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特許7431921試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240207BHJP
   H01J 49/04 20060101ALI20240207BHJP
   H01J 49/16 20060101ALI20240207BHJP
   H01J 49/00 20060101ALI20240207BHJP
   H01J 49/40 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N27/62 G
H01J49/04 180
H01J49/16 400
H01J49/00 040
H01J49/00 360
H01J49/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022168239
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2018147887の分割
【原出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2023011692
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 未羽
(72)【発明者】
【氏名】大村 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】小谷 政弘
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/038710(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/068847(WO,A1)
【文献】特開2014-021048(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107464(JP,U)
【文献】米国特許第07145135(US,B1)
【文献】特開2015-010910(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182747(WO,A1)
【文献】特開2016-145746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62-27/70
H01J 49/00-49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料のイオン化用の試料支持体であって、
第1表面、及び前記第1表面とは反対側の第2表面に開口する複数の貫通孔が形成された基板と、
前記第1表面において前記貫通孔を塞がないように設けられた金属の導電層と、
前記基板の厚み方向から見た場合に、前記試料がイオン化されるイオン化領域を囲むように、前記基板の周縁部に設けられた枠体と、を備え、
前記枠体には、前記イオン化領域における位置を認識するための標識が設けられており、
前記標識は、前記枠体の表面に形成された凹凸であり、
前記標識は、前記導電層によって覆われている、試料支持体。
【請求項2】
前記枠体の第1の方向に沿って延びる部分には、前記第1の方向に沿って配置された複数の第1の標識が設けられており、
前記枠体の前記第1の方向と直交する第2の方向に沿って延びる部分には、前記第2の方向に沿って配置された複数の第2の標識が設けられている、請求項1に記載の試料支持体。
【請求項3】
前記複数の第1の標識のそれぞれは、数字であり、
前記複数の第2の標識のそれぞれは、文字である、請求項2に記載の試料支持体。
【請求項4】
前記標識は、幅が所定値以上の目視用標識と、幅が前記所定値よりも小さい装置用標識と、を有している、請求項1~の何れか一項に記載の試料支持体。
【請求項5】
エネルギー線を照射する照射部と、前記枠体に設けられた前記標識を走査する走査部と、前記照射部の動作を制御する制御部と、を備えるイオン化装置による試料のイオン化方法であって、
試料、及び、請求項1~の何れか一項に記載の試料支持体を用意する第1工程と、
前記第2表面が前記試料に対向するように、前記試料上に前記試料支持体を配置する第2工程と、
前記枠体に設けられた前記標識を前記走査部に走査させることにより、前記イオン化領域における前記エネルギー線の照射範囲を前記制御部に認識させる第3工程と、
前記導電層に電圧を印加しつつ、前記照射範囲における前記第1表面に対して前記エネルギー線が照射されるように前記制御部に前記照射部を動作させることにより、前記照射範囲における前記貫通孔を介して前記第1表面側に移動した前記試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む、試料のイオン化方法。
【請求項6】
前記標識は、幅が所定値以上の目視用標識と、幅が前記所定値よりも小さい装置用標識と、を有しており、
前記第3工程においては、前記イオン化領域における前記試料の存在範囲と前記目視用標識とに基づいて測定者が前記照射範囲を決定し、前記測定者によって決定された前記照射範囲に対応する前記装置用標識が前記走査部に読み取られた際の前記走査部の位置に基づいて前記制御部が前記照射範囲を認識する、請求項に記載の試料のイオン化方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の試料のイオン化方法の各工程と、
イオン化された前記成分を検出し、前記照射範囲における前記試料の質量分布を示す分布画像を取得する第5工程と、
前記試料上に前記試料支持体を配置した状態で、前記試料及び前記試料支持体を含む光学画像を取得する第6工程と、
前記光学画像中の前記標識に基づいて、前記光学画像中の前記照射範囲と前記分布画像とが重なるように、前記光学画像と前記分布画像とを重ね合わせる第7工程と、を含む、質量分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体試料等の試料の質量分析において、試料をイオン化するための試料支持体が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような試料支持体は、第1表面、及び、第1表面とは反対側の第2表面に開口する複数の貫通孔が形成された基板を備えている。第2表面が試料に対向するように試料上に試料支持体を配置した場合に、毛細管現象を利用して、基板の第2表面側から貫通孔を介して第1表面側に向けて試料を上昇させることができる。そして、第1表面側に例えばレーザ光などのエネルギー線を照射すると、第1表面側に移動した試料がイオン化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6093492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような質量分析では、基板の第1表面側にエネルギー線を照射するときには、エネルギー線の照射範囲を質量分析装置に認識させることが求められる。しかし、質量分析装置によっては、質量分析装置に付随するカメラ等の視野が狭く、質量分析装置内に配置された試料支持体の全体を観察することができないため、上記照射範囲を容易に認識できない場合がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、エネルギー線の照射範囲を容易に認識することができる試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明一側面に係る試料支持体は、試料のイオン化用の試料支持体であって、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面に開口する複数の貫通孔が形成された基板と、第1表面において貫通孔を塞がないように設けられた導電層と、基板の厚み方向から見た場合に、試料がイオン化されるイオン化領域を囲むように、基板の周縁部に設けられた枠体と、を備え、枠体には、イオン化領域における位置を認識するための標識が設けられている。
【0007】
この試料支持体では、基板には、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面に開口する複数の貫通孔が形成されている。このため、例えば生体試料等の試料上に、基板の第2表面が試料に対向するように試料支持体を配置した場合に、毛細管現象を利用して、第2表面側から貫通孔を介して第1表面側に向けて試料(試料の成分)を移動させることができる。さらに、例えばレーザ光等のエネルギー線を第1表面に対して照射した場合に、第1表面側に移動した試料の成分に導電層を介してエネルギーが伝達されることにより、試料の成分をイオン化することができる。また、この試料支持体は、基板の周縁部に設けられた枠体を備えている。このため、枠体によって試料支持体のハンドリング性を向上させることができる。しかも、枠体は、基板の厚み方向から見た場合に、試料がイオン化されるイオン化領域を囲んでおり、枠体には、イオン化領域における位置を認識するための標識が設けられている。これにより、以下の効果が奏される。すなわち、例えば、試料支持体にエネルギー線を照射するイオン化装置に付随するカメラ等の視野が狭く、イオン化領域の観察によって照射範囲(エネルギー線を照射すべき範囲)を特定することが困難な場合がある。このような場合であっても、当該カメラ等を走査して枠体に設けられた標識を読み取ることにより、エネルギー線の照射範囲をイオン化装置に認識させることができる。よって、この試料支持体によれば、エネルギー線の照射範囲を容易に認識することができる。
【0008】
貫通孔の幅は、1nm~700nmであり、基板の厚さは、1μm~50μmであってもよい。この場合、上述した毛細管現象による試料の成分の移動を適切に実現することができる。
【0009】
枠体の第1の方向に沿って延びる部分には、第1の方向に沿って配置された複数の第1の標識が設けられており、枠体の第1の方向と直交する第2の方向に沿って延びる部分には、第2の方向に沿って配置された複数の第2の標識が設けられていてもよい。この場合、第1の標識によって第1の方向における位置を認識することが可能となり、第2の標識によって第2の方向における位置を認識することが可能となる。これにより、エネルギー線の照射範囲(例えば始点位置、終点位置等)の2次元座標を容易に把握することが可能となる。
【0010】
標識は、数字、記号、及び文字から選択される少なくとも1つであってもよい。この場合、目視及び/又は装置読取に適した標識を実現できる。
【0011】
標識は、幅が所定値以上の目視用標識と、幅が所定値よりも小さい装置用標識と、を有していてもよい。この場合、例えば、測定者が目視で目視用標識を読み取ることによって、照射範囲を予め決定することが可能となる。さらに、例えばイオン化装置に付随するカメラによって、測定者によって決定された照射範囲に対応する装置用標識を読み取ることによって、エネルギー線の照射範囲をイオン化装置に認識させることが可能となる。
【0012】
本発明の他の側面に係る試料支持体は、試料のイオン化用の試料支持体であって、導電性を有し、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面に開口する複数の貫通孔が形成された基板と、基板の厚み方向から見た場合に、試料がイオン化されるイオン化領域を囲むように、基板の周縁部に設けられた枠体と、を備え、枠体には、イオン化領域における位置を認識するための標識が設けられている。
【0013】
この試料支持体によれば、導電層を省略することができると共に、上述した導電層を備える試料支持体と同様の効果を得ることができる。
【0014】
本発明の一側面に係る試料のイオン化方法は、エネルギー線を照射する照射部と、枠体に設けられた標識を走査する走査部と、照射部の動作を制御する制御部と、を備えるイオン化装置による試料のイオン化方法であって、試料、及び、上記導電層を備える試料支持体を用意する第1工程と、第2表面が試料に対向するように、試料上に試料支持体を配置する第2工程と、枠体に設けられた標識を走査部に走査させることにより、イオン化領域におけるエネルギー線の照射範囲を制御部に認識させる第3工程と、導電層に電圧を印加しつつ、照射範囲における第1表面に対してエネルギー線が照射されるように制御部に照射部を動作させることにより、照射範囲における貫通孔を介して第1表面側に移動した試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む。
【0015】
上記試料のイオン化方法では、基板には、第1表面、及び第1表面とは反対側の第2表面に開口する複数の貫通孔が形成されている。試料上に、基板の第2表面が試料に対向するように試料支持体が配置されると、試料(試料の成分)が、毛細管現象によって第2表面側から貫通孔を介して第1表面側に向けて移動する。さらに、導電層に電圧が印加されつつ第1表面に対してエネルギー線が照射されると、第1表面側に移動した試料の成分にエネルギーが伝達される。これにより、試料の成分がイオン化される。また、枠体に設けられた標識の走査により、エネルギー線の照射範囲をイオン化装置に容易に認識させることができる。
【0016】
本発明の他の側面に係る試料のイオン化方法は、エネルギー線を照射する照射部と、枠体に設けられた標識を走査する走査部と、照射部の動作を制御する制御部と、を備えるイオン化装置による試料のイオン化方法であって、試料、及び、上記導電性を有する基板を備える試料支持体を用意する第1工程と、第2表面が試料に対向するように、試料上に試料支持体を配置する第2工程と、枠体に設けられた標識を走査部に走査させることにより、イオン化領域におけるエネルギー線の照射範囲を制御部に認識させる第3工程と、基板に電圧を印加しつつ、照射範囲における第1表面に対してエネルギー線が照射されるように制御部に照射部を動作させることにより、照射範囲における貫通孔を介して第1表面側に移動した試料の成分をイオン化する第4工程と、を含む。
【0017】
この試料のイオン化方法によれば、試料支持体において導電層を省略することができると共に、上述したように導電層を備える試料支持体を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0018】
上記イオン化方法において、標識は、幅が所定値以上の目視用標識と、幅が所定値よりも小さい装置用標識と、を有しており、第3工程においては、イオン化領域における試料の存在範囲と目視用標識とに基づいて測定者が照射範囲を決定し、測定者によって決定された照射範囲に対応する装置用標識が走査部に読み取られた際の走査部の位置に基づいて制御部が照射範囲を認識してもよい。この場合、枠体に設けられた標識によって、測定者の目視による照射範囲の決定、及びイオン化装置の機械的操作(標識走査)による照射範囲の認識の両方を的確に実現できる。
【0019】
本発明の一側面に係る質量分析方法は、上記試料のイオン化方法の各工程と、イオン化された成分を検出し、照射範囲における試料の質量分布を示す分布画像を取得する第5工程と、試料上に試料支持体を配置した状態で、試料及び試料支持体を含む光学画像を取得する第6工程と、光学画像中の標識に基づいて、光学画像中の照射範囲と分布画像とが重なるように、光学画像と分布画像とを重ね合わせる第7工程と、を含む。
【0020】
上記質量分析方法によれば、試料支持体の枠体に設けられた標識に基づいて、試料の光学画像と分布画像とを精度良く重ね合わせることができる。その結果、試料の各位置における質量分布を可視化することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明一側面によれば、エネルギー線の照射範囲を容易に認識することができる試料支持体、試料のイオン化方法、及び質量分析方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る試料支持体の平面図である。
図2図1に示されるII-II線に沿っての試料支持体の断面図である。
図3図1に示される基板の厚み方向から見た当該基板における実効領域の拡大像を示す図である。
図4図1に示されるフレームの拡大図である。
図5】一実施形態に係る質量分析方法の手順を示す図である。
図6】一実施形態に係る質量分析方法の手順を示す図である。
図7】一実施形態に係る質量分析方法の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面に示される各部材(又は部位)の寸法又は寸法の比率は、説明をわかり易くするために、実際の寸法又は寸法の比率とは異なることがある。
【0024】
[試料支持体の構成]
図1は、一実施形態の試料支持体1の平面図を示している。図1及び図2に示されるように、試料支持体1は、基板2と、フレーム(枠体)3と、導電層4と、を備えている。試料支持体1は、試料のイオン化用の試料支持体である。試料支持体1は、例えば質量分析を行う際に、測定対象の試料の成分をイオン化するために用いられる。
【0025】
基板2は、第1表面2a、及び第1表面2aとは反対側の第2表面2bを有している。基板2には、複数の貫通孔2cが一様に(均一な分布で)形成されている。各貫通孔2cは、試料支持体1(すなわち、基板2)の厚み方向(以下、単に「厚み方向」という。)に延びており、第1表面2a及び第2表面2bに開口している。厚み方向は、第1表面2a及び第2表面2bに垂直な方向である。基板2は、例えば、絶縁性材料によって長方形板状に形成されている。厚み方向から見た場合における基板2の一辺の長さは、例えば数cm~数十cm程度であり、基板2の厚さは、例えば1μm~50μm程度である。本実施形態では、基板2の厚さは、5μm程度である。基板2は、可視光に対して略透明である。例えば上記試料は、基板2を介して視認され得る。
【0026】
フレーム3は、基板2の第1表面2aに設けられている。具体的には、フレーム3は、接着層5によって基板2の第1表面2aに固定されている。接着層5の材料としては、放出ガスの少ない接着材料(例えば、低融点ガラス、真空用接着剤等)が用いられることが好ましい。フレーム3は、矩形枠状を呈している。フレーム3は、基板2の周縁部に設けられている。フレーム3は、矩形状の内縁3a、及び矩形状の外縁3bを有している。フレーム3は、厚み方向から見た場合に、実効領域(イオン化領域)Rを囲んでいる。実効領域Rは、基板2において後述する試料の成分を第1表面2a側に移動させ、且つ、試料の成分をイオン化するために機能する領域である。
【0027】
フレーム3は、厚み方向から見た場合に基板2と略同一の外形を有している。厚み方向から見た場合におけるフレーム3の一辺の長さ(外縁3bの一辺の長さ)は、例えば数cm~数十cm程度である。厚み方向から見た場合におけるフレーム3の内縁3a(実効領域R)の一辺の長さは、例えば数cm~数十cm程度である。フレーム3の厚さは、例えば1mm以下である。フレーム3の材料は、例えば金属又はセラミックス等である。このようなフレーム3によって、試料支持体1のハンドリングが容易化すると共に、温度変化等に起因する基板2の変形が抑制される。
【0028】
フレーム3における基板2とは反対側の表面3cには、第1の標識50及び第2の標識60が設けられている。第1の標識50は、フレーム3のX軸方向(第1の方向)に沿って延びる第1の部分31において、X軸方向に沿って複数配置されている。第1の標識50は、例えば、X軸方向に沿って並んでいる複数の数字である。同様に、第2の標識60は、フレーム3のY軸方向(第1の方向と直交する第2の方向)に沿って延びる第2の部分32において、Y軸方向に沿って複数配置されている。第2の標識60は、例えば、Y軸方向に沿って並んでいる複数の数字である。第1の標識50及び第2の標識60は、厚み方向から見た場合に、実効領域Rにおける位置を認識するための座標系を構成する。第1の標識50及び第2の標識60は、例えば、フレーム3の表面3cを凹凸させることによって形成されている。
【0029】
導電層4は、基板2の第1表面2aに設けられている。具体的には、導電層4は、基板2の第1表面2aのうちフレーム3の内縁3aに対応する領域(すなわち、実効領域Rに対応する領域)、内縁3aの内面、及びフレーム3の表面3cに一続きに(一体的に)形成されている。導電層4は、実効領域Rにおいては、第1表面2aにおける貫通孔2cの周縁部に設けられている。すなわち、導電層4は、基板2の第1表面2aのうち貫通孔2cが形成されていない部分を覆っている。つまり、導電層4は、貫通孔2cを塞がないように設けられている。実効領域Rにおいては、各貫通孔2cが内縁3aに露出している。導電層4は、フレーム3の表面3cにおいて、第1の標識50及び第2の標識60を覆っている。しかし、第1の標識50及び第2の標識60は、表面3cを凹凸させることによって形成されているため、導電層4によって覆われていても、目視及び装置による認識が妨げられない。
【0030】
導電層4は、導電性材料によって形成されている。ただし、導電層4の材料としては、以下に述べる理由により、試料との親和性(反応性)が低く且つ導電性が高い金属が用いられることが好ましい。
【0031】
例えば、タンパク質等の試料と親和性が高いCu(銅)等の金属によって導電層4が形成されていると、後述する試料のイオン化の過程において、試料分子にCu原子が付着した状態で試料がイオン化され、Cu原子が付着した分だけ、後述する質量分析法において検出結果がずれるおそれがある。したがって、導電層4の材料としては、試料との親和性が低い金属が用いられることが好ましい。
【0032】
一方、導電性の高い金属ほど一定の電圧を容易に且つ安定して印加し易くなる。そのため、導電性が高い金属によって導電層4が形成されていると、基板2の第1表面2aに均一に電圧を印加することが可能となる。また、導電性の高い金属ほど熱伝導性も高い傾向にある。そのため、導電性が高い金属によって導電層4が形成されていると、基板2に照射されたレーザ光等のエネルギー線のエネルギーを、導電層4を介して試料に効率的に伝えることが可能となる。したがって、導電層4の材料としては、導電性の高い金属が用いられることが好ましい。
【0033】
以上の観点から、導電層4の材料としては、例えば、Au(金)、Pt(白金)等が用いられることが好ましい。導電層4は、例えば、メッキ法、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、蒸着法、スパッタ法等によって、厚さ1nm~350nm程度に形成される。本実施形態では、導電層4の厚さは、10nm程度である。なお、導電層4の材料としては、例えば、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)等が用いられてもよい。
【0034】
図3は、厚み方向から見た場合における基板2の拡大像を示す図である。図3において、黒色の部分は貫通孔2cであり、白色の部分は貫通孔2c間の隔壁部である。図3に示されるように、基板2には、略一定の幅を有する複数の貫通孔2cが一様に形成されている。厚み方向から見た場合における貫通孔2cの形状は、例えば略円形である。貫通孔2cの幅は、例えば1nm~700nm程度である。本実施形態では、貫通孔2cの幅は、200nm程度である。貫通孔2cの幅とは、厚み方向から見た場合における貫通孔2cの形状が略円形である場合には、貫通孔2cの直径を意味し、当該形状が略円形以外である場合には、貫通孔2cに収まる仮想的な最大円柱の直径(有効径)を意味する。各貫通孔2c間のピッチは、例えば1nm~1000nm程度である。各貫通孔2c間のピッチとは、厚み方向から見た場合における貫通孔2cの形状が略円形である場合には、当該各円の中心間距離を意味し、当該形状が略円形以外である場合には、貫通孔2cに収まる仮想的な最大円柱の中心軸間距離を意味する。基板2の貫通孔2c間の隔壁部の幅は、例えば300nm程度である。
【0035】
貫通孔2cの開口率(厚み方向から見た場合に第1表面2aに対して全ての貫通孔2cが占める割合)は、実用上は10~80%であり、特に50~80%であることが好ましい。複数の貫通孔2cの大きさは互いに不揃いであってもよいし、部分的に複数の貫通孔2c同士が互いに連結していてもよい。
【0036】
基板2は、例えば、Al(アルミニウム)を陽極酸化することにより形成されたアルミナポーラス皮膜である。具体的には、Al基板に対して陽極酸化処理を施し、酸化された表面部分をAl基板から剥離することにより、基板2を得ることができる。なお、基板2は、Ta(タンタル)、Nb(ニオブ)、Ti(チタン)、Hf(ハフニウム)、Zr(ジルコニウム)、Zn(亜鉛)、W(タングステン)、Bi(ビスマス)、Sb(アンチモン)等のAl以外のバルブ金属を陽極酸化することにより形成されてもよいし、Si(シリコン)を陽極酸化することにより形成されてもよい。
【0037】
図4は、フレーム3の拡大図である。図4に示されるように、第1の標識50は、目視用標識51と、装置用標識52と、を有している。目視用標識51は、測定者の目視によって読み取るための標識である。複数の目視用標識51が、X軸方向に沿って配置されている。複数の目視用標識51は、例えば、X軸方向に沿って等間隔に並んでいる。本実施形態では一例として、各目視用標識51は数字である。目視用標識51の幅w1は、測定者の目視によって認識できる程度である。目視用標識51の幅w1は、所定値(例えば1mm)以上である。
【0038】
目視用標識51の幅w1は、例えば1~4mm程度である。互いに隣接する目視用標識51間のピッチ(つまり、互いに隣接する目視用標識51の中央間の距離)w2は、例えば2mm~10mm程度である。互いに隣接する目視用標識51間のスペースの長さw3は、例えば1mm~9mm程度である。本実施形態では一例として、目視用標識51の幅w1は、1mm程度であり、目視用標識51間のピッチw2は、2mm程度であり、目視用標識51間のスペースの長さw3は、1mm程度である。目視用標識51は、例えば打刻またはレーザを用いた刻印によって、フレーム3の表面3cに凹凸を形成することによって設けられている。目視用標識51の彫高(深さ)は、例えば0.1mm~0.9mm程度である。
【0039】
装置用標識52は、例えば、後述する質量分析装置10(イオン化装置)に付随するカメラ16(図7参照)によって読み取るための標識である。本実施形態では一例として、装置用標識52は、目視用標識51よりもフレーム3の内側に位置している。複数の装置用標識52が、X軸方向に沿って配置されている。複数の装置用標識52は、例えば、X軸方向に沿って等間隔に並んでいる。本実施形態では一例として、各装置用標識52は数字である。
【0040】
装置用標識52の幅w4は、目視用標識51の幅w1よりも小さい。つまり、装置用標識52の幅w4は、所定値よりも小さい。装置用標識52の幅w4は、例えば1nm~0.1mm程度である。互いに隣接する装置用標識52間のピッチ(つまり、互いに隣接する装置用標識52の中央間の距離)w5は、目視用標識51間のピッチw2よりも小さい。装置用標識52間のピッチw5は、例えば5nm~0.2mm程度である。互いに隣接する装置用標識52間のスペースの長さw6は、例えば4nm~0.1mm程度である。本実施形態では一例として、装置用標識52の幅w4は、40μm程度であり、装置用標識52間のピッチw5は、110μm程度であり、装置用標識52間のスペースの長さw6は、70μm程度である。装置用標識52は、例えばレーザを用いた刻印(一例として、浅彫り)によって、フレーム3の表面3cに凹凸を形成することによって設けられている。装置用標識52の彫高(深さ)は、例えば5μm程度である。なお、レーザを用いた刻印としては、例えば、深彫り等の手法が適用されてもよい。各手法によって、装置用標識52の彫高は、異なる。
【0041】
なお、複数の目視用標識51と複数の装置用標識52との位置関係は、例えば予め用意された対応表に記憶されている。測定者は、このような対応表を参照することにより、X軸方向における目視用標識51の標識「1」の中央位置に装置用標識52の標識「14」又は「15」が対応すること、X軸方向における目視用標識51の標識「1」及び「2」の中間位置に装置用標識52の標識「22」が対応すること等を把握することができる。なお、対応表は、紙等に保存されていてもよいし、コンピュータの記憶装置(メモリ、ストレージ等)にデータとして保存されていてもよい。
【0042】
第1の標識50と同様に、第2の標識60も、目視用標識61(図1参照)と、装置用標識62(図1参照)と、を有している。すなわち、目視用標識61は、測定者の目視によって読み取るための標識である。複数の目視用標識61が、Y軸方向に沿って配置されている。複数の目視用標識61は、例えば、Y軸方向に沿って等間隔に並んでいる。本実施形態では一例として、各目視用標識61は数字である。目視用標識61の幅、隣り合う目視用標識61間のピッチ、及び隣り合う目視用標識61間のスペースの長さは、上述した目視用標識51の幅w1、隣り合う目視用標識51間のピッチw2、及び隣り合う目視用標識51間のスペースの長さw3と同様である。装置用標識62は、例えば、質量分析装置10に付随するカメラ16によって読み取るための標識である。本実施形態では一例として、装置用標識62は、目視用標識61よりもフレーム3の内側に位置している。複数の装置用標識62が、Y軸方向に沿って配置されている。複数の装置用標識62は、例えば、Y軸方向に沿って等間隔に並んでいる。本実施形態では一例として、各装置用標識62は数字である。装置用標識62の幅、隣り合う装置用標識62間のピッチ、及び隣り合う装置用標識62間のスペースの長さは、上述した装置用標識52の幅w4、隣り合う装置用標識52間のピッチw5、及び隣り合う装置用標識52間のスペースの長さw6と同様である。
【0043】
[試料のイオン化方法]
次に、図5図7を参照して、試料支持体1を用いた試料のイオン化方法について説明する。ここでは一例として、レーザ光(エネルギー線)を用いたレーザ脱離イオン化方法(質量分析装置10による質量分析方法の一部)について説明する。図5及び図7においては、試料支持体1における貫通孔2c、導電層4、及び接着層5の図示が省略されている。
【0044】
まず、図5の(a)に示されるように、試料Sが用意される(第1工程)。具体的には、試料Sがスライドガラス(載置部)6の載置面6aに載置される。スライドガラス6は、ITO(Indium Tin Oxide)膜等の透明導電膜が形成されたガラス基板であり、透明導電膜の表面が載置面6aとなっている。なお、スライドガラス6に限定されず、導電性を確保し得る部材(例えば、ステンレス等の金属材料等からなる基板等)を載置部として用いることができる。ここで、試料Sは、例えば生体試料(含水試料)である。試料Sは、例えばマウスの肝臓切片等である。試料Sの成分S1(図6の(b)参照)の移動をスムーズにするために、成分S1の粘性を低くするための溶液(例えばアセトニトリル混合液、アセトン等)が、試料Sに添加されてもよい。
【0045】
続いて、図5の(b)に示されるように、上述した試料支持体1が用意される(第1工程)。試料支持体1は、イオン化法及び質量分析方法を実施する者によって製造されることで用意されてもよいし、試料支持体1の製造者又は販売者等から取得されることで用意されてもよい。続いて、第2表面2bが試料Sに対向するように、試料S上に試料支持体1が配置される(第2工程)。試料支持体1は、第2表面2bが試料Sに接触するように、試料S上に配置される。
【0046】
続いて、図5の(c)に示されるように、スライドガラス6に対して試料支持体1が固定される。試料支持体1は、導電性を有するテープ7(例えば、カーボンテープ等)によって、スライドガラス6に対して固定される。テープ7は、第1の標識50及び第2の標識60が露出するように、試料支持体1を固定する。つまり、第1の標識50及び第2の標識60は、テープ7によって覆われない。或いは、例えばテープ7が透明材料で形成されており、第1の標識50及び第2の標識60がテープ7で覆われても、第1の標識50及び第2の標識60が後述するカメラ16によって読み取ることが可能な場合には、第1の標識50及び第2の標識60は、テープ7によって覆われてもよい。テープ7は、試料支持体1の一部であってもよいし、試料支持体1とは別に用意されてもよい。テープ7が試料支持体1の一部である場合(すなわち、試料支持体1がテープ7を備える場合)には、例えば、テープ7は、予め、フレーム3の表面3c側に固定されていてもよい。より具体的には、テープ7は、フレーム3の表面3cに形成された導電層4上に固定されていてもよい。
【0047】
試料Sの成分S1は、毛細管現象によって、基板2の第2表面2b側から貫通孔2cを介して基板2の第1表面2a側に向けて移動する。基板2の第1表面2a側に移動した成分S1は、表面張力によって第1表面2a側に留まる。図6は、試料S上に試料支持体1が配置された状態を示す平面図である。図6に示されるように、試料Sの成分S1は、実効領域Rにおける領域D1(試料Sの存在範囲)において、第1表面2a側に移動している。続いて、フレーム3に設けられた第1の標識50及び第2の標識60をカメラ16に走査させることにより、実効領域Rにおけるレーザ光Lの照射範囲D2が制御部17(図7参照)によって認識される(第3工程)。
【0048】
具体的には、まず、領域D1と目視用標識51及び目視用標識61とに基づいて測定者が照射範囲D2を決定する。より具体的には、試料S上に試料支持体1が配置されると、測定者は、目視により、例えば領域D1を含む領域を照射範囲D2として決定する。本実施形態では一例として、照射範囲D2は、X軸方向に延びる一対の辺部とY軸方向に延びる一対の辺部とに囲まれた矩形状を呈している。そして、測定者は、目視用標識51及び目視用標識61に基づいて、照射範囲D2の始点P1及び終点P2のそれぞれの座標(X1,Y1)及び(X2,Y2)を把握する。座標(X1,Y1)及び(X2,Y2)は、目視用標識51及び目視用標識61によって構成される座標系における座標である。ここでは一例として、(X1,Y1)は、(7.9,1.1)であり、(X2,Y2)は、(1.5,5.9)である。なお、このように把握される座標は、測定者の目視によって推測された値である。
【0049】
続いて、図7に示されるように、スライドガラス6と試料支持体1との間に試料Sが配置された状態で、スライドガラス6、試料支持体1、及び試料Sが、質量分析装置10の支持部12上に載置される。
【0050】
質量分析装置10は、支持部12と、試料ステージ18と、カメラ16(走査部)と、照射部13と、電圧印加部14と、イオン検出部15と、制御部17と、を備えている。支持部12上には、分析対象の試料S等が載置される。試料ステージ18上には、試料S等が載置された支持部12が載置される。支持部12に載置された試料S等は、カメラ16によって観察される。ここで、カメラ16の観察範囲(視野)C(図4参照)の幅は、例えば、1.5mm程度である。すなわち、カメラ16の視野は、実効領域Rよりも小さく、少なくとも装置用標識52,62を観察可能な大きさとなっている。照射部13は、試料支持体1の第1表面2aに対してレーザ光L等のエネルギー線を照射する。電圧印加部14は、試料支持体1の第1表面2aに対して電圧を印加する。イオン検出部15は、イオン化された試料Sのイオンを検出する。制御部17は、試料ステージ18、カメラ16、照射部13、電圧印加部14、イオン検出部15の動作を制御する。制御部17は、例えば、プロセッサ(例えば、CPU[Central Processing Unit])、及びメモリ(例えば、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等)等を備えるコンピュータ装置である。
【0051】
続いて、制御部17は、装置用標識52及び装置用標識62に基づいて照射範囲D2を認識する。例えば、まず、制御部17は、フレーム3に設けられた装置用標識52がカメラ16によって撮像される位置まで、試料支持体1を試料ステージ18に搬送させる。具体的には、制御部17は、カメラ16がX軸方向に沿って配列された装置用標識52を走査するように試料ステージ18を移動させることによって、カメラ16の観察範囲C(図4参照)に目的の装置用標識52が収まるように試料支持体1を位置させる。ここで、制御部17は、測定者の目視によって把握された始点P1の座標X1(ここでは、7.9)及び終点P2の座標X2(ここでは、1.5)に対応する装置用標識52を予め取得している。このような装置用標識52の取得は、例えば制御部17を構成するコンピュータに対する測定者の入力操作によって実現され得る。そして、制御部17は、カメラ16によって始点P1の座標X1に対応する装置用標識52が読み取られた際の試料ステージ18のX軸方向における位置x1に基づいて、照射範囲D2の始点P1のX座標を認識(記憶)する。つまり、制御部17は、位置x1を始点P1のX座標として認識する。同様に、制御部17は、カメラ16によって終点P2の座標X2に対応する装置用標識52が読み取られた際の試料ステージ18のX軸方向における位置x2に基づいて、照射範囲D2の終点P2のX座標を認識(記憶)する。つまり、制御部17は、位置x2を終点P2のX座標として認識する。
【0052】
同様に、制御部17は、フレーム3に設けられた装置用標識62がカメラ16によって撮像される位置まで、試料支持体1を試料ステージ18に搬送させる。具体的には、制御部17は、カメラ16がY軸方向に沿って配列された装置用標識62を走査するように試料ステージ18を移動させることによって、カメラ16の観察範囲Cに目的の装置用標識62が収まるように試料支持体1を位置させる。ここで、制御部17は、測定者の目視によって把握された始点P1の座標Y1(ここでは、1.1)及び終点P2の座標Y2(ここでは、5.9)に対応する装置用標識62を予め取得している。このような装置用標識62の取得は、上述した装置用標識52の取得と同様の方法により実現され得る。そして、制御部17は、カメラ16によって始点P1の座標Y1に対応する装置用標識62が読み取られた際の試料ステージ18のY軸方向における位置y1に基づいて、照射範囲D2の始点P1のY座標を認識(記憶)する。つまり、制御部17は、位置y1を始点P1のY座標として認識する。同様に、制御部17は、カメラ16によって終点P2の座標Y2に対応する装置用標識62が読み取られた際の試料ステージ18のY軸方向における位置y2に基づいて、照射範囲D2の終点P2のY座標を認識(記憶)する。つまり、制御部17は、位置y2を終点P2のY座標として認識する。
【0053】
このように、制御部17は、X軸方向に沿って配列された複数の装置用標識52とY軸方向に沿って配列された複数の装置用標識62とをカメラ16に走査させることにより、始点P1及び終点P2のそれぞれの位置(x1,y1)及び(x2,y2)を認識することができる。これにより、制御部17は、照射範囲D2を認識する。なお、座標(X1,Y1)及び(X2,Y2)は、フレーム3の目視用標識51及び目視用標識61によって構成される座標系における座標である一方、位置(x1,y1)及び(x2,y2)は、制御部17によって用いられる制御用の座標系である。すなわち、位置(x1,y1)及び(x2,y2)は、照射部13を走査させる際に参照される位置である。ここで、始点P1の座標(X1,Y1)及び終点P2の座標(X2,Y2)は、位置(x1,y1)及び(x2,y2)に対応している。このような対応関係から、フレーム3の目視用標識51及び目視用標識61によって構成される座標系と制御用の座標系とは、相互に変換可能である。
【0054】
続いて、電圧印加部14によって、スライドガラス6の載置面6a及びテープ7を介して試料支持体1の導電層4(図2参照)に電圧が印加される(第4工程)。続いて、制御部17が、制御用の座標系によって認識された照射範囲D2(すなわち、位置(x1,y1)及び(x2,y2)によって特定される範囲)に基づいて、照射部13を動作させる。具体的には、制御部17は、照射範囲D2における第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されるように照射部13を動作させる(第4工程)。これにより、照射部13は、照射範囲D2における第1表面2aに対してレーザ光Lを走査する。
【0055】
一例として、制御部17は、試料ステージ18を移動させると共に、照射部13の動作制御として、照射部13によるレーザ光Lの照射動作(照射タイミング等)を制御する。すなわち、制御部17は、試料ステージ18が所定間隔移動したことを確認した後に、照射部13にレーザ光Lの照射を実行させる。具体的には、まず、制御部17が試料ステージ18を移動させることによって、照射部13によるレーザ光Lの照射位置が照射範囲D2の始点P1に対応する位置(x1,y1)に合わされる。そして、始点P1の位置(x1,y1)に対してレーザ光Lが照射される。続いて、制御部17が試料ステージ18を移動させることによって、照射部13によるレーザ光Lの照射位置がX軸方向において位置(x1,y1)から所定間隔(予め定められたレーザ照射間隔)だけ離れた位置に合わされ、当該位置に対してレーザ光Lが照射される。このような操作が繰り返されることにより、レーザ光Lは、X軸方向において所定間隔毎に順次照射される。そして、レーザ光Lの照射位置が照射範囲D2の縁部(すなわち、図6における折り返し点P3の座標(X3,Y3)に対応する位置(x2,y1))に到達すると、制御部17が試料ステージ18を移動させることによって、照射部13によるレーザ光Lの照射位置がY軸方向において直前の照射位置から所定間隔だけ離れた位置に合わされ、当該位置に対してレーザ光Lが照射される。続いて、レーザ光Lは、X軸方向において直前の照射位置と所定間隔離れた位置に対して照射される。レーザ光Lは、X軸方向において所定間隔毎に順次照射される。このように、レーザ光Lは、照射範囲D2において蛇行状に走査された後、終点P2の位置(x2,y2)に到達する。以上により、レーザ光Lが照射範囲D2における第1表面2aに対して走査される。なお、第1表面2aに対するレーザ光Lの走査は、試料ステージ18及び照射部13の少なくとも1つが動作させられることにより、実施可能である。照射部13を動かす場合には、制御部17は、照射部13の動作制御として、照射部13の移動及び照射部13によるレーザ光Lの照射動作の両方を制御する。
【0056】
このように、導電層4に電圧が印加されつつ照射範囲D2における第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されることにより、照射範囲D2における貫通孔2cを介して第1表面2a側に移動した成分S1がイオン化され、試料イオンS2(イオン化された成分S1)が放出される。具体的には、レーザ光Lのエネルギーを吸収した導電層4から、基板2の第1表面2a側に移動した成分S1にエネルギーが伝達され、エネルギーを獲得した成分S1が気化すると共に電荷を獲得して、試料イオンS2となる。以上の各工程が、試料支持体1を用いた試料Sのイオン化方法(ここでは一例として、質量分析方法の一部としてのレーザ脱離イオン化法)に相当する。
【0057】
放出された試料イオンS2は、試料支持体1とイオン検出部15との間に設けられたグランド電極(図示省略)に向かって加速しながら移動する。つまり、試料イオンS2は、電圧が印加された導電層4とグランド電極との間に生じた電位差によって、グランド電極に向かって加速しながら移動する。そして、イオン検出部15によって試料イオンS2が検出される(第5工程)。
【0058】
イオン検出部15による試料イオンS2の検出結果は、レーザ光Lの照射位置に関連付けられる。具体的には、イオン検出部15は、上述したようにレーザ光Lが照射された照射範囲D2における各位置について試料イオンS2を検出する。照射範囲D2における各位置において検出された試料イオンS2のデータ(検出結果)には、各位置(すなわち、レーザ光Lが照射された位置)を示す識別番号(例えば、上述した(x1,y1)のような制御用の座標系における座標等)が付与される。これにより、照射範囲D2における試料Sの質量分布を示す分布画像(MSマッピングデータ)が取得される。さらに、試料Sを構成する分子の二次元分布を画像化することができる。なお、ここでの質量分析装置10は、飛行時間型質量分析法(TOF-MS:Time-of-Flight Mass Spectrometry)を利用する質量分析装置である。
【0059】
続いて、試料S上に試料支持体1が配置された状態で、試料S及び試料支持体1の光学画像が取得される(第6工程)。ここで、取得される光学画像には、実効領域Rにおける領域D1と、第1の標識50及び第2の標識60とが少なくとも含まれる。続いて、光学画像中の目視用標識51及び目視用標識61に基づいて、光学画像中の照射範囲D2と上記試料Sの分布画像とが重なるように、光学画像と分布画像とが重ね合わされる(第7工程)。具体的には、分布画像における始点P1の位置(x1,y1)及び終点P2の位置(x2,y2)と、光学画像における始点P1の座標(X1,Y1)及び終点P2の座標(X2,Y2)とがそれぞれ重ね合わせられる。これにより、試料Sの光学画像と分布画像とが合成される。なお、基板2は、可視光に対して略透明であるため、試料S上に試料支持体1が配置されていても、試料Sの光学画像を取得できる。以上の各工程が、試料支持体1を用いた質量分析方法に相当する。
【0060】
互いに合成された試料Sの光学画像と試料Sの分布画像との観察(光学観察)の後に、試料Sにおける特定のデータを持つ箇所について、更に液体クロマトグラフィー質量分析方法(LC-MS:Liquid Chromatography-Mass Spectrometry)による詳細なスクリーニングが行われる場合がある。このような場合に、上記特定のデータには例えば照射位置の情報等の識別番号が付与されているため、当該識別番号に基づいて照射位置、及び試料支持体1における座標を特定することができる。これにより、当該座標における試料SのサンプルをLC-MSに供給することができる。
【0061】
以上説明したように、試料支持体1では、基板2には、第1表面2a、及び第1表面2aとは反対側の第2表面2bに開口する複数の貫通孔2cが形成されている。このため、試料S上に、基板2の第2表面2bが試料Sに対向するように試料支持体1を配置した場合に、毛細管現象を利用して、第2表面2b側から貫通孔2cを介して第1表面2a側に向けて試料Sの成分S1を移動させることができる。さらに、レーザ光を第1表面2aに対して照射した場合に、第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1に導電層4を介してエネルギーが伝達されることにより、試料Sの成分S1をイオン化することができる。また、試料支持体1は、基板2の周縁部に設けられたフレーム3を備えている。このため、フレーム3によって試料支持体1のハンドリング性を向上させることができる。しかも、フレーム3は、基板2の厚み方向から見た場合に、試料Sがイオン化される実効領域Rを囲んでおり、フレーム3には、実効領域Rにおける位置を認識するための第1の標識50及び第2の標識60が設けられている。これにより、以下の効果が奏される。
【0062】
すなわち、本実施形態では、カメラ16の視野が狭く、実効領域R(試料Sの全体)の観察によって照射範囲D2を特定すること、レーザ光Lの照射位置を決定すること等が困難である。試料支持体1によれば、カメラ16を走査してフレーム3に設けられた第1の標識50及び第2の標識60を読み取ることにより、レーザ光Lの照射範囲D2を質量分析装置10に認識させることができる。よって、試料支持体1によれば、レーザ光Lの照射範囲D2を容易に認識することができる。特に、既存のMALDIに用いられる質量分析装置(MALDI-MS装置)においては、当該装置に付随するカメラの画素数及び視野等が、試料中のマトリックス結晶観察に適するように最適化されるため、レーザ光Lの照射位置の決定、及びイメージングのための試料の全体観察に不向きであるという課題があった。上述した質量分析装置10をこのようなMALDI-MS装置に適用することにより、上述したMALDI-MS装置の課題を克服できる。
【0063】
貫通孔2cの幅は、1nm~700nmであり、基板2の厚さは、1μm~50μmである。これにより、上述した毛細管現象による試料Sの成分S1の移動を適切に実現することができる。
【0064】
フレーム3のX軸方向に沿って延びる第1の部分31には、X軸方向に沿って配置された複数の第1の標識50が設けられており、フレーム3のX軸方向と直交するY軸方向に沿って延びる第2の部分32には、Y軸方向に沿って配置された複数の第2の標識60が設けられている。これにより、第1の標識50によってX軸方向における位置を認識することが可能となり、第2の標識60によってY軸方向における位置を認識することが可能となる。これにより、レーザ光Lの照射範囲D2(例えば始点P1の位置、終点P2の位置等)の2次元座標を容易に把握することが可能となる。
【0065】
第1の標識50及び第2の標識60は、数字である。これにより、目視及び/又は装置読取に適した標識を実現できる。
【0066】
第1の標識50は、幅w1が所定値以上の目視用標識51と、幅w4が所定値よりも小さい装置用標識52と、を有しており、第2の標識60は、幅が所定値以上の目視用標識61と、幅が所定値よりも小さい装置用標識62と、を有している。これにより、測定者が目視で目視用標識51,61を読み取ることによって、照射範囲D2を予め決定することが可能となる。さらに、カメラ16によって、測定者によって決定された照射範囲D2に対応する装置用標識52,62を読み取ることによって、レーザ光Lの照射範囲D2を質量分析装置10に認識させることが可能となる。
【0067】
また、上述した試料Sのイオン化方法では、基板2には、第1表面2a、及び第1表面2aとは反対側の第2表面2bに開口する複数の貫通孔2cが形成されている。試料S上に、基板2の第2表面2bが試料Sに対向するように試料支持体1が配置されると、試料Sの成分S1が、毛細管現象によって第2表面2b側から貫通孔2cを介して第1表面2a側に向けて移動する。さらに、導電層4に電圧が印加されつつ第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されると、第1表面2a側に移動した試料Sの成分S1にエネルギーが伝達される。これにより、試料Sの成分S1がイオン化される。また、フレーム3に設けられた第1の標識50及び第2の標識60の走査により、レーザ光Lの照射範囲D2を質量分析装置10に容易に認識させることができる。
【0068】
イオン化方法において、第1の標識50は、幅w1が所定値以上の目視用標識51と、幅w4が所定値よりも小さい装置用標識52と、を有しており、第2の標識60は、幅が所定値以上の目視用標識61と、幅が所定値よりも小さい装置用標識62と、を有している。そして、第3工程においては、実効領域Rにおける領域D1と目視用標識51,61とに基づいて測定者が照射範囲D2を決定し、測定者によって決定された照射範囲D2に対応する装置用標識52,62がカメラ16に読み取られた際の試料ステージ18の位置に基づいて制御部17が照射範囲D2を認識する。これにより、フレーム3に設けられた第1の標識50及び第2の標識60によって、測定者の目視による照射範囲D2の決定、及び質量分析装置10の機械的操作(標識走査)による照射範囲D2の認識の両方を的確に実現できる。
【0069】
以上説明したように、上記質量分析方法によれば、試料支持体1のフレーム3に設けられた第1の標識50及び第2の標識60に基づいて、試料Sの光学画像と分布画像とを精度良く重ね合わせることができる。その結果、試料Sの各位置における質量分布を可視化することができる。
【0070】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0071】
基板2は、導電性を有していてもよく、質量分析方法において基板2に電圧が印加されつつ第1表面2aに対してレーザ光Lが照射されてもよい。基板2が導電性を有する場合には、試料支持体1において、導電層4を省略することができると共に、上述した導電層4を備える試料支持体1を用いる場合と同様の効果を得ることができる。なお、レーザ光Lを基板2の第1表面2aに対して照射するとは、試料支持体1が導電層4を備えている場合には、導電層4にレーザ光Lを照射することをいい、基板2が導電性を有している場合には、基板2の第1表面2aにレーザ光Lを照射することをいう。
【0072】
第1の標識50及び第2の標識60が数字である例を示したが、第1の標識50及び第2の標識60は、様々の標識であってもよい。第1の標識50及び第2の標識60は、例えば、数字、記号、及び文字から選択される少なくとも1つであってもよい。この場合においても、目視及び/又は装置読取に適した標識を実現できる。目視用標識51、装置用標識52、目視用標識61、及び装置用標識62のそれぞれが、例えば、数字、記号、及び文字から選択される少なくとも1つであってもよい。また、これらの標識には、目盛線等の補助的な情報が含まれていてもよい。
【0073】
第1の標識50及び第2の標識60が、フレーム3の表面3cを凹凸させることによって形成されている例を示したが、第1の標識50及び第2の標識60は、フレーム3の表面3cを凹凸させることによって形成されていなくてもよい。第1の標識50及び第2の標識60は、例えば、ナノプリントのような印刷による印字、EUV(Extreme Ultraviolet)露光を用いたフォトリソグラフィー、ペイントによる書き込み、レーザを用いた刻印の一例である黒色(酸化)又は、レーザを用いた発泡マーキング等によって形成されていてもよい。第1の標識50及び第2の標識60が、レーザを用いた発泡マーキングによって形成されている場合には、フレーム3の材料は、樹脂である。レーザを用いた発泡マーキングは、レーザビームによって樹脂を発泡させる手法である。このような手法によれば、発泡した部位において光が乱反射し、その結果発泡した部位の視認性が高まる。なお、第1の標識50及び第2の標識60が、フレーム3の表面3cを凹凸させることによって形成されておらず、且つ、導電層4で覆われた場合に視認性が阻害される場合には、導電層4は、フレーム3の表面3cのうち、第1の標識50及び第2の標識60が形成されている領域には、形成されていなくてもよい。
【0074】
フレーム3は、第1の標識50及び第2の標識60のうち、何れか一方のみを有していてもよい。この場合、X軸方向及びY軸方向のうち、照射範囲D2の少なくとも1つの方向における範囲を質量分析装置10に認識させることができる。また、第1の標識50は、フレーム3における互いに対向する第1の部分31の両方に設けられていてもよい。同様に、第2の標識60は、フレーム3における互いに対向する第2の部分32の両方に設けられていてもよい。
【0075】
第1の標識50は、目視用標識51及び装置用標識52のうち、何れか一方のみを有していてもよい。この場合、第1の標識50の幅は、測定者の目視及び質量分析装置10に付随するカメラ16の何れによっても読取可能な程度であることが好ましい。同様に、第2の標識60は、目視用標識61及び装置用標識62のうち、何れか一方のみを有していてもよい。この場合、第2の標識60の幅は、測定者の目視及び質量分析装置10に付随するカメラ16の何れによっても読取可能な程度であることが好ましい。
【0076】
測定者による照射範囲D2の決定が、スライドガラス6、試料支持体1、及び試料Sが質量分析装置10の支持部12上に載置される前に行われる例を示したが、このような測定者による照射範囲D2の決定は、スライドガラス6、試料支持体1、及び試料Sが、質量分析装置10の支持部12上に載置された後に行われてもよい。
【0077】
試料S上に試料支持体1が配置された状態における試料S及び試料支持体1の光学画像の取得(第6工程)が、分布画像の取得(第5工程)の後に行われる例を示したが、このような光学画像の取得は、試料支持体1が試料S上に配置された(第2工程)後であれば、いつでもよい。例えば、このような光学画像は、スライドガラス6、試料支持体1、及び試料Sが、質量分析装置10の支持部12上に載置される前に取得されてもよい。
【0078】
第3工程においては、始点P1及び終点P2と同様に、折り返し点P3の座標(X3,Y3)(図6参照)が把握され、更に当該折り返し点P3の座標(X3,Y3)に対応する装置用標識52,62が読み取られた際の試料ステージ18の位置(x2,y1)に基づいて、照射範囲D2の折り返し点P3の座標が認識(記憶)されてもよい。始点P1及び終点P2に加えて、折り返し点P3の情報があれば、上述した試料Sの光学画像と分布画像とをより精度良く重ね合わせることができる。例えば、光学画像及び分布画像を重ね合わせる上で、上下左右等の方向を一致させる必要がある場合には、一直線上にない3点(始点P1、終点P2、折り返し点P3)の情報に基づいて、光学画像及び分布画像を適切に重ね合わせることが可能となる。また、折り返し点P3の情報は、照射範囲D2が長方形以外の形状(例えば、4つの辺部のうち1つの辺部がY軸方向に交差する平行四辺形状)を呈している場合等、照射範囲D2を特定するために3点以上の基準点(座標)が必要になる場合に読み取られてもよい。
【0079】
制御部17が、カメラ16が装置用標識52,62を走査するように試料ステージ18を移動させる例を示したが、カメラ16による装置用標識52,62の走査は、試料ステージ18及びカメラ16の少なくとも一つが動作させられることにより、実施可能である。カメラ16を動かす場合には、測定者によって決定された照射範囲D2に対応する装置用標識52,62が、カメラ16に読み取られた際のカメラ16の位置に基づいて、制御部17が照射範囲D2を認識する。これにより、試料ステージ18を動かす場合と同様に、フレーム3に設けられた第1の標識50及び第2の標識60によって、測定者の目視による照射範囲D2の決定、及び質量分析装置10の機械的操作(標識走査)による照射範囲D2の認識の両方を的確に実現できる。
【符号の説明】
【0080】
1…試料支持体、2…基板、2a…第1表面、2b…第2表面、2c…貫通孔、3…フレーム(枠体)、4…導電層、10…質量分析装置、13…照射部、16…カメラ(走査部)、17…制御部、31…第1の部分、32…第2の部分、50…第1の標識、51,61…目視用標識、52,62…装置用標識、60…第2の標識、D1…領域(存在範囲)、D2…照射範囲、L…レーザ光(エネルギー線)、R…実効領域(イオン化領域)、S…試料、S1…成分、S2…試料イオン、w1,w4…幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7