のレンズの不良発生時の焦点可変レンズの交換も簡易であり、レンズの組立および製造コストを低減するメリットがある。
【0032】
本願の実施例において、撮像レンズの高性能と最短撮影距離短縮をさらに達成するために、撮像面に対して固定の焦点可変レンズと撮像面に対して可動のフォーカスレンズを併用してもよい。すなわち、上記の撮像レンズに基づいて、撮像レンズは、正の屈折力を有し、光軸に沿って移動可能なフォーカスレンズをさらに含んでもよい。このフォーカスレンズは、焦点可変レンズの物体側または像側に位置する。撮像レンズの物体距離が変化したときに、焦点可変レンズによる像面湾曲の発生方向と、フォーカスレンズによる像面湾曲の発生方向とが逆であり、焦点可変レンズとフォーカスレンズで発生する像面湾曲をキャンセルさせて像面湾曲を抑制し、無限遠から近距離までの撮影距離で撮像レンズの高性能を維持しながら、撮像レンズの小型化、最短撮影距離短縮、高速合焦などの効果を達成する。
【0033】
さらに、焦点可変レンズとフォーカスレンズを併用する場合、Fnoを決定する絞りと焦点可変レンズとを一体化または離接させ、かつ結像面に対して固定して配置することで、フォーカスレンズにFnoを決定する絞りを配置する場合よりも、物体距離変化時やフォーカスレンズが駆動する際のFnoの変化を小さくすることができる。
【0034】
焦点可変レンズに対するフォーカスレンズの配置位置を考慮し、本願の実施例における撮像レンズは、異なる構成を有することができ、以下それぞれ説明する。
【0035】
構成1(実施例2):
この構成1では、正の屈折力を有するフォーカスレンズは、焦点可変レンズの物体側に位置する。撮像レンズは、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群とを含む。ここで、第1レンズ群は、焦点可変レンズの物体側に位置する。第1レンズ群は、少なくともその一部または全てのレンズは、フォーカスレンズを構成する。すなわち、第1レンズ群の全体または一部は、正の屈折力を有し、光軸に沿って移動可能なフォーカスレンズである。第2レンズ群は、焦点可変レンズの像側に位置する。第2レンズ群は、光軸に沿って順に配置された少なくとも1つの第2レンズを含む。
【0036】
このように、焦点可変レンズの物体側にあるレンズ群に正の屈折力を持たせることにより、周辺像高の光線を中心像高の光線に近づけることができ、すなわち物体から入射する軸上および軸外の光を集光させることができ、焦点可変レンズに入射する光の小径化が図られる。さらに、焦点可変レンズの有効光線径を小さくすることにより、焦点可変レンズの小型化による撮像レンズのコストダウン、高速応答、小型化を図ることができる。また、焦点可変レンズの像側に第2レンズ群、すなわち少なくとも1つの第2レンズを配置し、その屈折力を負にすることにより、焦点可変レンズの焦点感度を向上させ、ストロークを短縮することができ、最短撮影距離を短縮することができる。
【0037】
一部の実施例において、この構成1では、第1レンズ群に含まれる少なくとも1つの第1レンズのうちの全てのレンズでフォーカスレンズを構成し、すなわち第1レンズ群全体が正のパワーを有するフォーカスレンズである場合、フォーカスレンズの焦点距離fobと撮像レンズの焦点距離fとは、以下の条件式を満足する。
0.5<fob/f<1.5 (2)
【0038】
条件式(2)について、条件式(2)の下限を下回る場合、焦点可変レンズよりも物体側の第1レンズ群の正の屈折力が強くなりすぎて、球面収差や像面湾曲の補正が困難となり、さらに組み立て要求精度を上がり、高性能化の実現が困難となる。一方、条件式(2)の上限を上回る場合、焦点可変レンズよりも物体側の第1レンズ群の正の屈折力が弱くなりすぎて、焦点可変レンズの径の大型化と光学系全体の大型化につながる。すなわち条件式(2)を満足することで、適切な収差補正により、高性能化、焦点可変レンズの小径化、光学系の小型化などが達成できる。
【0039】
構成2(実施例3):
この構成2では、正の屈折力を有するフォーカスレンズは、焦点可変レンズの像側に位置する。撮像レンズは、負の屈折力を有する第3レンズ群を含む。ここで、第3レンズ群は、フォーカスレンズと撮像レンズの結像面との間に位置する。第3レンズ群は、光軸に沿って順に配置された少なくとも1つの第3レンズを含む。
【0040】
このように、正の屈折力を有するフォーカスレンズを焦点可変レンズの像側に配置し、フォーカスレンズと撮像レンズの結像面との間に負の屈折力を有する第3レンズ群を配置することにより、撮像レンズの小型化、高性能化、最短撮影距離短縮、高速合焦などの効果を達成することができる。
【0041】
一部の実施例において、この構成2では、フォーカスレンズの焦点距離f_fと撮像レンズの焦点距離fとは、以下の条件式を満足する。
0.6<f_f/f<1.2 (3)
【0042】
この条件式(3)について、条件式(3)の下限を下回る場合、フォーカスレンズの屈折力が強くなりすぎて、収差の補正が困難となり、さらに組み立て要求精度を上がり、高性能化の実現が困難となる。一方、条件式(3)の上限を上回る場合、撮像レンズのフォーカスストロークが長くなり、撮像レンズ全体の小型化が困難となる。
【0043】
一部の実施例において、この構成2では、フォーカスレンズが光軸に沿って移動することにより生じる結像面上のピント移動量Δpは、フォーカスレンズの光軸方向への移動量Δzとは、以下の条件式を満足する。
Δp/Δz>1 (4)
【0044】
この条件式(4)について、条件式(4)の下限を満足させることで、フォーカスストロークが長くなることなく、最短撮影距離を短縮することができる。さらに、焦点可変レンズより像側のレンズ群全てをフォーカスとして使用する場合、条件式(4)の値は1になる。しかし、フォーカスレンズの像側に負の屈折力を持つ固定のレンズ群を配置し条件式(4)を満足させることで、フォーカスストロークを短縮でき、撮像レンズの小型化に寄与する。
【0045】
また、焦点可変レンズより像側のレンズ群全てをフォーカスとして使用する場合、物体距離が変化する際に焦点可変レンズで発生する像面湾曲の方向と、フォーカスレンズで発生する像面湾曲の方向が同一になるため、撮影距離を短くした場合の高性能化が困難であり、小型化、高性能化、最短撮影距離短縮の両立が困難となる。
【0046】
なお、本願の実施例において、Fnoを決定する絞りと焦点可変レンズとを一体化または隣接させて結像面に対して固定して配置し、配置位置とその前後のレンズ群の屈折力を最適化することにより、焦点可変レンズの小径化、光学系小型化、合焦範囲拡大、高速合焦、高性能化を達成している。上記のFnoを決定する絞りと焦点可変レンズとを隣接させる配置とは、絞りが隣接するレンズの面頂点より焦点可変レンズに近い場合の全てを含む。
【0047】
本願の実施例において、必要に応じて各レンズのレンズ面を非球面で形成している。非球面の光軸からの高さをy、サグ量をx、非球面の近軸曲率をc、円錐定数をK、n次非球面係数をAnとしたとき、各非球面レンズの面型xは、以下の非球面式により限定されるが、これに限られない。
【数1】
【0048】
以下、本願の実施例に係る撮像レンズについて、図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
実施例1
以下、
図1~
図2Fを参照して、本願の実施例1における撮像レンズに関する内容を説明する。
図1は、本願の実施例1における撮像レンズの概略構成図である。
【0050】
図1に示すように、撮像レンズは、光軸に沿って物体側から像側へ順に、焦点可変レンズEと、レンズ群E1と、IRカットフィルタE0とを含む。焦点可変レンズEは、最も物体側に配置され、結像面に対して光軸方向に固定である。Fnoを決定する絞りは、焦点可変レンズEと一体化される。焦点可変レンズEの面番号は、表1の1~4である。レンズ群E1は、5枚のレンズを含み、物体側面と像側面の番号は、表1の5~14である。IRカットフィルタE0の面番号は、表1の15~16である。撮像レンズの結像面の面番号は、表1の17である。物体からの光は、各物体側面/像側面1~16を順に通過し、最終的に結像面17に結像される。
【0051】
以下の表1に、本願の実施例1における撮像レンズのレンズデータを示す。曲率半径Rと厚さRの単位は、ともにmmである。Ndは、屈折率を示し、Vdは、アッベ数を示し、INFINITY(INFと略称する)は、無限大を示し、STOは、開口絞りを示す。
【0052】
【0053】
以下の表2に、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離1000mm、200mm時に焦点距離f、絞り径Fno、画角ωおよび半像高Yを示す。
【0054】
【0055】
本実施例1において、以下の表3に示されているように、物体距離1000mmの場合、焦点可変レンズEの面3と面4の曲率半径は、INFであり、物体距離が200mmの場合、焦点可変レンズEの面3と面4の曲率半径は、-160である。
【0056】
【0057】
以下の表4および表5は、実施例1の非球面に用いられる円錐定数Kおよび高次項係数A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18、A20を示している。
【0058】
【0059】
【0060】
図2Aは、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離1000mm時の非点収差曲線を示す。
図2Bは、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離1000mm時の球面収差曲線を示す。
図2Cは、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離1000mm時の歪曲収差曲線の概略図である。
図2Dは、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離200mmの近距離時の非点収差曲線を示す。
図2Eは、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離200mm時の球面収差曲線を示す。
図2Fは、本願の実施例1における撮像レンズの物体距離200mm時の歪曲収差曲線の概略図である。
図2A~
図2Fから分かるように、本実施例1における撮像レンズは、1000mmの物体距離から200mmの近距離まで高性能を維持できている。
【0061】
実施例2
以下、
図3~
図4Fを参照して、本願の実施例2における撮像レンズに関する内容を説明する。
図3は、本願の実施例2における撮像レンズの概略構成図であり、ここで、フォーカスレンズの構成は、上記構成1である。
【0062】
図3に示すように、撮像レンズは、光軸に沿って物体側から像側へ順に、正の屈折力を有するレンズ群E2と、Fnoを決定する絞りFと、焦点可変レンズEと、負の屈折力を有するレンズ群E3と、IRカットフィルタE0とを含む。絞りFと焦点可変レンズEとは隣接に配置される。絞りFと焦点可変レンズEとは、結像面に対して光軸方向に固定である。レンズ群E2は、フォーカスレンズとして、3枚のレンズを含み、物体側面と像側面の番号は、表6の1~6である。絞りFの面番号は、表6の7~8である。焦点可変レンズEの面番号は、表6の9~12である。レンズ群E3は、3枚のレンズを含み、物体側面と像側面の番号は、表6の13~18である。IRカットフィルタE0の面番号は、表6の19~20である。撮像レンズの結像面の面番号は、表6の21である。物体からの光は、各物体側面/像側面1~20を順に通過し、最終的に結像面21に結像される。
【0063】
以下の表6に、本願の実施例2における撮像レンズのレンズデータを示す。
【0064】
【0065】
以下の表7に、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離INF、200mm時に焦点距離f、絞り径Fno、画角ωおよび半像高Yを示す。
【0066】
【0067】
本実施例2において、面7と面8との間の間隔は、空気間隔である。物体距離INF時に、面7と面8の間隔は0.5であり、物体距離200mm時に、面7と面8の間隔は、0.68になる。以下の表8に示すように、物体距離INFの場合、焦点可変レンズEの面11と面12の曲率半径は、INFであり、物体距離が200mmの場合、焦点可変レンズEの面11と面12の曲率半径は、-180である。
【0068】
【0069】
以下の表9および表10は、実施例2の非球面に用いられる円錐定数Kおよび高次項係数A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18を示している。
【0070】
【0071】
【0072】
図4Aは、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離INF時の非点収差曲線を示す。
図4Bは、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離INF時の球面収差曲線を示す。
図4Cは、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離INF時の歪曲収差曲線の概略図である。
図4Dは、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離200mmの近距離時の非点収差曲線を示す。
図4Eは、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離200mm時の球面収差曲線を示す。
図4Fは、本願の実施例2における撮像レンズの物体距離200mm時の歪曲収差曲線の概略図である。
図4A~
図4Fから分かるように、本実施例2における撮像レンズは、物体距離無限遠から至近距離200mmまで像面湾曲や色収差を抑制し高性能を維持できている。
【0073】
実施例3
以下、
図5~
図6Fを参照して、本願の実施例3における撮像レンズに関する内容を説明する。
図5は、本願の実施例3における撮像レンズの概略構成図であり、ここで、フォーカスレンズの構成は、上記構成2である。
【0074】
図5に示すように、撮像レンズは、光軸に沿って物体側から像側へ順に、焦点可変レンズEと、フォーカスレンズE4と、負の屈折力を有するレンズ群E5と、IRカットフィルタE0とを含む。焦点可変レンズEは、最も物体側に配置され、結像面に対して光軸方向に固定である。Fnoを決定する絞りは、焦点可変レンズEと一体化される。焦点可変レンズEの面番号は、表11の1~4である。フォーカスレンズE4は、3枚のレンズを含み、物体側面と像側面の番号は、表11の5~10である。レンズ群E5は、2枚のレンズを含み、物体側面と像側面の番号は、表11の11~14である。IRカットフィルタE0の面番号は、表11の15~16である。撮像レンズの結像面の面番号は、表11の17である。物体からの光は、各物体側面/像側面1~16を順に通過し、最終的に結像面17に結像される。
【0075】
以下の表11に、本願の実施例3における撮像レンズのレンズデータを示す。
【0076】
【0077】
以下の表12に、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離INFおよび200mm時に焦点距離f、絞り径Fno、画角ωおよび半像高Yを示す。
【0078】
【0079】
本実施例3において、面3と面4との間の間隔は、空気間隔である。物体距離INF時に、面3と面4の間隔は、1.170であり、物体距離200mm時に、面3と面4の間隔は、0.795になる。面9と面10との間の間隔は、空気間隔である。物体距離INF時に、面9と面10の間隔は、4.062であり、物体距離200mm時に、面9と面10の間隔は、4.432になる。
【0080】
以下の表13に示すように、物体距離INFの場合、焦点可変レンズEの面3と面4の曲率半径は、INFであり、物体距離が200mmの場合、焦点可変レンズEの面3と面4の曲率半径は、-220である。
【0081】
【0082】
以下の表14および表15は、実施例3の非球面に用いられる円錐定数Kおよび高次項係数A4、A6、A8、A10、A12、A14、A16を示している。
【0083】
【0084】
【0085】
図6Aは、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離INF時の非点収差曲線を示す。
図6Bは、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離INF時の球面収差曲線を示す。
図6Cは、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離INF時の歪曲収差曲線の概略図である。
図6Dは、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離200mmの近距離時の非点収差曲線を示す。
図6Eは、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離200mm時の球面収差曲線を示す。
図6Fは、本願の実施例3における撮像レンズの物体距離200mm時の歪曲収差曲線の概略図である。
図6A~
図6Fから分かるように、本実施例3における撮像レンズは、物体距離無限遠から至近距離200mmまで像面湾曲や色収差を抑制し高性能を維持できている。
【0086】
本願の実施例1~3における撮像レンズの関連パラメータおよび満足する条件式は、以下の表16に示されている。
【0087】
【0088】
本願の実施例は、画像センサと、上記の撮像レンズとを含む撮像装置をさらに提供し、該画像センサが撮像レンズの像側に設けられる。該撮像レンズは、被写体の光信号を受光してイメージセンサに投光するために用いられ、該イメージセンサは、被写体に対応する光信号を画像信号に変換するために用いられるが、ここではその説明を省略する。以上のような撮像レンズを備えた撮像装置によれば、撮像レンズの薄型化、小型化を実現しつつ、撮像レンズの解像度および結像鮮明度を向上させることができ、これにより、撮像レンズに対する高精細な撮像要求が満たされる。
【0089】
本願の実施例は、筐体と、上記の撮像装置とを含む電子機器をさらに提供し、該撮像装置は、映像情報を取得するために筐体に設けられる。ここで、電子機器は、ハンドヘルドデバイス、車載デバイス、ウェアラブルデバイス、コンピューティングデバイス、またはワイヤレスモデムに接続された他の処理デバイスを含み、セルラー電話、スマートフォン(smart phone)、携帯情報端末PDA(personal digital assistant)コンピュータ、タブレット型コンピュータ、ラップトップコンピュータ(laptop computer)、ビデオカメラ、ビデオレコーダ、カメラ、スマートウォッチ(smart watch)、スマートブレスレット(smart wristband)、車載型コンピュータ、および結像機能を有する他の電子デバイスも含む。本願の実施例は、上記電子機器の具体的な形態を特に限定するものではない。
【0090】
以上の説明は、本願の好適な実施例および用いられる技術原理の説明にすぎない。本願に係る保護範囲として、上記の技術的構成の特定の組合せによる技術的解決策に限られず、対応する発明の思想を逸脱することなく、例えば、上記構成と本願に開示される(それに限られない)類似機能を有する技術的構成の相互の置換による技術的解決策のような、上記の技術的構成およびその同等な構成の任意の組み合わせによる他の技術的解決策もカバーすることは、当業者が理解するべきである。