(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】信号伝送素子
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0265 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
A61B5/0265
(21)【出願番号】P 2022192831
(22)【出願日】2022-12-01
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】511007967
【氏名又は名称】財團法人金屬工業研究發展中心
【氏名又は名称原語表記】METAL INDUSTRIES RESEARCH & DEVELOPMENT CENTRE
【住所又は居所原語表記】1001 KAONAN HIGHWAY, KAOHSIUNG 81160,TAIWAN,R.O.C.
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100221752
【氏名又は名称】古川 雅与
(72)【発明者】
【氏名】曾 俊傑
(72)【発明者】
【氏名】陳 俊銘
(72)【発明者】
【氏名】蔡 東霖
(72)【発明者】
【氏名】張 彦晧
(72)【発明者】
【氏名】黄 書鴻
(72)【発明者】
【氏名】呉 昇樺
(72)【発明者】
【氏名】郭 晏▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】周 秉叡
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0073240(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0213408(US,A1)
【文献】特表2016-511656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体を含み、前記本体は生分解性材料により作成され、かつ信号感応部と信号伝送部を含み、
前記信号感応部は
生分解性材料により作成され、特定構造を有して、本体に囲まれて接触する血管中の血流情報に感応することにより、血管の信号を生成し、
前記信号伝送部は
生分解性材料により作成され、信号感応部と連結し、血管の信号を受信するのに用いられ、さらに特定構造を有して血管の信号を伝送信号に変換し、
前記本体は細長状片体からなり、そして頭部と頭部から外へ向かって延伸する延伸部を有し、前記延伸部は全部または局部で血管を囲むのに用いられ、前記信号伝送部は頭部の中に設けられ、前記信号感応部は延伸部の中に設けられる
ことを特徴とする信号伝送素子。
【請求項2】
前記延伸部の表面には複数個の突出構造が設けられることにより、延伸部が血管を囲む状態で、複数個の突出構造の全部または局部が血管に接触することを特徴とする請求項
1に記載の信号伝送素子。
【請求項3】
前記本体は生分解性の金属により組成された少なくとも一個の金属構造を含み、金属構造は信号伝送分段と信号感応分段を含み、信号伝送分段は本体の頭部に位置されることにより信号伝送部を形成し、また、信号感応分段は本体の延伸部に位置されることにより信号感応部を形成し、さらに信号伝送分段は作動周波数を有することにより信号感応分段が感応した血流情報を伝送することを特徴とする請求項
1~請求項
2のいずれか一項に記載の信号伝送素子。
【請求項4】
前記本体が複数個の金属構造を有する配置の中で、複数個金属構造の中の一つの作動周波数と複数個の金属構造の中のもう一つの作動周波数と同じまたは異なることを特徴とする請求項
3に記載の信号伝送素子。
【請求項5】
前記作動周波数は350MHz~450MHzであることを特徴とする請求項
3に記載の信号伝送素子。
【請求項6】
前記作動周波数は401MHz~406MHzであることを特徴とする請求項
3に記載の信号伝送素子。
【請求項7】
前記金属構造の材料は少なくともマグネシウムまたはマグネシウム合金から選択することを特徴とする請求項
3に記載の信号伝送素子。
【請求項8】
金メッキ層をさらに含み、金メッキ層は前記少なくとも一個の金属構造の中の少なくとも一個の表面に被覆されることを特徴とする請求項
7に記載の信号伝送素子。
【請求項9】
前記金メッキ層の厚さは0.01μm~10μmであることを特徴とする請求項
8に記載の信号伝送素子。
【請求項10】
前記金メッキ層は特定条件で形成され、該特定条件は金メッキの温度が15℃~35℃で、前処理の時間が60秒~150秒で、金メッキの時間が45秒~75秒で、そして撹拌の速度が100rPm~300rPmであることを特徴とする請求項
8に記載の信号伝送素子。
【請求項11】
前記金メッキ層は特定条件で形成され、該特定条件は金メッキの温度は25℃で、前処理の時間が120秒で、金メッキの時間が60秒で、そして撹拌の速度が150rPmであることを特徴とする請求項
9に記載の信号伝送素子。
【請求項12】
前記本体は第一保護層と第二保護層を含み、前記少なくとも一個の金属
構造は第一保護層と第二保護層の中に被覆され、また、突出構造の材料は少なくともポリカプロラクトンを選択し、第一保護層と第二保護層の材料は少なくともポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバレレートの中の一個を選択することを特徴とする請求項
3に記載の信号伝送素子。
【請求項13】
前記本体が複数個の金属構造を有する配置の中で、隣接する二個の金属
構造の間に絶縁層を有し、該絶縁層の材料は少なくともポリL-乳酸を選択することを特徴とする請求項
3に記載の信号伝送素子。
【請求項14】
前記頭部は5mm~35mmの長さと、5mm~35mmの広さと、50μm~350μmの厚さを有し、また、延伸
部は2mm~15mmの広さと、50μm~350μmの厚さを有することを特徴とする請求項
1に記載の信号伝送素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号伝送素子に関するもので、特に人体の中で分解できる信号伝送素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の血管監視測定の臨床技術において、手術後の血管に血栓が生じている否かを監視測定するには、侵入的かつ部分的に監視測定者の体外に露出させている監視測定コイルを利用するもので、例えばクックメディカル(Cook Medical)社から提供されているドップラー血流モニター(Doppler Blood Flowl Monitor)と、それに対応する監視測定コイル(Cool- Swartz Doppler Probe)がある。この監視測定コイルの一部分は監視測定しようとする血管を囲み、監視測定コイルのもう一方の部分は体外に延伸して外部接続線になって対応の監視測定器と連結し、そして監視測定器によって監視測定コイルを通じて超音波を発することにより、囲まれた血管の血流情報を獲得するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国第US20130274605A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、体外に延伸された外部接続線は汚染されやすく、そして感染が生じる虞があり、また、脱落しやすく、外部接続線を引っ張ることによって血管を傷付けてしまうなどのリスクがあった。その他に、将来的に所定血管の監視測定を行う必要がなくなった時、再び余分な手術を行って対応のコイルを取り外さなければならず、監視測定を受ける者にとっては再度傷付けられるだけでなく、手術の過程において依然として引っ張ることによって血管が傷付くというリスクがあった。
【0005】
上述した問題点に基づき、上述した従来の信号伝送素子についてさらに改善されることが求められている。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第一の目的は、病人が術後の特定期間内において所定の血管を引続き監視測定し、そして特定期間後に病人の体の中で分解され、再び手術を受けて取り外す必要がなく、再度の手術を必要とするリスクを避けることができる信号伝送素子を提供することである。
【0007】
本発明の第二の目的は、血流情報の信号に感応する強度を強化することができる信号伝送素子を提供することである。
【0008】
本発明の第三の目的は、需要に応じて特定の周波数の信号の強度を強化したり、或いは信号の伝送の周波数の広さを高めたりすることができる信号伝送素子を提供することである。
【0009】
本発明の第四の目的は、低抵抗、高付着力の信号伝送分段を獲得することができる信号伝送素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の明細書全文にわたって述べられる方向性またはそれに近似する用語は、例えば、「前」、「後」、「左」、「右」、「上(頂)」、「下(底)」、「内」、「外」、「側面」等の用語は、主に添付図面上における方向を示すものであり、本発明の各実施例に対する説明と理解を補助するためのもので、本発明を限定するものではない。
【0011】
本発明の明細書全文にわたって記載される部品と部材について「一つ」または「一個」の助数詞を用いるのは、ただ便宜上、用いているだけのものであり、そして本発明の範囲における通常の意義を提供するものであって、本発明においては一個または少なくとも一個を含むものであると読み取るべきである。また、線分の概念についても、明らかにその他の意味を表すものは除き、複数の情況を含むものである。
【0012】
本明細書の全文において、「連接」、「結合」、「組合せ」、「組み立て」、「取り付け」と「設置」等の近似する用語は、主に連接した後でも部材を破壊せずに分離できる、または連接した後は部材を分離できない等の形態を含む。これは本技術分野で通常の知識を有する者にとって、連接しようとする部材の材質または組み立ての必要性に応じて適宜選択できるものである。
【0013】
本明細書の全文において、前述の「連結」の用語は電気的および/または信号的に直接または間接的な接続を含み、これは本技術分野で通常の知識を有する者にとって、必要に応じて適宜選択できるものである。
【0014】
本明細書の全文において、寸法に関する定義は、本発明の
図1における寸法関係に依拠するもので、「長さ」は本体の頭部の長さ(例えば符号L11)に沿った延伸方向によって定義され、前述の「広さ」は本体の頭部または延伸部の広さ(例えば符号W11またはW12)に沿った延伸方向によって定義され、「厚さ」は本体の頭部または延伸部の厚さ(例えば符号T11またはT12)に沿った延伸方向によって定義される。その他に、それらの寸法規格における寸法の調整は0.1μmを調整の間隔とすることができる。
【0015】
本明細書の全文において、「作動周波数」の周波数の調整は1MHzを調整の間隔とすることができ、また「金メッキ温度」の温度調整は摂氏0.1度を調整の間隔とすることができ、また「時間」の長さの調整は1秒を調整の間隔とすることができ、さらに「撹拌の速度」の速度の調整は1rPmを調整の間隔とすることができる。
【0016】
本発明の信号伝送素子は、本体を含む。前記本体は生分解性材料により作成され、かつ信号感応部と信号伝送部を含む。前記信号感応部は特定の構造を有しており、前記本体に囲まれて接触する血管中の血流情報を感応することにより、血管の信号を形成し、前記信号伝送部は信号感応部と連結し、血管の信号を受信するのに用いられ、さらに特定構造を有して血管の信号を伝送信号に形成する。
【0017】
これにより、本発明の信号伝送素子は、前述の本体の中の信号感応部と信号伝送部が別々に血管の信号を感応し、そして感応した血管の信号を発信することにより、病人は術後に引き続き所定血管を監視測定することができる。また、信号伝送素子は前記病人の体の中で分解されることにより、さらに再び手術を行う必要がないため、再度の手術によるリスクを避けることができる。
【0018】
また、前記本体は細長状片体からなり、そして頭部と前記頭部から外へ向かって延伸する延伸部を有し、前記延伸部は全部または局部で前記血管を囲むのに用いられ、前記信号伝送部は前記頭部の中に設けられ、前記信号感応部は前記延伸部の中に設けられる。このように、前記本体の全体の配置によって監視測定待ちである者の体内に簡単に設置することができるため、所定血管を監視測定することができる。
【0019】
また、前記延伸部の表面には複数個の突出構造が設けられることにより、前記延伸部が前記血管を囲む状態で、前記複数個の突出構造の全部または局部は前記血管に接触する。このように、複数個の突出構造の配置によって前記信号感応部が血流情報を感応する信号の強度を強化することができる。
【0020】
また、前記本体は少なくとも一個の金属構造を含み、前記の各少なくとも一個の金属構造は生分解性金属により組成され、前記の各少なくとも一個の金属構造は信号伝送分段と信号感応分段を含み、前記信号伝送分段は前記本体の前記頭部に位置されることにより、前述の信号伝送部を形成し、また、前記信号感応分段は前記本体の前記延伸部に位置されることにより、前述の信号感応部を形成し、さらに前記信号伝送分段は作動周波数を有することにより、前記信号感応分段が感応した前記血流情報を伝送する。このように、前記金属構造の前記信号伝送分段と信号感応分段によって、血流情報を感応することができるとともに、前記血流情報を伝送することができる。
【0021】
また、前記本体が複数個の金属構造を有する配置の中で、前記複数個の金属構造の中の一つの前記作動周波数と前記複数個金属構造の中のもう一つの前記作動周波数とは同じであるか、または異なる。このように、複数個の金属構造の信号伝送分段の作動周波数は同じであることにより、前記作動周波数による信号を伝送する強度を強化することができ、または、複数個の金属構造の信号伝送分段の作動周波数が異なることにより、信号を伝送する周波数の広さを高めることができる。
【0022】
また、前述の前記作動周波数は350MHz~450MHzである。このように、前述の作動周波数の範囲によって、信号の品質を安定化にして信号の伝送を行うことができる。
【0023】
また、前述の前記作動周波数は401MHz~406MHzである。このように、前述の作動周波数の範囲によって、信号の品質を安定化にして信号の伝送を行うことができる。
【0024】
また、前記の各少なくとも一個の金属構造の材料は少なくともマグネシウムまたはマグネシウム合金から選択される。このように、前記金属構造の材料の選択によって、前記金属構造を生分解性材料からなり、そして目当ての血管の血流情報を感応して伝送することができる。
【0025】
また、他に金メッキ層を含み、前記金メッキ層は前記少なくとも一個の金属構造の中の少なくとも一個の表面に被覆される。このように、前記金メッキ層によって反射損失を抑えることができるとともに、比較的低いインピーダンスを有して輻射能率を高めるとともに、インピーダンスの損失を低く抑えることができる。
【0026】
また、前記金メッキ層の厚さは0.01μm~10μmである。このように、前記金メッキ層によって反射損失を抑えることができるとともに、比較的低いインピーダンスを有して輻射能率を高めるとともに、インピーダンスの損失を低く抑えることができる。
【0027】
また、特定条件で前記金メッキ層を形成し、前記特定条件は金メッキの温度は15℃~35℃で、前処理の時間は60秒~150秒で、金メッキの時間は45秒~75秒で、さらに撹拌の速度は100rPm~300rPmである。このように、前記特定条件によって低い抵抗と高い付着力の信号の伝送を獲得することができる。
【0028】
また、特定条件で前記金メッキ層を形成し、前記特定条件は金メッキの温度は25℃で、前処理の時間は為120秒で、金メッキの時間は60秒で、さらに撹拌の速度は為150rPmである。このように、前記特定条件によって低い抵抗と高い付着力の信号の伝送を獲得することができる。
【0029】
また、前記本体は第一保護層と第二保護層を含み、前記少なくとも一個の金属層は前記第一保護層と前記第二保護層の中に被覆され、また、前記突出構造の材料は少なくともポリカプロラクトンから選択され、さらに前記第一保護層と前記第二保護層の材料は少なくともポリヒドロキシブチレートとポリヒドロキシバレレートの中から選択される。このように、前記金属層は前記第一保護層と前記第二保護層の中に被覆されることによって、前記金属層は比較的ヒトの体内環境からの干渉を受け難いという利点がある。他に、前記第一保護層、前記第二保護層と前記突出構造の材料の選択によって前記本体は生分解性材料からなることができる。
【0030】
また、前記本体が複数個の金属構造を有する配置の中で、隣接する二個の金属層の間は絶縁層を有し、前記絶縁層の材料は少なくともポリL-乳酸から選択する。このように、前記絶縁層の設計により隣接する二個の金属構造を電気的絶縁し、隣接する二個の金属構造の間の信号が互いに干渉するのを避けることができる。
【0031】
また、前記頭部は5mm~35mmの長さを有し、5mm~35mmの広さを有し、50μm~350μmの厚さを有し、また、前記延伸部具は2mm~15mmの広さを有し、50μm~350μmの厚さを有する。このように、前述の寸法の配置によって、信号伝送素子を簡単に監視測定待ちである者の体内に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の信号伝送素子の実施例における斜視概略図である。
【
図2】
図1に示される信号伝送素子の使用状態を示す概略図である。
【
図3】本発明の信号伝送素子の本体の中に含まれる層体の構造の例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の信号伝送素子の本体の中に含まれる層体の構造の他の例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の金属構造の中の信号伝送分段にアンテナ構造を有する概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の上記およびその他の目的、特徴と利点をさらに明らかとし、且つ分かり易くするべく、下記のとおり本発明の実施例をもって、さらに図面を参照して詳しく説明する。その他に、異なる図面において同じ符号を付したものは同じものと見なし、その説明を省く。
【0034】
図1、2に示されるように、それはそれぞれ本発明の実施例の信号伝送素子とその使用状態を示し、前記信号伝送素子は本体1を有し、好ましくは長条状の片体に形成して局部的に血管2を囲むのに用いられる。
【0035】
特に、前記本体は生分解性材料により作成され、好ましくは複数個の層体によって形成され(
図3、4に示されるように)、そして前記本体1に、特に前記複数個の層体の中の少なくとも一個に、信号伝送部STP(Signal Transmitting Portion)と信号感応部SSP(Signal Sensing Portion)を有する。前記信号伝送部STPは受信される血管の信号を対応の伝送信号に転換するのに用いられ、そして前記伝送信号は信号認識の設備(図示せず)に伝送するのに用いられ、特に人体の外部に設置される信号認識の設備に伝送し、そして前述の信号認識の設備(例えば無線周波数認識装置)の受信を通じて前記伝送信号を分析することにより、対応の血流情報を取得し、さらに対応の血管は健康であるか否かの参考として評価を行う。前記信号感応部SSPは感応前記血管2の中の血流情報を感応するのに用いられ、前記血流情報を前記血管の信号に転換し、さらに前記信号感応部SSPと前記信号伝送部STPは結合(特に直接の連結である)の配置により、前記信号感応部SSPは前記血管の信号を前記信号伝送部STPまで伝送する。特に、前記本体1が前記血管2を囲む状態で、前記信号感応部SSPは前記血管2に対応するように前記血管2を囲む。このように、上述の生分解性の前記信号伝送部STPと前記信号感応部SSPにより、病人が術後に特定の期間内において所定の血管2を引続き監視測定することができ、そして特定の期間後に本発明の信号伝送素子は前記病人の体の中で分解され、再び手術を受けて取り外す必要がないため、再度の手術のリスクを避けることができる。
【0036】
詳細には、前記本体1は頭部11と前記頭部11から外へ向かって延伸する延伸部12を有し、前記延伸部12は全部または局部で前記血管2を囲むのに用いられる。特に、前記延伸部12が前記血管2を囲む時、前記延伸部12は環状体に形成される。また、前記延伸部12が環状体に形成された時、前記延伸部12の自由端は前記延伸部12そのものを適当な部位に固定することができ、そしてその対応の固定方法は実際の状況によって選択することができるため、本発明においては限定しない。好ましくは、前記信号伝送部STPは前記頭部11の中に設置され、前記信号感応部SSPは前記延伸部12の中に設置される。好ましくは、前記頭部は5mm~35mmの長さL11を有し、5mm~35mmの広さW11を有し、50μm~350μmの厚さT11を有し、また、前記延伸部具12は2mm~15mmの広さW12を有し、50μm~350μmの厚さT12を有する。
【0037】
好ましくは、前記延伸部12の表面には複数個の突出構造3が設けられる。特に、前記複数個の突出構造3は前記血管2に対応する位置に設置されることにより、前記延伸部12が前記血管2を囲む時、前記複数個の突出構造3の全部または局部は前記血管2に接触する。詳細には、前記延伸部12が前記血管2を囲む時、前記延伸部12が前記血管2を囲む部分は前記血管2と接触し、そして前記複数個の突出構造3の全部または局部は前記血管2に接触する。特に、前記血管2に接触する前記複数個の突出構造3は前記血管延伸部12よりさらに緊密に前記血管2と接触する。このように、前記複数個の突出構造3と前記血管2との接触によって前記信号感応部SSPが前記血流情報を感応する信号の強度を強化することができる。選択的に、前記突出構造3は円柱形、半円形、半楕円形、台形などの形状とできるが、これらの形状には限定されない。好ましくは、前記突出構造3の長さは0.1μm~100μmであり、広さは0.1μm~100μmであり、高度は0.1μm~100μmである。
【0038】
図3に示されるように、それは本発明の信号伝送素子の層体の配置で、前記本体1(前述した生分解性材料によって形成される複数個の層体)は第一保護層4、第二保護層5と少なくとも一個の金属構造6を含み、前記少なくとも一個の金属構造6は例えば一個の層体を形成し、前記第一保護層4と前記第二保護層5の中に被覆される。注意すべきことは、前記少なくとも一個の金属構造6の数は一個または複数個とできることである。前記少なくとも一個の金属構造6の数が複数個である場合、前記複数個の金属構造6は重ねて配置するように形成され、そして隣接する二個の金属構造6の間には絶縁層7が形成され、隣接する二個の金属構造6を電気的絶縁することにより、隣接する二個の金属構造の間の信号が互いに干渉するのを避けることができる。好ましくは、
図3に示されるように、前記少なくとも一個の金属構造6の数は二個であり、そして隣接する二個の金属構造6の間には絶縁層7が形成される。他の実施例においては、
図4に示されるように、前記少なくとも一個の金属構造6の数は一個である。好ましくは、前記第一保護層4と前記第二保護層5はそれぞれ100μmより大きくならない厚さを有する。好ましくは、前記金属構造6の厚さは10μm~100μmである。好ましくは、前記絶縁層7の厚さは100μmより大きくならない。
【0039】
詳細には、前記第一保護層4、前記第二保護層5、前記少なくとも一個の金属構造6および/または前記絶縁層7は前記頭部11と前記延伸部12に対応するように配置される。特に、前記第一保護層4と前記第二保護層5の寸法と形状は前記本体1に対応する。前記少なくとも一個の金属構造6は例えば層状/片状に形成され、前記少なくとも一個の金属構造6の形状は前記第一保護層4と前記第二保護層5に対応し、そして前記少なくとも一個の金属構造6の寸法は前記第一保護層4と前記第二保護層5より小さくなるため、前記金属構造6は前記第一保護層4と前記第二保護層5の中に被覆される。前記絶縁層7の形状はその隣接する二個の金属構造6に対応し、前記絶縁層7の寸法はその隣接する二個の金属構造6より小さくならず、そして前記絶縁層7の寸法は前記第一保護層4と前記第二保護層5より大きくならないため、隣接する二個の金属構造6を絶縁するように隔離し、そして前記絶縁層7は前記第一保護層4と前記第二保護層5の中に被覆される。その他に、前記少なくとも一個の金属構造6は信号伝送分段6aと信号感応分段6bを有し、前記信号伝送分段6aは前記本体1の前記頭部11に位置されることにより、前述の信号伝送部STPを形成する。前記信号感応分段6bは前記本体1の前記延伸部12に位置されることにより、前述の信号感応部SSPを形成する。言い換えれば、前記本体1は前記少なくとも一個の金属構造6を有し、前記信号伝送部STPは前記信号伝送分段6aによって形成され、前記信号感応部SSPは前記信号感応分段6bによって形成される。好ましくは、前記信号伝送分段6aは1mm~35mmの長さを有し、1mm~35mmの広さを有する。さらに好ましくは、前記信号伝送分段6aの前記長さは10mmで、前記広さは10mmである。
【0040】
更に詳しく言えば、前記信号感応分段6bは、例えば単一の線分(ただし、多線分に形成することもできる)に形成することができ、前記本体1における前記血管2を囲むのに用いられる区域に分布される。前記信号伝送分段6aと前記信号感応分段6bは連結することにより、前記信号感応分段6bが感応した信号(特に前記血管2中の血流情報を指す)を受信し、そして前記信号伝送分段6aは作動周波数/伝送周波数を有することにより、前記信号感応分段6bが感応した信号を伝送する。特に、
図5に示されるように、前記信号伝送分段6aはアンテナ構造であり、前記アンテナ構造は好ましくは平面アンテナ(Flat Antenna/Planar Antenna)の構造に形成される。前述の作動周波数は前記信号伝送分段6aが有するアンテナの模様/形状(Antenna Pattern)によって決定される。言い換えれば、同じ材質と寸法の下で異なるアンテナの模様によって異なる作動周波数を取得することができる。前述のアンテナの模様は例えば正方形の閉回路、円形の閉回路、三角形の閉回路、非対称の閉回路およびその他の模様の中で少なくとも一個により構成される。好ましくは、前述の作動周波数は350MHz~450MHzであり、さらに好ましくは、前述の作動周波数は401MHz~406MHzである。このように、前述の作動周波数の範囲で前記信号伝送分段6aは安定した信号の品質で信号伝送を行うことができる。
【0041】
注意すべきことは、前記本体1は複数個の金属構造6を有する配置の中で、前記複数個の金属構造6中の一つの前記作動周波数は前記複数個の金属構造6中のもう一つの前記作動周波数とは同じまたは異なる。詳しく言えば、三個以上の金属構造を有する態様において、前述の作動周波数は全て同じか、全て異なるか、または局部で同じになるように形成することができ、そして前述の「局部で同じ」では少なくとも二個金属構造6の作動周波数が同じで、かつその他の金属構造6の作動周波数とは異なることを指す。また、ただ二個の金属構造6を有する態様において、その二個金属構造6の作動周波数は全て同じか、または全て異なるようにしか形成することができない。作動周波数が同じである状態では、前記作動周波数の信号伝送の強度を強化することができ、特に信号伝送素子が人体の比較的深い部位に取り付けられる場合に適用する。作動周波数が異なる状態では、信号伝送の周波数の広さを高めることができる。このように、本発明の信号伝送素子が人体の中に位置する環境の状態によって、前記各金属構造6の作動周波数が同じであるか否かを決定することで、信号伝送の品質を高めることができる。
【0042】
詳細には、前記突出構造3、前記第一保護層4、前記第二保護層5、前記金属構造6と前記絶縁層7は生分解性を有する材料によって作成され、特に例えば米国食品医薬品局(FDA)が認可した材料によって作成することができる。好ましくは、前述の生分解性を有する材料が人体の中での分解時間は大体六ヶ月である。前記突出構造3の材料は少なくともポリカプロラクトン(PCL)を選択することができる。前記第一保護層4と前記第二保護層5の材料は少なくともポリヒドロキシブチレート(PHB)とポリヒドロキシバレレート(PHV)中の一つから選択することができる。前記金属構造6は生分解性金属によって組成され、前述の生分解性金属材料は少なくともマグネシウムまたはマグネシウム合金から選択することができ、特に前記金属構造6はマグネシウム線またはマグネシウム合金線によって形成される。また、選択的に前記金属構造6が感応する信号の伝導を増強するため、他に一つの表面処理層(図示せず)を前記金属構造の表面に形成させ、特に前記表面処理層の形成によって前記金属構造6の抵抗値を抑えることができる。他に、前記表面処理層は前記金属構造6内部の材料の分解に影響を与えない材料または構造を有し、好ましくは前述の表面処理層は金メッキ層(Gold-plated Layer)であり、そして前記金属構造6の表面に被覆され、例えば前述のマグネシウム線またはマグネシウム合金線の表面に金をメッキすることによって金メッキのマグネシウム線またはマグネシウム合金線を形成し、さらに前記金メッキ層を一定の厚さの範囲内に形成させることによって前記金属構造6内部の材料は分解を経て人体に吸収される。前記金メッキ層の厚さは0.01μm~10μmである。さらに好ましくは、前記絶縁層7の材料は少なくともポリL-乳酸(PLLA)を選択することができる。
【0043】
注意すべきことは、前記金属構造6はマグネシウム線であり、そして対応の表面処理層は金メッキ層であることを例として挙げると、マグネシウム線が金メッキされた後(前述の金メッキのマグネシウム線)とマグネシウム線が金メッキされる前(単にマグネシウム材質を有する金属線)とを比較すると、反射損失(Return Loss)とインピーダンスパラメーター(Impedance Parameter)の特性はもっとよくなる。前述の反射損失の値が低ければ低いほど、伝送の過程で反射して返ってくる信号が少ないことを表す。前述のインピーダンスパラメーターはアンテナが各周波帯におけるマッチングの状況を観察するのに用いられ、特定周波帯の実部のインピーダンスと虚部のインピーダンスが高ければ高いほど、アンテナは前記特定周波帯において比較的強い誘導性と容量性が生じることを表すことにより、アンテナはさらに前記特定周波帯にマッチングし難くなり、実際に操作する時には比較的に雑音信号と共振が生じ易くなる。この時、信号を発した入射波には反射が生じるため、信号損失が生じてしまう。特に、前述の金メッキ層の厚さが0.01μm~10μmである場合、前記金属構造6全体の抵抗値を0.1オーム~0.3オームに制御することができるため、よりよい信号伝送の効果を達成することができる。
【0044】
その他に、マグネシウム線の金メッキ後と金メッキ前を比較するアンテナの輻射能率の実験シミュレーションにおいて、マグネシウム線の金メッキ後ではZ軸方向の輻射能率を改善したとともに、マグネシウム線の金メッキ前のアンテナの放射パターンのねじれと不飽和性を改善した。また、対応のアンテナの輻射能率は公式(1)によって計算することができ、対応のインピーダンスの損失は公式(2)よって計算することができ、さらに上述の公式によって、材料の導電性の増加により輻射能率を高めるとともに、インピーダンスの損失を抑えるのを導き出すことができ、そしてこれによって本発明の感知器が体内の環境に入れ込んだ後の信号の検知特性の参考にすることができる。
【0045】
【数1】
ここで、η
radiationは輻射能率を表し、c
0は光速を表し、μ
0は真空透磁率を表し、cはアンテナの広さを表し、r
0は放射パターンの半径を表し、σは材料導電性を表し、f
0は作動周波数を表し、hはアンテナの厚さを表し、δは誘電率を表す。
【0046】
【数2】
その中に、R
lossはインピーダンスの損失を表し、r
0放射パターンの半径を表し、σは材料導電性を表し、c
effはアンテナ広さの半分を表し、hはアンテナの厚さを表し、δは誘電率を表す。
【0047】
注意すべきことは、前述のマグネシウム金属線を金メッキする過程においては、特定の金メッキの温度、前処理の時間、金メッキの時間、撹拌の速度で行うことにより、比較的低いインピーダンス値を獲得するため、金メッキの構造は比較的剥落し難く、かつ信号雑音比の結果は比較的よい。これにより、本発明において比較的よい金メッキの方法として、金メッキの温度は15℃~35℃で、前処理の時間は60秒~150秒で、金メッキの時間は45秒~75秒で、そして撹拌の速度は100rPm~300rPmで行うことが提案され、0.3オームを超えない抵抗値を獲得することができ、さらに付着力テストにより実際の金メッキの破損面積は5%より小さい。言い換えれば、上述の特定の金メッキ条件によって、低抵抗、高付着力の前記信号伝送分段6aを獲得することができる。
【0048】
さらに好ましくは、前述の金メッキの温度は25℃で、前処理の時間は120秒で、金メッキの時間は60秒で、撹拌の速度は150rPmである。また、下記の表一においては各処理のパラメーターの組み合わせの実験結果である。
表1に、「金メッキ過程における関係のパラメーターの組み合わせと効果」を示す
【0049】
【0050】
総合すると、本発明の信号伝送素子は、本体は生分解性材料によって作成される複数個の層体を有することにより、さらに前述の層体の中の信号感応部と信号伝送部が別々に対応の血管の信号を感応したり発信したりすることにより、病人が術後の特定の期間内において所定血管を引続き監視測定することができ、そして特定の期間後に信号伝送素子は病人の体の中で分解され、再び手術を受けて取り外す必要がないため、再度の手術のリスクを避けることができる。また、複数個の突出構造が対応する監視測定しようとする所定血管の位置に設置されることにより、特に複数個の突出構造が所定血管と接触することにより、信号感応部が血流情報を感応する信号の強度を強化することができる。また、複数個の金属構造の信号伝送分段の作動周波数は同じであることにより、前記作動周波数の信号伝送の強度を強化することができ、または、複数個の金属構造の信号伝送分段の作動周波数が異なることにより、信号伝送の周波数の広さを高めることができる。また、金属構造を構成するマグネシウム線を金メッキすることにより、反射損失を抑えることができるとともに、比較的低いインピーダンスを有して輻射能率を高めるとともに、インピーダンスの損失を抑えることができる。また、本発明で提案される特定の金メッキ条件によって、低抵抗、高付着力の信号伝送分段を獲得することができる。
【0051】
本発明は、すでに上述した実施例に限定されるものではなく、この技術を熟知した者が本発明の精神と範囲を離脱しない限り、上述した実施例に対応して各種の変更や修正を行っても依然として本発明によって保護される技術範疇に属するものであるため、本発明の保護範囲は当然として添付の特許の請求範囲に記載される意義と均等範囲内における変更を含むべきものである。
【符号の説明】
【0052】
1 本体
11 頭部
12 延伸部
2 血管
3 突出構造
4 第一保護層
5 第二保護層
6 金属構造
6a 信号伝送分段
6b 信号感応分段
7 絶縁層
L11 長さ
W11 広さ
W12 広さ
T11 厚さ
T12 厚さ
STP 信号伝送部
SSP 信号感応部
【要約】
【課題】従来の血管の監視測定コイルが監視測定の任務を終えた後、再び手術を行って除去しなければならない問題点を解決する。
【解決手段】信号伝送素子は本体を含み、前記本体は生分解性材料により作成され、かつ前記本体は信号感応部と信号伝送部を含み、前記信号感応部は特定構造を有して前記本体に囲まれて接触する血管中の血流情報を感応することにより、血管の信号を形成し、前記信号伝送部は前記信号感応部と連結し、前記血管の信号を受信するのに用いられ、さらに特定構造を有して前記血管の信号を伝送信号に形成する。
【選択図】
図1