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特許7431910改善された環境適合性を有する永久接着性感圧接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】改善された環境適合性を有する永久接着性感圧接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/16 20060101AFI20240207BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C09J123/16
C09J123/26
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022147893
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2020556752の分割
【原出願日】2019-04-08
(65)【公開番号】P2022180481
(43)【公開日】2022-12-06
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】102018109269.5
(32)【優先日】2018-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァーベ・イェレミア
(72)【発明者】
【氏名】ハウク・エーリク
(72)【発明者】
【氏名】ホフナー・ゲルト
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091903(JP,A)
【文献】特開2006-063123(JP,A)
【文献】特開2007-255687(JP,A)
【文献】特開平03-197516(JP,A)
【文献】特表2006-502259(JP,A)
【文献】特開2014-173027(JP,A)
【文献】特開2002-302659(JP,A)
【文献】国際公開第2015/005266(WO,A1)
【文献】特開2007-138171(JP,A)
【文献】特開2007-138172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンとエチレンとのコポリマーを55~99重量%含む、感圧接着剤であって、前記コポリマーはメタロセン触媒を用いて製造されたものであり、そして前記コポリマーは
a.20~8000mPasの170℃での溶融粘度(DIN 53019);
b.0.84~0.90g/cmの密度(23℃,ISO1183);
c.-30℃未満のガラス転移温度(DIN EN ISO 11357-2:2014);
d.ASTM D97に従って測定された、50℃未満の流動点
を特徴とし、
前記感圧接着剤中にはさらに別のポリマーが含まれているか、または含まれておらず、ここで前記のさらに別のポリマーは、前記コポリマーとは異なるさらに別のポリオレフィン、天然もしくは合成ゴム、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリクロロプレン、ポリビニルエーテル、ポリウレタンおよび非極性ワックスからなる群から選択され、
ただし、前記感圧接着剤中に含まれる樹脂の割合または鉱油の割合はそれぞれ、感圧接着剤を基準として1重量%未満であり、前記樹脂は、石油精製のC5留分またはC9留分からの低分子量生成物であり、芳香族化合物を含み、かつ室温より高いガラス転移温度を有し、
前記コポリマーが、70~95重量%のプロピレンおよび5~30重量%のエチレンから得られることを特徴とする、
感圧接着剤。
【請求項2】
前記コポリマーが、ISO11357-2に従って測定して、0~50J/gの融解エンタルピーを有することを特徴とする、請求項1に記載の感圧接着剤。
【請求項3】
前記コポリマーを55~99重量%、ならびに前記のさらに別のポリマーを1~45重量%含む、請求項1または2に記載の感圧接着剤。
【請求項4】
前記さらに別のポリマーが、前記コポリマーとは異なる少なくとも1種のポリオレフィンであることを特徴とする、請求項3に記載の感圧接着剤。
【請求項5】
前記コポリマーとは異なる少なくとも1種のポリオレフィンが、
a.-15℃未満のガラス転移温度(DIN EN ISO 11357-2:2014)、
b.50,000mPas未満の170℃での溶融粘度(DIN 53019)、および
c.50℃超の流動点(ASTM D97)、
を有することを特徴とする、請求項4に記載の感圧接着剤。
【請求項6】
前記の感圧接着剤が、25℃および1HzでG’≦10Paのダールキスト基準を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の感圧接着剤。
【請求項7】
前記コポリマーが、30~5000mPasの170℃での溶融粘度(DIN53019)を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の感圧接着剤。
【請求項8】
前記コポリマーが、DIN EN ISO 11357-2:2014に従って測定された、-35℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の感圧接着剤。
【請求項9】
前記コポリマーが、40℃未満の、ASTM D97に従って測定した流動点を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の感圧接着剤。
【請求項10】
有機もしくは無機顔料、フィラー、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤および光安定剤を含有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の感圧接着剤。
【請求項11】
前記コポリマーが極性変性されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の感圧接着剤。
【請求項12】
基材を接合するための、請求項1~11のいずれか1項に記載の感圧接着剤の使用。
【請求項13】
35mN/m未満の表面エネルギーを有する基材と、任意の表面エネルギーを有する1または複数の基材とを接合するための、請求項12に記載の感圧接着剤の使用。
【請求項14】
テフロンでできた基材またはシリコーン処理された表面を有する基材と、任意の表面エネルギーを有する1または複数の基材とを接合するための、請求項13に記載の感圧接着剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の接着のための樹脂不含かつ鉱油不含の感圧接着剤であって、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレンのコポリマーを含有する感圧接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
感圧接着剤(pressure sensitive adhesivesまたはPSA)は、種々の材料でできた被着体(基材)の表面間の接着結合を作り出すために適している。その場合、基材(低い表面エネルギーを有する基材であっても)は、濡らされ、被着体のわずかな圧力により互いに接合される。物理的原理に基づく接着作用は大抵が可逆的であり、その後基材の破壊なしに剥がすことができる。
【0003】
感圧接着剤の使用可能性は非常に多方面にわたる。それらは、特に、例えば保護フィルム、塗装業者用のマスキングテープ、付箋、ラベル、絆創膏および工芸品のような、可逆的であって基材上に接着剤残渣を残さない接着結合のために使用される。しかしながら、場合によっては、永久接着は、例えばセキュリティラベル、セキュリティエンベロープ、セキュリティバッグ、フィルム粘着テープ、フィルタ、包装、衛生物品、および自動車分野または建設における接着においても実現することができる。
【0004】
感圧接着剤の処理、特に適切な基材への塗布は、多様な方法によって、例えば溶融物から、水性分散体から、または有機溶媒を使用して溶液から、実現できる。
【0005】
溶融物から塗布される感圧接着剤は、ホットメルト接着剤に属し、これは、接着剤の溶融によって、接着される基材上に容易に塗布して接着できる状態にされる。しかしながら、従来のホットメルト接着剤とは対照的に、感圧接着剤は、無限に長いオープンタイム、すなわち接着剤を接着に使用できる期間を特徴とする。これにより、室温で永久接着性がもたらされる。これとは対照的に、従来のホットメルト接着剤は、比較的短いオープンタイムを有し、冷却後、基材と不可逆的な接合を形成する。
【0006】
感圧接着剤の永久接着性は、物理的パラメータ、すなわち「ダールキスト基準(Dahlquist-Kriterium」によって定性的に記述することができる。それは粘着性に関するレオロジー基準であり、振動型レオメーター実験から導き出すことができる。所定の温度(ここでは25℃)での周波数掃引により、接着剤の貯蔵弾性率を決定できる。25℃および1Hzでの貯蔵弾性率が10Paを超える場合、粘着性はない(S.S Heddleson et. Aa; Cereal. Chem 70(6) 744; 1993(非特許文献1))。接着剤が<10Paの貯蔵弾性率を有する場合、感圧接着剤に特徴的であるように、永久接着性を有する。
【0007】
感圧接着剤の永久接着性を実現できるためには、感圧接着剤は、付着性ベースポリマー、接着性粘着付与剤(任意選択的に可塑剤と組み合わせて)、およびさらに別の添加剤から構成される調製物からなる。
【0008】
接着性ベースポリマーとしては、ポリマー、例えば天然-および合成ゴム、ポリアクリレート類、ポリイソブチレン類、ポリオレフィン類、ポリエステル、ポリクロロプレン類、ポリビニルエーテル、ポリウレタン類、スチレン-ブタジエン-もしくはスチレン-イソブテン-ブロックコポリマーが使用される。これらのベースポリマーが、通常、接着剤系の付着作用を担保する。
【0009】
感圧接着剤の粘着付与剤の接着作用は、まず第一に樹脂成分によって決定される。これらの樹脂は、石油精製のC5留分またはC9留分からの低分子量生成物であり、多くの場合に芳香族化合物を含み、通常、室温より高いガラス転移温度を有する。
【0010】
従って、ホットメルト接着剤調製物への樹脂の混合は、当該調製物のガラス転移温度を上昇させ、その結果、対応の接着剤は、低温柔軟性の低下を受け、温度に関して使用ウィンドウが制限される。
【0011】
樹脂は、通常、一部1g/cm超の密度を有する。従って、ホットメルト接着剤調製物におけるそのような樹脂の使用は、特にポリオレフィン調製物において、密度を増加させる。その結果、一定の塗布体積に関して、より多くの接着剤(重量ベース)が必要であり、これは負のコスト要因であり、接着された基材のより大きい重量も意味する。
【0012】
樹脂としては、ポリテルペン樹脂、天然および変性ロジン樹脂、特に樹脂エステル、樹脂のグリセロールエステル、フェノール変性ペンタエリトリトールエステルおよびフェノール変性テルペン樹脂が使用される。そのような樹脂タイプは、アビエチン酸のような刺激性の/健康に有害な物質を含み、アレルギーを引き起し得、そのためにそれらは衛生分野における、食品包装のための、および医療分野における用途に関して疑わしい。
【0013】
接着剤調製物における可塑剤は、接着剤組成物の粘度低下に役立ち、従って、そのより良好な加工性および適用可能性に役立つ。通常、永久接着性感圧接着剤は、部分的に、有意な量で鉱油を可塑剤として含有する。
【0014】
鉱油は石油をベースとし、従って、パラフィン系、ナフテン系、芳香族および多環式化合物、ならびに揮発性有機化合物(volatile organic compounds:VOC)を含有し、これらは室内空気の汚染増加に寄与する。また、MOSHおよびMOAH(鉱油飽和炭化水素または鉱油芳香族炭化水素)として鉱油中に含有される化合物は、それらがヒト組織中に蓄積する傾向があるため、毒物学的に危険であるとして分類される。鉱油は、通常、接着剤調製物中にほとんど組み入れられず、従って、より強いマイグレーションの傾向がある。これらの理由から、鉱油不含の調製物は、食品包装および接着された衛生用品のために望ましい。
【0015】
US6987142(特許文献1)には、粘着付与剤としての樹脂および可塑剤としての鉱油を含有する、スチレンブロックコポリマーをベースとする感圧接着剤が記載されている。
【0016】
EP1353997B1(特許文献2)には、非晶質のエチレン/プロピレンコポリマー、非立体規則性ポリプロピレンホモポリマー、および任意選択的に粘着付与剤でできたホットメルト接着剤が記載されている。前述のエチレン-プロピレンコポリマーは、好ましくは、メタロセン触媒を用いて製造されず、-33~-23℃の好ましいガラス転移温度を有する。前記ポリプロピレンホモポリマーは、好ましくは、メタロセン触媒を用いて製造され、50,000mPas超の190℃での溶融粘度および-15~+10℃のガラス転移温度を有する。
【0017】
EP1788056(特許文献3)には、ホットメルト接着剤におけるポリオレフィンワックスの使用が記載されており、前記ホットメルト接着剤は、1種または複数のアタクチック非晶質ポリアルファオレフィンを少なくとも60%、ならびにモノマーであるエチレンまたはプロピレンおよび/または4~20個のC原子を有する高級直鎖状もしくは分岐状α-オレフィンでできたアイソタクチックホモ-および/またはコポリマーワックスを40%まで有する。
【0018】
メタロセン触媒を用いて製造されたポリオレフィンは、別の挿入機構を用いて、例えばチーグラー・ナッタ触媒を用いて製造されたポリオレフィンとはそれらの構造が異なることが知られている。これらの相違は、例えば、コモノマーの組み入れまたは分子量分布に関し得る。しかしながら、通常、そのような特定の相違を、応用技術的な特性の相違に転ずることは不可能である。
【0019】
US2004/0127614A1(特許文献4)は、メタロセン触媒を用いて製造されたポリプロピレン、ならびに樹脂および鉱油を含有する感圧接着剤調製物が記載されている。
【0020】
メタロセン触媒を用いて製造された1-オレフィンとエチレンとの低分子量非晶質コポリマーが、EP200351B2(特許文献5)およびEP58677B1(特許文献6)から公知である。ビス-シクロペンタジエニル型の架橋または非架橋メタロセンを用いて製造された、エチレンとC3~C20を有する高級1-オレフィンとの統計的コポリマーが記載されている。前記コポリマーは、潤滑油における使用に適している。
【0021】
US2017088754A1(特許文献7)には、不均一チーグラー・ナッタ触媒を用いて製造された、ホットメルト接着剤調製物のために使用される、エチレンと高級1-オレフィン、特にプロピレン、ブチレン、1-ヘキセンとの非晶質ポリ-α-オレフィン(APAO)が記載されている。ここでは、粘着付与剤が、特性を改善するために使用される。
【0022】
メタロセン触媒を用いて製造された、部分結晶性の特性を有する、プロピレンとエチレンとのワックス様コポリマーが、EP0384264A1(特許文献8)から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】US6987142
【文献】EP1353997B1
【文献】EP1788056
【文献】US2004/0127614A1
【文献】EP200351B2
【文献】EP58677B1
【文献】US2017088754A1
【文献】EP0384264A1
【非特許文献】
【0024】
【文献】S.S Heddleson et. Aa; Cereal. Chem 70(6) 744; 1993
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従来技術を超えて、樹脂も鉱油も含有せず、従って改善された環境適合性、低下したコスト水準、および任意選択的により低い重量を有する、PSAのための改善された接着剤調製物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
驚くべきことに、特定の、メタロセン触媒を用いて製造されたプロピレンのコポリマーが、樹脂および鉱油添加を必要とせずに、特に感圧接着剤における使用に適していることが見出された。
【0027】
本発明の意味において、樹脂は、石油精製のC5留分またはC9留分からの低分子量生成物であり、芳香族化合物を含み、室温より高いガラス転移温度を有する。本発明の意味において、樹脂不含および鉱油不含とは、樹脂の割合または鉱油の割合がそれぞれの場合に、本発明の感圧接着剤を基準として、1重量%未満であることを意味する。
【0028】
本発明の対象は、プロピレンと、エチレンおよび4~20個のC原子を有する1-オレフィンからなる群から選択される1種または複数のさらに別のモノマーとの少なくとも1種のコポリマーを、55~99重量%、殊に好ましくは60~95重量%含む、樹脂不含かつ鉱油不含の感圧接着剤である。本発明の感圧接着剤は、任意選択的に、さらに別のポリマーを含むことができる。前記のプロピレンのコポリマーは、メタロセン触媒を用いて製造され、
a.20~8000mPas、好ましくは30~5000mPas、殊に好ましくは50~3000mPasの170℃での溶融粘度(DIN 53019)、
b.0.84~0.90g/cm、好ましくは0.85~0.89g/cmの密度(23℃、ISO1183)、
c.-30℃未満、殊に好ましくは-35℃未満、非常に殊に好ましくは-40℃未満のガラス転移温度(DIN EN ISO 11357-2:2014)、および
d.50℃未満、好ましくは40℃未満の、ASTM D97に従って測定した流動点、を特徴とする。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明のプロピレンのコポリマーは、ISO11357-2に従って測定して、0~50J/g、好ましくは0~30J/g、殊に好ましくは0~20J/gの融解エンタルピーを有する。
【0030】
好ましい実施形態において、本発明の感圧接着剤に使用されるプロピレンのコポリマーは、70~95重量%のプロピレンおよび5~30重量%のエチレンからなる。
【0031】
好ましくは、本発明の感圧接着剤は、前記のプロピレンのコポリマーに加えて、0~45重量%、殊に好ましくは1~45重量%、非常に殊に好ましくは5~30重量%の、以下のポリマータイプの群から選択される1種または複数のさらに別のポリマーも含む:
【0032】
- 更に別のポリオレフィン:
前記のさらに別のポリオレフィンは、任意の非極性もしくは極性の分岐状もしくは非分岐状オレフィン、またはこれらの組み合わせの重合により得ることができる。前記ポリオレフィンの製造は、イオン、ラジカルまたは挿入メカニズムに従って行うことができる。前記ポリオレフィンの製造のためには、チーグラー・ナッタ触媒またはメタロセン触媒を使用下での非極性モノマーが好ましい。低分子量部分結晶性ホモポリマーもしくはコポリマー、例えばクラリアント社のLicocene(登録商標)の名称で市販されているものが殊に適している。さらに、例えばVersify(登録商標)、Infuse(登録商標)、Affinity(登録商標)、Licocene(登録商標)もしくはEngage(登録商標)(Dow Chemical Comp.)またはVistamaxx(登録商標)もしくはExact(登録商標)(Exxon Mobil Chemical)またはVestoplast (Evonik)またはEastoflex (Eastman)のような商品名で知られる、エチレンとプロピレンまたは高級α-オレフィン、例えば1-ブテンもしくは1-オクテンとのコポリマーも好ましい。さらなる好ましいものは、スチレンおよびジエン、例えばイソプレンもしくはブタジエン由来の任意選択的に多少のエチレンを含むブロックコポリマー(SIS、SBS、SEBS、SEP)である。さらなる好ましいものは、いわゆるアモルファスポリ-α-オレフィン(APAO)、アタクチックポリプロピレン(APP)またはポリイソブテン(PIB)である。- 天然-もしくは合成ゴム、ポリアクリレート類、ポリエステル、ポリクロロプレン類、ポリビニルエーテルおよび/またはポリウレタン類;
- 非極性ワックス、例えばポリエチレン-もしくはポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、例えばフィッシャー・トロプシュ・パラフィン、マイクロ-もしくはマクロ結晶性パラフィン、極性ワックス、例えば酸化されたもしくは極性オレフィンでグラフト化されたポリオレフィンワックス、エチレン-酢酸ビニルコポリマーワックスおよび/またはエチレン-アクリル酸-コポリマーワックス。
【0033】
さらに、本発明の感圧接着剤は、有機もしくは無機顔料、フィラー、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤および光安定剤を含有することができる。
【0034】
好ましい実施形態において、前記のさらに別のポリマーは、
a.-15℃未満のガラス転移温度(DIN EN ISO 11357-2:2014)、
b.50,000mPas未満の170℃での溶融粘度(DIN 53019)、およびc.50℃超の流動点(ASTM D97)、
を特徴とする、さらに別のポリオレフィン類である。
【0035】
ここで、殊に好ましくは、それらはエチレンまたはプロピレンのコポリマー、例えばLicocene(登録商標)(Clariant)、Versify(登録商標)、Infuse(登録商標)、Affinity(登録商標)もしくはEngage(登録商標)(Dow Chemical Comp.)またはVistamaxx(登録商標)もしくはExact(登録商標)(Exxon Mobil Chemical)またはVestoplast(Evonik)またはEastoflex (Eastman)である。
【0036】
さらなる好ましい実施形態において、本発明の感圧接着剤は、25℃および1HzでG’≦105Paのダールキスト基準を有する。
【0037】
ダールキスト基準は粘着性に関するレオロジー基準であり、振動型レオメーター実験から導き出すことができる。所定の温度(ここでは25℃)での周波数掃引により、接着剤の貯蔵弾性率を決定できる。25℃および1Hzでの貯蔵弾性率が10Paを超える場合、粘着性はない(S.S Heddleson et. Aa; Cereal. Chem 70(6) 744; 1993)。接着剤が10Pa以下の貯蔵弾性率を有する場合、感圧接着剤に特徴的であるように、永久接着性を有する。
【0038】
さらなる好ましい実施形態において、本発明によるプロピレンのコポリマーは極性変性されている。ポリオレフィン類の極性変性は、公知のように、非極性ポリオレフィン類から、酸素含有ガス(例えば空気)での酸化、または極性モノマー(例えばα,β-不飽和カルボン酸またはそれらの誘導体、例えばアリール酸、マレイン酸もしくは無水マレイン酸、または不飽和オルガノシラン化合物、例えばアルコキシビニルシラン類)とのポリマーアナログ反応(polymeranaloge Reaktionen)によって、製造される。空気酸化によるポリオレフィン類の極性変性はEP0890583A1に、グラフト化による官能化は例えばUS5998547Aに記載されている。
【0039】
本発明の感圧接着剤のために使用されるプロピレンのコポリマーの製造のために、式Mのキラルまたは非キラル遷移金属化合物からなるメタロセン触媒が使用される。遷移金属化合物Mは、少なくとも1つの中心金属原子Mを含み、それに少なくとも1つのπ配位子L、例えばシクロペンタジエニル配位子が結合している。さらに、置換基、例えばハロゲン-、アルキル-、アルコキシ-またはアリール基が、中心金属原子Mに結合してもよい。Mは、好ましくは、元素の周期表の第III、IV、VまたはVI主族の元素、例えば、Ti、ZrまたはHfである。シクロペンタジエニル配位子は、非置換シクロペンタジエニル残基および置換シクロペンタジエニル残基、例えばメチルシクロペンタジエニル-、インデニル-、2-メチルインデニル-、2-メチル-4-フェニルインデニル-、テトラヒドロインデニル-またはオクタヒドロフルオレニル残基として理解されるべきである。π配位子は、架橋されていてもまたは架橋されていなくてもよく、ここで、単一および複数の架橋-環系を通しても-が可能である。単一中心触媒系の活性化のためには、適切な共触媒、例えば有機アルミニウム化合物、とりわけアルミノキサン類、またはアルミニウム不含系が使用される。メタロセン触媒の例、それらの活性化および重合のための取り扱いは、例えば、EP0384264またはEP0571882に記載されている。メタロセンという用語は、1を超えるメタロセン骨格を有する化合物、いわゆる多核メタロセンも含む。これらは、任意の置換パターンおよび架橋変形を有することができる。そのような多核メタロセンの個々のメタロセン骨格は、同一であっても、互いに異なっていてもよい。そのような多核メタロセンの例は、例えばEP0632063に記載されている。
【0040】
方法に応じて、担持型シングルセンター触媒を使用することもできる。好ましいものは、担体材料及び共触媒の残存含有量が生成物中で100ppmの濃度を超えないような触媒系である。
【0041】
本発明の感圧接着剤のために使用されるプロピレンのコポリマーは、調製物において、ベースポリマーの機能を担うことも、可塑剤および粘着付与剤の機能の代わりをすることもできる。それによって、ユーザにとって多くの利点がもたらされる。それらは例えば、溶融し、混合しなければならない成分がより少なく、これはより速く、より費用的に有利な作業プロセスをもたらす。さらに、純粋なポリオレフィン系PSAを製造することができる。
【0042】
樹脂および可塑剤の代わりに粘着付与剤としての本発明によるプロピレンのコポリマーの使用は、ポリオレフィンマトリックス中へのこれらの改善された練り込みを担保し、これはマイグレーションの減少(ブリーディングなし)およびVOC形成の減少をもたらす。本発明によるプロピレンのコポリマーはまた、接着剤調製物のガラス転移温度を低下させる。それにより、低温における適用スペクトルが可能となり、または対応の材料の低温柔軟性が改善される。
【0043】
本発明の感圧接着剤のために使用されるプロピレンのコポリマーは、約0.85g/cmの典型的な密度を有する。約1.0g/cmの典型的な密度を有する樹脂と比較して、これらのプロピレンのコポリマーの使用により、より少ない重量で同一の接着体積を塗布することが可能となる。これは、ユーザのためのコストを低減するだけでなく、最終用途における資源節約および少ない重量の材料も可能にする。
【0044】
本発明の感圧接着剤は、基材の、特に35mN/m未満、好ましくは25mN/m未満の室温での表面エネルギーを有する低エネルギー表面を有する基材(例えばテフロンでできた基材またはシリコーン処理された表面を有する基材のように)の接合、すなわち、濡らしおよび接着に適している。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1.プロピレンと、エチレンおよび4~20個のC原子を有する1-オレフィンからなる群から選択される1種または複数のさらに別のモノマーとのコポリマーを55~99重量%含む、樹脂不含かつ鉱油不含の感圧接着剤であって、前記コポリマーはメタロセン触媒を用いて製造されたものであり、そして
a.20~8000mPasの170℃での溶融粘度(DIN 53019);
b.0.84~0.90g/cm の密度(23℃,ISO1183);
c.-30℃未満のガラス転移温度(DIN EN ISO 11357-2:2014);
d.ASTM D97に従って測定された、50℃未満の流動点
を特徴とし、
任意選択的に、さらに別のポリマーが前記感圧接着剤中に含まれていてよい、
感圧接着剤。
2.前記コポリマーが、ISO11357-2に従って測定して、0~50J/g、好ましくは0~30J/g、殊に好ましくは0~20J/gの融解エンタルピーを有することを特徴とする、上記1に記載の感圧接着剤。
3.プロピレンのコポリマーを55~99重量%、ならびにさらに別のポリオレフィン、ワックス、天然-もしくは合成ゴム、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリクロロプレン、ポリビニルエーテルまたはポリウレタンの群から選択される少なくとも1種のさらに別のポリマーを1~45重量%含む、上記1または2に記載の感圧接着剤。
4.前記の少なくとも1種のさらに別のポリマーが、少なくとも1種のさらに別のポリオレフィンであることを特徴とする、上記3に記載の感圧接着剤。
5.前記のさらに別のポリオレフィンが、
a.-15℃未満のガラス転移温度(DIN EN ISO 11357-2:2014)、
b.50,000mPas未満の170℃での溶融粘度(DIN 53019)、および
c.50℃超の流動点(ASTM D97)、
を有することを特徴とする、上記4に記載の感圧接着剤。
6.前記の感圧接着剤が、25℃および1HzでG’≦10 Paのダールキスト基準を有することを特徴とする、上記1~5のいずれか1つに記載の感圧接着剤。
7.前記のプロピレンのコポリマーが、70~95重量%のプロピレンおよび5~30重量%のエチレンから得られることを特徴とする、上記1~6のいずれか1つに記載の感圧接着剤。
8.前記のプロピレンのコポリマーが、30~5000mPas、殊に好ましくは50~3000mPasの170℃での溶融粘度(DIN53019)を有することを特徴とする、上記1~7のいずれか1つに記載の感圧接着剤。
9.前記のプロピレンのコポリマーが、DIN EN ISO 11357-2:2014に従って測定された、-35℃未満の、好ましくは-40℃未満のガラス転移温度を有することを特徴とする、上記1~8のいずれか1つに記載の感圧接着剤。
10.前記のプロピレンのコポリマーが、40℃未満の、ASTM D97に従って測定した流動点を有することを特徴とする、上記1~9のいずれか1つに記載の感圧接着剤。11.有機もしくは無機顔料、フィラー、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤および光安定剤を含有することを特徴とする、上記1~10のいずれか1つに記載の感圧接着剤。
12.前記のプロピレンのコポリマーが極性変性されている、上記1~11のいずれか1つに記載の感圧接着剤。
13.基材を接合するための、上記1~12のいずれか1つに記載の感圧接着剤の使用。14.35mN/m未満、好ましくは25mN/m未満の表面エネルギーを有する基材と、任意の表面エネルギーを有する1または複数の基材とを接合するための、上記13に記載の感圧接着剤の使用。
15.テフロンでできた基材またはシリコーン処理された表面を有する基材と、任意の表面エネルギーを有する1または複数の基材とを接合するための、上記14に記載の感圧接着剤の使用。
【実施例
【0045】
以下の例は、本発明をより詳細に記載することを意図するが、それを限定するものではない:
【0046】
例1:
本発明のプロピレン-エチレンコポリマーの製造(EP0384264A1の例1~16に準じて)。
【0047】
乾燥した16dm反応容器に窒素をフラッシュし、50dm(3.1barに相当する)の水素および10dmの液体プロピレンで満たした。次いで、メチルアルミノキサンのトルエン溶液30cm(40mmolのAlに相当、メチルアルミノキサンの平均オリゴマー度 n=20)および100gのエチレンを添加し、この混合物を30℃で15分間撹拌した。
【0048】
これに並行して、8.0mgのメタロセン、すなわちジメチルシリル-ビス-1-インデニルジルコニウムジクロリドをメチルアルミノキサンのトルエン溶液15cm(20mmol Al)に溶解し、そして15分間静置して予備活性化した。この橙赤色の溶液を反応容器に導入した。重合系を80℃に加熱し、重合時間(60分)の間、適切に冷却することによってこの温度に維持した。さらに330gのエチレンを、重合時間の間、均一に計量添加した。
【0049】
得られたプロピレン-エチレンコポリマー(収量1.95kg)は、79.5重量%のプロピレン含有率を示した。測定は、Ser van der Ven, Polypropylene and other Polyolefins, Kap. 13章, 568頁~, Amsterdam, Oxford, New York, Tokyo 1990に従って、13C-NMR分光法により行った。前記コポリマーは以下の特性値を示した:
170℃での溶融粘度 210mPa・s(DIN 53019)
23℃での密度: 0.85g/cm3(ISO 1183)
ガラス転移温度: -48℃(DIN EN ISO 11357-2:2014)融解エンタルピー: 0J/g(ISO 11357-3)
流動点: 24℃(ASTM D97)
【0050】
例2:
乾燥した50dm反応容器に窒素をフラッシュし、9dmのイソヘキサン、11.9dmの水素(530mmolに相当する)および1.4dmのプロピレンおよび140cmのエチレンで満たした。
【0051】
これに並行して、5.2mgのメタロセン、すなわちジメチルシリル-ビス-1-インデニルジルコニウムジクロリドをメチルアルミノキサンのトルエン溶液5cm(20mmol Al)に溶解し、そして15分間静置して予備活性化した。この橙赤色の溶液を反応容器に導入した。重合系を105℃に加熱し、重合時間(60分)の間、適切に冷却することによってこの温度に維持した。さらに200gのエチレンを、重合時間の間、均一に計量添加した。
【0052】
得られたプロピレン-エチレンコポリマー(収量2.9kg)は、87.1重量%のプロピレン含有率を示した。測定は、Ser van der Ven, Polypropylene and other Polyolefins, Kap. 13章, 568頁~, Amsterdam, Oxford, New York, Tokyo 1990に従って、13C-NMR分光法により行った。前記コポリマーは以下の特性値を示した:
170℃での溶融粘度 4500mPa・s(DIN 53019)
23℃での密度: 0.86g/cm3(ISO 1183)
ガラス転移温度: -38℃(DIN EN ISO 11357-2:2014)融解エンタルピー: 10J/g(ISO 11357-3)
流動点: 45℃(ASTM D97)
【0053】
表1および表2に従って、成分の溶融混合物を170℃で均一に撹拌することによって製造し、得られた感圧接着剤の溶融粘度および密度を決定した。比較調製物では、商品名Regalite(登録商標)、Sukorez(登録商標)(Kolon) Kristalex(登録商標)、Eastotac(登録商標)、Piccotac(登録商標)(Eastman Chemical Company)またはEscorez(登録商標) (Exxon Mobil)で入手可能な樹脂を使用した。
【0054】
種々の試験で、本発明のホットメルト接着剤の接着作用を定性的に決定した。
【0055】
ここで、材料の200℃での溶融および均質化、それに続く180℃での塗布(ドクターブレード)によって、本発明の感圧接着剤を基材に塗布した。24時間後、そのようにコーティングされたこの基材を、同じまたは別の材料でできた第2の基材と、接合させる面を押し付けることにより接着させた。5分の待ち時間の後、前記の2つの基材を互いに剥がすことによって、感圧接着剤特性を評価した。ここで、接着が、
a)接着剥離可能(A)(すなわち、接着結合が基材の面上で剥がれる)であったか、または
b)付着分離可能(C)(すなわち、接着結合が接着剤相内で剥がれ、2つの基材の面上に接着剤残渣が残る)であったか、あるいは
c)材料破断(M)が起こったかどうか(これは、接着結合が剥がれる前の基材の破壊を意味し、すなわち、接着結合が基材よりも強力に付着性かつ接着性であることを意味していた)、
について区別付けを行った。
d)圧力で活性化される接着が不可能である場合、親指での軽い圧力によって活性化できなかったので、表示(D)を割り当てた。
【0056】
さらに、感圧接着剤の粘着性(タック)を触覚比較によって評価し、以下のカテゴリーに分類した:a)顕著、強力;b)ほとんど目立たない;c)存在しない。
【0057】
オープンタイムの決定は、200℃での材料の溶融および均質化によって行った。180℃で、厚紙上に塗布(ドクターブレードで塗布)し、5秒毎に厚紙ストリップを親指圧で貼り付ける。このプロセスを、厚紙が付着しないかまたは付着がわずかになるまで繰り返す。塗布から厚紙がもはや付着しなくなるまでに測定された時間が、オープンタイムである。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
本発明による例により、同一のまたは種々の基材を、本発明による感圧接着剤を用いて可逆的に接着することができ、当該接着結合は樹脂または可塑剤を使用する必要なしに、接着的または付着的に剥がせることを示すことができた。これらの特性は、例えば、食品包装、おむつ、女性用衛生用品および医療用製品(例えば絆創膏のような)における使用のために、感圧式接着結合を実現させる場合に利用できる。比較例は、永久接着性を示さず、短いオープンタイムを示す。比較調合物の大部分の比較的高い溶融粘度は、溶融物からの塗布には不利であり、なぜならば高い塗布温度が必要とされるからである。これは、必要なエネルギーの増加を引き起こし、ポリオレフィンの望ましくない熱分解をもたらし得る。
【0061】
使用した原料:
Vestoplast(登録商標)またはEastoflex(登録商標)は、EvonikまたはEastman社のアモルファスポリ-α-オレフィンである。
Vestoplast 828:流動点(ASTM D97)>150℃
Vestoplast 703:流動点(ASTM D97)>120℃
Eastoflex 1060:流動点(ASTM D97)>120℃

Versify(登録商標)はDow社のエチレン-コポリマーである:
Versify 4200:流動点(ASTM D97)>150℃
Versify 4301:流動点(ASTM D97)>150℃

Vistamaxx(登録商標)はExxonMobil社のプロピレン-コポリマーである:
Vistamaxx 6502:流動点(ASTM D97)>150℃

Sukorez(登録商標)SU 100またはRegalite(登録商標)1010は、Kolon Ind社またはEastman社の水素化炭化水素樹脂である。