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特許7431949軌道の実際位置を求めるための方法および測定車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】軌道の実際位置を求めるための方法および測定車両
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/08 20060101AFI20240207BHJP
   E01B 35/06 20060101ALI20240207BHJP
   B61L 25/02 20060101ALI20240207BHJP
   G01C 21/28 20060101ALI20240207BHJP
   G01B 21/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B61K9/08
E01B35/06
B61L25/02 G
G01C21/28
G01B21/00 R
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022513398
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2020071628
(87)【国際公開番号】W WO2021037476
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】A284/2019
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】521346494
【氏名又は名称】トラック マシーンズ コネクティッド ゲゼルシャフト エム.ベー.ハー.
【氏名又は名称原語表記】Track Machines Connected Gesellschaft m.b.H.
【住所又は居所原語表記】Regensburger Strasse 3, 4020 Linz, Austria
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン アウアー
(72)【発明者】
【氏名】ダーフィト ブーフバウアー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ビュアガー
(72)【発明者】
【氏名】べアンハート メツガー
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン ヒンターベアガー
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0031217(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106052584(CN,A)
【文献】特開2014-240262(JP,A)
【文献】特開平10-267650(JP,A)
【文献】特表2017-534784(JP,A)
【文献】特開2019-099097(JP,A)
【文献】特表2018-523236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61K 9/08
E01B 35/06
B61L 25/02
G01C 21/28
G01B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道(5)上を走行可能な測定車両(1)を用いて、前記軌道(5)の実際位置を求める方法であって、前記測定車両(1)に配置された非接触型検出システム(8)を用いて、前記軌道(5)の側方の周辺部に位置決めされた基準点(A,B,C)を自動的に検出し、前記軌道(5)に対する、前記基準点(A,B,C)のそれぞれの実際距離(H,V)を特定する、方法において、前記測定車両(1)に配置された慣性測定システム(13)を用いて、前記軌道(5)の3次元軌跡(15)を検出し、計算ユニット(22)を用いて、第1基準点(A,B)に関連付けられた区間始点と、第2基準点(B,C)に関連付けられた区間終点とをそれぞれ有する軌跡区間(15AB,15BC)に前記軌跡(15)を分割し、それぞれの軌跡区間(15AB,15BC)に対し、対応付けられた前記基準点(A,B,C)について、仮想の弦(24AB,24BC)を決定し、それぞれの軌跡区間(15AB,15BC)に対し、前記軌跡(15)と、それぞれ決定された前記弦(24AB,24BC)との間の実際間隔(25)を計算することを特徴とする方法。
【請求項2】
それぞれの前記弦(24AB,24BC)に対応付けられる局所座標系(xABABAB,xBCBCBC)において前記実際間隔(25)を計算することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記実際間隔(25)について、水平方向のベクトルおよび垂直方向のベクトルを計算することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記軌道(5)の目標経過(27)をあらかじめ設定し、前記目標経過(27)とそれぞれの前記弦(24AB,24BC)との間で、前記実際間隔(25)と、対応付けられる目標間隔(26)とを比較し、前記比較の結果から、後続の軌道処理についての補正値(28)を導出することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
それぞれの前記基準点(A,B,C)について、前記軌道(5)の水平方向の目標距離(H)および/または垂直方向の目標距離(V)をあらかじめ設定し、検出される前記実際距離(H,V)と、対応付けられた目標距離(H,V)との間の差分(29)によって前記補正値(28)を調整することを特徴とする、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記軌道(5)の左側のレール(30)について、および前記軌道(5)の右側のレール(30)について、それぞれ固有の3次元軌跡(15)を検出することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
GNSS受信装置(18)を用いて、前記測定車両(1)のGNSS位置(20)を検出し、前記軌道(5)の検出される前記実際位置を前記GNSS位置(20)によって調整することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記慣性測定システム(13)を用いて、それぞれの測定データについて、共通の時間ベースとしてタイムスタンプを設定することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記慣性測定システム(13)の配置と、前記非接触型検出システム(8)の配置と、場合によってGNSS受信装置(18)の配置との幾何学的な関係を較正プロセスによって特定することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
レール走行装置(4)の上で軌道(5)上を走行可能である車両フレーム(2)を備えた測定車両(1)であって、前記測定車両(1)には、前記軌道(5)の側方の周辺部に位置決めされた基準点(A,B,C)を自動的に検出する非接触型検出システム(8)と、慣性測定ユニット(14)とが配置されている、測定車両(1)において、前記慣性測定ユニット(14)を含む慣性測定システム(13)は、前記軌道(5)の3次元軌跡(15)を検出するように構成されており、前記非接触型検出システム(8)および前記慣性測定システム(13)は、計算ユニット(22)に接続されており、前記計算ユニット(22)は、
第1基準点(A,B)に関連付けられた区間始点と、第2基準点(B,C)に関連付けられた区間終点とをそれぞれ有する軌跡区間(15AB,15BC)に前記軌跡(15)を分割し、
それぞれの軌跡区間(15AB,15BC)に対し、対応付けられた前記基準点(A,B,C)について、仮想の弦(24AB,24BC)を決定し、かつ
それぞれの軌跡区間(15AB,15BC)に対し、前記軌跡(15)と、それぞれ決定された前記弦(24AB,24BC)との間の実際間隔(25)を計算するように構成されていることを特徴とする、測定車両(1)。
【請求項11】
前記非接触型検出システム(8)は、前記軌道(5)の前記側方の周辺部の画像対を撮影するステレオカメラシステム(9)と、前記基準点(A,B,C)の検出および位置特定のための評価装置(10)とを含むことを特徴とする、請求項10記載の測定車両(1)。
【請求項12】
前記車両フレーム(2)にGNSS受信装置(18)が接続されており、前記軌道(5)に対する前記車両フレーム(2)の位置を特定する位置測定装置(12)が前記車両フレーム(2)に配置されていることを特徴とする、請求項10または11記載の測定車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行可能な測定車両を用いて、軌道の実際位置を求める方法に関し、ここでは測定車両に配置された非接触型検出システムを用いて、軌道の側方の周辺部に位置決めされた複数の基準点が自動的に検出され、軌道に対するそれらのそれぞれの実際距離が特定される。本発明はさらに、この方法を実施するための測定車両に関する。
【背景技術】
【0002】
バラスト道床では、走行により、また天候の影響により、バラスト道床に収められた軌框のその位置的な状態が影響を受ける。それゆえに、軌道の最新の実際位置を検査するためにまた特に修理作業の前に、定期的な測定が、特にそのために設けられた測定車を用いて行われる。対応して構成された軌道工事機械も測定車として使用可能である。
【0003】
公知の測定方法は、電柱などの固定の設備に取り付けられている、軌道の横に設けられた基準点を利用する。このような基準点は、定点または固定点とも称される。一般に基準点は、マーキングボルトの先端部として定められる。軌道に対するそれぞれの基準点の規定位置は、リストに記録されている。これにより、軌道について、特に円弧、緩和曲線ならびに傾き変化(Neigungsbrueche)について、目標位置が特定される。主要点の間に中間基準点が配置されることも多い。
【0004】
オーストリア国特許出願公開第518579号明細書からは、複数の基準点を自動的に検出してそれらの位置を求めるための方法および測定車両が公知である。このために、軌道の側方の周辺部の画像対を連続して撮影するステレオカメラシステムが設けられている。パターン認識を用いて評価装置により、複数の画像対の1つに基準点が映されているかが決定される。別のステップでは、見つけられた基準点に対して隔たりを評価することにより、その位置が特定される。さらに、測定車両によって位置を連続して求めるために慣性測定ユニットが配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底にある課題は、冒頭に述べた方法を改善して、軌道位置補正値を容易に求めることができるようにすることである。さらに、改善されたこの方法を実施するための測定車両を示したい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題は、本発明により、独立請求項1および10の特徴的構成によって解決される。従属請求項には、本発明の有利な実施形態が示されている。
【0007】
本発明では、測定車両に配置された慣性測定システムを用いて、軌道の3次元軌跡を検出し、計算ユニットを用いて、第1基準点に関連付けられた区間始点と、第2基準点に関連付けられた区間終点とをそれぞれ有する軌跡区間に軌跡を分割し、それぞれの軌跡区間に対し、対応付けられた基準点について、仮想の弦(Langsehne)を決定し、それぞれの軌跡区間に対し、軌跡と、それぞれ決定された弦との間の実際間隔を計算する。これにより、自動化された基準点特定と、軌道の軌跡検出とが有利に組み合わされる。
【0008】
軌跡は、軌道軸線の経過またはレールのゲージコーナーの経過を表す。それぞれの弦に対する、軌跡区間の求められた実際間隔により、位置誤りを容易に評価可能である。例えば、あらかじめ設定された、軌道経過の幾何学形状(例えば、直線、円弧、緩和曲線)との比較を行うことにより、相対的な位置誤りが評価される。好ましい一変形形態では、あらかじめ設定される、軌道の目標位置との比較を行う。いずれにせよ、この方法により、検出される基準点に対する、軌道位置の正確な補正を行うことができる。実際間隔は、いわゆる矢の長さ(Pfeilhoehe)であり、この矢の長さにより、軌道工事において一般に軌道の曲率が特定され、特にあらかじめ設定される。
【0009】
位置誤りの評価は、それぞれの弦に対応付けられる局所座標系において実際間隔を計算する場合にさらに容易になる。このために、対応する軌跡区間もこの局所座標系に変換する。局所座標系の原点は好適には、弦のゼロ点にあり、座標系の軸は、弦の方向を指し示している。これにより、軌跡区間に対する実際間隔は、局所座標系におけるベクトルになる。
【0010】
有利には、実際間隔について、水平方向のベクトルおよび垂直方向のベクトルを計算する。実際間隔の垂直方向のベクトルから、軌道の水準測量についての値が直接に導出可能である。軌道を側方に修復するために、実際間隔の水平方向のベクトルにより、データベースが形成される。
【0011】
上記の方法のさらなる改善の特徴は、軌道の目標経過をあらかじめ設定し、目標経過とそれぞれの弦との間で、実際間隔と、対応付けられる目標間隔とを比較し、この比較の結果から、後続の軌道処理についての補正値を導出することである。これらの補正値はその後、あらかじめ設定された目標位置に軌道を移動するために軌道工事機械の制御に利用される。
【0012】
この際には、それぞれの基準点について、軌道の水平方向の目標距離および/または垂直方向の目標距離をあらかじめ設定すると好適であり、検出される実際距離と、対応付けられた目標距離との間の差分によって補正値を調整する。これにより、参照目標位置に軌道を移動するために、修正された補正値が利用可能になる。
【0013】
精度を高めるために、また後続の軌道位置補正を容易にするために、軌道の左側のレールについて、および軌道の右側のレールについて、それぞれ固有の3次元軌跡を検出する。これにより、それぞれのレールについて、それぞれの弦に対する固有の実際間隔が得られて、ここから軌道位置補正についての、レールに依存する設定値が導出される。特に、それぞれのレールの異なる沈降による軌道の片勾配誤差また個別誤差が、これによって容易に検出可能である。
【0014】
上記の方法のさらなる改善は、GNSS受信装置を用いて、測定車両のGNSS位置を検出し、軌道の検出される実際位置をGNSS位置によって調整することによって行われる。GNSS位置により、軌道のジオリファレンスされた幾何学形状が特定され、これにより、さらなる変換を行うことなく、得られたデータを上位のシステムにおいて使用可能である。
【0015】
測定結果の効率的な処理には、慣性測定システムを用いて、それぞれの測定データについて、共通の時間ベースとしてタイムスタンプを設定すると有利である。これにより、慣性測定システムの測定結果と、非接触型基準点検出システムの測定結果と、場合によってはGNSS受信装置の測定結果とを問題なく組み合わせることができる。
【0016】
上記の方法の別の特徴では、慣性測定システムの配置と、非接触型基準点検出システムの配置と、場合によってGNSS受信装置の配置との幾何学的な関係を較正プロセスによって特定する。これは特に、2つのシステムが共通の測定プラットホームに固定に配置されていない場合に有効である。
【0017】
本発明による測定車両は、レール走行装置の上で軌道上を走行可能である車両フレームを含んでおり、測定車両には、軌道の側方の周辺部に位置決めされた基準点を自動的に検出する非接触型検出システムと、慣性測定ユニットが配置されている。慣性測定ユニットを含む慣性測定システムは、軌道の3次元軌跡を検出するように構成されており、非接触型検出システムおよび慣性測定システムは、計算ユニットに接続されており、計算ユニットは、第1基準点に関連付けられた区間始点と、第2基準点に関連付けられた区間終点とをそれぞれ有する軌跡区間に軌跡を分割し、それぞれの軌跡区間に対し、対応付けられた基準点について、仮想の弦を決定し、かつそれぞれの軌跡区間について、軌跡と、それぞれ決定された弦との間の実際間隔を計算するように構成されている。
【0018】
これにより、上述の方法を容易に実施することができる車両が示される。具体的には、測定車両を用いて、測定走行中に最初に基準点および軌道の軌跡が自動的に検出されて記憶される。軌跡を分割し、それぞれの弦を決定し、かつ軌跡区間と、対応付けられた弦との間の間隔を計算するために、計算ユニットは、基準点に関連付けられた、軌道の幾何学形状データにアクセスする。
【0019】
ここでは、非接触型検出システムが、軌道の側方の周辺部の画像対を撮影するステレオカメラシステムと、基準点の検出および位置特定のための評価装置とを含むと有利である。このようなシステムにより、誤りをほとんど起こすことなく極めて正確な結果が提供される。
【0020】
一発展形態では、車両フレームにGNSS受信装置が接続されており、軌道に対する車両フレームの位置を特定する位置測定装置が車両フレームに配置されている。位置測定装置により、軌道に対する車両フレームの都度の相対運動が検出される。これらの相対運動を連続して計算によって補償することにより、軌道位置に対する正確な関連付けを有する、測定車両の正確なGNSS位置が得られる。結果として、記憶されたGNSS位置データが得られ、これらのGNSS位置データは、その後、計算ユニットを用いて、基準点に関連付けられかつ検出された軌道の幾何学形状データによって調整される。
【0021】
以下では、添付の図面を参照し、本発明を例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】基準点の横にある、軌道上の測定車両を示す図である。
図2】軌道の軌跡を示す図である。
図3】対応付けられた弦と実際間隔とを有する軌跡区間の平面図である。
図4図3についての詳細図である。
図5】対応付けられた弦を有する軌跡の側面図である。
図6】ブロック図およびデータ処理を示す図である。
図7】ジオリファレンスされた軌跡の検出を示す図である。
図8】代替的な評価ロジックのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、車体3が組み付けられている車両フレーム2を備えた測定車両1が示されている。測定車両1は、レール走行装置4によって軌道5上を走行可能である。わかりやすくするため、車両フレーム2は、車体3を含めて、レール走行装置4から持ち上げられて示されている。軌道5の側方の周辺部には、マーキングボルト7を備えた支柱6が設けられている。マーキングボルト7の先端部により、軌道5の位置特定のための基準点A,B,Cが定められる。他のマーキングオブジェクト、例えば、刻印された線またはカラーフィールドを有するマーカーによって基準点A,B,Cを定めることも可能である。さらに、バーコードまたは文字・数字列のような一意の標識によって基準点A,B,Cを特徴付けることが可能である。
【0024】
レール走行装置4は好適には、台車として構成されている。前方の台車には、それぞれの基準点A,B,Cを自動で検出するための非接触型検出システム8が配置されている。測定走行中、ステレオカメラシステム9によって画像対が連続して撮影されて、評価装置10によって評価される。画像対の1つにマーキングボルト7またはその基準点マーカーがパターン認識によって識別されるとただちに、対応する基準点A,B,Cの位置特定が行われる。例えば、軌道5に対するそれぞれの基準点A,B,Cの実際距離H,Vが水平方向および垂直方向に特定され、軌道長手方向sにおけるそれぞれの位置も記録される。
【0025】
検出システム8は好適には、測定フレーム11に配置される。測定フレーム11は台車の車軸に結合されており、これにより、車輪の運動は、ばね作用なしに測定フレーム11に伝達される。したがって、軌道に対し、測定フレーム11の横方向運動もしくは往復運動だけが発生する。これらの運動は、測定フレーム11に配置された位置測定装置12によって検出される。位置測定装置12は、例えば、レーザラインセクションセンサとして構成される。
【0026】
軌道5に対する検出システム8の位置特定の他に、この位置測定装置12は、測定フレーム11に組み付けられた慣性測定システム13のコンポーネントとしても使用される。慣性測定システム13は、中心的な要素として慣性測定ユニット14を含んでいる。慣性測定ユニット14により、測定走行中に、軌道5の軌跡15が検出され、軌道に対する、慣性測定ユニット14の相対運動は、位置測定装置12のデータによって補償される。さらに、慣性測定システム13は、後続の評価のために修正される、軌道5の軌跡15を出力するナビゲーションプロセッサ16を含んでいる。
【0027】
車両フレーム2には、GNSS受信装置18の支持体17が固定されて結合されている。GNSS受信装置18は、測定車両1のGNSS位置20を正確に検出するために互いに調整された複数のGNSSアンテナ19を含んでいる。軌道5に対する車両フレーム2の往復運動を検出するために、車両フレーム2には別の位置測定装置12が配置されている。ここでも、例えば、レーザラインセクションセンサが使用される。システムプロセッサ21を用いて、GNSSアンテナ19によって受信される複数の信号の共通の評価と、軌道5に対する相対運動の補償とが行われる。
【0028】
測定走行の前に、測定システム8,13,18の幾何学的な関係の較正を行うと有意義である。この際には台車の測定フレーム11に対し、基準点検出システム8およびGNSSアンテナ19の位置および配向が特定される。慣性測定ユニット14の位置および配向は、測定フレーム11の構成によって既知である。較正の結果は、慣性測定ユニット14に対して相対的な、基準点検出システム8の変位およびねじれである。
【0029】
図2には、測定走行時に検出された軌道5の軌跡15が描かれている。軌跡15の座標は、測定車両1に配置された計算ユニット22を用いて、局所水平座標系XYZに変換される。この座標系XYZは、その原点を軌跡15の始点に有する。X軸は北の方向を、Y軸は東の方向を、Z軸は下を指し示している。さらに、基準点検出システム8を用いて、測定区間に沿って設けられている基準点A,B,Cが検出される。これにより、基準点に関連付けられた、測定区間の軌道幾何学形状が検出されて、計算ユニット22に接続された記憶ユニットに記憶される。
【0030】
次の方法ステップでは、図3に示されているように、検出されて記憶された軌跡15が、計算ユニット22によって軌跡区間15AB,15BCに分割される。ここでは、それぞれの区間始点が、第1基準点AもしくはBに、それぞれの区間終点が、第2基準点BもしくはCに関連付けられる。例えば、区間始点および区間終点のそれぞれの決定は、軌跡15に対して垂直方向に配向された基準面であって、対応付けられた基準点A,B,Cがある基準面において行われる。好適にはこの基準面に軌道接続点23AB,23BCもあり、これらの軌道接続点により、基準点A,B,Cに対する、軌道5の参照目標位置27’が定められる。
【0031】
さらに、それぞれの軌跡区間15AB,15BCについて、計算ユニット22を用いて、仮想の弦24AB,24BCを決定する。それぞれの弦24AB,24BCの始点は、対応付けられた局所座標系xABABABもしくはxBCBCBCの原点を形成する。それぞれのx軸xAB,xBCは、対応付けられた弦24AB,24BCの方向に配向されている。それぞれのy軸yAB,BCは水平に延びており、z軸zAB,BCは下を指し示している。有利には、図3に示されているように、それぞれの弦24AB,24BCの始点は、対応付けられた軌跡区間15AB,15BCの区間始点と一致する。
【0032】
このような幾何学的な定義により、計算ユニット22は、それぞれの軌跡区間15AB,15BCについて、連続してまたはあらかじめ定められた間隔で、軌跡15と、それぞれ対応付けられた弦24AB,24BCとの間の実際間隔25を計算する。計算されたこれらの実際間隔25は、矢の長さとも称され、軌道位置補正値の後続の計算のためのデータベースを形成する。ここでは、軌道5の目標経過27に関連付けられて、目標間隔26の設定が行われる。この目標経過27は、最初は直線、円弧および緩和曲線などのあらかじめ設定される軌道幾何学形状区間の列である。さらに、基準点A,B,Cに対する接続点23,23の既知の目標距離値H’,V’により、軌道5の参照目標位置27’が設定可能である。続いて有効であり得るのは、基準点A,B,Cの既知の座標Xを用いて、絶対的な軌道幾何学形状36を求めることである。
【0033】
図4および図5には、基準点Aの領域における幾何学的な関係が、それぞれ平面図および側面図で示されている。これに対応して、間隔25,26が、図4では水平方向のベクトルとして、図5では垂直方向のベクトルとして示されている。補正値28を計算するために軌道5の弦24ABと、軌跡区間15ABと、目標経過27とを使用する。基準座標系は、対応付けられた局所座標系xABABABである。
【0034】
軌道5のそれぞれの箇所において生じる実際間隔25は、目標間隔26と比較され、これにより、この比較から補正値28が導出される。補正値28は、実際間隔25(実際矢の長さ)と、あらかじめ設定される軌道幾何学形状(弧の曲率)とから直接に導出することも可能である。具体的には、図4では軌道5の側方の変位についての補正値28が、図5では、軌道5の持ち上げについての補正値28が得られる。
【0035】
基準点A,B,Cのリスト(例えば、軌道長手方向sにおけるキロメートル距離標)から、軌道5のそれぞれ基準点A,B,Cと、対応付けられた接続点23との間の水平方向の目標距離H’および垂直方向の目標距離V’とがわかる。さらに、測定走行中には、非接触型検出システム8を用いて検出される、軌道5の実際位置とそれぞれの基準点A,B,Cとの間の実際距離H,Vがわかる。この実際距離は好適には、軌道経過に対して垂直方向に配向されたベクトルH,Vとして特定される。
【0036】
続いて、既知の目標距離H’,V’と、検出された実際距離H,Vとからそれぞれの差分29が形成される。それぞれの差分29により、後続の軌道処理において、基準点A,B,Cについて参照される軌道5の目標位置27’を得るために補正値28が調整される。例えば、それぞれの軌跡区間15ABに関連する、目標距離H’,V’と実際距離H,Vとの間の差分29は、修正された補正値28’を得るために、均一に補正値28に適用される。
【0037】
有利にはこの計算プロセスは、軌道5の2つのレール30について別々に実行される。この際にはそれぞれの軌跡15として、対応付けられたレール30のゲージコーナーが検出されて、レール30の目標位置と比較される。
【0038】
関与するシステムの例示的な略図は、図6に示されている。計算ユニット22には、測定システム8,13,18の測定結果が結合される統合アルゴリズム31が設けられている。参照軌道幾何学形状の統合についてのベースを形成するのは、基準点A,B,Cの座標である。統合プロセスにはGNSS位置20も取り込まれ、これにより、結果として、正確なGNSS座標を有する軌跡15が得られる(ジオリファレンスされた軌道幾何学形状)。この際に注意すべきであるのは、すべての座標が、共通の座標系XYZに関連付けられることである。
【0039】
慣性測定システム13によって最初に、慣性測定ユニット14の修正された測定データ32が特定される。これらのデータは、ナビゲーションプロセッサ16に供給されて、一時的な軌跡15が得られる。ここから統合アルゴリズム31を用いて、軌道5の相対的な経過33(相対的な軌道幾何学形状)が計算される。
【0040】
ナビゲーションプロセッサ16は、慣性ナビゲーションの公知の原理にしたがって動作し、カルマンフィルタを用いて未知のパラメータ、都度の位置、都度の速度、および都度の配向を計算する。この際には、未知のパラメータの特定の他に、慣性測定ユニット14の、場合によって起こり得る、センサの不正確さも評価される。対応する補正データ34は、慣性測定ユニット14の測定結果の補正に使用される。
【0041】
評価アルゴリズム35は、検出された基準点A,B,Cについて、軌跡15を軌跡区間15AB,15BCに分割し、それぞれの弦24AB,24BCに対応付ける。計算された実際間隔25と目標間隔26とを比較することにより、軌道5の水準測量および修復のための補正値28が得られる。
【0042】
図7では、測定、補正およびデータ結合の結果が説明されている。測定走行中には最初に、慣性測定システム13を用いて測定データ32の検出が行われる。さらに、基準点A,B,Cの座標およびGNSS位置20が検出される。3次元軌跡15の最終的な正しい位置は、ジオリファレンシングから得られる。
【0043】
図8に示された略図は、絶対的な軌道幾何学形状を特定するために利用される。ここでは、計算ユニット22を用いて、個々の測定システム8,18,13の測定結果が、基準点A,B,Cの座標Xにより、カルマンフィルタを利用して調整される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8