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特許7432056モバイル通信システムにおける通信制御方法および通信制御装置
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  • 特許-モバイル通信システムにおける通信制御方法および通信制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】モバイル通信システムにおける通信制御方法および通信制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/20 20090101AFI20240207BHJP
   H04W 88/14 20090101ALI20240207BHJP
【FI】
H04W28/20
H04W88/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023194161
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2023-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397036309
【氏名又は名称】株式会社インターネットイニシアティブ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】柿島 純
【審査官】鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/259529(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/047772(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/113414(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイル通信システムにおける通信制御方法であって、
前記モバイル通信システムは、
基地局と、
前記基地局の通信エリアに在圏するユーザ端末の登録情報を管理する管理装置と、
前記基地局と外部ネットワークとの間の通信を中継する中継装置と、
を備え、前記通信制御方法は、
前記管理装置から前記基地局の在圏ユーザ総数を取得するステップであって、前記在圏ユーザ総数は、前記基地局の通信エリアに在圏しているユーザ端末の総数を表す、ステップと、
前記基地局から前記基地局の通信ユーザ総数を取得するステップであって、前記通信ユーザ総数は、前記基地局の通信エリアに在圏しているユーザ端末のうち前記中継装置を介してユーザデータの通信を行っているユーザ端末の総数を表す、ステップと、
前記在圏ユーザ総数と前記通信ユーザ総数に基づくエントロピーを決定するステップと、
前記エントロピーに基づいて、前記基地局の通信帯域を前記中継装置に設定するステップと、
を含む、通信制御方法。
【請求項2】
前記エントロピーは、前記在圏ユーザ総数と前記通信ユーザ総数の比率に基づく式で定義される、請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記在圏ユーザ総数に対する前記通信ユーザ総数の比をpとしたとき、前記エントロピーは、次式
エントロピー=-p×logp-(1-p)×log(1-p)
で定義される、請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項4】
前記決定するステップにおいて決定されたエントロピーの、所定期間にわたる平均値を算出するステップをさらに含み、
前記設定するステップは、前記エントロピーの前記算出された平均値に基づいて、前記基地局の通信帯域を前記中継装置に設定することを含む、
請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項5】
前記決定するステップにおいて決定された所定期間にわたる複数のエントロピーに基づいて、最尤推定法または最小二乗法を用いて前記エントロピーの推測値を算出するステップをさらに含み、
前記設定するステップは、前記エントロピーの前記推測値に基づいて、前記基地局の通信帯域を前記中継装置に設定することを含む、
請求項1に記載の通信制御方法。
【請求項6】
前記設定するステップにおいて、前記基地局の通信帯域は、前記基地局の最大通信容量と前記エントロピーとの積に設定される、請求項1から5のいずれか1項に記載の通信制御方法。
【請求項7】
モバイル通信システムにおける通信制御装置であって、
前記モバイル通信システムは、
基地局と、
前記基地局の通信エリアに在圏するユーザ端末の登録情報を管理する管理装置と、
前記基地局と外部ネットワークとの間の通信を中継する中継装置と、
を備え、前記通信制御装置は、
前記管理装置から前記基地局の在圏ユーザ総数を取得し、前記基地局から前記基地局の通信ユーザ総数を取得する通信部であって、前記在圏ユーザ総数は、前記基地局の通信エリアに在圏しているユーザ端末の総数を表し、前記通信ユーザ総数は、前記基地局の通信エリアに在圏しているユーザ端末のうち前記中継装置を介してユーザデータの通信を行っているユーザ端末の総数を表す、通信部と、
前記在圏ユーザ総数と前記通信ユーザ総数に基づくエントロピーを算出するエントロピー算出部と、
前記エントロピーに基づいて、前記基地局の通信帯域を前記中継装置に設定する帯域設定部と、
を備える、通信制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モバイル通信システムにおける通信制御方法および通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモバイル通信システムにおいて、通例、基地局の通信エリア内の在圏ユーザ数や実際に通信を行っているユーザ数にかかわらず、すべての基地局で通信帯域は同じ値に設定されている。また、ユーザに割り当てられたデータ通信路は通信がアクティブでない状態が一定時間続くと解放される(例えば非特許文献1参照)ため、基地局の通信帯域が効率的に利用されていない可能性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「LTEを収容するコアネットワーク(EPC)の開発」、鈴木啓介ほか、NTT DOCOMOテクニカル・ジャーナル、Vol. 19 No. 1、26-31頁、2011年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、モバイル通信システムにおける通信リソースの効率的な利用を図ることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、モバイル通信システムにおける通信制御方法であって、前記モバイル通信システムは、基地局と、前記基地局の通信エリアに在圏するユーザ端末の登録情報を管理する管理装置と、前記基地局と外部ネットワークとの間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記通信制御方法は、前記管理装置から前記基地局の在圏ユーザ総数を取得するステップであって、前記在圏ユーザ総数は、前記基地局の通信エリアに在圏しているユーザ端末の総数を表す、ステップと、前記基地局から前記基地局の通信ユーザ総数を取得するステップであって、前記通信ユーザ総数は、前記基地局の通信エリアに在圏しているユーザ端末のうち前記中継装置を介してユーザデータの通信を行っているユーザ端末の総数を表す、ステップと、前記在圏ユーザ総数と前記通信ユーザ総数に基づくエントロピーを決定するステップと、前記エントロピーに基づいて、前記基地局の通信帯域を前記中継装置に設定するステップと、を含む、通信制御方法が提供される。
【0006】
また、本発明の一態様によれば、前記エントロピーは、前記在圏ユーザ総数と前記通信ユーザ総数の比率に基づく式で定義されるのであってよい。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、前記在圏ユーザ総数に対する前記通信ユーザ総数の比をpとしたとき、前記エントロピーは、次式
エントロピー=-p×logp-(1-p)×log(1-p)
で定義されるのであってよい。
【0008】
また、本発明の一態様によれば、前記決定するステップにおいて決定されたエントロピーの、所定期間にわたる平均値を算出するステップをさらに含み、前記設定するステップは、前記エントロピーの前記算出された平均値に基づいて、前記基地局の通信帯域を前記中継装置に設定することを含むのであってよい。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、前記決定するステップにおいて決定された所定期間にわたる複数のエントロピーに基づいて、最尤推定法または最小二乗法を用いて前記エントロピーの推測値を算出するステップをさらに含み、前記設定するステップは、前記エントロピーの前記推測値に基づいて、前記基地局の通信帯域を前記中継装置に設定することを含むのであってよい。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、前記設定するステップにおいて、前記基地局の通信帯域は、前記基地局の最大通信容量と前記エントロピーとの積に設定されるのであってよい。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、モバイル通信システムにおける通信制御装置であって、前記モバイル通信システムは、基地局と、前記基地局の通信エリアに在圏するユーザ端末の登録情報を管理する管理装置と、前記基地局と外部ネットワークとの間の通信を中継する中継装置と、を備え、前記通信制御装置は、前記管理装置から前記基地局の在圏ユーザ総数を取得し、前記基地局から前記基地局の通信ユーザ総数を取得する通信部であって、前記在圏ユーザ総数は、前記基地局の通信エリアに在圏しているユーザ端末の総数を表し、前記通信ユーザ総数は、前記基地局の通信エリアに在圏しているユーザ端末のうち前記中継装置を介してユーザデータの通信を行っているユーザ端末の総数を表す、通信部と、前記在圏ユーザ総数と前記通信ユーザ総数に基づくエントロピーを算出するエントロピー算出部と、前記エントロピーに基づいて、前記基地局の通信帯域を前記中継装置に設定する帯域設定部と、を備える、通信制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モバイル通信システムにおける通信リソースの効率的な利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るモバイル通信システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るモバイル通信システムにおける通信制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る通信制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る通信制御装置の動作の別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係るモバイル通信システム10の構成の一例を示す図である。モバイル通信システム10は、ユーザ端末100と、基地局200と、コアネットワーク300とを備える。図1は第5世代(5G)通信規格に準拠したモバイル通信システム10を例示しており、コアネットワーク300は、AMF(Access and Mobility Management Function)310、UDM(Unified Data Management)320、UDR(Unified Data Repository)330、1または複数のルータ340、UPF(User Plane Function)350、SMF(Session Management Function)(不図示)、およびPCF(Policy Control Function)(不図示)の各ノードを備える。なお、モバイル通信システム10は第4世代(4G)通信規格に準拠するものであってもよい。
【0016】
AMF310は、モビリティ制御機能を提供し、位置登録、ページング、およびハンドオーバ等の移動制御を行うノードである。UDM320は、ユーザの契約情報や認証情報を管理するノードである。UDR330は、ユーザ端末100の識別番号や在圏情報を保持した加入者データベースを格納するノード(加入者データベース管理装置)である。SMFは、セッション管理機能を提供し、セッションの保守、確立、変更および解放を行うノードである。PCFは、データ転送速度や遅延時間などの品質に関するポリシー制御機能を提供するノードである。UPF350は、ユーザ端末100と外部ネットワーク500(例えばインターネット)との間でユーザデータを通信するノードである。これら各ノードは、5G通信規格に準拠するものであり、その詳細についての説明はここでは省略する。
【0017】
ユーザ端末100は、携帯電話端末やスマートフォンなどの無線通信機器である。ユーザ端末100は、基地局200の通信エリアに在圏すると、その加入者識別情報(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)を、AMF310およびUDM320を順に介してUDR330へ送信する。この加入者識別情報がUDR330に登録されることで、ユーザ端末100に対して、モバイル通信システム10における音声通話やデータ通信などの通信サービスが提供される。これにより、ユーザ端末100は、ルータ340およびUPF350を介して、外部ネットワーク500と通信することができる。
【0018】
より具体的に、ユーザ端末100の加入者識別情報がUDR330に登録されると、ユーザ端末100から基地局200およびルータ340を通ってUPF350へと至る経路に、ユーザ端末100が外部ネットワーク500と通信するためのデータ通信路(U-plane)が形成される。一般に、このデータ通信路には有効期限が設定される。例えば、ユーザ端末100がデータ通信路を使った通信を行わない期間が所定時間(例えば数十秒~数分)継続すると、このデータ通信路は破棄される。ユーザ端末100が外部ネットワーク500との通信を再開しようとしたときには、あらためてユーザ端末100のためのデータ通信路が用意される。このように、データ通信路は動的に生成・削除され、現在どれだけの数のユーザ端末100が実際にユーザデータの通信を行っているかの情報は、基地局200によって管理されている。
【0019】
本実施形態において、モバイル通信システム10のコアネットワーク300は、ルータ340および/またはUPF350の通信帯域を制御するための通信制御装置360をさらに備える。通信制御装置360は、動的に変化する、実際に通信を行っているユーザ端末100の数に応じて、基地局200の適切な通信帯域をルータ340および/またはUPF350に設定するように構成される。なお、本明細書において「通信帯域」とは、1つの基地局200を単位時間当りに通過することのできるデータの量を意味し、通信容量または通信速度と別称されてもよい。例えば、通信帯域は「Gbps(ギガビット毎秒)」の単位で表すことができる。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係るモバイル通信システム10における通信制御装置360の機能的構成を示すブロック図である。通信制御装置360は、通信部362と、エントロピー算出部364と、帯域設定部366とを備える。なお、通信制御装置360は、プロセッサおよびメモリを備えたコンピュータによって実現することができる。
【0021】
通信制御装置360の通信部362は、UDR330から、基地局200の通信エリアに在圏しているユーザ端末100の総数(以下、「在圏ユーザ総数」という)を取得するように構成される。上述したように、ユーザ端末100が基地局200の通信エリアに在圏すると(例えばユーザ端末100が他の基地局の通信エリアから当該基地局200の通信エリアへ移動してくると)、そのユーザ端末100の加入者識別情報がUDR330に登録される。UDR330は、基地局200の通信エリアに在圏している全てのユーザ端末100の加入者識別情報を保持しており、それに基づいて、在圏ユーザ総数を通信制御装置360に通知することができる。
【0022】
通信制御装置360の通信部362はまた、基地局200から、基地局200の通信エリアに在圏しているユーザ端末100のうちデータ通信路(U-plane)を介して現在ユーザデータの通信を行っているユーザ端末100の総数(以下、「通信ユーザ総数」という)を取得するように構成される。上述したように、ユーザ端末100とUPF350との間のデータ通信路は、動的に(例えば、ユーザ端末100からの通信リクエストの発出や、要求された通信処理の完了に応じて)生成・削除される。基地局200は、現在有効なデータ通信路の数を把握しており、その総数を通信ユーザ総数として通信制御装置360に通知することができる。なお、「現在有効なデータ通信路」とは、現在実際にユーザデータの通信処理を実行中のデータ通信路に加えて、要求された通信処理は完了したがまだ破棄されていない(即ち有効期限が切れていない)データ通信路を含むのであってよい。
【0023】
通信部362は、在圏ユーザ総数および通信ユーザ総数の取得を、所定時間間隔で繰り返し行うのであってよい。例えば、通信部362は、5分毎、15分毎、1時間毎など任意の時間間隔で、在圏ユーザ総数および通信ユーザ総数をそれぞれUDR330または基地局200から取得することができる。
【0024】
通信制御装置360のエントロピー算出部364は、基地局200の在圏ユーザ総数と通信ユーザ総数に基づくエントロピーを算出するように構成される。例えば、エントロピーは、基地局200の在圏ユーザ総数に対する通信ユーザ総数の比をpとしたとき(すなわちp=通信ユーザ総数/在圏ユーザ総数)、次式で定義することができる。
エントロピー=-p×logp-(1-p)×log(1-p) ……(1)
【0025】
ここで、一般に、5Gまたは4G通信規格に基づく携帯電話通信網のようなモバイル通信システム10において、1つの基地局200を通じてユーザデータの通信を同時に行えるユーザ端末100の数(すなわち同時に形成し得るデータ通信路の数)には上限が設けられている。つまり、通信ユーザ総数には上限値が存在する。本実施形態では、通信ユーザ総数は在圏ユーザ総数の半分以下に制限される(すなわちp≦1/2)という条件をおくものとする。このとき、上式(1)で定義されるエントロピーは、pに対して単調増加となる。
【0026】
通信制御装置360の帯域設定部366は、エントロピー算出部364によって算出されたエントロピーに基づいて、基地局200の適切な通信帯域を決定し、その決定した通信帯域をルータ340および/またはUPF350に設定するように構成される。例えば、基地局200の適切な通信帯域は、基地局200の最大通信容量(例えば1Gbps)とエントロピーから、次式を用いて算出されるのであってよい。
通信帯域=最大通信容量×エントロピー ……(2)
【0027】
ルータ340および/またはUPF350は、帯域設定部366からの設定に応じた通信リソースを基地局200のために割り当て、その通信リソースを用いて基地局200へのまたは基地局200からのユーザデータを中継するように動作する。これにより、基地局200の通信エリアに在圏しているユーザ端末100のうち現在ユーザデータの通信を行っているユーザ端末100の数に応じて、通信リソースの効率的な利用を図ることができる。
【0028】
図3は、本発明の一実施形態に係る通信制御装置360の動作の一例を示すフローチャートである。ステップ302において、通信制御装置360の通信部362は、所定時間間隔で所定期間にわたって、UDR330から基地局200の在圏ユーザ総数を、また基地局200からその通信ユーザ総数を、それぞれ取得する。例えば、通信部362は、5分毎、15分毎、1時間毎など任意の時間間隔で、1日、1週間、1ヶ月など任意の期間にわたって、基地局200の在圏ユーザ総数および通信ユーザ総数を収集することができる。
【0029】
ステップ304において、エントロピー算出部364は、在圏ユーザ総数および通信ユーザ総数を取得した各時刻について、上記の式(1)を用いてエントロピーを算出する。これにより、所定期間(例えば1日、1週間、1ヶ月等)の間の複数の時刻それぞれにおけるエントロピーの値を得ることができる。
【0030】
ステップ306において、エントロピー算出部364は、得られた複数のエントロピーの値の平均値を算出する。例えば、ある1日、ある1週間、ある1ヶ月などの所定期間におけるエントロピーの平均値が得られる。
【0031】
ステップ308において、帯域設定部366は、エントロピーの平均値に基づいて、基地局200の通信帯域を次式に従って設定する。
通信帯域=最大通信容量×エントロピー平均値 ……(2’)
【0032】
上式(2’)による基地局200の通信帯域の設定は、所定の一定期間の間、固定的に適用されるのであってよい。例えば、ある1日についてのエントロピーの平均値から上式によって計算された通信帯域を、次の1日の間、継続して基地局200に設定するのであってよく、同様に、1日毎にその日の通信帯域を前日のエントロピー平均値に基づく通信帯域で更新していくのであってよい。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係る通信制御装置360の動作の別の一例を示すフローチャートである。この例は、最尤推定法または最小二乗法を用いてエントロピーを推測することで、基地局200の通信帯域を動的に制御することを可能にするものである。図4のフローチャートにおいて、ステップ402および404は、上述した図3のフローチャートにおけるステップ302および304と同じであり、重複した説明は省略する。
【0034】
ステップ406において、エントロピー算出部364は、ステップ404で得られた各時刻のエントロピーに基づいて、これら複数のエントロピーの値の時間変化を近似する関数f(x)を決定する。ここで、時刻x(i=1,2,…,N)における上式(1)で算出されたエントロピーをEと記述する。エントロピー算出部364は、時系列データ(x,E)にうまく近似するように、次式の関数f(x)を決定する。なおMは多項式の最高次数を表す適宜の数である。
【0035】
【数1】
【0036】
具体的に、多項式関数f(x)の各次数の係数wは、最尤推定法または最小二乗法に従って次式のように計算することができる。
【0037】
【数2】
【0038】
また、時系列データ(x,E)の分散σは次式のように計算される。
【0039】
【数3】
【0040】
次に、ステップ408において、エントロピー算出部364は、ステップ406で得られた近似関数f(x)とその確からしさに基づいて、所望の時刻におけるエントロピーの値を推測する。例えば、ある1日(または、ある1週間、ある1ヶ月等)についての時系列データ(x,E)を用いて上記のステップ406で決定された関数f(x)を用いて、次の1日(または1週間、1ヶ月等)のうちの任意の所望の時刻におけるエントロピーの値を推測することができる。具体的に、ある所望時刻xにおいてエントロピーが値Eをとる確率P(E|x,σ)は、次の正規分布に従う。
【0041】
【数4】
【0042】
したがって、エントロピー算出部364は、上記の確率P(E|x,σ)が最大となるような値Eを、所望時刻xにおけるエントロピーの推測値として決定する。例えば、上式(7)に所定の刻み幅で漸増する値Eを順次代入していき、確率Pが最大となるEをエントロピーの推測値として採用することができる。あるいは、式(7)はE=f(x)のとき最大値となるので、f(x)の値を計算することによって(すなわちステップ406で決定された関数f(x)にx=xを代入することによって)エントロピーの推測値を求めてもよい。
【0043】
次に、ステップ410において、帯域設定部366は、ステップ408で得られたエントロピーの推測値に基づいて、基地局200の通信帯域を次式に従って設定する。
通信帯域=最大通信容量×エントロピー推測値 ……(2”)
【0044】
上式(2”)による基地局200の通信帯域の設定は、任意の所望時刻x,x,…,xについて順次、反復的に行われる。これにより、基地局200の通信帯域を動的に制御することができる。また、ステップ402~406は所定期間毎(例えば1日毎、1週間毎、1ヶ月毎等)に繰り返されてよく、これにより、最新のデータ(在圏ユーザ総数および通信ユーザ総数)を用いてエントロピーの近似関数f(x)が更新されることで、上式(2”)による基地局200の通信帯域の設定を精度良く行うことができる。
【0045】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 モバイル通信システム
100 ユーザ端末
200 基地局
300 コアネットワーク
310 AMF
320 UDM
330 UDR
340 ルータ
350 UPF
360 通信制御装置
362 通信部
364 エントロピー算出部
366 帯域設定部
500 外部ネットワーク
【要約】
【課題】モバイル通信システムにおける通信リソースの効率的な利用を図る。
【解決手段】モバイル通信システムにおける通信制御方法が提供される。モバイル通信システムは、基地局と、基地局の通信エリアに在圏するユーザ端末の登録情報を管理する管理装置と、基地局と外部ネットワークとの間の通信を中継する中継装置と、を備える。通信制御方法は、管理装置から基地局の在圏ユーザ総数を取得するステップと、基地局から基地局の通信ユーザ総数を取得するステップと、在圏ユーザ総数と通信ユーザ総数に基づくエントロピーを決定するステップと、エントロピーに基づいて、基地局の通信帯域を中継装置に設定するステップと、を含む。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4