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特許7431976関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データの完全性検査のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データの完全性検査のための方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/23 20100101AFI20240207BHJP
   G01S 19/32 20100101ALI20240207BHJP
【FI】
G01S19/23
G01S19/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022538771
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2020082559
(87)【国際公開番号】W WO2021129984
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】102019220543.7
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デニス キリアン
(72)【発明者】
【氏名】ディアク ボセニウス
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-194590(JP,A)
【文献】特開2019-138911(JP,A)
【文献】特開2016-206184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0088111(US,A1)
【文献】特開2007-187592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0002482(US,A1)
【文献】宮 雅一 他,準天頂衛星システム:センチメータ級測位補強サービスの運用・評価状況,電子情報通信学会2019年通信ソサイエティ大会講演論文集1,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2019年08月27日,Pages: SS-64 - SS-65,ISSN: 1349-1415
【文献】伊藤 憲,ファジィによるGNSS自律的完全性監視,電子情報通信学会2000年総合大会講演論文集 通信1,日本,社団法人電子情報通信学会,2000年03月07日,Pages: 238
【文献】OBER, P.B. et al.,RSIM-Based Integrity Monitoring for DGNSS,Proceedings of the 2002 National Technical Meeting of The Institute of Navigation [online],米国,The institute of navigation,2002年01月,Pages: 467-473,インターネット: <URL: https://www.ion.org/publications/abstract.cfm?articleID=239>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/00 - 5/14
19/00 - 19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSS補正データ(1)の完全性検査のための、コンピュータによって実行される方法であって、
少なくとも以下のステップ、即ち、
a)関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データ(1)を受信するステップと、
b)前記ステップa)において受信したGNSS補正データ(1)の完全性についての推論を可能にする基準データ(2)を受信するステップと、
c)前記ステップa)において受信した前記GNSS補正データ(1)の完全性を、前記ステップb)において受信した基準データ(2)を用いて検査するステップと、
を含み、
前記ステップa)において受信した前記GNSS補正データ(1)は、前記GNSS補正データ(1)に対して完全性検査を実施しない及び/又は完全性情報を提供しない補正データプロバイダ(3)によって提供される、方法。
【請求項2】
前記ステップb)において受信した前記基準データ(2)は、軌道データを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップb)において受信した前記基準データ(2)は、関連する完全性情報と共に提供されるGNSS補正データを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップb)において受信した前記基準データ(2)は、前記ステップa)において受信した前記GNSS補正データ(1)を提供する前記補正データプロバイダ(3)とは異なる補正データプロバイダ(4)によって提供されるGNSS補正データを含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップc)における前記検査するステップは、前記ステップa)において受信した前記GNSS補正データ(1)と、前記ステップb)において受信した前記基準データ(2)との比較、検証、及び/又は、統合を含む、請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データ(1)に対して完全性データ(5)を提供するための方法であって、前記完全性データ(5)を求めるために、請求項1乃至のいずれか一項に記載の完全性検査のための方法が実施される、方法。
【請求項7】
GNSS受信機(6)にGNSS補正データ(1)を提供するための方法であって、請求項1乃至のいずれか一項に記載の完全性検査のための方法、及び/又は、請求項に記載の完全性データ(5)を提供するための方法が実施される、方法。
【請求項8】
コンピュータプログラムであって、当該コンピュータプログラムがコンピュータによって実行されるときに、前記コンピュータに請求項1乃至のいずれか一項に記載の方法を実施させるための命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項9】
請求項に記載のコンピュータプログラムが格納されている機械可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GNSS補正データの完全性検査のための方法、完全性データを提供するための方法、GNSS補正データを提供するための方法、コンピュータプログラム及び機械可読記録媒体に関する。本発明は、特に、自律的な走行に関連して使用される。その上さらに、本発明は、衛星測位分野における他の安全性関連の用途にも使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来技術
GNSS(Global Navigation Satellite System)ナビゲーションにおいては、通常、GNSS補正データが使用され、これらは、位置特定中にGNSS信号の算出可能な誤差を考慮するために用いられる。算出可能な誤差とは、例えば、GNSS信号の伝搬時間誤差であり得る。そのような伝搬時間誤差は、例えば、それらの測地位置が正確に既知である基準局とのGNSS信号の受信を介して求めることができる。ここでは、受信したGNSS信号を用いて算出された位置と、正確に既知である位置との比較から補正値を求めることができる。これについての一例は、いわゆるDGPS(Differential GPS)である。GNSS補正データは、伝搬時間誤差に対して代替的又は付加的に、大気の影響、環境の影響、時計誤差、及び/又は、衛星軌道誤差を考慮することも可能である。
【0003】
GNSS補正データは、通常、これらに関して専門の補正データプロバイダ(GNSS補正サービスとも称される)から提供される。これらは、通常、補正の種類、及び、提供されるGNSS補正データに対する関連する完全性情報も提供されるかどうかによって異なる。しかしながら、使用される又は場合によっては使用すべき補正データの完全性に関する対応情報は、特に安全性関連の用途(即ち、データの所定の安全性レベルを必要とする用途)にとって重要である。例えば、少なくとも部分的に自律走行する車両のGNSS位置決定は、所定の(高い)安全性レベルが要求される用途領域である。
【0004】
関連する完全性情報を提供する既知のGNSS補正サービスには、例えば、商用のPPP-RTK(Precise Point Positioning - Real Time Kinematic)サービスがあり、このサービスにおいては、完全性検査が、特に独自のアルゴリズムの一部となっている。この完全性情報を用いることにより、例えば、安全性レベル(特に、IS026262及び/又はIEC61508に準拠したレベル)を達成することができる。対応する完全性情報は、重要である。なぜなら、位置計算における不整合又は不正確な補正データは、時間内に検出されないと位置決めの際の誤差の誘因となる可能性があるからである。
【0005】
関連する完全性情報を提供しない既知のGNSS補正サービスには、例えば、PPP(Precise Point Positioning)技術又はPPP-RTK技術を使用するサービス及び無料又は非商用のサービス並びに商用のサービスがある。その他にも、PPP,PPP-RTKという呼称の他、SSR(1乃至4)や独自のサービスプロバイダのさらなる呼称も、技術呼称として一般的である。関連する完全性情報を提供しない、現在の市場において入手可能な位置補正のためのシステム(データの生成、伝送及び処理を含む)は、現在のところ、自律的な走行などの安全性関連の用途に使用するための要件を充足していない場合が多い。安全性関連の用途にも対応した補正データの適用可能性は、安全性関連の用途において利用可能な補正データの帯域幅も有利に拡大させるであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の開示
本明細書においては、請求項1に従って、GNSS補正データの完全性検査のための方法が提案され、当該方法は、少なくとも以下のステップ、即ち、
a)関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データを受信するステップと、
b)ステップa)において受信したGNSS補正データの完全性についての推論を可能にする基準データを受信するステップと、
c)ステップa)において受信したGNSS補正データの完全性を、ステップb)において受信した基準データを用いて検査するステップと、
を含む。
【0007】
この方法は、特に、関連する完全性情報又は完全性データなしに(当該)GNSS補正データを提供する補正データプロバイダによって最初に提供されていたGNSS補正データの完全性を検査するために用いられる。ここで求められる、当該(元々の検査されていない)GNSS補正データの完全性は、当該GNSS補正データを受信したGNSS受信機に提供することができる。しかしながら、完全性検査は、受信機側において実施することも考えられる。外部又は受信機側において求められた完全性は、例えば、検査された補正データを使用して又は使用せずに、(予め)定められた安全性レベル(例えば、ASIL、SILなど)を充足するために用いることができる。
【0008】
GNSS補正データの完全性は、通常、当該GNSS補正データの精度、品質、及び/又は、整合性を記述する。従って、完全性検査の場合、GNSS補正データは、特に、精度、品質、妥当性、及び/又は、整合性に関して検査される。
【0009】
ステップa)においては、関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データを受信するステップが行われる。これは、換言すれば、特に、関連する完全性情報又は完全性データなしに(当該)GNSS補正データを提供する補正データプロバイダによって提供されるGNSS補正データに関するものである。特に、当該GNSS補正データには、本来の補正データの精度、品質、妥当性、及び/又は、整合性を記述する(付加的な)データは、含まれない。従って、当該GNSS補正データは、(そのようなものとして)特に、(予め)定められた安全性レベル又は品質レベル(例えば、SIL、ASIL)を充足するかどうかについて推論することはできない。GNSS補正データは、ステップa)において、特に(モバイル)GNSS受信機(自体)によって、又は、例えば計算センタなどの上位評価システムによって受信される。GNSS補正データ(検査すべきサービスの補正データ)は、ステップa)において、好適には、IP(インターネットプロトコル、例えば、TCP/IP又はUDP)、Lバンド、又は、他の信号経路を介して受信される。
【0010】
ステップb)においては、ステップa)において受信したGNSS補正データの完全性についての推論を可能にする基準データを受信するステップが行われる。これらの基準データとは、例えば、軌道データ、関連する完全性情報と共に提供されるGNSS補正データ、及び/又は、ステップa)において受信したGNSS補正データを提供する補正データプロバイダとは異なる補正データプロバイダによって提供されるGNSS補正データであり得る。これらの基準データは、ステップb)において、特に(モバイル)GNSS受信機(自体)によって、又は、計算センタなどの上位評価システムによって受信される。これらの基準データは、例えば、GNSS基準地上局から提供され得る。
【0011】
ステップc)においては、ステップa)において受信したGNSS補正データの完全性を、ステップb)において受信した基準データを用いて検査するステップが行われる。特に、ステップc)においては、ステップa)において受信したGNSS補正データの精度、品質、妥当性、及び/又は、整合性が、ステップb)において受信した基準データを使用して求められる。補正データの完全性を検査するために、好適には、衛星軌道及び/又は衛星時計のための補正の品質を、特に事前に定められた閾値内において比較する。通常、完全性検査のための目標値は、(予め)定められる。(予め)定められた目標値を充足する場合には、この完全性検査は、例えば、「正」に設定される。代替的又は付加的に、受信した補正データの基準データからの偏差を反映した品質指標を計算することも可能である。
【0012】
ステップc)による検査は、例えば、(モバイル)GNSS受信機(自体)によって、又は、計算センタなどの上位評価システムによって実施することができる。さらに、検査過程に基づいて、特に検査過程の結果に依存して、ステップa)において受信したGNSS補正データに関する完全性情報が形成され、場合によっては提供され得る。完全性情報は、場合によっては、計算された品質指標を含み得るものであり又は記述し得るものである。これらの完全性情報及び/又は品質指標は、対応するGNSS補正データに完全性データとして割り当てることが可能であり、及び/又は、(場合によっては、対応するGNSS補正データと共に若しくは別個に)GNSS補正データに対する完全性データとして提供することが可能である。完全性情報及び/又は品質指標は、例えば、GNSS補正データが(予め)定められた品質レベルを充足しているかどうかについて、推論を可能にすることができる。
【0013】
完全性検査の結果(1つ以上のサービス用データ)は、IPを介して(場合によっては一様に)提供することができ、また場合によっては、例えば、静止衛星(Lバンド)又はデジタルラジオ(例えば、Sirius XM、DAB)などの他の信号経路を介して(場合によっては一様に)提供することもできる。さらに、1つ以上の、好適にはすべての観察されたサービスに対する結果を有する完全性メッセージを生成することも行うことができる。例えば、異なるプロバイダからのGNSS補正データは、本方法を用いることによりそれらの完全性に関して検査することができる。この関係において、ステップa)においては、例えば、関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データは、複数の(異なる)サービスから受信することができる。
【0014】
好適な構成によれば、ステップa)において受信されたGNSS補正データは、GNSS補正データに対して完全性検査を実施しない及び/又は完全性情報を提供しない(少なくとも)1つの補正データプロバイダによって提供されることが提案される。
【0015】
GNSS補正データに対して完全性検査を実施しない及び/又は完全性情報を提供しない補正データプロバイダとは、例えば、PPPサービス及び/又はPPP-RTKサービスであるものとしてよい。特に、GNSS補正データに対して完全性検査を実施しない及び/又は完全性情報を提供しない補正データプロバイダとは、非商用の補正データプロバイダである。
【0016】
さらなる好適な構成によれば、ステップb)において受信した基準データは、軌道データ及び/又は衛星時計データ、及び/又は、(利用可能である限り)電離層及び/又は対流圏についての地域的及び/又は広域的な補正を含むことが提案される。(検査のための)軌道データは、例えば、IGS(国際GNSSサービス)の超高速軌道の予測成分であるものとしてもよい。
【0017】
さらなる好適な構成によれば、ステップb)において受信した基準データは、関連する完全性情報と共に提供されるGNSS補正データを含むことが提案される。
【0018】
関連する完全性情報は、好適には、GNSS補正データが(予め)定められた品質レベル(例えば、SIL、ASIL)を充足しているかどうかについての推論を可能にする。GNSS補正データを関連する完全性情報と共に提供する補正データプロバイダとは、通常は、商用の補正データプロバイダである。
【0019】
さらなる好適な構成によれば、ステップb)において受信した基準データは、ステップa)において受信したGNSS補正データを提供する補正データプロバイダとは異なる(他の)補正データプロバイダによって提供されるGNSS補正データを含むことが提案される。
【0020】
他の補正データプロバイダとは、GNSS補正データに対して完全性検査を実施しない及び/又は完全性情報を提供しない補正データプロバイダであるものとしてよい。他の補正データプロバイダの(純粋な)GNSS補正データでさえ、この関係においては(特に比較後に)、ステップa)において受信した補正データの完全性についての推論を可能にすることができる。
【0021】
完全性検査なしの2つのサービス(これらのうちの一方は基準製品として用いられる)の利用により、IS026262に準拠するASIL-A又はIEC61508に準拠するSIL1を、有利な手法によって既に達成することができる。基準製品として完全性検査付き(例えば、ASIL評価付き)サービスを包含することにより、好適な手法により、場合によっては(特定の位置関係において)ASIL-B又はそれ以上でさえも達成することができる。
【0022】
さらなる好適な構成によれば、ステップc)における検査は、ステップa)において受信したGNSS補正データと、ステップb)において受信した基準データとの比較、検証、及び/又は、統合を含むことが提案される。
【0023】
特に、ステップb)において、GNSS補正データが基準データとして他の補正データプロバイダによって受信される場合、ステップc)においては、ステップa)において受信したGNSS補正データと、ステップb)において受信した基準データとの比較及び/又は検証を行うことができる。特に、ステップb)において、関連する完全性情報と共に提供されるGNSS補正データが受信される場合、ステップc)においては、ステップa)において受信したGNSS補正データと、ステップb)において受信した基準データとの比較、検証、及び/又は、統合を行うことができる。
【0024】
さらなる態様によれば、関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データに対する完全性データを提供するための方法も提案され、ここでは、完全性データを求めるために、本明細書に記載される完全性検査のための方法が実施される。特に、ここでは、そのように求められた完全性データが、関連する完全性情報なしに(元々又は元来)提供されていた対応するGNSS補正データに割り当てることができる。この完全性データは、例えば、(モバイル)GNSS受信機に伝送することができる。完全性データは、特に、それらが割り当てられているGNSS補正データが(予め)定められた品質レベル(例えば、ASIL、SILなど)を充足しているかどうかについての推論を可能にする。
【0025】
さらなる態様によれば、(モバイル)GNSS受信機にGNSS補正データを提供するための方法も提案され、ここでは、本明細書に記載される完全性検査のための方法、及び/又は、本明細書にも記載される完全性データを提供するための方法が実施される。特に、ここでは、関連する完全性情報なしに(元々又は元来)提供されていたGNSS補正データが、求められて自身に割り当てられた完全性データと共に提供され得る。これは、例えば、GNSS補正データと割り当てられた完全性データとが統合されて、例えば、データ対に結合されているデータストリームにおいて行うことができる。しかしながら、GNSS補正データと割り当てられた完全性データとが別個の経路によりGNSS受信機に伝送されることも考えられる。GNSS受信機は、例えば、好適には少なくとも部分的に自動化又は自律化された走行モード用に構成された(動力)車両内又は車両上に配置されるものとしてもよい。
【0026】
さらなる態様によれば、本明細書に記載される方法を実施するためのコンピュータプログラムも提案される。これは、換言すれば、特に、プログラムがコンピュータによって実行されるときに、コンピュータに本明細書に記載される方法を実施させるための命令を含むコンピュータプログラム(製品)に関するものである。
【0027】
さらなる態様によれば、コンピュータプログラムが格納されている機械可読記録媒体も提案される。通常、機械可読記録媒体とは、コンピュータ可読データ担体である。
【0028】
GNSS補正データの完全性検査のための方法に関連して説明される詳細、特徴及び好適な構成は、本明細書に提示した完全性データを提供するための方法、GNSS補正データを提供するための方法、コンピュータプログラム、及び/又は、記録媒体においても相応に生じ得るし、その逆も成り立つ。その限りにおいては、そこにある構成は、特性のより詳細な特徴付けのために全面的に参照される。
【0029】
以下においては、本明細書に提示される解決手段及びそれらの技術的環境を図面に基づいて、より詳細に説明する。なお、本発明は、図示の実施例によって限定されるべきものではないことを述べておく。特に、別段の明記がない限り、図面において説明された事項の部分的な態様を抽出し、他の図面及び/又は本明細書からの他の構成要素及び/又は知識と組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来技術によるGNSS補正データの提供を示す例示的な図解図である。
図2】本明細書において提示されるGNSS補正データの完全性検査のための方法のフローチャートである。
図3】GNSS受信機にGNSS補正データを提供するための本明細書において提示される方法を例示的に示す図解図である。
図4】GNSS受信機にGNSS補正データを提供するための本明細書において提示される方法の例示的なフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、従来技術によるGNSS補正データ1の提供を概略的に示す例示的な図解図である。ここには、位置関係の異なる3つのGNSS衛星7と、(既知の測地位置において信号を受信する)GNSS衛星7の信号を受信する補正データプロバイダ4と、GNSS衛星7の信号を同様に受信するモバイルGNSS受信機6とが示されている。補正データプロバイダ4は、受信した信号から、例えば、既知の測地位置との比較により、GNSS補正データ1を求める。
【0032】
さらに、この補正データプロバイダ4は、自身が提供するGNSS補正データ1に対して、例示的に、関連する完全性情報を求め、そこから完全性データ5を形成する。ここで補正データプロバイダ4は、GNSS受信機6にGNSS補正データ1を関連する完全性データ5と組み合わせて提供する。従って、例えば、少なくとも部分的に自律走行する車両のGNSS受信機6であり得るGNSS受信機6は、完全性データ5から、提供されたGNSS補正データ1が特定の安全性レベル(ここでは、例示的にASIL要件)を充足するかどうかを検出することができる。この安全性レベルを充足する場合、GNSS受信機6は、受信したGNSS信号をGNSS補正データ1により補正することによって、自己位置特定を(高い信頼性を以て)向上させることができる。原則的に、ASIL要件は、例えば、完全性情報が欠落している場合にも充足することができる。検査のための完全性情報が欠落している場合、データは、通常、未検査として分類され、従って、不確かなものとして格付けされる可能性がある。ASIL格付けは、特に、例えば、種々の冗長性と、対応する手順要件に従って開発された検査モジュールとを備えた既知の設計を記述する。
【0033】
図2は、GNSS補正データ1の完全性検査のために本明細書において提示する方法のフローチャートを概略的に示している。ブロック110、120及び130により示されるステップa)、b)及びc)は、少なくとも1回は順次に実施することが可能である。その上さらに、少なくともステップa)及びb)は、少なくとも部分的に並行して、又は、同時に実施することも可能である。ブロック110においては、ステップa)に従って、関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データ1を受信するステップが行われる。ブロック120においては、ステップb)に従って、ステップa)において受信したGNSS補正データ1の完全性についての推論を可能にする基準データ2を受信するステップが行われる。ブロック130においては、ステップc)に従って、ステップa)において受信したGNSS補正データ1の完全性を、ステップb)において受信した基準データ2を用いて検査するステップが行われる。
【0034】
図3は、(モバイル)GNSS受信機6にGNSS補正データ1を提供するための本明細書に提示される方法の例示的な図解図を概略的に示している。ここでは、完全性検査のための本明細書に記載される方法が実施される。この関係において、GNSS受信機6には完全性データ5も提供される。これらの完全性データ5は、ここでは、(提供する補正データプロバイダ3の側において)関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データ1に対して提供される。ここでは、完全性データ5を求めるために、完全性検査のための本明細書に記載される方法が実施される。これに関しては、図2に対する説明が参照される。
【0035】
図3においては、ステップa)において受信したGNSS補正データ1は、GNSS補正データ1に対して完全性検査を実施しない及び/又は(関連する)完全性情報を提供しない補正データプロバイダ3によって提供される。このGNSS補正データ1は、(完全性情報なしに又は直接)GNSS受信機6にも提供される。このGNSS受信機6には、さらに(それに依存せずに又は並行して)GNSS補正データ1に対して完全性検査のための本明細書において説明される方法に従って求められた完全性データ5も提供される。これにより、GNSS受信機6は、GNSS補正データ1が特定の(予め設定された)安全性レベルを充足するかどうかを検査することができる。
【0036】
ステップb)において受信した基準データ2は、本明細書においては例示的に、ステップa)において受信したGNSS補正データ1を提供する補正データプロバイダ3とは異なる補正データプロバイダ4によって提供されるGNSS補正データを含む。さらに例示的に、ステップb)において受信した基準データ2は、本明細書においては関連する完全性情報と共に提供されたGNSS補正データを含む。
【0037】
代替的又は付加的に、受信した基準データ2は、関連する完全性情報なしであるが、ステップa)において受信したGNSS補正データ1を提供する補正データプロバイダ3とは異なる補正データプロバイダ4によって提供されるGNSS補正データであり得る。さらに、ステップb)において受信した基準データ2は、代替的又は付加的に、軌道データ、衛星時計データ、電離層及び/又は対流圏についての地域的及び/又は広域的な補正を含み得る。
【0038】
ステップc)の検査は、ここでは、例えば、ステップa)において受信したGNSS補正データ1と、ステップb)において受信した基準データ2との比較及び/又は統合を含む。これについてのより詳細な例は、図4に関連して以下において説明される。
【0039】
図4は、GNSS受信機6にGNSS補正データ1を提供するために本明細書に提示される方法の例示的なフローチャートを概略的に示している。種々の補正データプロバイダ3,4によって提供されるデータは、値範囲、完全性、及び/又は、最新性に関して入力検査10を受ける。さらに、種々の補助データ8,9を考慮することができる。これらの補助データは、例えば、IGS(国際GNSSサービス)及び/又はCODE(欧州軌道決定センタ)からの軌道データであるものとしてもよい。しかしながら、妥当性検査のために、広域的な対流圏モデル(例えば、ニューブランズウィック大学のUNB3など)及び/又は広域的な電離層モデル(例えば、Ionosphere mapsなど)の支援も考えられる。それに続いて、データの時刻同期11が行われる。これらのデータは、正規化及び/又は妥当性検査12の枠組みにおいて、データ特性に関して妥当性検査及び/又は正規化される(例えば、相対的補正パラメータは、放送暦を用いることにより、絶対的補正パラメータに移行される)。
【0040】
指定されたパラメータに応じて(正規化及び/又は妥当性検査12からの)補正及び任意の補助データは、比較13の枠組みにおいて相互に比較される。この比較結果は、さらに選択14の枠組みにおいて再使用される。比較13からの比較結果に基づいて、個々のデータ要素、データ属性又は完全なデータストリームが、破棄され又は転送される。最後の(編成)ステップ15においては、選択14から選択された補正データ及び補助データが新たな補正データストリームに編成される。この補正データストリームは、GNSS補正データ1と、この補正データ1に対する完全性データ5とを含む。
【0041】
本明細書において提示される方法は、特に、関連する完全性情報なしに提供されるGNSS補正データも、通常、使用されるデータの完全性に高い要求が求められる少なくとも部分的な自律走行に関連させて使用することができるようになる利点を可能にする。
図1
図2
図3
図4