(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】フッ素含有キラルアミン系化合物の合成方法
(51)【国際特許分類】
C12P 7/18 20060101AFI20240207BHJP
C07C 323/24 20060101ALI20240207BHJP
C07C 211/29 20060101ALI20240207BHJP
C12N 15/54 20060101ALN20240207BHJP
【FI】
C12P7/18
C07C323/24
C07C211/29
C12N15/54 ZNA
(21)【出願番号】P 2022551242
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 CN2020082595
(87)【国際公開番号】W WO2021168988
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-09-02
(31)【優先権主張番号】202010118880.8
(32)【優先日】2020-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522152821
【氏名又は名称】アシムケム ラボラトリーズ (ターンジン) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ホーン,ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ,ゲージ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,イー
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ナー
(72)【発明者】
【氏名】リ,シャン
(72)【発明者】
【氏名】ジァン,シャンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リュ,シュンシン
【審査官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110592042(CN,A)
【文献】Organic Letters,2015年,vol.17,p.2431-2433
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P 7/18
C07C 323/24
C07C 211/29
C12N 15/54
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有キラルアミン系化合物の合成方法であって、前記合成方法は、
アミノドナーとフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物がトランスアミナーゼの触媒下で反応して前記フッ素含有キラルアミン系化合物を生成することを含み、
前記トランスアミナーゼは、ChromobacteriumviolaceumDSM30191(CVTA)の突然変異体に由来し、前記突然変異体は、配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4に示す
アミノ酸
配列を有し、
前記フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物は、
以下の:
【化1】
から選択されるいずれか1つである、フッ素含有キラルアミン系化合物の合成方法。
【請求項2】
リン酸緩衝液と前記アミノドナーを混合し、第1混合液を得て、
前記第1混合液に前記フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を添加し、第2混合液を得ることと、
前記第2混合液に前記トランスアミナーゼを添加して、反応混合液を得ることと、
前記反応混合液から前記フッ素含有キラルアミン系化合物を分離して得ることとを含む、請求項1に記載の合成方法。
【請求項3】
前記第1混合液に前記フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を添加する前に、前記合成方法は、前記第1混合液のpH値を7.0~9.0に調整することをさらに含む、請求項2に記載の合成方法。
【請求項4】
前記第2混合液に前記トランスアミナーゼを添加し、かつ前記トランスアミナーゼを添加した前記第2混合液のpHを7.0~9.0に調整して、前記反応混合液を得ることをさらに含む、請求項3に記載の合成方法。
【請求項5】
前記反応混合液から前記フッ素含有キラルアミン系化合物を分離して得ることは、
前記反応混合液の酸性度を調整して前記トランスアミナーゼを変性させることと、
変性後の前記トランスアミナーゼを濾過除去して濾液を得ることと、
前記濾液を抽出して、前記フッ素含有キラルアミン系化合物を得ることとを含む、請求項2に記載の合成方法。
【請求項6】
前記反応混合液のpH値を1~2に調整する、請求項5に記載の合成方法。
【請求項7】
ジクロロメタンを用いて前記濾過を行う、請求項5に記載の合成方法。
【請求項8】
ジクロロメタンを用いて前記抽出を行う、請求項5に記載の合成方法。
【請求項9】
前記抽出は2~5回であり、前記抽出の後に、抽出した有機相を乾燥するステップをさらに含む、請求項5に記載の合成方法。
【請求項10】
毎回の抽出で得られた有機相を合わせて抽出物を得て、
前記抽出物を乾燥して、乾燥した有機相生成物を得て、
前記乾燥した有機相生成物を、温度<35℃、圧力≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮して、前記フッ素含有キラルアミン系化合物を得る、請求項5に記載の合成方法。
【請求項11】
前記トランスアミナーゼと前記フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物の質量比は0.4:1~1.0:1である、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項12】
前記フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物の濃度は60g/L~100g/Lである、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成方法。
【請求項13】
前記アミノドナーは、イソプロピルアミン、イソプロピルアミンの塩酸塩、アラニン、アニリン又はn-ブチルアミンから選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有化合物の合成分野に関し、具体的にはフッ素含有キラルアミン系化合物の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素含有化合物は、医薬及び農業化学において非常に重要な化合物の一つである。ここ10年間、フッ素含有薬物は以前になかった速度で増加した。そのため、グリーンであるとともに効率が高い合成方法を開発することは重要な役割を果たしている。フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物も、そのうちの1つの化合物
【化1】
である。このような基質を用いて重要なフッ素含有キラルアミン系化合物
【化2】
と
【化3】
を合成することができる。現在、フッ素含有ジヒドロキシケタールによるフッ素含有キラルアミンの合成方法は、主に以下のものがある。
【0003】
1.式1に示す反応経路による:アルカリ条件下で、フッ素含有ジヒドロキシケタール化合物1のC-C結合が容易に開裂し、トリフルオロ酢酸及び対応するフッ素含有エノール系化合物2を形成する。化合物3をマンニッヒ反応受容体として用い、マンニッヒ反応を経て化合物4を得て、さらにスルフィニル基保護を除去して目的生成物であるフッ素含有キラルアミン系化合物を得る。
【0004】
【化4】
2.式2に示す反応経路による:フッ素含有ジヒドロキシケタール化合物6とベンジルアミン系化合物を反応させ、キラルアミノ基を導入し、さらにベンジル基保護を除去して目的化合物8を得る。
【0005】
【化5】
式2
上記式1に示す経路の基質には限界があり、三段階反応を経てからこそ目的生成物を得ることができ、収率がやや低い。反応経路は長く、反応には化学試薬を用いて廃ガス、廃液、廃棄物の発生量が多い。式2に示す経路のステップは、二段階反応であるが、反応は、高価な金属リガンド又は触媒の使用を必要とする場合があり、高毒性化合物を使用する可能性もある。同様に、反応には化学試薬を用いて廃ガス、廃液、廃棄物の発生量が大きい。
【0006】
したがって、このようなフッ素含有ジヒドロキシケタール化合物に新たな合成方法を提供する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、従来技術におけるフッ素含有キラルアミン系化合物の合成経路が長いという問題を解決するためのフッ素含有キラルアミン系化合物の合成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、フッ素含有キラルアミン系化合物の合成方法を提供し、該合成方法は、アミノドナーとフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物がトランスアミナーゼの触媒下で反応してフッ素含有キラルアミン系化合物を生成することを含み、ここで、トランスアミナーゼは、Chromobacterium violaceum DSM30191(CVTA)(NCBI Reference Sequence:WP_011135573.1)、Fonsecaea pedrosoi CBS 271.37(NCBI Reference Sequence:XP_013286281.1)、Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae Ecl8(GenBank:CCN29541.1)、Mycobacterium goodii(GenBank:AKS36000.1)、Paracoccusdenitrificans(NCBI Reference Sequence:WP_011746975.1)、Penicillium brasilianum(GenBank:CEJ55334.1)、Enterobacter sp.TL3(NCBI Reference Sequence:WP_014885677.1)、Aspergillus terreusNIH2624(NCBI Reference Sequence:XP_001209325.1)、Exophiala spinifera(NCBI Reference Sequence:XP_016233821.1)、Deinococcus geothermalis(strain DSM 11300)(NCBI Reference Sequence:WP_011530545.1)、Geomyces destructans 20631-21(GdTA)in E.coli(GenBank:ELR05573.1)、Pseudomonas putida KT2440(NCBI Reference Sequence:WP_010954554.1)、Lysinibacillus sphaericus(NCBI Reference Sequence:WP_024363741.1)、Bacillus megaterium DSM 319(NCBI Reference Sequence:WP_013082219.1)、Trichoderma harzianum(GenBank:KKP07030.1)、Aspergillus fumigatus R-ATAs(AspFum)(NCBI Reference Sequence:XP_748821.1)、Geobacillus thermodenitrificans subsp. thermodenitrificans DSM 465(NCBI Reference Sequence:WP_008879436.1)、Cladophialophora bantiana CBS 173.52(NCBI Reference Sequence:XP_016617948.1)、Bacillus megaterium(NCBI Reference Sequence:WP_016763026.1)、Burkholderia thailandensis MSMB121(BtS-TA)(GenBank:AGK49399.1)、Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae MGH 78578(NCBI Reference Sequence:WP_002920226.1)、Geobacillus toebii(NCBI Reference Sequence:WP_062753894.1)及びTalaromyces cellulolyticus(GenBank:GAM37533.1)に由来する。
【0009】
さらに、トランスアミナーゼは、配列番号1、配列番号2、配列番号3又はSEQIDNO:4に示すアミノ酸配列を有する。
【0010】
さらに、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物は、以下の構造式Iを有する:
【化6】
構造式I、
ここで、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ原子含有アルキル基、ヘテロ原子含有シクロアルキル基、ヘテロ原子含有アリール基、アミド系化合物残基又はエーテル系化合物残基から選択され、R1とR2は、同一又は異なるH原子又はハロゲン原子であり、
より好ましくは、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物は、構造式IIで表される構造を有する:
【化7】
構造式II。
【0011】
さらに、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物は、以下から選択されるいずれか1つである:
【化8】
さらに、合成方法は、リン酸緩衝液とアミノドナーを混合し、第1混合液を得て、第1混合液にフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を添加し、第2混合液を得ることと、第2混合液にトランスアミナーゼを添加して、反応混合液を得ることと、反応混合液からフッ素含有キラルアミン系化合物を分離して得ることとを含む。
【0012】
さらに、第1混合液にフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を添加する前に、合成方法は、第1混合液のpH値を7.0~9.0に調整することをさらに含み、好ましくは、第2混合液にトランスアミナーゼを添加し、かつトランスアミナーゼを添加した第2混合液のpHを7.0~9.0に調整して、反応混合液を得る。
【0013】
さらに、反応混合液からフッ素含有キラルアミン系化合物を分離して得ることは、反応混合液の酸性度を調整してトランスアミナーゼを変性させ、好ましくは、反応混合液のpH値を1~2に調整し、変性後のトランスアミナーゼを濾過除去して濾液を得ることと、濾液を抽出して、フッ素含有キラルアミン系化合物を得ることとを含み、好ましくは、ジクロロメタンを用いて濾過を行い、好ましくは、ジクロロメタンを用いて抽出を行う。
【0014】
さらに、抽出は2~5回であり、抽出後に、抽出した有機相を乾燥するステップをさらに含み、好ましくは、毎回の抽出で得られた有機相を合わせて抽出物を得て、抽出物を乾燥して、乾燥した有機相生成物を得て、乾燥した有機相生成物を、温度<35℃、圧力≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮して、フッ素含有キラルアミン系化合物を得る。
【0015】
さらに、トランスアミナーゼとフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物の質量比は0.4:1~1.0:1である。
【0016】
さらに、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物の濃度は60g/L~100g/Lである。
【0017】
さらに、アミノドナーは、イソプロピルアミン、イソプロピルアミンの塩酸塩、アラニン、アニリン又はn-ブチルアミンから選択される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の技術案を応用し、本出願のトランスアミナーゼは、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物に対して基質特異性を有し、このような基質のフッ素含有キラルアミン系化合物への変換を効果的に触媒することができ、かつ、該トランスアミナーゼは、複数種のフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物に対して触媒活性を有し、反応選択性と活性はいずれも高い。該生物酵素触媒合成方法は、経路が短く、製品収率が高いだけでなく、生産コストを大幅に低下させ、有機溶剤と廃水、排気、固体廃棄物の発生を減少させる。
【0019】
本出願の一部を構成する図面は、本発明のより深い理解を提供するために用いられ、本発明の概略的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するために用いられ、本発明の不当な限定を構成するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施例13における異なる酵素量の同じ量の基質の変換率に対する影響を示す図である。
【
図2】本発明の実施例14における同じ酵素量の異なる濃度の基質の変換率に対する影響を示す図である。
【
図3】本発明の実施例15における異なるアミノドナーの同じ反応における基質の変換率に対する影響を示す図である。
【
図4】本発明の実施例16における異なる由来のトランスアミナーゼが同じ基質に対していずれも変換活性を有することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
なお、本出願における実施例及び実施例における特徴は、矛盾することなく相互に組み合わせてもよい。以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0022】
背景技術で述べたように、従来技術では、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を出発原料として使用してフッ素含有キラルアミン系化合物を合成するとき、反応経路が長くなるという欠点があるだけでなく、工業上の廃ガス、廃液、廃棄物が発生するという問題も存在する。この状況を改善するために、本出願の発明者らは、効率的で環境に優しいという観点から、従来の合成経路を改善しようと試みた。研究過程において、本発明者らは、出願者によって自ら開発されたトランスアミナーゼが、PLPを補酵素とするトランスアミナーゼの有する、ケトン系化合物を触媒する汎用触媒活性に加えて、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を触媒する活性も有することを見出した。そして、さらなる研究により、該トランスアミナーゼを用いてフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物基質を触媒すると、一段階反応で目的生成物が得られるだけでなく、基質の種類も広いことがわかった。該トランスアミナーゼを用いた生物学的変換反応の選択性が非常に高いため、目的生成物のee値が大幅に向上した。また、生物酵素触媒反応を採用して生産効率を大幅に向上させ、有機溶剤と廃ガス、廃液、廃棄物の発生を減少させる。
【0023】
上記の研究結果に基づいて、出願人は本出願の技術案を提出した。本出願の典型的な実施形態では、フッ素含有キラルアミン系化合物の合成方法を提供し、該合成方法は、アミノドナーとフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物がトランスアミナーゼの触媒下で反応してフッ素含有キラルアミン系化合物を生成することを含み、ここで、トランスアミナーゼは、Chromobacterium violaceum DSM30191(CVTA)(NCBI Reference Sequence:WP_011135573.1)、Fonsecaea pedrosoi CBS 271.37(NCBI Reference Sequence:XP_013286281.1)、Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae Ecl8(GenBank:CCN29541.1)、Mycobacterium goodii(GenBank:AKS36000.1)、Paracoccus denitrificans(NCBI Reference Sequence:WP_011746975.1)、Penicillium brasilianum(GenBank:CEJ55334.1)、Enterobacter sp.TL3(NCBI Reference Sequence:WP_014885677.1)、Aspergillus terreusNIH2624(NCBI Reference Sequence:XP_001209325.1)、Exophiala spinifera(NCBI Reference Sequence:XP_016233821.1)、Deinococcus geothermalis(strain DSM 11300)(NCBI Reference Sequence:WP_011530545.1)、Geomyces destructans 20631-21(GdTA)in E.coli(GenBank:ELR05573.1)、Pseudomonas putida KT2440(NCBI Reference Sequence:WP_010954554.1)、Lysinibacillus sphaericus(NCBI Reference Sequence:WP_024363741.1)、Bacillus megaterium DSM 319(NCBI Reference Sequence:WP_013082219.1)、Trichoderma harzianum(GenBank:KKP07030.1)、Aspergillus fumigatus R-ATAs(AspFum)(NCBI Reference Sequence:XP_748821.1)、Geobacillus thermodenitrificans subsp. thermodenitrificans DSM 465(NCBI Reference Sequence:WP_008879436.1)、Cladophialophora bantiana CBS 173.52(NCBI Reference Sequence:XP_016617948.1)、Bacillus megaterium(NCBI Reference Sequence:WP_016763026.1)、Burkholderia thailandensis MSMB121(BtS-TA)(GenBank:AGK49399.1)、Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae MGH 78578(NCBI Reference Sequence:WP_002920226.1)、Geobacillus toebii(NCBI Reference Sequence:WP_062753894.1)及びTalaromyces cellulolyticus(GenBank:GAM37533.1)に由来する。
【0024】
より好ましくは、該トランスアミナーゼは、以下の配列番号1、配列番号2、配列番号3又は配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する:
MQKQRTCSQWRELDAAHHLHPFTDTASLNQAGARVMTRGEGVYLWDCEGNKIIDGMAGLWCVNVGYGRKDFAEAARRQMEELPFYNTFYKTTHPAVVELSSLLAEVTPAGFDRVFYTNSGSESVDTMIRMVRRYWDVQGKPEKKTLIGRWWGYHGSTIGGASLGGFKYMHEQGDLPIPGMAHIEQPWWYKHGKDMTPDEFGVVAARWLEEKILEIGADKVAAFVGEPIQGAGGVIVPPATYWPEIERICRKYDVLLVADEVICGFGRTGEWFGHQHFGFQPDLFTAAKGLSSGYLPIGAVFVGKRVAEGLIAGGDFNHGFTYSGHPVCAAVAHANVAALRDEGIVQRVKDDIGPYMQKRWRETFSRFEHVDDVRGVGMLLAFTLVKNKAKRELFPDFGEIGTLCRDIFFRNNLIMDSCGDHIVCAPPLVMTRAEVDEMLAVAERCLEEFEQTLKARGLA(配列番号1)
MQKQRTCSQWRELDAAHHLHPFTDTASLNQAGARVMTRGEGVYLWDCEGNKIIDGMAGLWCVNVGYGRKDFAEAARRQMEELPFYNTFYKTTHPAVVELSSLLAEVTPAGFDRVFYTNSGSESVDTMIRMVRRYWDVQGKPEKKTLIGRWWGYHGSTIGGASLGGFKYMHEQGDLPIPGMAHIEQPWWYKHGKDMTPDEFGVVAARWLEEKILEIGADKVAAFVGEPIQGAGGVIVPPATYWPEIERICRKYDVLLVADEVICGFGRTGEWFGHQHFGFQPDLFTAAKGLSSGYLPIGAVFVGKRVAEGLIAGGDFNHGFTYSGHPVCAAVAHANVAALRDEGIVQRVKDDIGPYMQKRWRETFSRFEHVDDVRGVGMLLAFTLVKNKAKRELFPDFGEIGTLCRDIFFRNNLIMDSCGDHIVAAPPLVMTRAEVDEMLAVAERCLEEFEQTLKARGLA(配列番号2)
MQKQRTCSQWRELDAAHHLHPFTDTASLNQAGARVMTRGEGVYLWDCEGNKIIDGMAGLWCVNVGYGRKDFAEAARRQMEELPFYNTFYKTTHPAVVELSSLLAEVTPAGFDRVFYTNSGSESVDTMIRMVRRYWDVQGKPEKKTLIGRWWGYHGSTIGGASLGGFKYMHEQGDLPIPGMAHIEQPWWYKHGKDMTPDEFGVVAARWLEEKILEIGADKVAAFVGEPIQGAGGVIVPPATYWPEIERICRKYDVLLVADEVICGFGRTGEWFGHQHFGFQPDLFTAAKGLSSGYLPIGAVFVGKRVAEGLIAGGDFNHGFTYSGHPVCAAVAHANVAALRDEGIVQRVKDDIGPYMQKRWRETFSRFEHVDDVRGVGMLLAFTLVKNKAKRELFPDFGEIGTLCRDIFQRNNLIMDSCGDHIVSAPPLVMTRAEVDEMLAVAERCLEEFEQTLKARGLA(配列番号3)
MQKQRTCSQWRELDAAHHLHPFTDTASLNQAGARVMTRGEGVYLWDCEGNKIIDGMAGLWCVNVGYGRKDFAEAARRQMEELPFYNTFYKTTHPAVVELSSLLAEVTPAGFDRVFYTNSGSESVDTMIRMVRRYWDVQGKPEKKTLIGRWWGYHGSTIGGASLGGFKYMHEQGDLPIPGMAHIEQPWWYKHGKDMTPDEFGVVAARWLEEKILEIGADKVAAFVGEPIQGAGGVIVPPATYWPEIERICRKYDVLLVADEVICGFGRTGEWFGHQHFGFQPDLFTAAKGLSSGYLPIGAVFVGKRVAEGLIAGGDFNHGFTYSGHPVCAAVAHANVAALRDEGIVQRVKDDIGPYMQKRWRETFSRFEHVDDVRGVGMLLAFTLVKNKAKRELFPDFGEIGTLCRDIFHRNNLIMDSCGDHIVSAPPLVMTRAEVDEMLAVAERCLEEFEQTLKARGLA(配列番号4)
前記のように、本出願の上記トランスアミナーゼは、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物に対して基質特異性を有し、このような基質のフッ素含有キラルアミン系化合物への変換を効果的に触媒することができ、かつ、該トランスアミナーゼは、複数種のフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物に対して触媒活性を有し、反応選択性と活性はいずれも高い。該生物酵素触媒合成方法は、経路が短く、製品収率が高いだけでなく、生産コストを大幅に低下させ、有機溶剤と廃水、排気、固体廃棄物の生成を減少させる。
【0025】
上記配列番号1~4のいずれか1つに示されるトランスアミナーゼは、ω-トランスアミナーゼであり、いずれもChromobacterium violaceum DSM30191(CVTA)に由来する。従来方法に従って、Chromobacterium violaceum DSM30191(CVTA)から分離して得られる。
【0026】
好ましい一実施例では、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物は、以下の式Iで表される構造を有する:
【化9】
構造式I、
ここで、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ原子含有アルキル基、ヘテロ原子含有シクロアルキル基、ヘテロ原子含有アリール基、アミド系化合物残基又はエーテル系化合物残基から選択され、R1とR2は、同一又は異なるH原子又はハロゲン原子である。
【0027】
より好ましい一実施例では、R1及びR2はいずれもF原子であり、すなわち、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物は、以下の構造式IIで表される構造を有する:
【化10】
構造式II。
【0028】
好ましい一実施例では、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物は、以下から選択されるいずれか1つである:
【化11】
本出願のトランスアミナーゼは、上記フッ素含有ジヒドロキシケタール類に対していずれも触媒活性を有する。
【0029】
本出願のトランスアミナーゼを用いたフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物に対するアミノ基転移触媒反応の具体的なステップは、従来のアミノ基転移反応と類似している。好ましい実施例では、上記合成方法は、リン酸緩衝液とアミノドナーを混合し、第1混合液を得ることと、第1混合液にフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を添加し、第2混合液を得ることと、第2混合液にトランスアミナーゼを添加して、反応混合液を得ることと、反応混合液からフッ素含有キラルアミン系化合物を分離して得ることとを含む。
【0030】
該合成方法は上記段階的な反応(前の材料は順序を変えることができ、トランスアミナーゼの最終的な添加は添加後すぐに反応を行うことを確保する必要があり、他の操作時間が長くて酵素の不活性化を引き起こすことを防止するためである。)によって、反応体積を減少させ、トランスアミナーゼの基質に対する触媒活性と効率を高くし、したがって高い製品収率を得て、生産効率を向上させる。
【0031】
好ましい一実施例では、第1混合液にフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を添加する前に、合成方法は、第1混合液のpH値を7.0~9.0に調整し、好ましくは、第2混合液にトランスアミナーゼを添加し、かつトランスアミナーゼを添加した第2混合液のpHを7.0~9.0に調整して、反応混合液を得ることをさらに含む。
【0032】
上記好ましい実施例では、酵素の添加中に酵素が不活性化されるのを防ぐために、酵素を添加する前に酵素反応の最適pHに調整することを目的として、第1混合液にフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物を添加する前に、第1混合液のpH値を調整する。一方、第2混合液へのトランスアミナーゼの添加後もシステムのpH値を調整し、その作用は反応が最適pHで進行することを確保することである。上記2回のpH値調整の範囲は、一致することが好ましく、例えば、前に7.8に調整され、トランスアミナーゼの添加後も同様に7.8に調整される。
【0033】
上記の、反応後の混合液から目的生成物を分離して得るステップは、公知の分離、精製方法により行えばよい。好ましい一実施例では、反応混合液からフッ素含有キラルアミン系化合物を分離して得ることは、反応混合液の酸性度を調整してトランスアミナーゼを変性させ、好ましくは、反応混合液のpH値を1~2に調整し、変性後のトランスアミナーゼを濾過除去して濾液を得ることと、濾液を抽出して、フッ素含有キラルアミン系化合物を得ることとを含み、好ましくは、ジクロロメタンを用いて濾過を行い、好ましくは、ジクロロメタンを用いて抽出を行う。
【0034】
酸性度を調整する手段を用いて反応後の酵素タンパク質を変性させることは、他の変性手段(例えば高温、塩基調整又は塩析)と比較して、変性が徹底的であり、生成物の多くが酸性条件下で安定的であり、その後の操作が直接、酸性条件下でシステムの他の不純物を抽出することができるという利点を有する。ジクロロメタンによる抽出は、他の抽出溶媒(例えば酢酸エチル、メチルtert-ブチルエーテル、又は酢酸イソプロピル)による抽出よりも抽出効率が高いという利点がある。
【0035】
純度と収率をさらに向上させるために、好ましい一実施例では、抽出は2~5回であり、抽出後に、抽出した有機相を乾燥するステップをさらに含み、好ましくは、毎回の抽出で得られた有機相を合わせて抽出物を得て、抽出物を乾燥して、乾燥した有機相生成物を得て、乾燥した有機相生成物を、温度<35℃、圧力≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する(乾燥の目的は、製品中の水分含有量を減少させることであり、圧力の大きさは、濃縮速度に影響を与える)。
【0036】
好ましい一実施例では、トランスアミナーゼとフッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物の質量比は0.4:1~1.0:1であり、該質量比で基質に対する変換率は95%以上に達する。
【0037】
好ましい一実施例では、フッ素含有ジヒドロキシケタール系化合物の濃度は、60g/L~100g/Lである。この濃度範囲で、生物酵素を用いて反応を行い、基質に対する変換率が99%に達するだけでなく、基質濃度の向上にも寄与し、それによって生産効率を向上させ、有機溶剤と廃ガス、廃液、廃棄物の発生を減少させる。
【0038】
好ましい一実施例では、アミノドナーは、イソプロピルアミン、イソプロピルアミンの塩酸塩、アラニン、アニリン又はn-ブチルアミンから選択される。上記アミノドナーの基質の変換率はいずれも90%以上に達することができる。
【0039】
以下、具体的な実施例に関連して本出願の有益な効果をさらに説明する。なお、以下の実施例における室温とは、10~25℃の常温範囲内の温度をいい、以下の実施例1~15で用いたトランスアミナーゼは、配列番号4で示したトランスアミナーゼである。
(実施例1)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)、32mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(3.2vol、3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.1gのピリドキサールリン酸(1wt%)、10gの
【化12】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(0.5wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.5~8.0に調整する。温度を29℃に上げ、撹拌して一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を50mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=13に調整してから、ジクロロメタン50mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化13】
を得る。
【0040】
HPLC検査によると、純度は98%で、ee値は100%で、収率は87%である。
(実施例2)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)、25mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2.5vol、3eq)を添加し、pH=8.0~8.5に調整する。さらに0.1gのピリドキサールリン酸(1wt%)、10gの
【化14】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(0.5wt、0.5g/ml)を加えて、pH=8.0~8.5に調整する。温度を20℃に調整し、撹拌して一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=2に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を50mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=13に調整してから、酢酸エチル50mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<45℃、P≦-0.08Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化15】
を得る。
【0041】
HPLC検査によると、純度は99%で、ee値は100%で、収率は86%である。
(実施例3)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)、31mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(3.1vol、3eq)を添加し、pH=7.0~7.5に調整する。さらに0.1gのピリドキサールリン酸(1wt%)、10gの
【化16】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(0.5wt、0.5g/ml)を加えて、温度を45~50℃に上げ、撹拌して一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を50mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=12に調整してから、ジクロロメタン50mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化17】
を得る。
【0042】
HPLC検査によると、純度は97%で、ee値は100%で、収率は83%である。
(実施例4)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)、24mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2.4vol、3eq)を添加し、pH=8.5~9.0に調整する。さらに0.1gのピリドキサールリン酸(1wt%)、10gの
【化18】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(0.5wt、0.5g/ml)を加えて、pH=8.5~9.0に調整する。温度を10℃に調整し、撹拌して一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を50mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=13に調整してから、ジクロロメタン50mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化19】
を得る。
【0043】
HPLC検査によると、純度は98%で、ee値は100%で、収率は90%である。
(実施例5)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)、20mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2vol、3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.1gのピリドキサールリン酸(1wt%)、10gの
【化20】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(0.5wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.5~8.0に調整する。温度を32℃に上げ、撹拌して一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を50mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=13に調整してから、酢酸エチル50mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<45℃、P≦-0.08Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化21】
を得る。
【0044】
HPLC検査によると、純度は98%で、ee値は100%で、収率は87%である。
(実施例6)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)、23mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2.3vol、3eq)を添加し、pH=7.0~7.5に調整する。さらに0.1gのピリドキサールリン酸(1wt%)、10gの
【化22】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(0.5wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.0~7.5に調整し、温度を28℃に上げて、撹拌し、一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を50mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=12に調整してから、ジクロロメタン50mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化23】
を得る。
【0045】
HPLC検査によると、純度は98%で、ee値は100%で、収率は80%である。
(実施例7)
室温で500mLの四つ口フラスコに200mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(10vol)、60mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(3vol、3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.2gのピリドキサールリン酸(1wt%)、20gの
【化24】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液20ml(0.5wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.5~8.0に調整し、温度を35℃に上げて、撹拌し、一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を100mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=12に調整してから、ジクロロメタン100mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化25】
を得る。
【0046】
HPLC検査によると、純度は94%で、ee値は100%で、収率は82%である。
(実施例8)
室温で250mLの四つ口フラスコに80mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(8vol)、23mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2.3vol、3eq)を添加し、pH=7.0~7.5に調整する。さらに0.1gのピリドキサールリン酸(1wt%)、10gの
【化26】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液20ml(1.0wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.0~7.5に調整し、温度を35℃に上げて、撹拌し、一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を50mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=12に調整してから、ジクロロメタン50mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化27】
を得る。
【0047】
HPLC検査によると、純度は97%で、ee値は100%で、収率は86%である。
(実施例9)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(10vol)、16mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(3.2vol、3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.05gのピリドキサールリン酸(1wt%)、5gの
【化28】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(1.0wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.5~8.0に調整し、温度を20℃に上げて、撹拌し、一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を30mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=12に調整してから、ジクロロメタン30mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化29】
を得る。
【0048】
GC検査によると、純度は95%で、ee値は100%で、収率は78%である。
(実施例10)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(10vol)、18mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(3.6vol、3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.05gのピリドキサールリン酸(1wt%)、5gの
【化30】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(1.0wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.5~8.0に調整し、温度を25℃に上げて、撹拌し、一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を40mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=12に調整してから、ジクロロメタン40mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化31】
を得る。
【0049】
GC検査によると、純度は94%で、ee値は100%で、収率は76%である。
(実施例11)
室温で250mLの四つ口フラスコに50mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(10vol)、14mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2.8vol、3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.05gのピリドキサールリン酸(1wt%)、5gの
【化32】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(1.0wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.5~8.0に調整し、温度を25℃に上げ、撹拌して一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を40mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=12に調整してから、ジクロロメタン40mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化33】
を得る。
【0050】
HPLC検査によると、純度は92%で、ee値は100%で、収率は79%である。
(実施例12)
室温で250mLの四つ口フラスコに60mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(12vol)、13mLの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(2.6vol、3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.05gのピリドキサールリン酸(1wt%)、5gの
【化34】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液10ml(1.0wt、0.5g/ml)を加えて、pH=7.5~8.0に調整し、温度を35℃に上げて、撹拌し、一晩反応させる。完全に反応した後、システムの酸性度をpH=1に調整し、タンパク質を変性させる。濾過後の濾液を40mLのジクロロメタンで抽出する。水相でpH=12に調整してから、ジクロロメタン40mlで3回抽出する。合わせた有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、有機相をT<35℃、P≦-0.06Mpaの条件で留分なしまでに濃縮する。目的生成物
【化35】
を得る。
【0051】
HPLC検査によると、純度は95%で、ee値は100%で、収率は84%である。
(実施例13)
実施例1を例として、反応する酵素量を最適化する具体的操作は以下のとおりである:室温で10mLバイアル瓶に1mLの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)、0.64mlの5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液(3.2vol、3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.002gのピリドキサールリン酸(1wt%)、0.2gの
【化36】
を添加し、均一になるまで混合し、それぞれトランスアミナーゼ液0.04ml、0.08ml、0.12ml、0.16ml、0.2ml、0.24ml、0.28ml、0.32ml、0.36ml、0.4ml、0.44ml、0.48ml、0.52ml、0.56ml、0.6ml(酵素液の濃度は0.5 g/mlであり、対応する質量比はそれぞれ0.1wt、0.2wt、0.3wt、0.4wt、0.5wt、0.6wt、0.7wt、0.8wt、0.9wt、1.0wt、l.lwt、1.2wt、1.3wt、1.4wt、1.5wtである、)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。シェーカーの回転速度を170rpmにして、温度を29℃に上げて一晩反応させる。
【0052】
変換率の結果は
図1に示すように、0.5~1.0wt基質の変換率が99%を超え、酵素量が引き続き増大しても明らかな効果がないことを証明する。
(実施例14)
実施例1を例として、基質濃度を最適化する具体的操作は以下のとおりである:室温で10~50mLのバイアル瓶(反応体積に応じて適切な振盪瓶を選択する。)にそれぞれ0.3mL、0.38mL、0.50mL、0.62mL、0.78mL、0.96mL、1.16mL、1.46ml、1.82ml、2.28ml、2.96ml、3.96ml、5.56ml、8.96mlの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(それぞれ1.5vol、1.9vol、2.5vol、3.1vol、3.9vol、4.8vol、5.8vol、7.3vol、9.1vol、11.4vol、14.8vol、19.8vol、27.8vol、44.8volである。)、0.64mlの5mol/Lのイソプロピルアミン塩酸塩溶液(3.2vol,3eq)を添加し、pH=7.5~8.0に調整する。さらに0.002gのピリドキサールリン酸(1wt%)、0.2gの
【化37】
を添加し、均一になるまで混合し、トランスアミナーゼ酵素液0.2ml(0.5wt、酵素液濃度0.5g/ml)を添加してpH=7.5~8.0を調整する。シェーカーの回転速度を170rpmにして、温度を29℃までに上げて一晩反応させる。
【0053】
変換率の結果を
図2に示し、60~100g/Lの濃度で、基質の変換率は99%より大きいことを証明する。基質濃度を引き続き低下させると、反応容積が増加し、廃ガス、廃液、廃棄物量が増加する。明らかな効果がない。
(実施例15)
実施例1を例として、アミノドナーに対する最適化の具体的操作は以下のとおりである:室温で10~50mLバイアル瓶(反応体積に応じて適当な振盪瓶を選択する。)にlmlの100mmol/Lリン酸塩緩衝液(5vol)を添加し、それぞれ3eqのアミノドナーのシステム(アミノドナーは、それぞれイソプロピルアミン、イソプロピルアミン塩酸塩、アラニン、アニリン、n-ブチルアミン)を使用し、PH=7.5~8.0に調整する。さらに0.002gのピリドキサールリン酸(1wt%)、0.2gの
【化38】
を添加し、均一になるまで撹拌し、続いてトランスアミナーゼ液0.2ml(0.5wt、酵素液濃度0.5g/ml)を加えて、pH=7.5~8.0に調整する。シェーカーの回転速度を170rpmにして、温度を29℃に上げて一晩反応させる。
【0054】
変換率の結果を
図3に示し、イソプロピルアミン、イソプロピルアミン塩酸塩、アラニン、n-ブチルアミンをアミノドナーとし、基質の変換率が99%より大きいことを証明した。アミノドナーとしてのアニリンの変換率は、この反応条件下で93%であった。
(実施例16)
実施例1の基質を例として、Mycobacterium goodii(GenBank:AKS36000.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA1、Fonsecaea pedrosoi CBS 271.37(NCBI Reference Sequence:XP_013286281.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA2、Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae Ecl8(GenBank:CCN29541.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA3、Chromobacterium violaceum DSM30191(CVTA)(NCBI Reference Sequence:WP_011135573.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA4、Paracoccus denitrificans(NCBI Reference Sequence:WP_011746975.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA5、Penicillium brasilianum(GenBank:CEJ55334.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA6、Enterobacter sp.TL3(NCBI Reference Sequence:WP_014885677.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA7、Aspergillus terreus NIH2624(NCBI Reference Sequence:XP_001209325.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA8、Exophiala spinifera(NCBI Reference Sequence:XP_016233821.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA9、Deinococcus geothermalis(strain DSM 11300)(NCBI Reference Sequence:WP_011530545.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA10、Geomyces destructans 20631-21(GdTA)in E.coli(GenBank:ELR05573.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA 11、Pseudomonas putida KT2440(NCBI Reference Sequence:WP_010954554.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA12、Lysinibacillus sphaericus(NCBI Reference Sequence:WP_024363741.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA13、Bacillus megaterium DSM 319(NCBI Reference Sequence:WP_013082219.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA14、Trichoderma harzianum(GenBank:KKP07030.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA15、Aspergillus fumigatus R-ATAs(AspFum)(NCBI Reference Sequence:XP_748821.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA16、Geobacillus thermodenitrificans subsp. thermodenitrificans DSM 465(NCBI Reference Sequence:WP_008879436.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA17、Cladophialophora bantiana CBS 173.52(NCBI Reference Sequence:XP_016617948.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA18、Bacillus megaterium(NCBI Reference Sequence:WP_016763026.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA19、Burkholderia thailandensis MSMB121(BtS-TA)(GenBank:AGK49399.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA20、Klebsiella pneumoniae subsp. pneumoniae MGH 78578(NCBI Reference Sequence: WP_002920226.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA21、Geobacillus toebii(NCBI Reference Sequence:WP_062753894.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA22、Talaromyces cellulolyticus(GenBank:GAM37533.1)に由来するトランスアミナーゼ番号TA23、Chromobacterium violaceum DSM30191(CVTA)(NCBI Reference Sequence:WP_011135573.1)に由来するトランスアミナーゼで進化して得られた突然変異体TA4-V1(対応配列配列番号1)、TA4-V2(対応配列配列番号2)、TA4-V3(対応配列配列番号3)、TA4-V4(対応配列配列番号4)に対して、10mgレベルのスクリーニング反応を実行し、操作は以下のとおりである:
100mmol/Lのリン酸塩緩衝液、5mol/Lイソプロピルアミン塩酸塩溶液を体積比5:2になるように50ml溶液を配合し、さらに0.005gのピリドキサールリン酸を加え、撹拌して均一に混合する。上記の溶液0.3mlを取って、それぞれ96ウェルプレートに追加し、10mg
【化39】
を添加し、続いて上記の酵素液0.2ml(10wt、酵素液濃度0.5g/ml)をそれぞれ添加し、シェーカーの回転速度を170rpmにし、30℃の条件で一晩反応させる。
【0055】
スクリーニング結果は
図4に示すとおりである:すべての由来の酵素が該基質に対していずれも触媒活性があることを証明し、Chromobacterium violaceum DSM30191(CVTA)由来のトランスアミナーゼは一番優れており、また、Chromobacterium violaceum DSM30191(CVTA)由来のトランスアミナーゼで突然変異して得られた、より良い変換率を有する4つの変異体は、変換率がいずれも99%を超えた。
【0056】
以上の説明から明らかなように、本発明の上述した実施例は、以下のような技術的効果を奏する。
【0057】
1.現在、変換酵素が類似化合物を変換する特許はまだ発見されていない。
【0058】
2.トランスアミナーゼを用いてこの生物変換反応を行うと、一段階の反応で直接所望の目的化合物を得ることができ、基質の種類が広く適用される。
【0059】
3.トランスアミナーゼを用いてこの生物変換反応を行うのは、選択性が高く、製品ee値を大幅に向上させる。
【0060】
4.自己抽出したトランスアミナーゼを使用し、基質濃度は100g/Lに達することができ、生産効率を大幅に向上させ、有機溶剤と廃ガス、廃液、廃棄物の発生を減少させる。
【0061】
5.該トランスアミナーゼは、触媒効率が高く、反応体積が少なく、合成経路が短く、製品収率が高く、生産コストを大幅に低下させる。
【0062】
以上説明したのは、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明を限定するためのものではなく、当業者にとって種々の変更及び変更が可能である。本発明の精神及び原理の範囲内で行われたいかなる修正、均等物の置換、改良なども本発明の範囲内に含まれるべきである。
【配列表】