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特許7432066機能音提示システム、装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】機能音提示システム、装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10K 15/02 20060101AFI20240207BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240207BHJP
   A61M 21/02 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G10K15/02
H04R3/00 310
A61M21/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023572610
(86)(22)【出願日】2023-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2023013234
【審査請求日】2023-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596074085
【氏名又は名称】株式会社IC
(73)【特許権者】
【識別番号】515353110
【氏名又は名称】株式会社フィート
(74)【代理人】
【識別番号】100098899
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 信市
(74)【代理人】
【識別番号】100163865
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 健
(72)【発明者】
【氏名】有光 哲彦
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-204744(JP,A)
【文献】特開2015-118667(JP,A)
【文献】特表2019-513505(JP,A)
【文献】特開2020-173677(JP,A)
【文献】明石 拓弥,在宅高齢者を支援する個人適応型スピーカーサービスの提案,電子情報通信学会技術研究報告,日本,一般社団法人電子情報通信学会,2021年03月12日,Vol.120, No.434,pp.49-54
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 15/00-15/04
H04R 3/00
A61M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間感覚の喪失、短期記憶障害及び認知機能低下を含む症状に対応した各前記症状に対処するための非言語的な機能音を記憶する、記憶部と、
所定の設定情報又は対象者から得られた情報に基づいて、出力すべき機能音である出力機能音を特定する、出力特定部と、
前記機能音に基づいて、前記出力機能音を生成する、出力生成部と、
前記出力機能音を前記対象者へと提示する提示情報を生成する、提示情報生成部と、を備え
前記時間感覚の喪失に対処するための前記機能音は、時間の周期性に関する気付きを提供する音を含み、
前記短期記憶障害に対処するための前記機能音は、イベントに関する気付きを提供する音を含み、
前記認知機能低下に対処するための前記機能音は、前記対象者の周辺環境に関する気付きを提供する音を含む、機能音提示システム。
【請求項2】
前記症状は、さらに、身体機能の低下及び特定の行動に関する問題を含む、請求項に記載の機能音提示システム。
【請求項3】
前記身体機能の低下に対処するための前記機能音は、前記身体機能の低下に関する気付きを提供する音を含み、
前記特定の行動に関する問題に対処するための前記機能音は、前記特定の行動を促し又は抑制する音を含む、請求項に記載の機能音提示システム。
【請求項4】
前記出力生成部は、さらに、
前記機能音を合成し及び/又は補正することにより前記出力機能音を生成する、請求項1に記載の機能音提示システム。
【請求項5】
前記対象者から得られた情報は、前記対象者の居住空間に設けられたセンサを介して得られたセンサ検出情報に基づいて生成される、請求項1に記載の機能音提示システム。
【請求項6】
前記出力特定部は、さらに、前記所定の設定情報又は前記対象者から得られた情報に基づいて、出力すべき視覚刺激パターンを特定し、
前記提示情報生成部は、さらに、特定された前記視覚刺激パターンを提示する情報を生成する、請求項1に記載の機能音提示システム。
【請求項7】
前記出力特定部は、さらに、前記所定の設定情報又は前記対象者から得られた情報に基づいて、出力すべき触覚提示パターンを特定し、
前記提示情報生成部は、さらに、特定された前記触覚提示パターンを提示する情報を生成する、請求項1に記載の機能音提示システム。
【請求項8】
前記出力特定部は、ルックアップテーブルを用いて、所定の設定情報又は又は前記対象者から得られた情報から前記出力機能音を特定する、請求項1に記載の機能音提示システム。
【請求項9】
前記設定情報は、所定のモード情報である、請求項1に記載の機能音提示システム。
【請求項10】
前記出力特定部は、さらに、前記所定の設定情報又は前記対象者から得られた情報に基づいて、前記出力機能音の提示時期を特定し、
前記提示情報生成部は、前記提示時期に基づく前記提示情報を生成する、請求項1に記載の機能音提示システム。
【請求項11】
時間感覚の喪失、短期記憶障害及び認知機能低下を含む症状に対応した各前記症状に対処するための非言語的な機能音を記憶する、記憶部と、
所定の設定情報又は対象者から得られた情報に基づいて、出力すべき機能音である出力機能音を特定する、出力特定部と、
前記機能音に基づいて、前記出力機能音を生成する、出力生成部と、
前記出力機能音を前記対象者へと提示する提示情報を生成する、提示情報生成部と、を備え
前記時間感覚の喪失に対処するための前記機能音は、時間の周期性に関する気付きを提供する音を含み、
前記短期記憶障害に対処するための前記機能音は、イベントに関する気付きを提供する音を含み、
前記認知機能低下に対処するための前記機能音は、前記対象者の周辺環境に関する気付きを提供する音を含む、機能音提示装置。
【請求項12】
時間感覚の喪失、短期記憶障害及び認知機能低下を含む症状に対応した各前記症状に対処するための非言語的な機能音を記憶する、記憶ステップと、
所定の設定情報又は対象者から得られた情報に基づいて、出力すべき機能音である出力機能音を特定する、出力特定ステップと、
前記機能音に基づいて、前記出力機能音を生成する、出力生成ステップと、
前記出力機能音を前記対象者へと提示する提示情報を生成する、提示情報生成ステップと、を備え
前記時間感覚の喪失に対処するための前記機能音は、時間の周期性に関する気付きを提供する音を含み、
前記短期記憶障害に対処するための前記機能音は、イベントに関する気付きを提供する音を含み、
前記認知機能低下に対処するための前記機能音は、前記対象者の周辺環境に関する気付きを提供する音を含む、機能音提示方法。
【請求項13】
コンピュータに、
時間感覚の喪失、短期記憶障害及び認知機能低下を含む症状に対応した各前記症状に対処するための非言語的な機能音を記憶する、記憶ステップと、
所定の設定情報又は対象者から得られた情報に基づいて、出力すべき機能音である出力機能音を特定する、出力特定ステップと、
前記機能音に基づいて、前記出力機能音を生成する、出力生成ステップと、
前記出力機能音を前記対象者へと提示する提示情報を生成する、提示情報生成ステップと、を実行させ
前記時間感覚の喪失に対処するための前記機能音は、時間の周期性に関する気付きを提供する音を含み、
前記短期記憶障害に対処するための前記機能音は、イベントに関する気付きを提供する音を含み、
前記認知機能低下に対処するための前記機能音は、前記対象者の周辺環境に関する気付きを提供する音を含む、機能音提示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、対象者に音等を提示する装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、居住空間において音を提示することで、所定の目的を達成しようとするシステムが知られている。例えば、特許文献1には、音響と調光を用いて人の体感温度を制御しようとする発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-129936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、高齢社会が到来しており、高齢者や要介護者等の認知機能の低下等により引き起こされる様々な事故や不都合が問題となっている。例えば、時間感覚の喪失や短期記憶障害等により、日常生活に不自由する高齢者等が増えており、高齢者の生活の安全性や質の低下にもつながっている。
【0005】
このような高齢者等の認知機能低下等の問題に対処するため、様々なトレーニング、リハビリテーション、薬剤を用いた方法等が提案されているが、未だ研究途上であり、高齢者等の生活の安全性を向上させ又は生活の質を向上させる有力な技術の提案が求められている。
【0006】
本発明は、上述の技術的背景に鑑みてなされたものであり、その目的は、対象者の生活の安全性を向上させ又は質の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の技術的課題は、以下の構成を有する機能音提示システム等により解決することができる。
【0008】
すなわち、本発明に係る機能音提示システムは、症状毎に前記症状に対処するための要素機能音を記憶する、記憶部と、所定の設定情報又は対象者から得られた情報に基づいて、出力すべき機能音を特定する、出力特定部と、前記要素機能音を合成し及び/又は補正することにより、特定された前記機能音を生成する、機能音生成部と、前記機能音を前記対象者へと提示する提示情報を生成する、提示情報生成部と、を備えている。
【0009】
このような構成によれば、対象者に対して、所定の設定情報又は対象者の状態に応じて、各種の症状に対処するための音から機能音を提示することができる。これにより、対象者の生活の安全性を向上させ又は質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象者の生活の安全性を向上させ又は質の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、見守り支援システムの全体構成図である。
図2図2は、情報処理装置のハードウェア構成図である。
図3図3は、サーバ装置のハードウェア構成図である。
図4図4は、センサ装置をキッチンに配置された冷蔵庫に取り付ける例について示した説明図である。
図5図5は、センサ装置を寝室に取り付ける例について示した説明図である。
図6図6は、センサ装置を廊下の手すりに取り付ける例について示した説明図である。
図7図7は、センサ装置を洋室に置かれた肘掛け椅子に取り付ける例について示した説明図である。
図8図8は、センサ装置を寝室に取り付ける場合の他の例について示した説明図である。
図9図9は、センサ装置を部屋の移動に用いる扉に取り付ける例について示した説明図である。
図10図10は、出力提示装置の居住空間への設置例について示す説明図である。
図11図11は、機能音等の提示処理を行うときのサーバ装置の機能ブロック図である。
図12図12は、見守り支援システムの動作に関するゼネラルフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について添付の図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
(1.第1の実施形態)
第1の実施形態として、本発明を高齢者や要介護者等の見守り支援システム100に対して適用した例について説明する。なお、本実施形態においては、便宜上、見守り支援システム100を利用して見守る側の者を見守り者、見守り支援システム100により見守られる側の者を見守り対象者と称する。
【0014】
(1.1 見守り支援システムの構成)
図1は、本実施形態に係る見守り支援システム100の全体構成図である。同図から明らかな通り、見守り支援システム100は、複数のセンサ装置10(センサ装置1(10-1)、センサ装置2(10-2)、・・・、センサ装置N(10-N))と、情報処理装置20と、サーバ装置30と、出力提示装置60を含み、これらの装置は互いにインターネット等のネットワークを介して接続されている。なお、本ネットワークの構成は例示である。また、サーバ装置30はクラウド上に実装されてもよい。
【0015】
センサ装置10は、後述するように、見守り対象者の居住空間の各部屋に対応して配置されている。センサ装置10は、見守り対象者をセンシングするためのセンサと、ROM、RAM等であってプログラムや各種のデータを記憶する記憶部と、CPU等の制御部と、外部装置との情報の授受を行うための通信ユニットを含む通信部と、を含む。センサ装置10のセンサにおいて検出された情報は、ネットワークを介して他の装置、例えば、サーバ装置30へと送信される。
【0016】
図2は、本実施形態に係る情報処理装置20のハードウェア構成図である。同図から明らかな通り、情報処理装置20は、記憶部21と、制御部22と、通信部23と、操作入力部25と、オーディオ出力部26と、表示出力部27と、I/O部28とを備え、それらは互いにバス等を介して接続されている。
【0017】
記憶部21は、ROM/RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶部であり、後述の動作を実行する各種のプログラム又はデータを記憶している。制御部22は、CPU等の制御装置であり、プログラムを実行して後述の各種の動作を実現する。通信部23は、ネットワークを介して外部装置との間の情報の授受を行うための通信ユニットである。操作入力部25は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力装置を介して検出された入力情報を制御部22へと提供する。オーディオ出力部26は、制御部22による制御に応じて、接続されたスピーカ等の出力装置へと音声出力を行う。表示出力部27は、制御部22による制御に応じて、ディスプレイ等の表示出力装置へと画像情報の出力を行う。I/O部28は、外部装置との間において入出力処理を行う。
【0018】
情報処理装置20は、センサ装置10又はサーバ装置30との間で情報の授受を行う。情報処理装置20を操作することで、見守り者やシステム導入者は、各種の設定処理を行うことができる。例えば、設置したセンサ装置10を見守り支援システム100上で居住空間の部屋等と対応付けることができる。また、情報処理装置20を介して見守り者に対して各種情報の提示を行うことができる。例えば、見守り対象者の状態等を見守り者に対して提示することができる。
【0019】
図3は、本実施形態に係るサーバ装置30のハードウェア構成図である。同図から明らかな通り、サーバ装置30は、記憶部31と、制御部32と、通信部33と、操作入力部35と、オーディオ出力部36と、表示出力部37と、I/O部38とを備え、それらは互いにバス等を介して接続されている。
【0020】
記憶部31は、ROM/RAM、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶部であり、後述の動作を実行する各種のプログラム又はデータを記憶している。制御部32は、CPU、GPU等の制御装置であり、プログラムを実行して後述の各種の動作を実現する。通信部33は、ネットワークを介して外部装置との間の情報の授受を行うための通信ユニットである。操作入力部35は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力装置を介して検出された入力情報を制御部32へと提供する。オーディオ出力部36は、制御部32による制御に応じて、接続されたスピーカ等の出力装置へと音声出力を行う。表示出力部37は、制御部32による制御に応じて、ディスプレイ等の表示出力装置へと画像情報の出力を行う。I/O部38は、外部装置との間において入出力処理を行う。
【0021】
サーバ装置30は、センサ装置10、情報処理装置20又は出力提示装置60との間で情報の授受を行い、後述の種々の処理を実行する。
【0022】
出力提示装置60は、スピーカ、光源、振動ユニットを含む提示部と、ROM、RAM等であってプログラムや各種のデータを記憶する記憶部と、CPU等の制御部と、外部装置との情報の授受を行うための通信ユニットを含む通信部と、を含む。
【0023】
出力提示装置60は、見守り対象者の居住空間に設置され、サーバ装置30から受信した提示情報を見守り対象者に対して提示する。例えば、サーバ装置30から機能音に関する提示情報を受信した場合には、スピーカを介して、当該機能音を見守り対象者に対して提示する。なお、同一の居住空間内に設置される出力提示装置60とセンサ装置10を一体的に構成してもよい。
【0024】
センサ装置10は、見守り対象者の居住空間内の様々な箇所に取り付けられる。例えば、部屋の床や壁、手すり、家電又は家具等である。
【0025】
図4は、センサ装置10をキッチンに配置された冷蔵庫11に取り付ける例について示した説明図である。同図から明らかな通り、冷蔵庫11は、上下2段の構成を有し、上段には2つの両開き扉111が配置され、下段には引き出し式の格納庫113が配置されている。同図(A)は、閉扉時の冷蔵庫の全体構成を示している。同図(B)は、上段の両開き扉111の開閉に関する説明図である。同図(C)は、下段の格納庫113の開閉に関する説明図である。
【0026】
同図(A)から明らかな通り、両開き扉111の各扉には、センサ装置10のセンサとして加速度センサ110が備えられている。また、下段の格納庫113にも、センサ装置10のセンサとして加速度センサ(不図示)が備えられている。
【0027】
同図(B)から明らかな通り、両開き扉111の各扉には加速度センサ110が備えられている。この加速度センサ110において得られる時系列信号より、扉の開閉を検出することができる。また、扉の内側に飲料等の容器が格納されると扉が重くなる。同図(B)の左右の図から明らかな通り、この重量の変化は加速度センサ110における検出値の変化として検出することができることから、扉の内側に配置された容器の有無や内容量も間接的に検出される。
【0028】
同図(C)から明らかな通り、格納庫113は加速度センサ(不図示)を備えており、この加速度センサにおいて得られる時系列信号により、格納庫113の開閉を検出することができる。また、格納庫113に飲料等の容器が格納されると格納庫113の重量が大きくなる。同図(C)の左右の図から明らかな通り、この重量の変化は加速度センサにおける検出値の変化として検出することができることから、格納庫113内の容器の有無や内容量も間接的に検出される。
【0029】
図5は、センサ装置10を寝室に取り付ける例について示した説明図である。同図(A)は配置構成例を示す図であり、同図(B)は集音例に関する説明図である。同図(A)から明らかな通り、寝室のベッド122の周辺には、センサ装置10のセンサとして、左右一対のマイクロホン、すなわち、マイクロホン121(L)とマイクロホン121(R)が配置されている。これらのマイクロホンがベッド122に寝ている見守り対象者から発生する音を時系列で収集する。例えば、同図(B)に示される通り、見守り対象者の呼吸音や咳をその集音により得られた音圧波形から検出することができる。なお、検出にあたっては、ビームフォーミングによる目的エリア(ベッド122周辺)の集音や、目的音以外のノイズ除去等の公知の種々の信号処理を行ってもよい。
【0030】
図6は、センサ装置10を廊下の手すりに取り付ける例について示した説明図である。同図(A)に示される通り、棒状の手すり131には、センサ装置10のセンサとして、ひずみセンサ132が備えられている。このひずみセンサ132から得られる時系列信号から手すりに加えられる荷重やねじりモーメント等を検出することができる。これらを検出することにより対象者の状態、例えば、手や足腰が不自由か否か等を検出することができる。
【0031】
また、複数の手すりに対してそれぞれひずみセンサを設けてもよい。同図(B)においては、3つの手すり131(131-1、131-2、131-3)が連続して配置され、各手すり131にはそれぞれひずみセンサ132(132-1、132-2、132-3)が取り付けられている。このような複数のセンサを備える構成によれば、各ひずみセンサ132で荷重やねじりモーメントが検出可能なばかりでなく、各ひずみセンサ132から得られた時系列信号を統合的に解析することで、手すりにつかまりながら移動する見守り対象者の移動速度を算出することもできる。
【0032】
図7は、センサ装置10を洋室に置かれた肘掛け椅子に取り付ける例について示した説明図である。同図(A)に示される通り、肘掛け椅子15の左右の肘掛けには、センサ装置10のセンサとして一対のひずみセンサ151(151(L)、151(R))が取り付けられている。この一対のひずみセンサ151において検出される荷重、振動、ひずみ等の時系列信号から種々の情報を検出することができる。
【0033】
同図(B)は、一対のひずみセンサ151で検出される信号の例である。このような信号から、検出される荷重の大きさやタイミング、左右差等から、見守り対象者の利き手、脚力、姿勢、呼吸等を推定することができる。
【0034】
同図(C)は、一対のひずみセンサ151において検出される信号の他の例である。このような周期的な信号から見守り対象者の呼吸等の状態を推定することができる。
【0035】
図8は、センサ装置10を寝室に取り付ける場合の他の例について示した説明図である。同図の例にあっては、ベッド162の4つの足の裏には、センサ装置10のセンサとしてそれぞれひずみセンサ163が配置されている。このひずみセンサ163から得られる時系列信号から、例えば、見守り対象者のベッド162上での状態を推定することができる。また、ベッド162から所定距離離れた位置には、センサ装置10のセンサとして距離センサ161が配置されている。この距離センサ161から得られる時系列信号から、例えば、見守り対象者の挙動を検出することができる。
【0036】
図9は、センサ装置10を部屋の移動に用いる扉に取り付ける例について示した説明図である。同図から明らかな通り、扉171は、ノブを回転させて押し引きすることにより開閉可能に構成され、扉171及びノブには加速度センサ172、173が取り付けられている。この加速度センサ172から得られる時系列信号からドアの開閉の有無、開閉速度等を検出することができる。なお、これらを通じて部屋の移動やその部屋で行われる行動の頻度等を算出することもできる。
【0037】
以上、センサ装置10のセンサの取り付け例について説明したが、いずれも単なる例示であって、本発明はこのような構成に限定されない。従って、見守り対象者の生活状態を検出するために、どのようなセンサを用いてもよいし、取り付け箇所も様々に変形可能である。
【0038】
図10は、出力提示装置60の居住空間への設置例について示す説明図である。同図の例から明らかな通り、部屋の天井には、出力提示装置60の提示部として、第1のスピーカ61と光源62が設置されている。また、手すりには、第2のスピーカ64と振動ユニット63が設置されている。これらの提示部を介して、所望の聴覚的、視覚的又は触覚的刺激が見守り対象者に対して提示される。なお、出力提示装置60の制御部その他の構成は部屋の内部又は外部に配置されている(不図示)。
【0039】
図11は、機能音等の提示処理を行うときのサーバ装置30の機能ブロック図である。同図から明らかな通り、センサ情報取得部301は、サーバ装置30の記憶部31からセンサ装置10において検出されたセンサ情報を取得し、状態情報生成処理部302へと提供する。
【0040】
状態情報生成処理部302は、センサ情報に基づいて所定の信号処理を行い、見守り対象者の健康状態等の状態を推定する情報、すなわち、状態情報を生成する。状態情報取得部303は、この状態情報を取得し、提示対象情報特定部306へと提供する。
【0041】
提示対象情報特定部306は、所定のルックアップテーブル(LUT)を用いて、状態情報に対応する機能音、視覚提示情報、及び触覚提示情報を特定する。
【0042】
機能音合成・補正処理部307は、特定された機能音となるよう1又は複数の音源に係る音を合成し、及び/又は補正する。ここで、各音源は、症状毎に設けられた音源情報取得部(311~316)により記憶部31から取得される。
【0043】
より詳細には、取得対象となる各音源は、まず、中核症状用の音源と周辺症状用の音源に大別される。中核症状とは、見守り対象者の呈する症状のうち中核的な症状を表し、例えば、時間感覚の喪失、短期記憶障害、認知機能低下といった症状である。また、周辺症状とは、見守り対象者の呈する症状のうち中核的症状以外の周辺的な症状を表し、例えば、各種の機能低下(聴力低下、筋力低下など)、特定の行動に関する問題(例えば、食事に関する問題(食欲不振、過食など)、外出に関する問題(徘徊など))といった症状である。
【0044】
中核症状用第1音源情報取得部311は、記憶部31から中核症状用の音源、特に、時間感覚喪失に対処するための周期性に関する気付きを提供する音に関する音源を読み出して取得する処理を行う。なお、周期性とは、例えば、一日の時間の流れ、曜日、四季等である。周期性に関する気付きを提供する音は、音の構成要素、例えば、周波数、音の間隔、音圧、明瞭性、メロディ(旋律)等が変化し、対象者に時間感覚を惹起する。なお、砂時計において砂が落ちる音等の特定のモチーフの音を用いてもよい。
【0045】
中核症状用第2音源情報取得部312は、記憶部31から中核症状用の音源、特に、短期記憶障害に対処するためのイベントに関する気付きを提供する音に関する音源を読み出して取得する処理を行う。イベントとは、例えば、薬を飲む、食事をする、シャワーに入る、トイレに入る、運動を行う、等である。これらのイベントに関する気付きを提供する音としては、例えば、薬を飲む時間である場合には粒同士の衝突音やカプセルの開閉音、食事をする時間である場合には調理音や食器音(金属同士の衝突音)、シャワーやトイレに入る場合には水の流れる音、運動を行う時間である場合には歩行音等である。
【0046】
このような構成によれば、イベントの内容に関連する音からイベントが連想されることから、機能音を通じて対象者にイベントに関する気付きを提供することができる。
【0047】
中核症状用第3音源情報取得部313は、記憶部31から中核症状用の音源、特に、認知機能低下に対処するための音に関する音源を読み出して取得する処理を行う。認知機能低下に対処するための音とは、例えば、周辺環境物(段差など)に関する気付きを提供する音(又は警告音)等である。
【0048】
周辺症状用第1音源情報取得部315は、記憶部31から周辺症状用の音源、特に、身体機能低下に対処するため機能低下への気付きを提供する音に関する音源を読み出して取得する処理を行う。周辺症状用第2音源情報取得部316は、記憶部31から周辺症状用の音源、特に、特定の行動(例えば、食事や外出)の問題に対処するため、特定の行動を促し又は抑制する音に関する音源を読み出して取得する処理を行う。
【0049】
このように、各音源に係る音は、特定の症状に対処可能なように構成され、例えば、音を構成する要素が経時的に変化する。この変化は、例えば、音の高さ(周波数)、大きさ(音圧)、音色(周波数成分)、音楽性(メロディ(旋律)、ハーモニー、リズム等)に関する変化を含む。
【0050】
このような構成によれば、見守り対象者は、提示される音の構成要素の変化を通じて時間又はイベントに関する気付き若しくは特定の行動の促進又は抑制を得ることができる。
【0051】
機能音情報出力部308は、合成し又は補正された機能音を取得して出力する処理を行う。この機能音は、出力提示装置60を介して見守り対象者へと提示される。
【0052】
視覚提示情報出力部309は、提示対象情報特定部306において特定された視覚提示情報を取得して出力する処理を行う。この視覚提示情報は、出力提示装置60を介して見守り対象者へと提示される。
【0053】
触覚提示情報出力部310は、提示対象情報特定部306において特定された触覚提示情報を取得して出力する処理を行う。この触覚提示情報は、出力提示装置60を介して見守り対象者へと提示される。
【0054】
なお、提示対象情報特定部306は、状態情報からだけではなく、モード取得部305において記憶部31から取得された所定のモードに応じて、機能音、視覚提示情報、及び触覚提示情報を特定することもできる。このモードは、情報処理装置20等を通じて、事前に見守り者等により設定されてもよい。
【0055】
このような構成によれば、モードを設定することにより、容易に機能音等を特定することができる。
【0056】
(1.2 見守り支援システムの動作)
次に、見守り支援システム100の動作について説明する。
【0057】
図12は、見守り支援システム100の動作に関するゼネラルフローチャートである。同図から明らかな通り、処理が開始すると、センサ情報取得部301は、センサ装置10にて検出された時系列センサ情報を取得して状態情報生成処理部302へと提供する処理を行う(S10)。
【0058】
状態情報生成処理部302は、取得されたセンサ情報に対して所定の情報処理を行って、見守り対象者の状態に関する情報を生成する処理を行う(S11)。所定の情報処理とは、例えば、周波数領域の信号へと変換したセンサ情報又はそのまま時間領域のセンサ情報に基づいてセンサ毎にそれぞれ特徴量を算出し、当該特徴量を正規化した後にクラスタリングし、クラスタリング処理結果に対して因子分析を行う処理である。この1又は複数の因子、又は因子の時間方向の変化から見守り対象者の状態を推定してもよい。
【0059】
このような構成によれば、クラスタリング処理を用いることで、センサノイズ等の影響を低減しつつ的確に対象者の状態を分類することができる。
【0060】
なお、クラスタリングモデルは、DBSCAN等の機械学習アルゴリズムにより生成してもよい。
【0061】
このような構成によれば、機械学習技術によりさらに的確に対象者の状態を分類することができる。
【0062】
因子は、本実施形態においては、見守り対象者の運動性に関する因子である運動因子と、見守り対象者の食事に関する因子である食事因子と、見守り対象者の清潔性に関する因子である清潔因子とを含む。なお、睡眠に関する因子である睡眠因子を含んでもよい。
【0063】
なお、情報処理はこのような手法に限定されない。センサ情報から見守り対象者の状態を評価することができる処理であればどのような処理であってもよい。
【0064】
このような構成によれば、見守り対象者の居住空間内の状況をセンシングすることにより、見守り対象者の状態に合った機能音を提示することができる。
【0065】
状態情報の生成処理の後、状態情報取得部303は、状態情報を提示対象情報特定部306へと提供する。
【0066】
状態情報を取得した提示対象情報特定部306は、ルック・アップ・テーブル(LUT)を用いて提示対象となる情報を特定する処理を行う(S12)。より詳細には、LUTには、状態情報とそれに対応する機能音、視覚提示情報、及び触覚刺激情報との関係性が格納されている。そのため、提示対象情報特定部306は、状態情報に基づいて、LUTから対応する機能音、視覚提示情報、及び触覚刺激情報を特定することができる。
【0067】
このような構成によれば、ルック・アップ・テーブル(LUT)により、高速に出力すべき機能音等を特定することができる。
【0068】
特定処理の後、機能音合成・補正処理部307は、特定された機能音を生成するのに必要な音源を各音源情報取得部(311~316)から取得する処理を行う(S13)。この取得処理の後、機能音合成・補正処理部307は、中核症状用音源及び/又は周辺症状用音源に係る音を合成し及び/又は補正する処理を行い、提示対象情報特定部306において特定された目的となる機能音を生成する(S15)。
【0069】
このような構成によれば、中核症状と周辺症状のそれぞれに対応する音を基礎として機能音を生成することができるので、効果的な機能音提示を行うことができる。
【0070】
機能音の生成処理の後、機能音情報出力部308は、機能音情報を出力する処理を行う(S16)。より詳細には、機能音情報を出力提示装置60のスピーカから出力するよう出力提示装置60へと送信する処理を行う。これにより、見守り対象者は、居住空間に設置されたスピーカから機能音の提示を受ける。
【0071】
このような構成によれば、時間感覚の喪失、短期記憶障害、又は認知機能の低下等の症状を呈する見守り対象者に対して、機能音を通じて、時間又はイベントに関する気付きを提供し、若しくは行動の促進又は抑制を行うことができ、対象者の生活の安全性の向上又は質の向上を図ることができる。
【0072】
提示対象情報特定処理の後、視覚提示情報出力部309は、特定された視覚提示情報を出力する処理を行う(S21)。より詳細には、視覚提示情報、例えば、光源の明るさや色、発光パターン等を、出力提示装置60の光源において提示するよう出力提示装置60へと送信する処理を行う。これにより、見守り対象者は、居住空間に設置された光源から機能的な視覚提示情報の提示を受ける。
【0073】
このような構成によれば、見守り対象者に対して視覚的な刺激を併せて提示することで(複合刺激)、より見守り対象者の生活の安全性を向上させ又は質の向上を図ることができる。
【0074】
さらに、提示対象情報特定処理の後、触覚提示情報出力部310は、特定された触覚提示情報を出力する処理を行う(S31)。より詳細には、触覚提示情報、例えば、振動ユニットにおける振動パターンを、出力提示装置60の振動ユニットにおいて提示するよう出力提示装置60へと送信する処理を行う。これにより、見守り対象者は、居住空間に設置された振動ユニットから機能的な触覚提示情報の提示を受ける。
【0075】
このような構成によれば、見守り対象者に対して触覚的な刺激(例えば、振動など)を併せて提示することで(複合刺激)、より見守り対象者の生活の安全性を向上させ又は質の向上を図ることができる。
【0076】
これらの処理が完了すると、処理は終了する。
【0077】
以上の構成によれば、見守り対象者に対して、所定の設定情報又は対象者の状態に応じて、各種の症状に対処するための音から機能音等を提示することができる。これにより、対象者の生活の安全性を向上させ又は質の向上を図ることができる。
【0078】
(2.変形例)
本発明は、様々に変形して実施することができる。
【0079】
上述の実施形態においては、高齢者等の見守り支援システムに対して本発明を適用したが、適用対象はそのようなシステムに限定されない。従って、例えば、機能音等の提示が必要となるあらゆるシステムに対して適用可能である。
【0080】
上述の実施形態においては、出力提示装置60の提示部では、聴覚的、視覚的又は触覚的提示を行うものとして説明したが、本発明はこのような構成に限定されない。従って、五感のうち他の感覚への提示を行ってもよい。
【0081】
上述の実施形態においては、機能音等の提示を制御する構成について説明を行ったが、機能音の提示の時期も併せて制御する構成を採用してもよい。
【0082】
この場合、提示対象情報特定部306のLUTは、機能音等と共にその提示の時期情報を格納し、提示対象情報特定部306は、機能音等と共に提示時期情報を特定する。サーバ装置30の機能ブロックである提示時期制御部は、この機能音等と共に提示時期情報を取得し、その提示時期情報に係る提示時期に基づいて、機能音等に係る情報を各出力部(308~310)に対して提供する。これにより、見守り対象者は、所定の時期に機能音等の提示を受けることとなる。例えば、時間感覚喪失の状態にある見守り対象者に対して、朝、昼・晩の所定の時刻に機能音、例えば、朝、昼、夜を示す機能音を提示することで、見守り対象者において時間感覚を惹起することができる。
【0083】
このような構成によれば、その提示の時期も制御することで、より効果的に見守り対象者に対して機能音等を提示することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。また、上記の実施形態は、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、音の提示装置等を製造する産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0086】
10 センサ装置
20 情報処理装置
30 サーバ装置
60 出力提示装置
100 見守り支援システム
【要約】
症状毎に前記症状に対処するための要素機能音を記憶する、記憶部と、所定の設定情報又は対象者から得られた情報に基づいて、出力すべき機能音を特定する、出力特定部と、前記要素機能音を合成し及び/又は補正することにより、特定された前記機能音を生成する、機能音生成部と、前記機能音を前記対象者へと提示する提示情報を生成する、提示情報生成部と、を備える、機能音提示システムが提供される。
【選択図】図11
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12