(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】流体圧シリンダ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/14 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
F15B15/14 340Z
(21)【出願番号】P 2022167458
(22)【出願日】2022-10-19
【審査請求日】2022-12-13
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 則文
【審査官】古▲瀬▼ 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-047469(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0077918(US,A1)
【文献】実開昭59-001908(JP,U)
【文献】特開2019-168018(JP,A)
【文献】特開2003-336609(JP,A)
【文献】実開昭60-123402(JP,U)
【文献】国際公開第2015/092908(WO,A1)
【文献】特開2013-024302(JP,A)
【文献】特開2011-153653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブ内に往復動可能に設けられたピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結され前記シリンダチューブ内に摺動自在に収容されたピストンと、
前記シリンダチューブの開口端に連結され前記開口端を閉塞するとともに、前記ピストンとの間に圧力室を形成するシリンダヘッドと、を備え、
前記シリンダチューブは、
環状の本体部と、
前記開口端が形成され前記シリンダヘッドが連結される環状の連結部と、
前記本体部と前記連結部との間にわたって形成される環状の接続部と、を有し、
前記シリンダヘッドは、ボルトにより前記シリンダチューブの前記連結部に連結され、
前記連結部は、前記本体部及び前記接続部よりも径方向の厚さが大きく形成され、
前記本体部と前記接続部の境界及び前記接続部と前記連結部の境界は、テーパ状に形成され、
前記接続部は、外径が一様となるように、または、前記シリンダチューブの中心軸に沿った断面において外周面がテーパ状になるように形成され、
前記本体部に対する前記接続部の傾斜角は、前記本体部と前記接続部の前記境界の傾斜角及び前記接続部と前記連結部の前記境界の傾斜角よりも小さく形成され、
前記本体部、前記連結部、及び前記接続部は、内径が一様に形成され、
前記接続部
における前記連結部側の端部
の径方向の厚さ
は、前記本体部よりも大きく前記本体部の二倍以下に形成され
、
前記シリンダヘッドから前記ボルトを介して前記連結部に作用する荷重は、前記本体部にすべて作用することを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧シリンダであって、
前記接続部は、径方向の厚さが前記連結部の2/3倍以下に形成されることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項3】
シリンダチューブと、
前記シリンダチューブ内に往復動可能に設けられたピストンロッドと、
前記ピストンロッドに連結され前記シリンダチューブ内に摺動自在に収容されたピストンと、
前記シリンダチューブの開口端に連結され前記開口端を閉塞するとともに、前記ピストンとの間に圧力室を形成するシリンダヘッドと、を備え、
前記シリンダチューブは、
環状の本体部と、
前記開口端が形成され前記シリンダヘッドが連結される環状の連結部と、
前記本体部と前記連結部との間にわたって形成される環状の接続部と、を有し、
前記シリンダヘッドは、ボルトにより前記シリンダチューブの前記連結部に連結され、
前記連結部は、前記本体部及び前記接続部よりも径方向の厚さが大きく形成され、
前記本体部と前記接続部の境界及び前記接続部と前記連結部の境界は、テーパ状に形成され、
前記接続部は、外径が一様となるように、または、前記シリンダチューブの中心軸に沿った断面において外周面がテーパ状になるように形成され、
前記本体部に対する前記接続部の傾斜角は、前記本体部と前記接続部の前記境界の傾斜角及び前記接続部と前記連結部の前記境界の傾斜角よりも小さく形成され、
前記本体部、前記連結部、及び前記接続部は、内径が一様に形成され、
前記接続部における前記連結部側の端部の径方向の厚さは、前記本体部よりも大きく前記本体部の二倍以下に形成され、
前記本体部と前記接続部の境界の傾斜角は、前記接続部と前記連結部の境界の傾斜角よりも小さく形成されることを特徴とする流体圧シリンダ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の流体圧シリンダであって、
前記圧力室の作動流体が排出されて前記ピストンロッドがストロークする際にストローク端付近で前記ピストンロッドを減速させるクッション機構をさらに備え、
前記接続部は、前記クッション機構により前記ピストンロッドが減速される際に前記圧力室に面するように形成され、
前記シリンダチューブは、降伏点が400MPa以上の材料で形成されることを特徴とする流体圧シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一端を開口としたシリンダと、シリンダの開口を閉塞するように取付けられ複数のボルトにより固定されたシリンダヘッドと、シリンダヘッドを貫通してシリンダ内に摺動可能に配置されたピストンロッドと、ピストンロッドに取り付けられたピストンと、ピストンのシリンダヘッド側に取り付けられシリンダヘッドの内周部とによりクッション機構を構成するクッションリングと、を備えるシリンダ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のようなシリンダ装置では、シリンダは、円筒状の本体部と、シリンダヘッドが連結される連結部と、を有する。連結部にはシリンダヘッドを固定するためのボルトが締結されるため、連結部は、本体部と比較して径方向の厚さが大きい。よって、シリンダでは、本体部と連結部とで、径方向の厚さが異なる。そのため、例えば、シリンダ装置が伸長した際にシリンダヘッドに荷重が作用し、ボルトを介してシリンダに引張応力が作用すると、シリンダの本体部と連結部との境界付近に応力が集中し、シリンダが損傷してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧シリンダのシリンダチューブでの応力集中を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体圧シリンダであって、シリンダチューブと、シリンダチューブ内に往復動可能に設けられたピストンロッドと、ピストンロッドに連結されシリンダチューブ内に摺動自在に収容されたピストンと、シリンダチューブの開口端に連結され開口端を閉塞するとともに、ピストンとの間に圧力室を形成するシリンダヘッドと、を備え、シリンダチューブは、環状の本体部と、開口端が形成されシリンダヘッドが連結される環状の連結部と、本体部と連結部との間にわたって形成される環状の接続部と、を有し、シリンダヘッドは、ボルトによりシリンダチューブの連結部に連結され、連結部は、本体部及び接続部よりも径方向の厚さが大きく形成され、本体部と接続部の境界及び接続部と連結部の境界は、テーパ状に形成され、接続部は、外径が一様となるように、または、シリンダチューブの中心軸に沿った断面において外周面がテーパ状になるように形成され、本体部に対する接続部の傾斜角は、本体部と接続部の境界の傾斜角及び接続部と連結部の境界の傾斜角よりも小さく形成され、本体部、連結部、及び接続部は、内径が一様に形成され、接続部における連結部側の端部の径方向の厚さは、本体部よりも大きく本体部の二倍以下に形成され、シリンダヘッドからボルトを介して連結部に作用する荷重は、本体部にすべて作用することを特徴とする。
【0007】
これらの発明では、シリンダチューブは、本体部と連結部との間に設けられる接続部を有し、接続部は、連結部よりも径方向の厚さが小さく本体部よりも径方向の厚さが大きい。よって、シリンダチューブは、接続部が設けられない場合と比較し、径方向の厚さが緩やかに変化する。そのため、シリンダチューブでの応力集中が低減される。さらに、シリンダチューブは、接続部の径方向の厚さが本体部の二倍以下に形成される。よって、シリンダチューブでは、本体部と接続部との径方向の厚さの差が小さい。そのため、径方向の厚さが最も小さく強度が低くなりやすい本体部と接続部との間での応力集中が低減される。
【0008】
また、本発明は、接続部は、径方向の厚さが連結部の2/3倍以下に形成されることを特徴とする。
【0009】
この発明では、シリンダチューブの接続部の径方向の厚さが小さくなるため、シリンダチューブの材料の使用量を低減することができる。
【0010】
また、本発明は、流体圧シリンダであって、シリンダチューブと、シリンダチューブ内に往復動可能に設けられたピストンロッドと、ピストンロッドに連結されシリンダチューブ内に摺動自在に収容されたピストンと、シリンダチューブの開口端に連結され開口端を閉塞するとともに、ピストンとの間に圧力室を形成するシリンダヘッドと、を備え、シリンダチューブは、環状の本体部と、開口端が形成されシリンダヘッドが連結される環状の連結部と、本体部と連結部との間にわたって形成される環状の接続部と、を有し、シリンダヘッドは、ボルトによりシリンダチューブの連結部に連結され、連結部は、本体部及び接続部よりも径方向の厚さが大きく形成され、本体部と接続部の境界及び接続部と連結部の境界は、テーパ状に形成され、接続部は、外径が一様となるように、または、シリンダチューブの中心軸に沿った断面において外周面がテーパ状になるように形成され、本体部に対する接続部の傾斜角は、本体部と接続部の境界の傾斜角及び接続部と連結部の境界の傾斜角よりも小さく形成され、本体部、連結部、及び接続部は、内径が一様に形成され、接続部における連結部側の端部の径方向の厚さは、本体部よりも大きく本体部の二倍以下に形成され、本体部と接続部の境界の傾斜角は、接続部と連結部の境界の傾斜角よりも小さく形成されることを特徴とする。
【0011】
この発明では、シリンダチューブは、本体部と連結部との間に設けられる接続部を有し、接続部は、連結部よりも径方向の厚さが小さく本体部よりも径方向の厚さが大きい。よって、シリンダチューブは、接続部が設けられない場合と比較し、径方向の厚さが緩やかに変化する。そのため、シリンダチューブでの応力集中が低減される。さらに、シリンダチューブは、接続部の径方向の厚さが本体部の二倍以下に形成される。よって、シリンダチューブでは、本体部と接続部との径方向の厚さの差が小さい。そのため、径方向の厚さが最も小さく強度が低くなりやすい本体部と接続部との間での応力集中が低減される。また、径方向の厚さが最も小さく強度が低くなりやすい本体部と接続部との間での応力集中がより低減される。
【0012】
また、本発明は、流体圧シリンダであって、圧力室の作動流体が排出されてピストンロッドがストロークする際にストローク端付近でピストンロッドを減速させるクッション機構をさらに備え、接続部は、クッション機構によりピストンロッドが減速される際に圧力室に面するように形成され、シリンダチューブは、降伏点が400MPa以上の材料で形成されることを特徴とする。
【0013】
この発明では、シリンダチューブの接続部には、クッション機構によりピストンロッドが減速される際にクッション圧が作用する。そのため、接続部には強度が求められる。シリンダチューブは、降伏点が400MPa以上の材料で形成されるため、接続部の径方向の厚さが小さくても、接続部の強度を確保できる。よって、シリンダチューブの強度を確保しつつ、シリンダチューブでの応力集中の低減やシリンダチューブの材料の使用量の低減ができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、流体圧シリンダのシリンダチューブでの応力集中を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体圧シリンダの部分断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る流体圧シリンダの部分断面図であり、流体圧シリンダの伸長時であってピストンロッドがストローク端付近にある状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体圧シリンダについて説明する。以下では、流体圧シリンダが作動油を作動流体として駆動する油圧シリンダ100である場合について説明する。
【0017】
まず、
図1,
図2を参照して、油圧シリンダ100の全体構成について説明する。
【0018】
図1,
図2に示すように、油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10内に往復動可能に設けられたピストンロッド20と、ピストンロッド20に連結されシリンダチューブ10内に摺動自在に収容されたピストン30と、シリンダチューブ10の開口端11に連結され開口端11を閉塞するとともに、ピストン30との間に圧力室としてのロッド側室2を形成するシリンダヘッド40と、を備える。
【0019】
シリンダチューブ10は、環状に形成される。シリンダチューブ10内は、ピストン30により、ロッド側室2と反ロッド側室3とに仕切られる。ロッド側室2と反ロッド側室3は、切換弁(図示省略)を通じて油圧供給源としての油圧ポンプ(図示省略)またはタンク(図示省略)に連通する。ロッド側室2及び反ロッド側室3の一方が油圧ポンプに連通すると、他方がタンクに連通する。油圧シリンダ100は、油圧ポンプからロッド側室2または反ロッド側室3に作動油(作動流体)が導かれてピストンロッド20が軸方向に移動することにより伸縮する。なお、作動油としてオイルの代わりに例えば水溶性代替液等の作動流体を用いてもよい。
【0020】
シリンダチューブ10の一方(
図1,
図2における左側)の開口部はシリンダヘッド40により閉塞され、他方(
図1,
図2における右側)の開口部はシリンダボトム(図示省略)により閉塞される。シリンダヘッド40は、ピストンロッド20が摺動自在に挿通され、ピストンロッド20を支持する。シリンダヘッド40は、フランジ部41と、シリンダチューブ10の内周面に嵌合する円筒部42と、を有する。フランジ部41は、複数のボルト等の締結部材50を介して、シリンダチューブ10に締結される。なお、締結部材50を介さずに、例えば円筒部42の外周面に設けられるねじ部とシリンダチューブ10の内周面に設けられるねじ部とが螺合して連結されてもよい。フランジ部41には、径方向に延びて油圧配管(図示省略)が接続される給排ポート45が形成される。ピストンロッド20の外周面と円筒部42の内周面との間には、給排ポート45とロッド側室2とを接続する環状通路46が形成される。給排ポート45及び環状通路46を通じて、ロッド側室2に作動油が給排される。シリンダチューブ10、シリンダヘッド40、及びピストン30によってロッド側室2が区画され、シリンダチューブ10、シリンダボトム、及びピストン30によって反ロッド側室3が区画される。
【0021】
ピストンロッド20は、先端部に形成されピストン30が締結される小径部21と、シリンダヘッド40の内周面に摺動し小径部21よりも大径に形成される大径部22と、小径部21と大径部22の間に形成され後述する環状のクッションリング81が設けられる中径部23と、を有する。中径部23の外径は、小径部21よりも大きく大径部22よりも小さい。クッションリング81は、ピストン30と大径部22に挟持される。
【0022】
ピストン30は、環状に形成され、ピストンロッド20の小径部21に連結される。ピストン30の外周面には、シール部材31が設けられる。これにより、シリンダチューブ10の内周面とピストン30の外周面との間を通じたロッド側室2と反ロッド側室3との連通が遮断される。
【0023】
ロッド側室2に油圧ポンプが連通し、反ロッド側室3にタンクが連通した際には、ロッド側室2に給排ポート45を通じて作動油が供給され、反ロッド側室3の作動油がタンクへと排出される。これにより、ピストンロッド20が
図1,
図2における右側に移動して油圧シリンダ100は収縮する。
【0024】
一方、反ロッド側室3に油圧ポンプが連通し、ロッド側室2にタンクが連通した際には、反ロッド側室3に作動油が供給され、ロッド側室2の作動油が給排ポート45を通じてタンクへと排出される。これにより、ピストンロッド20が
図1,
図2における左側に移動して油圧シリンダ100は伸長する。
【0025】
油圧シリンダ100は、ロッド側室2の作動油が排出されてピストンロッド20がストロークする際にストローク端付近でピストンロッド20を減速させるクッション機構80(
図2参照)をさらに備える。
図1は、クッション機構80によりクッション作用が生じていない状態を示し、
図2は、油圧シリンダ100の伸長時であってクッション機構80によりクッション作用が生じている状態を示す。
【0026】
図2に示すように、クッション機構80は、ピストンロッド20の中径部23に設けられストローク端付近で環状通路46に進入するクッションリング81と、クッションリング81が環状通路46に進入した際にロッド側室2の作動油を給排ポート45に導くクッション通路82と、を有する。
【0027】
クッションリング81は、ピストンロッド20の大径部22よりも大径に形成されるとともに、シリンダヘッド40の円筒部42の内周面よりも小径に形成される。油圧シリンダ100の伸長時であってピストンロッド20が通常のストローク域にある(ストローク端でない)場合には、
図1に示すように、ロッド側室2の作動油は、ピストンロッド20の大径部22の外周面と円筒部42の内周面との間に形成される環状通路46を通じて給排ポート45へ導かれて排出される。一方で、油圧シリンダ100の伸長時であってピストンロッド20がストローク端付近にある場合には、
図2に示すように、大径部22よりも大径のクッションリング81が環状通路46内に進入する。そのため、ロッド側室2の作動油は、クッションリング81の外周面と円筒部42の内周面との間に形成されるクッション通路82を通じて給排ポート45へ導かれて排出される。クッション通路82は環状通路46よりも流路断面積が小さいため、ロッド側室2の圧力が上昇し、ピストンロッド20が減速する。このようにして、クッション機構80によりクッション作用が生じる。なお、クッション機構80は、クッションリング81と、クッション通路82と、を有する構成に限らない。
【0028】
次に、シリンダチューブ10について詳細に説明する。
【0029】
本実施形態では、シリンダチューブ10は、例えば、S45Cの調質材、SM570、SCM430等の、降伏点が400MPa以上の材料で形成される。シリンダチューブ10は、環状の本体部12と、開口端11が形成されシリンダヘッド40が連結される環状の連結部13と、本体部12と連結部13との間にわたって形成される環状の接続部14と、を有する。本体部12、接続部14、及び連結部13は連続して形成され、シリンダチューブ10は、本体部12、接続部14、及び連結部13にわたって内径が一様に形成される。本体部12、連結部13、及び接続部14は、外径が一様に形成される。
【0030】
ここで、本体部12、連結部13、及び接続部14の径方向の厚さ寸法をそれぞれT1,T2,T3とする。連結部13は、締結部材50が締結可能なように、厚さT2が本体部12の厚さT1及び接続部14の厚さT3よりも大きく形成される。接続部14は、厚さT3が本体部12の厚さT1よりも大きく形成される。つまり、シリンダチューブ10は、外径が連結部13、接続部14、本体部12の順で大きい。接続部14は、具体的には、厚さT3が本体部12の厚さT1の二倍以下に形成される。さらに、接続部14は、厚さT3が連結部13の厚さT2の2/3倍以下に形成される。
【0031】
ここで、油圧シリンダ100では、伸長時にピストン30及びピストンロッド20が
図1,
図2における左側に移動すると、シリンダヘッド40の円筒部42に荷重が作用する。これにより、シリンダヘッド40には、
図1,
図2において左側への荷重が作用する。シリンダヘッド40は、締結部材50によりシリンダチューブ10の連結部13に連結されるため、シリンダヘッド40に上記のような荷重が作用すると、締結部材50を介してシリンダチューブ10に引張応力が作用する。仮に、油圧シリンダ100においてシリンダチューブ10が接続部14を有さない構成であると、本体部12の厚さT1と連結部13の厚さT2との差が大きいため、本体部12と連結部13との境界付近に応力が集中し、シリンダチューブ10が損傷してしまうおそれがある。
【0032】
しかしながら、油圧シリンダ100では、上記のようにシリンダチューブ10が接続部14を有し、接続部14の厚さT3は、連結部13の厚さT2よりも小さく、本体部12の厚さT1よりも大きい。よって、シリンダチューブ10は、接続部14が形成されない場合と比較し、径方向の厚さが緩やかに変化する。そのため、シリンダチューブ10に引張応力が作用しても、シリンダチューブ10での応力集中が低減される。よって、シリンダチューブ10の損傷が防止される。さらに、シリンダチューブ10は、上記のように、接続部14の厚さT3が本体部12の厚さT1の二倍以下に形成される。よって、シリンダチューブ10では、本体部12の厚さT1と接続部14の厚さT3との差が小さい。そのため、径方向の厚さが最も小さく強度が低くなりやすい本体部12と接続部14との間での応力集中が低減される。このように、径方向の厚さが最も大きい連結部13と接続部14との間よりも、径方向の厚さが最も小さい本体部12と接続部14との間での応力集中をより低減することで、シリンダチューブ10の損傷がより効果的に防止される。
【0033】
さらに、本実施形態では、本体部12と接続部14の境界の傾斜角αは、接続部14と連結部13の境界の傾斜角βよりも小さく形成される。具体的には、本体部12と接続部14の境界及び接続部14と連結部13の境界は、テーパ状に形成される。傾斜角αは、本体部12と接続部14の境界と本体部12の延長線との成す鋭角であり、傾斜角βは、接続部14と連結部13の境界と接続部14の延長線との成す鋭角である。これにより、径方向の厚さが最も大きい連結部13と接続部14との間よりも、径方向の厚さが最も小さい本体部12と接続部14との間での応力集中がより低減される。
【0034】
また、本実施形態では、接続部14は、
図2に示すように、クッション機構80によりピストンロッド20が減速される際にロッド側室2に面するように形成される。よって、接続部14には、クッション機構80によりピストンロッド20が減速される際にクッション圧(クッション作用が生じている際のロッド側室2内の高い圧力)が作用する。そのため、接続部14には強度が求められる。つまり、強度の観点から、接続部14は、厚さT3が大きいことが好ましい。
【0035】
しかし、接続部14の厚さT3は、上記のように、連結部13の厚さT2の2/3倍以下に形成される。これは、シリンダチューブ10が、上記のように降伏点が400MPa以上の高強度の材料で形成されるために可能となったものであり、接続部14の厚さT3が小さくても、接続部14の強度を確保できる。これにより、接続部14の厚さT3が小さくなるため、シリンダチューブ10の材料の使用量を低減することができる。よって、シリンダチューブ10の強度を確保しつつ、シリンダチューブ10での応力集中の低減やシリンダチューブ10の製造時の材料の使用量の低減ができる。
【0036】
以上の本実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0037】
油圧シリンダ100では、シリンダチューブ10が本体部12と連結部13との間に形成される接続部14を有し、接続部14の厚さT3は、連結部13の厚さT2よりも小さく、本体部12の厚さT1よりも大きい。よって、シリンダチューブ10では、径方向の厚さが緩やかに変化するため、引張応力が作用しても、応力集中が低減される。さらに、シリンダチューブ10は、接続部14の厚さT3が本体部12の厚さT1の二倍以下に形成される。よって、シリンダチューブ10では、本体部12の厚さT1と接続部14の厚さT3との差が小さいため、径方向の厚さが最も小さく強度が低くなりやすい本体部12と接続部14との間での応力集中が低減される。
【0038】
油圧シリンダ100では、接続部14は、厚さT3が連結部13のT2の2/3倍以下に形成される。これにより、接続部14の厚さT3が小さくなるため、シリンダチューブ10の材料の使用量を低減することができる。
【0039】
油圧シリンダ100では、本体部12と接続部14の境界の傾斜角αは、接続部14と連結部13の境界の傾斜角βよりも小さく形成されるため、径方向の厚さが最も小さい本体部12と接続部14との間での応力集中がより低減される。
【0040】
油圧シリンダ100では、接続部14には、クッション機構80によりピストンロッド20が減速される際にクッション圧が作用する。シリンダチューブ10は、降伏点が400MPa以上の材料で形成されるため、接続部14の厚さT3が小さくても、接続部14の強度を確保できる。よって、シリンダチューブ10の強度を確保しつつ、シリンダチューブ10での応力集中の低減やシリンダチューブ10の材料の使用量の低減ができる。
【0041】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0042】
<変形例1>
上記実施形態では、油圧シリンダ100がクッション機構80を備える。しかしながら、クッション機構80は必須の構成ではなく、油圧シリンダ100がクッション機構80を備えなくてもよい。この構成であっても、上記実施形態と同様に、シリンダチューブ10での応力集中が低減されるとともに、径方向の厚さが小さい本体部12と接続部14との間での応力集中が低減される。また、油圧シリンダ100がクッション機構80を備えない構成であれば、接続部14にクッション圧が作用しないため、必ずしもシリンダチューブ10が降伏点が400MPa以上の材料で形成される必要はない。つまり、シリンダチューブ10が降伏点が400MPa以上の材料で形成されることも必須の構成ではない。
【0043】
<変形例2>
上記実施形態では、シリンダチューブ10の接続部14は、T3が連結部13のT2の2/3倍以下に形成される。これにより、シリンダチューブ10の製造時の材料の使用量を低減することができる。しかしながら、シリンダチューブ10の製造時の材料の使用量は増加するものの、接続部14は、T3が連結部13のT2よりも小さく、かつ連結部13のT2の2/3倍よりも大きく形成されてもよい。言い換えれば、接続部14は、T3が連結部13のT2の2/3倍以下に形成されることは必須の構成ではない。
【0044】
<変形例3>
上記実施形態では、接続部14は、外径が一様となるように形成される。これに限らず、接続部14は、
図1,
図2に示す断面図において外周面がテーパ状になるように形成されてもよい。この場合では、接続部14は、本体部12側の端部において径方向の厚さが小さく、連結部13側の端部において径方向の厚さが大きく形成される。また、接続部14の径方向の厚さT3は、連結部13側の端部における最大厚さとなる。この構成であっても、上記実施形態と同様に、シリンダチューブ10での応力集中が低減されるとともに、径方向の厚さが最も小さい本体部12と接続部14との間での応力集中が低減される。
【0045】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0046】
流体圧シリンダとしての油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10と、シリンダチューブ10内に往復動可能に設けられたピストンロッド20と、ピストンロッド20に連結されシリンダチューブ10内に摺動自在に収容されたピストン30と、シリンダチューブ10の開口端11に連結され開口端11を閉塞するとともに、ピストン30との間に圧力室としてのロッド側室2を形成するシリンダヘッド40と、を備え、シリンダチューブ10は、環状の本体部12と、開口端11が形成されシリンダヘッド40が連結される環状の連結部13と、本体部12と連結部13との間にわたって形成される環状の接続部14と、を有し、連結部13は、本体部12及び接続部14よりも径方向の厚さT2が大きく形成され、接続部14は、径方向の厚さT3が、本体部12よりも大きく本体部12の二倍以下に形成される。
【0047】
この構成では、シリンダチューブ10は、本体部12と連結部13との間に形成される接続部14を有し、接続部14は、連結部13よりも径方向の厚さT3が小さく本体部12よりも径方向の厚さT3が大きい。よって、シリンダチューブ10は、接続部14が設けられない場合と比較し、径方向の厚さが緩やかに変化する。そのため、シリンダチューブ10での応力集中が低減される。さらに、シリンダチューブ10は、接続部14の径方向の厚さT3が本体部12の二倍以下に形成される。よって、シリンダチューブ10では、本体部12と接続部14との径方向の厚さT1,T3の差が小さい。そのため、径方向の厚さが最も小さく強度が低くなりやすい本体部12と接続部14との間での応力集中が低減される。
【0048】
また、接続部14は、径方向の厚さT3が連結部13の2/3倍以下に形成される。
【0049】
この構成では、シリンダチューブ10の接続部14の径方向の厚さT3が小さくなるため、シリンダチューブ10の材料の使用量を低減することができる。
【0050】
また、油圧シリンダ100では、本体部12と接続部14の境界の傾斜角αは、接続部14と連結部13の境界の傾斜角βよりも小さく形成される。
【0051】
この構成では、径方向の厚さが最も小さい本体部12と接続部14との間での応力集中がより低減される。
【0052】
また、油圧シリンダ100は、ロッド側室2の作動流体が排出されてピストンロッド20がストロークする際にストローク端付近でピストンロッド20を減速させるクッション機構80をさらに備え、接続部14は、クッション機構80によりピストンロッド20が減速される際にロッド側室2に面するように形成され、シリンダチューブ10は、降伏点が400MPa以上の材料で形成される。
【0053】
この構成では、シリンダチューブ10の接続部14には、クッション機構80によりピストンロッド20が減速される際にクッション圧が作用する。そのため、接続部14には強度が求められる。シリンダチューブ10は、降伏点が400MPa以上の材料で形成されるため、接続部14の径方向の厚さT3が小さくても、接続部14の強度を確保できる。よって、シリンダチューブ10の強度を確保しつつ、シリンダチューブ10での応力集中の低減やシリンダチューブ10の材料の使用量の低減ができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0055】
2・・・ロッド側室(圧力室)、10・・・シリンダチューブ、11・・・開口端、12・・・本体部、13・・・連結部、14・・・接続部、20・・・ピストンロッド、30・・・ピストン、40・・・シリンダヘッド、80・・・クッション機構、100・・・油圧シリンダ(流体圧シリンダ)、T1・・・本体部の厚さ、T2・・・連結部の厚さ、T3・・・接続部の厚さ、α,β…傾斜角
【要約】
【課題】流体圧シリンダのシリンダチューブでの応力集中を低減する。
【解決手段】油圧シリンダ100は、シリンダチューブ10と、ピストンロッド20と、ピストン30と、シリンダチューブ10の開口端11に連結され開口端11を閉塞するとともに、ピストン30との間にロッド側室2を形成するシリンダヘッド40と、を備え、シリンダチューブ10は、環状の本体部12と、開口端11が形成されシリンダヘッド40が連結される環状の連結部13と、本体部12と連結部13との間にわたって形成される環状の接続部14と、を有し、連結部13は、本体部12及び接続部14よりも径方向の厚さT2が大きく形成され、接続部14は、径方向の厚さT3が、本体部12よりも大きく本体部12の二倍以下に形成される。
【選択図】
図2