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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】液剤塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240207BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022534575
(86)(22)【出願日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 JP2020026785
(87)【国際公開番号】W WO2022009359
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成見 健太
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】皆川 正太郎
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-239197(JP,A)
【文献】特開平11-262713(JP,A)
【文献】特開2001-353461(JP,A)
【文献】特開2000-176347(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対し上下動可能かつ水平面方向に相対移動可能な塗布ノズルと、
前記塗布ノズルへの液剤の供給を行う第1状態と前記塗布ノズルへの液剤の供給を停止する第2状態とを切り換える塗布バルブと、
前記塗布ノズルが前記基板の上方から前記基板の所定位置に向かって下降するよう制御すると共に所定の供給開始タイミングで前記塗布バルブを前記第1状態に切り換えたあと所定時間が経過するのを待って前記塗布バルブを前記第2状態に切り換えるよう制御し、前記塗布ノズルの先端が下降端に達し且つ前記塗布バルブを前記第2状態に切り換えるタイミング以降に前記塗布ノズルが上昇するよう制御する制御装置と、
を備えた液剤塗布装置であって、
前記供給開始タイミングは、前記制御装置によって設定され、
前記制御装置は、前記供給開始タイミングを設定するにあたり、予め定められた複数の暫定供給開始タイミングを順次採用して前記塗布ノズルによる前記液剤の塗布具合を判定し、前記液剤の塗布具合が適切だった前記暫定供給開始タイミングを前記供給開始タイミングに設定する、
液剤塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、液剤塗布装置を開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、液剤塗布装置としては、塗布ノズルと塗布バルブとを備えたものが知られている。塗布ノズルは、基板に対し上下動可能かつ水平面方向に相対移動可能である。塗布バルブは、開閉操作によって塗布ノズルへの液剤の供給及び供給停止を行う。特許文献1では、こうした液剤塗布装置において、塗布バルブが開くタイミング(バルブオンタイミング)を、塗布ノズルの先端が下降端にあって液剤を塗布するタイミングから遡って常に同じタイミングとなるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開11-262713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようにバルブオンタイミングを液剤を塗布するタイミングから遡って常に同じタイミングに設定しているため、不都合が生じることがあった。例えば、塗布バルブをオンしている時間が長い場合には、塗布ノズルの先端が下降端でとどまっている待ち時間が発生し、タクト(工程作業時間)が増加する一因となることがあった。また、塗布バルブをオンからオフにした後の塗布ノズル内の残圧の影響で塗布ノズルの先端から液剤が漏れることがあった。
【0005】
本開示はこのような課題を解決するためになされたものであり、塗布バルブのバルブオンタイミングが一定の場合に生じる不都合を解消することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の液剤塗布装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の液剤塗布装置は、
基板に対し上下動可能かつ水平面方向に相対移動可能な塗布ノズルと、
前記塗布ノズルへの液剤の供給を行う第1状態と前記塗布ノズルへの液剤の供給を停止する第2状態とを切り換える塗布バルブと、
前記塗布ノズルが前記基板の上方から前記基板の所定位置に向かって下降するよう制御すると共に所定の供給開始タイミングで前記塗布バルブを前記第1状態に切り換えたあと所定時間が経過するのを待って前記塗布バルブを前記第2状態に切り換えるよう制御し、前記塗布ノズルの先端が下降端に達し且つ前記塗布バルブを前記第2状態に切り換えるタイミング以降に前記塗布ノズルが上昇するよう制御する制御装置と、
を備えた液剤塗布装置であって、
前記供給開始タイミングは、オペレータ及び/又は前記制御装置によって任意に設定されるものである。
【0008】
この液剤塗布装置では、供給開始タイミングは、オペレータ及び/又は制御装置によって任意に設定される。こうすれば、塗布バルブの供給開始タイミングが一定の場合に生じる不都合を解消することができる。なお、液剤としては、例えば粘性流体が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】液剤塗布装置10の主要部の斜視図。
図2】塗布ヘッド30の概略構成を示す一部断面図。
図3】液剤塗布装置10の制御に関わる構成を示すブロック図。
図4】接着剤塗布ルーチンのフローチャート。
図5】バルブオンタイミング設定ルーチンの一例を示すフローチャート。
図6】塗布ヘッド30の動作状態の一例を示すタイムチャート。
図7】塗布ヘッド30の動作状態の一例を示すタイムチャート。
図8】塗布ヘッド30の動作状態の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の液剤塗布装置の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1は液剤塗布装置10の主要部の斜視図、図2は塗布ヘッド30の概略構成を示す一部断面図、図3は液剤塗布装置10の制御に関わる構成を示すブロック図である。なお、本実施形態において、左右方向(X軸)、前後方向(Y軸)及び上下方向(Z軸)は、図1に示した通りとする。
【0011】
液剤塗布装置10は、基板搬送装置12と、塗布ヘッド30と、マークカメラ54と、制御装置60とを備えている。
【0012】
基板搬送装置12は、基板Sを搬送したり保持したりする装置である。この基板搬送装置12は、支持板14,14と、コンベアベルト16,16(図1では片方のみ図示)とを備えている。支持板14,14は、左右方向に延びる部材であり、図1の前後に間隔を開けて設けられている。コンベアベルト16,16は、支持板14,14の左右に設けられた駆動輪及び従動輪に無端状となるように架け渡されている。基板Sは、一対のコンベアベルト16,16の上面に乗せられて左から右へと搬送される。この基板Sは、多数立設された支持ピン18によって裏面側から支持可能となっている。そのため、基板搬送装置12は基板支持装置としての役割も果たす。
【0013】
塗布ヘッド30は、X軸スライダ22の前面に着脱可能に取り付けられている。X軸スライダ22は、Y軸スライダ24の前面に取り付けられている。Y軸スライダ24は、前後方向に延びる左右一対のガイドレール25,25にスライド可能に取り付けられている。Y軸スライダ24の前面には、左右方向に延びる上下一対のガイドレール26,26が設けられている。X軸スライダ22は、このガイドレール26,26にスライド可能に取り付けられている。塗布ヘッド30は、X軸スライダ22が左右方向に移動するのに伴って左右方向に移動し、Y軸スライダ24が前後方向に移動するのに伴って前後方向に移動する。なお、X軸及びY軸スライダ22,24は、それぞれX軸及びY軸モータ22a,24a(図3参照)により駆動される。
【0014】
塗布ヘッド30は、図2に示すように、保持部材32と、Z軸スライダ34と、ヘッド本体40と、塗布バルブ50とを備えている。保持部材32は、後面に着脱装置32aを備えた板状の部材であり、着脱装置32aを介してX軸スライダ22の前面に着脱可能に取り付けられている。Z軸スライダ34は、スライダ本体34aとアーム34bとを備えたL字状の部材であり、スライダ本体34aが保持部材32の前面に上下方向にスライド可能に取り付けられている。Z軸スライダ34は、Z軸モータ34c(図3参照)によって昇降される。ヘッド本体40については後述する。塗布バルブ50は、電磁方向切換弁であり、ヘッド本体40のシリンジ42に圧縮空気供給源52と大気とを択一的に連通させるものである。
【0015】
ヘッド本体40は、スリーブ41と、シリンジ42と、アダプタ43と、塗布ノズル44と、係合部材46とを備えている。スリーブ41は、アーム34bを上下方向に貫通する孔にベアリングを介して回転可能に取り付けられている。スリーブ41の上端には、外歯車41aが一体化されている。シリンジ42は、有底筒状の部材であり、内部に粘性流体である接着剤(グルー)が収容される。シリンジ42の底面中央には、上下方向に貫通する短管42aが突設されている。アダプタ43は、筒状の部材であり、シリンジ42の短管42aに固定されている。アダプタ43は、アダプタ43の下端がスリーブ41の下端から露出するようにスリーブ41に差し込まれている。塗布ノズル44は、筒状のホルダ44aの先端に1本のニードル44bが固定されたものである。塗布ノズル44は、アダプタ43の下端に差し込まれた状態でナット45で締結されている。具体的には、ホルダ44aの外周面に設けられたフランジ44cがナット45とアダプタ43の下端とで挟み込まれることにより、塗布ノズル44がアダプタ43の下端に着脱可能に取り付けられている。ホルダ44aにはストッパ44dが設けられている。ストッパ44dは、接着剤の塗布時に基板Sに当接してニードル44bの先端と基板Sとの間に一定の隙間が確保されるようにする。この隙間は、ニードル44bの先端から吐出される接着剤が基板Sに予め設計された形状で塗布されるように設定されている。ストッパ44dが基板Sに当接したとき、塗布ノズル44の先端(つまりニードル44bの先端)は下降端に達する。係合部材46は、シリンジ42の下方に設けられたフランジ42bを上から押圧した状態でボルト47によりスリーブ41の外歯車41aに締結されている。その結果、スリーブ41とシリンジ42とは係合部材46を介して固定されている。シリンジ42の上部開口にはキャップ48が被せられている。キャップ48には接続金具49が螺合され、接続金具49には塗布バルブ50と圧縮空気供給源52とがこの順に接続されている。塗布バルブ50はオン(第1状態)とオフ(第2状態)のいずれかに設定される。塗布バルブ50がオンになると、シリンジ42に圧縮空気供給源52から圧縮空気が流入してニードル44bへの接着剤の供給が行われる。塗布バルブ50がオフになると、シリンジ42に大気が流入してニードル44bへの接着剤の供給が停止される。
【0016】
なお、図2では、1個のニードル44bを備えた塗布ノズル44をアダプタ43に取り付けた場合を例示したが、その場合、外歯車41aは回転しないように保持される。その結果、Z軸スライダ34に対して塗布ノズル44を含むヘッド本体40は回転しない。一方、複数(例えば2個)のニードルを備えた塗布ノズルをアダプタ43に取り付けた場合には、外歯車41aを図示しない回転モータを利用して回転させることにより、2個のニードルの並びの方向を変えられるようになっている。
【0017】
マークカメラ54は、X軸スライダ22の下面に設けられている。マークカメラ54は、塗布ヘッド30の移動に伴ってXY方向へ移動する。マークカメラ54は、下方のカメラ視野内で、基板Sに付された基準マークを撮像したり、基板Sに塗布された接着剤を撮像したりして、その画像を制御装置60へ出力する。
【0018】
試し打ちユニット56は、試し打ちに用いられる紙媒体57を備えたものであり、基板搬送装置12の前方に設けられている。紙媒体57は、ロール紙から巻取装置によって巻取ローラに巻き取られるものであり、試し打ち用の新しい面がハウジング58の上部開口から露出するようになっている。紙媒体57は、接着剤の染み込む程度等が基板Sとほぼ同じものが用意され、基板Sの表面と同じ高さとなるように調整されている。紙媒体57は、塗布ヘッド30のニードル44bから吐出される接着剤の塗布具合を検査するために用いられる。
【0019】
制御装置60は、図3に示すように、CPU62、記憶部64(ROM、RAM、HDDなど)、入出力インターフェース66などを備えており、これらはバス68を介して接続されている。この制御装置60は、基板搬送装置12、X軸スライダ22を駆動するX軸モータ22a、Y軸スライダ24を駆動するY軸モータ24a、Z軸スライダ34を駆動するZ軸モータ34c、塗布バルブ50、マークカメラ54、試し打ちユニット56及びディスプレイ70へ信号を出力する。また、制御装置60は、マークカメラ54からの撮像画像や入力装置72からの信号を入力する。入力装置72としては、キーボードやマウスなどが挙げられる。なお、各スライダ22,24,34には図示しない位置センサが装備されており、制御装置60はそれらの位置センサからの位置情報を入力しつつ、各スライダ22,24,34のモータ22a,24a,34cを制御する。
【0020】
次に、こうして構成された本実施形態の液剤塗布装置10の動作、特に基板Sへの接着剤塗布ルーチンについて説明する。図4は、制御装置60のCPU62によって実行される接着剤塗布ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、制御装置60の記憶部64に記憶され、基板Sが基板搬送装置12により所定位置まで搬送されて保持されたなど、塗布処理の準備が整った状態で実行される。このルーチンを実行する前に、制御装置60は基板Sの複数の塗布位置にどういう順番で接着剤を塗布するかを定めたジョブを取得しているものとする。なお、塗布位置は、部品を実装する位置に対応して設定される。
【0021】
CPU62は、接着剤塗布ルーチンを開始すると、まず、最初の塗布位置を塗布対象に設定する(S110)。続いて、CPU62は、塗布ノズル44のニードル44bを塗布対象の塗布位置へ移動する(S120)。具体的には、CPU62は、X軸モータ22a及びY軸モータ24aを制御してX軸スライダ22及びY軸スライダ24を操作することにより、塗布対象の塗布位置の直上にニードル44bを位置決めする。このとき、ニードル44bの先端の高さは、ニードル44bがXY方向に移動する際に周囲の部材などに衝突しない高さ(待機位置)に設定されている。
【0022】
続いて、CPU62は、塗布ヘッド30を制御してニードル44bから塗布対象の塗布位置へ接着剤を塗布する(S130)。具体的には、CPU62は、Z軸モータ34cを制御して、Z軸スライダ34上のニードル44bを待機位置から下降端まで下降させ、その後下降端から待機位置まで上昇させる。それと共に、CPU62は、所定のバルブオンタイミング(供給開始タイミング)で塗布バルブ50をオフからオンに切り換えてニードル44bへの液剤の供給を行い、その後所定の塗布時間(圧縮空気で接着剤に圧力をかける時間)が経過するのを待って塗布バルブ50をオンからオフに切り換えてニードル44bへの液剤の供給を停止する。バルブオンタイミングは、記憶部64に保存されており、CPU62によって読み出されて使用される。更に、CPU62は、ニードル44bの先端が下降端に達し且つ塗布バルブ50をオフに切り換えたあと、ニードル44bが上昇するようZ軸モータ34cを制御する。バルブオンタイミングは、後述するようにオペレータによって任意に設定される。設定されたバルブオンタイミングは、一枚の基板Sのすべての塗布位置に適用される。
【0023】
続いて、CPU62は、すべての塗布位置への接着剤の塗布を終了したか否かを判定する(S140)。S140でまだ終了していなかったならば、CPU62は、未処理の塗布位置を塗布対象に設定し(S150)、再びS120以降の処理を実行する。一方、S140ですべての塗布位置への接着剤の塗布を終了していたならば、CPU62は、本ルーチンを終了する。
【0024】
次に、オペレータがバルブオンタイミングを設定する場合について説明する。図5は、バルブオンタイミング設定ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、制御装置60の記憶部64に記憶され、オペレータが入力装置72から設定画面の呼び出しを指示したときに開始される。CPU62は、まず、ディスプレイ70に設定画面を表示する(S210)。オペレータは、入力装置72を使って設定画面上でバルブオンタイミングを任意に設定する。バルブオンタイミングは、ニードル44bの下降端からの高さ[mm]で設定する。CPU62は、バルブオンタイミングが入力されたか否かを判定し(S220)、入力されていなければそのまま待機する。一方、S220でバルブオンタイミングが入力されたならば、CPU62は記憶部64に保存されていた以前のバルブオンタイミングを今回入力されたバルブタイミングに更新し(S230)、本ルーチンを終了する。
【0025】
次に、バルブオンタイミングとタクトとの関係ついて説明する。図6は、S130の処理を実行している塗布ヘッド30の動作状態の一例を示すタイムチャートである。ここでは、バルブオンタイミングは、塗布ヘッド30の下降が開始したあとニードル44bが下降端から所定の高さ(例えば4mmとか5mm)に到達したタイミングとしている。なお、ニードル44bの高さは、Z軸指令位置に基づいて求めてもよいし、塗布ヘッド30に取り付けた図示しないエンコーダの検出信号に基づいて求めてもよい。塗布バルブ50がオンになったあと、所定の塗布時間が経過するのを待つ。塗布時間が経過するまでの間、塗布ヘッド30のシリンジ42には圧縮空気が供給され続ける。所定の塗布時間は、接着剤の塗布径や粘性などに基づいて設定される。例えば、粘性の低い接着剤を用いる場合には塗布時間は短く設定され、粘性の高い接着剤を用いる場合には塗布時間は長く設定される。図6は、塗布時間が比較的短く設定されている例である。この例では、バルブオンタイミングは、塗布ノズル44のニードル44bの先端が下降端に達する前に塗布時間が経過するように設定されている。そのため、塗布時間が終了して塗布バルブ50をオフにしてからニードル44bが下降端に達するまである程度の時間がある(残圧抜け時間)。この時間を利用してシリンジ42内の残圧が抜けるため、ニードル44bが上昇したあとの液漏れを防止することができる。また、ニードル44bが下降端に到達した後速やかにニードル44bの上昇を開始することができるため、タクトは適正になる。
【0026】
図7も、S130の処理を実行している塗布ヘッド30の動作状態の一例を示すタイムチャートである。ここでは、バルブオンタイミングは、図6と同じタイミングに設定されているが、塗布時間は図6よりも長く設定されている。具体的には、塗布時間は、ニードル44bが下降端に到達したあとも継続している。そのため、ニードル44bが下降端に到達したあと塗布時間が終了するまでの間、ニードル44bは下降端で待つことになる。つまり、ニードル44bの先端が下降端に達したあとニードル44bの上昇を開始するまでの時間(下降端での待ち時間)が比較的長くかかる。その結果、タクトが増加して生産性が低下してしまう。
【0027】
図7のように塗布時間が長いケースでは、オペレータがバルブオンタイミングを早めに設定することでタクトの増加を抑制することができる。図8は、S130の処理を実行している塗布ヘッド30の動作状態の一例を示すタイムチャートであり、塗布時間は図7と同じ長さに設定されているが、バルブオンタイミングは図7よりも早く設定されている。図8では、バルブオンタイミングは、ニードル44bの下降開始時点に設定されている。換言すれば、バルブオンタイミングは、下降端での待ち時間が図7に比べてゼロに近づくように設定されている。その結果、図7に比べてタクトの増加を抑制することができる。
【0028】
以上説明した本実施形態では、バルブオンタイミングは、オペレータによって任意に設定される。そのため、バルブオンタイミングが一定の場合に生じる不都合を解消することができる。
【0029】
また、図6では、バルブオンタイミングは、塗布ノズル44の先端が下降端に達する前に塗布時間が経過するように設定されている。これにより、塗布バルブ50をオフにした後暫くの間(残圧抜け時間)、塗布バルブ50の先端を下降端にとどまらせることができる。そのため、その間に塗布ノズル44内の残圧が下がり、塗布ノズル44が上昇したあとの液漏れを防止することができる。
【0030】
更に、図8では、バルブオンタイミングは、塗布ノズル44の先端が下降端に達したあと塗布ノズル44の上昇を開始するまでの時間がゼロに近づくように設定されている。これにより、塗布ノズル44の先端が下降端でとどまっている待ち時間を短くすることができる。そのため、タクトの増加を防止することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施形態では、バルブオンタイミングは、オペレータによって設定されるものとしたが、制御装置60によって設定されるものとしてもよい。例えば、制御装置60は、接着剤の種類とバルブオンタイミングとが対応づけられた対応関係を予め記憶部64に記憶しており、使用する接着剤の種類に基づいてその対応関係からバルブオンタイミングを設定してもよい。接着剤はその種類によって特性(例えば粘性など)が異なるため、接着剤の種類に適したバルブオンタイミングを予め対応づけて記憶部64に記憶しておく。こうすれば、接着剤の種類に適したバルブオンタイミングを設定することができる。
【0033】
あるいは、制御装置60は、バルブオンタイミングを設定するにあたり、予め定められた複数の暫定バルブオンタイミングを順次採用して塗布ノズル44による接着剤の塗布具合を判定し、接着剤の塗布具合が適切だった暫定バルブオンタイミングをバルブオンタイミングとして記憶部64に保存してもよい。暫定バルブオンタイミングは、例えばニードル44bの下降端から1[mm]おきに待機位置まで設定してもよい。接着剤の塗布具合の判定は、試し打ちユニット56の紙媒体57に接着剤を塗布することにより行うことができる。塗布具合の判定は、例えば、紙媒体57に塗布された接着剤の画像をマークカメラ54で撮像し、その画像から接着剤の径の大きさやサテライト(接着剤が飛び散ったあとの液滴)の状態などに基づいて塗布具合の良否を判定することができる。こうすれば、試し打ちで接着剤の塗布具合が適切なことを確認した上でバルブオンタイミングを設定するため、設定後のバルブオンタイミングに起因する不都合が生じにくい。
【0034】
上述した実施形態では、本開示の液剤塗布装置の一例として液剤塗布装置10を例示したが、通常知られている部品実装装置(例えば特開2016-115910号公報参照)の部品実装に用いられる作業ヘッドを塗布ヘッド30に交換したものを用いてもよい。
【0035】
上述した実施形態において、バルブオンタイミングは一枚の基板Sのすべての塗布位置に適用されるものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、一枚の基板Sについて、最初はノズル径a[mm]の塗布ノズル44で接着剤を塗布し、途中でノズル径b[mm]の塗布ノズル44に交換して接着剤を塗布する場合には、ノズル径ごとにバルブオンタイミングを設定しておき、ノズル径に対応したバルブオンタイミングを適用してもよい。あるいは、一枚の基板Sの塗布位置ごとにバルブオンタイミングを設定しておき、塗布位置に対応したバルブタイミングを適用してもよい。
【0036】
上述した実施形態では、バルブオンタイミング設定ルーチンによりバルブオンタイミングを設定するようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、オペレータがテキストファイルで編集できる設定ファイルによりバルブオンタイミングを設定し、ファイル転送プロトコルで制御装置60の記憶部64に転送し更新するようにしてもよい。
【0037】
上述した実施形態では、バルブオンタイミングを、ニードル44bの下降端からの高さ[mm]で設定したが、特にこれに限定されない。例えば、バルブオンタイミングを、ニードル44bが下降端に到達する予想時刻から塗布時間(又は塗布時間+α)だけ遡った時刻[msec]としてもよい。この場合、予想時刻は、ニードル44bが下降端に到達してから上昇するまでの時間ができるだけ短くなるように(つまりゼロかゼロに近づくように)設定するのが好ましい。
【0038】
上述した実施形態では、粘性流体として、接着剤を例示したが、特に接着剤に限定されるものではなく、例えばクリームはんだや導電性ペーストを用いてもよい。
【0039】
本開示の液剤塗布装置は、以下のように構成してもよい。
【0040】
本開示の液剤塗布装置において、前記供給開始タイミングは、前記塗布ノズルの先端が下降端に達したあと前記塗布バルブの上昇を開始するまでの時間がゼロになるかゼロに近づくように設定されてもよい。こうすれば、塗布ノズルの先端が下降端でとどまっている待ち時間をできるだけ短くすることができるため、タクトの増加を防止することができる。
【0041】
本開示の液剤塗布装置において、前記供給開始タイミングは、前記塗布ノズルの先端が下降端に達する前に前記所定時間が経過するように設定されてもよい。こうすれば、塗布ノズルへの液剤の供給を停止した後暫くの間塗布バルブの先端を下降端にとどまらせることができるため、その間に塗布ノズル内の残圧が下がり、塗布ノズル先端からの液剤の漏れを防止することができる。
【0042】
本開示の液剤塗布装置において、前記供給開始タイミングは、前記制御装置によって設定され、前記制御装置は、液剤の種類と供給開始タイミングとが対応づけられた対応関係を予め記憶部に記憶しており、使用する液剤の種類に基づいて前記対応関係から前記供給開始タイミングを設定してもよい。こうすれば、液剤の種類に適した供給開始タイミングを設定することができる。
【0043】
本開示の液剤塗布装置において、前記供給開始タイミングは、前記制御装置によって設定され、前記制御装置は、前記供給開始タイミングを設定するにあたり、予め定められた複数の暫定供給開始タイミングを順次採用して前記塗布ノズルによる前記液剤の塗布具合を判定し、前記液剤の塗布具合が適切だった前記暫定供給開始タイミングを前記供給開始タイミングに設定してもよい。こうすれば、例えば試し打ちなどで液剤の塗布具合が適切なことを確認した上で供給開始タイミングを設定するため、設定後の供給開始タイミングに起因する不都合が生じにくい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、基板の所定位置に液剤を塗布する液剤塗布装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 液剤塗布装置、12 基板搬送装置、14 支持板、16 コンベアベルト、18 支持ピン、22 X軸スライダ、22a X軸モータ、24 Y軸スライダ、24a Y軸モータ、25 ガイドレール、26 ガイドレール、30 塗布ヘッド、32 保持部材、32a 着脱装置、34 Z軸スライダ、34a スライダ本体、34b アーム、34c Z軸モータ、40 ヘッド本体、41 スリーブ、41a 外歯車、42 シリンジ、42a 短管、42b フランジ、43 アダプタ、44 塗布ノズル、44a ホルダ、44b ニードル、44c フランジ、44d ストッパ、45 ナット、46 係合部材、47 ボルト、48 キャップ、49 接続金具、50 塗布バルブ、52 圧縮空気供給源、54 マークカメラ、56 試し打ちユニット、57 紙媒体、58 ハウジング、60 制御装置、62 CPU、64 記憶部、66 入出力インターフェース、68 バス、70 ディスプレイ、72 入力装置、S 基板。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8