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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】車両用電動パーキングブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 13/74 20060101AFI20240207BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240207BHJP
   H02P 3/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B60T13/74 H
B60T8/17 B
H02P3/00 K
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022505768
(86)(22)【出願日】2020-12-18
(86)【国際出願番号】 JP2020047371
(87)【国際公開番号】W WO2021181807
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2020043289
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】315019735
【氏名又は名称】日立Astemo上田株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】碓井 広地
(72)【発明者】
【氏名】プラネ サンディプ
(72)【発明者】
【氏名】宇野 真人
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-296849(JP,A)
【文献】特開2014-19232(JP,A)
【文献】特開2016-43798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 13/00-13/74
B60T 7/12-8/1769
H02P 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングブレーキ状態を得る作動位置ならびにパーキングブレーキ状態を解除する非作動位置間での回動を可能とするとともに前記非作動位置側に向けて弾発付勢されるパーキングブレーキレバー(34)と;当該パーキングブレーキレバー(34)を前記非作動位置から前記作動位置に動かす動力を発揮する正転状態ならびに前記パーキングブレーキレバー(34)を前記作動位置から前記非作動位置側に戻す際の逆転状態を切替え可能として前記パーキングブレーキレバー(34)に連結される電動モータ(41)を有するとともに前記電動モータ(41)の逆転時に当該電動モータ(41)の負荷が無負荷となる状態を経過した後に前記電動モータ(41)に負荷を与えることを可能とした電動アクチュエータ(38)と;前記電動モータ(41)の作動を制御する制御ユニット(C)と;前記電動モータ(41)への通電電流を検出する電流検出手段(84)と;を備える車両用電動パーキングブレーキ装置において、前記制御ユニット(C)は、前記電流検出手段84)による検出電流値の傾きを演算する傾き演算手段(87)と、前記パーキングブレーキ状態で前記作動位置に在る前記パーキングブレーキレバー(34)を前記非作動位置に戻す側への前記電動モータ(41)への通電開始後に通電電流が安定したことを前記電流検出手段による検出電流値に基づいて判断する電流安定化判断手段(88)と、通電電流が安定化したことを前記電流安定化判断手段(88)が判断した後の設定時間内に前記傾き演算手段(87)によって演算される電流値の傾きを記憶する記憶手段(89)と、前記設定時間の経過後に前記記憶手段(89)で記憶された電流値の傾き以外の増大側の電流値の傾きを前記傾き演算手段(87)が演算するのに基づいて前記電動モータ(41)の作動を停止するようにしたモータ停止判断手段(90)とを含むことを特徴とする車両用電動パーキングブレーキ装置。
【請求項2】
前記モータ停止判断手段(90)は、前記設定時間の経過後に前記記憶手段(89)で記憶された電流値の傾き以外の増大側の電流値の傾きの非検出が持続する状態では前記電流検出手段(84)の検出電流値に基づいて前記電動モータ(41)の作動停止を判断することを特徴とする請求項1に記載の車両用電動パーキングブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキングブレーキ状態を得る作動位置ならびにパーキングブレーキ状態を解除する非作動位置間での回動を可能とするとともに前記非作動位置側に向けて弾発付勢されるパーキングブレーキレバーと;当該パーキングブレーキレバーを前記非作動位置から前記作動位置に動かす動力を発揮する正転状態ならびに前記パーキングブレーキレバーを前記作動位置から前記非作動位置側に戻す際の逆転状態を切替え可能として前記パーキングブレーキレバーに連結される電動モータを有するとともに前記電動モータの逆転時に当該電動モータの負荷が無負荷となる状態を経過した後に前記電動モータに負荷を与えることを可能とした電動アクチュエータと;前記電動モータの作動を制御する制御ユニットと;前記電動モータへの通電電流を検出する電流検出手段と;を備える車両用電動パーキングブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アクチュエータの作動によってパーキングブレーキレバーを作動位置に動かしてパーキングブレーキ状態を得るとともに、パーキングブレーキレバーを非作動位置に動かすように電動アクチュエータが作動するのに応じてパーキングブレーキ力を解放するようにした車両用電動パーキングブレーキ装置が、特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特許第6176456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用電動パーキングブレーキ装置においてパーキングブレーキ解除時には、電動アクチュエータの電動モータにかかる負荷が小さくなって無負荷電流と区別できなくなり、電動アクチュエータを構成する複数の部材で戻し過ぎが生じてロック状態に陥る可能性がある。このため上記特許文献1で開示されたものでは、電動アクチュエータの一部を構成する直動部材にばねによる負荷を与えることで、電動モータへの通電電流の増大側の傾きを検出し、その傾きが予め設定した所定値以上となるのに応じて前記戻し過ぎが生じるのを防止するようにしている。しかるに電流値の傾きは、様々な電気的要因や機械的要因(たとえば外部電圧変動やモータ内部構造等)によるノイズによっても変動するものであり、上記特許文献1開示のものでは、そのような変動に起因して電動モータの作動停止が誤って早められてしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、パーキングブレーキ状態を解除する際に無負荷電流状態経過後に早くかつ正確に電動モータの作動を停止し得るようにした車両用電動パーキングブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、パーキングブレーキ状態を得る作動位置ならびにパーキングブレーキ状態を解除する非作動位置間での回動を可能とするとともに前記非作動位置側に向けて弾発付勢されるパーキングブレーキレバーと;当該パーキングブレーキレバーを前記非作動位置から前記作動位置に動かす動力を発揮する正転状態ならびに前記パーキングブレーキレバーを前記作動位置から前記非作動位置側に戻す際の逆転状態を切替え可能として前記パーキングブレーキレバーに連結される電動モータを有するとともに前記電動モータの逆転時に当該電動モータの負荷が無負荷となる状態を経過した後に前記電動モータに負荷を与えることを可能とした電動アクチュエータと;前記電動モータの作動を制御する制御ユニットと;前記電動モータへの通電電流を検出する電流検出手段と;を備える車両用電動パーキングブレーキ装置において、前記制御ユニットは、前記制御ユニットは、前記電流検出手段による検出電流値の傾きを演算する傾き演算手段と、前記パーキングブレーキ状態で前記作動位置に在る前記パーキングブレーキレバーを前記非作動位置に戻す側への前記電動モータへの通電開始後に通電電流が安定したことを前記電流検出手段による検出電流値に基づいて判断する電流安定化判断手段と、通電電流が安定化したことを前記電流安定化判断手段が判断した後の設定時間内に前記傾き演算手段によって演算される電流値の傾きを記憶する記憶手段と、前記設定時間の経過後に前記記憶手段で記憶された電流値の傾き以外の増大側の電流値の傾きを前記傾き演算手段が演算するのに基づいて前記電動モータの作動を停止するようにしたモータ停止判断手段とを含むことを第1の特徴とする。
【0007】
また本発明は、第1の特徴の構成に加えて、前記モータ停止判断手段は、前記設定時間の経過後に前記記憶手段で記憶された電流値の傾き以外の増大側の電流値の傾きの非検出が持続する状態では前記電流検出手段の検出電流値に基づいて前記電動モータの作動停止を判断することを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1の特徴によれば、無負荷電流状態が終了した後に電動モータに負荷がかかっている状態で、無負荷電流状態でのノイズによって生じた電流値の傾き以外の電流値の増大側の傾きを検出するのに応じて電動モータの作動を停止するので、様々な電気的要因や機械的要因によるノイズに起因した電流値の傾きを排除して、無負荷電流状態経過後に早くかつ正確に電動モータの作動を停止することができる。
【0009】
また本発明の第2の特徴によれば、電流値の傾きによって電動モータの作動停止が判断できない場合でも、電流値によって電動モータの作動を確実に停止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1はドラムブレーキ装置の正面図である。(第1の実施の形態)
図2図2はドラムブレーキの背面図である。(第1の実施の形態)
図3図3は電動アクチュエータの縦断面図である。(第1の実施の形態)
図4図4は制御ユニットの構成を示すブロック図である。(第1の実施の形態)
図5図5は制御手順の一部を示すフローチャートである。(第1の実施の形態)
図6図6図5の制御手順に続く制御手順を示すフローチャートである。(第1の実施の形態)
図7図7図6の制御手順に続く制御手順を示すフローチャートである。(第1の実施の形態)
図8図8は電動モータ逆転時の通電電流の時間経過による変化の一例を示す図である。(第1の実施の形態)
【符号の説明】
【0011】
34・・・パーキングブレーキレバー
38・・・電動アクチュエータ
41・・・電動モータ
84・・・電流検出手段
87・・・傾き演算手段
88・・・電流安定化判断手段
89・・・記憶手段
90・・・モータ停止判断手段
C・・・制御ユニット
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態について、添付の図1図8を参照しながら説明する。
【第1の実施の形態】
【0013】
先ず図1において、四輪車両の車輪たとえば左後輪にドラムブレーキBが設けられており、このドラムブレーキBは、前記左後輪の車軸11を貫通させる貫通孔12を中央部に有する固定のバックプレート13と、前記左後輪とともに回転するブレーキドラム14の内周に摺接することを可能として前記バックプレート13内に配置される第1および第2のブレーキシュー15,16と、第1および第2のブレーキシュー15,16が拡張作動する力を発揮するようにして前記バックプレート13に固定されるホイールシリンダ17と、第1および第2のブレーキシュー15,16および前記ブレーキドラム14間の間隙を自動的に調整する制動間隙自動調整手段(所謂オートアジャスタ)18と、第1および第2のブレーキシュー15,16間に設けられるリターンスプリング19とを備える。
【0014】
第1および第2のブレーキシュー15,16は、前記ブレーキドラム14の内周に沿うようにして弓形の平板状に形成される第1および第2のウエブ15a,16aと、それらの第1および第2のウエブ15a,16aの外周に直交するように連設される第1および第2のリム15b,16bと、第1および第2のリム15b,16bの外周に貼着される第1および第2のライニング15c,16cとから成る。
【0015】
前記バックプレート13には、第1および第2のブレーキシュー15,16の拡張、収縮時の支点となるアンカープレート21が、第1および第2のウエブ15a,16aの一端部(この実施の形態では下端部)を回動可能に支持するようにして固設される。また前記ホイールシリンダ17は、ブレーキペダルで操作されるマスタシリンダ(図示せず)の出力液圧によって作動して、前記アンカープレート21を支点として第1および第2のブレーキシュー15,16を拡張する側に駆動する力を発揮するようにして、第1および第2のブレーキシュー15,16の他端部間で前記バックプレート13に固定されており、このホイールシリンダ17が備える一対のピストン20の外端部は、第1および第2のウエブ15a,16aの他端部(この実施の形態では上端部)に対向するように配置される。
【0016】
第1および第2のウエブ15a,16aの前記一端部間には、それらの第1および第2のウエブ15a,16aの前記一端部を前記アンカープレート21側に付勢するコイルスプリング22が設けられ、第1および第2のウエブ15a,16aの他端部間には、第1および第2のブレーキシュー15,16を収縮方向に付勢する一対の前記リターンスプリング19が設けられる。
【0017】
前記制動間隙自動調整手段18は、第1および第2のブレーキシュー15,16が有する第1および第2のウエブ15a,16a間に設けられるとともにアジャストギヤ23の回動によって伸長し得る収縮位置規制ストラット24と、前記アジャストギヤ23に係合する送り爪25aを有して第1および第2のブレーキシュー15,16のうち第2のブレーキシュー16の前記第2のウエブ16aに回動可能に支持されるアジャストレバー25と、前記収縮位置規制ストラット24を伸長させる方向に前記アジャストギヤ23を回動させる側に前記アジャストレバー25を回動付勢するアジャストスプリング26とで構成される。
【0018】
前記収縮位置規制ストラット24は、第1および第2のブレーキシュー15,16の収縮位置を規制するものであり、第1および第2のブレーキシュー15,16のうち第1のブレーキシュー15が備える前記第1のウエブ15aの前記他端部寄りに係合する第1係合連結部27aを有する第1ロッド27と、第2のブレーキシュー16が備える第2のウエブ16aの前記他端部寄りに係合する第2係合連結部28aを有して第1ロッド27と同軸に配置される第2ロッド28と、第1ロッド27に一端部が軸方向相対移動可能に挿入されるとともに第2ロッド28に他端部が同軸に螺合されるアジャストボルト29とを有しており、前記アジャストギヤ23は、第1および第2ロッド27,28間に配置されて前記アジャストボルト29の外周に形成される。
【0019】
第1のウエブ15aの前記他端部寄りの前記車軸11側に臨む側縁には、第1係合連結部27aを係合させる第1係止凹部30が設けられ、また第2のウエブ16aの前記他端部寄りの前記車軸11側に臨む側縁には、第2係合連結部28aを係合させる第2係止凹部31が設けられる。
【0020】
前記アジャストギヤ23に係合する送り爪25aを有するアジャストレバー25は、前記第2のウエブ16aに支軸32を介して回動可能に支持され、前記第2のウエブ16aおよび前記アジャストレバー25間に前記アジャストスプリング26が設けられる。しかも前記アジャストスプリング26のばね力は、前記リターンスプリング19のばね力よりも小さく設定される。
【0021】
このような制動間隙自動調整手段18によれば、第1および第2のブレーキシュー15,16が前記ホイールシリンダ17の作動によって拡張作動する際に前記第1および第2のライニング15c,16cの摩耗に起因して一定値以上拡張した場合には、前記アジャストスプリング26のばね力によって前記アジャストレバー25が前記支軸32の軸線まわりに回動し、それによって前記アジャストギヤ23が回動するのに応じて前記収縮位置規制ストラット24の有効長さが増加補正される。
【0022】
ところで、このドラムブレーキBは、作動に応じてパーキングブレーキ力を発生させ得るパーキングブレーキレバー34を備えており、このパーキングブレーキレバー34は、第1のブレーキシュー15における前記第1のウエブ15aの一部に、前記ブレーキドラム14の回転軸線に沿う方向での正面視(図1で示す方向)で重なるように配置され、前記第1のウエブ15aの長手方向に沿って長く延びる。
【0023】
前記パーキングブレーキレバー34の一端部(この実施の形態では下端部)には、ブレーキケーブル37の一端部に固定された係合駒36が係合され、前記パーキングブレーキレバー34の他端部(この実施の形態では上端部)は、第1のブレーキシュー15における前記第1のウエブ15aの他端部にピン35を介して連結される。
【0024】
車両のパーキングブレーキ作動時には、前記ブレーキケーブル37から入力される牽引力により、前記パーキングブレーキレバー34が前記ピン35を支点として図1の反時計方向に回動、駆動されるものであり、このパーキングブレーキレバー34の回動によって、第2のブレーキシュー16に、当該ブレーキシュー16が有する前記第2のライニング16cを前記ブレーキドラム14の内周に圧接させる方向の力が前記収縮位置規制ストラット24を介して作用する。さらに前記パーキングブレーキレバー34が図1の反時計方向に続けて回動、駆動されると、前記パーキングブレーキレバー34が前記収縮位置規制ストラット24の第1係合連結部27aとの係合部を支点として回動し、今度は、前記ピン35を介して第1のブレーキシュー15が拡張作動し、第1のブレーキシュー15の前記第1のライニング15cが前記ブレーキドラム14の内周に圧接することになる。すなわち前記パーキングブレーキレバー34は、第1および第2のブレーキシュー15,16の前記第1および第2のライニング15c,16cが前記ブレーキドラム14の内周に圧接するようにした作動位置に作動し、この状態でパーキングブレーキ状態が得られることになる。
【0025】
また前記ブレーキケーブル37を緩めることで前記パーキングブレーキレバー34に対する回動駆動力の付与を停止したときには、前記ブレーキドラム14の内周から離反する方向に前記リターンスプリング19のばね力によって作動する第1および第2のブレーキシュー15,16とともに前記パーキングブレーキレバー34は非作動位置に戻ることになり、前記パーキングブレーキレバー34は非作動位置側に向けて付勢されている。
【0026】
図2を併せて参照して、前記ブレーキケーブル37は、電動アクチュエータ38が発揮する動力で牽引されるものであり、この電動アクチュエータ38は、前記ブレーキケーブル37に連結されるねじ軸39と、当該ねじ軸39をその回転を阻止しつつ軸線方向の往復運動を可能として支持するアクチュエータケース40と、正逆回転を自在として前記アクチュエータケース40に支持される電動モータ41と、その電動モータ41で発生する回転運動を前記ねじ軸39の直線運動に変換することを可能としつつ前記電動モータ41および前記ねじ軸39間に介設されて前記アクチュエータケース40に収容される運動変換機構42(図3参照)とを備える。
【0027】
この電動アクチュエータ38の前記アクチュエータケース40は、前記ホイールシリンダ17とは反対側で前記バックプレート13に取付け部材43を介して取付けられる。前記取付け部材43は、前記アクチュエータケース40に固着されており、この取付け部材43が複数個たとえば3個のボルト44で前記バックプレート13に締結される。
【0028】
また前記ブレーキケーブル37のうち少なくとも前記バックプレート13の外部に配索される部分は筒状部材で覆われており、この実施の形態では、たとえば鉄製の線材をコイル状に巻回して成る状部材であるアウターケーブル45で前記ブレーキケーブル37のうち少なくとも前記バックプレート13の外部に配索される部分が覆われる。また前記筒状部材は、前記電動アクチュエータ38の出力による反力を受けられる部材であればよく、前記アウターケーブル45に代えて、金属製の筒状部材を用いるようにしてもよい。
【0029】
図3を併せて参照して、前記電動アクチュエータ38の前記ねじ軸39は、ケーブルジョイント51を介して前記ブレーキケーブル37に連結されており、そのねじ軸39および前記ブレーキケーブル37の連結部は、前記アクチュエータケース40に結合される保護筒50で覆われており、前記アウターケーブル44の前記電動アクチュエータ38側の端部は、ガイドチューブ52を介して前記保護筒50に取付けられる。
【0030】
前記バックプレート13の下部の車両前後方向に沿う前部には筒部13bが一体に突設されており、前記アウターケーブル45で覆われた前記ブレーキケーブル37は、前記筒部13bから前記バックプレート13内に導入される。
【0031】
また前記第1および第2のウエブ15a,16aの一端部間で、前記アンカープレート21を前記バックプレート13との間に挟む押さえ板46が、前記アンカープレート21とともに一対のリベット47によって前記バックプレート13の下部に取付けられ、前記押さえ板46に、前記アウターケーブル44とともに前記ブレーキケーブル37をガイドするガイド部46aが、略U字状の横断面形状を有するようにして一体に設けられる。
【0032】
前記アクチュエータケース40は、第1および第2の収容筒部55,56を一体に有するケース主体57と、第1の収容筒部55の開口端に結合される第1のカバー部材58と、第1のカバー部材58と反対側から前記ケース主体57に結合される第2のカバー部材59とで構成される。
【0033】
前記第1の収容筒部55は、一端部に第1の端壁部55aが設けられるようにして有底円筒状に形成され、前記第1の端壁部55aの中央部には、嵌合孔60が同軸に形成される。第2の収容筒部56は、前記第1の収容筒部55の側方に配置され、一端部を開放するとともに前記第1の収容筒部55の長手方向中間部に配置される第2の端壁部56aで他端部が閉じられるようにして有底円筒状に形成され、第2の端壁部56aの中央部には、前記ねじ軸39を囲繞する円筒状の筒部56bが一体に突設される。また前記筒部56bからの前記ねじ軸39の突出端部および前記筒部56b間にはブーツ80が設けられる。
【0034】
前記電動モータ41のモータケース63の軸方向一端部には、モータ軸64を回転自在に支持する円筒状の第1軸受部63aが突設され、前記モータ軸64の一端部は前記第1軸受部63aを貫通して前記モータケース63の一端部から突出され、前記モータケース63の軸方向他端部には前記モータ軸64の他端部を回転自在に支持する有底円筒状の第2軸受部63bが突設される。
【0035】
この電動モータ41は、前記第1軸受部63aを前記ケース主体57の前記嵌合孔60に嵌合するようにしつつ前記モータケース63の一端部を前記第1の端壁部55aに当接させるようにして第1の収容筒部55に収容されるものであり、前記第2軸受部63bが設けられる側の前記モータケース63の他端部を外部に臨ませるようにして、前記電動モータ41が第1の収容筒部55に収容される。
【0036】
前記第1のカバー部材58は、前記第1の収容筒部55に収容される前記電動モータ41のうち第1の収容筒部55から外部に臨む部分を覆って第1の収容筒部55の開口端に結合される蓋部58aと、当該蓋部58aから側方に張り出すとともに前記第1の収容筒部55の側方に配置されるコネクタ部58b(図2参照)とを一体に有し、前記電動モータ41の前記第2軸受部63bおよび前記蓋部58a間にはウエーブワッシャ66が介設される。第2のカバー部材59は、前記ケース主体57との間にギヤ室65を形成するようにして前記ケース主体57に結合され、このギヤ室65に前記運動変換機構42が収容される。
【0037】
前記運動変換機構42は、前記電動モータ41の前記モータ軸64に設けられる駆動ギヤ67と、その駆動ギヤ67に噛合する中間大径ギヤ68と、その中間大径ギヤ68とともに回転する中間小径ギヤ69と、当該中間小径ギヤ69に噛合する被動ギヤ70と、当該被動ギヤ70に一体に設けられるナット71とを有する。
【0038】
前記中間大径ギヤ68および前記中間小径ギヤ69は一体に形成されており、前記モータ軸64および前記ねじ軸39と平行な支軸72で回転自在に支持される。また前記支軸72の両端部は、前記ケース主体57および前記第2のカバー部材59で支持される。
【0039】
前記ナット71は、前記第2の収容筒部56内に回転自在に収容される大径円筒部71aと、大径円筒部71aの前記第2のカバー部材59とは反対側の端部から半径方向内方に張り出す内向き鍔部71bと、この内向き鍔部71bの内周縁に連なって前記第2のカバー部材59とは反対側に延びるとともに前記ねじ軸39を貫通させる小径円筒部71cと、前記大径円筒部71aの前記第2のカバー部材59側の端部から半径方向外方に張り出す外向き鍔部71dとを一体に有するように形成される。前記小径円筒部71cの内周に前記ねじ軸39に螺合する雌ねじ67が刻設され、前記外向き鍔部71dの外周に前記被動ギヤ70が形成される。また前記小径円筒部71cと、前記第2の収容筒部56の前記第2の端壁部56a側の端部との間にはボールベアリング74が介装される。
【0040】
前記ブレーキケーブル37とは反対側で前記ねじ軸39の端部には、当該ねじ軸39の一直径線に沿う両側に向かって突出する突部39aが設けられる。一方、前記ナット71には、当該ナット71の前記大径円筒部71aおよび前記内向き鍔部71bで規定される凹部75が、前記突部39a側に向かって開放するようにして形成される。
【0041】
ところで前記ねじ軸39は、前記パーキングブレーキレバー34を作動位置側に駆動すべく前記ブレーキケーブル37を牽引する際には前記突部39aが前記ナット71から離反する側に移動し、前記パーキングブレーキレバー34を前記作動位置から前記非作動位置側に戻すべく前記ブレーキケーブル37を緩める際には前記突部39aが前記ナット71に近接する側に移動するものであり、前記ブレーキケーブル37を緩める方向に前記ねじ軸39が移動する際に前記突部39aおよび前記ナット71間に介在して前記突部39aを前記ナット71から離反させる側に付勢する弾発力を発揮する複数個の皿ばね76が、前記凹部75に収容される。
【0042】
前記凹部75には、複数個の前記皿ばね76と、それらの皿ばね76を前記ナット71の前記内向き鍔部71bとの間に挟む円板状のリテーナ77とが収容される。
【0043】
前記アクチュエータケース40の前記第2のカバー部材59には、前記ねじ軸39を囲繞する有底円筒状のガイド筒部59aが一体に形成されており、このガイド筒部59aの内面には、前記ねじ軸39の軸線に沿う方向に延びて前記突部39aをスライド可能に係合させる一対の係止溝78が形成される。
【0044】
前記ガイド筒部59aの開口端部および前記ナット71間には、ナット71からのスラスト荷重を受ける軸受部材79が介装されており、この軸受部材79は、前記凹部75内に突入される短円筒部79aを一体に有する。
【0045】
ここで前記パーキングブレーキレバー34を前記非作動位置から前記作動位置側に駆動すべく前記ブレーキケーブル37を牽引する際には、前記電動モータ41の正転作動によって前記ねじ軸39はその突部39aが前記リテーナ77から離反する方向に移動するが、前記リテーナ72の外周部が、前記軸受部材79における前記短円筒部79aに接触することで前記皿ばね76の前記凹部75からの離脱が阻止される。また前記ブレーキケーブル37を緩めるように前記電動モータ41を逆転作動させたときには前記突部39aが前記リテーナ77に近接する方向に前記ねじ軸39が移動するが、前記ブレーキケーブル37が非作動位置側に向けてばね付勢されているので、前記突部39aが前記リテーナ77に当接するまでは前記電動モータ41は無負荷状態となり、前記突部39aが前記リテーナ77に当接した後には当該突部39aに前記リテーナ77を介して前記皿ばね76の弾性力が作用し、前記電動モータ41に負荷がかかることになる。
【0046】
図4において、前記電動アクチュエータ38における前記電動モータ41には、電源81の電力が駆動回路82を介して供給されるものであり、前記電動モータ41の作動すなわち前記駆動回路82の作動は制御ユニットCで制御される。この制御ユニットCには、車両ユーザがパーキングブレーキ状態を解除するための操作を行なったことを検出してパーキングブレーキ状態を解除するための信号を出力する指示手段83と、前記電動モータ41への通電電流を検出する電流検出手段84と、前記電動モータ41への通電電圧を検出する電圧検出手段85とが接続される。
【0047】
前記制御ユニットCは、そのパーキングブレーキ状態解除に関連する部分として、前記指示手段83からの信号入力に応じて前記パーキングブレーキ状態で前記作動位置に在る前記パーキングブレーキレバー34を前記非作動位置に戻す側への前記電動モータ41への通電を開始するように前記駆動回路82の作動を制御する通電制御手段86と、前記電流検出手段84による検出電流値の傾きを演算する傾き演算手段87と、前記電動モータ41への通電開始後に通電電流が安定したかどうかを判断する電流安定化判断手段88と、当該電流安定化判断手段88による通電電流の安定化判断後に前記電動モータ41に負荷がかかる直前までの間で前記傾き演算手段87によって演算される電流値の傾きを記憶する記憶手段89と、前記電動モータ41に負荷がかかった状態で前記記憶手段89で記憶された電流値の傾き以外の増大側の電流値の傾きを前記傾き演算手段87が演算するのに基づいて前記電動モータ41の作動を停止するための信号を前記通電制御手段86に入力するモータ停止判断手段90とを含む。
【0048】
パーキングブレーキ状態を解除する際に、前記制御ユニットCは図5図7で示す手順に従って前記電動モータ41の作動を制御するものであり、図5のステップS1で電動モータ41の逆転を開始するための信号を前記通電制御手段86から前記駆動回路82に入力した後のステップS2では、前記電流検出手段84で検出した電流値A(n)を取得し、次のステップS3ではフラグFI1が「1」であるか否かを判断する。このフラグFI1は、突入電流の開始を判定するためのものであり、ステップS3でFI1が「0」であると判断したときには、ステップS4で電流値A(n)が突入電流開始判定電流A0以上となるか否かを判定し、A(n)≧A0であると判定したときには、ステップS4からステップS5に進んでフラグFI1を「1」に設定した後、ステップS2に戻り、またA(n)<A0であると判定したときには、ステップS4からステップS6に進んでフラグFI1を「0」に設定した後、ステップS2に戻る。
【0049】
ステップS3でFI1=1であることを確認したときには、ステップS7に進んでフラグFI2が「1」であるか否かを判断する。このフラグFI2は、突入電流の終了を判定するためのものであり、ステップS7でFI2が「0」であると判断したときには、ステップS8で電流値A(n)が突入電流終了判定電流A1以下となるか否かを判定し、A(n)≦A1であると判定したときには、ステップS8からステップS9に進んでフラグFI2を「1」に設定した後、ステップS2に戻り、またA(n)>A1であると判定したときには、ステップS8からステップS10に進んでフラグFI2を「0」に設定した後、ステップS2に戻ることになる。
【0050】
上述のステップS1~ステップS10の処理は電流安定化判断手段88によるものであり、図8で示すように、パーキングブレーキ状態を解除するための前記電動モータ41の逆転作動を開始して突入電流が生じて電流値A(n)が突入電流開始判定電流A0以上となった後に突入電流終了判定電流A1以下となった時刻t1から通電開始直後の突入電流による電流不安定状態を経過した後の電流安定化状態に入ることになる。
【0051】
上記ステップS7でフラグFI2が「1」となったことを確認したときには、ステップS7からステップS11に進み、前記電圧検出手段85で検出した電圧値V(n)をステップS11で取得する。次のステップS12では、電圧値V(n)が第1設定電圧値VA以下であるか否かを判定し、V(n)≦VAであったときにはステップS13に進んで第1の設定時間TAをTA1に定める。またステップS12でV(n)>VAであると判定したときには、ステップS12からステップS14に進み、このステップS14では電圧値V(n)が第2設定電圧値VB以下であるか否かを判定し、V(n)≦VBであったときにはステップS15に進んで第1の設定時間TAをTA2に定め、V(n)>VBであったときにはステップS16に進んで第1の設定時間TAをTA3に定める。
【0052】
すなわちステップS11~S16は前記電圧検出手段85で検出した電圧値V(n)に応じて第1の設定時間TAをTA1,TA2,TA3の値の3つの値に定めることになる。上述のステップS13,S15,S16の処理が終了した後は、図6のステップS17に進み、このステップS17では、フラグFS1,FS2,FS3,FS4をそれぞれ「0」と定め、次のステップS18でカウント値を「0」に定めた後、次のステップS19で第1タイマによるカウントを実行し、さらに次のステップS20で前記電流検出手段84で検出した電流値A(n)を取得する。
【0053】
ステップS20に続くステップS21では、前記傾き演算手段87によって電流値の傾きを算出するが、この実施の形態で前記傾き演算手段87は、今回取得した電流値A(n)と、前記傾き演算手段87における演算周期前の前回の演算で取得した電流値A(n-1)との差を、電流値の傾きを代表する値として算出する。
【0054】
ステップS21に続くステップS22では、電流値の傾きが第1の所定値SA以下であるか否かを判断し、電流値の傾き≦SAであったときにはステップS23に進んでフラグFS1を「1」と定めた後、ステップS24に進む。またステップS22で電流値の傾き>SAであると判断したときにはステップS25で電流値の傾きが前記第1の所定値SAよりも大きな第2の所定値SB以下であるか否かを判断する。このステップS25で電流値の傾き≦SBであると判断したときにはステップS26に進んでフラグFS2を「1」と定めた後にステップS24に進み、電流値の傾き>SBであると判断したときにはステップS25からステップS27に進んで電流値の傾きが前記第2の所定値SBよりも大きな第3の所定値SC以下であるか否かを判断する。このステップS27で電流値の傾き≦SCであると判断したときにはステップS28でフラグFS3を「1」に定めた後にステップS24に進み、電流値の傾き>SCだったときにはステップS29でフラグFS4を「1」に定めた後にステップS24に進む。
【0055】
ステップS24では、第1タイマによる時間計測が第1の設定時間TAに達したか否かを判断し、第1の設定時間TAに達していなかったときにはステップS19に戻り、第1の設定時間TAに達したと判断したときには、図7のステップS30に進む。
【0056】
上述のステップS17~S29の処理は記憶手段89によるものであり、図8で示すように、突入電流による電流不安定化状態が終了した時刻t1から前記電動モータ41に負荷がかかる時刻t3の直前と想定される時刻t2までの電圧によって定まる第1の設定時間TA内に、前記傾き演算手段87によって演算される電流値の傾きを、その傾きの大きさに応じたフラグFS1,FS2,FS3,FS4を「1」と定めることにより、通電電流が安定してから第1の設定時間TAが経過するまでの間に生じた電流値の傾きをその大きさに応じたフラグFS1,FS2,FS3,FS4を付しながら前記記憶手段89が記憶することになる。
【0057】
しかも前記記憶手段89によって記憶された電流値の傾きのうち前記モータ停止判断手段90による電動モータ41の作動停止判断に用いられる電流値の傾きは、第1の所定値SAよりも大きく、第3の所定値SC以下である範囲に設定されている。
【0058】
図7のステップS30では、前記電流検出手段84で検出した電流値A(n)を取得し、その後のステップS31において前記傾き演算手段87によって電流値の傾きを算出するが、この実施の形態では、上述のステップS21と同様に、前記傾き演算手段87は当該傾き演算手段87における前記演算周期前の前回の演算で取得した電流値A(n-1)との差を、電流値の傾きを代表する値として算出する。
【0059】
ステップS32では、電流値の傾きが第1の所定値SA以下であるか否かを判断し、電流値の傾きが第1の所定値SA以下であるときにはステップS33で第2タイマによるカウント値を「0」とした後にステップS39に進み、電流値の傾きが第1の所定値SAを超えたときにはステップS32からステップS34に進む。このステップS34では、電流値の傾きが第2の所定値SB以下であってフラグFS2が「0」であるか否かを判断し、電流値の傾きが第2の所定値SB以下であってフラグFS2が「0」であるときにはステップS35で第2タイマによるカウントを実行した後にステップS39に進み、電流値の傾きが第2の所定値SBを超えるか、フラグFS2が「1」であるときには、ステップS34からステップS36に進む。ステップS36では、電流値の傾きが第3の所定値SC以下であってフラグFS3が「0」であるか否かを判断し、電流値の傾きが第3の所定値SC以下であってフラグFS3が「0」であるときにはステップS35で第2タイマによるカウントを実行し、電流値の傾きが第3の所定値SCを超えるか、フラグFS3が「1」であるときには、ステップS36からステップS37に進む。ステップS37では、フラグFS4が「0」であるか否かを判断し、FS4=0であったときにはステップS35で第2タイマによるカウントを実行し、FS4=1であったときにはステップS38で第2タイマによるカウント値を「0」とした後に、ステップS39に進む。
【0060】
このようなステップS32~S39の処理によって、前記記憶手段89が記憶した電流値の傾き以外の電流値の傾きが生じたとき、すなわち第1の所定値SAを超えて第2の所定値SB以下の電流値の傾きが前記第1の設定時間TAの経過後に生じたときや、第2の所定値SBを超えて第3の所定値SC以下の電流値の傾きが前記第1の設定時間TAの経過後に生じたときには、第2タイマによるカウントを実行し、記憶手段89が記憶した電流値の傾きと同じ電流値の傾きが生じたとき、ならびに電流値の傾きが第1の所定値SA以下の小さな値であるときや、電流値の傾きが第3の所定値SCを超える大きな値であるときには、第2タイマによるカウント値を「0」に設定することになる。
【0061】
ステップS33での第2タイマによるカウントを実行した後には、ステップS39に進み、このステップS39では第2タイマのカウントによる経過時間が第2の設定時間を超えるか否かを判断する。この第2の設定時間は電流値の傾き判定に必要な時間として設定されている。
【0062】
ステップS39で第2の設定時間が経過していると判断したときにはステップS40に進んで前記電動モータ41を停止するための信号を前記通電制御手段86に入力する。またステップS39で第2の設定時間が経過していないと判断したときには、ステップS39からステップS41に進み、電流値A(n)が設定電流値A2以上となったか否かを判断し、A(n)≧A2となったときにはステップS41からステップS40に進み、A(n)<A2であったときにはステップS41からステップS39に戻る。
【0063】
上述のステップS30~S41の処理はモータ停止判断手段90によるものであり、図8で示すように、電動モータ41に負荷がかかり始めた時刻t3以降に、前記記憶手段89が記憶していた電流値以外の増大側の電流値の傾きが生じたときには、その時刻t4で前記モータ停止判断手段90は前記電動モータ41の作動を停止するための信号を前記通電制御手段86に入力する。
【0064】
また前記時刻t3以降に前記記憶手段89で記憶された電流値の傾き以外の増大側の電流値の傾きの非検出が持続し、図8の鎖線で示すように電動モータ41への通電電流が増大するときには、前記電流検出手段84の検出電流値が設定電流値A2以上となる時刻t5で、前記モータ停止判断手段90は前記電動モータ41の作動を停止するための信号を前記通電制御手段86に入力する。
【0065】
次にこの実施の形態の作用について説明すると、電動アクチュエータ38が有する電動モータ41の作動を制御する制御ユニットCは、電流検出手段84による検出電流値の傾きを演算する傾き演算手段87と、パーキングブレーキ状態で前記作動位置に在るパーキングブレーキレバー34を非作動位置に戻す側への電動モータ41への通電開始後に通電電流が安定したことを前記電流検出手段84による検出電流値に基づいて判断する電流安定化判断手段88と、通電電流が安定化したことを前記電流安定化判断手段88が判断した後の第1の設定時間TA内に前記傾き演算手段87によって演算される電流値の傾きを記憶する記憶手段89と、前記第1の設定時間TAの経過後に前記記憶手段89で記憶された電流値の傾き以外の増大側の電流値の傾きを前記傾き演算手段87が演算するのに基づいて前記電動モータ41の作動を停止するようにしたモータ停止判断手段90とを含むので、無負荷電流状態が終了した後に電動モータ41に負荷がかかっている状態で、無負荷電流状態でのノイズによって生じた電流値の傾き以外の電流値の増大側の傾きを検出するのに応じて電動モータ41の作動を停止することになり、様々な電気的要因や機械的要因によるノイズに起因した電流値の傾きを排除して、無負荷電流状態経過後に早くかつ正確に電動モータ41の作動を停止することができる。
【0066】
また前記モータ停止判断手段90は、前記第1の設定時間TAの経過後に前記記憶手段89で記憶された電流値の傾き以外の増大側の電流値の傾きの非検出が持続する状態では前記電流検出手段84の検出電流値に基づいて前記電動モータ41の作動停止を判断するので、電流値の傾きによって電動モータ41の作動停止が判断できない場合でも、電流値によって電動モータ41の作動を確実に停止することができる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8