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特許7432002オプトエレクトロニクス半導体素子のためのケーシングおよびオプトエレクトロニクス半導体素子
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】オプトエレクトロニクス半導体素子のためのケーシングおよびオプトエレクトロニクス半導体素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20240207BHJP
【FI】
H01L33/62
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022556066
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 EP2021055581
(87)【国際公開番号】W WO2021185598
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】102020107409.3
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599133716
【氏名又は名称】エイエムエス-オスラム インターナショナル ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ams-OSRAM International GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, D-93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カールハインツ アーント
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0067974(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0077897(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0074200(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプトエレクトロニクス半導体素子のためのケーシング(1)であって、導体フレーム(2)と、該導体フレームに一体成形されているケーシング本体(5)とを備えており、
前記導体フレームが、第1の導体フレーム部分(21)と、第2の導体フレーム部分(22)とを有しており、
前記ケーシング本体(5)が、組付け側(10)を有し、前記組付け側(10)とは反対に向いた前面側(15)において、オプトエレクトロニクス半導体チップを収容するためのキャビティ(17)を有しており、
前記導体フレームが、前記キャビティ内において、前記導体フレームの前記第1の導体フレーム部分の第1の接続箇所(31)と、前記第2の導体フレーム部分の第2の接続箇所(32)においてのみ露出しており、
前記第1の導体フレーム部分が、第1の内側領域(211)と第1の縁部領域(212)とを有しており、
前記第1の内側領域および前記第1の縁部領域が、前記ケーシングの前記組付け側(10)において露出しており、
前記第1の内側領域が、前記ケーシングを上から見た平面図において、前記第1の接続箇所に重なっており、
前記第1の縁部領域が、前記ケーシングの第1の側面(11)において露出しており、
前記第1の内側領域と前記第1の縁部領域とが、前記第1の導体フレーム部分の第1の前面側の領域(215)を介して互いに結合されており、前記第1の前面側の領域が、前記組付け側(10)から離間しており
前記第1の導体フレーム部分の前記第1の前面側の領域が、第1の延長部(217)を有しており、該第1の延長部(217)が、前記第2の接続箇所と、前記ケーシングの長手方向軸線(81)に対して平行に延びる第2の側面(12)との間に延びている、ケーシング(1)。
【請求項2】
前記キャビティの底面(170)が、前記第1の接続箇所および前記第2の接続箇所の領域において、凹設部(19)を有しており、該凹設部(19)内で、前記第1の接続箇所および前記第2の接続箇所が露出している、請求項1記載のケーシング。
【請求項3】
前記第1の縁部領域が、切欠き(4)を有しており、該切欠き(4)に、前記ケーシングの前記組付け側(10)および前記側面においてアクセス可能である、請求項1または2記載のケーシング。
【請求項4】
前記第1の前面側の領域が、前記ケーシングを上から見た平面図において、前記第1の内側領域の2つの縁部(2110)に沿って延びている、請求項1、2または3記載のケーシング。
【請求項5】
前記第1の導体フレーム部分の前記第1の内側領域と前記第1の縁部領域とが、前記ケーシングを上から見た平面図において、前記ケーシングの前記長手方向軸線(81)に沿って互いに離間されている、請求項1から4までのいずれか1項記載のケーシング。
【請求項6】
前記第1の内側領域と前記第1の縁部領域とが、前記ケーシングを上から見た平面図において、前記ケーシングの前記長手方向軸線(81)に沿って見て、前記長手方向軸線(81)の一方の側のみで、前記第1の前面側の領域を介して互いに結合されている、請求項記載のケーシング。
【請求項7】
前記第1の延長部が、前記長手方向軸線(81)に沿って見て、前記第2の接続箇所の少なくとも50%に相当する箇所まで延びている、請求項1から6までのいずれか1項記載のケーシング。
【請求項8】
前記第1の接続箇所の面積サイズと前記第2の接続箇所の面積サイズとが、それぞれ、前記キャビティの前記底面の面積サイズの最大で30%である、請求項2または請求項2を引用する請求項3からまでのいずれか1項記載のケーシング。
【請求項9】
前記第2の導体フレーム部分と、前記第1の導体フレーム部分とが、その基本形状に関して互いに点対称に形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載のケーシング。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載のケーシング(1)と、オプトエレクトロニクス半導体チップ(95)とを備えたオプトエレクトロニクス半導体素子(9)であって、前記オプトエレクトロニクス半導体チップ(95)が、キャビティ内に配置されていて、第1の接続箇所および第2の接続箇所に導電接続されている、オプトエレクトロニクス半導体素子(9)。
【請求項11】
前記半導体チップが、前記第1の接続箇所と前記第2の接続箇所とを完全に覆っている、請求項10記載のオプトエレクトロニクス半導体素子。
【請求項12】
前記第1の接続箇所および前記第2の接続箇所が、前記半導体素子を上から見た平面図において、前記半導体チップの最大で半分の大きさである、請求項10または11記載のオプトエレクトロニクス半導体素子。
【請求項13】
前記オプトエレクトロニクス半導体チップが、封止材(99)内に埋め込まれており、前記封止材が、いずれの箇所においても前記導体フレームに直接接していない、請求項10から12までのいずれか1項記載のオプトエレクトロニクス半導体素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、オプトエレクトロニクス半導体素子のためのケーシングと、オプトエレクトロニクス半導体素子とに関する。
【0002】
オプトエレクトロニクス半導体素子、たとえば発光ダイオード、略してLEDのために、半導体チップを、導体フレームを備えたケーシング内に組み付けることができる。反射損失を低減するために、導体フレームには銀がコーティングされていてよい。しかし、この銀が、腐食に基づいて素子の作動時に変色して、これにより反射損失が増大して生じてしまうという恐れがある。
【0003】
オプトエレクトロニクス半導体素子を簡単かつ信頼性よく、良好な特性で得るという課題がある。
【0004】
この課題は、特に請求項1に記載のケーシングにより解決される。別の構成および実施形態は、従属請求項の対象である。
【0005】
特に表面に実装可能な素子(surface mounted device;表面実装部品、smd)としてのオプトエレクトロニクス半導体素子のためのケーシングが提供される。ケーシングは、たとえば組付け側を有していて、この組付け側において、オプトエレクトロニクス半導体素子の電気的な接触接続のために必要となる全ての電気的な接点に外部からアクセスすることができる。鉛直方向、つまり組付け側に対して垂直方向で、ケーシングは、たとえば組付け側と、この組付け側とは反対に向いた前面側との間に延びている。ケーシングの長手方向軸線に沿って、ケーシングは、たとえば2つの第1の側面間に延びている。長手方向軸線に対して垂直方向で、ケーシングは、たとえばケーシングの2つの第2の側面間に延びている。長手方向軸線および横方向軸線は、ケーシングを上から見た平面図において、特にそれぞれ中心に延びているので、長手方向軸線と横方向軸線との間の交点は、たとえばケーシングを上から見た平面図においてケーシングの中心点を形成している。
【0006】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、ケーシングは、導体フレームと、ケーシング本体とを有しており、ケーシング本体は、導体フレームに一体的に成形されている。ケーシング本体は、たとえばプラスチックを有している。ケーシング本体は、たとえば流込み法(Giessverfahren)により製造されている。
【0007】
流込み法とは、概して、成形材料を予め規定された型にしたがって構成し、必要な場合には硬化させることができる方法であると理解される。特に、「流込み法」という用語は、流込み成形(molding)、フィルム支援流込み成形(film assisted molding)、射出成形(injection molding)および圧縮成形(compression molding)を含んでいる。
【0008】
鉛直方向で、導体フレームは、たとえば、導体フレームの背面側と、導体フレームの前面側との間に延在している。たとえば、導体フレームは、部分的にエッチングされた導体フレームであり、セミエッチング導体フレーム(英語:semi-etched lead frame)とも呼ばれる。これは、導体フレームが種々異なる厚さの部分領域を有していることを意味し、ここで導体フレームの厚さは鉛直方向の延在量を指す。このためには、導体フレームの材料金属薄板、たとえばコーティングされているか、またはコーティングされていない銅薄板を、前面側および/または背面側から部分的にエッチングすることができる。
【0009】
導体フレームの少なくとも1つの実施形態によれば、導体フレームが、第1の導体フレーム部分と、第2の導体フレーム部分とを有している。第1の導体フレーム部分と第2の導体フレーム部分とは、特にケーシングを上から見た平面図において、互いに重なり合うことなく配置されており、いずれの箇所においても互いに直接に導電接続されていない。特に、第1の導体フレーム部分と第2の導体フレーム部分とは、ケーシング本体を介してのみ互いに機械的に安定して結合されている。
【0010】
第1の導体フレーム部分と第2の導体フレーム部分とは、それぞれ連結されたボディという意図において一体的、つまりワンピースであってよい。
【0011】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、ケーシング本体は、ケーシングの前面側に、半導体チップを収容するためのキャビティを有している。キャビティの鉛直方向の延在量、つまりキャビティの底面とケーシングの前面側との間の間隔は、特に、収容されるべき半導体チップが完全にキャビティ内に配置されているような大きさである。
【0012】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、導体フレームは、キャビティ内において、導体フレームの第1の導体フレーム部分の第1の接続箇所および第2の導体フレーム部分の第2の接続箇所においてのみ露出している。換言すると、ケーシングを上から見た平面図において、導体フレームのうち、第1の接続箇所および第2の接続箇所のみが見えるようになっている。特に、第1の接続箇所および第2の接続箇所は、キャビティに収容すべき半導体チップの規定通りの組付け時に、半導体チップによって完全に覆われる。
【0013】
第1の接続箇所および第2の接続箇所は、特に、半導体チップの、組付け側に面した側の2つの電気的な接点による半導体チップの電気的な接触接続のために、たとえばフリップチップ幾何学形状の半導体チップの組付けのために構成されている。
【0014】
たとえば、第1の接続箇所および第2の接続箇所はそれぞれ、収容すべき半導体チップの最大で半分の大きさである。
【0015】
オプトエレクトロニクス半導体素子のためのケーシングの少なくとも1つの実施形態において、ケーシングは、組付け側と、導体フレームと、導体フレームに一体成形されているケーシング本体とを有しており、導体フレームが、第1の導体フレーム部分と第2の導体フレーム部分とを有しており、ケーシング本体は、組付け側とは反対に向いた前面側において、オプトエレクトロニクス半導体チップを収容するためのキャビティを有している。導体フレームは、キャビティ内において、導体フレームの第1の導体フレーム部分の第1の接続部および第2の導体フレーム部分の第2の接続部においてのみ露出している。
【0016】
このようなケーシング内でのオプトエレクトロニクス半導体チップの組付け時に、オプトエレクトロニクス半導体チップを、たとえば半田のような結合手段により組み付けた後に、キャビティ内に導体フレームの露出した領域は存在していない。特に、導体フレームの、ケーシング本体により覆われていない部分を、結合手段によって完全に覆うことができる。
【0017】
これにより、導体フレームの、キャビティ内に露出している部分が腐食する恐れを回避することができる。これとは異なり、従来の光半導体素子では、導体フレームの一部が半導体チップの側面でケーシングにより覆われていない。この部分が、半導体チップの封止材のようなポリマ材料のみにより覆われている場合、浸透経路が腐食をもたらす。これとは異なり、記載されているケーシングでは、封止材自体は、浸透経路を遮断して、これによりたとえば硫化水素のような腐食を引き起こす気体の浸透を抑制することができなくてもよい。したがって、たとえば硫化水素に対して比較的高い浸透性を有する材料、たとえばシリコンを封止材のために使用することができる。
【0018】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、キャビティの底面は、第1の接続箇所および第2の接続箇所の領域において、凹設部を有しており、凹設部内で、第1の接続箇所および第2の接続箇所が露出している。凹設部は、両接続箇所のための1つの共通の凹設部であってもよい。この場合、凹設部は、第1の接続箇所と第2の接続箇所とにわたって一貫して延びている。これとは異なり、第1の接続箇所と第2の接続箇所とにそれぞれ別個の凹設部が対応配置されていてもよい。これらの凹設部は、たとえば、半田のような結合手段を収容するために形成されている。
【0019】
凹設部の鉛直方向の延在量、すなわち、ケーシング本体の底面からの凹設部の領域におけるケーシング本体の鉛直方向の間隔は、好適にはキャビティの鉛直方向の延在量に比べて小さい。たとえば、凹設部の鉛直方向の延在量は、キャビティの鉛直方向の延在量の少なくとも2倍または少なくとも5倍の大きさである。
【0020】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の導体フレーム部分は、第1の内側領域を有している。第1の内側領域は、特にケーシングを上から見た平面図において、第1の接続箇所に重なる。第1の内側領域は、ケーシングの組付け側において露出している。特に、第1の内側領域は、部分的に導体フレームの背面側を形成する。
【0021】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の導体フレーム部分は、第1の縁部領域を有しており、第1の縁部領域は、ケーシングの組付け側において露出し、かつ/または第1の縁部領域は、ケーシングの側面において露出している。ケーシングの側面は、特にケーシングが長手方向軸線に沿って横方向で画定している第1の側面である。
【0022】
第1の内側領域と第1の縁部領域とは、特に、連結された第1の導体フレーム部分の一部である。
【0023】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の内側領域と第1の縁部領域とは、第1の導体フレーム部分の第1の前面側の領域を介して互いに結合されている。第1の前面側の領域は、組付け側から離間している。したがって、前面側の領域は、部分的に導体フレームの前面側を形成するが、鉛直方向で導体フレームの背面側にまでは延びていない。特に、前面側の領域は、ケーシングの背面図において、ケーシング本体によって覆われているので、確認することができない。好適には、第1の内側領域と第1の縁部領域とは、第1の前面側の領域のみを介して結合されている。
【0024】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の縁部領域は、切欠きを有しており、切欠きには、ケーシングの組付け側および側面においてアクセス可能である。たとえば、切欠きは、鉛直方向で単に部分的に導体フレームを貫通して延びている。しかし、切欠きは、鉛直方向に完全に導体フレームを貫通して延びていてもよい。この切欠きは、半田制御構造体の機能を果たすことができるので、たとえばプリント基板のような接続担体上へのケーシングの半田付けが確実に行われているか否かがケーシングの側から確認可能である。
【0025】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の前面側の領域は、ケーシングを上から見た平面図において、第1の内側領域の2つの縁部に沿って延びている。2つの縁部は、特に互いに対して斜めに、または垂直に延びている。これにより、ケーシングの機械的な安定性が高められている。
【0026】
さらに、第1の内側領域を、使用するフィルム支援流込み法によりケーシングを形成するために、確実にこのために使用されるフィルム内に押し込むことができるので、ケーシングの製造における信頼性が向上する。これにより、導体フレームの背面側がケーシング本体のための材料により不都合に覆われることを効果的に回避することができる。
【0027】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の導体フレーム部分が、ケーシングを上から見た平面図において第1の内側領域と第1の縁部領域との間でケーシングの長手方向軸線に沿って中断されている。これにより、第1の縁部領域と第1の内側領域との間の長手方向軸線に沿った直接的な力伝達を回避することができるか、または少なくとも低減することができる。このような力の伝達は、たとえばケーシングが、接続担体における半田付け時に加熱され、使用された材料の互いに異なる熱膨張係数が熱機械的な応力をもたらす場合に発生することがある。これにより、このようなケーシングを備えた半導体素子がケーシングの組付け時に損傷する恐れを低減することができる。
【0028】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の内側領域と第1の縁部領域とは、ケーシングを上から見た平面図において、ケーシングの長手方向軸線に沿って見て、長手方向軸線の一方の側のみで、第1の前面側の領域を介して互いに結合されている。特に、第1の導体フレーム部分は、ケーシングを上から見た平面図において、O字形構造のような閉じた構造を形成していない。たとえば、第1の前面側の領域の、第1の内側領域と第1の縁部領域とを結合している部分は、平面図においてC字形に形成されている。
【0029】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の導体フレーム部分の第1の前面側の領域は、第1の延長部を有している。この第1の延長部は、第2の接続箇所と、ケーシングの、長手方向軸線に対して平行に延びる第2の側面との間に延びている。第1の延長部は、たとえば、ケーシングの横方向軸線を越えて延びている。換言すれば、第1の延長部は、少なくとも部分的に、ケーシングを上から見た平面図において、ケーシングの横方向軸線の、第2の導体フレーム部分の第2の接続箇所が配置されている側に位置している。したがって、ケーシングの側面図において、第1の導体フレーム部分の第1の延長部は、第2の導体フレーム部分に重なる。このような延長部により、特に曲げに対するケーシングの機械的な安定性を改善することができることが判った。
【0030】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の延長部は、ケーシングの長手方向軸線に沿って見て、第2の接続箇所の延在量の少なくとも50%に沿って延びている。第1の延長部が、長手方向軸線に沿って見て、第2の接続箇所の全長に沿って延びていてもよい。これにより、ケーシングの機械的な安定性がさらに改善される。
【0031】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第1の接続箇所の面積サイズと第2の接続箇所の面積サイズとは、それぞれ、キャビティの底面の面積サイズの最大30%である。したがって、第1の接続箇所および第2の接続箇所は、キャビティの底面の総面積に対して小さい。これにより、オプトエレクトロニクス半導体チップをキャビティ内に意図通りに組み付けた場合、第1の接続箇所および第2の接続箇所がオプトエレクトロニクス半導体チップによって完全に覆われることが簡単な形式で保証されている。
【0032】
第1の導体フレーム部分と第2の導体フレーム部分は、その基本形状に関して同様に形成されていてよい。特に、第2の導体フレーム部分は、第2の内側領域および/または第2の縁部領域および/または第2の前面側の領域および/または第2の延長部を有していてよく、これらのエレメントは、第1の導体フレーム部分に関連して挙げた幾つかまたは全ての特徴を有していてよい。
【0033】
ケーシングの少なくとも1つの実施形態によれば、第2の導体フレーム部分と第1の導体フレーム部分とは、その基本形状に関して互いに点対称に形成されており、特にケーシングの中心点に関して点対称に形成されている。たとえば、第2の導体フレーム部分と第1の導体フレーム部分とは、ケーシングの接点の極性を簡易に識別するためのマーキングのみで異なっている。特に、第1の導体フレーム部分と第2の導体フレーム部分とは、その基本形状に関して、長手方向軸線に関しても横方向軸線に関しても軸対称ではない。
【0034】
さらに、ケーシングを備えたオプトエレクトロニクス半導体素子が記載されている。ケーシングとして特に上述のケーシングが適している。したがって、ケーシングに関連して記載した特徴は、オプトエレクトロニクス半導体素子のためにも考慮することができ、逆もまた然である。
【0035】
オプトエレクトロニクス半導体素子は、特に、たとえば、オプトエレクトロニクス半導体チップを有しており、オプトエレクトロニクス半導体チップは、たとえばケーシングのキャビティ内に配置されており、第1の接続箇所および第2の接続箇所に導電接続されている。半導体チップは、たとえば、可視、紫外、赤外のスペクトル領域の放射線を発生および/または受信するように構成されている。特に、オプトエレクトロニクス半導体チップは、たとえばフリップチップとして、組付け側に面する側に2つの接点を備えて形成されている。
【0036】
オプトエレクトロニクス半導体素子の少なくとも1つの実施形態によれば、オプトエレクトロニクス半導体チップは、第1の接続箇所および第2の接続箇所を完全に覆っている。したがって、オプトエレクトロニクス半導体素子を上から見た平面図において、キャビティ内のオプトエレクトロニクス半導体素子の導体フレームは見えない。つまり、導体フレームの、ケーシングのキャビティ内に露出している全ての部分は、半導体チップの組み付け時に半導体チップにより覆われる。
【0037】
オプトエレクトロニクス半導体素子の少なくとも1つの実施形態によれば、第1の接続箇所および第2の接続箇所は、半導体素子を上から見た平面図において、それぞれオプトエレクトロニクス半導体チップの最大で半分の大きさである。オプトエレクトロニクス半導体チップは、特に、第1の接続箇所にも第2の接続箇所にも重なっている。
【0038】
本発明のオプトエレクトロニクス半導体素子の少なくとも1つの実施形態によれば、オプトエレクトロニクス半導体チップは、封止材に埋め込まれている。この封止材は、特に、オプトエレクトロニクス半導体チップにおいて受信および/または発生すべき放射線に対して透過性である。好適には、封止材にどの箇所でも導体フレームに直接接していない。したがって封止材のために、材料は、金属的な面におけるその付着特性とは独立して選択することができる。
【0039】
別の構成および有用性は、図面に関連した実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A】ケーシングのための1つの実施例を上から概略的に示す平面図である。
図1B】ケーシングのための1つの実施例を長手方向軸線に沿って概略的に示す断面図である。
図1C】ケーシングのための1つの実施例を示す背面図である。
図1D】ケーシングのための1つの実施例を導体フレームの形状と一緒に示す概略的な平面図である。
図1E】ケーシングのための1つの実施例を断面して示す斜視図である。
図1F】ケーシングのための1つの実施例を導体フレームの概略図につき前面側から示す斜視図である。
図1G】ケーシングのための1つの実施例を概略的に示す背面図である。
図2A】オプトエレクトロニクス半導体素子の1つの実施例を概略的に示す平面図である。
図2B】オプトエレクトロニクス半導体素子の1つの実施例を関連する断面で示す斜視図である。
【0041】
図面において、同一、同様、同様に作用する要素には同一の参照符号を付している。図面はそれぞれ概略図であり、したがって必ずしも縮尺どおりではない。特に、比較的小さな要素や層厚が誇張して図示されていることがある。
【0042】
ケーシング1のための1つの実施例が、図1A図1Gにつき様々な視点で示されている。
【0043】
ケーシング1は、鉛直方向で組付け側10と、この組付け側10とは反対側に向いた前面側15との間に延びている。前面側15は、オプトエレクトロニクス半導体チップを収容するためのキャビティ17を有している。
【0044】
ケーシング1は、第1の導体フレーム部分21と第2の導体フレーム部分22とを備えた導体フレーム2をさらに含んでいる。ケーシング本体5は、導体フレーム2に一体成形されていて、第1の導体フレーム部分21と第2の導体フレーム部分22とを互いに機械的に安定に結合している。ケーシング本体5は、たとえば、ポリマ材料を有しており、流込み法によって製造されている。ケーシング本体5の反射率を高めるために、ケーシング本体5に反射性の粒子、たとえば酸化チタン粒子が混ぜられていてもよい。
【0045】
キャビティ17内では、導体フレーム2が、第1の導体フレーム部分21の第1の接続箇所31と第2の導体フレーム部分22の第2の接続箇所32においてのみ露出している。底面170は、第1の接続箇所31および第2の接続箇所32の領域に凹設部19を有しており、この凹設部19内でこれらの接続箇所が露出している。オプトエレクトロニクス半導体チップを結合手段97によってケーシング1内に固定する場合、結合手段の横方向の延在量を、凹設部19を介して制限することができる。
【0046】
このように、凹設部19の領域を除いて、ケーシング本体5は、ケーシング1を上から見た平面図において、導体フレーム2を完全に覆っている。第1の接続箇所31および第2の接続箇所32は、それぞれキャビティ17の底面170に対して小さい。たとえば、第1の接続箇所31の面積サイズおよび第2の接続箇所32の面積サイズはそれぞれ、キャビティ17の底面170の面積サイズの最大で30%である。
【0047】
鉛直方向において、導体フレーム2は、背面側200と前面側205との間に延びている。導体フレームは、背面側200から、かつ前面側205からエッチングされており、これにより導体フレーム2は、種々異なる厚さの領域を有している。
【0048】
長手方向軸線81に沿って、ケーシング1は、2つの第1の側面11の間に延びている。長手方向軸線に対して垂直に、つまり横方向軸線82に沿って、ケーシングは、平面図において、2つの第2の側面12の間に延びている。
【0049】
長手方向軸線81と横方向軸線82とは、それぞれケーシングに対して中心に形成されており、これにより長手方向軸線81と横方向軸線82の交点は、ケーシングの中心点83を形成する。横方向軸線は、第1の接続箇所31と第2の接続箇所32の間に延びている。
【0050】
図1Bには、ケーシング1を通る長手方向軸線81に沿った断面図が示されている。
【0051】
第1の導体フレーム部分21は、第1の内側領域211と第1の縁部領域212とを有している。第1の内側領域211および第1の縁部領域212は、それぞれ導体フレームの背面側200にまで延びている。図1Cに図示されているように、第1の内側領域211および第1の縁部領域212は、組付け側10において露出しているおり、したがって組付け側10からアクセス可能である。
【0052】
第2の導体フレーム部分22は、第1の導体フレーム部分21と同様に形成されており、第2の内側領域221と第2の縁部領域222とを有している。
【0053】
第1の縁部領域212および第2の縁部領域222はそれぞれ切欠き4を有している。この切欠き4は、第1の側面11に至るまで、かつ組付け側10に至るまで延びている。ケーシング1の組付け時に、切欠き4は、半田制御構造の機能を果たすことができる。
【0054】
第1の導体フレーム部分21と第2の導体フレーム部分22とは、図1Bに示した断面図から分かるように、それぞれ長手方向軸線81に沿って中断されている。しかし、図1Dから明らかなように、第1の導体フレーム部分21および第2の導体フレーム部分22はそれぞれ一体的に、つまりワンピースに形成されている。
【0055】
第1の導体フレーム部分21は、第1の前面側の領域215を有している。この第1の領域215を介して、第1の内側領域211と第1の縁側領域212とが互いに結合されている。図1Dでは、第1の導体フレーム部分21および第2の導体フレーム部分22の外周部のうち、ケーシング本体5によって覆われている部分が破線で図示されており、第1の内側領域211および第2の内側領域221の外周部が点線で図示されている。
【0056】
第1の前面側の領域215は、第1の接続箇所31を形成する。第2の前面側の領域225は、第2の接続箇所32を形成する。
【0057】
なお、図1Fおよび図1Gでは、導体フレーム2の導体フレーム部分は、ケーシング本体5なしで示されている。ケーシング1を上から見た平面図において、第1の内側領域211および第1の縁部領域212は、ケーシング1の長手方向軸線81に沿って見て、長手方向軸線81の一方の側でのみ第1の前面側の領域215を介して互いに結合されている。
【0058】
長手方向軸線81に沿って見たケーシング1の他方の半部では、第1の導体フレーム部分21は中断されており、これにより第1の導体フレーム部分21は、平面図において閉じた構造を形成していない。第1の導体フレーム部分21および第2の導体フレーム部分22、特にそのそれぞれの前面側の領域は、それぞれ、図1に示した線85につき明らかであるように、C字形の基本形状を有している。
【0059】
第1の前面側の領域215は、導体フレーム2の背面側200から離間しており、これにより、第1の前面側の領域215は、第2の前面側の領域225と同様に、比較的小さな厚さを有している。ケーシング1の背面側から見て、第1の前面側の領域215および第2の前面側の領域225は、ケーシング本体5の材料により覆われている。第1の縁部領域212と第1の内側領域211との間の熱機械的な応力に基づく機械的な力の伝達は、第1の内側領域と第1の縁部領域との間の結合領域が薄くない場合に比べて、特に、長手方向軸線81に沿った第1の導体フレーム部分21と第2の導体フレーム部分22との中断に関連して、低減される。
【0060】
これにより、熱機械的な応力が、第1の接続箇所31および第2の接続箇所32に取り付けられたオプトエレクトロニクス半導体チップまたはオプトエレクトロニクス半導体チップと間の接続箇所31,32との間の電気的な接続部を熱機械的な応力に基づいて破損することにつながる恐れが低減される。
【0061】
第1の導体フレーム部分21、特に第1の前面側の領域215は、第1の延長部217をさらに有している。第1の延長部217は、横方向軸線82を越えて、ケーシング1の、第2の導体フレーム部分の第2の内側領域221および第2の接続箇所32が配置される側に延びている。第1の延長部217は、少なくとも部分的に第2の接続箇所32とケーシング1の第2の側面12との間に延びている。
【0062】
同様に、第2の導体フレーム部分22、特に第2の前面側の領域225は、第2の延長部227を有している。第2の延長部は、横方向軸線82を越えて、ケーシング1の、第1の導体フレーム部分21の第1の内側領域211が形成されている半部に延びている。したがって、ケーシング1の側面図において、第1の導体フレーム部分21と第2の導体フレーム部分22とは、延長部217,227により重なり合っている。
【0063】
第1の延長部217および第2の延長部227を介して、ケーシング1の機械的な安定性が、特に曲げ応力または破壊応力に関して、改善される。
【0064】
第1の内側領域215は、たとえば、立方体状の基本形状を有していて、部分的に第1の前面側の領域215によって覆われている。図1Gにおいて判るように、第1の前面側の領域215は、第1の内側領域の2つの縁部2110に沿って延び、これらの縁部は互いに垂直方向に延びている。
【0065】
これに対応して、第2の前面側の領域225は、第2の内側領域221の2つの縁部2210に沿って延びている。これにより、特に、フィルム支援流込み法によるケーシング本体5の製造時に導体フレームをフィルムに押し込む場合に、ケーシングの機械的な安定性が改善される。
【0066】
導体フレーム2は、基本形状に関して、特に第2の内側領域212の切り落されたコーナの形態のケーシング1の極性を容易に識別するためのマーキングを除いて、中心点83に対して点対称である。
【0067】
図2Aおよび図2Bには、オプトエレクトロニクス半導体素子9のための1つの実施例が示されており、ケーシング1は、図1A図1Gに関連して説明したように形成されている。オプトエレクトロニクス半導体素子9は、オプトエレクトロニクス半導体チップ95をさらに有している。第1の接続箇所31および第2の接続箇所32はそれぞれ、たとえば、半田のような結合手段97を介して、オプトエレクトロニクス半導体チップ95の接点951に導電接続されている。オプトエレクトロニクス半導体チップ95は、フリップチップ形状に形成されており、それぞれケーシング1の組付け側10に面する側に、接点951を有している。たとえば、半導体チップ95は、成長基板としてのサファイア基板と、放射線を発生させるために設けられた、窒化物系化合物半導体材料をベースにした活性領域とを備えた発光ダイオードである。
【0068】
オプトエレクトロニクス半導体素子9を上から見た平面図において、オプトエレクトロニクス半導体チップ95は、第1の接続箇所31および第2の接続箇所32を完全に覆っている。特に、第1の接続箇所31および第2の接続箇所32は、結合手段97の金属材料で覆われてよい。ケーシング1の凹設部19は、結合手段97の横方向の延在量を制限する。
【0069】
オプトエレクトロニクス半導体素子9の作動時に発生する廃熱は、導体フレーム2の第1の前面側の領域215と第1の内側領域211もしくは第2の前面側の領域225と第2の内側領域221を介して、鉛直方向で直接に導出することができる。
【0070】
オプトエレクトロニクス半導体チップ95は、封止材99内に埋め込まれている。封止材99は、有利にはオプトエレクトロニクス半導体チップによって生成および/または受信される放射線に対して透過性であり、たとえば、蛍光体と混合されていてよい。封止材99は、特にどの箇所でもオプトエレクトロニクス半導体素子9の導体フレーム2に接していないので、封止材99のための材料は、材料が金属面にどのくらい良好に密着するかに依存せずに選択することができる。
【0071】
さらに、オプトエレクトロニクス半導体チップ95の電気的な接触接続のためにボンディングワイヤは不要である。したがって、封止材99がたとえば、オプトエレクトロニクス半導体素子9をプリント基板のような接続担体における半田付け時に、オプトエレクトロニクス半導体チップ95の電気的な接触接続を損なう恐れは生じない。さらに、封止材99がたとえば硫化水素のような腐食性ガスに対して透過性であるか否か、かつ/または封止材99またはケーシング本体5がキャビティ17内の導体フレーム2への浸透経路を与えるか否かにかかわらず、キャビティ17内の導体フレーム2の腐食の恐れは生じない。
【0072】
ケーシング1の説明した構成は、特に小型のケーシング構造形態を実現するために適している。たとえば、長手方向軸線81に沿ったケーシングの延在量は、最大で3mmまたは最大で2mmである。たとえば、ケーシング1は、1608構造型の発光ダイオード、つまり、特にQFN(Quad Flat No Lead)技術において1.6×0.8mmの底面積の発光ダイオード用のケーシングである。したがって、ケーシング1の電気的な接続部は、平面図において、ケーシング本体5を超えて横方向に突出しない。
【0073】
1608構造型の実施例に関して、図面は縮尺通りである。しかし、個別の要素同士のサイズ比は異なっていることもある。さらに、ケーシングの説明された構造は、別の構造型のためにも適している。
【0074】
本特許出願は、独国特許出願第102020107409.3号明細書の優先権を主張し、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0075】
本発明は、実施例に関する説明により限定されるものではない。むしろ、本発明は、新しい各特徴ならびに特徴の各組み合わせも包み、特に、特徴または特徴の組み合わせ自体が特許請求の範囲または実施例において明示的に示されていない場合でも、特許請求の範囲における特徴の各組み合わせを含む。
【符号の説明】
【0076】
1 ケーシング
10 組付け側
11 第1の側面
12 第2の側面
15 前面側
17 キャビティ
170 底面
19 凹設部
2 導体フレーム
200 導体フレームの背面側
205 導体フレーム前面側
21 第1の導体フレーム部分
211 第1の内側領域
2110 第1の内側領域の縁部
212 第1の縁部領域
215 第1の前面側の領域
217 第1の延長部
22 第2の導体フレーム部分
221 第2の内側領域
2210 第2の内側領域の縁部
222 第2の縁部領域
225 第2の前面側の領域
227 第2の延長部
31 第1の接続箇所
32 第2の接続箇所
4 切欠き
5 ケーシング本体
81 長手方向軸線
82 横方向軸線
83 中心点
85 線
9 半導体素子
95 オプトエレクトロニクス半導体チップ
951 オプトエレクトロニクス半導体チップの接点
97 結合手段
99 封止材
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図2A
図2B