(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】基板搬送装置および基板搬送方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
H05K13/04 P
(21)【出願番号】P 2023503584
(86)(22)【出願日】2021-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2021008069
(87)【国際公開番号】W WO2022185428
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 太郎
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-225627(JP,A)
【文献】特開平5-37187(JP,A)
【文献】国際公開第2004/093514(WO,A1)
【文献】特開2007-225323(JP,A)
【文献】特開2017-183630(JP,A)
【文献】特開2011-71345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送路の搬入端から所定の停止位置まで搬送する搬送部と、
前記搬送路の前記停止位置よりも前記搬入端側の規定位置を通過する前記基板に向けて検出光を投射し、前記検出光の通過量または反射量に基づいて、前記規定位置における前記基板の有無を検出する基板通過センサと、
前記搬送部が前記基板を搬送する際に、前記基板通過センサの検出結果が「基板無し」から「基板有り」を経て「基板無し」に変化した時点で、前記基板を前記停止位置まで搬送する今後の搬送距離を設定する設定部と、
前記基板が前記停止位置に到着するまで、前記検出結果が再び「基板有り」に変化するか否かを監視する監視部と、
前記検出結果が再び「基板有り」に変化した場合、その後に前記検出結果が「基板無し」に変化した時点で、設定済みの前記搬送距離をリセットして今後の前記搬送距離を設定し直す再設定部と、
を備える基板搬送装置。
【請求項2】
前記基板通過センサは、水平姿勢で搬送される前記基板に向けて、上下方向の前記検出光を投射する、請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項3】
前記基板通過センサは、水平姿勢で搬送される前記基板に向けて、搬送方向に交差する水平方向の前記検出光を投射する、請求項1に記載の基板搬送装置。
【請求項4】
前記基板通過センサは、
前記基板に向けて前記検出光を投射する投光部と、
前記基板を挟んで前記投光部の反対側に配置され、前記基板が無いときと比較して前記基板が有るときに減少する前記検出光の前記通過量を検出する受光部と、
前記通過量が所定の閾値以上である場合に「基板無し」と判定し、前記通過量が前記閾値未満である場合に「基板有り」と判定する判定部と、を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項5】
前記基板通過センサは、
前記基板に向けて前記検出光を投射する投光部と、
前記投光部に並んで配置され、前記基板が無いときと比較して前記基板が有るときに増加する前記検出光の前記反射量を検出する受光部と、
前記反射量が所定の閾値未満である場合に「基板無し」と判定し、前記反射量が前記閾値以上である場合に「基板有り」と判定する判定部と、を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項6】
前記搬送距離は、前記停止位置と前記規定位置との離間距離、前記離間距離から前記基板の搬送方向の長さの半分を減算した距離、および、前記離間距離から前記基板の搬送方向の長さを減算した距離のいずれかである、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項7】
前記搬送部の動作履歴および前記基板通過センサの前記検出結果に基づいて前記基板の搬送方向の推定長さを求め、前記推定長さと前記基板の搬送方向の既知の長さとを比較することにより異常の有無を判定する異常判定部を備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の基板搬送装置。
【請求項8】
基板を搬送路の搬入端から所定の停止位置まで搬送する搬送部と、
前記搬送路の前記停止位置よりも前記搬入端側の規定位置を通過する前記基板に向けて検出光を投射し、前記検出光の通過量または反射量に基づいて、前記規定位置における前記基板の有無を検出する基板通過センサと、
前記基板通過センサの検出結果に基づいて前記搬送部を制御する制御部と、を備える基板搬送装置において、
前記制御部は、
前記搬送部が前記基板を搬送する際に、前記検出結果が「基板無し」から「基板有り」を経て「基板無し」に変化した時点で、前記基板を前記停止位置まで搬送する今後の搬送距離を設定し、
前記基板が前記停止位置に到着するまで、前記検出結果が再び「基板有り」に変化するか否かを監視し、
前記検出結果が再び「基板有り」に変化した場合、その後に前記検出結果が「基板無し」に変化した時点で、設定済みの前記搬送距離をリセットして今後の前記搬送距離を設定し直す、
基板搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、基板を搬送路の所定の停止位置まで搬送する基板搬送装置、および基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線が施された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。さらに、対基板作業を実施する対基板作業機を複数台並べて、対基板作業ラインを構成することが一般的となっている。一般的に、対基板作業機は、基板搬送装置を備える。基板搬送装置は、ライン上流側から搬入された基板を搬送路の所定の停止位置まで搬送するとともに、停止位置で対基板作業が実施された後の基板をライン下流側に搬送する。多くの基板搬送装置は、搬送する基板の位置を検出する基板通過センサを備える。この種の基板搬送装置に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された基板検出センサは、「基板無し」と判定しているときには受光信号のレベルを第1閾値と比較し、レベルが第1閾値以下になると「基板有り」と判定する。また、基板検出センサは、「基板有り」と判定しているときには受光信号のレベルを第1閾値より大きな第2閾値と比較し、レベルが第2閾値以上になると「基板無し」と判定する。これによれば、「基板有り」の判定後に基板が上下振動によって所定位置から変動しても「基板有り」の判定を維持して、基板の位置変動に対する誤判定を低減することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の基板検出センサを始めとする従来技術において、基板に向けて検出光を投射し、検出光の通過量または反射量の変化に基づいて基板の有無を検出している。しかしながら、空隙部をもつ割れ基板では、空隙部において一時的に検出光の通過量が増加し、または反射量が減少するため、基板の有無を正確に検出することが難しかった。また、反りなどの変形を有する基板は、搬送されてゆくのに伴い検出光を遮る面積が変化し得るため、基板の有無の誤判定を引き起こすおそれがあった。
【0006】
上記した問題点の対策として、従来、検出光の通過量または反射量の一時的な変動の影響を回避するためにタイマを設定して対応していた。つまり、一時的な変動の継続時間がタイマ時間未満であればこの変動を無視することにより、割れ基板の空隙部や基板の反り部分などに起因する誤判定を回避していた。また、タイマの設定により、タイマ時間と基板の搬送速度とを乗算した距離の分だけ基板の後端の検出が遅れるため、所定の停止位置まで搬送する今後の搬送距離を調整していた(オフセット距離の調整)。
【0007】
このようなタイマの設定および搬送距離の調整を行っても、搬送異常による対基板作業機のエラー停止や、基板の停止位置の精度低下を無くすことが難しかった。加えて、タイマの設定および搬送距離の調整は、基板の種類ごとに異なり、かつ、対基板作業ラインを構成する複数の対基板作業機について個別に行う必要があるため、オペレータの多大な手間を煩わせていた。
【0008】
それゆえ、本明細書では、搬送異常による対基板作業機のエラー停止や、基板の停止位置の精度低下を従来よりも減少させることができる基板搬送装置、および基板搬送方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書は、基板を搬送路の搬入端から所定の停止位置まで搬送する搬送部と、前記搬送路の前記停止位置よりも前記搬入端側の規定位置を通過する前記基板に向けて検出光を投射し、前記検出光の通過量または反射量に基づいて、前記規定位置における前記基板の有無を検出する基板通過センサと、前記搬送部が前記基板を搬送する際に、前記基板通過センサの検出結果が「基板無し」から「基板有り」を経て「基板無し」に変化した時点で、前記基板を前記停止位置まで搬送する今後の搬送距離を設定する設定部と、前記基板が前記停止位置に到着するまで、前記検出結果が再び「基板有り」に変化するか否かを監視する監視部と、前記検出結果が再び「基板有り」に変化した場合、その後に前記検出結果が「基板無し」に変化した時点で、設定済みの前記搬送距離をリセットして今後の前記搬送距離を設定し直す再設定部と、を備える基板搬送装置を開示する。
【0010】
また、本明細書は、基板を搬送路の搬入端から所定の停止位置まで搬送する搬送部と、前記搬送路の前記停止位置よりも前記搬入端側の規定位置を通過する前記基板に向けて検出光を投射し、前記検出光の通過量または反射量に基づいて、前記規定位置における前記基板の有無を検出する基板通過センサと、前記基板通過センサの検出結果に基づいて前記搬送部を制御する制御部と、を備える基板搬送装置において、前記制御部は、前記搬送部が前記基板を搬送する際に、前記検出結果が「基板無し」から「基板有り」を経て「基板無し」に変化した時点で、前記基板を前記停止位置まで搬送する今後の搬送距離を設定し、前記基板が前記停止位置に到着するまで、前記検出結果が再び「基板有り」に変化するか否かを監視し、前記検出結果が再び「基板有り」に変化した場合、その後に前記検出結果が「基板無し」に変化した時点で、設定済みの前記搬送距離をリセットして今後の前記搬送距離を設定し直す、基板搬送方法を開示する。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で開示する基板搬送装置や基板搬送方法では、基板通過センサの検出結果が「基板無し」から「基板有り」を経て「基板無し」に変化した時点で、基板の後端と判定して今後の搬送距離を設定する。そして、検出結果が再び「基板有り」に変化した場合、その後に検出結果が「基板無し」に変化した時点で、基板の後端と修正判定し、設定済みの搬送距離をリセットして今後の搬送距離を設定し直す。これによれば、割れ基板の空隙部や基板の反り部分の存在により後端が誤って判定されても、その後に基板の真の後端が修正判定された時点で、今後の搬送距離が再設定される。したがって、基板の後端の検出精度を従来よりも向上させることができ、結果として、搬送異常による対基板作業機のエラー停止や、基板の停止位置の精度低下を従来よりも減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の基板搬送装置を適用した部品装着機の全体構成を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態の基板搬送装置を模式的に示す平面図である。
【
図3】第1実施形態の基板搬送装置を模式的に示す側面図である。
【
図4】基板搬送装置の制御の構成を示すブロック図である。
【
図5】基板搬送装置の動作を説明する動作フローの図である。
【
図6】通常の基板の後端が搬送路の規定位置(搬入端)に到達した状態を示す平面図である。
【
図7】通常の基板が搬送路の停止位置に到着して停止した状態を示す平面図である。
【
図8】割れ基板の搬送動作を開始する前の状態を示す平面図である。
【
図9】割れ基板の前側の小片基板の後縁が搬送路の規定位置(搬入端)に到達した状態を示す平面図である。
【
図10】割れ基板の後側の小片基板の前縁が搬送路の規定位置(搬入端)に到達した状態を示す平面図である。
【
図11】割れ基板の後端が搬送路の規定位置(搬入端)に到達した状態を示す平面図である。
【
図12】割れ基板が搬送路の停止位置に到着して停止した状態を示す平面図である。
【
図13】第2実施形態の基板搬送装置を模式的に示す平面図である。
【
図14】第2実施形態において、反りを有する基板の搬送途中の状態を模式的に示す側面図である。
【
図15】第3実施形態の基板搬送装置を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.部品装着機1の全体構成
まず、第1実施形態の基板搬送装置2を適用した部品装着機1の全体構成について、
図1を参考にして説明する。部品装着機1は、基板Kに部品を装着する装着作業を実施する。部品装着機1の上流側にはんだ印刷機等が配置され、下流側に基板検査機等が配置されて対基板作業ラインが構成される。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう方向がY軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、部品認識用カメラ49、および制御装置5(
図4参照)などが基台10に組み付けられて構成される。
【0014】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21を備える。一対のガイドレール21は、基台10上でX軸方向に延在しており、互いに平行しつつY軸方向に離隔して配置される。一対のガイドレール21の離隔距離は、基板Kの幅寸法に合わせて調整可能となっている。一対のガイドレール21、およびその間の空間は、基板Kの搬送路を構成する。基板搬送装置2は、水平姿勢の基板Kをガイドレール21(搬送路)の搬入端22から所定の停止位置PSまで搬送する(
図2参照)。停止位置PSの下側に設けられた位置決め機構(図略)は、基板Kの位置決めおよび解放を行う。基板搬送装置2の詳細については、後述する。
【0015】
部品供給装置3は、X軸方向に並んで配列された複数のフィーダ31により構成される。各フィーダ31は、多数の部品が一列に収納されたキャリアテープを、先端側の供給位置32に向けて送り出す。キャリアテープは、供給位置32で部品を採取可能に供給する。
【0016】
部品移載装置4は、Y軸移動体41、X軸移動体42、装着ヘッド43、オートツール44、吸着ノズル45、基板認識用カメラ46、および側視カメラ47などで構成される。Y軸移動体41は、直動機構に駆動されてY軸方向に移動する。X軸移動体42は、Y軸移動体41に装架され、直動機構に駆動されてX軸方向に移動する。装着ヘッド43は、X軸移動体42の前面に設けられた図略のクランプ機構に取り付けられ、X軸移動体42と共に水平二方向に移動する。
【0017】
装着ヘッド43の下側に、オートツール44が回転可能に設けられる。オートツール44の下側には、複数(
図1の例では12本)の吸着ノズル45が交換可能に保持される。吸着ノズル45は、図略の昇降駆動機構に駆動されて昇降し、図略のエア供給機構から負圧や正圧のエアが選択的に供給される。吸着ノズル45は、部品供給装置3の供給位置32から部品を吸着して保持し、基板Kに装着する。装着ヘッド43、オートツール44、および吸着ノズル45は、作業者によって交換されてもよいし、自動で交換されてもよい。自動で交換される構成の場合、基台10の上面に交換用ステーションが設けられて、交換用の機材が準備される。
【0018】
基板認識用カメラ46は、装着ヘッド43と並んでX軸移動体42に設けられる。基板認識用カメラ46は、光軸が下向きとなるように配設され、基板Kに付設された位置基準マークを上方から撮像する。取得された画像データは画像処理され、基板Kの停止位置が正確に求められる。側視カメラ47は、装着ヘッド43の下側のオートツール44の前側に設けられる。側視カメラ47は、吸着ノズル45に保持された部品を吸着ノズル45の下部と一緒に側方から撮像して認識する。基板認識用カメラ46や側視カメラ47として、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0019】
部品認識用カメラ49は、基板搬送装置2と部品供給装置3の間の基台10上に設けられる。部品認識用カメラ49は、光軸が上向きとなるように配置される。部品認識用カメラ49は、装着ヘッド43が部品供給装置3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル45に保持された部品を下方から撮像して認識する。部品認識用カメラ49として、CCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0020】
制御装置5は、基台10に組み付けられており、配置される位置は特に限定されない。制御装置5は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置を用いて構成される。なお、制御装置5は、複数のCPUが機内に分散配置され、かつ通信接続されて構成されてもよい。制御装置5は、基板Kの種類ごとのジョブデータに基づいて、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品認識用カメラ49を制御して、部品の装着作業を進める。ジョブデータは、装着作業の詳細な手順や実施方法などを記述したデータである。
【0021】
2.第1実施形態の基板搬送装置2の構成
第1実施形態の基板搬送装置2の説明に移る。基板搬送装置2は、前述した一対のガイドレール21に加え、搬送部6、基板通過センサ7、および搬送制御部8を備える。
図2に示されるように、一対のガイドレール21(搬送路)の搬送方向(X軸方向)の中央に、基板Kを停止させる所定の停止位置PSが設定される。
図3に示されるように、搬送部6は、ガイドレール21の各々に対して個別に設けられたコンベアベルト61、二つの支持プーリ(62、63)、テンションプーリ64、および駆動プーリ65を有する。さらに、搬送部6は、二つの駆動プーリ65に対して共通に設けられた駆動モータ66を有する。
【0022】
コンベアベルト61は、可撓性を有する帯状の部材を用いて無端環状に形成される。コンベアベルト61は、ガイドレール21に形成された溝に嵌め込まれ、輪転可能に保持される(
図15参照)。基板Kは、二つのコンベアベルト61の上面を跨ぐように水平姿勢で載置される。支持プーリ62は、ガイドレール21の搬入端22の位置に回転自在に設けられる。支持プーリ63は、ガイドレール21の搬出端23の位置に回転自在に設けられる。二つの支持プーリ(62、63)は、コンベアベルト61を輪転可能に支持する。
【0023】
テンションプーリ64は、搬入端22側の支持プーリ62の下方に回転自在に設けられる。テンションプーリ64は、図略の付勢機構に付勢されており、コンベアベルト61に張力を付与して弛みの発生を防止する。駆動プーリ65は、搬出端23側の支持プーリ63の下方に設けられ、コンベアベルト61に係合する。コンベアベルト61は、上記した四つのプーリに支持されて、
図3の時計回りに輪転する。駆動モータ66は、図略の伝達機構を介して二つの駆動プーリ65を等速で回転駆動する。
【0024】
これにより、二つの駆動プーリ65の各々は、それぞれコンベアベルト61を輪転駆動する。二つのコンベアベルト61は、載置された基板Kを搬送する。駆動モータ66として、制御性の良好なパルスモータやステッピングモータなどが用いられる。したがって、基板Kの搬送速度や搬送距離が自在に調整され、かつ、基板Kの正確な搬送距離の取得が可能となっている。
【0025】
基板通過センサ7は、規定位置における基板Kの有無を検出する。第一実施形態において、規定位置は、ガイドレール21(搬送路)の搬入端22に一致するように設定されている。これに限定されず、規定位置は、搬入端22よりも停止位置PSのほうへ進んだ位置でもよく、停止位置PSよりも搬入端22側の位置であることを要件とする。第一実施形態において、基板通過センサ7は、上下方向の検出光DLを投射し、検出光DLの通過量に基づいて基板Kの有無を検出する上下方向通過式が採用されている。
【0026】
基板通過センサ7は、投光部71、受光部72、および判定部73(
図4参照)で構成される。
図3に示されるように、投光部71は、搬入端22の上方に配置される。投光部71は、搬入端22を通過する水平姿勢の基板Kに向けて、鉛直下向きの検出光DLを投射する。投光部71は、部品装着機1の稼働時間帯を通して点灯状態が維持される。
【0027】
一方、受光部72は、基板Kを挟んだ投光部71の反対側の位置、換言すると搬入端22の下方に配置される。受光部72は、検出光DLの通過量を検出する。検出光DLの通過量は、搬入端22に基板Kが無いときに多く、基板Kが有るときに減少し、または無くなる。なお、投光部71および受光部72の配置が上下逆で、投光部71が鉛直上向きの検出光DLを投射してもよい。
【0028】
判定部73は、検出光DLの通過量の情報を受光部72から受け取る。判定部73は、通過量が所定の閾値以上である場合に「基板無し」と判定し、通過量が閾値未満である場合に「基板有り」と判定する。所定の閾値は、諸条件が考慮されて予め定められる。この諸条件には、投光部71および受光部72の性能、経時性能変化、および配置の許容誤差や、基板Kの材質および厚さに依存する光の透過率などがある。判定部73は、判定結果を搬送制御部8に出力する。判定部73の判定結果は、基板通過センサ7の検出結果に相当する。なお、判定部73は、受光部72と一体に設けられてもよく、あるいは、搬送制御部8内に設けられてもよい。
【0029】
3.基板搬送装置2の制御の構成
次に、基板搬送装置2の制御の構成について、
図4を参考にして説明する。搬送制御部8は、コンピュータ装置を用いて構成される。搬送制御部8は、通信接続された上位の制御装置5からの指令に基づいて基板Kを搬送する制御を行うとともに、制御状況を制御装置5に報告する。搬送制御部8は、以降に詳述するように、実施形態の基板搬送方法を実行する。
【0030】
搬送制御部8は、基板通過センサ7の判定部73から判定結果を受け取り、判定結果に基づいて搬送部6の駆動モータ66を制御する。なお、搬送制御部8は、投光部71の制御機能、例えば検出光DLの明るさの調整機能を有してもよい。搬送制御部8は、駆動モータ66の動作履歴に基づいて、基板Kの搬送距離を求めることができる。さらに、搬送制御部8は、判定部73の判定結果、および駆動モータ66の動作履歴から求めた搬送距離に基づいて、基板Kの停止位置PSへの到着を認識する。駆動モータ66の制御方法、例えば、基板Kを停止位置PSに急停止させない円滑な減速制御方法として、公知の各種方法を応用することができる。
【0031】
搬送制御部8は、ソフトウェアを用いて構成された四つの制御機能部、すなわち設定部81、監視部82、再設定部83、および異常判定部84を有する。四つの制御機能部は、搬送部6の搬送動作と並行して動作する。
【0032】
設定部81は、搬送部6が基板Kを搬送する際に、基板通過センサ7の判定部73の判定結果が「基板無し」から「基板有り」を経て「基板無し」に変化した時点で、基板Kを停止位置PSまで搬送する今後の搬送距離D1を設定する。判定結果が「基板無し」から「基板有り」に変化したことは、基板Kの前端が搬入端22に到達したことを意味する。また、その後に判定結果が「基板有り」から「基板無し」に変化した時点は、通常の基板Kの後端が搬入端22を通過した時点に相当する。ここで、通常の基板Kとは、空隙部をもたない長方形の一般的な基板Kを意味する。したがって、搬送距離D1は、基板Kの後端が搬入端22を通過した瞬間以降に搬送すべき距離を表す(
図6、
図7参照)。
【0033】
監視部82は、遅くとも設定部81が搬送距離D1を設定した直後から動作する。監視部82は、基板Kが停止位置PSに到着するまで、判定部73の判定結果が再び「基板有り」に変化するか否かを監視する。監視部82は、判定結果が再び「基板有り」に変化したことを、再設定フラグのセット操作によって記憶する。判定部73の判定結果が再び「基板有り」に変化することは、通常の基板Kでは生じ得ず、後述する割れ基板KB(
図8参照)で生じる。第一実施形態において、監視部82は、設定部81に制約されることなく動作して、判定部73の判定結果の変化を継続的に監視する。
【0034】
再設定部83は、判定部73の判定結果が再び「基板有り」に変化したことを監視部82が見つけた場合に動作する。換言すると、再設定部83は、割れ基板KBの搬送時における再設定フラグのセット状態で動作する。再設定部83は、判定部73の判定結果が再び「基板有り」に変化した後さらに「基板無し」に変化した時点で、設定済みの搬送距離をリセットする。さらに、再設定部83は、今後の搬送距離D1を設定し直す。「設定し直す」とは、設定部81の設定動作の後に基板Kの搬送が進むに連れて、当初設定された搬送距離D1が徐々に小さく補正されるが、小さくなった搬送距離をリセットして、現時点で当初と同一の搬送距離D1を再度設定することを意味する。
【0035】
異常判定部84は、基板Kの搬送に関する異常の有無を判定する。異常判定部84は、搬送部6の駆動モータ66の動作履歴、および基板通過センサ7の判定部73の判定結果に基づいて、基板Kの搬送方向の推定長さを求める。詳述すると、異常判定部84は、判定部73の判定結果が「基板無し」から「基板有り」に変化した瞬間の第一時刻、および「基板有り」から「基板無し」に変化した瞬間の第二時刻を求める。換言すると、異常判定部84は、基板Kの前端が搬入端22を通過した第一時刻、および基板Kの後端が搬入端22を通過した第二時刻を求める。
【0036】
さらに、異常判定部84は、第一時刻から第二時刻までに駆動モータ66が基板Kを搬送した搬送距離を求めて、基板Kの推定長さとする。異常判定部84は、この推定長さと、予め記憶した基板Kの搬送方向の既知の長さLKとを比較して、長さの誤差が所定の許容値を超える場合に異常有りと判定する。これによれば、二枚の基板Kが搬送方向に接した状態で搬送される異常や、基板Kから後方にはみ出している部品を基板Kの後端と誤検出した異常が検出される。
【0037】
設定部81、監視部82、および再設定部83の機能および動作については、後の基板搬送装置2の動作の説明の中で追加して述べる。一方、異常判定部84は、必須の構成でなく、省略されてもよい。異常判定部84は、基板搬送装置2の動作の途中で、基板通過センサ7が基板Kの後端を検出したときに、異常の有無を判定することができる。
【0038】
4.搬送距離D1(D2、D3)
次に、前述した搬送距離D1について、
図2、
図7を参考にして説明する。前述したように、ガイドレール21(搬送路)のX軸方向の中央に、破線で示された停止位置PSが設定される。停止位置PSと搬入端22(規定位置)との離間距離は、D0である。一方、基板Kの搬送方向の長さは、LKである。また、基板Kの搬送方向の中間位置PKが、破線で示されている。離間距離D0および基板Kの長さLKは既知であり、搬送距離D1は、搬送動作を開始する以前に予め求められる。
【0039】
第1実施形態において、基板Kは、その中間位置PKが停止位置PSに重なるように停止制御される(
図7参照)。この場合、搬送距離D1は、次式(1)により求められる。
搬送距離D1=D0-(LK/2)…………(1)
つまり、搬送距離D1は、停止位置PSと規定位置(搬入端22)との離間距離D0から基板Kの搬送方向の長さLKの半分を減算した距離となる。
【0040】
なお、基板Kの後端が停止位置PSに重なるように停止制御される場合、搬送距離D2は、次式(2)により求められる。
搬送距離D2=D0……………………………(2)
つまり、搬送距離D2は、停止位置PSと規定位置(搬入端22)との離間距離D0に一致する。
【0041】
また、基板Kの前端が停止位置PSに重なるように停止制御される場合、搬送距離D3は、次式(3)により求められる。
搬送距離D3=D0-LK……………………(3)
つまり、搬送距離D3は、停止位置PSと規定位置(搬入端22)との離間距離D0から基板Kの搬送方向の長さLKを減算した距離となる。
【0042】
5.割れ基板KB
次に、割れ基板KBの構成例について、
図8を参考にして説明する。割れ基板KBは、額縁形状の枠部KF、および二つの小片基板(K1、K2)からなる。小片基板(K1、K2)の各々は、枠部KFの内側に3箇所で結合されている。割れ基板KBの生産終了後に、小片基板(K1、K2)の各々は、枠部KFから割り取られて別々に使用される。
【0043】
割れ基板KBの搬送方向の長さは、LBである。割れ基板KBについても、長さLBを式(1)、式(2)、および式(3)に適用して、今後の搬送距離(D1、D2、D3)を求めることができる。割れ基板KBの搬送方向前側の小片基板K1と後側の小片基板K2の間に、空隙部KGが形成されている。なお、割れ基板KBは、三つ以上の小片基板と、複数の空隙部KGとを有してもよい。従来技術において、前側の小片基板K1の後縁を、割れ基板KBの後端と誤検出するおそれがあった。第1実施形態は、この誤検出のおそれを解消するものである。
【0044】
6.基板搬送装置2の動作
次に、基板搬送装置2の動作について、
図5~
図12を参考にして説明する。
図5は、基板搬送装置2の動作フローを示し、
図6および
図7は、通常の基板Kを搬送する動作事例を示し、
図8~
図12は、割れ基板KBを搬送する動作事例を示す。搬送動作を開始する以前の初期状態において、監視部82が用いる再設定フラグはリセット状態になっている。
【0045】
一番目に、通常の基板Kを搬送する場合の動作について説明する。
図5のステップS1で、搬送制御部8は、搬送部6の搬送動作を開始させる。以降、搬送部6は、基板Kの搬送動作を自動的に継続する。一方、搬送制御部8は、ステップS2以降の一連の動作を制御サイクルごとに繰り返す。ステップS2で、搬送制御部8は、判定部73の判定結果(以降では単に「判定結果」と略記する)、換言すると基板通過センサ7の検出結果を取得する。
【0046】
次のステップS3で、監視部82は、前回の判定結果が「基板無し」で、かつ今回の判定結果が「基板有り」に変化したか否かを調べる。監視部82は、上記のように変化した場合に動作フローの実行をステップS4に進め、それ以外の場合に動作フローの実行をステップS11に進める。ステップS11で、監視部82は、前回の判定結果が「基板有り」で、かつ今回の判定結果が「基板無し」に変化したか否かを調べる。監視部82は、上記のように変化した場合に動作フローの実行をステップS12に進め、それ以外の場合に動作フローの実行をステップS15に進める。
【0047】
ステップS15で、監視部82は、基板Kが停止位置PSに到着しているか否かを調べる。到着していない場合、監視部82は、動作フローの実行をステップS2に戻す。基板Kの搬送を開始した初期の段階において、基板Kの前端は、搬入端22に到達していない。したがって、搬送制御部8は、ステップS2を実行するたびに「基板無し」の判定結果を取得する。これにより、ステップS2、ステップS3、ステップS11、およびステップS15によって構成される動作ループが繰り返して実行される。
【0048】
基板Kの前端が搬入端22に到達すると、ステップS2で、搬送制御部8は、「基板有り」の判定結果を取得する。これにより、動作フローの実行は、ステップS3から動作ループを抜けてステップS4に進められる。ステップS4で、監視部82は、初回の動作であるか否か(ステップS4を初めて実行したか否か)を判定する。初回の動作である場合、監視部82は、動作フローの実行をステップS2に戻す。基板Kの前端が搬入端22に到達したときには初回の動作であるので、動作フローの実行はステップS2に戻される。
【0049】
この後、基板Kが搬入端22を通過している間、搬送制御部8は、ステップS2を実行する都度「基板有り」の判定結果を取得する。これにより、前記した動作ループが繰り返して実行される。
図6に示されるように基板Kの後端が搬入端22に到達すると、ステップS2で、搬送制御部8は、「基板無し」の判定結果を取得する。これにより、動作フローの実行は、ステップS11から動作ループを抜けてステップS12に進められる。
【0050】
ステップS12で、監視部82は、再設定フラグがセット状態であるか否かに応じて、動作フローの分岐先を決定する。基板Kの後端が搬入端22に到達した場合、再設定フラグは初期のリセット状態であるので、動作フローの実行は、ステップS13に進められる。ステップS13で、設定部81は、基板Kの後端を判定して、今後の搬送距離D1の設定動作を行う。この後、動作フローの実行は、ステップS15を経由してステップS2に戻される。
【0051】
基板Kの後端が搬入端22を通過した後、搬送制御部8は、ステップS2を実行する都度「基板無し」の判定結果を取得する。これにより、前記した動作ループが繰り返して実行される。繰り返しの間、搬送制御部8は、基板Kの搬送が進むにつれて今後の搬送距離D1を徐々に小さく補正する。そして、基板Kが停止位置PSに接近すると、搬送制御部8は、搬送部6を適正に減速制御する。
【0052】
図7に示されるように基板Kが停止位置PSに到着して停止すると、動作フローの実行は、ステップS15から動作ループを抜けて終了となる。通常の基板Kを搬送するときに、動作フローのステップS5およびステップS14は実行されず、再設定フラグは用いられない。加えて、再設定部83は動作しない。
【0053】
二番目に、割れ基板KBを搬送する場合の動作について説明する。
図5のステップS1で、搬送制御部8は、搬送部6の搬送動作を開始させる。次のステップS2で、搬送制御部8は、判定部73の判定結果を取得する。割れ基板KBの搬送を開始した初期の段階において、搬送制御部8は、ステップS2を実行する都度「基板無し」の判定結果を取得する。これにより、ステップS2、ステップS3、ステップS11、およびステップS15によって構成される動作ループが繰り返して実行される。
【0054】
割れ基板KBの前端が搬入端22に到達すると、ステップS2で、搬送制御部8は、「基板有り」の判定結果を取得する。これにより、動作フローの実行は、ステップS3から動作ループを抜けてステップS4に進められる。ステップS4で、監視部82は、初回の動作であることから、動作フローの実行をステップS2に戻す。この後、枠部KFの前側部分および前側の小片基板K1が搬入端22を通過している間、搬送制御部8は、ステップS2を実行する都度「基板有り」の判定結果を取得する。これにより、前記した動作ループが繰り返して実行される。
【0055】
図9に示されるように小片基板K1の後縁が搬入端22に到達すると、ステップS2で、搬送制御部8は、「基板無し」の判定結果を取得する。これにより、動作フローの実行は、ステップS11から動作ループを抜けてステップS12に進められる。ステップS12で、監視部82は、再設定フラグがりセット状態であるので、動作フローの実行をステップS13に進める。ステップS13で、設定部81は、割れ基板KBの後端を判定して、今後の搬送距離D1の設定動作を行う。しかしながら、この判定および設定動作は、割れ基板KBの後端に対するものでなく、誤ったものである。この後、動作フローの実行は、ステップS15を経由してステップS2に戻される。
【0056】
割れ基板KBの空隙部KGが搬入端22を通過している間、搬送制御部8は、ステップS2を実行する都度「基板無し」の判定結果を取得する。これにより、前記した動作ループが繰り返して実行される。繰り返しの間、搬送制御部8は、基板Kの搬送が進むに連れて、今後の搬送距離D1を徐々に小さく補正する。
【0057】
図10に示されるように後側の小片基板K2の前縁が搬入端22に到達すると、ステップS2で、搬送制御部8は、「基板有り」の判定結果を取得する。したがって、監視部82は、判定結果が再び「基板有り」に変化したことを認識する。これにより、動作フローの実行は、ステップS3から動作ループを抜けてステップS4に進められる。ステップS4で、監視部82は、二回目の動作であることから、動作フローの実行をステップS5に進める。
【0058】
監視部82は、ステップS5で再設定フラグをセット操作した後、動作フローの実行をステップS2に戻す。この後、小片基板K2および枠部KFの後側部分が搬入端22を通過している間、搬送制御部8は、ステップS2を実行する都度「基板有り」の判定結果を取得する。これにより、前記した動作ループが繰り返して実行される。繰り返しの間、搬送制御部8は、今後の搬送距離を徐々にさらに小さく補正する。
【0059】
図11に示されるように割れ基板KBの後端が搬入端22に到達すると、ステップS2で、搬送制御部8は、「基板無し」の判定結果を取得する。これにより、動作フローの実行は、ステップS11から動作ループを抜けてステップS12に進められる。ステップS12で、監視部82は、再設定フラグがセット状態であるので(既にステップS5でセット操作されている)、動作フローの実行をステップS14に進める。
【0060】
ステップS14で、再設定部83は、割れ基板KBの後端を修正判定して、今後の搬送距離D1の再設定動作を行う。これにより、ステップS13で設定されて徐々に小さく補正されてきた搬送距離がリセットされ、現時点で当初と同一の搬送距離D1が再度設定される。換言すると、ステップS13における誤った設定がリセットされて、ステップS14で正しい設定が行われる。再設定部83は、再設定動作を正常に終了した後、再設定フラグをリセット操作する。この後、動作フローの実行は、ステップS15を経由してステップS2に戻される。
【0061】
割れ基板KBの後端が搬入端22を通過した後、搬送制御部8は、ステップS2を実行する都度「基板無し」の判定結果を取得する。これにより、前記した動作ループが繰り返して実行される。繰り返しの間、搬送制御部8は、ステップS14で再設定された搬送距離D1に基づいて、搬送部6を適正に制御する。
【0062】
最終的に、割れ基板KBは、
図12に示されるように、停止位置PSに到着して停止する。そして、動作フローの実行は、ステップS15から動作ループを抜けて終了となる。なお、複数の空隙部KGが搬送方向に離隔して並んだ割れ基板KBを搬送する場合、空隙部KGの個数に相当する回数だけステップS5およびステップS14が実行される。したがって、再設定部83は、空隙部KGの個数に相当する回数だけ動作する。一方、空隙部KGの有無やその個数に関係なく、ステップS13は1回だけ実行される。したがって、設定部81は、基板(K、KB)の種類に関係なく1回だけ動作する。
【0063】
第1実施形態の基板搬送装置2では、基板通過センサ7の検出結果が「基板無し」から「基板有り」を経て「基板無し」に変化した時点で、基板(K、KB)の後端と判定して今後の搬送距離D1を設定する。そして、検出結果が再び「基板有り」に変化した場合、その後に検出結果が「基板無し」に変化した時点で、割れ基板KBの後端と修正判定し、設定済みの搬送距離をリセットして今後の搬送距離D1を設定し直す。これによれば、割れ基板KBの空隙部KGの存在により後端が誤って判定されても、その後に割れ基板KBの真の後端が修正判定された時点で、今後の搬送距離D1が再設定される。したがって、基板(K、KB)の後端の検出精度を従来よりも向上させることができ、結果として、搬送異常による対基板作業機(部品装着機1)のエラー停止や、基板(K、KB)の停止位置の精度低下を従来よりも減少させることができる。
【0064】
加えて、基板通過センサ7の検出結果に基づく搬送制御部8の制御方法は、すべての基板(K、KB)の種類に対して共通化されている。したがって、基板の種類ごとに複数の対基板作業機の各々についてタイマの設定および搬送距離の調整を行う従来技術と比較して、第1実施形態ではオペレータの手間が大幅に軽減される。
【0065】
7.第2実施形態の基板搬送装置2A
次に、第2実施形態の基板搬送装置2Aについて、
図13および
図14を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。第2実施形態において、搬送部6および搬送制御部8の構成は、第1実施形態と同じである。一方、第2実施形態の基板通過センサ7Aは、水平方向の検出光DLを投射し、検出光DLの通過量に基づいて基板Kの有無を検出する水平方向通過式が採用されている。基板通過センサ7Aは、投光部74、受光部75、および第1実施形態と同じ判定部73で構成される。
【0066】
図13に示されるように、投光部74は、一方のガイドレール21の搬入端22(規定位置)のY軸方向外側に配置される。投光部74は、搬入端22を通過する水平姿勢の基板Kに向けて、搬送方向に直交する水平方向の検出光DLを投射する。受光部75は、基板Kを挟んだ投光部74の反対側の位置、換言すると他方のガイドレール21の搬入端22(規定位置)のY軸方向外側に配置される。受光部75は、検出光DLの通過量を検出する。
【0067】
第2実施形態の基板搬送装置2Aでは、反りを有する反り基板KSを搬送するときに、後端の検出精度を従来よりも向上させることができる。詳述すると、
図14において、反り基板KSは、搬送方向の中間部分が上方に突出するように反っており、反りの程度が誇張して描かれている。反り基板KSの搬送動作において、反り基板KSの前部および後部が搬入端22を通過するときに、検出光DLの通過量が減少する。さりながら、反り基板KSの中間部分が搬入端22を通過するとき、検出光DLは、図示されるように反りの下側を通過して、その通過量が一時的に増加する。
【0068】
つまり、反り基板KSの反った中間部分では、割れ基板KBの空隙部KGと同じ作用が生じる。この結果、反り基板KSを搬送するときに、基板通過センサ7Aの判定部73の判定結果は、第1実施形態で割れ基板KBを搬送する場合と同様の推移をたどる。したがって、反り基板KSの反り部分の存在により後端が誤って判定されても、その後に反り基板KSの真の後端が修正判定された時点で、今後の搬送距離D1が再設定される。これによれば、反り基板KSの後端の検出精度を従来よりも向上させることができ、結果として、搬送異常による対基板作業機(部品装着機1)のエラー停止や、反り基板KSの停止位置の精度低下を従来よりも減少させることができる。
【0069】
8.第3実施形態の基板搬送装置2B
次に、第3実施形態の基板搬送装置2Bについて、
図15を参考にして、第1および第2実施形態と異なる点を主に説明する。第3実施形態において、基板通過センサ7Bは、上下方向の検出光DLを投射し、検出光DLの反射量に基づいて基板Kの有無を検出する上下方向反射式が採用されている。基板通過センサ7Bは、投光部76、受光部77、および判定部(図略)で構成される。
【0070】
図15に示されるように、投光部76は、搬入端22の上方の位置に、鉛直方向から少し傾斜した姿勢で配置される。投光部76は、搬入端22を通過する水平姿勢の基板Kに向けて、斜め下向きの検出光DLを投射する。一方、受光部77は、投光部76に並んだ位置であって、基板Kで反射する検出光DLの進路に相当する位置に、鉛直方向から少し傾斜した姿勢で配置される。受光部77は、検出光DLの反射量を検出する。
【0071】
判定部は、検出光DLの反射量の情報を受光部77から受け取る。判定部は、反射量が所定の閾値未満である場合に「基板無し」と判定し、反射量が閾値以上である場合に「基板有り」と判定する。第3実施形態の基板搬送装置2Bは、基板通過センサ7Bの検出方式が第1実施形態と相違するが、その動作、作用、および効果は、第1実施形態と概ね同じである。
【0072】
9.実施形態の応用および変形
なお、基板搬送装置(2、2A、2B)は、部品装着機1以外の対基板作業機、例えばはんだ印刷機や基板検査機にも適用することができる。また、基板通過センサは、水平方向の検出光を投射し、検出光の反射量に基づいて基板Kの有無を検出する水平方向反射式を採用してもよい。さらに、基板Kの搬送方向の長さLKが未知であっても、基板搬送装置(2、2A、2B)は、異常判定部84が求めた推定長さを用いて今後の搬送距離D1を演算し、基板Kを所定の停止位置PSに停止させることができる。ただし、異常判定部84による異常判定は行えない。第1~第3実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0073】
1:部品装着機 2、2A、2B:基板搬送装置 21:ガイドレール 22:搬入端 3:部品供給装置 4:部品移載装置 6:搬送部 61:コンベアベルト 65:駆動プーリ 66:駆動モータ 7、7A、7B:基板通過センサ 71:投光部 72:受光部 73:判定部 74:投光部 75:受光部 76:投光部 77:受光部 8:搬送制御部 81:設定部 82:監視部 83:再設定部 84:異常判定部 DL:検出光 PS:停止位置 D0:離間距離 D1:搬送距離 K:基板 PK:中間位置 LK:長さ KB:割れ基板 KF:枠部 K1、K2:小片基板 KG:空隙部 LB:長さ KS:反り基板