(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ダクト
(51)【国際特許分類】
B60R 19/18 20060101AFI20240207BHJP
B60R 19/48 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B60R19/18 C
B60R19/48 P
(21)【出願番号】P 2022157685
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2018126984の分割
【原出願日】2018-07-03
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】保坂 考一
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-236129(JP,A)
【文献】特開2010-006147(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109517(WO,A1)
【文献】特開2014-136465(JP,A)
【文献】実開平05-012234(JP,U)
【文献】特開平02-225134(JP,A)
【文献】国際公開第2014/176044(WO,A1)
【文献】特表2015-507567(JP,A)
【文献】特開2007-331521(JP,A)
【文献】特開2007-008370(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006021386(DE,A1)
【文献】実開平02-034317(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/18
B60R 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行時に外部から流入する空気を空気取込口から空気送出口へ導く車両用ダクトであって、
空気流通方向に交差する方向に延在する溝部を
、外面に複数備える
ことを特徴とするダクト。
【請求項2】
複数の前記溝部が、前記空気流通方向へずらして配置されている請求項1記載のダクト。
【請求項3】
複数の前記溝部が、ねじれの位置にある請求項2記載のダクト。
【請求項4】
インジェクション成形品である請求項
1記載のダクト。
【請求項5】
前記ダクトが、オイルクーラーダクト又はブレーキダクトである請求項1~4の何れか一項に記載のダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に設置されるダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両は、車両前縁のフロントグリルやバンパーに設けられた開口部と内部に設置されたオイルクーラーとの間に、オイルクーラーダクトを配置して、走行時に開口部から取り込んだ空気を、オイルクーラーダクトを介してオイルクーラーに導くものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、オイルクーラーにおいて空気と熱交換し、トランスミッション等の機器を冷却するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルクーラーダクトは、走行時の振動により破損したり、異音が発生したりしないように、剛性を持たせて設計されている。しかし、車両では、オイルクーラーダクトについても、万が一、人に衝突したときに、人に対する衝撃をなるべく軽減する対策が求められる。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、歩行者安全性能を有するダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明のダクトは、
車両に設置されるダクトであって、
空気取込口から空気送出口へ空気を導く空気流通路の各面を画成する壁部と、
連なる2面の前記壁部のそれぞれに少なくとも設けられ、前記空気流通路の空気流通方向を横切るように延在する溝部と、を備え、
前記溝部は、前記壁部毎に互いに独立して、該壁部を薄肉化するように凹状に形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るダクトによれば、外力が加わったときに、溝部において壁部が変形して衝撃を吸収することができ、これにより適切な歩行者安全性能を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施例に係るダクトの設置箇所を示す説明図である。
【
図2】実施例のダクトを斜め左上から見た概略斜視図である。
【
図3】実施例のダクトを斜め左下から見た概略斜視図である。
【
図4】実施例のダクトを斜め右上から見た概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係るダクトにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0010】
図1に示すように、実施例に係るダクト20は、車両10においてトランスミッション(図示せず)を冷却するオイルクーラー12に冷却用の空気を導くオイルクーラーダクトと呼ばれるものである。ダクト20は、車両10のフロント14に設置されたバンパーやグリル等に設けられた開口部14aと、開口部14aよりも後側に配置されたオイルクーラー12との間に設置されている。実施例のダクト20は、車両前部における左側によった位置に配置されている。ダクト20は、走行時に開口部14aから流入する空気を、開口部14aに整合させた空気取込口20aから空気送出口20bに向けて空気流通路22を介して案内し、空気送出口20bに対向配置されたオイルクーラー12に空気を送り出すように構成されている。ダクト20は、空気送出口20bに設けられた取付片23で車両10の車体に取り付けられ、空気送出口20b側が車体に固定されている。ダクト20は、ポリプロピレン(PP)などのソリッド樹脂(ソリッドの合成樹脂)を材質とし、インジェクション成形等によって得られる成形品である。なお、以下の説明において、車両10への取り付け姿勢を基準として、ダクト20の前後上下左右を指称する。
【0011】
図2~
図4に示すように、ダクト20は、筒状に形成されており、空気取込口20aから空気送出口20bへ空気を導く空気流通路22における上下左右の各面を画成する壁部24を有している。実施例のダクト20は、上下方向と比べて左右方向に広い扁平な角筒状に形成されている。ダクト20において、4面の壁部24のうち、ダクト20の上面を構成するものを上壁部24Aといい、上壁部24Aに対向して配置され、ダクト20の下面を構成するものを下壁部24Bという。ダクト20において、4面の壁部24のうち、上縁が上壁部24Aの左縁に連なると共に下縁が下壁部24Bの左縁に連なり、ダクト20の左面を構成するものを左壁部24Cという。ダクト20において、上縁が上壁部24Aの右縁に連なると共に下縁が下壁部24Bの右縁に連なり、ダクト20の右面を構成するものを右壁部24Dという。ダクト20は、空気取込口20aが前方へ開口すると共に、空気送出口20bが後方へ開口しており、空気取込口20aに対して空気送出口20bが左右(実施例)または上下方向にずれている。実施例では、開口部14aが車両10の左側部において車両の左右方向中央側によって配置されて、オイルクーラー12が車両左縁によって配置されていることに対応して、空気流通路22が前から後に向かうにつれて左側へ傾斜するようにダクト20が形成されている。ダクト20は、左壁部24Cおよび右壁部24Dが前から後に向かうにつれて左側へ傾斜するように延在し、右壁部24Dが空気取込口20aに相対するように配置されている。
【0012】
図2~
図7に示すように、ダクト20は、連なる2面の壁部24のそれぞれに少なくとも設けられ、空気流通路22の空気流通方向を横切るように延在する溝部26を備えている。溝部26は、例えば上壁部24Aおよび左壁部24C、あるいは下壁部24Bおよび左壁部24Cのような、互いに連なっている2面のそれぞれに少なくとも設けられ、実施例では、上壁部24A、下壁部24Bおよび左壁部24Cの3面に、溝部26がそれぞれ設けられている。このように、溝部26は、空気取込口20aに相対する面を構成する右壁部24D以外の壁部24A,24B,24Cに設けられており、右壁部24Dには、溝部26が設けられていない。上壁部24Aに設けられた上溝部26Aおよび下壁部24Bに設けられた下溝部26Bは、前から後に向かうにつれて左方へ傾斜する空気流通方向に対して交差するように左右方向に延在している(
図5および
図7参照)。また、左壁部24Cに設けられた左溝部26Cは、空気流通方向に対して交差するように上下方向に延在している(
図6参照)。ダクト20には、空気取込口20a側からの外力の入力によって壁部24A,24B,24Cの変形が生じるように、溝部26が設けられている。
【0013】
図2~
図6に示すように、溝部26は、壁部24毎に互いに独立して形成されている。ダクト20では、上壁部24Aの上溝部26Aと上壁部24Aに連なる左壁部24Cの左溝部26Cとは繋がっておらず(
図2参照)、同様に、下壁部24Bの下溝部26Bと下壁部24Bに連なる左壁部24Cの左溝部26Cとは繋がっていない(
図3参照)。上溝部26Aは、上壁部24Aの左右方向の寸法よりも短く、上壁部24Aの右縁から左方へ延びており、空気取込口20aの後方に重なる位置に配置されている(
図5参照)。
図5の2点鎖線に示すように、下溝部26Bは、上溝部26Aと右端がおおよそ揃っているが、上溝部26Aより短く形成されている。下溝部26Bは、下壁部24Bの左右方向の寸法よりも短く、下壁部24Bの右縁から左方へ延びており、空気取込口20aの後方に重なる位置に配置されている(
図7参照)。左溝部26Cは、左壁部24Cの上下方向の寸法よりも短く、中央部でわずかに切れているが左壁部24Cの上縁および下縁の間の大部分に亘って延在している(
図6参照)。左壁部24Cは、前から後に向かうにつれて左方へ傾斜する途中で、屈曲部が凸になるように角度が変わるように形成され、左溝部26Cが、屈曲部に設けられている。
【0014】
図5に示すように、ダクト20は、異なる面の壁部24に設けられた溝部26同士が、空気流通方向へずらして配置されている。このように、上溝部26A、下溝部26Bおよび左壁部24Cが、前後方向にずらして配置されており、実施例では、左溝部26C、上溝部26Aおよび下溝部26Bの順に、前から後へ並んでいる。
【0015】
図8に示すように、溝部26は、壁部24を薄肉化するように凹状に形成されている。溝部26は、壁部24の外面を凹ませて外方へ開口するように設けられ、壁部24において空気流通路22に臨む内面が平坦になっている。溝部26は、開口側と比べて底側が狭くなる形状で形成されて、実施例では、溝部26が「V」字状に形成されている。このように、溝部26を壁部24の外面に設けると、簡単な型構造の型成形によりダクト20を形成でき、空気流通路22での空気の流れを妨げないので好ましい。
【0016】
図2~
図4に示すように、上壁部24Aおよび下壁部24Bには、溝部26A,26Bよりも空気取込口20a側に、該溝部26A,26Bと交差するように延在するリブ28が設けられている。リブ28は、壁部24の外面から突出する板状片であり、空気取込口20aと溝部26との間に前後方向へ延在している。リブ28は、空気取込口20aまたは溝部26に向かうにつれて低くなるように形成されている。なお、下壁部24Bに設けられたリブ28は、途中で切れている。
【0017】
ダクト20は、上壁部24A、下壁部24Bおよび左壁部24Cのそれぞれに設けられた溝部26によって、空気取込口20a側から外力が加わったときに、これらの壁部24A,24B,24Cが変形し易くなっている。仮に歩行者が車両10のフロント14に衝突したとしても、ダクト20が後方へ潰れるように変形することで、歩行者に対する衝撃を軽減することができる。また、ダクト20は、溝部26が各壁部24で独立して形成されて、連なる面の壁部24に設けられた溝部26同士が繋がっていないので、ダクト20の剛性低下を抑えることができる。これにより、ダクト20は、溝部26を形成しても、走行時の振動に対する振動耐久性や、ダクト20内に水が入ったときの内圧耐久性を担保することができる。このように、ダクト20によれば、衝突時における溝部26による歩行者保護性能と、通常使用時の必要な剛性とを併有させることができる。
【0018】
ダクト20は、異なる面の壁部24に設けられた溝部26同士が、空気流通方向へずらして配置してあるので、溝部26の形成による剛性低下を抑えることができる。このように、ダクト20は、溝部26の形成位置を、空気流通方向において完全に一致させないことで、前方から入力される外力以外の力に対して適度な剛性を保つことができる。
【0019】
上壁部24Aおよび下壁部24Bには、溝部26A,26Bよりも空気取込口20a側に、溝部26A,26Bと交差するように延在するリブ28が設けられている。ダクト20は、溝部26の前側に延在するリブ28によって衝突時の外力を溝部26に集中させることができ、衝突時に溝部26で壁部24の変形を適切に生じさせることができる。ダクト20は、溝部26より前側が潰れ易くなるよう、溝部26より後側の剛性が高くなっている。
【0020】
ダクト20は、空気取込口20aに相対する面を構成する右壁部24D以外の壁部24A,24B,24Cに溝部26が設けられ、右壁部24Dに溝部26が設けられていない。仮に大雨のときなどに冠水路に進入して空気取込口20aから水が空気流通路22に入った際に、空気取込口20aに相対する右壁部24Dに水の流れが直接当たることになるが、右壁部24Dに溝部26が設けられていないので、右壁部24Dが変形しない。このように、ダクト20は、冠水路走行時における空気流通路22への水入り時の剛性確保もしている。
【0021】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば以下のように変更してもよい。
(1)実施例では、3面の壁部に溝部を設けたが、全面の壁部に溝部を設けてもよい。
(2)実施例ではオイルクーラーダクトを例示したが、例えば、ブレーキダクトなど、衝突時に関係する場所に設置されるダクトに適用できる。
(3)リブは、溝部で切って、溝部を挟む前側領域と後側領域とに延在するように形成してもよい。
【符号の説明】
【0022】
10 車両,20a 空気取込口,20b 空気送出口,22 空気流通路,
24 壁部,24A 上壁部,24B 下壁部,24C 左壁部,24D 右壁部,
26 溝部,26A 上溝部,26B 下溝部,26C 左溝部,28 リブ