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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】防爆弁、電池パック及び装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/383 20210101AFI20240207BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240207BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240207BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20240207BHJP
   H01M 50/325 20210101ALN20240207BHJP
   H01M 50/35 20210101ALN20240207BHJP
【FI】
H01M50/383
H01M50/342 201
H01M10/613
H01M10/6551
H01M50/325
H01M50/35 201
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022539000
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 CN2020135950
(87)【国際公開番号】W WO2021169494
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202010128393.X
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 小波
(72)【発明者】
【氏名】黎 ▲賢▼▲達▼
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 少基
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲ティン▼
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077507(JP,A)
【文献】特開2014-165026(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125163(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/30-50/392
H01M10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防爆弁であって、防火部材及び通気膜を含み、
前記防火部材は電池パックのケースに接続することに用いられ、且つ前記通気膜は前記防火部材に固定され、前記電池パックは順に前記防火部材及び前記通気膜を介して外部とのガス交換を行うことができ
前記防火部材はフレームアレスタユニット及び本体を含み、
前記本体は入口端及び出口端を有し、前記入口端は前記ケースの内部と連通し、且つ前記出口端は前記フレームアレスタユニットと連通し、前記通気膜は前記フレームアレスタユニットに固定される防爆弁。
【請求項2】
前記フレームアレスタユニットは前記本体から離れる第1端と、前記第1端と反対側に設置される第2端とを含み、
前記通気膜は前記第1端に固定され、
前記本体の前記出口端は前記第2端に接続され、前記本体の前記入口端は前記ケースに接続される請求項に記載の防爆弁。
【請求項3】
前記防爆弁は第1濾過構造をさらに含み、前記第1濾過構造は前記本体の入口端に設置される請求項に記載の防爆弁。
【請求項4】
前記本体の内部には前記入口端と前記出口端を連通する流路が形成され、
前記防爆弁は第2濾過構造をさらに含み、前記第2濾過構造は前記本体の流路内に設置される請求項に記載の防爆弁。
【請求項5】
前記第2濾過構造は前記本体の流路内に可動に設置され、
前記防爆弁は弾性部材をさらに含み、前記弾性部材は前記第2濾過構造と前記フレームアレスタユニットを接続することに用いられる請求項に記載の防爆弁。
【請求項6】
第1濾過構造及び第2濾過構造は濾過網であり、第1濾過構造のメッシュ数は第2濾過構造のメッシュ数よりも小さい請求項に記載の防爆弁。
【請求項7】
フレームアレスタユニットは防火ディスク及び防火ディスクハウジングを含み、前記防火ディスクは前記防火ディスクハウジング内に固定され、前記防火ディスクハウジングは本体の出口端に固定される請求項1~のいずれか1項に記載の防爆弁。
【請求項8】
前記防火ディスクの横断面に複数の通路が形成される請求項に記載の防爆弁。
【請求項9】
前記防火ディスクの通路は三角形の通路又は波形の通路である請求項に記載の防爆弁。
【請求項10】
前記本体は徐々に拡大する構造であり、前記本体の断面積は入口端から前記出口端へ徐々に拡大する請求項のいずれか1項に記載の防爆弁。
【請求項11】
前記本体の外壁に複数の放熱フィンが設置され、前記複数の放熱フィンは前記本体の周方向に沿って前記外壁に間隔をあけて設置される請求項10のいずれか1項に記載の防爆弁。
【請求項12】
前記防爆弁は弁カバーをさらに含み、
前記弁カバーは前記フレームアレスタユニットに取り外し可能に接続することに用いられ、前記弁カバーに通気孔が開口され、且つ前記通気膜は前記弁カバーと前記フレームアレスタユニットとの間に位置する請求項11のいずれか1項に記載の防爆弁。
【請求項13】
電池パックであって、請求項1~12のいずれか1項に記載の防爆弁、ケース及び複数の電池モジュールを含み、
前記複数の電池モジュールは前記ケース内に収容され、
前記防爆弁は前記ケースに設置され且つ前記ケースの内部と連通する電池パック。
【請求項14】
電気エネルギーを供給することに用いられる請求項13に記載の電池パックを含むことを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年02月28日に提出された、名称が「防爆弁、電池パック及び装置」である中国特許出願202010128393.Xの優先権を主張し、当該出願の全内容は援用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
技術分野
本願の実施形態は、電池分野に関し、特に防爆弁、電池パック及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術
電池を動力源として使用する電気自動車などの装置では、電池が、機械的、電気的、熱的などの外部環境により励起されるとき、暴走リスクが存在し、ひいては火災、爆発などの壊滅的な事故を引き起こす可能性がある。
【0004】
電池パック内の電池は、熱暴走が発生したときに外部に大量のエネルギーを放出し、同時に大量の高温の暴走ガスと粒子の混合物を生成し、且つ燃焼火炎を噴出し及び/又は高温火花を発生させる可能性があり、暴走行動は電池パックに強い機械的衝撃及び熱危害をもたらし、例えば、噴出された燃焼火炎及び高温火花は電池パック内の温度を高速に上昇させ、電池パックの自着火をもたらし、極めて大きな安全上のリスクをもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術に存在する欠陥に鑑みて、本願の目的は、暴走ガスを効果的に排出でき、難燃化、防火及び降温を実現できる防爆弁、電池パック及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するために、一態様では、本願は防爆弁を提供し、防火部材及び通気膜を含み、防火部材は電池パックのケースに接続することに用いられ、且つ通気膜は防火部材に固定され、電池パックは順に防火部材及び通気膜を介して外部とのガス交換を行うことができる。
【0007】
暴走生成物が防爆弁を通過したとき、燃焼火炎及び高温火花が防火部材を通過して消火除去され、且つ高温の暴走ガスが防火部材を通過して降温され、最後に未燃の暴走ガスが直接排出され、それにより、本願の防爆弁は、暴走ガスを効果的に排出できる。
【0008】
一実施例では、防火部材はフレームアレスタユニット及び本体を含み、本体は入口端及び出口端を有し、入口端はケースの内部と連通し、且つ出口端はフレームアレスタユニットと連通し、通気膜はフレームアレスタユニットに固定される。
【0009】
フレームアレスタユニットは防火難燃化及び高温の暴走ガスを降温する役割を有する。通気膜は、一方では、防爆弁をシールする役割を果たし、水蒸気の侵入を防止し、他方では、電池パック内外の気圧のバランスを効果的に確保できる。
【0010】
一実施例では、フレームアレスタユニットは本体から離れる第1端と、第1端と反対側に設置される第2端とを有し、通気膜は第1端に固定され、本体の出口端は第2端に接続され、本体の入口端はケースに接続される。
【0011】
一実施例では、防爆弁は第1濾過構造をさらに含み、第1濾過構造は本体の入口端に設置される。
【0012】
第1濾過構造は、大部分の固体粒子又は溶融物を遮断し、暴走生成物中の固体粒子又は溶融物を濾過除去することができる。
【0013】
一実施例では、本体の内部には入口端と出口端を連通する流路が形成され、防爆弁は第2濾過構造をさらに含み、第2濾過構造は本体の流路内に設置される。
【0014】
第2濾過構造は、防火ディスクの通路を詰まりやすい小さな固定粒子を濾過除去できる。
【0015】
一実施例では、第2濾過構造は本体の流路内に可動に設置され、防爆弁は弾性部材をさらに含み、弾性部材は第2濾過構造とフレームアレスタユニットを接続することに用いられる。
【0016】
弾性部材の弾性作用により、第2濾過構造は気圧による力で流路に沿って前後に揺動し、それにより第2濾過構造に付着した固体粒子を振り落とし、固体粒子が第2濾過構造を詰まる可能性を低減させることができる。また、可動に設置された第2濾過構造と本体の流路が分離でき、それによりさらなる気流通路が形成され、防爆弁の圧力解放効率を効果的に向上させる。
【0017】
一実施例では、第1濾過構造と第2濾過構造は濾過網であり、第1濾過構造のメッシュ数は第2濾過構造のメッシュ数よりも小さい。
【0018】
一実施例では、フレームアレスタユニットは防火ディスク及び防火ディスクハウジングを含み、防火ディスクは防火ディスクハウジング内に固定され、防火ディスクハウジングは本体の出口端に固定される。
【0019】
防火ディスクハウジングは、フレームアレスタユニットと本体との接続を実現するために、本体の出口端に溶接して固定されてもよい。
【0020】
一実施例では、防火ディスクの横断面に複数の通路が形成される。
【0021】
防火ディスクの横断面に複数の通路が形成され、燃焼火炎及び高温火花を消火し、且つ高温の暴走ガスの温度を下げた後に暴走ガスを通過させることに用いられる。
【0022】
一実施例では、防火ディスクの通路は三角形の通路又は波形の通路である。
【0023】
防火ディスクの通路は三角形の通路又は波形の通路であり、防火ディスクのモール効果を促進でき、それにより、防火ディスクは燃焼火炎及び高温火花を効果的に消火し、且つ高温の暴走ガスの温度を下げることができる。
【0024】
一実施例では、本体は徐々に拡大する構造であり、本体の断面積は入口端から出口端へ徐々に拡大する。
【0025】
徐々に拡大する構造の本体は、ガス流れの断面面積を大きくして、排出されたガスの流量を低減させ、それにより防爆弁の防火効果を向上させることができる。
【0026】
一実施例では、本体の外壁に複数の放熱フィンが設置され、複数の放熱フィンは本体の周方向に沿って外壁に間隔をあけて設置される。
【0027】
放熱フィンにより防火部材が吸収した熱を効果的に排出し、電池パックの熱暴走による高温の周囲環境への悪影響を低減させ、防火部材の内部温度が高すぎて防火効果が弱くなることを回避する。
【0028】
一実施例では、防爆弁は弁カバーをさらに含み、弁カバーはフレームアレスタユニットに取り外し可能に接続することに用いられ、弁カバーに通気孔が開口され、且つ通気膜は弁カバーとフレームアレスタユニットとの間に位置する。
【0029】
弁カバーは、スナップでフレームアレスタユニットに取り外し可能に接続され、電池パック内の気圧が所定の閾値になったとき、弁カバーを開いて圧力解放の目的を実現することができる。
【0030】
上記目的を実現するために、別の態様では、本願は電池パックを提供し、上記防爆弁、ケース及び複数の電池モジュールを含み、複数の電池モジュールはケース内に収容され、防爆弁はケースに設置され且つケースの内部と連通する。
【0031】
上記目的を実現するために、さらに別の態様では、本願は装置を提供し、上記電池パックを含み、電池パックが電気エネルギーを供給することに用いられる。
【0032】
上記説明される防爆弁、電池パック及び装置では、電池パック内の複数の電池モジュールは、熱暴走が発生したときに外部に大量のエネルギーを放出し、同時に暴走生成物を生成し、暴走生成物は、大量の高温の暴走ガス、粒子の混合物、及び噴出された燃焼火炎又は発生した高温火花を含み、高温火花が可燃性ガスを引火しやすく、それにより電池パック内の温度を高速に上昇させる。本願の防爆弁は、本願の電池パックの使用過程で、電池パックのケース内部に熱暴走が発生したとき、ケース内部の気圧が急増するため、電池パックが防爆弁により圧力を解放し、高温の暴走ガスの衝撃で通気膜を溶解させて、スムーズな気流通路を形成する。暴走生成物が防爆弁を通過したとき、燃焼火炎及び高温火花が防火部材を通過して消火除去され、且つ高温の暴走ガスが防火部材を通過して降温され、最後に未燃の暴走ガスが直接排出され、それにより、本願の防爆弁は、暴走ガスを効果的に排出でき、且つ難燃化、防火及び降温を実現でき、電池パックの自着火を防止し、それにより電池パックの爆発を防止し、同時に、高温の暴走ガスが防爆弁以外の他の可燃物又は可燃性ガスを引火することを効果的に防止し、より深刻な安全問題を引き起こすことを回避することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本願の実施例の技術案をより明確に説明するために、以下、本願の実施例に使用される必要がある図面を簡単に説明し、明らかなように、以下に説明される図面は本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者が、創造的な労働を必要とせずに、さらに図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【0034】
図1】本願の実施例に係る電池パックの斜視図である。
図2図1の丸で囲んだ部分の拡大図である。
図3】本願の実施例に係る防爆弁の斜視図である。
図4】別の角度から見た図3の防爆弁の斜視図である。
図5】本願の実施例に係る防爆弁の分解斜視図である。
図6】本願の実施例に係る防爆弁の部分分解斜視図である。
図7】本願の実施例に係る防爆弁のフレームアレスタユニットの防火ディスクの模式図である。
図8】本願の実施例に係る防爆弁の本体の斜視図である。
図9】別の角度から見た本願の実施例に係る防爆弁の本体の斜視図である。
図10】本願の実施例に係る防爆弁の第2濾過網の模式図である。
【0035】
図面では、図面は実際の比例で描かれているものではない。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面は本願の実施例を示しており、且つ理解されるように、開示されている実施例が本願の例に過ぎず、本願が様々な形態で実施され得、従って、本明細書に開示されている具体的な細部は、限定するものとして理解されるべきではなく、特許請求の範囲の基礎かつ代表的な基礎として、当業者が様々な形態で本願を実施するように教示するためのものに過ぎない。
【0037】
本願の説明では、特に明確に規定及び限定がない限り、「第1」、「第2」という用語は、説明するためのものに過ぎず、相対的な重要性を指示又は暗示するものとして理解できず、「複数」という用語は、特に規定又は説明がない限り、2つ以上(2つを含む)を意味する。「接続」という用語は、広い意味で理解されるべきであり、例えば、「接続」は、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続、又は一体的接続、又は電気的接続、又は信号接続であってもよく、「接続」は、直接連結であってもよく、中間媒体を介した間接的連結であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本願での具体的な意味を理解することができる。
【0038】
本明細書の説明では、理解する必要があるように、本願の実施例に説明される「上」、「下」、「前」、「後」などの方位詞は、図面に示される角度で説明されるものであり、本願の実施例を限定するものとして理解されるべきではない。
【0039】
以下の説明に現れる方位詞はいずれも図示される方向であり、本願の具体的な構造を限定するものではない。本願の説明では、説明する必要があるように、特に明確に規定限定されない限り、「取り付け」、「連結」、「接続」という用語は、広い意味で理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続又は一体的接続であってもよく、直接連結であってもよく、中間媒体を介した間接的連結であってもよい。当業者であれば、具体的な状況に応じて上記用語の本願での具体的な意味を理解することができる。
【0040】
以下、具体的な実施例及び図面を参照しながら、本願をさらに詳細に説明する。
【0041】
本願の装置とは、本願に係る電池パックPを電源として使用する装置であり、電池パックPは電気エネルギーを供給することに用いられる。装置は本体及び本願に係る電池パックPを含み、電池パックPは本体に設置される。装置は船舶、車両などであってもよい。車両は新エネルギー自動車であり、純電気自動車であってもよく、ハイブリッド自動車又はレンジエクステンダー自動車であってもよい。車両の本体には駆動モータが設置され、駆動モータは電池パックPに電気的に接続され、電池パックPは電気エネルギーを供給し、駆動モータは伝動機構を介して車両の本体の車輪に接続され、それにより自動車の走行を駆動する。また、電池パックPはさらに、電気エネルギーを供給するためにエネルギー貯蔵電気キャビネットに用いられてもよい。
【0042】
図1及び図2に示される例を参照し、本願に係る電池パックPは、本願に係る防爆弁P10、ケースP20及び複数の電池モジュールP30を含む。複数の電池モジュールP30はケースP20内に収容される。本願に係る防爆弁P10はケースP20に設置され且つケースP20の内部と連通する。
【0043】
電池モジュールP30はケースP20内に配列して配置される。電池モジュールP30は複数の電池を含む。電池は、ハードケース電池(又は、缶型電池と呼ばれる)又はソフトパック電池(又は、パウチ型電池と呼ばれる)であってもよい。ハードケース電池は、電極ユニット、電池ケース、トップカバー、電極端子、防爆弁及び注入口などを含む。電池ケースの内部に収容キャビティが形成されて、電極ユニット及び電解液を収容する。電極ユニットは、正極板、負極板及び正極板と負極板を分離する分離膜を含む。ソフトパック電池は、包装袋(例えば、アルミニウムプラスチック膜で形成される)、電極ユニット(ハードケース電池の構成及び成形と同様である)及びタブを含む。
【0044】
図1図5に示される例を参照すると、本願に係る防爆弁P10は防火部材1及び通気膜2を含む。防火部材1は電池パックPのケースP20に接続することに用いられ、且つ通気膜2は防火部材1に固定され、電池パックPは順に防火部材1及び通気膜2を介して外部とのガス交換を行うことができる。通気膜2は防火部材1に溶接して固定されてもよい。
【0045】
電池パックP内の複数の電池モジュールP30は、熱暴走が発生したときに外部に大量のエネルギーを放出し、同時に暴走生成物を生成し、暴走生成物は、大量の高温の暴走ガス、固体粒子の混合物、及び噴出された燃焼火炎又は発生した高温火花を含み、高温火花が可燃性ガスを引火しやすく、それにより電池パックP内の温度を高速に上昇させる。本願の防爆弁P10は、本願の電池パックPの使用過程で、電池パックPのケースP20の内部に熱暴走が発生したとき、ケースP20内部の気圧が急増するため、電池パックPが防爆弁P10により圧力を解放し、暴走ガスの衝撃で通気膜2を溶解させて、スムーズな気流通路を形成する。暴走生成物が防爆弁P10を通過したとき、燃焼火炎及び高温火花が防火部材1を通過して消火除去され、且つ高温の暴走ガスが防火部材1を通過して降温され、最後に未燃の暴走ガスが直接排出され、それにより、本願の防爆弁P10は、暴走ガスを効果的に排出でき、且つ難燃化、防火及び降温を実現でき、電池パックPの自着火を防止し、それにより電池パックPの爆発を防止し、同時に、高温の暴走ガスが防爆弁P10以外の他の可燃物又は可燃性ガスを引火することを効果的に防止し、より深刻な安全問題を引き起こすことを回避することもできる。
【0046】
図2図6を参照し、いくつかの実施例では、具体的には、防火部材1はフレームアレスタユニット11及び本体12を含む。フレームアレスタユニット11は本体12から離れる第1端111aと、第1端111aと反対側に設置される第2端111bとを有する。本体12は入口端121及び出口端122を有する。本体12は、入口端121がケースP20の内部と連通し、且つ出口端122がフレームアレスタユニット11と連通する。通気膜2はフレームアレスタユニット11に固定される。フレームアレスタユニット11は、防火難燃化及び高温の暴走ガスを降温する役割を有する。通気膜2は具体的に、フレームアレスタユニット11の第1端111aに固定されてもよい。通気膜2の具体的な固定位置はこれに限定されず、例えば、通気膜2はフレームアレスタユニット11の第2端111bに固定されてもよい。通気膜2は、一方では、防爆弁P10をシールする役割を果たし、水蒸気の侵入を防止し、他方では、電池パックP内外の気圧のバランスを効果的に確保できる。
【0047】
ケースP20に防爆口(図示せず)が開口され、防火部材1は防爆口に接続されてケースP20の内部と連通する。防火部材1は本体12を介してケースP20に接続されてもよい。図2図4に示される実施例では、具体的には、本体12の出口端122はフレームアレスタユニット11の第2端111bに接続され、本体12の入口端121はケースP20に接続される。本体12とケースP20との接続はこれに限定されず、本体12の出口端122がケースP20に接続されてもよく、もちろん、入口端121と出口端122との間の任意の部位がケースP20に接続されてもよい。また、防火部材1は、フレームアレスタユニット11を介してケースP20に接続されてもよく、フレームアレスタユニット11の第1端111aがケースP20に接続されてもよく、フレームアレスタユニット11の第2端111bがケースP20に接続されてもよく、第1端111aと第2端111bとの間の任意の部位がケースP20に接続されてもよい。すなわち、防火部材1のケースP20と接続する接続位置は限られない。且つ、防火部材1とケースP20との接続方式も限られず、溶接などの取り外し不可能な接続方式で接続されてもよい。取り付け及び取り外しを容易にすることを考慮すると、ねじ接続などの取り外し可能な接続方式で防火部材1とケースP20を接続してもよい。図2図4に示すように、いくつかの実施例では、本体12はケースP20に接続され、本体12の入口端121はケースP20の防爆口の規格と一致し、且つ本体12の入口端121は防爆口に溶接して接続されるが、接続方式はこれに限定されず、シール接続を確保すればよい。本体12の出口端122はフレームアレスタユニット11の第2端111bに接続され、本体12の出口端122はフレームアレスタユニット11の第2端111bの規格と一致し、且つ本体12の出口端122はフレームアレスタユニット11の第2端111bに溶接して接続されるが、接続方式はこれに限定されず、シール接続を確保すればよい。
【0048】
図5図6に示すように、いくつかの実施例では、具体的には、フレームアレスタユニット11は防火ディスク112及び防火ディスクハウジング113を含む。防火ディスク112は防火ディスクハウジング113内に固定される。防火ディスクハウジング113は本体12の出口端122に固定される。防火ディスクハウジング113は、フレームアレスタユニット11と本体12との接続を実現するために本体12の出口端122に溶接して固定されてもよい。しかし、固定方式はこれに限定されず、シール固定を確保すればよい。
【0049】
図5図7に示される例を参照し、防火ディスク112の横断面には複数の通路112aが形成されて、燃焼火炎及び高温火花を消火し、且つ高温の暴走ガスの温度を下げた後に暴走ガスを通過させることに用いられる。具体的には、防火ディスク112の通路112aは三角形の通路又は波形の通路であり、防火ディスク112のモール効果を促進でき、それにより、防火ディスク112は、燃焼火炎及び高温火花を効果的に消火し、且つ高温の暴走ガスの温度を下げることができる。
【0050】
図7に示される実施例では、防火ディスク112は円形である。防火ディスク112の通路112aは三角形の通路である。防火ディスク112は、波形の薄板材料及び平板材料を防火ディスク112の径方向に沿って防火ディスク112の中心軸に交互に巻き取って、複数の三角形の細孔(すなわち、横断面が三角形の複数の通路112a)を形成するものであってもよい。この場合、防火ディスク112は、火炎に直線の流れ通路を提供する。防火ディスク112は、2つの方向に折りたたまれた波形の薄板材料を防火ディスク112の径方向に沿って防火ディスク112の中心軸に交互に巻き取って、複数の波形の細孔(すなわち、横断面が波形の複数の通路112a)を形成するものであってもよい。この場合、防火ディスク112はさらに、火炎に曲げた流れ通路を提供する。防火ディスク112の通路112aが狭く、防火の役割を果たすことができる。同時に、通路112aの数が多く、細孔率が高く、流れ可能なガスの流量が大きく、熱暴走によるガスが防爆弁P10をスムーズに通過して排出されることを確保する。防火ディスク112は、ステンレス鋼片などのステンレス鋼材料で巻き取られてもよく、それにより、防火ディスク112が効果的に機能することに基づいて低い製造コストを確保する。
【0051】
防火ディスクハウジング113は、ステンレス鋼又はアルミニウム合金などの金属材料を用いてもよい。図5及び図6に示される実施例では、具体的には、防火ディスクハウジング113は第1固定フランジ113a及び第2固定フランジ113bを含む。第1固定フランジ113aと第2固定フランジ113bは、防火ディスク112の厚さ方向Tの両側から防火ディスク112を押し付けて固定し、第1固定フランジ113aと第2固定フランジ113bは、ボルトで固定されて、防火ディスク112を固定し、それにより防火ディスク112を固定し且つそのシール性を確保する。ここでは補足説明として、フレームアレスタユニット11が本体12に接続されるとき、第1固定フランジ113aと第2固定フランジ113bはボルトで本体12の出口端122に固定されてもよい。
【0052】
防火部材1の防火原理は2つの面に分けることができ、1つの面は伝熱作用であり、着火点よりも低いと燃焼が停止するという原理に基づき、火炎が防火ディスク112の複数の小さな通路112aを通過して複数の小さな火炎になると、防火ディスク112が小さな火炎と通路112aの通路壁との接触面積をできるだけ大きくして、伝熱を強化し、火炎の温度を着火点以下に降下させ、それにより火炎が広がるのを阻止する。別の面はモール効果(防火原理の主なメカニズムとする)であり、燃焼と爆発が分子間の直接反応ではなく、外部エネルギーによる励起であり、分子結合が破壊され、活性化分子が生成され、活性化分子が活性遊離基に分裂され、遊離基が他の分子と衝突して新生成物を生成し、燃焼している可燃性ガスが狭い通路112aを通過したとき、遊離基と通路壁との衝突確率が高くなり、反応に参加する遊離基が減少し、通路112aが所定の程度まで狭くなると、遊離基と通路壁との衝突が支配的になり、遊離基の数が急激に減少するため、反応が継続できなくなり、すなわち燃焼反応が防火ディスク112により継続的に伝播できなくなり、それにより防火、難燃化及び降温の役割を果たす。
【0053】
図5及び図6を参照し、いくつかの実施例では、通気膜2は防火ディスクハウジング113に固定されてもよい。通気膜2は円形であってもよいが、これに限定されない。通気膜2は防水通気特性を有するポリテトラフルオロエチレン材質で製造されてもよく、電池パックP内の気圧と外部気圧とのバランスを維持することに用いられる。通気膜2の固定を容易にするために、通気膜2は環状溝に固定されてもよく、通気膜2のエッジを包んで固定し、通気膜2は環状溝を介して防火ディスクハウジング113にシールして溶接される。
【0054】
本体12は、ステンレス鋼材料などの熱吸収効果に優れた軽質耐火材料を選択してもよく、軽質耐火材料が熱吸収層を形成し、高温ガスの温度を下げることができる。
【0055】
図5及び図6図8及び図9に示すように、いくつかの実施例では、本体12は徐々に拡大する構造であり、本体12の断面積は入口端121から出口端122へ徐々に拡大する。徐々に拡大する構造の本体12は、ガス流れの断面面積を大きくして、排出されたガスの流量を低減させ、それにより防爆弁P10の防火効果を向上させることができる。
【0056】
図5図6図8及び図9に示すように、いくつかの実施例では、本体12の入口端121はケースP20に接続され、本体12の出口端122はフレームアレスタユニット11の第2端111bに接続され、本体12の外壁124には複数の放熱フィン6が設置され得る。複数の放熱フィン6は、本体12の周方向Cに沿って外壁124に間隔をあけて設置される。放熱フィン6により防火部材1が吸収した熱を効果的に排出し、電池パックPの熱暴走による高温の周囲環境への悪影響を低減させ、防火部材1の内部温度が高すぎて防火効果が弱くなることを回避する。放熱フィン6は、ステンレス鋼材料などの伝熱効果に優れた耐火材料を用いてもよい。放熱フィン6の形状は扇形であってもよく、放熱効果に優れた。もちろん、他の形状であってもよい。放熱フィン6は、取り付けを容易にするために、スナップで外壁124に形成された凹溝124a内に固定されてもよい。
【0057】
図5に示すように、いくつかの実施例では、防爆弁P10は第1濾過構造3をさらに含んでもよい。第1濾過構造3は本体12の入口端121に設置される。第1濾過構造3は耐高温材料で製造される。第1濾過構造3は孔径の小さな濾過網であってもよい。本体12の入口端121に開口部が設けられ、第1濾過構造3を取り付けることに用いられ、第1濾過構造3の形状及び大きさは本体12の入口端121に適合され、第1濾過構造3は、入口端121にシールして取り付けられる。電池パックPの熱暴走が発生したとき、常に大量の高温の固体粒子又は溶融物を生成し、冷却後に防爆弁P10に付着し、防火部材1及び通気膜2を詰まる可能性があり、その結果、電池パックP内の大量の暴走ガスを効果的に排出できず、電池パックPが圧力を蓄積し、電池パックPが爆発する可能性がある。第1濾過構造3は、大部分の固体粒子又は溶融物を遮断し、暴走生成物中の固体粒子又は溶融物を濾過除去することができる。
【0058】
図5及び図6に示すように、いくつかの実施例では、本体12の内部には入口端121と出口端122を連通する流路123が形成される。防爆弁P10は第2濾過構造4をさらに含んでもよい。第2濾過構造4は本体12の流路123内に設置されて、暴走生成物をさらに濾過し、第1濾過構造3により濾過除去されていない固定粒子又は溶融物を濾過除去し、さらに固定粒子又は溶融物の排出を低減させ、且つ防火部材1及び通気膜2を詰まることを防止することに寄与する。第2濾過構造4は耐高温材料で製造される。第2濾過構造4は孔径の小さな濾過網であってもよい。図10に示される例を参照すると、第2濾過構造4の形状及び大きさは本体12の流路123に適合される。
【0059】
図5及び図6に示される例を参照すると、第1濾過構造3と第2濾過構造4は濾過網であってもよく、第1濾過構造3のメッシュ数は第2濾過構造4のメッシュ数よりも小さい。それにより、先ず第1濾過構造3により大きな固定粒子を濾過除去し、さらに第2濾過構造4により防火ディスク112の通路112aを詰まりやすい小さな固定粒子を濾過除去する。選択可能に、第1濾過構造3のメッシュ数は5メッシュ~10メッシュの間の範囲である。選択可能に、第2濾過構造4のメッシュ数は10メッシュ~30メッシュの間の範囲である。
【0060】
第2濾過構造4は本体12の流路123内に可動に設置される。防爆弁P10は弾性部材5をさらに含み、弾性部材5は弾性を有し、弾性部材5の形状は限られず、第2濾過構造4に所定の弾性的支持を提供できればよい。弾性部材5は耐高温特性を有する必要があり、弾性部材5はばねなどの弾性部材であってもよい。弾性部材5は防火ディスク112の中心に溶接して固定されてもよい。弾性部材5は第2濾過構造4とフレームアレスタユニット11を接続することに用いられる。第2濾過構造4とフレームアレスタユニット11は弾性部材5を介して接続され、電池パックPの熱暴走が発生したとき、高温の暴走ガスが流路123に流入し、且つ気流が無秩序な方向での乱流であり、第2濾過構造4が受けた気圧が不均一であり、大きな気流が第2濾過構造4を衝撃し、弾性部材5の弾性作用により、第2濾過構造4は気圧による力で流路123に沿って前後に揺動し、それにより、第2濾過構造4に付着した固体粒子を振り落とし、固体粒子が第2濾過構造4を詰まる可能性を低減させることができる。また、可動に設置された第2濾過構造4と本体12の流路123が分離でき、それによりさらなる気流通路が形成され、防爆弁P10の圧力解放効率を効果的に向上させる。
【0061】
図5及び図6を参照し、いくつかの実施例では、防爆弁P10は弁カバー7をさらに含んでもよい。弁カバー7はフレームアレスタユニット11に取り外し可能に接続することに用いられる。弁カバー7に通気孔71が開口され、且つ通気膜2は弁カバー7とフレームアレスタユニット11との間に位置する。
【0062】
図5及び図6に示すように、いくつかの実施例では、弁カバー7は円形のプラスチックカバーであり、防火ディスク112の形状に適合され、フレームアレスタユニット11との取り付けが容易になる。通気孔71はガス交換に用いられ、通気孔71は任意の形状であってもよく、図5及び図6に示される通気孔8は長方形である。電池パックPが正常に動作する条件で、防爆弁P10の設置により、電池パックP内外の気圧のバランスを確保でき、且つ電池パックPの熱暴走が発生して気圧が所定の圧力になったとき、発生した暴走ガスが弁カバー7を開いてケースP20外に排出されて、スムーズな気流通路を形成することができる。
【0063】
弁カバー7は、スナップでフレームアレスタユニット11に取り外し可能に接続されてもよく、電池パックP内の気圧が所定の閾値になったとき、弁カバー7を開いて圧力解放の目的を実現する。図5に示すように、弁カバー7にスナップ72が設置され、防火ディスクハウジング113に係止溝113cが設置され、弁カバー7とフレームアレスタユニット11との間は、スナップ72及び係止溝113cを介して接続される。もちろん、スナップと係止溝は反対側に設置されてもよい。
【0064】
通気膜2と弁カバー7との間に、防爆弁P10のシール性能を実現するために、シールリングなどのシール部材が設けられてもよい。
【0065】
いくつかの実施例では、電池の熱暴走が発生したとき、気圧が急増するため、暴走ガスの衝撃で通気膜2を溶解させ、弁カバー7を開いて、スムーズな気流通路を形成する。発生した高温の暴走ガス及び高温の固体粒子が防爆弁P10を通過したとき、第1濾過構造3は先ず大部分の大きな固体粒子を除去し、次に第2濾過構造4はさらに小さな固体粒子を濾過除去し、同時に、弾性部材5の揺動により、第2濾過構造4に付着した固定粒子又は溶融物を振り落とし、固体粒子又は溶融物が気流通路を詰まることを防止する。燃焼火炎及び高温火花が防火ディスクユニット1に侵入して除去され、高温の暴走ガスの温度を下げる。最後に、未燃の暴走ガスが直接排出され、偶発的な自着火現象が発生せず、且つ電池パックP内外の他の可燃物を引火する状況も発生せず、それにより電池パックPの安全を確保する。
【0066】
以上の詳細な説明は、複数の例示的な実施例を説明するものであるが、本明細書は明確に開示されている組み合わせに限定されることを意図するものではない。従って、特に説明されない限り、本明細書に開示されている様々な特徴は、簡潔にするために示されていない複数の別の組み合わせを形成するように組み合わせられ得る。
【0067】
以上は、本願の選択可能な実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、当業者であれば、本願に対して様々な変更や変化を行うことができる。本願の精神及び原則内に行った任意の修正、等価置換、改良などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0068】
P電池パック 123流路
P10防爆弁 124外壁
1防火部材 124a凹溝
11フレームアレスタユニット 2通気膜
111a第1端 3第1濾過構造
111b第2端 4第2濾過構造
112防火ディスク 5弾性部材
112a通路 6放熱フィン
113防火ディスクハウジング 7弁カバー
113a第1固定フランジ 71通気孔
113b第2固定フランジ 72スナップ
113c係止溝 P20ケース
12本体 P30電池
121入口端 T厚さ方向
122出口端
図1
図2
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