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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ハイドロフラックス支援型緻密化
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/622 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
C04B35/622
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022520665
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2020053729
(87)【国際公開番号】W WO2021067551
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】62/910,743
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398071440
【氏名又は名称】ザ・ペン・ステイト・リサーチ・ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】The Penn State Research Foundation
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マリア、ジョン - ポール
(72)【発明者】
【氏名】ロウワム、セアラ
(72)【発明者】
【氏名】フロイド、リチャード
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-520739(JP,A)
【文献】特開2005-306725(JP,A)
【文献】特開平08-290949(JP,A)
【文献】特表2018-537393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/622
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緻密化される混合物を形成する方法であって、
輸送相を無機化合物と組み合わせて混合物を形成することを含み、前記輸送相は、緻密化中の微粒子材料の再分配をアシストするように構成され
前記混合物が形成される前、最中、又は後に、前記輸送相に構造水を添加して、水が1重量%~20重量%の範囲内にある固溶体を形成する、方法。
【請求項2】
緻密化される混合物を形成する方法であって、
輸送相を無機化合物と組み合わせて混合物を形成することを含み、前記輸送相は、緻密化中の微粒子材料の再分配をアシストするように構成され、
前記混合物が形成される前、最中、又は後に、前記輸送相に構造水を添加して、水が0.1重量%~20重量%の範囲内にある固溶体を形成する、方法。
【請求項3】
前記輸送相が、水、可溶性塩と混合した水、C1-12アルコール、ケトン、エステル、有機酸、及び可溶性塩と混合した有機酸のいずれか一つ又は組合せを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記輸送相が、100℃~1000℃の範囲内の沸点を有するように構成されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記無機化合物が、セラミック、金属酸化物、リチウム金属酸化物、非リチウム金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属セレン化物、金属フッ化物、金属テルル化物、金属ヒ化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属窒化物、金属硫化物、及び金属炭化物のいずれか一つ又は組合せを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記無機化合物が、ZnO、LiMoO、KHPO、V、NaCl、MoO、NaCl、LiCO、BiVO、LiFePO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、WO、ZnTe、CsSO、AgVO、LiCoPO、Li0.5xBi1-0.5xMo1-x、V、AgI、LiMoO、NaZrO、KHPO、V、CuCl、NaMo、BaTiO、Ca(PO(OH)、ZnO、ZrF、KMo、NaNO、(LiBi)0.5MoO、Bi、α-Al、ZnMoO、MgP2O、CsBr、ZrO2 PSZ、LiWO、BaMoO、MgO、ZrO2 Cubic、NaWO、CsWO、PbTe、KVO、NaCO、BiTe、BiVO、CaCo、LiVO、KPO、SrTiO、LiCoO、BaCl、Bi、B、KOH、PbO、及びNaCOのいずれか一つ又は組合せを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
焼結材料用の混合配合物であって、
無機化合物と、
緻密化中の微粒子材料の再分配をアシストするように構成されている輸送相と、
を含み、
前記輸送相が、有機塩、無機塩、又はハイブリッド塩と1重量%~20重量%の範囲内の水との固溶体であり、水と塩の組合せにより、緻密化を促進するために微粒子相に必要な溶解性を生じる、混合配合物。
【請求項8】
焼結材料用の混合配合物であって、
無機化合物と、
緻密化中の微粒子材料の再分配をアシストするように構成されている輸送相と、
を含み、
前記輸送相が、有機塩、無機塩、又はハイブリッド塩と0.1重量%~20重量%の範囲内の水との固溶体であり、水と塩の組合せにより、緻密化を促進するために微粒子相に必要な溶解性を生じる、混合配合物。
【請求項9】
前記輸送相が、水、可溶性塩と混合した水、C1-12アルコール、ケトン、エステル、有機酸、及び可溶性塩と混合した有機酸のいずれか一つ又は組合せを含む、請求項7又は8に記載の混合配合物。
【請求項10】
前記輸送相が、100℃~1000℃の範囲内の沸点を有するように構成されている、請求項7又は8に記載の混合配合物。
【請求項11】
前記無機化合物が、セラミック、金属酸化物、リチウム金属酸化物、非リチウム金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属セレン化物、金属フッ化物、金属テルル化物、金属ヒ化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属窒化物、金属硫化物、及び金属炭化物のいずれか一つ又は組合せを含む、請求項7又は8に記載の混合配合物。
【請求項12】
前記無機化合物が、ZnO、LiMoO、KHPO、V、NaCl、MoO、NaCl、LiCO、BiVO、LiFePO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、WO、ZnTe、CsSO、AgVO、LiCoPO、Li0.5xBi1-0.5xMo1-x、V、AgI、LiMoO、NaZrO、KHPO、V、CuCl、NaMo、BaTiO、Ca(PO(OH)、ZnO、ZrF、KMo、NaNO、(LiBi)0.5MoO、Bi、α-Al、ZnMoO、MgP2O、CsBr、ZrO2 PSZ、LiWO、BaMoO、MgO、ZrO2 Cubic、NaWO、CsWO、PbTe、KVO、NaCO、BiTe、BiVO、CaCo、LiVO、KPO、SrTiO、LiCoO、BaCl、Bi、B、KOH、PbO、及びNaCOのいずれか一つ又は組合せを含む、請求項7又は8に記載の混合配合物。
【請求項13】
緻密化された材料を形成する方法であって、
輸送相を無機化合物と組み合わせて混合物を形成すること、
前記混合物中にフラックスを形成させること、
圧力及び温度を適用して、物質輸送及び粒子固結を促進し、圧密体である緻密で堅牢な多結晶体をもたらすこと、
を含み、
最初に固体であった輸送相材料の高温溶融物が、圧力及び温度の前記適用中に溶融して前記圧密体のある位置で前駆体材料を溶解し、前記圧密体の別の位置で新しい結晶の核生成を促進すること、をさらに含む、方法。
【請求項14】
緻密化された材料を形成する方法であって、
輸送相を無機化合物と組み合わせて混合物を形成すること、
前記混合物中にフラックスを形成させること、
圧力及び温度を適用して、物質輸送及び粒子固結を促進し、圧密体である緻密で堅牢な多結晶体をもたらすこと、
を含み、
相図における水熱及びフラックスベースの結晶成長が交差する点が、前記輸送相の沸点又はその近くの温度で物質輸送相を導入するように、フラックス成長と水熱成長との間の領域にまたがるハイドロフラックスを生成することをさらに含み、前記物質輸送相は非水溶液である、方法。
【請求項15】
前記緻密化された材料を生成することは、本質的に、
輸送相を無機化合物と組み合わせて前記混合物を形成すること、
前記輸送相を前記無機化合物と組み合わせる前、最中、又は後に前記輸送相に水を添加すること、
前記混合物中にフラックスを形成させること、
圧力及び温度を適用して、前記無機化合物の無機材料の粒子間の物質輸送を活性化し、緻密化をもたらすこと、
初期の粒子圧密体を緻密で堅牢な多結晶体に変換するのに十分な時間を提供すること、
からなる、請求項13又は14に記載の方法
【請求項16】
前記輸送相が前記無機化合物を部分的に可溶化して混合物を形成すること、をさらに含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
前記輸送相を前記無機化合物と組み合わせる前、最中、又は後に前記輸送相に水を添加すること、
圧力及び温度の前記適用中に、前記添加された水が前記輸送相の溶融温度を抑制することを可能にし、高温でのより迅速な輸送又は正味のより低温での輸送のいずれかを引き起こすこと、
をさらに含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項18】
圧力を適用することが、30Mpa~5,000Mpaの範囲内で圧力を適用することを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項19】
温度を適用することが、100℃~300℃の範囲内で温度を適用することを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2019年10月4日に出願された米国仮出願第62/910,743号に関連し、その利益を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
<連邦政府が後援する研究又は開発の記載>
本発明は、米国国立科学財団によって授与された助成金番号IIP1361571及びIIP1361503の下で政府援助を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
<発明の分野 >
実施形態は、焼結のための輸送相(溶融温度を抑制するためにプロセス中に結合水を導入することによって形成される)を導入する改良されたハイドロフラックス支援型緻密化プロセス(hydroflux assisted densification process)に関し、輸送相は非水性材料(non-aqueous material)である。このプロセスは、低温範囲(400℃以下、好ましくは200℃以下)での焼結を容易にし、従来のプロセスを使用した場合に必要となる追加の後処理ステップを必要とせずに、80%を超える(好ましくは90%を超える)緻密化を実現することができる。
【背景技術】
【0004】
従来の緻密化システム及び方法では、溶解プロセスと再沈殿プロセスとを仲介する因子を利用することができない。(もし適切に利用することができれば)これらのプロセスを用いてセラミック粉末配合物を調整し、低温でより容易に緻密化することができる。
【0005】
材料の緻密化及び焼結に関連する既知のシステム及び方法の例は、以下の文献から理解することができる。米国特許第8,313,802号、米国特許第4,393,563号、米国特許第4,599,277号、米国特許第5,098,469号、米国特許出願公開第2017/0088471号、特許出願公開第2008/0171647号、特許出願公開第2004/0159390号、国際公開第2019/040864号、及びKahari,Hanna他,“Improvements and modifications to room-temperature fabrication method for dielectric LiMoO ceramics”,Journal of the American Ceramic Society,2015年1月22日,Vol.98, No.3,687頁-689頁。
【発明の概要】
【0006】
実施形態は、焼結のための輸送相(溶融温度を抑制するためにプロセス中に水を導入することによって形成される)を導入する改良されたハイドロフラックス支援型緻密化プロセス(hydroflux assisted densification process)に関し、輸送相は固溶体として最もよく分類される非水性材料である。このプロセスは、低温範囲(300℃以下)での焼結を容易にし、従来のプロセスを用いた場合に必要となる追加の後処理ステップを必要とせずに、90%を超える緻密化を実現することができる。プロセス中に使用される圧力及び含水量を制御することにより、溶解-再沈殿又は他の輸送メカニズムに関連する緻密化メカニズムを強化することができ、それにより、緻密化できる材料の組成スペクトルの範囲を広げ、必要な輸送相の量を減らし、緻密化された材料の特性を向上させることができる。一例として、特定の水和酢酸塩粉末を使用することにより、水性輸送相に基づく液体溶液と比較して、低温緻密化プロセスにより良く適した固溶体フラックス混合物を生成することができる。
【0007】
例示的な実施形態では、緻密化される混合物を形成する方法は、輸送相を無機化合物と組み合わせて混合物を形成することを含み、輸送相は、緻密化中の微粒子材料の再分配をアシスト(assist)するように構成されている。
【0008】
いくつかの実施形態では、方法は、混合物が形成される前、最中、又は後に、輸送相に構造水を添加して、水が1重量%~20重量%の範囲内にある固溶体を形成する(すなわち、水は固体内に取り込まれ、混合物は結晶性固体のままである)ことを含む。水は輸送相に添加され、水が1重量%~20重量%の範囲内にある固溶体を形成する。注)水の濃度は、緻密化が開始する温度と、輸送相の「緻密化力(densification power)」とを調整する。すなわち、完全な密度を達成するには一定量の水が必要である。
【0009】
いくつかの実施形態では、輸送相は、水、可溶性塩と混合した水、C1-12アルコール、ケトン、エステル、有機酸、及び可溶性塩と混合した有機酸のいずれか一つ又は組合せを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、輸送相は、100℃~1000℃の範囲内の沸点を有するように構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、無機化合物は、セラミック、金属酸化物、リチウム金属酸化物、非リチウム金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属セレン化物、金属フッ化物、金属テルル化物、金属ヒ化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属窒化物、金属硫化物、及び金属炭化物のいずれか一つ又は組合せを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、無機化合物は、ZnO、LiMoO、KHPO、V、NaCl、MoO、NaCl、LiCO、BiVO、LiFePO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、WO、ZnTe、CsSO、AgVO、LiCoPO、Li0.5xBi1-0.5xMo1-x、V、AgI、LiMoO、NaZrO、KHPO、V、CuCl、NaMo、BaTiO、Ca(PO(OH)、ZnO、ZrF、KMo、NaNO、(LiBi)0.5MoO、Bi、α-Al、ZnMoO、MgP2O、CsBr、ZrO2 PSZ、LiWO、BaMoO、MgO、ZrO2 Cubic、NaWO、CsWO、PbTe、KVO、NaCO、BiTe、BiVO、CaCo、LiVO、KPO、SrTiO、LiCoO、BaCl、Bi、B、KOH、PbO、及びNaCOのいずれか一つ又は組合せを含む。
【0013】
例示的な実施形態では、焼結材料用の混合配合物は、無機化合物と、緻密化中の微粒子材料の再分配をアシスト(assist)するように構成されている輸送相とを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、輸送相は、有機塩、無機塩、又はハイブリッド塩と1重量%~20重量%の範囲内の水との固溶体であり、水と塩との組合せにより、微粒子相にとって緻密化を促進するために必要な溶解性を生じる。
【0015】
いくつかの実施形態では、輸送相は、水、可溶性塩と混合した水、C1-12アルコール、ケトン、エステル、有機酸、及び可溶性塩と混合した有機酸のいずれか一つ又は組合せを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、輸送相は、100℃~1000℃の範囲内の沸点を有するように構成されている。
【0017】
いくつかの実施形態では、無機化合物は、セラミック、金属酸化物、リチウム金属酸化物、非リチウム金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属セレン化物、金属フッ化物、金属テルル化物、金属ヒ化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属窒化物、金属硫化物、及び金属炭化物のいずれか一つ又は組合せを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、無機化合物は、ZnO、LiMoO、KHPO、V、NaCl、MoO、NaCl、LiCO、BiVO、LiFePO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、WO、ZnTe、CsSO、AgVO、LiCoPO、Li0.5xBi1-0.5xMo1-x、V、AgI、LiMoO、NaZrO、KHPO、V、CuCl、NaMo、BaTiO、Ca(PO(OH)、ZnO、ZrF、KMo、NaNO、(LiBi)0.5MoO、Bi、α-Al、ZnMoO、MgP2O、CsBr、ZrO2 PSZ、LiWO、BaMoO、MgO、ZrO2 Cubic、NaWO、CsWO、PbTe、KVO、NaCO、BiTe、BiVO、CaCo、LiVO、KPO、SrTiO、LiCoO、BaCl、Bi、B、KOH、PbO、及びNaCOのいずれか一つ又は組合せを含む。
【0019】
例示的な実施形態では、緻密化された材料を形成する方法は、以下を含む:輸送相を無機化合物と組み合わせて混合物を形成すること;混合物中にフラックスを形成させること;圧力及び温度を適用して、物質輸送(mass transport)及び粒子固結(particle consolidation)を促進し、圧密体(compact)である緻密で堅牢な多結晶体をもたらすこと。
【0020】
いくつかの実施形態では、前記緻密化された材料を生成することは、本質的に以下を含む:輸送相を無機化合物と組み合わせて混合物を形成すること;輸送相を無機化合物と組み合わせる前、最中、又は後に輸送相に水を添加すること;混合物中にフラックスを形成させること;圧力及び温度を適用して、無機化合物の無機材料の粒子間の物質輸送を活性化し、緻密化をもたらすこと;初期の粒子圧密体(initial particle compact)を緻密で堅牢な多結晶体に変換するのに十分な時間(好ましくは数時間、より好ましくは数10分、最も好ましくは1~10分)を提供すること。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、輸送相が無機化合物を部分的に可溶化して、混合物を形成すること、を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、以下を含む:輸送相を無機化合物と組み合わせる前、最中、又は後に輸送相に水を添加すること;圧力及び温度の適用中に、添加された水が輸送相の溶融温度を抑制することを可能にし、高温でのより迅速な輸送又は正味のより低温での輸送のいずれかを引き起こすこと。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、最初に固体であった輸送相材料の高温溶融物が、圧力及び温度の適用中に溶融して圧密体(compact)のある位置で前駆体材料を溶解すること、及び圧密体の別の位置で新しい結晶の核生成を促進することを含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、方法は、相図における水熱及びフラックスベースの結晶成長が交差する点が、輸送相の沸点又はその近くの温度で物質輸送相(mass transport phase)を導入するように、フラックス成長と水熱成長との間の領域(regime)にまたがるハイドロフラックスを生成することを含み、物質輸送相は非水溶液である。
【0025】
いくつかの実施形態では、圧力を適用することは、30Mpa~5,000Mpa(好ましくは<5Gpa、より好ましくは<1Gpa、最も好ましくは<0.1Gpa)の範囲内で圧力を適用することを含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、温度を適用することは、100℃~300℃の範囲内で温度を適用することを含む。
【0027】
本発明のさらなる特徴、態様、目的、利点、及び可能な用途は、図、及び添付の特許請求の範囲と組み合わせて、以下に記載する例示的な実施形態及び実施例の検討から明らかになるであろう。
【0028】
本発明の上記及び他の目的、態様、特徴、利点及び可能な用途は、以下の図面と併せて提示される以下のより詳細な説明からより明らかになるであろう。図面に用いられている同様の参照番号は、同様の構成要素を識別する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】焼結プロセスの一実施形態の例示的なフロー図である。
【0030】
図2】本プロセスの一実施形態を介して達成することができるフラックスの温度の抑制を示す温度vs.水プロットである。
【0031】
図3】本プロセスの一実施形態を実施するために使用され得る例示的なシンテロメーター(sinterometer)である。
【0032】
図4図3のシンテロメーターの一実施形態で使用され得る例示的なペレットダイである。
【0033】
図5】プロセスの一実施形態を介して緻密化された結果として得られたCuO焼結材料、Bi焼結材料、ZnO焼結材料、WO焼結材料、MnO焼結材料、NiO焼結材料、及びBaFe1219(バリウムヘキサフェライト)焼結材料の密度(並びにBaFe1219のXRDプロット)を示す。
【0034】
図6】プロセスの一実施形態を介して緻密化された結果として得られたKNN焼結材料の微細構造画像密度を示す。
【0035】
図7】プロセスの一実施形態を介して緻密化された結果として得られたZnFe焼結材料の微細構造画像密度を示す。
【0036】
図8】正規化された圧密度(normalized compaction)vs.時間のトレースプロットであり、シンテロメーターの一実施形態を介して実施された例示的なプロセスのプロットと、手動プレスを介して実施された例示的なプロセスのプロットである。挿入図は、オペレーターが緻密化する圧密体(compact)に圧力を再適用した手動プレスのトレースにおける不連続性を示す。
【0037】
図9】0.4M Zn(OAc)溶液を用いて、120℃、530MPaで6時間緻密化されたZnO試料の圧密度vs.時間のプロットである。試料密度は、0分、30分、及び6時間で示されている。挿入図は、対応する熱重量分析(TGA)トレースを提示しており、30分の圧密化後に試料には測定可能な質量損失がなく、結合水又は液体の水が残っていないことを示している。
【0038】
図10】プロセスの一実施形態によって300℃以下で緻密化されたセラミックの微細構造画像密度を示す(試料:a)ZnO、b)ZnO、c)CuO、d)Bi、e)ZnFe、f)KNa1-xNbO)。選択した輸送相と最終的な相対密度が、各画像に示されている。
【0039】
図11】輸送相としてNaKを用いて、200℃、530MPaで30分間、プロセスの一実施形態によって緻密化されたZnO試料の微細構造画像密度を示す。すべての試料は、同じ条件を用いて2週間以内に作製されたが、(a)は、明らかな二次相がない緻密な(98%密度)微細構造を示し、(b)は、緻密化しなかった圧密化粉末を示し、(c)は、測定された密度は90%を超えるが、微細構造は二次相で満たされている試料を示す。
【0040】
図12】2体積%の(Na,K)OHを用いて、200℃、530MPaで30分間緻密化されたZnOのSEM画像を示す。(a)の試料は、「乾燥」プレスされて、約80%の密度しか達成しなかったが、(b)の試料は、5体積%のHOが添加されて、97%の密度を達成した。
【0041】
図13】B3B法によって試験した冷間焼結ZnO試料(20体積%の0.8M Zn(OAc)水溶液、120℃、30分、530MPa)の破壊確率vs.破壊応力を示す。実線はベストフィットを表し、破線は90%信頼区間を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の説明は、本発明を実施するために現在想定される例示的な実施形態に関するものである。この説明は、限定的な意味で解釈されるべきではなく、本発明の様々な態様の一般原理及び特徴を説明することのみを目的としてなされている。本発明の範囲は、この説明によって限定されるものではない。
【0043】
図1図4を参照すると、実施形態は、改良されたハイドロフラックス支援型緻密化プロセスに関する。ハイドロフラックス支援型緻密化プロセスは、化合物を焼結するための物質輸送相を緻密化された材料に導入するプロセスであってもよい。多くの場合、物質輸送相は、出発セラミック粉末に添加された水とイオン性塩との固溶体であり、焼結プロセス中に形成され得る。200℃付近での熱処理中に、輸送相は溶融し、緻密化をもたらす圧力下で微粒子材料相を再分配するための輸送相として作用する。このプロセスの実施形態は、低温範囲(例えば、300℃以下)での焼結を容易にし、従来のプロセスを用いた場合に必要となる追加の後処理ステップを必要とせずに、90%を超える(「>90%」)緻密化を実現することができる。
【0044】
プロセス中の圧力及び用いられる含水量を制御することにより、溶解-再沈殿又は他の物質輸送メカニズムに関連する緻密化メカニズムを強化することができる。いくつかの実施形態では、水和酢酸塩粉末の使用により、低温緻密化プロセスにとってより良好な酸化物混合フラックスを生成することができる。本明細書で説明するように、これらのプロセスステップのいずれか一つ又は組合せを用いることにより、緻密化できる材料の組成スペクトルの範囲を広げることができる。これらのプロセスステップは、必要とされる物質輸送相の量の減少にさらにつながる可能性がある。これらのプロセスステップはまた、緻密化された材料の材料特性のより良好な一貫性(例えば、気孔率の減少、均一な固結による特性の改善、より一貫性のある微細構造など)につながる可能性がある。
【0045】
プロセスの実施形態は、焼結プロセスを含むことができる。焼結プロセスは、冷間焼結プロセスであってもよい。冷間焼結プロセスの実施形態は、粒子形態の無機化合物を輸送相と組み合わせることを含むことができる。輸送相は、無機化合物を部分的に可溶化して混合物を形成するように選択することができる。輸送相は、2つ以上の成分相の間の固溶体であることが想定される。中程度の圧力(例えば、30Mpa~5,000Mpaの範囲内)を低温(例えば、100℃~300℃又は150℃~200℃又は150℃~300℃の範囲内)で混合物に適用することができる。圧力及び温度の適用により、物質輸送を促進することができ、仲介された溶解-沈殿又は他の物質輸送現象によって無機化合物の緻密化をもたらす。例えば、圧力の適用により、無機化合物を焼結させるのに必要な力を得ることができる。場合によっては、温度の適用により、輸送相を蒸発させ、可溶化された種を過飽和にし、無機化合物を緻密化することができる。無機化合物を緻密化することにより、焼結材料が形成される。結果として得られた焼結材料は気孔率が減少し、それにより、強度、導電性、透光性、熱容量などの向上につながる可能性がある。想定される用途としては、コンデンサー、永久磁石、耐火物、ニアネットシェイプセラミック、バリスタ、アクチュエータなどが挙げられる。最大のメリットは、低温プロセスにある。これにより、従来の高温焼結では不可能であった、セラミックの粒子サイズと最終的な欠陥の化学的性質とを制御する新しい機能が得られるようになった。粒子サイズと欠陥の化学的性質は、物理的特性を決定する重要な要素である。また、焼結するのに十分な高温に達する前に分解してしまうセラミック体、すなわち、水素貯蔵材料として興味深いMg(OH)を緻密化することができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、水を輸送相に添加して、より低い溶融温度と強化された物質輸送能力とを有する固溶体を作製することができる。焼結プロセス中、混合物内にフラックスが生成される。輸送相に水を添加することにより、圧力と温度を適用したときに顕在化するフラックスの溶融温度を抑制することができる。輸送相-無機混合物により、無機化合物粒子を少量の輸送相に均一にさらし、その結果、無機化合物の固体表面が分解して輸送相に部分的に溶解し、これにより、制御された量の液相が、粒子-粒子界面に意図的に導入される。この輸送相は、場合によっては低温液体を形成するが、輸送相の溶融は本質的な特徴ではない。高温及び高圧では、輸送相は前駆体材料を溶解し、次いで核形成を促進し、溶液からの結晶の成長をもたらす。このように、輸送相は、溶融状態又は場合によっては固体状態のいずれかで、物質輸送、結晶化、及び緻密化のための輸送相として機能する。輸送相に添加された水は、多くのフラックスの融点を抑制し、及び/又はそれらのフラックスによって材料をより効果的に輸送することができ、それにより、フラックス成長と水熱成長との間の領域にまたがるハイドロフラックスが生成される。これらのハイドロフラックス(例えば、ヘキサヒドロキソメタレート)は、物質輸送相(mass transport phase)を生成するために使用することができる。例えば、相図における水熱及びフラックスベースの結晶成長が交差する点が、液体の水を含まずに低温で(輸送相の沸点又はその近くの温度で)物質輸送相を導入する(すなわち、その輸送相は非水溶液である)。物質輸送相の添加と中程度の圧力との組合せにより、比較的低温で焼結させた場合の材料の緻密化を促進することができる。
【0047】
無機化合物粒子の固体粒子の鋭いエッジの溶解が界面領域を減少させ、毛細管力が緻密化のための粒子の再配列を助けることができるように、無機化合物への輸送相の導入を制御すべきであることに留意されたい。十分な外圧と毛細管圧力の補助により、液相が再分配し、粒子間の孔に充填することができると考えられている。一軸圧力を適用すると、固体粒子は急速に再配列することができ、これが集合的に初期の緻密化をもたらす。後続する成長段階(例えば、溶液-沈殿)は、沈殿と緻密化を局所的に促進する過飽和領域を促進する輸送相の再分配によって作り出すことができる(例えば、物質輸送が急速な温度であり、システム内の任意の構成要素の融点又は気化点に近接する可能性がある温度)。これにより、固相及び輸送相に大きな化学的駆動力を引き起こして、高いレベルの緻密化を達成する可能性がある。
【0048】
本明細書に開示される焼結プロセスの実施形態では、物質輸送相によって促進される溶解及び再沈殿事象は、焼結材料について気孔除去及び緻密な微細構造の形成をもたらすことができる。本明細書で実証されるように、輸送相の組成及び圧力の制御により、溶解及び再沈殿プロセスを仲介することができ、無機化合物の配合を調整して、低温でより容易に緻密化できるようにすることができる。これにより、緻密化できる材料の組成スペクトルを拡大することができ、特に、後処理ステップを行うことなく、300℃以下の温度で、90%を超える緻密化が可能な材料の組成スペクトルを拡大することができる。さらに、使用する特定の無機化合物に合わせてフラックスベースの輸送相を調整することで、低温での緻密化をさらに促進することができる。これにより、他の方法で必要となる追加の輸送相をさらに最小限に抑えることができ、それによって焼結材料内の不純物を減少させることができる。
【0049】
いくつかの実施形態では、焼結プロセスを用いて、焼結複合体を生成することができる。例えば、冷間焼結プロセスでは、第1の化合物と第2の化合物を輸送相と組み合わせて使用することができる。第1の化合物と第2の化合物のいずれか1つ又は組合せは、粒子形態であってもよい。第1の化合物は、第2の化合物と同じであっても異なっていてもよい。第1の化合物及び第2の化合物の少なくとも一方は、無機化合物であることが想定される。例えば、第1の化合物は、無機化合物であってもよい。第2の化合物は、無機化合物、有機化合物、ポリマー、金属、ガラス、炭素繊維等とすることができる。輸送相は、第1の無機化合物及び/又は第2の無機化合物を部分的に可溶化して混合物を形成するように選択することができる。混合物には、低温で圧力を適用することができる。圧力及び温度の適用により、一時的な水性環境を介して、輸送相の成分の一部、全部を蒸発させることができ、又は輸送相の成分を蒸発させることができず、第1の化合物及び第2の化合物の緻密化をもたらし、焼結複合材を形成する。任意の数の化合物を使用することができることに留意されたい。
【0050】
いくつかの実施形態では、焼結プロセスを用いて、基材上に焼結材料を生成し、及び/又は基材上に焼結複合体を生成することができる。例えば、プロセスは、少なくとも1つの無機化合物を基材の表面上に堆積することを含むことができる。基材は、金属、セラミック、ポリマーなどであってもよい。プロセスは、少なくとも1つの無機化合物を基材の表面上に堆積させる前、最中、及び/又は後に、粒子形態の少なくとも1つの無機化合物を輸送相と組み合わせることを含むことができる。輸送相は、少なくとも1つの無機化合物を部分的に可溶化して混合物を形成するように選択することができる。混合物には、低温で圧力を適用することができる。圧力及び温度の適用により、一時的な水性環境を介して、輸送相の成分の一部、全部を蒸発させることができ、又は輸送相の成分を蒸発させることができず、少なくとも1つの無機化合物の緻密化をもたらし、基材上に焼結材料及び/又は基材上に焼結複合体を形成させることができる。なお、1つ以上の基材を使用できることに留意すべきである(例えば、層状構造又は積層構造を形成することができる)。例えば、プロセスは、少なくとも1つの無機化合物を第1の基材の表面上に堆積させることを含むことができる。プロセスは、少なくとも1つの無機化合物を第1の基材の表面上に堆積させる前、最中、及び/又は後に、粒子形態の少なくとも1つの無機化合物を輸送相と組み合わせることを含むことができる。輸送相は、少なくとも1つの無機化合物を部分的に可溶化して混合物を形成するように選択することができる。混合物には、低温で圧力を適用することができる。圧力及び温度の適用により、一時的な環境を介して、輸送相の成分の一部、全部を蒸発させることができ、又は輸送相の成分を蒸発させることができず、少なくとも1つの無機化合物の緻密化をもたらし、第1の基材上に焼結材料及び/又は焼結複合体を形成させることができる。プロセスは、焼結材料及び/又は焼結複合体上に第2の基材を形成することを含むことができる。プロセスは、少なくとも1つの無機化合物を第2の基材の表面上に堆積させることを含むことができる。プロセスは、少なくとも1つの無機化合物を第2の基材の表面上に堆積させる前、最中、及び/又は後に、粒子形態の少なくとも1つの無機化合物を輸送相と組み合わせることを含むことができる。輸送相は、少なくとも1つの無機化合物を部分的に可溶化して混合物を形成するように選択することができる。混合物には、低温で圧力を適用することができる。圧力及び温度の適用により、一時的な水性環境を介して、輸送相の成分の一部、全部を蒸発させることができ、又は輸送相の成分を蒸発させることができず、少なくとも1つの無機化合物の緻密化をもたらし、第2の基材上に焼結材料及び/又は焼結複合体を形成させることができる。
【0051】
焼結プロセスの一実施形態を実施する例示的な方法は、無機化合物を粉末の形態に変換することを含むことができる。無機化合物は、例えば、微粉末にすることができる。粉末材料の粒子サイズは、1ナノメートルから100マイクロメートルの範囲とすることができる。これは、無機化合物を粉砕プロセス(例えば、研削、ミリング、ボールミリング、摩耗ミリング、振動ミリング、ジェットミリングなど)によりミリング粉砕することによって達成することができる。方法は、無機化合物を輸送相と組み合わせることをさらに含むことができる。方法は、輸送相を無機化合物と組み合わせる前、最中、又は後に輸送相に水を添加することをさらに含むことができる。方法は、輸送相が無機化合物を部分的に可溶化して混合物を形成することをさらに含むことができる。方法は、混合物中にフラックスを形成することをさらに含むことができる。方法は、圧力を適用して、一時的な水性環境を介して輸送相を蒸発させ、仲介された溶解-沈殿プロセスによって無機化合物の緻密化をもたらすことを、さらに含むことができる。方法は、場合によっては、温度を適用して、輸送相を蒸発させ、可溶化された種を過飽和にし、無機化合物を緻密化することを、さらに含んでもよい。
【0052】
例えば、混合物は、シンテロメーター(sinterometer)100のダイ110上に配置することができる。シンテロメーター100は、線形変位センサ108を備えた定圧油圧プレス102とすることができる。油圧プレス102は、ペレットダイ110と共にロードフレーム106に固定することができる。ペレットダイ110は、ある体積の混合物を受け入れて、保持するように構成することができる。油圧プレス102は、油圧シリンダ104をペレットダイ110に向けて前進させることによって、混合物に圧力を付与するように作動させることができる。ペレットダイ110及び荷重フレーム106は、混合物に力を伝達するように油圧シリンダ104の力に耐えるように構成され、それによって混合物上に圧力を付与することができる。線形変位センサ108は、油圧プレス102の油圧シリンダ104に取り付けられ、適用される圧力の代わり(proxy)としてその線形変位を測定するように構成することができる。適用される圧力は、30Mpaから5,000Mpaの範囲内であることが想定される。圧力を適用することにより、輸送相が蒸発する間、無機粒子の焼結を助けることができる。ペレットダイ110は、ドリルブッシュ114及び少なくとも1つのパンチ116を受け入れるように構成されたシャフトカプラー112とすることができる。シャフトカプラー112は、ステンレス鋼から作製することができる。ドリルブッシュ114及び少なくとも1つのパンチ116は、炭化タングステンから作製することができる。ヒーターバンド118は、シャフトカプラー112に取り外し可能に固定することができ、ペレットダイ110に熱を適用するための電源に接続することができ、混合物がその中に配置されるときにその熱が混合物に伝達される。適用される温度は、300℃以下であることが想定される。より具体的には、適用される温度は、輸送相の沸点又はその近くの温度とすることができる。例えば、適用される温度は、輸送相の沸点より0℃から400℃高い範囲内とすることができる。熱を適用することにより、輸送相を蒸発させ、可溶化された種を過飽和にし、無機化合物を緻密化して、焼結材料及び/又は焼結複合体を形成することができる。
【0053】
例示的な実施形態では、第1のパンチ116は、カプラー112に挿入され、混合物は、第1のパンチ116の上に載るようにカプラー112に堆積される。第2のパンチ116は、混合物の上に載るようにカプラー112に挿入される。第1のパンチ116が荷重フレーム106に押し付けられた状態で、油圧シリンダ104を前進させて第2のパンチ116に圧力を付与することができる。油圧シリンダ104をさらに前進させると、第1のパンチ116及び第2のパンチ116が混合物に圧力を付与する。
【0054】
方法は、圧力及び/又は温度の適用中に、添加された水がフラックスの溶融温度を抑制することを可能にし、無機化合物の固体表面を分解させ、輸送相に部分的に溶解させることを、さらに含むことができる。方法は、無機材料の高温溶融物が、前駆体材料を溶解し、核形成を促進し、溶液からの結晶の成長をもたらすことを、さらに含むことができる。方法は、相図における水熱及びフラックスベースの結晶成長が交差する点が、液体の水を含まずに低温で(輸送相の沸点又はその近くの温度で)物質輸送相(mass transport phase)を導入するように、フラックス成長と水熱成長との間の領域(regime)にまたがるハイドロフラックスを生成することを、さらに含むことができる。
【0055】
輸送相は、無機又は無機-有機又は有機-有機固溶体であることが想定される。輸送相は、水、イオン性塩又は有機塩と混合した水、C1-12アルコール、ケトン、エステル、有機酸、可溶性塩と混合した有機酸などのいずれか一つ又は組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、C1-12アルコール、ケトン、エステル、有機酸、無機水酸化物、酢酸塩、ギ酸塩、又は可溶性塩と混合した有機酸のいずれかを、水と組み合わせて水溶液を形成することができる。例えば、C1-12アルコール、ケトン、エステル、有機酸、又は可溶性塩と混合した有機酸のいずれかを水と組み合わせて、0.1~20モル%の水を含む固溶体である輸送相を形成することができる。いくつかの実施形態では、輸送相にその他の成分を添加して、輸送相のpH、動力学などを制御し、変更し、又は影響を与えることができる。
【0056】
無機化合物は、セラミック、金属酸化物、リチウム金属酸化物、非リチウム金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属セレン化物、金属フッ化物、金属テルル化物、金属ヒ化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物などのいずれか一つ又は組合せであることが想定される。いくつかの具体的な無機化合物としては、ZnO、LiMoO、KHPO、V、NaCl、MoO、NaCl、LiCO、BiVO、LiFePO、Li1.5Al0.5Ge1.5(PO、WO、ZnTe、CsSO、AgVO、LiCoPO、Li0.5xBi1-0.5xMo1-x、V、AgI、LiMoO、NaZrO、KHPO、V、CuCl、NaMo、BaTiO、Ca(PO(OH)、ZnO、ZrF、KMo、NaNO、(LiBi)0.5MoO、Bi、α-Al、ZnMoO、MgP2O、CsBr、ZrO2 PSZ、LiWO、BaMoO、MgO、ZrO2 Cubic、NaWO、CsWO、PbTe、KVO、NaCO、BiTe、BiVO、CaCo、LiVO、KPO、SrTiO、LiCoO、BaCl、Bi、B、KOH、PbO、NaCOなどを挙げることができる。
【0057】
図5を参照すると、例示的な実施形態において、51:49:モル%比のNaOH:KOH:HO輸送相を、無機化合物としてのCuOに添加して混合物を形成し、無機化合物としてのBiに添加して別の混合物を形成した。これらの混合物には、(Na,K)OH:HOハイドロフラックスが形成されるように、熱と圧力を加えることができる。このプロセスにより、密度97%のCuO焼結材料と密度95%のBi焼結材料とを、1つのステップで生成することができる。CuOやBiなどの無機物は、歴史的に冷間焼結後の熱処理なしで90%を超える密度に耐えてきたことに留意する必要がある。NaOH:KOH:HO輸送相と混合される他の無機化合物は、ZnO、WO、MnO、及びNiOとすることができ、結果として、以下の密度を有する。ZnO=98%密度、CuO-97%密度、Bi-95%密度、WO-95%密度、MnO-95%密度、NiO-82%密度。
【0058】
図6図7を参照すると、プロセスの実施形態により、300℃以下の温度で機能性三元系材料を緻密化することができる。例えば、輸送相を、無機化合物としてのニオブ酸カリウムナトリウム(KNN)に添加して混合物を形成し、無機化合物としてのフェライト亜鉛(ZnFe)に添加して別の混合物を形成することができる。これらの混合物には、熱と圧力を加えることができる。このプロセスにより、密度90%のKNN焼結材料(図6参照)と密度96%のZnFe焼結材料(図7参照)とを、それぞれ1つのステップで生成することができる。
【0059】
本明細書に記載されているように、低温での緻密化をさらに促進するために、使用する特定の無機化合物に合わせて、フラックスベースの輸送相を調整することができる。例えば、酸化物無機化合物の場合、LiOAc-2HO:NaOAc-3HO:KOAcの共晶30:32:38モル%混合物を輸送相として使用することができる。上記のように、NaOH:KOH:HOの51:49モル%の共晶を輸送相として使用することも可能である。酢酸共晶混合物を選択できるのは、酢酸配位子が低温緻密化プロセスで有利な場合があるからである。試験結果は、多くの酸化物タイプの無機化合物について、酢酸塩混合物と比較して共晶水酸化物混合物がより良いフラックスになり得ることを示している。
【0060】
後述するように、圧力、温度、及び含水量の制御、並びに特定のフラックスの使用を評価するために、様々な実験を行った。実験中、いくつかの焼結材料試料は、緻密で均一な微細構造を有するが、他の焼結材料試料は、全く緻密化しないか、部分的にしか緻密化せず、微細構造中にかなりの量の二次相が存在する(すなわち、製造される焼結材料試料には一貫性のない微細構造があった)ことが注目された。試験結果は、含水量を正確に制御することにより、微細構造の一貫性を改善することができることを示している。試験結果は、圧力のより良い制御及び特定のフラックスの使用により、結果として得られる焼結材料の材料特性をさらに向上させることができることを示している。
【0061】
実験中、セラミック粉末(例えば、無機化合物)をボールミリングして、凝集体を分離した。次に、セラミック粉末を秤量し、所望の量の輸送相を添加した。添加した輸送相の量は、数体積パーセントのオーダーであった。固体輸送相を、次の2つの方法のいずれかを介して添加した。1)粉末状の固体として、又は水溶液(輸送相の液体の水を除去するために、その後80℃の真空オーブンで乾燥した水溶液)として。輸送相を、Flacktek SpeedMixerを使用してセラミック粉末と混合し、均一な分布を促進した。混合した粉末を、ペレットダイ110に注意深く注ぎ、次いで、最大530MPaの圧力下で室温から300℃までの温度に加熱した。冷間焼結時間は、選択した材料系と輸送相に応じて数分から数時間の範囲になるが、試料を30分~60分の間プレスした。
【0062】
試料の特性評価には、主に密度測定、X線回折(XRD)、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた。試料の密度は、体積測定とアルキメデス法の両方で測定した。XRD(Panalytical Empyrean X’Pert Pro)を行って試料の相純度を調べ、輸送相を添加した結果として形成された二次相を特定した。SEM(Zeiss Sigma FESEM)を使用して,出発粉末の特性と冷間焼結後の微細構造を調べた。
【0063】
手動油圧プレス(Carver Model M)と手動制御の400ワットバンドヒーターで加熱した440Cステンレス鋼ペレットダイを用いた冷間焼結セットアップでは、実験のばらつきが発生することになった。定圧プレス(例えばシンテロメーター100)と炭化タングステンダイ(アルマジロダイ)とを備えた冷間焼結セットアップは、冷間焼結の複数のランとその場での緻密化データを抽出する機能との間の一貫性を高めるように設計された。定圧プレス又はシンテロメーター(sinterometer)100(図3図4参照)を使用して、セラミック粉末のその場での圧密度(compaction)を監視しながら、ペレットダイ110に一定の圧力を適用した。シンテロメーター100は、自動油圧ポンプによって動力を供給され、その結果、一定の速度で適用される一定の均一な圧力が得られた。線形変位センサ108がプレスに取り付けられ、試料が緻密化される際の圧密度を測定した。シンテロメーター100は、手動プレス及びシンテロメーター100を用いて冷間焼結したZnO試料の代表的な圧密度vs.時間のプロットが示すように、オペレーターが試料を圧密化する際、圧力を再適用するときに手動プレスでしばしば発生する圧力の大きな不連続性を排除した(図8参照)。炭化タングステンダイ110は、優れた耐薬品性、耐熱性、及び硬度を提供するように構築された。440Cステンレス鋼のペレットダイは、水性ベースの溶液よりも積極的に移動する輸送相のために侵食されやすいため、炭化タングステンダイ110を使用した。アルマジロダイ110の有益な特徴は、図4に見られるように、内張りとしての炭化タングステンドリルブッシュ114と、炭化タングステンパンチとであった。これらの部品は、ダイ110内の腐食環境にさらされるため、侵食や損傷に耐えられる必要であった。440Cステンレスダイと炭化タングステンダイ110(両方とも水酸化物ベースの輸送相で約20回使用される)を比較すると、表面形状測定器スキャンにより、ステンレスダイにはエッチングによる目に見える粗さがあり、炭化タングステンダイ110は滑らかな表面を維持したことが明らかになった。
【0064】
ボール・オン・スリーボール(B3B)試験法を用いて、機械的強度を評価した。B3B技術は、脆性材料の機械的強度を測定するために一般的に使用される二軸曲げ法である。この荷重状況では、試験片を片面で3個のボールによって対称的に支持し、反対側の面の中央にある4個目のボールによって荷重をかけた。これにより、明確な3点接触が保証される。使用した4個のボールの直径は7.92mmで、支持半径は4.57mmであった。試料は、上部パンチ側にテンションがかかるようにホルダー内に配置した。試料と4個のボールが確実に接触するように、3個の支持ボールに5~10Nの予荷重をかけた。荷重は、破壊するまで0.1mm/分の一定速度で増加させた。破壊時の最大荷重を記録し、すべての試験片の破壊応力を計算するためにそれを使用した。試料を、1kN荷重セルを備えた標準的なインストロンを用いて、約22℃、相対湿度62%の空気中で試験した。
【0065】
以前のワーク(手動プレスによる)では、120℃でほぼ完全に緻密なZnOを達成するために必要な条件を決定した(輸送相として4重量%の0.8M酢酸亜鉛水溶液を用い、530MPaで30分間保持した)。輸送相中のすべての液体の水は、蒸発するか又はダイの外に押し出されるかのいずれかによって30分以内に系外に出ると仮定していたため、時間の影響を調べるワークはほとんど行われていなかった。また、手動プレスでは、数時間の実験は実行不可能であった。しかし、シンテロメーター(sinterometer)100は自動化されているため、長時間の実験が容易であり、冷間焼結に与える時間の影響を検討する機会を創出した。シンテロメーター100によって収集されたデータ(図9参照)から、0.4M酢酸亜鉛水溶液で6時間冷間焼結したZnO試料は、理論密度の100%に近い密度を達成できることがわかった。一方、以前の30分間の実験(手動プレス)では、この同じ輸送相でわずか90%の密度にとどまった。
【0066】
図9は、水相が必要であるか否かを示している。図9は、0分から30分の間に密度の70%から90%への20%の増加があることを示している。水性ベースの輸送相のほとんどが、ダイからの押出又は蒸発のいずれかによって30分後に消失するという以前の仮定は、30分で実験を停止させ、ほぼ完全な密度のZnOを達成するには、0.4Mより高いモル濃度が必要であるという信念につながった。しかし、シンテロメーター100によって測定された圧密度(compaction)に基いて、30分から6時間の間にさらに10%の密度の増加があると結論付けることができる。追加の熱重量分析(TGA)実験により、4重量%の0.4M輸送相と混合したZnO粉末が、約3.5%の質量損失をもたらすことが判明した。しかし、30分間冷間焼結したZnO試料のTGAでは、質量損失がほとんどなく、測定可能な水分がほぼすべて消失していることがわかった。6時間冷間焼結した試料のTGAは、わずか30分冷間焼結した試料のTGAに匹敵するように見えた。この結果から、もし30分までにほとんど(99.99%以上)の液体の水がなくなった(それでも緻密化は進行している)ならば、輸送相に添加された水和酢酸亜鉛(すなわち、結合水を含む酢酸亜鉛)が緻密化を促進している可能性があることが示唆された。
【0067】
フラックス結晶成長中、無機材料の高温溶融物を用いて前駆体材料を溶解し、次いで、溶液からの結晶の核形成及び成長を促進する(これは、冷間焼結中に生じるプロセスと同様のプロセスである)。多くのフラックスの融点を抑制するために、少量の水が添加され、それにより、フラックス成長と水熱成長との間の領域にまたがる「ハイドロフラックス」が生成される。これらの「ハイドロフラックス」は輸送相として冷間焼結プロセスに適用され、ハイドロフラックス支援型緻密化(HAD:hydroflux-assisted densification)を実現する。
【0068】
HADアプローチは、冷間焼結に適した材料の範囲を大幅に拡大することを可能にした。具体的には、セラミック粉末中の親イオンの水和酢酸塩粉末、LiOAc-2HO:NaOAc-3HO:KOAcの共晶30:32:38モル%混合物、NaOH:KOH:HOの共晶51:49モル%混合物を、試験するフラックス組成物として選択した。酢酸塩共晶混合物が選ばれたのは、酢酸塩配位子が低温緻密化プロセスで有利なことが証明されているからである。水酸化物共晶が選択されたのは、溶融した水酸化物が多くの酸化物材料にとって優れた輸送相であることが多いからである。両混合物とも溶融温度が都合よく低く、酢酸混合物では162℃、水酸化物混合物では170℃である。HADによって緻密化されたいくつかの材料と、使用した輸送相及び得られた相対密度とを、以下の表1に示す。
【表1】
【0069】
表1の材料の代表的な微細構造を図10に示す。
【0070】
ハイドロフラックス支援型緻密化技術を用いた初期の実験では、新しい材料の緻密化に大きな成功を収めたが、同等の処理条件では一貫性のない結果がすぐに明らかとなった。いくつかの試料は緻密できれいな微細構造を有するが、他の試料は全く緻密化しないか、部分的にしか緻密化せず、微細構造中にかなりの量の二次相が存在する(図11参照)。このとき、輸送相は水溶液として添加され、その後、乾燥されて輸送相の水分が除去されていた。これらの一貫性のない微細構造は、乾燥の違い又は周囲の湿度の違いのいずれかによる、含水量のわずかな変動に起因する可能性があるという仮説が立てられた。この仮説を検証するため、出発原料のZnO粉末と輸送相の固体水酸化物の両方を、80℃の真空オーブン内で乾燥させた。次いで、2つの試料を、同等の水酸化物輸送相の量と同等の冷間焼結条件を用いてプレスした。ただし、一方の試料は「乾燥」させ、他方の試料には0.009gの水を添加した。図12に見られるように、この結果、乾燥した試料の密度は80%であり、水を添加した試料の密度は97%であった。この水の量は、9マイクロリットル又は5体積%に相当し、皮下注射針からわずか1滴であることに注意する必要がある。さらに比較した結果、1体積%という少量の水でほぼ完全な密度が得られることが判明した。水はハイドロフラックス緻密化プロセスの必須要素であるが、必要な量はごくわずかである。すなわち、範囲は最大20%とすることができるが、ほとんどの用途では0.1%から10%が必要であり、通常はそれより少ない量が好ましいとされる。この実験は、含水量の正確な制御が、このハイドロフラックス支援型緻密化プロセスの制御に有益であることを教示している。以前の研究では、少量の吸着水が表面拡散プロセスに影響を与えることにより、酸化物材料の焼結を助けたり妨げたりする可能性があることが報告されている。これが一因となる可能性があることは認識されているが、他の要因としては、フラックス混合物の溶融温度の抑制、粉末粒子間のフラックスの均一な混合及び分布の促進、並びに水酸化物により高度に飽和した溶液の形成を挙げることができる。
【0071】
各冷間焼結試料の破壊応力を、以下の式に従って計算した。
【数1】

(ここで、fは試料の形状、材料のポアソン比、及びボールの直径の関数であり、Fmaxは破壊荷重であり、tは試料の厚さである。)
【0072】
因子fは、Borgerら(ZnOのポアソン比を0.34と仮定)に従って各試験片について決定し、例えば1.5mm厚の試料では、f≒1.82となった。破壊確率vs.破壊応力をワイブル図にプロットした。これを図13に示す。このデータはワイブル分布に従う。特性強度σとワイブル弾性率mを、EN843-5規格に従って決定し、結果として、それぞれ、σ=64.4[61.8-67.1]MPa、及びm=8.2[6.1-10.0]となり、ここで、括弧内の値は90%信頼区間を示している。従来の焼結されたZnOの特性強度とワイブル係数は、ドーピング元素、気孔率、最高焼結温度、及び焼結プロファイルに依存して、それぞれ、σ≒80MPa~120MPa、m≒10及び20と報告されている。これらの結果に照らして、冷間焼結されたZnOは、従来の焼結されたZnOよりも低い特性強度(すなわち、約40%)を示し、わずかに高い散乱(すなわち、低いm)を有する。
【0073】
焼結研究により、酸化物セラミック粒子の表面に吸着した水が、表面拡散速度を変更することによって焼結挙動に影響を与える可能性があることが示されている。これは、O-イオンと比較して、サイズが小さく、分極率が高く、電荷が低いため、より速く拡散する表面ヒドロキシルの形成に起因している。
【0074】
このプロセスにおける水の役割を完全かつ明確に知るには、大気との相互作用の可能性を含め、プロセス全体を厳密に制御する必要がある。粉末とフラックスの混合物は乾燥した環境で保管することができるが、現在のセットアップでは、プレスの準備をしている間、混合粉末を周囲湿度に10~15分間さらす必要がある。この周囲環境で、セラミック粉末と潮解性フラックスによって吸着又は吸収される水分量を監視又は制御することは困難である。実験室では、1日のうちで最大30%の湿度変動が記録されており、同じ緻密化条件でも、午前中に作製した試料と午後に作製した試料では大きく異なることがある。制御された雰囲気(乾燥又は一定湿度のいずれか)を含むグローブボックスの中で実験を行えば、微量の含水量を制御するのに役立つ。そうすると、濃縮された水溶液と共晶溶融フラックスをより容易に区別することができる。
【0075】
水性輸送相を用いた緻密化では、密度、圧力、及び温度の間に強い関係があり、これはダイ内の水熱条件と関連している。例えば、温度が上昇するにつれて、プレスによって一軸に加えられている力が、半密閉されたダイ内で膨張する水による静水圧力と少なくとも同程度になるように、圧力も上昇させる必要があった。ハイドロフラックスは、亜臨界水熱条件と組み合わせたフラックス成長法として説明することができる。利用可能な証拠は、HADが、水熱条件がそれほど必須ではないという事実のために、水性ベースの緻密化技術とは異なる圧力-温度傾向を示すことを示している。これは、低温緻密化プロセスにおける圧力を下げるための重要な要素である可能性があり、産業界での大規模な実施を容易にする可能性がある。
【0076】
さらに、温度が、HADにおいてより重要な役割を果たす可能性がある。なぜなら、緻密化は、フラックス混合物から液体を形成することに完全に依存しており、これはおそらく特定の温度以下では発生しないからである。予備実験によると、2体積%の(Na,K)OHを含むZnO試料のHADプロセスの場合、200℃で理論密度の約98%の密度を達成できることが示されているが、温度を120℃(Zn(OAc)水溶液でZnOを緻密化するのによく用いられる温度)まで下げると、理論密度の80~85%の密度しか達成できないことが示されている。これは、51:49モル%比のNaOH:KOHが約170℃で共晶融点を有しているため、フラックスから「溶融物」が形成されているという理論と一致している。しかし、前述したように、水はこの融点を大幅に抑制する可能性がある。温度はまた、緻密化の動力学にも影響を与える可能性がある。シンテロメーター100とTGA実験を用いて、使用中のハイドロフラックスの実際の溶融温度を調べて、HADプロセスにおける緻密化の開始と速度を検討することができる。
【0077】
溶液支援型緻密化プロセスに関与する緻密化メカニズムを推定する際の課題の1つは、それらがしばしばブラックボックスシステムで実行されるということである。成分をペレットダイに添加し、プロセスを実行した後、緻密な試料をダイから取り出しても、ダイ内で起こった反応に関する知識はほとんど得られない。シンテロメーター(sinterometer)100は、冷間焼結プロセスのその場での監視(in situ monitoring)という点で大きな進歩をもたらしたが、情報は、化学反応ではなく、依然として緻密化速度、開始、及び時間に限定されている。シンクロトロンとダイヤモンドアンビルセルを用いて実施されるその場での散乱技術及び分光技術は、低温溶液支援型緻密化の間に生じる基本的な化学的変化及び構造的変化を研究するための考えられる機会を提供するものである。
【0078】
X線吸収分光法(XAS)などのその場での散乱技術又は分光技術は、焼成又は分解反応中のセラミックの結晶化挙動、特に中間相及び反応速度を研究するために使用することができる。前述したように、輸送相の分解反応が緻密化に寄与している可能性がある。
これは、80℃という低い分解値を有するZnO-Zn(OAc)システムで検討されてきた。しかし、分解温度と分解生成物の両方が、局所的な環境によって大きく影響されることも実証されている。したがって、冷間焼結の高圧かつ変化する化学環境が、添加した輸送相の分解に影響を与える可能性が高い。以前の、水熱合成されたZnOのその場での回折研究では、Zn(OH)(NO-2HO前駆体が大気中での固相反応と比較して水熱条件下で異なる分解経路をたどり、水熱の場合には異なる中間体を形成することを報告して、この考えを裏付けている。さらに、分解温度は大気中で報告されている値よりも水熱条件下で著しく低いことがわかった。同様に、外部から加えられた圧力と任意の加熱された蒸気相による内部圧力は、冷間焼結中に起こる反応を変える可能性があり、これはシンクロトロン放射の強力な機能を用いて調べることができる。
【0079】
中性子散乱研究もまた、水-固体の相互作用を研究するために行われてきた。中性子非弾性散乱は、特に水素原子核の移動度に敏感であり、この技術はシステム内の水の化学状態を分析するのに非常に有用である。中性子散乱は、セメントの水和反応を調べ、自由水と結合水の変化を評価するために、過去に使用されてきた。これは、HADプロセスにおける水の役割を決定する際にも有用である可能性がある。なぜなら、データが、わずかな割合の構造水又は液体の水が緻密化を促進する上で重要であることを示唆しているからである。中性子散乱又は他のその場での回折技術は、この水の状態(結合水か自由水か)、及びその水が促進する反応を決定するのに役立つ。
【0080】
本明細書に開示された実施形態の変更は、特定の一連の設計基準を満たすように行うことができることを理解されたい。例えば、特定の目的を達成するように、構成要素又はパラメータの数又は構成を使用してもよい。
【0081】
本開示の上記の教示に照らして、記載された実施例及び実施形態の多くの修正及び変形が、可能であることは、当業者には明らかであろう。開示された実施例及び実施形態は、例示の目的のみのために提示されている。他の代替の実施形態は、本明細書に開示された様々な実施形態の特徴のいくつか又はすべてを含んでもよい。例えば、個別に又は一実施形態の一部として記載された特定の特徴は、他の個別に記載された特徴、又は他の実施形態の一部と組み合わせることができることが想定される。したがって、本明細書に記載された様々な実施形態の要素及び作用は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされることができる。
【0082】
本発明の真の範囲内に入る可能性のある、そのような修正及び代替の実施形態をすべて網羅することが意図されており、その全範囲が与えられるべきである。さらに、数値範囲の開示は、終点を含むその範囲内のすべての数値の開示である。したがって、本明細書では、システム、デバイス、及びその製造方法と使用方法の特定の例示的な実施形態が論じられ、図示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲内で他に様々に具体化及び実施され得ることが明確に理解されるべきである。
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