(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】チレッタセンブリ(SWERTIA CHIRATA)エキスおよびそれを含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240207BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240207BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61Q19/08
A61Q19/00
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022043948
(22)【出願日】2022-03-18
【審査請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508283406
【氏名又は名称】シャネル パフュームズ ビューテ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】リアック ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ジレ マエヴァ
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-148783(JP,A)
【文献】Asian Journal of Chemistry(2010),Vol. 22, No. 10,p.7787-7798
【文献】Restorative Cream,ID 8192211,Mintel GNPD[online],2020年11月,[検索日2023.08.07],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
CAplus/KOSMET/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを調製する方法であって、
40~80
℃の温度および20~60MP
aの圧力で、超臨界CO
2を用いて、チレッタセンブリ(Swertia chirata)のアルコール抽出物を抽出するステップを含む、前記方法。
【請求項2】
超臨界CO
2を用いた抽出が、アルコール溶
媒の存在下で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルコール溶
媒が、超臨界CO
2およびアルコール溶媒を含む混合物の総重量に対して、1~10%の含有量で導入される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
超臨界CO
2を用いた抽出のステップの前に、多糖
類をアルコール抽出物に添加する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
以下のステップを含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法:
a)
チレッタセンブリ(Swertia chirata)を、少なくとも1種のアルコール溶
媒で抽出するステップと、
b)ステップa)で得られた混合物を濾過し、植物残渣を除去するステップと
、
c)こうして得られた混合物に、多糖
類を添加して、アルコール溶媒中の多糖類/乾燥抽出物混合物を得るステップと、
d)アルコール溶媒
を除去するステップと、
e)ステップd)の最後に得られた乾燥抽出物/多糖類混合物を粉砕して、粉末を得るステップと、
f)ステップe)の最後に得られた粉末を、40~80
℃の温度および20~60MP
aの圧力で、超臨界CO
2を用いて抽出するステップ。
【請求項6】
以下のステップをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法:
g)超臨界CO
2を用いた抽出に使用した溶媒に含まれる抽出物を濾
過するステップと、
h)ステップg)の最後に得られた抽出物を
油で希釈するステップと、
i)ステップh)の最後に得られた希釈抽出物を濾過するステップ。
【請求項7】
以下のステップをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法:
g1)ステップf)の最後に得られた残留粉末をアルコール溶
媒に溶解するステップと、
h1)ステップg1)の最後に得られた混合物を濾
過するステップと、
i1)ステップh1)の最後に得られた抽出物をグリコー
ルで希
釈するステップと、
j1)ステップi1)の最後に得られた希釈抽出物を濾過するステップ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法により得られることを特徴とする、チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキス。
【請求項9】
生理学的に許容される媒体中に、請求項8に記載の少なくとも1種のチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを含む化粧品組成物。
【請求項10】
皮膚の老化を防止および/または低減するための、請求項8に記載のチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの非治療的な化粧的使用。
【請求項11】
皮膚に潤いを与えるためおよび/または皮膚のバリア機能を改善するための、請求項8に記載のチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの非治療的な化粧的使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキス、それを得る方法、それを含む化粧品組成物、および様々な化粧品用途に関する。
【0002】
シャネル パルファン ボーテ(Chanel Parfums Beaute)は、ブータン国立生物多様性センターが、供給チャネルの設定と、チレッタセンブリ(Swertia chirata)植物の栽培、および名古屋議定書の適用に協力してくれたことに感謝する。
【0003】
事務局長のDasho Rinzin Dorji氏、プログラムディレクターのTashi Yangzome Dorji氏、および生物資源調査チーム全体:Chencho Dorji氏、Mani Prasad Nirola氏、Jamyang Choden氏、特にLeki Wangchuk氏の支援と助言に心から感謝する。
【背景技術】
【0004】
皮膚は、主に3つの層、すなわち、最も表から順に、表皮、真皮、皮下組織から構成されている。
【0005】
皮膚の外層、表皮は、特に、角化細胞(大多数)、メラニン細胞(皮膚では色素形成に関与する)、ランゲルハンス細胞から構成されている。その機能は、体を外部環境に対して保護し、その完全性を確保し、特に微生物や化学物質の浸透を遅らせ、皮膚に含まれる水分の蒸発を防ぐことである。
【0006】
これを行うために、角化細胞は、連続的で方向づけられた成熟プロセスを受ける。この成熟プロセスでは、表皮の基底層に位置する角化細胞が、それらの分化の最終段階で、タンパク質とセラミドなどの脂質で構成され、角化された膜の形で完全に角質化され、死細胞である角質細胞を形成する。この分化プロセスの間に、角質間表皮脂質も形成され、角質層で二重層(シート)の形で組織化される。それらは、前記の角質化された膜とともに、表皮のバリア機能に関与する。
【0007】
加齢に伴い、皮膚は薄くなり、その容量や弾力が失われ、バリア機能も低下する。表皮真皮接合部は、皮膚老化の好ましい標的の1つである。その主な機能は、皮膚の結合と栄養機能を確保するために、表皮と真皮の間の結合を可能にすることである。これらの機能は、主に角化細胞が作り出す細胞外マトリックスの作用に基づく。このマトリックスは、コラーゲン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン(ヒアルロン酸を含有する)、エラスチン、構造糖タンパク質など、いくつかの高分子の集合体で構成されている。細胞の老化や紫外線、汚染などの環境因子の働きは、これらの細胞外マトリックス成分に悪影響を与える。それらは、特にマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の作用によって酵素分解を受ける。マトリックスはもはやその機能を正しく実行できなくなり、それは脆弱性と細胞再生能力の低下を引き起こし、皮膚のしわや小じわの出現の原因となる。
【0008】
細胞外マトリックスと、特にMMPなどの酵素の作用によるその分解の防止は、皮膚の老化を防止・低減する上で好ましい標的となっている。
【0009】
その結果、皮膚の老化によって引き起こされる有害な変化に対抗するために、細胞外マトリックス機能の維持、特に細胞外マトリックスの分解の防止に作用できる活性剤を提供することが本当に必要である。
【0010】
さらに、可能な限り少ない合成成分を含む天然物に対する消費者の絶えず増大する欲求、および化学工業に由来する化合物に影響を与えるますます広範な規制制約のために、そのような活性剤が植物抽出物に由来することは有利であろう。
【0011】
また、リサイクル可能で毒性のない溶媒を使用し、同時に目的の分子を分解せずに選択的に抽出できる、より環境に優しい抽出方法を探す必要がある。
【発明の概要】
【0012】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)は、センブリ(Swertia)属の植物であり、センブリ(Swertia)属はリンドウ(Gentianaceae)科に属し、センブリ(Swertia)属の植物は約150種が存在する。特に原産地であるインド、ブータン、ネパールでは、チレッタセンブリ(Swertia chirata)は伝統医学に用いられている。その根は植物の中で最も生物活性の高い部分とされ、発熱、マラリア、喘息、ある種の肝臓病、糖尿病、ある種の精神障害など、様々な症状の治療に使用されている。
【0013】
驚くべきことに、本発明者らは、チレッタセンブリ(Swertia chirata)のアルコール抽出物を超臨界CO2で抽出するステップに供することにより、注目すべき抗老化特性およびバリア機能保護特性を有するチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを得ることができることを実証することに成功した。本発明者らは、特に、これらの抽出物が、一方では、表皮角化細胞によって媒介される炎症および細胞外マトリックスの分解のプロセスを抑制し、他方では、角化細胞の脂質代謝を刺激し、細胞外マトリックス成分の合成を促進することを可能とすることを実証した。したがって、これらの抽出物は、細胞外マトリックスの崩壊や分解に起因する皮膚の老化を防止/遅延させるだけでなく、皮膚のバリア機能の改善および皮膚に潤いを与えるために使用できる。
【0014】
本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスは、さらに、すべての医薬品の提示形態と有利に適合する:クリーム、またはゲルクリームのような化粧品組成物に使用できるだけでなく、ローションのような水相のみを含む組成物に、または例えばオイルの形態で非水相のみを含む組成物に有利に導入することが可能である。
【0015】
したがって、第1の態様によれば、本発明は、40~80℃、好ましくは50~70℃の温度および20~60MPa、好ましくは25~35MPaの圧力で、超臨界CO2を用いて、チレッタセンブリ(Swertia chirata)のアルコール抽出物を抽出するステップを含む、チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを調製する方法に関する。
【0016】
また、本発明の主題は、かかる方法により得られるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスでもあり、さらに、生理学的に許容される媒体中に、そのようなチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを含む化粧品組成物でもある。
【0017】
最後に、本発明の主題は、皮膚の老化を防止および/または低減するためだけでなく、皮膚に潤いを与えるためおよび/または皮膚のバリア機能を改善するための、前記の記載のチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの非治療的な化粧的使用でもある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】48時間の処理後の正常なヒト表皮角化細胞において、0.25%のチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1によって調節される生物学的経路を表すグラフである。
【
図2】48時間の処理後の正常なヒト表皮角化細胞において、0.25%のチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC2によって調節される生物学的経路を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)
チレッタセンブリ(Swertia chirata)は、スワーティア・チラヤタ(Swertia chirayta)、スワーティア・チラヤイタ(Swertia chirayita)またはスワーティア・チレッタ(Swertia chiretta)とも呼ばれ、リンドウ(Gentianaceae)科、センブリ(Swertia)属に属する草本植物である。それは、ヒマラヤ高原、特にインド、ネパール、ブータンで見られる。それは高さ60~150cmの直立した一年草/二年草で、その茎は基部から中間部までが円筒形で、上部は四角形をしている。その茎は橙褐色、あるいは紫青色で、芯は黄色である。その葉は披針形、対生、無柄、尖頭であり、長さは約4~10cmである。それは多数の花を有し、花は四分割されており、紫色を帯びた黄緑色である。
【0020】
本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスは、植物全体、すなわち、植物の花、葉、茎および根を含む部分から得られる。
【0021】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを調製する方法
本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを調製する方法は、40~80℃、好ましくは50~70℃の温度、および20~60MPa、好ましくは25~35MPaの圧力で、超臨界CO2を用いて、チレッタセンブリ(Swertia chirata)のアルコール抽出物を抽出するステップを含む。
【0022】
実際、本出願人は、チレッタセンブリ(Swertia chirata)のアルコール抽出物を超臨界CO2で二次抽出することにより、顕著な抗老化特性およびバリア機能刺激特性を有する抽出物を得ることができることを実証している。
【0023】
超臨界CO2を用いた抽出は、温度40~80℃、好ましくは50~70℃、例えば60℃、および圧力20~60MPa、好ましくは25~35MPa、例えば30MPaで行われる。
【0024】
本発明の文脈では、上記の温度が40~80℃であるような「A」と「B」の間の値域は、限界値を含有する「A」と「B」の間のすべての値を含むことに留意する必要がある。したがって、本発明による超臨界CO2で抽出するステップは、40~80℃の間の任意の温度値で実施できるが、40℃または80℃でも実施できる。これは、本発明の文脈で開示されるすべての値域に適用される。
【0025】
好ましい一実施形態によれば、CO2流量は、少なくとも150g/分、好ましくは200g/分である。
【0026】
超臨界CO2を用いた抽出は、アルコール溶媒の存在下で優先的に行われる。アルコール溶媒は、2~4個の炭素原子からなるモノアルコールであってよく、好ましくはエタノールである。好ましい一実施形態によれば、超臨界CO2を用いた抽出は、エタノール、優先的には60°のエタノールの存在下で実施される。
【0027】
1つの特定の実施形態によれば、アルコール溶媒、好ましくはエタノールは、超臨界CO2およびアルコール溶媒を含む混合物の総重量に対して1~10%の含有量で導入される。
【0028】
超臨界CO2を用いた抽出は、溶媒の消費量が少なく(主溶媒である超臨界CO2はリサイクルされる)、無害な溶媒を使用でき、環境に優しい方法であるという利点がある。
【0029】
抽出溶媒(超臨界CO2および任意選択でアルコール溶媒からなる混合物)は、アルコール抽出物に対する抽出溶媒の重量比が40~150、優先的には75で、超臨界CO2で抽出するステップで使用される。
【0030】
本発明の文脈において、超臨界CO2で抽出するステップを経る「アルコール抽出物」は、チレッタセンブリ(Swertia chirata)を少なくとも1種のアルコール溶媒で抽出するステップによって得られた抽出物であり、したがって、「アルコール抽出」のステップを経たものである。アルコール溶媒は、前記で定義した通りである。それは、超臨界CO2で抽出するステップで使用するアルコール溶媒と同じものであってもよいし、別のものであってもよい。好ましい一実施形態によれば、アルコール抽出ステップに使用されるアルコール溶媒はエタノール、より好ましくは60℃のエタノールである。
【0031】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)のすべての部分は、「新鮮な」状態で、すなわち収穫後48時間以内、特に24時間以内、さらに特に12時間以内に、アルコール溶媒で抽出できる。
【0032】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)のすべての部分はまた、乾燥した状態で抽出できる。この場合、常温暗所、または通風乾燥機で35℃未満の温和な条件下で、新鮮な植物を脱水する。植物は、固形分が80%、好ましくは85%を超えて得られるまで、好ましくは乾燥される。
【0033】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)のすべての部分はまた、5cm未満、好ましくは2cm未満の大きさを有する粒子を含む粉末を得るために粉砕できる。
【0034】
新鮮な形態または乾燥した形態、全体または粉砕されたチレッタセンブリ(Swertia chirata)のすべての部分は、本発明の文脈で使用されるチレッタセンブリ(Swertia chirata)のアルコール抽出物を得るために、少なくとも1種のアルコール溶媒を用いた少なくとも1つの抽出ステップ(アルコール抽出ステップ)に供される。このアルコール抽出ステップにおける植物/アルコール溶媒の比率は、通常1~10(重量/重量)であり、このステップは少なくとも1時間、好ましくは少なくとも2時間、特に少なくとも3時間継続し、1回または2回繰り返すことが可能である。このアルコール抽出ステップの最後に得られたアルコール抽出物は、植物残渣を除去するために、例えば、ふるい分けによって濾過される。アルコール抽出物は、例えば、100μm、特に10μm、優先的には1μmまで濾過できる。
【0035】
アルコール抽出物は、例えば、濾過ステップの後に脱色できる。このステップは、抽出物に含まれる色素(主にクロロフィル)を除去することを目的とする。当業者は、植物抽出物中に存在する色素を除去するためのいくつかの方法を知っている。脱色は、例えば、抽出物を活性炭と接触させることにより行える。脱色を行った後、残留炭素を除去するために、混合物は濾過される。
【0036】
したがって、チレッタセンブリ(Swertia chirata)をアルコール抽出する少なくとも1つのステップ、および任意選択で濾過および/または脱色ステップの後に得られる、このチレッタセンブリ(Swertia chirata)のアルコール抽出物は、超臨界CO2を用いた抽出に供される。
【0037】
ある特定の実施形態において、アルコール抽出物は、超臨界CO2を用いた抽出に供される前に、例えばデンプン、マルトデキストリン、または好ましくはセルロースなどの多糖類などの担体と組み合わされる。これに関連して、多糖類はアルコール抽出物に添加される:アルコール抽出物の含有量は、アルコール抽出物と多糖類を含む混合物の総重量に対して50~70重量%の範囲であり、および多糖類(好ましくはセルロース)の含有量は、アルコール抽出物と多糖類を含む混合物の総重量に対して、30~50重量%の範囲である。
【0038】
この特定の実施形態によれば、アルコール抽出物+多糖類混合物中に存在するアルコール溶媒、優先的にはエタノールは、多糖類/乾燥抽出物の混合物のみ、すなわち、100重量%の固形物を含むものを得るために、通常は蒸発によって、例えば真空下での蒸発によって、除去できる。次に、2cm未満、好ましくは1cm未満のサイズを有する粒子を含む多糖類/乾燥抽出物粉末を得るために、この混合物を粉砕できる。この実施形態によれば、本発明の方法の文脈において、超臨界CO2で抽出するステップに供されるのは、この粉末である。
【0039】
したがって、1つの特定の実施形態によれば、本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを調製する方法は、以下のステップを含む:
a)好ましくは粉末形態のチレッタセンブリ(Swertia chirata)を、少なくとも1種のアルコール溶媒、好ましくはエタノールで抽出するステップと、
b)ステップa)で得られた混合物を濾過し、植物残渣を除去するステップと、
b’)任意選択で、ステップb)の最後に得られた混合物を脱色するステップと、
c)こうして得られた混合物に、多糖類、好ましくはセルロースを加えて、アルコール溶媒中の多糖類/乾燥抽出物混合物を得るステップと、
d)アルコール溶媒を、好ましくは蒸発により除去するステップと、
e)ステップd)の最後に得られた乾燥抽出物/多糖類混合物を粉砕して、粉末を得るステップと、
f)ステップe)の最後に得られた粉末を、40~80℃、好ましくは50~70℃の温度および20~60MPa、好ましくは25~35MPaの圧力で、超臨界CO2を用いて抽出するステップ。
【0040】
超臨界CO2で抽出するステップの最後に得られたチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスは、本発明による抽出物である。
【0041】
また、この抽出物を化粧品用に処理および最終加工して、化粧品組成物に組み込むことも可能である。この処理は、例えば、希釈、化粧品用支持体との組み合わせ、溶媒の蒸発、または濾過のステップを経て、当業者に知られている従来の手段で行われる。
【0042】
この文脈では、超臨界CO2を用いた抽出に使用される溶媒に含まれる抽出物(すなわち、超臨界CO2で抽出するステップの最後に得られる液相)は、例えば1μmまで濾過するステップを受けられる。
【0043】
次に、抽出物を、植物油またはエステル化油などの油、例えば、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、または好ましくはパルミチン酸2-エチルヘキシル、例えば1%で希釈できる。
【0044】
アルコール溶媒は、油で希釈する前または後に、例えば蒸発によって、好ましくは真空下での蒸発によって除去できる。
【0045】
不溶性物質を除去するため、およびそれによって最終的な抽出物を得るため、オイルで希釈された抽出物は、例えば1μmまで再度濾過してもよい。
【0046】
したがって、この実施形態によれば、前記の方法は、以下のステップg)~i)を含むこともできる:
g)超臨界CO2を用いた抽出に使用した溶媒に含まれる抽出物を濾過し、任意選択でアルコール溶媒を、好ましくは蒸発により除去するステップと、
h)ステップg)の最後に得られた抽出物を油、好ましくはパルミチン酸2-エチルヘキシルで希釈し、任意選択で残留アルコール溶媒を、好ましくは蒸発により除去するステップと、
i)ステップh)の最後に得られた希釈抽出物を濾過するステップ。
【0047】
したがって、この実施形態によれば、本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを調製する方法は、以下のステップを含むことができる:
a)予め乾燥し、2cm未満の細かさに粉砕したチレッタセンブリ(Swertia chirata)の全部分を、溶媒/植物比が10/1となるように、エタノール中で、60℃、2時間浸漬して、2回抽出するステップと、
b)その後、こうして得られた抽出物を、100μmでふるい分けして、その後1μmまで濾過し、植物残渣を除去するステップと、
b’)抽出物を、乾燥抽出物に対して30%の活性炭で脱色し、その後、1μmまで再度濾過し、残留炭素を除去するステップと、
c)抽出物にセルロースを添加して、エタノール中のセルロース(40%)/乾燥抽出物(60%)混合物を得るステップと、
d)その後、エタノールを蒸発させて、セルロース/乾燥抽出物混合物のみを得るステップと、
e)その後、セルロース/乾燥抽出物混合物を、1cm未満の細かさに粉砕して、粉末を得るステップと、
f)続いて、60℃、500bar(50MPa)、流量200g/分で、超臨界CO2(95%)/エタノール(5%)混合物により、アルコール抽出物と比較した超臨界CO2(95%)/エタノール(5%)混合物の重量比が75となるまで、得られた粉末を抽出するステップと、
g)得られたエタノールに含まれる抽出物を1μmで濾過するステップと、
h)ステップg)の終わりに得られた抽出物をパルミチン酸2-エチルヘキシルで1%に希釈し、エタノールを蒸発させるステップと、
i)その後、抽出物を1μmまで濾過し、不溶性物質を除去して、最終抽出物(本明細書では「抽出物C1」と称する)を得るステップ。
【0048】
代替的な実施形態によれば、超臨界CO2を抽出するステップの最後に得られる、セルロースなどの多糖類およびチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの一部を含有する残留粉末(すなわち、超臨界CO2で抽出するステップの最後に得られる固相)は、アルコール溶媒、好ましくはエタノールに懸濁できる。アルコール溶媒は、前記のように定義され、アルコール抽出ステップおよび/または超臨界CO2で抽出するステップに使用されるものと、同じまたは別のアルコール溶媒であってよい。
【0049】
その後、アルコール溶媒に懸濁した残留粉末を含有する混合物は、セルロースを除去するために、例えば1μmまで濾過できる。
【0050】
続いて、カプリリルグリコール、ペンチレングリコール、または好ましくはプロパンジオールなどのグリコールで、抽出物を例えば1%に希釈できる。
【0051】
アルコール溶媒は、グリコールで希釈する前または後に、例えば蒸発によって、好ましくは真空下での蒸発によって除去できる。
【0052】
その後、不溶性物質を除去して、最終的な抽出物を得るため、グリコールで希釈した抽出物を再度、例えば1μmまで濾過できる。
【0053】
したがって、この代替実施形態によれば、上記ステップa)~f)を含む方法は、以下のステップg1)~j1)を含むことも可能である:
g1)ステップf)の最後に得られた残留粉末をアルコール溶媒、好ましくはエタノールに溶解するステップと、
h1)ステップg1)の最後に得られた混合物を濾過し、任意選択でアルコール溶媒を、好ましくは蒸発により除去するステップと、
i1)ステップh1)の最後に得られた抽出物をグリコール、好ましくはプロパンジオールで希釈し、任意選択で残留アルコール溶媒を、好ましくは蒸発により除去するステップと、
j1)ステップi1)の最後に得られた希釈抽出物を濾過するステップ。
【0054】
したがって、この代替実施形態によれば、本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを調製する方法は、以下のステップを含むことができる:
a)予め乾燥し、2cm未満の細かさに粉砕したチレッタセンブリ(Swertia chirata)の全部分を、溶媒/植物比が10/1となるように、エタノール中で、60℃、2時間浸漬して、2回抽出するステップと、
b)その後、得られた抽出物を、100μmでふるい分けして、その後1μmまで濾過して植物残渣を除去するステップと、
b’)抽出物を、乾燥抽出物に対して30%の活性炭で脱色し、その後、1μmまで再度濾過し、残留炭素を除去するステップと、
c)抽出物にセルロースを添加してエタノール中のセルロース(40%)/乾燥抽出物(60%)混合物を得るステップと、
d)その後、エタノールを蒸発させて、セルロース/乾燥抽出物混合物のみを得るステップと、
e)その後、セルロース/乾燥抽出物混合物を、1cm未満の細かさに粉砕し、粉末を得るステップと、
f)続いて、60℃、500bar(50MPa)、流量200g/分で、超臨界CO2(95%)/エタノール(5%)混合物により、アルコール抽出物と比較した超臨界CO2(95%)/エタノール(5%)混合物の重量比が75となるまで、得られた粉末を抽出するステップと、
g1)ステップf)の最後に存在する残留粉末を回収し、45℃で撹拌しているエタノール溶液に戻すステップと、
h1)この混合物を1μmで濾過し、セルロースを除去するステップと、
i1)次に、抽出物をプロパンジオールで1%に希釈し、エタノールを真空下で蒸発させるステップと、
j1)その後、抽出液を1μmで濾過し、不溶性物質を除去して、最終抽出物(本明細書では「抽出物C2」と称する)を得るステップ。
【0055】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキス
本願の主題となる発明は、前記に記載の方法によって得られたチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスも対象とする。
【0056】
化粧品組成物
本発明の主題は、生理学的に許容される媒体中に、本発明の方法によって得られた少なくとも1種のチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスを含む化粧品組成物である。
【0057】
本発明により使用される組成物は、前記の抽出物に加えて、生理学的に許容され、好ましくは化粧的に許容される媒体、すなわち、毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応の危険性がなく、特に不快感(赤み、張り、刺すような感じ)を引き起こさない、ヒトの皮膚と接触して使用するのに適した媒体を一般的に含んでいる。
【0058】
有利に、前記化粧品または皮膚科学的組成物は、粉末、乳剤、マイクロ乳剤、ナノ乳剤、懸濁液、溶液、ローション、クリーム、水性もしくは水性-アルコール性ゲル、泡、美容液、エアロゾルのための溶液もしくは分散剤、または脂質ベシクルの分散剤の形態であってよい。
【0059】
乳剤の場合は、油中水型乳剤および水中油型乳剤であってよい。
【0060】
本発明による化粧品または皮膚科学用組成物は、様々な成分および投与形態に応じて選ばれた溶媒を含んでいてもよい。
【0061】
例として、水(好ましくは、脱塩水やフローラルウォーター)およびエタノールなどのアルコールが挙げられる。
【0062】
前記化粧品組成物は、本発明による抽出物に加えて、この分野においては普通の少なくとも1種の添加剤、例えば、皮膚軟化剤もしくは保湿剤、ゲル化剤および/または増粘剤、界面活性剤、油剤、活性剤、染料、防腐剤、酸化防止剤、有機もしくは無機の粉末、日焼け止め剤、芳香剤から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む:
- 1種または複数種の保湿剤、例えば、ポリオール(グリセロール、ジグリセロール、プロパンジオール、カプリリルグリコール、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール)、糖類、ヒアルロン酸などのグリコサミノグリカンおよびそれらの塩やエステル;およびLipidure PMBなどのポリクオタニウム。
【0063】
前記保湿剤は、組成物の総重量の約0.1から30%、好ましくは0.005から10%の含有量で組成物に存在するであろう。
【0064】
1種類または複数種の皮膚軟化剤、例えば、ホホバエステル、脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステル(ミリスチン酸オクチルドデシル、トリエチルヘキサノイン、炭酸ジカプリリル、イソステアリン酸イソステアリル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)などのエステル類、シア脂(シア脂エキス、シア脂エチルエステルズ、Lipex Sheasoft、Lipex Shea-U、Lipex Shea、Lipex Shealight、Lipex Shea Trisの名称で販売されている)、モリンガバター(モリンガオイル/水素添加モリンガオイルエステル)などのバター類、ロウ類(フサアカシア花ロウおよびヒマワリ種子ロウ(種子ロウ)、C10~18のトリグリセリド)、植物油、フィトスクワラン、アルカン類(ウンデカン、トリデカン)などから選ばれる。
【0065】
前記皮膚軟化剤は、組成物の総重量の約0.1から30%、好ましくは0.5から10%の含有量で組成物中に存在するであろう。
【0066】
- 1種または複数種の水相ゲル化剤および/または水相増粘剤、例えば、セルロース系誘導体、植物由来のガム(グアー、ローカストビーン、アルギン酸塩、カラギーナン、ペクチン)、または微生物由来のガム(キサンタン)、粘土(ラポナイト)、アクリロイルメチルプロパンスルホン酸(AMPS)および/またはアクリルアミドおよび/またはアクリル酸および/またはアクリル酸の塩またはアクリル酸のエステルの親水性または両親媒性、架橋ポリマーまたは非架橋のホモポリマーおよびコポリマー(Aristoflex AVC、Aristoflex AVS、Aristoflex HMB、Simulgel NS、Simulgel EG、Simulgel 600、Simulgel 800、Pemulen、Carbopol、Sepiplus 400、Seppimax Zen、Sepiplus S、Cosmedia SPの名称で販売)から選ばれる。
【0067】
前記ゲル化剤および/または増粘剤は、組成物の総重量の約0.1から10%の含有量で組成物中に存在するであろう。
【0068】
- 1種または複数種の界面活性剤、レシチン、ポリグリセロール誘導体、糖誘導体(Montanov 68、Montanov 202、Montanov 82、Montanov L、Easynovの名称で販売されているグルコシド誘導体またはキシロシド誘導体)、またはリン酸塩(Sensanov WRの名称で販売されているC20~22のアルキルリン酸塩)など。
【0069】
前記界面活性剤は、組成物の総重量に対して、約0.1から8重量%、好ましくは0.5から3重量%の含有量で存在するであろう。
【0070】
- 生物学的活性を有し、生物学的部位を介して皮膚に有効性を有する、天然、生物工学的または合成起源の1種または複数種の活性剤、例えば、ビタミンCおよびその誘導体(アスコルビルグルコシド、3-O-エチルアスコルビン酸、テトライソパルミチン酸アスコルビル)、ビタミンAおよびその誘導体、ビタミンEおよびその誘導体、ビタミンB3もしくはナイアシンアミド、パンテノールなどのビタミン、微量元素、アラントイン、アデノシン、ペプチド(パルミトイルテトラペプチド-7、パルミトイルトリペプチド-1、パルミトイルペンタペプチド-4、アセチルジペプチド-1セチルエステル、アセチルテトラペプチド-5、NPリジン、Matrixyl3000、Idealift、Eyeserylの名称で販売されている)、植物抽出物(スペインカンゾウエキス、ツボクサ葉エキス、ライムギ種子エキス)、酵母抽出物、グリコール酸もしくは乳酸などのα-ヒドロキシ酸、トラネキサム酸およびその誘導体、例えばトラネキサム酸セチルエステル、から選択される。
【0071】
前記活性剤は、組成物の総重量の約0.1から10%の含有量で組成物中に存在するであろう。
【0072】
化粧品において習慣的に使用される他の添加物は、本発明による組成物に存在してもよく、特に防腐剤、酸化防止剤、または芳香剤は、本技術分野において既知である。
【0073】
当業者は、前記組成物がその特性をすべて維持できるように、組成物に対して加えられるものの性質と量を、これらすべての任意選択の添加剤から選べる。
【0074】
本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの非治療的な化粧的使用
本発明の主題は、皮膚の老化を防止および/または低減するための、本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの非治療的な化粧的使用でもある。
【0075】
本実施形態において、抽出物または組成物は、良い状態ではないが病的ではない皮膚に適用される。
【0076】
本発明の主題は、皮膚に潤いを与えるため、および/または皮膚のバリア機能を改善するための、保湿剤または緩和剤としての本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの非治療的な化粧的使用でもある。
【0077】
さらに、本発明の主題は、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性を阻害する薬剤としての、本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの非治療的な化粧的使用である。
【0078】
最後に、本発明の主題は、細胞外マトリックスの構成要素をコードする遺伝子の発現を刺激する、特にラミニンおよびプロテオグリカンをコードする遺伝子の発現を刺激する薬剤としての、本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの非治療的な化粧的使用である。
【0079】
次に、本発明を以下の非限定的な実施例によって説明する。
【実施例】
【0080】
[実施例1]
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスの調製と特性評価
抽出物1(抽出物「C1」または「PFAC1」)は、以下の調製方法によって得られる:
a)予め乾燥し、2cm未満の細かさに粉砕したチレッタセンブリ(Swertia chirata)の全部分を、溶媒/植物比が10/1となるように、エタノール中で、60℃、2時間浸漬して、2回抽出する;
b)その後、得られた抽出物を、100μmでふるい分けして、その後1μmまで濾過して植物残渣を除去する;
b’)抽出物を、乾燥抽出物に対して30%の活性炭で脱色し、その後、1μmまで再度濾過して残留炭素を除去する;
c)抽出物にセルロースを添加してエタノール中のセルロース(40%)/乾燥抽出物(60%)混合物を得る;
d)その後、エタノールを蒸発させて、セルロース/乾燥抽出物混合物のみを得る;
e)その後、セルロース/乾燥抽出物混合物を、1cm未満の細かさに粉砕して粉末を得る;
f)続いて、60℃、500bar(50MPa)、流量200g/分で、超臨界CO2(95%)/エタノール(5%)混合物を用いて、粉末が抽出できなくなるまで、得られた粉末を抽出する;
g)得られたエタノールに含まれる抽出物を1μmで濾過する;
h)抽出物をパルミチン酸2-エチルヘキシルで1%に希釈した後、4℃で一晩放置してエタノールを蒸発させる;
i)その後、抽出物を1μmで濾過して、不溶性物質を除去し、最終抽出物を得る。
【0081】
分析の結果、抽出物1は、0.053重量%のキサントンを含み、0.015%のノルスウェルチアニン(norswertianin)、0.006%のスウエルチアニン(swertianin)、0.002%のベリジン(bellidin)、および0.03%のヒドロキシキサントン誘導体を含有することを見出した。抽出物1は、0.03重量%のオレアノール酸/ウルソール酸(トリテルペン)も含む。この抽出物には、検出可能なスウェルチアマリン(swertiamarin)は含まれていない。
【0082】
この抽出物は、非極性分子が豊富な油性抽出物である。したがって、それは油性/非水性組成物に有利に統合できる。
【0083】
抽出物2(抽出物「C2」または「PFAC2」)は、以下の調製方法によって得られる:
a)予め乾燥し、2cm未満の細かさに粉砕したチレッタセンブリ(Swertia chirata)の全部分を、溶媒/植物比が10/1となるように、エタノール中で、60℃、2時間浸漬して、2回抽出する;
b)その後、得られた抽出物を、100μmでふるい分けして、その後1μmまで濾過し、植物残渣を除去する;
b’)抽出物を、乾燥抽出物に対して30%の活性炭で脱色し、その後、1μmで再度濾過して残留炭素を除去する;
c)抽出物にセルロースを添加して、エタノール中のセルロース(40%)/乾燥抽出物(60%)混合物を得る;
d)その後、エタノールを蒸発させてセルロース/乾燥抽出物混合物のみを得る;
e)その後、セルロース/乾燥抽出物混合物を、1cm未満の細かさに粉砕して粉末を得る;
f)続いて、60℃、500bar(50MPa)、流量200g/分で、超臨界CO2(95%)/エタノール(5%)混合物を用いて、粉末が抽出できなくなるまで、得られた粉末を抽出する;
g1)次に、ステップf)の最後に存在する残留物を回収し、45℃で撹拌しているエタノール溶液に戻す;
h1)この混合物を1μmで濾過し、セルロースを除去する;
i1)次に、乾燥抽出物をプロパンジオールで1%に希釈し、エタノールを蒸発させる;
j1)その後、抽出液を1μmで濾過して、可溶性物質を除去し、最終抽出物を得る。
【0084】
分析の結果、抽出物2は、0.134重量%のキサントンを含み、0.052%のマンギフェリン(mangiferin)、0.006%のノルスウェルチアニン、0.039%の3-O-デメチルスウェルチプニコシド(demethylswertipunicoside)、0.001%のベリジン、0.019%のジキサントン(dixanthone)および0.002%のヒドロキシキサントン誘導体を含有することを見出した。抽出物2は、0.035%のスウェルチアマリン、0.282重量%の糖/ポリオール、0.038重量%のオレアノール酸/ウルソール酸(トリテルペン)、0.024%のミネラルおよび0.001重量%未満のアマロゲンチン(amarogentin)も含む。
【0085】
この抽出物は、極性分子が豊富な水性アルコール抽出物である。したがって、それは水性組成物に有利に統合できる。
【0086】
比較エタノール抽出物(抽出物「EtOH」)は、以下の調製方法によって得られる:
a)予め乾燥し、2cm未満の細かさに粉砕したチレッタセンブリ(Swertia chirata)の全部分を、溶媒/植物比が10/1となるように、エタノール中で、60℃、2時間浸漬して、2回抽出する;
b)その後、得られた抽出物を、100μmでふるい分けして、その後1μmまで濾過して、植物残渣を除去する;
b’)抽出物を、乾燥抽出物に対して30%の活性炭で脱色し、その後、1μmで再度濾過して残留炭素を除去する;
i1)次に、乾燥抽出物をプロパンジオールで希釈して、プロパンジオール(90%)/乾燥抽出物(10%)の混合物を得、エタノールを蒸発させる。
【0087】
分析の結果、比較抽出物EtOHは、0.156重量%のキサントンおよび0.043重量%のトリテルペンを含むと決定した。
【0088】
[実施例2]
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1およびC2の活性
手順:
3人の異なる提供者(27~34歳)から得た正常なヒト表皮角化細胞を6ウェルプレートに播種し、KGM-2培地(Lonza社から供給)により、37℃、5%CO2で72時間培養した。その後、細胞を、0.5%または0.25%のチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1またはC2とともに48時間インキュベートしたか、またはインキュベートしなかった(対照)。各条件は重複して行った。RNeasy 96プレート抽出キット(Qiagen社が供給)を使用して、供給者の推奨に従って、全RNAを抽出した。MultiskanG0(ThermoFischer社が供給)によって、RNAの量と質を評価した。相補的DNAを合成し、Affymetrix(登録商標)GeneChip Human TranscriptomeArray2.0チップでトランスクリプトームを実行した。その発現が少なくとも2倍変調されている、遺伝子のバイオインフォマティクス分析は、Ingenuity Pathway Analysisソフトウェア(IPA(登録商標)、Qiagen社)を使用して行った。このソフトウェアは、Ingenuity Knowledge Databaseにおいて、分子間の相互作用、生物学的ネットワーク、および標準経路に関する情報を収集する。
【0089】
結果:
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1およびC2は、表皮角化細胞において異なる遺伝子調節プロファイルを示す。
【0090】
2つのチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスのそれぞれは、48時間の処理後、表皮角化細胞の遺伝子発現(183~636遺伝子)を調節する。0.25%の濃度では、抽出物は0.5%の濃度と比較して2~2.5倍多くの遺伝子を調節する。ベン図は、2つの抽出物によって共通に調節される遺伝子はほとんどなく、0.5%の濃度では35の共通遺伝子、0.25%の濃度では158の遺伝子しか存在しないことを示す(データは示していない)。
【0091】
IPA(登録商標)ソフトウェアを使用して、2つの抽出物によって調節されている生物学的ネットワークの分析により、異なるマッピングを示す。これらの結果は、チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1およびC2が異なる生物学的メカニズムを介して作用することを示唆する。チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1は、生物学的経路を阻害することによって優先的に作用する。その一方、チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC2は、角化細胞の生物学的経路を優先的に活性化する。
【0092】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1は、表皮角化細胞を介した炎症および細胞外マトリックスの分解プロセスを阻害する。
【0093】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1によって調節された生物学的経路と遺伝子の分析から、この抽出物はインターロイキンIL-8を介した炎症反応を抑えることができることが明らかになり(
図1、アスタリスク)、表皮角化細胞における細胞外マトリックスの分解を担うメタロプロテアーゼ、MMP1(FC=-146)、MMP3(FC=-22)、MMP9(FC=-4)、MMP10(FC=-21)の発現を非処理対照と比較して阻害できることが明らかになった。これらの特性から、チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC1は、皮膚の抗炎症および抗老化の役割を持つことになる。
【0094】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC2は、角化細胞の脂質代謝を刺激し、細胞外マトリックス要素の合成を促進する。
【0095】
チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスC2によって調節された生物学的経路と遺伝子の分析から、この抽出物は表皮角化細胞の脂質代謝に関わる生物学的経路(LXR/RXRおよびPPAR経路、
図2)を刺激できることが明らかになった。同様に、チレッタセンブリ(Swertia chirata)エキス1411PFA C2は、細胞外マトリックス要素(ラミニンおよびプロテオグリカン)または線維芽細胞活性化因子をコードする多数の遺伝子の発現を促進できる(下記の表1参照)。
【0096】
【0097】
そのため、この抽出物は、細胞外マトリックス成分の合成を促進する活性の効力により、抗老化特性を発揮するとともに、皮膚の脂質バリアを強化し、皮膚の保湿性を維持および改善する特性もある。
【0098】
本発明によるチレッタセンブリ(Swertia chirata)エキスは、それぞれMMPの阻害、またはマトリックス要素の合成のいずれかによる相補的な活性によって媒介される、皮膚抗老化活性を有する。比較抽出物EtOHには、このような特異的な性質はない。
【0099】
[実施例2]
化粧品組成物
次の組成物は、当業者より従来の方法で調製できる。以下に示す量は、重量パーセンテージで表現している。成分は、INCI名により同定している。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
これらの組成物は、毎日、朝および/または夜に、皮膚に塗布できる。