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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240208BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240208BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240208BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L29/78 658B
H01L29/78 658G
H01L29/78 652C
H01L29/78 652D
H01L29/78 652E
H01L29/78 652S
H01L29/78 652T
H01L29/78 655A
H01L29/78 655B
H01L29/78 655G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018528801
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2016076085
(87)【国際公開番号】W WO2017092940
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-08-14
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】15197558.8
(32)【優先日】2015-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バルトルフ,ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】ラヒモ,ムナフ
(72)【発明者】
【氏名】クノール,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ミハイラ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】ミナミサワ,レナート
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】市川 武宜
【審判官】棚田 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-242925(JP,A)
【文献】特開2015-191923(JP,A)
【文献】特表2013-510440(JP,A)
【文献】特開2008-147576(JP,A)
【文献】特開2010-267762(JP,A)
【文献】特開2005-310886(JP,A)
【文献】特開平2-39480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/12
H01L 29/739
H01L 29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
(a)前記半導体装置内にドリフト層(2)を形成する第1の導電型の低濃度ドープ層を有するワイドバンドギャップ基板製品(10)を提供する工程であって、前記基板製品(10)は、第1の面(12)および前記第1の面(12)に対向する第2の面(14)を有し、前記低濃度ドープ層は、前記第1の面(12)上に配置される工程、
(b)次いで、前記第1の面(12)上の前記ワイドバンドギャップ基板製品内に、前記ドリフト層(2)より高いドーピング濃度を有する前記第1の導電型の2つのソース領域(3,3’)をソース領域深さ(30)まで形成し、チャネル層深さ(40)を有し、前記2つのソース領域(3,3’)を前記第1の面(12)に平行な横方向に取り囲み、それによって前記2つのソース領域(3,3’)を前記ドリフト層(2)から前記横方向に分離する、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の2つのチャネル層(4,4’)を形成し、および少なくとも前記チャネル層深さ(40)と同じ深さの井戸層深さ(50)を有し、少なくとも1つの前記チャネル層(4,4’)よりも高いドーピング濃度を有し、前記第1の面(12)に対向する少なくとも1つの井戸層の面上の前記ドリフト層(2)から前記2つのソース領域(3,3’)を分離する、前記第2の導電型の少なくとも1つの井戸層(5,5’)を形成し、
ここで、前記2つのソース領域(3,3’)を形成するための開口部を有する前記第1の面(12)上に第1のマスク(34)を適用し、前記第1のマスク(34)は、第1のマスク層(35)および前記第1のマスク層(35)上の第2のマスク層(36)を含み、ここで、前記第1のマスク層(35)は、前記第2のマスク層(36)よりも高いエッチング選択性を有し、
次いで、前記2つのソース領域(3,3’)を前記ソース領域深さ(30)まで形成するための前記第1の導電型の第2のドーパント(31)を適用し、
次いで、前記2つのソース領域(3,3’)間に配置された前記第1のマスク(34)の部分を除去し、それによって第2のマスク(54)を形成し、
前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)を前記井戸層深さ(50)に形成するための前記第2の導電型の第3のドーパント(51)を適用し、
前記第1の面(12)にエッチング工程を行って、エッチングによって、前記第1のマスク層(35)は、前記開口部で前記第2のマスク層(36)よりもさらに除去され、
前記第2のマスク層(36)を除去し、残留する前記第1のマスク層(35’)は第3のマスク(46)を形成し、
次いで、2つのチャネル層(4,4’)を形成するための前記第2の導電型の第1のドーパント(41)を前記チャネル層深さ(40)まで適用する工程、
(c)工程(b)後に、少なくとも前記2つのソース領域(3,3’)および前記2つのチャネル層(4,4’)を覆う第4のマスクを適用し、
次いで、前記井戸層深さ(50)よりも大きい深さのプラグ深さ(60)を有し、前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)よりも高いドーピング濃度を有するプラグ(6)を形成するための前記第2の導電型の第4のドーパントを適用する工程、
(d)工程(c)後に、前記第1の面(12)上に2つのゲート電極(7)を形成し、2つのゲート電極(7)のそれぞれが絶縁層によって任意のドープ層から分離される工程、
(e)工程(c)後に、前記第1の面(12)上にオーミック接触として第1の主電極(9)を形成し、前記2つのソース領域(3,3’)および前記プラグ(6)に接触する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置の製造方法であって、
工程(c)において、前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)が前記プラグ(6)を前記横方向に囲むように前記第4のマスクが前記2つのソース領域(3,3’)に隣接する前記井戸層(5,5’)の一部を突出させるように、および前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)が前記プラグ(6)を前記2つのソース領域(3,3’)から分離するように、前記第4のマスクを適用することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1乃至2のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
工程(c)において、前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)のドーピング濃度の少なくとも10倍であるドーピング濃度を有する前記プラグ(6)を形成する、または前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)のドーピング濃度の10倍から100倍のドーピング濃度を有する前記プラグ(6)を形成することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
工程(b)において、前記2つのチャネル層(4,4’)のドーピング濃度の少なくとも10倍であるドーピング濃度を有する前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)を形成する、または工程(b)において、前記2つのチャネル層(4,4’)のドーピング濃度の10倍から100倍のドーピング濃度を有する前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)を形成することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
工程(b)において、1×1017~1×1021cm-3または1×1018~1×1020cm-3のドーピング濃度を有する前記少なくとも1つの井戸層(5,5’)を形成することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
工程(b)において、1×1016~1×1018cm-3のドーピング濃度を有する前記2つのチャネル層(4,4’)を形成することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法であって、
工程(c)において、2×1017~2×1021cm-3または1×1019~2×1021cm-3のドーピング濃度を有する前記プラグ(6)を形成することを特徴とする方法。
【請求項8】
第1の主面(20)と前記第1の主面(20)に対向する装置の第2の主面(22)との間に第1の導電型の低濃度ドープドリフト層(2)を含むワイドバンドギャップ半導体装置であって、
さらに、前記第1の主面(20)上に、ソース領域深さ(30)を有する前記第1の導電型の2つのソース領域(3,3’)であり、前記2つのソース領域(3,3’)が前記ドリフト層(2)よりも高いドーピング濃度を有する、2つのソース領域(3,3’)と、
前記ソース領域深さ(30)と少なくとも同じ深さのチャネル層深さ(40)を有する、前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の2つのチャネル層(4,4’)であり、各ソース領域(3,3’)は、前記第1の主面(20)に平行な方向にチャネル層(4,4’)によって前記ドリフト層(2)から分離された、第2の導電型の2つのチャネル層(4,4’)と、
少なくとも前記チャネル層深さ(40)と同じ深さの井戸層深さ(50)を有する前記第2の導電型の2つの井戸層(5,5’)であり、前記井戸層(5,5’)は、前記チャネル層(4,4’)よりも高いドーピング濃度を有し、前記井戸層(5,5’)は、前記第1の主面(20)と対向する前記井戸層の面上に前記ドリフト層(2)から前記2つのソース領域(3,3’)を分離する、第2の導電型の2つの井戸層(5,5’)と、
前記井戸層深さ(50)よりも大きい深さのプラグ深さ(60)を有し、前記井戸層(5,5’)よりも高いドーピング濃度を有する前記第2の導電型のプラグ(6)であり、前記プラグ(6)は、前記2つのソース領域(3,3’)間に配置され、前記2つの井戸層(5,5’)は、前記プラグ(6)を横方向に囲み、前記2つの井戸層(5,5’)は前記2つのソース領域(3,3’)から前記プラグ(6)を分離する、プラグ(6)と、
前記第1の主面(20)上にそれぞれ配置された2つのゲート電極(7)であって、各ゲート電極(7)は、第1の絶縁層(72)によって任意のドープ層から分離されたゲート層(70)を含む、2つのゲート電極(7)と、
前記第1の主面(20)上にオーミック接触としての、少なくとも前記2つのソース領域(3,3’)および前記プラグ(6)に接触する第1の主電極(9)とを含み、
前記井戸層(5,5’)および前記チャネル層(4,4’)は、前記ソース領域(3,3’)の横方向の少なくともチャネル形成が可能な領域において前記第1の主面(20)に低ドーピング濃度を有する共通層(4,5および4’,5’)として形成され、前記共通層(4,5および4’,5’)のドーピング濃度は、次いで前記ソース領域(3,3’)の下においてより高いドーピング濃度まで上昇することを特徴とするワイドバンドギャップ半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載のワイドバンドギャップ半導体装置であって、
前記2つのソース領域(3,3’)、前記チャネル層(4,4’)、前記井戸層(5,5’)および前記プラグ(6)は、前記第1の主面(20)上に1つの平面を形成することを特徴とするワイドバンドギャップ半導体装置。
【請求項10】
請求項8または9に記載のワイドバンドギャップ半導体装置であって、
前記プラグ(6)のドーピング濃度は、前記井戸層(5,5’)のドーピング濃度の少なくとも10倍である、または前記プラグ(6)のドーピング濃度は、前記井戸層(5,5’)のドーピング濃度の10倍から100倍であることを特徴とするワイドバンドギャップ半導体装置。
【請求項11】
請求項8乃至10のいずれか1項に記載のワイドバンドギャップ半導体装置であって、
前記井戸層(5,5’)のドーピング濃度は、前記チャネル層(4,4’)のドーピング濃度の少なくとも10倍である、または前記井戸層(5,5’)のドーピング濃度は、前記チャネル層(4,4’)のドーピング濃度の10倍から100倍であることを特徴とするワイドバンドギャップ半導体装置。
【請求項12】
請求項8乃至11のいずれか1項に記載のワイドバンドギャップ半導体装置であって、
前記プラグ(6)は、2×1017~2×1021cm-3または1×1019~2×1021cm-3のドーピング濃度を有する、
前記井戸層(5,5’)は、1×1017~1×1021cm-3または1×1018~1×1020cm-3のドーピング濃度を有する、および
前記チャネル層(4,4’)は、1×1016~1×1018cm-3のドーピング濃度を有する、の少なくとも1つを特徴とするワイドバンドギャップ半導体装置。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか1項に記載のワイドバンドギャップ半導体装置であって、
前記装置は、絶縁ゲートバイポーラトランジスタまたは金属酸化物半導体電界効果トランジスタであることを特徴とするワイドバンドギャップ半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
技術分野
本発明は、パワーエレクトロニクスの分野に関し、より詳細には、半導体装置を製造する方法およびそのような半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
図14では、従来技術のMOSFET100が、米国特許第7074643(B2)号明細書から知られているように示されている。従来技術のMOSFET100は、n+シリコンカーバイド(SiC)基板80からなり、第1の主面20と第2の主面22との間にn-ドープドリフト層2を含む。第1の主面20上には、2つのn++ドープソース領域3,3’が配置されており、2つのn++ドープソース領域のそれぞれは、pドープチャネル層4,4’によって横方向(すなわち、第1の主面20に平行な方向)にドリフト層2から分離されており、p+井戸層5,5’によって第1の主面20と対向する面上に形成されており、チャネル層4,4’よりも高濃度でドープされている。チャネル層4,4’および井戸層5,5’で囲まれたこのような2つのソース領域3,3’間には、p++ドープコンタクト層65が配置されており、ソース領域に横方向に延在する。ドーピング濃度が高いため、p++ドープコンタクト層は、第1の主電極9(ソース電極)に良好なオーミック接触をもたらす。コンタクト層65は、井戸層5,5’ほど深さが深くないコンタクト層深さ67まで空間的に(即ち、第1の主面20に対して垂直な深さ方向に)延在するが、井戸層5,5’をソース電極9に接続するために井戸層5,5’に電気的および機械的に接触する浅い層である。コンタクト層65は、ソース領域3,3’およびチャネル層4,4’と重なり、その結果、コンタクト層65が第1の主電極9と接する唯一のpドープ層となる。
【0003】
特開第2010-267762(A)号明細書は、第1の主面上に、ソース領域を囲む、nソース層およびチャネル層下の高濃度pドーププラグおよび低濃度ドープ井戸層を含むMOSFETを記載している。最初に井戸層が形成され、続いて新しい、広いマスクでチャンネル層が形成される。その後、pプラグは別のマスクで形成され、次いでnソース領域は第4のマスクで形成される。4つの異なるマスクが使用されるので、この方法はマスクの位置合わせ不良の影響を受けやすい。さらに、層を形成するために角度のある注入が使用され、注入がより困難になる。nソース層およびpプラグは、同等のドーピング濃度を有するので、補償された電荷の2つの層間の遷移エリアに危険があり、すなわち、電荷が支配的にならず、望ましくない中性領域が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
本発明の目的は、改善された電気的特性を有するパワー半導体デバイスを製造する方法を提供することであり、
(a)半導体装置内にドリフト層を形成する第1の導電型の低濃度ドープ層を有するワイドバンドギャップ基板製品を提供する工程であって、基板製品は、第1の面および第1の面に対向する第2の面を有し、低濃度ドープ層は、第1の面上に配置される工程、
)次いで、第1の面上に、ドリフト層より高いドーピング濃度を有する第1の導電型の2つのソース領域をソース領域深さまで形成し、チャネル層深さを有し、2つのソース領域を第1の面に平行な横方向に取り囲み、それによって2つのソース領域をドリフト層から横方向に分離する、第1の導電型とは異なる第2の導電型の少なくとも1つのチャネル層を形成し、少なくともチャネル層深さと同じ深さの井戸層深さを有し、少なくとも1つのチャネル層よりも高いドーピング濃度を有する少なくとも1つの第2の導電型の井戸層を形成し、ここで、少なくとも1つの井戸層は、第1の面に対向する少なくとも1つの井戸層の面上のドリフト層から2つのソース領域を分離し、ここで、開口部を有する第1の面上に第1のマスクを適用し、第1のマスクは、第1のマスク層および第1のマスク層上に第2のマスク層を含み、ここで、第1のマスク層は、第2のマスク層よりも高いエッチング選択性を有し、
次いで、2つのソース領域をソース領域深さまで形成するための第1の導電型の第2のドーパントを適用し、
次いで、2つのソース領域間に配置された第1のマスクの部分を除去し、それによって第2のマスクを形成し、
次いで、少なくとも1つの井戸層を井戸層深さまで形成するための第2の導電型の第3のドーパントを適用し、
第1の面にエッチング工程を行って、エッチングによって、第1のマスク層は開口部で第2のマスク層よりもさらに除去され、
第2のマスク層を除去し、ここで、残留する第1のマスク層は第3のマスクを形成し、
次いで、2つのチャネル層をチャネル層深さまで形成するための第2の導電型の第1のドーパントを適用する工程
c)工程(b)後に、井戸層深さと少なくとも同じ深さのプラグ深さを有し、少なくとも1つの井戸層よりも高いドーピング濃度を有する第2の導電型のプラグを形成し、ここで、プラグは2つのソース領域間に配置される工程、
(d)工程(c)後に、第1の面上に2つのゲート電極を形成し、2つのゲート電極のそれぞれが絶縁層によって任意のドープ層から分離される工程、
(e)工程(c)後に、第1の面上にオーミック接触として第1の主電極を形成し、2つのソース領域およびプラグに接触する工程を含む。
【0005】
井戸層およびチャネル層を形成するためのマスクは、nソース領域を形成するためのマスクに自己整合され、製造方法を信頼性が高くnソース領域を完全に覆うプラグを形成するためのマスクにより高品質にし、nソース領域およびプラグの電荷の過剰補償はなく、これは、装置に中性領域がないことを意味し、装置のより良好な動作を可能にする。チャネル層および井戸層は、ソース領域よりもはるかに低いドーピング濃度を有し、その結果、これらの層の過剰補償は、中性領域をもたらさないが、容易な製造方法を提供することを可能にする。
【0006】
MOS(金属酸化物半導体)セルは、前述の層/領域によって形成される。深く高度にドープされたプラグは、井戸層への接触を向上する。その深さは、少なくとも井戸層深さと同じであり、MOSセルのチャネル層を電界のピークから保護し、MOSセルの中心の下、すなわちプラグの位置の下で最も高い。これは、望ましくない寄生動作(MOSFETの場合には寄生トランジスタおよびIGBTの場合には寄生サイリスタ)を回避し、短チャネル効果(図19参照)を減少させる。この図19では、300nm幅のチャネル(ソース領域とドリフト層との間のチャネル層の延長部である)に対して、漏れ電流がアバランシェ降伏電圧よりも小さい順方向ブロッキング電圧に対して急激に上昇し、装置の早期の故障を引き起こすことが示されている。同じチャネル幅を有する本発明のMOSFETについて、ブレークダウンをより高い順方向ブロッキング電圧にシフトさせることができる。
【0007】
加えて、ゲート絶縁体における電界の強さは、プラグによって低減され、その影響はより深いプラグに対して顕著である。図15図18は、装置のMOSセルの異なる面を通る電界を示す。図15図18において、プラグ深さはp井戸層の深さに対して付与されている。「従来技術」は、プラグがp-井戸層ほど深くないことを意味する。「D1」はプラグおよびp-井戸層が同じ深さを有することを意味する。「D2」はプラグ深さが井戸層深さの1.5倍であることを意味し、「D3」はプラグ深さが井戸層深さの2倍であることを意味する。
【0008】
図15は、2つのMOSセルの間の第1の主面から第2の主面への電界を示す(図2の線A-Aに沿った切断部)。図16は、ゲート電極7の第1の絶縁層72とドリフト層2(図15の点線領域)との界面における図15からの詳細図である。この図から明らかなように、広いバンドギャップ材料およびゲート電極の絶縁層(例えばゲート酸化物)において電界が低減される。図17は、第1の主面に平行な面(図2の線B-Bに沿った切断部)における電界を示し、チャネル層の非空乏領域47およびチャネル層の空乏領域48における電界を示す。図18は、図2の線C-Cに沿った電界を示し、この面は線A-Aに平行でチャネル層を通る。全ての平面について、電場の大幅な減少が明らかであり、この効果はさらに大きく、これは、井戸層深さと比較してより小さいプラグ深さを有する従来技術の装置におけるプラグのためである。
【0009】
プラグのドーピング濃度が高いため、第1の主電極に対して良好なオーミック接触が確立される。
【0010】
本発明の主題のさらに好ましい実施形態は、従属請求項に開示されている。
図面の簡単な説明
本発明の主題は、添付図面を参照して、以下の本文においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のIGBTを示す。
図2】本発明のMOSFETを示す。
図3】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図4】別の製造工程(a)を示す。
図5】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図6】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図7】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図8】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図9】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図10】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図11】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図12】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図13】ワイドバンドギャップ半導体装置(IGBT/MOSFET)の本発明の製造方法の工程を示す。
図14】従来技術の炭化ケイ素MOSFETを示す
図152に例示されたMOSセル構造を通る異なる切断部に沿った電界を示す。
図16図2に例示されたMOSセル構造を通る異なる切断部に沿った電界を示す。
図17図2に例示されたMOSセル構造を通る異なる切断部に沿った電界を示す。
図18図2に例示されたMOSセル構造を通る異なる切断部に沿った電界を示す。
図19】早期破壊を引き起こす短チャネル効果の減少を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面に使用される参照記号およびそれらの意味は、参照記号のリストに要約されている。一般的に、同様または同様の機能を有する部品には同じ参照記号が付されている。記載された実施形態は例として意味され、本発明を限定するものではない。
【0013】
発明を実施するための形態
図1は、本発明の絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)1を示す。IGBT1は、ワイドバンドギャップ装置、すなわち、第1の主面20および第1の主面20と対向する装置の第2の主面22との間に低濃度(n-)ドープドリフト層2を含む炭化ケイ素装置である。ワイドバンドギャップ材料は、他のワイドバンドギャップ材料を除外しない炭化ケイ素、窒化ガリウムまたはダイヤモンドのような少なくとも2eVのバンドギャップを有する材料とする。電圧クラスに応じて、ドリフト層2のドーピング濃度および厚さが選択される。例示的には、ドリフト層2は、1×1012~1×1017cm-3のドーピング濃度および1~500μmの厚さを有する。厚さは、深さ方向、すなわち、第1の主面20に垂直な方向に測定される。
【0014】
本発明のIGBTについて、p+ドープコレクタ層8が第2の主面22上に配置され、例示的には1×1018~1×1020cm-3のドーピング濃度を有する。コレクタ層8は、第2の主電極90に接触しており、IGBT用のコレクタ電極である。ドリフト層2とコレクタ層8との間に、ドリフト層2(図1に破線で示す)よりも高いドーピング濃度を有するnドープバッファ層25を配置してもよい。バッファ層は、1×1017~1×1019cm-3の間の例示的なドーピング濃度および3μmまでの厚さを有してもよい。
【0015】
図2に示す本発明のMOSFETについて、第2の主面22上に、n+ドープドレイン層80が配置され、これは、例示的には1×1018~1×1020cm-3のドーピング濃度を有する。ドレイン層80は、第2の主電極90に接触し、MOSFET用のドレイン電極である。
【0016】
以下では、IGBTの例について第1の主面20の設計をさらに説明するが(図1)、MOSFETにも適用可能である(図2)。
【0017】
第1の主面20上には、ソース領域深さ30を有する2つのn++ドープソース領域3,3’が配置されており、ドリフト層2よりも高いドーピング濃度を有する。すべての深さは、第1の主面20から測定されるものとし、すなわち、深さは、層/領域が延在する深さ方向の最大距離とする。例示的には、ソース領域深さ30は0.5μmまでの深さである。ドーピング濃度は、1×1018~1×1021cm-3または1×1019~1×1021cm-3の間で変動し得る。例示的には、1つのMOSセルに属するソース領域3,3’は互いに7μmまでの横方向の距離を有する。
【0018】
ソース領域3,3’の両外側面(互いに対向していないn++ソース領域の外側面、すなわち、それらの間に共通の開口を形成せず、ゲート電極7の下に位置する)上に、pドープチャネル層4,4’が配置されている。このように、pチャネル層4,4’は、外側側面上、すなわち、第1の主面20に平行でかつゲート電極7の下方のnソース領域3,3’の面上のnソース領域3,3’を囲む。例示的には、チャネル層4,4’は、ソース領域深さ30よりも深いチャネル層深さ40を有する。各ソース領域3,3’は、第1の主面20に平行な方向にチャネル層4,4’によって横方向にドリフト層2から分離されている。チャネル層4,4’は、1×1016~1×1018cm-3のドーピング濃度を有することができる。
【0019】
チャネル層4,4’よりも高いドーピング濃度を有するP+ドープ井戸層5,5’は、第1の主面20と対向する井戸層の面上のドリフト層2から2つのソース領域3,3’を分離する。
【0020】
例示的には、井戸層5,5’のドーピング濃度は、チャネル層4,4’のドーピング濃度の少なくとも10倍であってもよく、または井戸層5,5’のドーピング濃度は、チャネル層4,4’のドーピング濃度の10倍から100倍であってもよい。井戸層5,5’は、1×1017~1×1021cm-3または1×1018~1×1020cm-3のドーピング濃度を有することができる。
【0021】
井戸層5,5’は、井戸層深さ50を有し、これは少なくともチャネル層深さ40と同じ深さである。このように、井戸層5,5’は、チャネル層4,4’と同じ深さまで延在していてもよく、またはチャネル層4,4’よりも深くてもよい。井戸層5,5’および/またはチャネル層4,4’の深さは、例示的には3μmまでであってもよい。
【0022】
チャネル層4,4’では、ソース領域3,3’からドリフト層2までMOSチャネルが形成されていてもよい。チャネルは、基板製品10内で、表面近傍のソース領域3,3’からドリフト層2まで延在している。このように、チャネル層4,4’のドーピング濃度は、井戸層5,5’のドーピング濃度よりも低くなければならず、第1の主面20から最大でソース領域3,3’の深さまで、すなわち、チャネルが形成可能な深さまでのドーピング濃度である。
【0023】
チャネル層4,4’および井戸層5,5’は、共通層が第1の主面およびその下の領域、すなわち第1の主面に近く、ソース領域3,3’(チャネルが形成可能な領域)の側方で低ドーピングを有するように逆行性プロファイルを有する共通層(組み合わせ層4,5および組合せ層4’,5’)として設計されてもよく、ドーピング濃度はソース領域3,3’の下でより高い値に上昇する。チャネルを形成するためには、共通層がソース領域に対して横方向に高いドーピング濃度を有するが、ソース領域3,3’よりも深い(逆行性プロファイルを有する共通層に起因して)ことは重要ではなく、このような深い深さでは、チャネルが形成されないからである。ソース領域の横であるが、ソース領域3,3’よりも深いところでの共通層のより高いドーピング濃度は、チャネル層からの高電界(ブロッキング状態でのデバイス内部)の遮蔽を向上する。
【0024】
2つのソース領域3,3’の間には、井戸層5,5’よりも高いドーピング濃度を有するp++ドーププラグ6が配置されている。例示的な実施形態では、プラグ6のドーピング濃度は、井戸層5,5’のドーピング濃度の少なくとも10倍である。別の例示的な実施形態では、プラグ6のドーピング濃度は、井戸層5,5’のドーピング濃度の10倍~100倍である。プラグ6は、2×1017~2×1021cm-3または1×1019~2×1021cm-3のドーピング濃度を有することができる。
【0025】
プラグ6は、少なくとも井戸層深さ50と同じ深さであり、例示的には井戸層深さ50よりも深いプラグ深さ60を有する。プラグ6は、n個のソース領域3,3’と重ならない、すなわち、n個のソース領域3,3’のドーピング濃度は、第1の主面20に平行な面において一定であり、pプラグのドーピング濃度は第1の主面20に平行な面内で一定である。nソース領域3,3’およびプラグ6のドーピング濃度は、2つの層3,6または3’,6の間の界面では補償されない。
【0026】
プラグ6と2つのソース領域3,3’との間で、井戸層5,5’は、第1の主面20まで延在し、第1の主電極9と接触し得る。このように、井戸層5,5’は、ソース領域3,3’からプラグ6を分離することができる。このような配置により、ソース領域3,3’がプラグ6と重ならないことが保証される。ワイドバンドギャップ半導体材料の真性ドーピングレベルは、低バンドギャップ半導体材料(例えば、シリコン)と比較して無視でき、プラグ6およびソース領域3,3’のドーピング濃度がnおよびpドープ層の重なりによって、同じオーダーの大きさ内であるので、ドーパントが電子的に活性でない領域を形成することができ、すなわち、そのような領域は絶縁性である。このような効果は、本発明の構造によって回避される。
【0027】
ソース領域3,3’は、プラグ6、井戸層5,5’およびチャネル層4,4’によってドリフト層2から分離されている。
【0028】
プラグ6、井戸層5,5’(それらが第1の主面20まで延在する場合)、ソース領域3,3’、チャネル層4,4’およびドリフト層2は、第1の主面20上に平面を形成する。このように、これらの層は、平坦な第1の主面20上に共通の表面を形成する。
【0029】
第1の主面20上には、ゲート電極7が配置され、ゲート電極7のそれぞれは、第1の絶縁層72、第2の絶縁層74、および第1の絶縁層72によって任意のドープ層から分離されたゲート層70を含む。ソース領域3,3’、チャネル層4,4’、およびドリフト層2は、ゲート電極7、すなわち第1の絶縁層72まで延在している。ゲート電極7は、平面ゲート電極として形成されており(図1および図2に示すように)、ここで、ゲート電極7は、MOS界面のしきい値電圧よりも大きいゲート電圧の印加によりチャネル層pを反転させることによって、ソース領域3,3’とドリフト層2との間のゲート電極7の下のチャネル層4,4’に、MOSチャネルが生成され得るように、ソース領域3,3’、チャネル層4,4’、およびドリフト層2上に配置されている。
【0030】
第1の絶縁層72が酸化物層であり、ゲート層70が金属である場合、反転チャネルはMOSチャネル(金属酸化物/絶縁体半導体)と呼ばれ、一方、そうでなければ(絶縁層72,74は、任意の絶縁材料、例えば、high-k材料などの誘電体、または他の絶縁体を除外しないPSGまたはBPSGなどのシリケートガラスからなる場合)、チャネルは、MISチャネル(金属-絶縁体-半導体)と呼ぶこともできる。ゲート層70の材料としては、金属またはドープ多結晶シリコンなどの任意の適切な導電性材料を使用することができる。MOS装置/MOSFETという用語は、このようなMIS装置/MISFETをカバーし、MOS/MIS制御されるIGBTにも適用される。
【0031】
2つのソース領域3,3’およびプラグ6に接触する第1の主面20上に第1の主電極9がオーミック接触として形成され、井戸層5,5’が第1の主面20上を表面まで延在する場合、井戸層5,5’も第1の主電極9に接触している。図1に示すIGBT1について、第1の主電極9がエミッタ電極として機能し、図2に示すMOSFETについて、第1の主電極9がソース電極として機能する。第1の主電極9は、まず、2つのゲート電極7間の開口部に金属層を形成してプラグ6、井戸層5,5’およびソース領域3,3’とのオーミック接触を形成することによって形成することができる。次いで、オーミック接触を形成する金属層上に、第1の金属層に接触する別の金属層が生成される。さらに、第2の金属層は、ゲート電極7上のエリアも覆い、すなわち、それは第2の絶縁層74を覆い、それによってゲート層70から絶縁されている。
【0032】
予め開示された構造は、MOSセルを形成して、IGBTおよび/またはMOSFETを制御する。MOSセルは、1つの第1の主電極コンタクト開口部と第2の電極90との間に形成され、すなわち、MOSは、プラグ6、プラグ6の両面上の井戸層4,4’、ソース領域3,3’、チャネル層4,4’、ドリフト層2、およびコレクタ層8またはドレイン層80を含む。
【0033】
セル、すなわち、セル内の領域は、ストライプ、六角形、三角形または正方形のデザインなどの規則的なパターンの形態に設計することができる。パワー半導体装置では、このようなMOSセルのうちの1つ以上が配置されていてもよい。このようなMOSセルは、相互に接続されていてもよい。
【0034】
これらの装置は、図1および図2に示すように垂直装置として設計することができるが、それらをソースおよびドレイン(MOSFET)またはエミッタおよびコレクタ(IGBT)が装置の同じ面上に配置される側方装置として設計することも可能である。本発明のIGBTについては、本発明の深いプラグ6は、第2の主面22上に配置されたp+コレクタ領域およびn+短領域を交互に有する逆導通IGBT、例えば、交互のより小さいp+およびn+の短領域によって取り囲まれた第2の主面22上の装置の中央部に大きなパイロットp+コレクタ領域をさらに有する例示的にはBiモード絶縁ゲートトランジスタ(BIGT)などのすべての種々のIGBTに適用可能である。パイロット領域と短領域が接続され得る。このようなBIGTは、米国特許第8212283(B2)号明細書に開示されており、この文献は、BIGTの設計のために参考として援用される。
【0035】
本発明のIGBTは、n-ドープドリフト層2とp+ドープコレクタ層8との間に配置されたバッファ層25を有する非パンチスルーIGBTまたはパンチスルー/ソフトパンチスルーIGBTとして設計されてもよい。ノンパンチスルー設計の場合、E電界はアバランシェ降伏まで三角形である。他の場合には、ドリフト層2とバッファ層25との間の界面にE-電界が通り、それはバッファ層の高いドーピング濃度により停止する。
【0036】
スーパージャンクション設計は、あらゆる種類の発明装置で可能である。スーパージャンクションについての例示的な技術的アプローチは、トレンチエッチング、続いてエピタキシャルリフィルまたは逐次エピタキシャル成長、続いて多重注入に基づくが、他の技術を排除するものではない。
【0037】
本発明のワイドバンドギャップ半導体装置を製造するために、以下の製造工程が行われる。工程(a)において、半導体装置内にドリフト層2を形成する第1の導電型の低濃度ドープ層を有するワイドバンドギャップ基板製品10が提供される。基板製品10は、第1の面12と、第1の面12に対向する第2の面14とを有し、ここで、低濃度ドープ層は、第1の面12上に配置される。第2の面14において、基板製品10は、垂直IGBTの場合、完成したIGBT装置内のコレクタ層8を形成するまたはその一部を形成するp+ドープ基板を含む。層8は、製造プロセスの終わりに薄くすることができる。
【0038】
工程(b)において、第1の面12上に、ドリフト層2よりも高いドーピング濃度を有する2つのnドープソース領域3,3’がソース領域深さ30まで形成される。チャネル層深さ40を有する少なくとも1つのpドープチャネル層4,4’が形成される。各ソース領域3,3’は、第1の面12に垂直な方向にチャネル層4,4’によってドリフト層2から分離されている。チャネル層深さ40は、ソース領域深さ30よりも大きい。井戸層深さ50を有する少なくとも1つのp+ドープ井戸層5,5’が形成されており、p+ドープ井戸層5,5’は少なくともチャネル層深さ40と同じ深さで、少なくとも1つのチャネル層4,4’よりも高いドーピング濃度を有する。井戸層5,5’は、2つのソース領域3とドリフト層2とを第1の面12と対向する井戸層の面上で分離している。
【0039】
工程(b)後の工程(c)において、井戸層深さ50よりも深いプラグ深さ60を有するp++ドーププラグ6が形成されている。プラグは、2つのソース領域3,3’間に配置される。プラグ6のドーピング濃度は、井戸層5のドーピング濃度よりも大きい。プラグのドーピング濃度は、井戸層5のドーピング濃度の少なくとも10倍であってもよい。別の例示的な実施形態では、プラグ6は、井戸層5のドーピング濃度の10倍から100倍であるドーピング濃度で形成されてもよい。プラグ6は、2×1017~2×1021cm-3または1×1019~2×1021cm-3のドーピング濃度で形成することができる。プラグは、最大5μmまたは最大3μmの幅を有することができる。
【0040】
工程(c)後の工程(d)において、ゲート電極7が第1の面12上に形成される。各ゲート電極7は、薄い第1の絶縁層72の形態の絶縁層によって任意のドープ層から分離された導電性ゲート層70を含む。例示的には、第1の絶縁層72よりも厚い第2の絶縁層74が、ゲート層70上に形成されている。
【0041】
工程(c)後の工程(e)において、第1の主電極9が、第1の面12上にオーミック接触として形成されており、少なくとも2つのソース領域3,3’およびプラグ6に接触する。
【0042】
図3および図6図13には、ワイドバンドギャップノンパンチスルーパワーIGBTの製造方法が示されている。図3には、工程(a)の基板製品が示されている。基板製品10は、装置内にドリフト層2を形成する低濃度ドープ層を含む。第2の面14上において、基板製品10は、コレクタ層8を形成するより高いp+ドープ層を含む。例示的には、基板製品10は、最終IGBT内にコレクタ層8を形成するp+ドープ基板を提供することによって形成され、その上にドリフト層2として低(n-)ドープ層が例示的にはエピタキシャル成長によって形成される。製造プロセスの終わりにp+ドープ層を薄くしてコレクタ層8を形成することができる。
【0043】
あるいは、図4に示すように、ドリフト層2とコレクタ層8との間にバッファ層25を配置したパンチスルーIGBTについて、p+ドープ基板を設けてもよい。p+ドープ基板上に、まずnドープバッファ層25、次いでn-ドープドリフト層2が、例示的にはエピタキシャル成長によって形成される。さらに、製造プロセスの終わりにp+ドープ層を薄くしてコレクタ層8を形成することができる。
【0044】
このようなエピタキシャル成長によって、例示的には、一定のドーピング濃度の層が形成されるが、もちろんドーピング濃度の変化も可能であり、例えば、第1の面12から第2の面14への方向のドーピング濃度が減少する。上記ドーピング濃度の値は、一定のドーピング濃度(製造方法の不完全性に起因するドーピング濃度の変動を排除しない)の場合の平均ドーピング濃度または変動するドーピング濃度の場合の最大ドーピング濃度として理解されるものとする。異なるエネルギーとドーズ量で複数のカスケードによって定義され、いくつかのガウスプロファイル、各カスケードについての1つのガウスファイルの重ね合わせによって任意の種類の傾斜プロファイルを形成し得る注入プロファイルについても同様である。
【0045】
本発明のMOSFETを形成するために、最終MOSFET装置内にドレイン層80を形成するn+ドープ基板またはその一部を設けることによって形成される基板製品10(図5)を提供することができる。n+ドープ基板上に、ドリフト層2を、例えばエピタキシャル成長によって形成することができる。製造プロセスの終わりに+ドープ層を薄くしてドレイン層80を形成することができる。
【0046】
工程(a)において低濃度でドープされた基板製品10(図3,4または5)を提供した後、第1のマスク層35が第1の面12に適用され、その上に第2のマスク層36が適用される。第1のマスク層35は、第2のマスク層36よりも高いエッチング選択性を有し、以下のエッチングプロセスにおいて、第1のマスク層35の材料は、第2のマスク層36の材料よりエッチングプロセスにより敏感であることを意味するものとする。第1および第2のマスク層35,36を介して基板製品10(すなわちドリフト層2)まで開口部が形成され、それによって第1の面12上に第1のマスク34が形成される(図6)。第2のドーパント31(nドーパント)は、2つのソース領域3,3’をソース領域深さ30まで形成するために適用される。これらのソース領域3,3’は浅いが、チャネル層4,4’よりも高濃度にドープされており、その結果、チャネル層4,4’は、ソース領域3,3’をドリフト層2から分離する。第2のドーパント31は、例示的には1×1013~1×1016cm-2のドーズ量および/または1keV~500keVのエネルギーをソース領域深さ30まで、例示的には最大0.5μmに適用される。注入/堆積は、室温より高い温度、例示的には700°Cまでの温度で行うことができる。
【0047】
全マスクスタックは、ドーパントが、マスクによって覆われているエリアで基板製品10への侵入を妨げられるような厚さを有するものとする。ドーパントは、マスク開口部の位置で基板製品10に侵入するものとする。
【0048】
次いで、2つのソース領域3,3’間に配置された第1のマスク34のこのような部分が除去され、それによって第1のマスク34に自己整合された第2のマスク54が形成される(図7)。第3のドーパント51(pドーパント)が、井戸層5を井戸層深さ50まで形成するために適用(注入/堆積)される。
【0049】
第3のドーパント51、例えば、アルミニウムまたはホウ素は、1×1011~1×1016cm-2のドーズ量および/または1keV~1MeVのエネルギーで、井戸層深さ50まで、例示的には最大2μmまで適用される。井戸層5は、少なくとも1つのチャネル層4,4’のドーピング濃度の少なくとも10倍であるドーピング濃度を有するように、または例示的には少なくとも1つのチャネル層4,4’のドーピング濃度の10倍から100倍のドーピング濃度を有するように形成される。井戸層5のドーピング濃度は、1×1018~1×1020cm-3または1×1017~1×1021cm-3であってもよい。
【0050】
井戸層5は、逆行性プロファイルで形成されてもよく、これは、井戸層5の最大ドーピング濃度がドリフト層2へのp/n接合に近接して配置され、一方、局所ドーピング濃度は、第1の主面20に向けて減少することを意味する。層/領域のドーピング濃度は、別段の記載がない限り、層/領域の最大ドーピング濃度として理解されるものとする。
【0051】
さらに、注入/堆積は、室温より高い温度、例示的には700°Cまでの温度で行うことができる。
【0052】
ここで、第1の面12に対してエッチング工程を行い、開口部が自己整合的に大きくなるように、第1のマスク層35のエッチング選択性が高いため、開口部で第1のマスク層35が第2のマスク層36よりもさらにエッチングによって取り除かれる。第2のマスク層36を除去し、それによって残りの第1のマスク層35’から第3のマスク46を形成することができる。次いで、第1のドーパント41(pドーパント)を、チャネル層4,4’をチャネル層深さ40に形成するために適用する(図8)。
【0053】
第1のドーパント41(pドーパント)が、例えば、チャネル層4,4’を形成するための注入または堆積によって適用される。例示的な実施形態では、第1のドーパント41としてアルミニウムまたはホウ素が適用される。このプロセスは、高温、例示的には700°Cまでの温度で行うことができる。全てのドーパント31,41,51,61は、第1の主面20に任意の適切な角度で適用される。それらは、第1の主面20に垂直に適用されてもよいが、所望であれば、他の任意の入射角を使用してもよい。
【0054】
注入(堆積)について、1×1011~1×1016cm-2のドーズ量および/または1keV~1MeVのエネルギーが適用され得る。このように、1×1016~1×1018cm-3のドーピング濃度を有するチャネル層4,4’を形成することができる。第1のドーパント41は、最大2μmのチャネル層深さ40に適用することができる。
【0055】
井戸層深さ50は、少なくともチャネル層深さ40と同じ深さである。井戸層がブロッキング状態中に枯渇せず、それによって第1および第2の主電極間の短絡を防止することが保証されるものとする。
【0056】
ソース領域3,3’は過補償された層であり、これらの層では他の導電型のドーパントも存在すること、例えば、ソース領域3,3’においても、チャネル層4,4’用の第1のドーパント41および井戸層5,5’用の第3のドーパント51が適用されるが、第2のnドーパント31が支配的であるので、この層はn型(より高いnドーピング濃度)であることを意味する。
【0057】
図9に示すように、ソース領域3,3’、チャネル層4,4’、および井戸層5を形成した後、第3のマスク46を次いで除去する。酸化物からなり得る新しい連続マスク材料層が、2つのソース領域3,3’間の領域上に開口部を有するように適用、エッチングされ、それによって第4のマスク62を形成する(図10)。第4のドーパント61(pドーパント、例えばAlまたはB)を、例えば、1×1011~1×1016cm-2のドーズ量および/または1keV~1MeVのエネルギーで、少なくとも井戸深さ50と同じまたはより深いプラグ深さ60まで適用し得る。例示的には、プラグ深さ60は、井戸層深さ50の1.05~1.5倍(すなわち、5~50%)または最大2倍または最大4倍でさえある(図10)。高温、例えば、1500°C~1900°Cでの活性化アニール工程をその後行うことができる。その後、犠牲酸化工程を行うことができる。プラグ6の導入により、井戸層5は、2つの井戸層5,5’に分割される。
【0058】
次に、第4のマスク62を除去し(図11)、第1の絶縁層72を適用することによってゲート電極7を形成し(図12)、第1の面12の表面、チャネル層4,4’およびソース領域3,3’の外側部に延在する部分でドリフト層2を覆う。外側部は、互いに対向していない2つのソース領域3,3’の部分を意味するものとする。導電性ゲート層70が適用され、その上に、第2の絶縁層74が適用されて、第1の主電極9からゲート層70を電気的に絶縁する。プラグ6および井戸層5,5’を介してゲート電極7で覆われていないソース領域3,3’上の開口部には、IGBT1用エミッタ電極またはMOSFET1’(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)用のソース電極の形態でのオーミック接触としての第1の主電極9が形成される。例示的には、第1の主電極9は、開口部に金属層を最初に適用してp++プラグ6、井戸層5,5’およびソース領域3,3’に接触することによって形成し、次いでゲート層70上の第2の絶縁層74をさらに覆う別の金属層を適用する(図13)。
【0059】
第2の面14上には、IGBT1用コレクタ電極またはMOSFET1’用ドレイン電極の形態でオーミック接触としての第2の主電極90が形成される。
【0060】
図6図13に示すプロセスでは、1つのMOSセル内にpチャネル層4,4’およびソース領域3,3’を別個の領域として形成し、井戸層5をまず1つの共通層として形成し(図8)、p++プラグ6の導入によって、井戸層5は、プラグ6の側面上の2つの別個の井戸層5,5’に分割される。したがって、井戸層という用語は、プラグ6によって互いに分離された2つの井戸層5,5’を含み、チャネル層という用語は、井戸層5,5’によって互いに分離された2つのチャネル層4,4’を含むものとする。
【0061】
このプロセスでは、図6図8に示すように、pチャネル層4,4’およびソース領域3,3’は、1つのMOSセル内に別個の領域(マスキングによる別個の領域としてのソース領域3,3’および井戸層5,5’のより高いドーピング濃度によって中央エリアを占める領域によるチャネル層4,4’)として形成され、ここで、井戸層5,5’が最初に1つの共通層5(図8)として形成され、p++プラグ6の導入によって、井戸層5は、プラグ6の側面上の2つの別個の井戸層5,5’に分割される。
【0062】
別の代替の製造方法では、ステップ(b)において、共通チャネルおよび井戸層(4,4’、5,5’)としての逆行性pドープ層を形成し、逆行性層(4,4’、5,5’)前後にソース領域3,3’を形成する。逆行性層(4,4’、5,5’)は、ソース領域3,3’の外側側面上に、逆行性層が第1の面12で低いドーピング濃度(すなわちチャネル層4,4’)を有するようなドーピング濃度を有し、次いでソース領域3,3’の下の高いドーピング濃度(すなわち、井戸層5,5’)までのより深い深さ(少なくともソース領域深さ30まで)に上昇する。プラグ6の後の導入により、共通の逆行性層は、逆行性層4,5および4’,5’に分割される。逆行性層は、先に説明したプロセス、すなわち最初に井戸層5,5’を形成し、次いでより広いチャネル層4,4’を形成することによって形成することができる。あるいは、ソース領域3,3’を形成した後に、ステップ(b)において共通の逆行性層4,4’、5,5’を形成するために、2つのソース領域3,3’間に第1のマスク34の部分を配置し、それによって第2のマスク54を形成し、次いで第1の面12にエッチング工程を行って、エッチングによって、第1のマスク層35は開口部で第2のマスク層36よりもさらに除去され、第2のマスク層36を除去し、残りの第1マスク層35’は、第3マスク46を形成する。次いで、第3のpドーパント51および第1のpドーパント41が、1つの工程で逆行性チャネルおよび井戸層を形成するための1つの共通のドーパントとして適用される。
【0063】
プラグ6は、浅い深さにおいてより低いドーピング濃度を有し、より深いところで最高ドーピング濃度まで高濃度を有する逆行性層としても形成され得、その深さは、例示的には井戸層5,5’の最大ドーピング濃度の深さと同じまたはそれより深くに位置し得る。
【0064】
深いp++プラグを有する本発明の構造および製造方法は、MOSFETおよびMOS制御IGBTなどのMOSセル構造を有する異なる半導体装置に適用することができる。
【0065】
別の実施形態では、層の導電型が切り替えられ、すなわち、第1の導電型のすべての層がp型(例えば、ドリフト層2およびソース領域3)であり、第2の導電型のすべての層がn型(例えば、チャネル層4、井戸層5およびプラグ6)である。
【符号の説明】
【0066】
符号の説明
1 IGBT
1’ MOSFET
10 ワイドバンドギャップ基板製品
12 第1の面
14 第2の面
2 ドリフト層
20 第1の主面
22 第2の主面
25 バッファ層
3,3’ ソース領域
31 第2のドーパント
30 ソース領域深さ
34 第1のマスク
35 第1のマスク層
35’ 残りの第1のマスク層
36 第2のマスク層
4,4’ チャネル層
41 第1のドーパント
40 チャネル層深さ
41 第1のドーパント
44 多結晶シリコン層
45 酸化物層
46 第3のマスク
47 非空乏チャネル層
48 空乏チャネル層
49 トップマスク層
49’ 残りのトップマスク層
5,5’ 井戸層
50 井戸層深さ
51 第3のドーパント
54 第2のマスク
6 プラグ
60 プラグ深さ
61 第4のドーパント
62 第4のマスク
65 コンタクト層
67 コンタクト層深さ
7 ゲート電極
70 ゲート層
72 第1の絶縁層
74 第2の絶縁層
8 コレクタ層
80 ドレイン層
9 第1の主電極
90 第2の主電極
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