(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】セパレータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0221 20160101AFI20240207BHJP
H01M 8/0213 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/0223 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/0228 20160101ALI20240207BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240207BHJP
【FI】
H01M8/0221
H01M8/0213
H01M8/0223
H01M8/0228
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2023536256
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2021027107
(87)【国際公開番号】W WO2023002560
(87)【国際公開日】2023-01-26
【審査請求日】2023-09-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】手島 真広
(72)【発明者】
【氏名】増村 正彦
(72)【発明者】
【氏名】横倉 茉穂
(72)【発明者】
【氏名】本多 雅之
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/131566(WO,A1)
【文献】特開2011-021289(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003979(WO,A1)
【文献】特開2001-015131(JP,A)
【文献】特開2006-269305(JP,A)
【文献】特開2014-197487(JP,A)
【文献】特開2000-077079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0221
H01M 8/0213
H01M 8/0223
H01M 8/0228
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトと、樹脂と、当該樹脂とは別のアラミド繊維と、を含むプレートを備える燃料電池用のセパレータであって、
前記プレートは、その表面に流路としての溝を備え、
前記アラミド繊維は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維であ
り、
前記溝と前記プレートの前記溝以外の表面とを含み前記プレートの少なくとも表側の面および裏側の面に形成されている層であって、前記プレートよりガスバリア特性に優れたバリア層を、さらに備えることを特徴とするセパレータ。
【請求項2】
前記バリア層は、前記プレートと異なるフィルム状の被覆層であることを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記バリア層は、樹脂若しくはゴムが前記プレートを構成する粒子若しくは繊維の間を充填している充填層であることを特徴とする請求項
1に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記バリア層は、前記充填層と、前記プレートと異なるフィルム状の被覆層とを含むことを特徴とする請求項
3に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記バリア層は、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフェニレンスルファイドの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項
1から
4のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記プレートを構成する樹脂および前記バリア層を構成する樹脂は同一種類の熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項
1から
5のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記プレートを構成する樹脂および前記バリア層を構成する樹脂の少なくとも一方はポリフェニレンスルファイドを主材とすることを特徴とする請求項
1から
6のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載のセパレータの製造方法であって、
金型内に、前記グラファイトと前記樹脂と前記アラミド繊維とを少なくとも混合した混合物、前記プレートの表面に流路としての溝より浅いプレ溝部を備える溝付きプレート、または前記溝付きプレートに前記プレ溝部を備えていない状態のプリプレートの内のいずれか1つの被成形物を配置する被成形物配置工程と、
前記被成形物を配置した状態にて前記金型を閉じて成形を行う成形工程と、
を含
み、
前記被成形物は、前記溝付きプレートであって、前記金型の内側に、前記プレ溝部に挿入可能であって前記溝の転写用の凹凸を備え、
前記成形工程では、前記凹凸を備えた前記金型を用いて、前記溝付きプレートの前記プレ溝部を深くして前記溝の形成を行うことを特徴とするセパレータの製造方法。
【請求項9】
請求項1から
7のいずれか1項に記載のセパレータの製造方法であって、
金型内に、前記グラファイトと前記樹脂と前記アラミド繊維とを少なくとも混合した混合物、前記プレートの表面に流路としての溝より浅いプレ溝部を備える溝付きプレート、または前記溝付きプレートに前記プレ溝部を備えていない状態のプリプレートの内のいずれか1つの被成形物を配置する被成形物配置工程と、
前記被成形物を配置した状態にて前記金型を閉じて成形を行う成形工程と、
を含
み、
前記被成形物配置工程に先立って、前記金型内に、前記プレートの少なくとも裏側の面に、前記プレートよりガスバリア特性に優れたバリア層を形成するための第1フィルムを配置する第1フィルム配置工程と、
前記バリア層を形成するための第2フィルムを、前記被成形物配置工程において前記金型内に配置された前記被成形物上に配置する第2フィルム配置工程と、
をさらに含み、
前記被成形物配置工程は、前記被成形物を前記第1フィルム上に配置し、
前記成形工程は、前記被成形物を前記第1フィルムと前記第2フィルムによって挟んだ状態にて前記金型を閉じて成形を行い、前記プレートの表側および裏側の両面に前記バリア層を形成することを特徴とするセパレータの製造方法。
【請求項10】
前記被成形物は、前記グラファイトと前記樹脂と前記アラミド繊維とを少なくとも混合した混合物、または前記プリプレートであって、前記金型の内側に、前記溝の転写用の凹凸を備え、
前記成形工程では、前記凹凸を備えた前記金型を用いて、前記混合物または前記プリプレートの成形および前記溝の形成を行うことを特徴とする請求項8
または9に記載のセパレータの製造方法。
【請求項11】
前記混合物中の前記樹脂がフレーク状の樹脂粉末であることを特徴とする請求項
8から
10のいずれか1項に記載のセパレータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【クロスリファレンス】
【0001】
本願において引用した特許、特許出願及び文献に記載された内容は、本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、セパレータおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
燃料電池は、水素と酸素の反応を利用してエネルギーを取り出す電池である。当該反応によって生成するのは水であるため、燃料電池は地球環境に優しい電池として知られている。特に、固体高分子型燃料電池は、高出力密度を可能とし、小型で軽量であることから、自動車、通信機器、電子機器等のバッテリーとして有力視され、また一部実用化されている。燃料電池は、複数個のセルを積み重ねて構成されたセルスタックである。セルとセルとの間には、セパレータと称する壁部材が配置されている。セパレータは、隣同士になる水素と酸素の通路を仕切る隔壁板であり、水素と酸素がイオン交換膜の全面にわたって均一に接触して流れる役割を担っている。このため、セパレータには、その流路となる溝が形成されている。
【0004】
セパレータは、その構成材料の観点で、金属材料系と、炭素材料系とに大別される。金属材料系のセパレータには、一般的に、ステンレススチール、アルミニウム若しくはその合金、あるいはチタニウム若しくはその合金が使用される。金属材料系のセパレータは、金属特有の強度と延性に起因して、加工性に優れ、かつ薄型化が可能である。しかし、金属材料系のセパレータは、後述の炭素材料系のセパレータに比べて比重が大きく、燃料電池の軽量化に反する。さらに、金属材料系のセパレータは、耐腐食性が低く、材料によっては不動態皮膜を形成するという欠点を有する。金属材料の腐食あるいは不動態皮膜は、セパレータの電気抵抗の上昇につながるので、好ましくない。金属材料系のセパレータの耐食性を改善するために貴金属をめっきあるいはスパッタ等によるコートする場合には高コスト化を招くが、当該高コスト化を防ぐために、セパレータの表面に形成される流路の凸部をフォトレジスト膜で形成する方法が知られている(特許文献1を参照)。
【0005】
一方、炭素材料系のセパレータは、金属材料系のセパレータに比べて比重が小さく、耐食性にも優れるという利点を有する。しかし、炭素材料系のセパレータは、加工性および機械的強度に劣る。また、さらなる低電気抵抗化(すなわち、さらなる高導電性化)の要求もある。機械的強度の改善方法としては、例えば、熱可塑性樹脂に黒鉛粒子を分散させたセパレータが知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-090937号公報
【文献】特開2006-294407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
熱可塑性樹脂に黒鉛粒子を分散させる方法は、ある程度、セパレータの高強度化を実現できる。しかし、このように製造された炭素材料系のセパレータであっても、その薄型化は困難であり、さらなる高強度化が要求される。また、高導電性化に優れることも要求される。これは、燃料電池用のセパレータのみならず、リチウム電池等の一次電池、レドックスフロー電池等の二次電池、およびキャパシタ等の他の蓄電デバイスに使用するセパレータにも通じ得る。
【0008】
本発明は、強度および導電性に優れたセパレータおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係るセパレータは、グラファイトと、樹脂と、当該樹脂とは別のアラミド繊維と、を含むプレートを備える蓄電デバイス用のセパレータであって、前記プレートは、その表面に流路としての溝を備え、前記アラミド繊維は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維である。
(2)別の実施形態に係るセパレータは、好ましくは、前記溝と前記プレートの前記溝以外の表面とを含み前記プレートの少なくとも表側の面および裏側の面に形成されている層であって、前記プレートよりガスバリア特性に優れたバリア層を、さらに備えても良い。
(3)別の実施形態に係るセパレータにおいて、好ましくは、前記バリア層は、前記プレートと異なるフィルム状の被覆層であっても良い。
(4)別の実施形態に係るセパレータにおいて、好ましくは、前記バリア層は、樹脂若しくはゴムが前記プレートを構成する粒子若しくは繊維の間を充填している充填層であっても良い。
(5)別の実施形態に係るセパレータにおいて、好ましくは、前記バリア層は、前記充填層と、前記プレートと異なるフィルム状の被覆層とを含んでいても良い。
(6)別の実施形態に係るセパレータにおいて、好ましくは、前記バリア層は、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフェニレンスルファイドの内の少なくとも1つを含んでいても良い。
(7)別の実施形態に係るセパレータにおいて、好ましくは、前記プレートを構成する樹脂および前記バリア層を構成する樹脂は同一種類の熱可塑性樹脂であっても良い。
(8)別の実施形態に係るセパレータにおいて、好ましくは、前記プレートを構成する樹脂および前記バリア層を構成する樹脂の少なくとも一方はポリフェニレンスルファイドを主材としていても良い。
(9)上記目的を達成するための一実施形態に係るセパレータの製造方法は、上述のいずれかのセパレータを製造する方法であって、
金型内に、前記グラファイトと前記樹脂と前記アラミド繊維とを少なくとも混合した混合物、前記プレートの表面に流路としての溝より浅いプレ溝部を備える溝付きプレート、または前記溝付きプレートに前記プレ溝部を備えていない状態のプリプレートの内のいずれか1つの被成形物を配置する被成形物配置工程と、
前記被成形物を配置した状態にて前記金型を閉じて成形を行う成形工程と、
を含む。
(10)別の実施形態に係るセパレータの製造方法において、好ましくは、前記被成形物は、前記グラファイトと前記樹脂と前記アラミド繊維とを少なくとも混合した混合物、または前記プリプレートであって、前記金型の内側に、前記溝の転写用の凹凸を備え、
前記成形工程では、前記凹凸を備えた前記金型を用いて、前記混合物または前記プリプレートの成形および前記溝の形成を行っても良い。
(11)別の実施形態に係るセパレータの製造方法において、好ましくは、
前記被成形物は、前記溝付きプレートであって、前記金型の内側に、前記プレ溝部に挿入可能であって前記溝の転写用の凹凸を備え、
前記成形工程では、前記凹凸を備えた前記金型を用いて、前記溝付きプレートの前記プレ溝部を深くして前記溝の形成を行っても良い。
(12)別の実施形態に係るセパレータの製造方法において、好ましくは、
前記被成形物配置工程に先立って、前記金型内に、前記プレートの少なくとも裏側の面に、前記プレートよりガスバリア特性に優れたバリア層を形成するための第1フィルムを配置する第1フィルム配置工程と、
前記バリア層を形成するための第2フィルムを、前記被成形物配置工程において前記金型内に配置された前記被成形物上に配置する第2フィルム配置工程と、
をさらに含み、
前記被成形物配置工程は、前記被成形物を前記第1フィルム上に配置し、
前記成形工程は、前記被成形物を前記第1フィルムと前記第2フィルムによって挟んだ状態にて前記金型を閉じて成形を行い、前記プレートの表側および裏側の両面に前記バリア層を形成しても良い。
(13)別の実施形態に係るセパレータの製造方法において、好ましくは、前記混合物中の前記樹脂がフレーク状の樹脂粉末でも良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、強度および導電性に優れたセパレータおよびその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係るセパレータの平面図を示す。
【
図2A】
図2Aは、
図1のセパレータのA-A線断面図およびその一部Bの拡大図を示す。
【
図2B】
図2Bは、
図2Aの一部Bにおける一部Cのバリエーションa,b,cの各拡大図を示す。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係るセパレータの製造方法の主な工程のフローの一例を示す。
【
図4】
図4は、
図3の製造方法の各工程の状況を断面視にて示す。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る製造方法の主な工程のフローの一例を示す。
【
図7】
図7は、
図6の製造方法の各工程の状況を断面視にて示す。
【
図9】
図9は、変形例に係るセパレータの製造方法において、プリプレートに代えて溝付きプレートを用いたときの状況を断面視にて示す。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係るセパレータの
図2Aと同様のA-A線断面図およびその一部Bの拡大図を示す。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係るセパレータの製造方法の主な工程のフローの一例を示す。
【符号の説明】
【0012】
1,1a・・・セパレータ、2・・・プレート、2a・・・混合物(被成形物の一例)、3・・・バリア層、4・・・第1フィルム、5・・・第2フィルム、30,32・・・溝、31・・・表面、40,45・・・下金型(金型の一構成部品)、41,46,51,56・・・凹部、42,52・・・凹凸、50,55・・・上金型(金型の一構成部品)、60,65・・・金型、70・・・プリプレート(被成形物の一例)、70a・・・溝付きプレート(被成形物の一例)、F・・・被覆層、M・・・充填層。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
1.セパレータ
図1は、本発明の第1実施形態に係るセパレータの平面図を示す。
図2Aは、
図1のセパレータのA-A線断面図およびその一部Bの拡大図を示す。
図2Bは、
図2Aの一部Bにおける一部Cのバリエーションa,b,cの各拡大図を示す。
【0015】
この実施形態に係るセパレータ1は、平面視で略矩形の板状体である。この実施形態に係るセパレータ1は、例えば、燃料電池において、電解質膜の両面を空気極と水素極によって挟んだ膜/電極接合体(Membrane Electrode Assembly: MEA)の両側から挟む板状体である。この実施形態では、セパレータ1は、水素極(「アノード電極」ともいう)側に配置されるアノード側セパレータと、空気極(「カソード電極」ともいう)側に配置されるカソード側セパレータと、を含むように広義に解釈される。この実施形態では、セパレータ1は、炭素材料系のセパレータである。また、セパレータ1は、燃料電池用に限定されず、レドックスフロー電池、キャパシタ等の他の蓄電デバイスのセルとセルとの間に配置される板状部材にも用いることができる。
【0016】
セパレータ1は、その厚さ方向に貫通する貫通孔11,12,21,22を備える。貫通孔11,21は、セパレータ1の一端側に配置されている。貫通孔12は、セパレータ1を平面視した際に、貫通孔21と対向して、セパレータ1の上記一端側と反対に位置する他端側に配置されている。貫通孔22は、セパレータ1を平面視した際に、貫通孔11と対向するように、セパレータ1の上記一端側と反対に位置する他端側に配置されている。セパレータ1の一面側(表面側)には、流路としての溝30が形成されている。溝30以外の表面31は、溝30に対して凸面となっている。また、セパレータ1の上記一面側の反対側の面(裏面側)には、流路としての溝32が形成されている。溝32以外の表面31は、溝32に対して凸面となっている。
【0017】
セパレータ1がカソード側セパレータの場合、貫通孔11は、酸化ガスの供給口である。貫通孔12は、酸化ガスの排出口である。貫通孔21は、水素ガスの排出口である。貫通孔22は、水素ガスの供給口である。酸化ガスは、例えば、空気であるが、酸素でも良い。セパレータ1の表面側の溝30は、酸化ガスを流すための流路である。セパレータ1の裏面側の溝32は、冷却水を流すための流路である。
図1では、白矢印にて、酸化ガスの流れを示す。
【0018】
セパレータ1がアノード側セパレータの場合、貫通孔11は、水素ガスの供給口である。貫通孔12は、水素ガスの排出口である。貫通孔21は、酸化ガスの排出口である。貫通孔22は、酸化ガス供給口である。セパレータ1の表面側の溝30は、水素ガスを流すための流路である。セパレータ1の裏面側の溝32は、冷却水を流すための流路である。
【0019】
セパレータ1は、少なくともプレート2を備えている。この実施形態では、セパレータ1は、好ましくは、プレート2と、プレート2の厚さ方向の両側の表面に、オプションとして、バリア層3を備えている。
【0020】
(プレート)
プレート2は、グラファイトと、樹脂と、当該樹脂とは別のアラミド繊維と、を含むプレートであって、当該プレートの表面に流路としての溝30,32を備えている。プレート2は、グラファイトと樹脂と当該樹脂とは別のアラミド繊維とを含む成形体であり、溶融後に固化した樹脂中にグラファイトが分散した微細構造を有する。プレート2を構成するグラファイトの成形前の形態は、好ましくは、粒状若しくは繊維状である。プレート2を構成する樹脂の成形前の形態は、好ましくは、粒状若しくは繊維状である。ここで、粒状は、フレーク状(薄片状ともいう)の形態も含む。また、繊維状は、ウィスカー状の形態も含む。成形前のグラファイトと樹脂とアラミド繊維との各形態のより好適な組み合わせは、粒状若しくは繊維状のグラファイトとフレーク状の樹脂と繊維状のアラミド繊維の組み合わせである。プレート2は、グラファイトと樹脂とアラミド繊維に加えて、当該樹脂およびアラミド繊維とは別の種類の繊維を備えていても良い。当該繊維は、当該樹脂およびアラミド繊維とは異なる種類の繊維であれば、例えば、樹脂繊維、炭素繊維、セラミックス繊維等のいかなる種類の繊維であっても良い。プレート2は、セパレータ1の溝30,32に相当する溝を備えている。プレート2の平面視における面積は、好ましくは10cm2以上1000cm2以下、より好ましくは100cm2以上750cm2以下である。プレート2の厚さは、好ましくは0.1mm以上20mm以下、より好ましくは0.2mm以上10mm以下である。
【0021】
プレート2を構成する樹脂は、特に制約されないが、好ましくは熱可塑性樹脂である。プレート2としてより好適な樹脂は、耐熱性に優れた樹脂であり、具体的には、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)、ポリエーテルケトン(PEK)、液晶ポリマー(LCP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニルサルフォン(PPSU)、ポリエーテルイミド(PEI)およびポリスルフォン(PSU)を例示できる。これらの中でも、PPSまたはPEEKが特に好適である。PPSとしては、東レ(株)製のM2888、E2180、大日本インキ化学工業(株)製のFZ-2140、FZ-6600を例示できる。
【0022】
プレート2の成形前に用いられる樹脂の平均粒径は、好ましくは1μm以上300μm以下、より好ましくは5μm以上150μm以下、さらにより好ましくは10μm以上100μm以下である。ここで、平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定法にて測定される粒径をいう。以後の平均粒径の測定方法も同様である。
【0023】
プレート2を構成するグラファイトは、人造黒鉛、膨張黒鉛、天然黒鉛等のいずれでもよい。ここで、膨張黒鉛とは、グラファイト(黒鉛)の正六角形平面を重ねた構造の特定の一面に他の物質層が入り込むこと(=インターカレーション)によって黒鉛層間を拡張させた黒鉛若しくは黒鉛層間化合物をいう。膨張黒鉛としては、例えば、富士黒鉛工業(株)製のBSP-60A(平均粒子径60μm)あるいはEXP-50SMを、人造黒鉛としては、例えば、オリエンタル産業(株)製の1707SJ(平均粒子径125μm)、AT-No.5S(平均粒子径52μm)、AT-No.10S(平均粒子径26μm)、AT-No.20S(平均粒子径10μm)、あるいは日本黒鉛工業(株)製PAG,HAGを、天然黒鉛としては、富士黒鉛工業(株)製のCNG-75N(平均粒子径43μm)あるいは日本黒鉛工業(株)製のCPB(鱗状黒鉛粉末、平均粒子径19μm)を、それぞれ用いることができる。また、黒鉛粒子の形状については、特に制約は無く、薄片状、鱗片状、球状等、適宜選択することができる。さらに、グラファイトは、非晶質の炭素(アモルファスカーボン)を一部に含んでいても良い。
【0024】
プレート2の成形前に用いられるグラファイトの平均粒径は、好ましくは1μm以上500μm、より好ましくは3μm以上300μm以下、さらにより好ましくは10μm以上150μm以下である。
【0025】
グラファイトと樹脂とは、別々に粒径を調整してから混合してプレート2の成形用に用いても良く、あるいは先に混錬後、粉砕し、粒径を調整してプレート2の成形用に用いても良い。グラファイトと樹脂とを混錬後、粉砕し、粒径を調整する場合には、混合粉末の平均粒径は、好ましくは1μm以上500μm、より好ましくは3μm以上300μm以下、さらにより好ましくは10μm以上150μm以下である。
【0026】
プレート2を構成するグラファイトと樹脂の質量比は、グラファイト:樹脂=70~95質量部:30~5質量部である。例えば、5質量部の樹脂に対して、70質量部以上95質量部以下の範囲のグラファイトを混合してセパレータ1の構成材料とすることができる。また、例えば、30質量部の樹脂に対しても、同様に、70質量部以上95質量部以下の範囲のグラファイトを混合してセパレータ1の構成材料とすることができる。セパレータ1は、樹脂よりもグラファイトを質量比にて多く含むのが好ましい。グラファイトと樹脂とのより好適な質量比は、樹脂1質量部に対して、グラファイト10質量部、若しくはグラファイト10.1質量部以上20質量部以下である。上述のように、樹脂の質量部よりもグラファイトの質量部を多くすると、従来のセパレータよりも、グラファイト同士の接触部位が多くなり、もって、セパレータ1の電気抵抗をより低く(すなわち、導電性をより高く)することができる。セパレータ1の代表的なサンプルでは、体積抵抗値は5mΩcmまたはそれ以下である。
【0027】
プレート2の構成要素の1つであるアラミド繊維は、下記の化学式(1)により表されるメタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維である。化学式(1)において、mおよびnは正数である。m:nは、好ましくは5:1~1:9、より好ましくは4:1~1:4である。当該アラミド繊維の重合度は、下記の数(1)により表される固有粘度ηによって評価する。ηの値は、好ましくは1.5以上7.0以下、より好ましくは2.0以上5.0以下である。粘度測定はオストワルド粘度計を用い、測定時の溶液温度は30℃である。
【0028】
【0029】
【0030】
数(1)において、t0は濃硫酸の流下時間[sec]、tは濃硫酸中に0.5g/100mL濃度でポリマーを溶解させた溶液の流下時間溶液[sec]、Cはポリマー溶液の濃度[g/100mL]である。
【0031】
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維としては、帝人(株)製のテクノ―ラT320NW 1-12(平均繊維長1.0mm、平均繊維径20μm)、テクノーラT32PNW 3-12(平均繊維長3.2mm、平均繊維径18μm)、テクノ―ラT320NW 6-12(平均繊維長6.0mm、平均繊維径20μm)を例示できる。本願において、平均繊維長は、光学顕微鏡による任意の20本の繊維を測定して得た繊維長を平均した値である。平均繊維径は、走査型電子顕微鏡による任意の20本の繊維を測定して得た繊維径を平均した値である。なお、繊維端面が円形で出ない場合は、端面の内、最も長い長辺をその繊維の径とした。
【0032】
プレート2の成形前に用いられるメタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維の平均繊維長は、好ましくは0.5mm以上8.0mm以下、より好ましくは1mm以上6mm以下である。また、プレート2の成形前に用いられるメタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維の平均繊維径は、好ましくは2μm以上50μm以下、より好ましくは5μm以上30μm以下である。
【0033】
プレート2にアラミド繊維を備えることにより、アラミド繊維がベース樹脂(例えば、PPS)に対して平衡吸水率が高いことから、セパレータ1の表面の親水性が向上し、水素と酸素の反応により水または水蒸気が生成した際にセパレータ1の表面に沿って排水に効果的に作用するほか、ベース樹脂に対して、耐熱性、強度、耐薬品性等を付与するにも有効である。特に、プレート2にメタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を備えることにより、セパレータ1の導電性の低下を抑えつつ、曲げ強度および曲げ歪を向上させることができる。アラミド繊維として、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維のみを備えても良く、またはメタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維とメタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維を備えても良い。メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維を備える場合、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維の質量に対して10質量%以下である方が好ましい。メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維の少量添加は、ハンドリングの向上のメリットがあるためである。具体的には、次のとおりである。メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維は、比較的、繊維径が小さく、それ自体では補強効果は発揮しないが、樹脂やグラファイトをまとめるバインダーとして機能する。このため、メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維を、電気特性を損なわない範囲(メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維の質量に対して10質量%以下)加え、プリプレートから樹脂やグラファイトの粒子が脱落するのを防止するのが好ましい。メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を備えるプレート2からなるセパレータ1の代表的なサンプルでは、体積抵抗値は2.5mΩcmまたはそれ以下である。
【0034】
プレート2を構成するアラミド繊維(メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維)は、プレート2を構成する樹脂(アラミド繊維を除く)100質量部に対して20質量部以上230質量部以下含むのが好ましい。
【0035】
(バリア層)
バリア層3は、必須の構成要素ではないが、この実施形態では、溝30,32とプレート2の溝30,32以外の表面31とを含み、プレート2の少なくとも表側の面および裏側の面を被覆している。すなわち、バリア層3は、溝30,32の内側の面も含めてプレート2の表側の面および裏側の面の両面を被覆している。バリア層3は、例えば、プレート2と異なるフィルム状の被覆層であり、表側の面を被覆するバリア層の一例である第1フィルム4および裏側の面を被覆するバリア層の一例である第2フィルム5の2種類を分離して、あるいは融着して成る。この実施形態では、バリア層3は、第1フィルム4と第2フィルム5とに分かれ、プレート2の表側の面および裏側の面にそれぞれ付着したものである。しかし、バリア層3は、第1フィルム4と第2フィルム5とを接合した状態にてプレート2を包む袋形状であっても良い。
【0036】
図2Bは、
図2Aの一部Bにおける一部Cのバリエーションa,b,cの各拡大図を示す。
【0037】
形態aは、プレート2の表面に、好ましくは樹脂またはゴムを主材とするフィルムを備えた形態である。形態aでは、バリア層3は、プレート2と異なるフィルム状の被覆層Fである。また、形態bは、プレート2の表面近傍に樹脂またはゴムが含侵したバリア層3を備えた形態である。形態bでは、バリア層3は、樹脂若しくはゴムがプレート2を構成する粒子若しくは繊維の間を充填している充填層Mである。さらに、形態cでは、バリア層3は、充填層Mと、被覆層Fとを含む。このように、バリア層3は、好ましくは、a、bまたはcの形態をとる。ただし、バリア層3は、プレート2よりもガスバリア特性に優れている限り、形態a,b,c以外の形態をとっていても良い。本願における「ガスバリア特性」または「ガスバリア性能」とは、ガスの透過を防ぐ性質を意味する。以下、形態aのバリア層3を主体に説明する。
【0038】
バリア層3は、好ましくは、樹脂またはゴムである。バリア層3は、プレート2を構成する樹脂の上記好適な選択肢の内の1または2以上を主材とし、より好ましくはPEEKおよびPPSの内の少なくとも1つを主材とする。ここで、「主材」とは、バリア層3の50質量%を超える比率を占める材料を意味する。主材は、バリア層3の質量に対して50質量%を超える限り、例えば、51質量%、60質量%、70質量%、80質量%、90質量%、95質量%または100質量%でも良い。
【0039】
バリア層3の厚さは、好ましくは2μm以上50μm以下、より好ましくは4μm以上35μm以下である。バリア層3の厚さを2μm以上、さらには4μm以上とすると、セパレータ1のガスバリア性能をより高く、強度(曲げ強度)をより高く、取り扱いやすさをより高くできる。一方、バリア層3の厚さを50μm以下、さらには35μm未満とすると、体積抵抗をより低くできる。第1フィルム4と第2フィルム5とを同一の厚さとし、あるいは異なる厚さにしても良い。この実施形態では、強度はJIS K7171にて測定される曲げ強さを意味する。
【0040】
プレート2を構成する樹脂と、バリア層3を構成する樹脂とを同一種の熱可塑性樹脂とすることもできる。その場合、プレート2の表面近くの樹脂と、プレート2を被覆するバリア層3とを一体化できるので、セパレータ1のさらなる強度向上を図ることができる。当該熱可塑性樹脂としては、好ましくはPEEKまたはPPSである。
【0041】
2.セパレータの製造方法
次に、本発明の第1実施形態に係るセパレータの製造方法について説明する。
【0042】
セパレータ1は、グラファイトと、樹脂と、アラミド繊維(前記樹脂とは別の構成要素。以下、同様。)と、を少なくとも混合した混合物(「被成形物」の一例)を金型内に配置する被成形物配置工程と、被成形物を配置した状態にて金型を閉じて成形を行う成形工程と、を含む。また、セパレータ1の製造方法(以下、単に、「製造方法」ともいう。)は、好ましくは、被成形物配置工程に先立って、第1フィルム4を金型内に配置する第1フィルム配置工程と、被成形物配置工程において金型内に配置された被成形物上に第2フィルム5を配置する第2フィルム配置工程と、をさらに含む。セパレータの製造方法は、以下の実施形態では、好ましくは、燃料電池のセル同士の間に用いられる燃料電池用セパレータを製造する方法である。また、セパレータ1は、好ましくは炭素材料系のセパレータである。ただし、セパレータ1は、燃料電池用に限定されず、レドックスフロー電池、キャパシタ等の他の蓄電デバイスのセルとセルとの間に配置される板状部材にも用いることができる。
【0043】
図3は、第1実施形態に係るセパレータの製造方法の主な工程のフローの一例を示す。
図4は、
図3の製造方法の各工程の状況を断面視にて示す。
図5は、
図4に続く各工程の状況を断面視にて示す。
【0044】
セパレータ1は、第1フィルム配置工程(S100)と、被成形物配置工程(S110)と、第2フィルム配置工程(S120)と、成形工程(S130)と、を経て製造可能である。以下、S100~S130について、
図3~5を参照して詳述する。
【0045】
(1)第1フィルム配置工程(S100)
この工程は、プレート2の少なくとも裏側の面にバリア層3を形成するための第1フィルム4を金型60内に配置する工程である。具体的には、金型60を構成する下金型40を用意し、下金型40の凹部41に第1フィルム4を敷く(
図4(a),(b)を参照)。下金型40は、凹部41の内底面に、溝32を転写形成可能な凹凸42を備える。
【0046】
(2)被成形物配置工程(S110)
この工程は、グラファイトと樹脂とアラミド繊維とを含む混合物2aを金型60内に供給する工程である。具体的には、下金型40に敷かれた第1フィルム4上に、混合物2aを供給する(
図4(c)を参照)。混合物2aは、アラミド繊維として、少なくとも先述のメタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を含むものである。
【0047】
(3)第2フィルム配置工程(S120)
この工程は、プレート2の少なくとも表側の面にバリア層3を形成するための第2フィルム5を、被成形物配置工程(S110)において金型60内に配置された混合物2a上に配置する工程である。具体的には、下金型40の凹部41に配置された混合物2a上に第2フィルム5を敷く(
図4(d)を参照)。
【0048】
(4)成形工程(S130)
この工程は、第1フィルム4、混合物2aおよび第2フィルム5を含む積層物を硬化させ成形体を作製する工程である。具体的には、金型60を構成する上金型50を用意し、下金型40の凹部41側に重ね、下金型40と上金型50とを閉める(
図5(e),(f)を参照)。上金型50は、下金型40の凹部41と対向する面に凹部51を有する。凹部51は、その内底面に、溝30を転写形成可能な凹凸52を備える。金型60の型締後、加温して上記積層物の成形を行う(
図5(g)を参照)。この結果、混合物2aは硬化してプレート2を形成する。また、凹凸41,51の転写によって、バリア層3(第1フィルム4および第2フィルム5)にて覆われた状態の溝30,32が形成される(
図5(h)を参照)。
【0049】
成形工程(S130)後に、金型60を開き、セパレータ1が完成する。なお、セパレータ1の製造方法において、第1フィルム配置工程(S100)または第2フィルム配置工程(S120)のいずれか一方の工程を行わなくとも良い。
【0050】
図6は、第2実施形態に係る製造方法の主な工程のフローの一例を示す。
図7は、
図6の製造方法の各工程の状況を断面視にて示す。
図8は、
図7に続く各工程の状況を断面視にて示す。
【0051】
図6に示す製造方法は、混合物2aを半硬化させたプリプレートを作製してから、当該プリプレートを第1フィルム4と第2フィルム5とで挟んで成形してセパレータ1を製造する方法である。すなわち、この製造方法では、成形工程の前に、半硬化状態のプリプレートを得るプリ成形工程が行われる。
【0052】
セパレータ1は、被成形物配置工程(S200)と、プリ成形工程(S210)と、第1フィルム配置工程(S300)と、プリプレート配置工程(S310)と、第2フィルム配置工程(S320)と、成形工程(S330)と、を経て製造可能である。以下、S200~S210およびS300~S330について、
図6~8を参照して詳述する。
【0053】
(1)被成形物配置工程(S200)
この工程は、グラファイトと樹脂とアラミド繊維とを含む混合物2aを金型65内に供給する工程である。具体的には、下金型45の凹部46に混合物2aを供給する(
図7(a)を参照)。混合物2aは、アラミド繊維として、少なくとも先述のメタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を含むものである。
【0054】
(2)プリ成形工程(S210)
この工程は、混合物2aを半硬化させてプリプレートを作製する工程である。具体的には、金型65を構成する上金型55を用意し、下金型45の凹部46側に重ね、下金型45と上金型55とを閉める(
図7(b),(c),(d)を参照)。上金型55は、下金型45の凹部46と対向する面に凹部56を有する。金型65の型締後、加温して、混合物2aの半硬化を行う。このときの温度は、成形工程の温度より低い。この結果、プリプレート(半硬化状態の混合物)70が完成する。
【0055】
(3)第1フィルム配置工程(S300)
この工程は、第1フィルム4を金型60内に配置する工程である(
図8(e)を参照)。具体的な内容は、第1実施形態に係る製造方法の第1フィルム配置工程(S100)と同様である。
【0056】
(4)プリプレート配置工程(S310)
この工程は、凹部41に敷かれた第1フィルム4上にプリプレート70を配置する工程である(
図8(f)を参照)。
【0057】
(5)第2フィルム配置工程(S320)
この工程は、プリプレート配置工程(S310)の後に、金型60内のプリプレート70を構成する混合物2a上に第2フィルム5を配置する工程である(
図8(g)を参照)。
【0058】
(6)成形工程(S330)
この工程は、第1フィルム4、プリプレート70(混合物2aから構成)および第2フィルム5を含む積層物を硬化させ成形体を作製する工程である。具体的には、金型60を構成する上金型50を用意し、下金型40の凹部41側に重ね、下金型40と上金型50とを閉める(
図8(h),(i)を参照)。金型60の型締後、加温して、上記積層物の成形を行う。この結果、混合物2aは硬化してプレート2を形成する。また、凹凸41,51の転写によって、バリア層3(第1フィルム4および第2フィルム5)にて覆われた状態の溝30,32が形成される(
図8(j)を参照)。
【0059】
成形工程(S330)後に、金型60を開き、セパレータ1が完成する。なお、セパレータ1の製造方法において、第1フィルム配置工程(S300)または第2フィルム配置工程(S320)のいずれか一方の工程を行わなくとも良い。
【0060】
図9は、変形例に係るセパレータの製造方法において、プリプレートに代えて溝付きプレートを用いたときの状況を断面視にて示す。
【0061】
この変形例では、下金型45および上金型55の各内底面に凹凸が形成されており、プリプレート配置工程(S310)によって、流路としての溝30,32より浅いプレ溝部71,72を備える溝付きプレート70aが製造される。プリプレート配置工程(S310)では、溝付きプレート70aのプレ溝部72が凹凸42に合うように、第1フィルム4上に溝付きプレート70aが配置される(
図9を参照)。その後、溝付きプレート70aのプレ溝部71に上金型50の凹凸52を合わせて、上金型50と下金型40とを閉め、金型60を型締めする。そして、第2実施形態に係る製造方法の成形工程(S330)が実行されることにより、凹凸42,52によりプレ溝部71,72を深くして溝30,32が形成され、セパレータ1が完成する(
図8(i),(j)を参照)。
【0062】
この変形例において、溝付きプレート70aは、プレ溝部71,72に代えて溝30,32を備えていても良い。この場合、プリプレート配置工程(S310)では、溝付きプレート70aの溝32が凹凸42に合うように、第1フィルム4上に溝付きプレート70aが配置され、その後、溝付きプレート70aの溝30に上金型50の凹凸52を合わせて金型60を型締めすれば良い。
【0063】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態に係るセパレータおよびその製造方法において、第1実施形態と共通する部分については、重複した説明を省略し、第1実施形態における説明を代用する。
【0064】
1.セパレータ
図10は、第2実施形態に係るセパレータの
図2Aと同様のA-A線断面図およびその一部Bの拡大図を示す。
【0065】
この実施形態に係るセパレータ1aは、プレート2を備える。この実施形態に係るセパレータ1aは、第1実施形態に係るセパレータ1と異なり、バリア層3(第1フィルム4および第2フィルム5)を備えていない。セパレータ1aは、バリア層3を備えていない点以外については、セパレータ1と同一である。
【0066】
2.セパレータの製造方法
図11は、第2実施形態に係るセパレータの製造方法の主な工程のフローの一例を示す。
【0067】
セパレータ1aは、グラファイトと樹脂とアラミド繊維とを少なくとも混合した混合物(「被成形物」の一例)を金型内に配置する被成形物配置工程(S400)と、被成形物を配置した状態にて金型を閉じて成形を行う成形工程(S410)と、を含む。被成形物配置工程(S400)は、第1フィルム4を金型60に配置せずに行われる点以外は、被成形物配置工程(S110)と共通する。成形工程(S410)は、第1フィルム4および第2フィルム5を配置せずに行われる点以外は、成形工程(S130)と共通する。したがって、ここでは、先述の第1実施形態に係るセパレータ1の製造方法と重複した説明を省略する。
【0068】
図12は、
図11と異なる製造方法の主な工程のフローの一例を示す。
【0069】
セパレータ1aは、被成形物配置工程(S500)と、プリ成形工程(S510)と、プリプレート配置工程(S600)と、成形工程(S610)と、を経て製造可能である。
【0070】
被成形物配置工程(S500)は、被成形物配置工程(S200)と共通する。プリ成形工程(S510)は、プリ成形工程(S210)と共通する。プリプレート配置工程(S600)は、第1フィルム配置工程(S300)を経ずに行われる点以外、プリプレート配置工程(S310)と共通する。成形工程(S610)は、第1フィルム4および第2フィルム5無しで行われる点以外、成形工程(S330)と共通する。したがって、ここでは、先述の第1実施形態に係るセパレータ1の製造方法と重複した説明を省略する。
【0071】
<その他の実施形態>
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0072】
セパレータ1,1aの溝30は、
図1の白矢印で示す方向にガスを流す流路以外の流路を形成する溝でも良い。また、溝32は、如何なる形態の流路を形成する溝でも良い。例えば、溝30をセパレータ1の一端から他端に向かう直線的な流路を形成する溝とし、溝32を溝30に対して略直角方向の直線的な流路を形成する溝としても良い。また、セパレータ1,1aは、溝30および溝32の少なくとも一方を形成していないものでも良い。
【0073】
成形工程の後に、第1フィルム4および/または第2フィルム5の余分な領域をトリミングするトリミング工程を行っても良い。
【0074】
セパレータ1は、その表側の面および裏側の面の両面にバリア層3を備えているが、表側の面および裏側の面の内のいずれか一方の面のみにバリア層3を備えても良い。当該一方の面のみにバリア層3を形成する場合、第2フィルム配置工程(S120,S320)または第1フィルム配置工程(S100,S300)を省略すれば良い。
【0075】
第1実施形態の製造方法では、バリア層3が樹脂またはゴムの層である燃料電池用セパレータの製造方法であるが、バリア層3が
図2Bの形態bまたは形態cの層の燃料電池用セパレータの製造方法であっても良い。
【実施例】
【0076】
次に、本発明の実施例を、比較例と比較しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
1.プレートの主な原料
(1)グラファイト
セパレータのプレートの構成材料となるグラファイト粉末には、オリエンタル工業(株)製の品番:1707SJ(人造黒鉛、平均粒径125μm)およびオリエンタル工業(株)製の品番:AT-No.5S(人造黒鉛、平均粒径52μm)の2種類のグラファイト粉末を用いた。
(2)樹脂
セパレータのプレートの構成材料となる樹脂として、ポリフェニレンフルファイ(PPS)の粉末を用いた。PPSには、東レ(株)製のトレリナM2888のフレーク状のPPS粉末を冷凍粉砕して平均粒径50μmに調整したPPS微粉末を用いた。
(3)アラミド繊維
セパレータのプレートの構成材料となるアラミド繊維として、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維、メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維、およびメタ型アラミド繊維を用いた。メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維には、帝人(株)製のテクノ―ラT320NW 1-12(平均繊維長1.0mm、平均繊維径20μm)、テクノーラT32PNW 3-12(平均繊維長3.2mm、平均繊維径18μm)、およびテクノ―ラT320NW 6-12(平均繊維長6.0mm、平均繊維径20μm)の3種類のアラミド繊維を用いた。メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維には、帝人(株)製のトワロン1080(平均繊維長6.1mm、平均繊維径24μm)、トワロン1094(平均繊維長1.1mm、比表面積13.6m2/g)、トワロン1097(平均繊維長1.2mm、比表面積6.9m2/g)、およびトワロンD8016(平均繊維長0.8mm)の4種類のアラミド繊維を用いた。メタ型アラミド繊維には、帝人(株)製のコーネックスC11-C(平均繊維長3.1mm、平均繊維径21μm)を用いた。
(4)その他の繊維
セパレータのプレートの構成材料となるその他の繊維として、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、およびPPS繊維の3種類の繊維を用いた。PAN系炭素繊維には、帝人(株)製のテナックスHT C110(平均繊維長7.3mm、平均繊維径7μm)およびテナックスHT C137(平均繊維長6.0mm、平均繊維径7μm)の2種類のPAN系炭素繊維を用いた。ピッチ系炭素繊維には、日本グラファイトファイバー(株)製のGRANOC XN-100-03Z(平均繊維長3.3mm、平均繊維径11μm)を用いた。PPS繊維には、東レ(株)製のトルコンS307(平均繊維長6.0mm、平均繊維径13μm)を用いた。
【0078】
2.フィルム
セパレータ用のフィルムには、PPS製のフィルムを用いた。PPS製のフィルムには、東レ(株)製の厚さ9μmのフィルム(品番:トレリナ9-3071)を用いた。
【0079】
3.金型
成形用の金型としては、上下分割式の大同特殊鋼(株)製プリハードン鋼NAK80を工材とした金型を用いた。閉じた状態の金型内部には、セパレータを成形可能な空間(約63cm3)が形成されている。また、上下各金型の内側の底部には、セパレータの溝を形成するための凹凸が形成されている。
【0080】
4.評価方法
(1)体積抵抗率
セパレータの体積抵抗率は、JIS K7194に基づき、日東精工アナリテック(株)製の装置(Loresta-GX T-700)を用いて測定した。体積抵抗率が2.5mΩcm未満の場合には合格と評価した。
(2)曲げ試験
セパレータの曲げ試験は、JIS K7171に基づき、(株)島津製作所製の装置(オートグラフ AG-100kNG)を用いて測定した。
・曲げ強度
曲げ強度が40MPaを超えた場合には合格と評価した。
・曲げ歪み
曲げ歪みが0.7%を超えた場合には合格と評価した。
(3)総合評価
各特性値評価のすべてが合格と評価された場合に、合格と評価した。また、各特性値評価のうち少なくとも1つの特性値評価が不合格と評価された場合に、不合格と評価した。
【0081】
5.セパレータの製造
<実施例>
(1)実施例1
人造黒鉛粒子(品番:1707SJ)977.8質量部(1質量部=1gに相当。以下、<実施例>において同じ。)および人造黒鉛粒子(品番:AT-No.5S)244.4質量部、PPS粉末100質量部、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部、およびメタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロンD8016)4.2質量部を用意し、これらを水中で混合分散して固形分1%のスラリーを作製した。このスラリーを25cm角の投入口を備えるろ過器へ投入し、ろ過によって得られる残渣であるシート状の湿潤シートを成形した。この湿潤シートを150℃に加熱したプレス機にセットして面圧8MPaの圧力で約20分間加圧加熱し、湿潤シートを乾燥させて水分を除去することにより、人造黒鉛粒子、PPS粒子、およびアラミド繊維が分散した厚さ2mm、坪量2200g/m2のプリプレートを製造した。次に、分割式の金型を構成する下金型の内側の凹部に、厚さ9μmのPPSフィルムを敷き、当該フィルム上に、上記プリプレートを供した。そして、当該プリプレートの上から厚さ9μmのPPSフィルムを載せた。次に、分割式の金型を構成する上金型と、上記下金型とを閉じて成形を行った。成形は、面圧4MPaにて、金型の温度が340℃になるまで加熱し、面圧90Mpaまで昇圧して1分間保持した。その後圧力をそのまま保ちながら金型を30℃になるまで加圧冷却した。成形終了後に、金型を開き、成形体を取り出し、セパレータの製造を終了した。セパレータは、上記評価方法にて評価した。
(2)実施例2
人造黒鉛粒子(品番:1707SJ)1261.1質量部、PPS粉末100質量部、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT32PNW 3-12)27.8質量部を用意して混合物を調整した以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。
(3)実施例3
人造黒鉛粒子(品番:1707SJ)977.8質量部および人造黒鉛粒子(品番:AT-No.5S)244.4質量部、PPS粉末100質量部、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT32PNW 3-12)66.7質量部を用意して混合物を調整した以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。
(4)実施例4
人造黒鉛粒子(品番:1707SJ)1083.3質量部、PPS粉末100質量部、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT32PNW 3-12)205.6質量部を用意して混合物を調整した以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。
(5)実施例5
人造黒鉛粒子(品番:AT-No.5S)2308.3質量部、PPS粉末100質量部、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT32PNW 3-12)111.1質量部、メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロン1094)8.3質量部、およびピッチ系炭素繊維250質量部を用意して混合物を調整した以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。
(6)実施例6
人造黒鉛粒子(品番:1707SJ)809.2質量部および人造黒鉛粒子(品番:AT-No.5S)202.3質量部、PPS粉末100質量部、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT32PNW 3-12)34.5質量部、およびメタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロンD8016)3.4質量部を用意して混合物を調整した以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。
(7)実施例7
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部に代えて、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT32PNW 3-12)62.5質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。
(8)実施例8
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部およびメタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロンD8016)4.2質量部に代えて、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 6-12)62.5質量部およびメタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロン1094)4.2質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。
【0082】
<比較例>
(1)比較例1
人造黒鉛粒子(品番:1707SJ)1000質量部およびPPS粉末100質量部、を、ジルコニアボールを用いてボールミル粉砕して、両種粉末の混合と粉砕とを行った。当該ボールミル粉砕は、混合粉末の粒度が平均粒径90±10μmとなることを粒度分布の測定(レーザ回折/散乱式粒子径分布測定法による測定)を通じて確認した時点で終了した。次に、分割式の金型を構成する下金型の内側の凹部に、厚さ9μmのPPSフィルムを敷き、当該フィルム上に、ボールミル粉砕後の粉末状態の混合物(グラファイト+PPS)を供した。次に、当該混合物の厚さがほぼ均一になるようにして、その上から厚さ9μmのPPSフィルムを載せた。そして、分割式の金型を構成する上金型と、上記下金型とを閉じて成形を行った。比較例1は、PPS以外の繊維を構成材料に含まず、グラファイトおよびPPSのみからなるプレートを用いて実施した。成形は、面圧47MPaにて、金型の温度が360℃迄上昇するように、3分間保持した。成形終了後に、金型を開き、成形体を取り出し、セパレータの製造を終了した。セパレータは、上記評価方法にて評価した。
(2)比較例2
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部に代えて、メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロン1080)62.5質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。比較例2は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を構成材料に含まないプレートを用いて実施した。
(3)比較例3
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部に代えて、メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロン1094)62.5質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。比較例3は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を構成材料に含まないプレートを用いて実施した。
(4)比較例4
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部に代えて、メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロン1097)62.5質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。比較例4は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を構成材料に含まないプレートを用いて実施した。
(5)比較例5
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部を用いず、メタフェニレン基を含まないパラ型アラミド繊維(トワロンD8016)を4.2質量部に代えて66.7質量部用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。比較例5は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を構成材料に含まないプレートを用いて実施した。
(6)比較例6
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部に代えて、メタ型アラミド繊維(コーネックスC11-C)62.5質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。比較例6は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を構成材料に含まないプレートを用いて実施した。
(7)比較例7
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部に代えて、PAN系炭素繊維(ナックスHT C110)62.5質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。比較例7は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を構成材料に含まないプレートを用いて実施した。
(8)比較例8
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部に代えて、PAN系炭素繊維(ナックスHT C137)62.5質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。比較例8は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を構成材料に含まないプレートを用いて実施した。
(9)比較例9
メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維(テクノ―ラT320NW 1-12)62.5質量部に代えて、PPS繊維62.5質量部を用いた以外、実施例1と同様の条件でセパレータを製造し、評価した。比較例9は、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を構成材料に含まないプレートを用いて実施した。
【0083】
6.結果
表1~表5に、各実施例および各比較例の製造条件および評価結果を示す。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
比較例1~9については、体積抵抗率、曲げ強度および曲げ歪みのうち少なくとも1つは不合格であった。これに対して、実施例1~8については、すべての特性が合格となった。
【0090】
以上の結果から、比較例1と実施例1との比較から、メタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維をプレートの構成材料に含むことにより、曲げ歪が向上することが確認できた。また、実施例1と比較例2~9との比較から、プレートの構成材料として、他の繊維ではなくメタフェニレン基を含むパラ型アラミド繊維を含む効果が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係るセパレータは、燃料電池、リチウム電池等の一次電池、レドックスフロー電池等の二次電池、およびキャパシタ等の蓄電デバイスに利用できる。