IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

特許7431968車両内での生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達のための方法
<>
  • 特許-車両内での生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達のための方法 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】車両内での生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達のための方法
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240207BHJP
   B60N 3/00 20060101ALI20240207BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N3/00 Z
A47C7/62 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022532142
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-03
(86)【国際出願番号】 EP2020082116
(87)【国際公開番号】W WO2021115726
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-06-02
(31)【優先権主張番号】102019008563.9
(32)【優先日】2019-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】マクシミリアン・ヒルガー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・シュミット
(72)【発明者】
【氏名】アルヌルフ・フリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ダスラー
(72)【発明者】
【氏名】マッシ・ジャバリ
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/200224(WO,A2)
【文献】特表2002-513351(JP,A)
【文献】特開平07-079834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 3/00
A47C 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内での車両乗員に対する、測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達のための方法であって、
前記測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンは、少なくとも1人の車両乗員に対する視覚的及び/又は聴覚的及び/又は触覚的な作用のために設定された、及び車両室内(1)に配置された、少なくとも1つの機能要素(2~9)を使用して、前記車両乗員に非言語的に信号伝達されるものであり、
前記車両乗員によって呼吸数が設定され、そして前記設定された呼吸数に従って、推奨吸気及び/又は推奨呼気の時点及び/又は推移が信号伝達されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記車両乗員の少なくとも1つの生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンが測定され、そして緊張緩和状態に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンと比較され、前記測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、前記緊張緩和状態に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度が、前記車両室内(1)に配置された、視覚的及び/又は聴覚的及び/又は触覚的に前記車両乗員に対して作用する前記機能要素(2~9)を使用して、非言語的に信号伝達されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
心拍数から心拍数変動度が決定され、そして緊張緩和状態に典型的な心拍数変動度と比較されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの前記信号伝達は、少なくとも1つの車両座席(5)に配置された少なくとも1つのマッサージ要素(6)の設定によって、及び/又は背腹方向に沿って移動可能な腰椎支持部(7)の位置調整によって、行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの前記信号伝達は、前記車両室内(1)に配置された、及び4チャンネル方式音響再生のために設定された、複数のスピーカ(4)を使用して、4チャンネル方式音響信号を再生することによって行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの前記信号伝達は、光強度及び/又は光色を変化させることが可能な、前記車両室内(1)に配置された少なくとも1つの室内照明(3)の前記光強度及び/又は前記光色を変化させることによって行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも温度及び/又は体積流が変更可能な気流を放出するために設定されている、前記車両室内(1)に配置された空気出口(9)を有する、前記車両に配置された空調装置を使用して、前記測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの前記信号伝達は、前記空気出口(9)を介して前記空調装置から放出される前記気流の前記温度及び/又は前記体積流を変化させることによって行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの前記信号伝達は、前記車両室内(1)に配置された振動を起こすことが可能なハンドル(2)の振動によって行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの前記信号伝達は、前記車両室内(1)においてベルト張力及び/又はベルト位置が変更可能な少なくとも1つのシートベルト(8)の前記ベルト張力及び/又は前記ベルト位置を変化させることによって行われることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内での車両乗員に対する、測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両を運転するための方法を記載しており、そこでは少なくとも1人の車両乗員の少なくとも1つの実際の生体パラメータが記録される及び/又は測定されるものであり、少なくとも1つの車両快適機能が、記録された及び/又は測定された実際の生体パラメータに応じて制御され及び/又は調整される。少なくとも1つの実際の生体パラメータに対して目標生体パラメータが事前設定され、目標生体パラメータと少なくとも1つの実際の生体パラメータとの間の制御偏差が決定され、制御偏差に応じて、少なくとも1つの車両快適機能が制御され及び/又は調整されることが企図されている。更に、特許文献1は、車両を運転するための装置を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】DE 10 2017 001 320 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、車両内での車両乗員に対する、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達のための改良された方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、本課題は、請求項1の特徴を有する方法によって解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
車両内での車両乗員に対する、測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達のための方法において、少なくとも1つの機能要素が、車両室内に配置され、少なくとも1人の車両乗員に対する視覚的及び/又は聴覚的及び/又は触覚的な作用のために設定される。
【0008】
本発明によれば、測定された及び/又は事前設定された生体パラメータ、及び/又は、測定された及び/又は事前設定された生体パラメータパターンは、車両乗員に、少なくとも1つの機能要素を使用して非言語的に信号伝達される。
【0009】
人体の基本機能を記述する測定値、例えば、脈拍数若しくは心拍数、血圧、体温、又は呼吸数は、生体パラメータと称する。構造化して配置された複数のそのような測定値は、生体パラメータパターンと称する。例えば、生体パラメータパターンは、個々の生体パラメータ、例えば、呼吸数の事前設定された期間にわたる連続した測定値によって提供することができる。生体パラメータパターンはまた、異なる生体パラメータに割り当てられ、そして個々の共通の時点で記録される、複数の測定値によって提供することができる。例えば、ある時点の呼吸数、心拍数、及び体温は、生体パラメータパターンを形成することができる。
【0010】
生体パラメータは、生体パラメータを生成する生理学的システムの状態に基づいており、その状態を生体状態と称する。基準状態に対して緊張した生体状態は、ストレス又はストレス状態と称する。
【0011】
信号伝達される生体パラメータ又は信号伝達される生体パラメータパターンは、車両乗員の生体状態とは無関係に、目標値として事前設定することができる。例えば、生理学的潮汐呼吸の下方(緩慢)領域における呼吸数を信号伝達することによって、車両乗員に緩慢かつ深い呼吸をするように促すことができる。
【0012】
生体パラメータ又は生体パラメータパターンはまた、車両乗員に行われる測定時に対応して信号伝達することができる。例えば、車両室内に配置された、車両乗員の顔又は唇に向けられたカメラによって、心拍数を心弾動図的に決定して、少なくとも1つの機能要素を使用して信号伝達することができる。決定された生体パラメータ又は決定された生体パラメータパターンを基準値と比較して、それらの偏差を少なくとも1つの機能要素を使用して信号伝達することもまた可能である。
【0013】
例えば、車両乗員のストレス状態は、心拍数の増加及び/又は呼吸数の増加及び/又は心拍数変動度の低下によって検知することができる。それに基づいて、緩慢な深い呼吸を信号伝達することによって、車両乗員をストレスが少ない状態に導くことができる。情報又は指示が言語的に、すなわち、発話された又は書かれた言葉として提示される、生体状態に影響を及ぼすためのこのような方法は、先行技術ではバイオフィードバック法として公知である。
【0014】
本発明によれば、先行技術に対して新規に、生体状態の信号伝達(生体パラメータ若しくは生体パラメータパターンの信号伝達による)又は生体状態に影響を及ぼすための指示の信号伝達(バイオフィードバック)は、車両室内に配置された少なくとも1つの機能要素を使用して非言語的に行われる。
【0015】
言語的に提供される情報の処理は、車両乗員、特に運転者の注意力、反応敏捷性、及び操作能力を低下させる認知負荷を伴うことが公知である。したがって、本発明による方法の利点は、車両乗員の生体状態を改善することができ、先行技術に従った方法よりも、車両乗員の注意力、反応敏捷性、及び操作能力を大きく損なうことはないか、又はほとんど損なわないことである。したがって、本発明による方法は、道路交通において車両の安全な運転及び同時に緊張が緩和された運転を可能にする。
【0016】
本方法の一実施形態では、車両乗員は、呼吸数を設定する。続いて、設定された呼吸数に従って、推奨吸気及び/又は推奨呼気の時点及び/又は推移が信号伝達される。この実施形態により、特に簡単な様式で車両乗員の呼吸に影響を及ぼすことができ、それによって車両乗員の緊張緩和を促進することができる。
【0017】
本方法の一実施形態では、第1のステップにおいて、車両乗員の少なくとも1つの生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンが測定され、緊張緩和状態に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンと比較される。第2のステップでは、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和状態に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度が、車両室内に配置された、視覚的及び/又は聴覚的及び/又は触覚的に車両乗員に対して作用する機能要素を使用して、非言語的に信号伝達される。
【0018】
この実施形態の利点は、車両乗員に自身の生体状態の変化に関するフィードバックを提供することである。それにより、車両乗員は、自身の生体状態の自覚的制御を学習する。例えば、車両乗員は、安静及び緊張緩和が起こるように自身の呼吸をコントロールすることができる。加えて、本発明による非言語的信号伝達によって、道路交通における事象から注意がそれることはないか、又はわずかにそれるのみである。
【0019】
本方法の一実施形態では、生体パラメータとして心拍数が測定され、その心拍数から心拍数変動度が特定される。特定された心拍数変動度は、緊張緩和状態に典型的な心拍数変動度と比較される。
【0020】
心電図のQRS複合波における互いに連続する2つのRスパイクの間隔の逆数を心拍数と称する。心拍数から心拍数変動度を特定するための方法は、先行技術から公知である。例えば、心拍数の移動平均変位量は、心拍数変動度の尺度として使用することができる。
【0021】
心拍数変動度は、緊張又は緊張緩和の程度のための特に特異的かつ高感度の尺度である。したがって、本方法のこの実施形態は、車両乗員の生体状態の特に繊細かつ正確な制御を可能にする。
【0022】
前述の請求項のうちの一項に記載の方法の一実施形態では、少なくとも1つのマッサージ要素及び/又は背腹方向に沿って移動可能な腰椎支持部が、少なくとも1つの車両座席に配置される。測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンは、マッサージ要素の設定によって、及び/又は腰椎支持部の位置調整によって信号伝達される。
【0023】
例えば、腰椎支持部を最初は迅速に、次いで徐々により緩慢になるように背側方向に動かすことによって、車両座席に座っている車両乗員に吸気を促すことができる。腰椎支持部を最初は迅速に、次いで徐々により緩慢になるように反対側に、すなわち腹側方向に動かすことによって、呼気を促す。
【0024】
本方法のこの実施形態の利点は、車両乗員の生体状態の連続的な、したがって、正確かつ細かな制御が可能であることである。それにより、緊張緩和状態の誘導もまた、車両乗員によってより容易に、より迅速に、かつより確実に学習される。
【0025】
本方法の一実施形態では、4チャンネル方式の音響再生のために、複数のスピーカが車両室内に配置されて設定される。測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達は、スピーカを使用して4チャンネル方式音響信号(4Dサウンド)の再生によって行われる。
【0026】
この実施形態の利点は、特に容易な実行可能性及び車両乗員による4Dサウンドの特に良好な知覚である。加えて、複数の車両乗員の生体状態に影響を及ぼすことも特に容易に可能である。
【0027】
本方法の一実施形態では、車両室内に光強度及び/又は光色を変化させることが可能な少なくとも1つの室内照明が配置される。測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達は、少なくとも1つの室内照明の光強度及び/又は光色を変化させることによって行われる。
【0028】
例えば、先行技術から、アンビエントライト又はコネクテッドライトと称する車両室内の照明状態が公知であり、照明状態は、良好に区別可能であり、既存の手段で設定可能である。したがって、この実施形態は、本方法の容易な実行可能性に特に良好に適している。
【0029】
本方法の一実施形態では、車両室内に配置された空気出口を有する空調装置が、車両内に配置されており、空気出口は、少なくとも温度及び/又は体積流が変更可能な気流を放出するために設定されている。測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達は、空気出口を介して空調装置から放出される気流の温度及び/又は体積流を変化させることによって行われる。
【0030】
このようなモジュール化可能な又は変化可能な空調装置は、先行技術から公知であり、普及している。したがって、本方法のこの実施形態の利点は、特に追加の機能要素なしに、特に容易に車両で使用することができることである。特に、旧式車両における実施もまた、手間のかかる改造なしに容易に可能である。
【0031】
本方法の一実施形態では、振動を起こすことが可能なハンドルが車両室内に配置される。測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達は、ハンドルを振動させることによって行われる。
【0032】
この実施形態の利点は、生体パラメータに関し他の車両乗員に影響を与えたり、害を与えたり、又は煩わせたりすることなく、運転者のみの生体状態を選択的に制御することができることである。
【0033】
本方法の一実施形態では、ベルト張力及び/又はベルト位置が変更可能な少なくとも1つのシートベルトが、車両室内に配置され得る。測定された及び/又は事前設定された、生体パラメータ及び/又は生体パラメータパターンの信号伝達は、シートベルトのベルト張力及び/又はベルト位置を変化させることによって行われる。
【0034】
この実施形態の利点は、生体パラメータに関し他の車両乗員に影響を与えたり、害を与えたり、又は煩わせたりすることなく、車両乗員の生体状態を選択的に制御することができることである。特に、異なる車両乗員は、様々な様式で同時にその生体パラメータについて影響を受けてもよい。
【0035】
以下に図面を参照して本発明の実施例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】車両室内の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
単一の図1には、車両の車両室内1を概略的に示してあり、車両には機能要素2~9が配置されており、機能要素2~9を用いて安全機能及び車両快適機能が実行される。
【0038】
車両室内1には、ハンドル2が配置されており、ハンドル2は、電気機械式アクチュエータ(詳細には図示せず)を使用して振動させることができる。更に、車両室内1に、光強度及び/又は光色において可変のインテリジェントな室内照明3が配置されている。例えば、車両室内1の事前設定された照明効果、例えば、アンビエントライトの照明効果又はコネクテッドライトの照明効果を与えるために、複数の室内照明3を同期して動作させることができる。
【0039】
加えて、車両室内1には、4Dサウンドの再生のために設定されているスピーカ4が配置されている。
【0040】
車両室内1には、更に、車両座席5が配置されている。車両座席5は、電気機械式及び/又は空圧式で作動するマッサージ要素6を有し、マッサージ要素6は、車両座席5の座席要素の局所的な動きのために、マッサージ機能を車両座席5の上に座っている人に対して実行するように設定されている。マッサージ要素6は、例えば、空気を充填した内張り要素として形成することができ、マッサージ要素6は、空圧式で変化させる内圧によってその形状を変化させ、マッサージ動作を車両座席5の座面又は背もたれの部分面に及ぼす。
【0041】
更に、車両座席5は、背もたれに電気機械式に動作可能な腰椎支持部7を有し、腰椎支持部7を用いて、支持作用及び押圧作用を調整可能な強度で車両座席5に座っている人に及ぼすことができる。
【0042】
車両室内1には、更に、シートベルト8が、車両座席5に座っている人の安全な固定のために配置されている。シートベルト8は、ベルト位置及び/又はベルトテンショナにおいて、例えば、電気機械式駆動部(詳細には図示せず)を使用して、変化させることができる。
【0043】
更に、車両室内1は、車両空調のための少なくとも1つの空気出口9を有し、そこからの空気流は、例えば、ファン回転数の調整によって可変の空気流で及び/又は可変の温度で流れる。
【0044】
したがって、機能要素2~9は、車両乗員によって触覚的、視覚的及び/又は聴覚的に知覚可能であり、以下に記載するように、バイオフィードバックトレーニング用の手引きのために使用することができる。
【0045】
呼吸指標と称する本方法の第1の部分では、機能要素2~9を使用して、車両乗員は、吸気の時点及び/又は呼気の時点について指示され、車両乗員は、呼吸指標によって制御される呼吸数を生理学的呼吸数範囲、例えば、1分間あたり5~12回、好適には5~7回の呼吸周期に設定することができる。その際、呼吸周期は、吸気及びそれに続く呼気を含む。
【0046】
呼吸運動(吸気又は呼気)のための時点の指標は、視覚的に、例えば、ディスプレイ上に表示される文字及び/又は記号によって示すことができる。それに加え、又は代替として、呼吸運動のための時点は、聴覚的に、例えば、スピーカ4を介して再生されるアナウンスによって示すことができる。
【0047】
本発明によれば、呼吸運動のための時点の信号伝達は、マッサージ要素6が事前設定された位置を占める、及び/又は事前設定された動きを実行することによって提供することができる。
【0048】
それに加え、又は代替として、呼吸運動のための時点の信号伝達は、腰椎支持部7を事前設定された位置に動かすことによって提供することができる。
【0049】
それに加え、又は代替として、呼吸運動のための時点の信号伝達は、4Dサウンドとして形成された音響信号をスピーカ4を介して発することによって提供することができる。
【0050】
それに加え、又は代替として、呼吸運動のための時点の信号伝達は、4Dサウンドとして形成された4チャンネル方式音響信号をスピーカ4を介して発することによって提供することができる。
【0051】
それに加え、又は代替として、呼吸運動のための時点の信号伝達は、少なくとも1つの室内照明3から発せられる光を、強度及び/又は色を変化させることによって提供することができる。
【0052】
それに加え、又は代替として、呼吸運動のための時点の信号伝達は、車両の空調装置を、少なくとも1つの空気出口9から、脈動する空気量が放出される、及び/又は放出される空気量の脈動する温度を設定するように動作させることによって提供することができる。
【0053】
それに加え、又は代替として、呼吸運動のための時点の信号伝達は、ハンドル2に振動を加えることによって提供することができる。
【0054】
それに加え、又は代替として、呼吸運動のための時点の信号伝達は、シートベルト8を張る(引き締める)又は張りを緩めることによって提供することができる。
【0055】
機能要素2~9によって発せられる信号は、信号伝達される呼吸運動(吸気又は呼気)の種類に応じて、かつ呼吸運動の開始に対する時点に応じて変化させることが可能である。例えば、腰椎支持部7は、信号伝達される吸気中に最初は迅速に、次いで徐々により緩慢になるように背側方向に動き、信号伝達される呼気中に最初は迅速に、次いで徐々により緩慢になるように腹側に動くことが可能である。
【0056】
呼吸指標と称する方法部分において機能要素によって発せられる信号は、選択された呼吸数によってのみ制御される。車両乗員の生体パラメータは、この信号のために考慮されない。
【0057】
呼吸分析と称する本方法の第2の部分では、車両乗員の生体パラメータが記録され分析される。人体の基本機能を記述する測定値、例えば、脈拍数若しくは心拍数、血圧、体温、又は呼吸数は、生体パラメータと称する。
【0058】
このようなパラメータの測定のための方法は、先行技術から公知である。例えば、脈拍数又は心拍数、すなわち、1分間当たりの心拍動の数は、心電図を介して決定することができることが公知である。心電図を誘導するための電極は、例えば、衣類に縫い付けておくことができる、又はアームバンドを使用して皮膚表面に固定させておくことができる。また、心拍数は、車両乗員の顔、特に唇をカメラ画像の評価によって心弾動図的に決定することができることも公知である。また、他の生体パラメータについても、測定方法が公知である。
【0059】
本発明によれば、呼吸分析と称する方法部分では、生体パラメータ又は生体パラメータの時間経過を記述する生体パラメータパターンは、緊張緩和された人の場合に典型的である生体パラメータ又は生体パラメータパターンと比較される。
【0060】
本方法の一実施形態では、心拍数の時間経過から心拍数変動度が決定され、心拍数変動度は、心臓サイクル間の時間間隔の変動、好適には互いに連続するQRS複合波のRスパイク間の間隔を記述する。心拍数変動度を記述する方法及び測定値は、先行技術から公知である。また、非常に低い心拍数変動度は、ストレス状態又は高い認知的若しくは感情的な緊張の状態に典型的である一方で、生理学分野では、高い心拍数変動度は、緊張緩和された基礎気分に典型的であることも公知である。
【0061】
測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の比較から、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は緊張緩和された人に典型的な生体信号との一致の実際の度合が決定される。好適には、一致度は、順序尺度で示す変数として又は計量変数として決定される。例えば、順序尺度で示す一致度は、「実際に生体パラメータのパターンが緊張緩和された人に典型的なパターンに非常に一致する」という分類から、「実際に生体パラメータのパターンが緊張緩和された人に典型的なパターンから大きく逸脱している」という分類まで達し得る。
【0062】
測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間で決定された一致度は、視覚的に、例えば、ディスプレイ上に表示される文字及び/又は記号によって信号伝達することができる。それに加え、又は代替として、一致度は、聴覚的に、例えば、スピーカ4を介して再生されるアナウンスによって信号伝達することができる。
【0063】
測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達は、マッサージ要素6が事前設定された位置を占める、及び/又は事前設定された動きを実行することによって提供することができる。
【0064】
それに加え、又は代替として、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達は、腰椎支持部7を事前設定された位置に動かすことによって提供することができる。
【0065】
それに加え、又は代替として、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達は、4Dサウンドとして形成された音響信号をスピーカ4を介して発することによって提供することができる。
【0066】
それに加え、又は代替として、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達は、4Dサウンドとして形成された4チャンネル方式音響信号をスピーカ4を介して発することによって提供することができる。
【0067】
それに加え、又は代替として、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達は、少なくとも1つの室内照明3から発せられる光を、強度及び/又は色を変化させることによって提供することができる。
【0068】
それに加え、又は代替として、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達は、車両の空調装置によって提供することができ、少なくとも1つの空気出口9から脈動する空気量が放出されるような方法で、及び/又は放出される空気量の脈動する温度が設定されるような方法で行われる。
【0069】
それに加え、又は代替として、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達は、ハンドル2に振動を加えることによって提供することができる。
【0070】
それに加え、又は代替として、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと、緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達は、シートベルト8を張る(引き締める)又は張りを緩めることによって提供することができる。
【0071】
本発明による方法の利点は、車両乗員、特に運転者の注意散漫を、所定の呼吸運動の信号伝達、及び/又は、測定された生体パラメータ又は生体パラメータパターンと緊張緩和された人に典型的な生体パラメータ又は生体パラメータパターンとの間の一致度の信号伝達の際に、低減することである。それにより、バイオフィードバックトレーニングの実施時に、車両乗員の強力な、一意的なかつ目的に合致した誘導が可能であり、同時に、道路交通における事象に対する車両乗員の注意力を損なうことがないか、又は最小限に損なうのみである。

図1