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特許74320732ポート等価回路のオンライン更新を実行するための装置、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】2ポート等価回路のオンライン更新を実行するための装置、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   H02H 7/26 20060101AFI20240208BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20240208BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20240208BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20240208BHJP
   H02H 3/34 20060101ALI20240208BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H02H7/26 F
G01R27/02 A
H02H3/00 U
H02H3/08 D
H02H3/34 C
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021209675
(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公開番号】P2022111070
(43)【公開日】2022-07-29
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】202141002387
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベーダーンタ・プラダーン
(72)【発明者】
【氏名】オー・ディ・ナイドゥ
【審査官】杉田 恵一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-145913(JP,A)
【文献】特開2020-174521(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0083087(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0055889(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0121594(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0163029(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0199090(US,A1)
【文献】国際公開第2019/186490(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/02
H02H 3/00
H02J 3/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバスと、第2のバスと、第3のバスと、前記第1および第2のバスの間の第1の線路と、前記第3のバスと前記第1および第2のバスの一方との間の第2の線路とを有している電力システムについて、伝送線路の等価モデルの更新後インピーダンスを決定する方法であって、
装置またはシステムによって、前記バスのうちの1つまたは複数についての電圧測定値を備える測定値と、スイッチ状態情報とを受信するステップと、
前記装置またはシステムによって、少なくとも1つのトリップ事象に応答して、前記受信した測定値および前記少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた前記等価モデルのインピーダンスから、前記等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するステップと
を備える方法。
【請求項2】
前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値は、変電所プロセスバスレベルの測定値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記等価モデルの前記更新後インピーダンスは、更新後の第1の等価ソースインピーダンス、更新後の第2の等価ソースインピーダンス、および更新後の等価伝達経路インピーダンスを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記測定値は、前記変電所内の変電所レベルで取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記装置またはシステムは、前記電力システムの完全なバスインピーダンス行列を再計算することなく、前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するように動作することができる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値は、前記第1の線路の近隣において取得される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスは、前記少なくとも1つのトリップ事象の後の前記第1の線路の2ポート等価回路の前記等価モデルの更新後インピーダンスであり、前記トリップ事象の前の前記等価モデルの前記インピーダンスは、前記少なくとも1つのトリップ事象の前の前記2ポート等価回路の前記等価モデルのインピーダンスを備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記等価モデルの前記更新後インピーダンスを使用して少なくとも1つの保護機能を実行するステップ
をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
・距離継電、
・適応的継電、
・故障位置の判定、
・システム不均質性係数の決定、
・距離継電器到達判定、
・随意によりフェーザ、重畳量、または進行波に基づく方法を備えるシステム保護のための相選択方法の適応的選択、
・短絡率(SCR)の決定、
・過電流継電器協調
のうちの少なくとも1つのために、前記等価モデルの前記更新後インピーダンスを使用するステップ
をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するステップは、
前記測定値を使用してバスインピーダンス部分行列の少なくとも1つの行列要素を決定するステップと、
前記バスインピーダンス部分行列の直列および/または分路ブランチ修正を実行して、修正されたバスインピーダンス部分行列の行列要素を決定するステップと、
前記修正されたバスインピーダンス部分行列を使用して、前記2ポート等価回路の前記等価モデルの前記更新後インピーダンスを決定するステップと
を備える、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記バスインピーダンス部分行列は、
【数1】

随意により、前記装置またはシステムは、前記修正されたバスインピーダンス部分行列
【数2】

前記装置またはシステムは、前記2ポート等価回路の前記等価モデルの前記更新後インピーダンスを、
【数3】

を満たすように決定する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記装置またはシステムは、前記第2の線路のトリップに応答した前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記装置またはシステムは、前記第2の線路のトリップに応答した前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを、
前記第2の線路のトリップに応答した前記第2のバスにおける電圧の変化、および
前記第2の線路のトリップの前の前記第1のバスにおける前記第2の線路上の電流
の測定値を使用して決定し、
随意により、前記装置またはシステムは、前記第2の線路のトリップに応答した前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを、測定値から得られる以下の量、すなわち
(i)前記第2の線路のトリップに応答した前記第1および第3のバスにおける電圧の変化、または
(ii)前記第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける前記第2の線路の電流
を使用して決定する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記装置またはシステムは、前記第3のバスにおける分路要素のトリップに応答して前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記装置またはシステムは、前記第3のバスにおける分路要素のトリップに応答して前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを、測定値から得られる以下の量、すなわち
前記分路要素のトリップの前の前記第3のバスにおける前記分路要素を通る分路電流であって、前記トリップの前の分路電流の測定値から得られ、もしくは計算によって決定される分路電流、または
前記分路要素の前記トリップに応答した前記第2のバスにおける電圧の変化
を使用し、
随意により、前記装置またはシステムは、前記第3のバスにおける分路要素のトリップに応答して前記等価モデルの前記1つまたは複数の更新後インピーダンスを、前記分路要素の前記トリップに応答した前記第1および第3のバスにおける電圧の変化の測定値を使用して決定する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1のバスと、第2のバスと、第3のバスと、前記第1および第2のバスの間の第1の線路と、前記第3のバスと前記第1および第2のバスの一方との間の第2の線路とを有している電力システムにおいて使用するための装置またはシステムであって、
前記バスのうちの1つまたは複数についての電圧測定値を備える測定値と、スイッチ状態情報とを受信するためのインターフェースを備え、
少なくとも1つのトリップ事象に応答して、前記受信した測定値および前記少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた前記等価モデルのインピーダンスから、前記等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するように動作することができる、装置またはシステム。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の方法を実行するように動作することができる、請求項16に記載の装置またはシステム。
【請求項18】
第1のバスと、
第2のバスと、
第3のバスと、
前記第1および第2のバスの間の第1の線路と、
前記第3のバスと前記第1および第2のバスの一方との間の第2の線路と、
2ポート等価回路の等価モデルの更新後インピーダンスを前記受信した測定値および前記等価モデルのベースインピーダンスから決定するための請求項16または17に記載の装置またはシステムと
を備える電力システム。
【請求項19】
請求項16または17に記載の変電所装置またはシステムを各々が備えている複数の変電所と、
前記変電所装置またはシステムに通信可能に結合し、前記変電所装置またはシステムを協調させ、かつ/または異なる変電所装置またはシステムから得られた更新後インピーダンスを組み合わせるように動作することができる随意による中央エンティティと
を備える電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、送電システムならびに送電システムを保護するための装置および方法に関する。本発明は、とくには、種々の保護、制御、または協調機能に使用することが可能な伝送線路の2ポート等価回路の1つ以上の等価インピーダンスを更新するように動作することができる方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
伝送線路の保護におけるさまざまな解析は、線路末端から見たシステムの等価モデルを使用する。典型的には、相互接続された高電圧の送電システムにおいて、各々のこのような線路は、他の伝送線路を介してネットワークの残りの部分に接続される。動作の要件に応じて、リアクトルまたはコンデンサなどの分路要素も、バスに接続され得る。
【0003】
システムの等価モデルが、図2に示されており、システムのすべての構成要素(関心の線路を除く)が、2ポートテブナン等価回路に表現されている。等価システムは、それぞれのインピーダンスZsMおよびZsNを有する2つのソースを有する。さらに、ブランチMN自体を通る直接の経路を除くバスMおよびNの間の電流の流れに関する電力システムの等価回路を表すインピーダンスZtr MNを有する伝送経路が存在し得る。
【0004】
2ポートテブナン等価回路を、ネットワークのトポロジの全体および/またはネットワークのインピーダンス行列、すなわちZBUSが入力として利用可能である場合に、計算することが可能である。完全なネットワーク情報に基づく短絡解析は、関心対象の任意の特定の線路の2ポート等価パラメータをもたらすことができる。このような技術を、システムのトポロジが変化する場合に使用することが可能であるが、2ポートテブナン等価回路の再計算に必要な情報は、例えば変電所レベルにおいて利用できないことが多い。
【0005】
トポロジの動的な変化に応答して、等価モデルを、グリッドの中央制御センタからの反復的な更新に依存することなく、プロセスバス情報のみを使用して、変電所レベルにおいて(中央集権型ではないやり方で)更新することが望まれる可能性がある。しかしながら、システム全体からのネットワークトポロジおよびトポロジ更新の完全な情報は、変電所レベルにおいては利用できない可能性がある。したがって、完全ネットワーク解析(CNA)は、変電所装置における実行に関して、実行可能な選択肢ではないかもしれない。
【0006】
等価モデルを近似的に計算するために、線路末端における短絡電流レベルおよび線路からの故障電流への寄与の情報を使用する技術が、変電所レベルでの実装に有用となり得る。“POWER SWING AND OUT-OF-STEP CONSIDERATIONS ON TRANSMISSION LINES”,IEEE PSRC WG D6,2005,pp.45-48が、例示的な技術を提示している。しかしながら、必要なデータを両方のバスにおいて同時に取得することが、トポロジの変化が生じるたびに各々のバスにおいて短絡実験を繰り返し実行または段階化しない限り、困難であり得る。
【0007】
他の変電所レベルにおける手法は、線路の末端へのボルト型短絡の配置を考慮することができる(例えば、J.Mooney and J.Peer,“Application Guidelines for Ground Fault Protection,”proceedings of the 24th Annual Western Protective Relay Conference,Spokane,WA,October 1997を参照)。ソースインピーダンスを、ソースから見た電流の変化に対する公称値からのバス電圧の低下の比を計算することによって推定することができる。このような技術は、典型的には、線路の末端に配置された保護リレーから見たソースインピーダンスを求めるという限られた問題に対処するにすぎない。さらに、正常動作の最中にシステムに故障を生じさせなければならないという課題にも直面する。
【0008】
米国特許第8 050 878号明細書が、ネットワークのインピーダンスを動的に決定するための装置および方法を開示している。この装置は、ネットワーク電圧およびネットワーク電流を、このネットワークが第1の状態にあると判定されたときに測定し、このネットワークが第2の状態にあると判定されたときにネットワーク電圧を測定し、これらの測定された電圧および電流に依存してインピーダンス値を推定し、推定されたインピーダンスを少なくとも1つの以前のインピーダンス値に基づいて調整し、少なくとも調整後のインピーダンスを記憶するための処理システムを少なくとも含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
概要
伝送線路の等価モデルの更新後インピーダンスを決定し、かつ/あるいはそのような更新後インピーダンスを使用して保護および/または協調機能を実行する改善された装置、システム、および方法が必要とされている。とくには、2つのソースインピーダンスと、伝送経路インピーダンスとを含む伝送線路の2パートテブナン等価モデルの更新後インピーダンスの更新を可能にするそのような装置、システム、および方法が必要とされている。とくには、更新後インピーダンスをネットワークトポロジの全体に関する情報を必要とせずに決定することを可能にする装置、システム、および方法が必要とされている。とくには、伝送線路の端部に位置する末端ノード(すなわち、この伝送線路の両側のバス)、ネットワークトポロジにおいて1つ上のレベルに位置するさらなるバス、およびさらなるバスと伝送線路の一方の末端ノードとの間のさらなる伝送線路から得られた測定値を使用して、更新後インピーダンスを決定することを可能にする装置、システム、および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態によれば、2ポート等価回路のオンライン更新をもたらす装置、システム、および方法が提供される。そのようなオンライン更新は、トリップ事象に応答して実行されてよい。オンライン更新は、継電器の適応的設定を容易にすることができ、したがって継電器の信頼性およびセキュリティを改善することができる。
【0011】
本装置、システム、および方法は、変電所レベルの測定値の近隣からの情報しか必要としない。本装置、システム、および方法を、制御センタからの更新を必要とせずに、変電所レベルで実施することができる。
【0012】
本装置、システム、および方法は、さまざまな保護用途において使用することができ、デジタル変電所ソリューションに価値を付加する2ポート等価回路のオンライン更新を提供する。
【0013】
本装置、システム、および方法は、関心対象の線路に隣接する線路およびバスの情報、すなわち隣接トポロジのネットワーク情報を使用して、関心対象の線路の2ポート等価モデルを更新する。関心対象の線路の近隣におけるトポロジ変化の影響を、その2ポート等価回路を更新することによって考慮することができる。
【0014】
本装置、システム、および方法は、ネットワークトポロジの1つ上のレベルに制限されたトポロジ変更に応答して、変電所プロセスバスデータを使用して伝送線路の2ポート等価回路のオンライン更新を実行するように動作することができる。本装置、システム、および方法は、少なくとも以下の種類のネットワークトポロジの変更に応答して、2ポート等価回路のオンライン更新を実行するように動作することができる。
【0015】
・関心対象の線路の末端バスの一方に入射する線路のトリップ。
・隣接するバスに接続された分路要素のトリップ。
【0016】
本装置、システム、および方法は、完全なネットワークトポロジまたは完全なネットワークインピーダンス行列に依存することなく、ネットワークインピーダンス部分行列を更新するように動作可能であってよい。むしろ、初期等価パラメータ、関心対象の伝送線路およびトリップ要素(第2の線路または隣接するバスの分路要素など)のパラメータ、ならびに限られた量の電圧測定値、および随意による電流測定値などの情報だけを使用して、ネットワークインピーダンス部分行列を推定し、したがって、本技術は、変電所レベルにおける実行に適している。使用されるパラメータは、具体的には、関心対象の伝送線路およびトリップ要素(第2の線路または隣接するバスの分路要素など)の基本周波数モデル表現のインピーダンスを含むことができ、あるいはそのようなインピーダンスであってよい。
【0017】
本発明の実施形態は、初期等価回路ならびに切り替えられた構成要素の遮断器/スイッチ状態入力によって判断されるトポロジ事象に関連する電圧および/または電流測定値を使用することによって、(本開示において説明されるように)トポロジ変化に応答して等価回路を更新する。これは、トポロジ事象が発生するたびにそれまでの等価回路データを破棄することによって再適用される必要がある“POWER SWING AND OUT-OF-STEP CONSIDERATIONS ON TRANSMISSION LINES”,IEEE PSRC WG D6,2005、J.Mooney and J.Peer,“Application Guidelines for Ground Fault Protection,”proceedings of the 24th Annual Western Protective Relay Conference,Spokane,WA,October 1997、およびM.J.Thomson and A.Somani,“A Tutorial on Calculating Source Impedance Ratios for Determining Line Length”,SEL,2015の技術からの大いなる発展である。
【0018】
“POWER SWING AND OUT-OF-STEP CONSIDERATIONS ON TRANSMISSION LINES”,IEEE PSRC WG D6,2005、J.Mooney and J.Peer,“Application Guidelines for Ground Fault Protection,” proceedings of the 24th Annual Western Protective Relay Conference,Spokane,WA,October 1997、およびM.J.Thomson and A.Somani,“A Tutorial on Calculating Source Impedance Ratios for Determining Line Length”,SEL,2015の技術は、修正後のシステム(すなわち、トポロジ変化の後のシステム)における故障のステージングを必要とし、あるいは故障事象の発生を待たなければならず、それまでは等価回路の再評価に展開することができない。これにより、新たな等価パラメータの取得が遅れる可能性があり、それらに依存する機能が、古いデータを使用し続けなければならない。
【0019】
電力システムと共に使用するための装置またはシステムが提供される。電力システムは、第1のバスと、第2のバスと、第3のバスと、第1および第2のバスの間の第1の線路と、第3のバスと第1および第2のバスの一方との間の第2の線路とを有する。本装置またはシステムは、バスのうちの1つまたは複数に関する電圧測定値を含む測定値を受信し、スイッチ状態情報を受信するためのインターフェースを備える。本装置またはシステムは、少なくとも1つのトリップ事象に応答して、等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、受信した測定値および少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された等価モデルのインピーダンスから決定するように動作することができる。
【0020】
本装置またはシステムは、第1の線路ならびにトリップする第2の線路または分路要素の少なくとも一方のモデルパラメータを使用して、更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0021】
インターフェースは、電流測定値を受信するように動作可能であってよい。
インターフェースは、第1および第2の線路の少なくとも一方または少なくとも1つの分路要素の電流測定値を受信するように動作可能であってよい。
【0022】
本装置またはシステムは、1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定することによって、実地動作の最中に等価モデルのオンライン更新を実行するように動作可能であってよい。
【0023】
本装置またはシステムは、等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値および随意によるスイッチ状態情報を、第1の線路の近隣で取得できるように動作可能であってよい。
【0024】
測定値が更新後インピーダンスの決定に使用される第1の線路の近隣は、第1および第2の線路、第1、第2、および第3のバス、ならびに関連のスイッチおよび/または回路遮断器を含むバスに接続された分路要素を含むことができる。
【0025】
本装置またはシステムは、等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値および随意によるスイッチ状態情報が、第1および第2の線路、第1、第2、および第3のバス、ならびに関連のスイッチおよび/または回路遮断器を含むバスに接続された分路要素を含む第1の線路の近隣から取得されるように動作可能であってよい。
【0026】
本装置またはシステムは、第1および第2の線路、第1、第2、および第3のバス、ならびに関連のスイッチおよび/または回路遮断器を含むバスに接続された分路要素を含む第1の線路の近隣から取得される測定値以外の測定値を必要とすることなく、等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0027】
本装置またはシステムは、変電所自動化通信ネットワークを介して測定値(電圧および/または電流測定値など)および/またはスイッチ状態情報を受信するように動作可能であってよい。
【0028】
本装置またはシステムは、変電所自動化通信プロトコルによるメッセージにて測定値および/またはスイッチ状態情報を受信するように動作可能であってよい。
【0029】
本装置またはシステムは、変電所自動化通信プロトコルによるメッセージにて測定値および/またはスイッチ状態情報を受信するように動作可能であってよい。
【0030】
本装置またはシステムは、IEC 61850によるメッセージ、またはIEC 61850に適合するメッセージにて、測定値および/またはスイッチ状態情報を受信するように動作可能であってよい。
【0031】
本装置またはシステムは、IEC 61850:8-1、IEC 61850:8-2、および/またはIEC 61850:9によるメッセージ、あるいはIEC 61850:8-1、IEC 61850:8-2、および/またはIEC 61850:9に適合するメッセージにて、測定値および/またはスイッチ状態情報を受信するように動作可能であってよい。
【0032】
本装置またはシステムは、IEC 61850:8-1(2011)、IEC 61850:8-2(2018)、ならびに/あるいはIEC 61850:9(2011)および/またはIEC 61850:9/AMD1:2020(2020)によるメッセージ、もしくはIEC 61850:8-1(2011)、IEC 61850:8-2(2018)、ならびに/あるいはIEC 61850:9(2011)および/またはIEC 61850:9/AMD1:2020(2020)に適合するメッセージにて、測定値および/またはスイッチ状態情報を受信するように動作可能であってよい。
【0033】
本装置またはシステムは、等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値および随意によるスイッチ状態情報が、変電所プロセスバスレベルの測定値であってよいように動作可能であってよい。
【0034】
スイッチ状態情報は、スイッチ状態(トリップまたは非トリップなど)の測定値であってよく、あるいはそれらを含むことができる。
【0035】
スイッチ状態情報は、少なくとも1つのインテリジェント電子装置(IED)によって送信され、現時点または迫り来るスイッチ状態(トリップまたは非トリップなど)を表すメッセージであってよく、あるいはそのようなメッセージを含むことができる。スイッチ状態情報を、少なくとも1つのIEDによって送信されるメッセージを解析することによって取得することができる。メッセージは、GOOSEメッセージまたはIEC 61850による他のメッセージであってよい。
【0036】
スイッチ状態情報は、関心対象の線路の末端バスのうちの1つに入射する線路上のスイッチのトリップを示す情報を含むことができる。
【0037】
スイッチ状態情報は、関心対象の線路の末端バスに隣接するバスに接続された分路要素のトリップを示す情報を含むことができる。
【0038】
少なくとも1つのトリップ事象を、スイッチ状態情報に基づいて検出することができ、より具体的には、スイッチ状態の変化(例えば、非トリップからトリップへ)に基づいて検出することができる。
【0039】
等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスは、少なくとも1つのトリップ事象の後の第1の線路の2ポート等価回路の更新後インピーダンスであってよい。
【0040】
少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された等価モデルのインピーダンスは、少なくとも1つのトリップ事象の前の2ポート等価回路の等価モデルのベースインピーダンスを含むことができる。
【0041】
本装置またはシステムは、等価モデルの更新後インピーダンスを使用して少なくとも1つの保護機能を実行するように動作可能であってよい。
【0042】
本装置またはシステムは、
・距離継電、
・適応的継電、
・故障位置の判定(これに限られるわけではないが、シングルエンドの故障位置判定など)、
・システム不均質性係数の決定、
・距離継電器到達判定、
・随意によりフェーザ、重畳量、または進行波に基づく方法を含むシステム保護のための相選択方法の適応的選択、
・短絡率(SCR)の決定、
・過電流継電器協調
のうちの少なくとも1つのために、等価モデルの更新後インピーダンスを使用するように動作可能であってよい。
【0043】
等価モデルの更新後インピーダンスは、更新後の第1の等価ソースインピーダンス、更新後の第2の等価ソースインピーダンス、および更新後の等価伝達経路インピーダンスを含むことができる。
【0044】
本装置またはシステムは、測定値を使用してインピーダンス部分行列の少なくとも1つの行列要素を決定し、インピーダンス部分行列の直列および/または分路ブランチ修正を実行して、修正されたインピーダンス部分行列の行列要素を決定し、修正されたインピーダンス部分行列を使用して、2ポート等価回路の等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0045】
本装置またはシステムは、測定値を使用してバスインピーダンス部分行列の少なくとも1つの行列要素を決定し、バスインピーダンス部分行列の直列および/または分路ブランチ修正を実行して、修正されたバスインピーダンス部分行列の行列要素を決定し、修正されたバスインピーダンス部分行列を使用して、2ポート等価回路の等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0046】
バスインピーダンス部分行列は、
【0047】
【数1】
【0048】
本装置またはシステムは、測定値を使用してZnp=Zpnを決定するように動作可能であってよい。
【0049】
本装置またはシステムは、少なくともZmm、Zmn、Znm、およびZnnを、少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた2ポート等価回路の等価モデルのインピーダンスおよび修正計算から決定するように動作可能であってよい。
【0050】
本装置またはシステムは、第2の線路のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0051】
本装置またはシステムは、第2の線路のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、第2の線路のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化の測定値、および第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける第2の線路上の電流(測定されても、計算されてもよい)、および第2の線路のトリップの前の第2の線路の充電電流(計算される)を使用して決定するように動作可能であってよい。
【0052】
本装置またはシステムは、等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、測定値から得られる以下のさらなる量(測定値から計算によって導出される量を含む)、すなわち(i)第2の線路のトリップに応答した第1および第3のバスにおける電圧の変化、または(ii)第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける第2の線路の電流を使用して決定するように動作可能であってよい。
【0053】
本装置またはシステムは、第2の線路のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、第2の線路のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化の測定値、および第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける第2の線路上の電流(測定されても、計算されてもよい)、ならびに(i)第2の線路のトリップに応答した第1および第3のバスにおける電圧の変化(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)、または(ii)第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける第2の線路の電流(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)のみを使用して決定するように動作可能であってよい。
【0054】
本装置またはシステムは、第2の線路のトリップに応答して、Znp=Zpnを、
【0055】
【数2】
【0056】
を満たすように決定するように動作可能であってよく、
ここで、
【0057】
【数3】
【0058】
本装置またはシステムは、以下に従ってImcおよびIpcを決定するように動作可能であってよい。
【0059】
【数4】
【0060】
本装置またはシステムは、電流測定値からImp+Imcを決定するように動作可能であってよい。
【0061】
本装置およびシステムは、Imp+Imc
【0062】
【数5】
【0063】
に従って電圧測定値から計算によって決定するように動作可能であってよく、
ここで、V およびV は、トリップ事象の発生前にバスMおよびバスPにおいてそれぞれ測定された電圧であり、Zsh は、トリップされた第2の線路の充電電流に関連するインピーダンスであり、Z は、トリップされた第2の線路の直列インピーダンスである。
【0064】
本装置またはシステムは、少なくともZmp、Zpm、およびZppを、少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた2ポート等価回路の等価モデルのインピーダンスおよび修正計算を使用することによって決定するように動作可能であってよい。
【0065】
本装置またはシステムは、測定値を使用して少なくともZmp、Zpm、およびZppを決定するように動作可能であってよい。
【0066】
本装置またはシステムは、第2の線路のトリップに応答して、Znp=Zpn、Zmp=ZpmおよびZppを、
【0067】
【数6】
【0068】
を満たすように決定するように動作可能であってよく、
ここで
【0069】
【数7】
【0070】
本装置またはシステムは、電流測定値からImp+Imcを決定するように動作可能であってよい。
【0071】
本装置およびシステムは、Imp+Imc
【0072】
【数8】
【0073】
本装置またはシステムは、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0074】
本装置またはシステムは、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、分路要素のトリップの前の第3のバスにおける分路要素を通る分路電流(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)、および分路要素のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)を使用して決定するように動作可能であってよい。
【0075】
本装置またはシステムは、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、測定値に含まれ、あるいは測定値から計算によって導出される以下の量、すなわち分路要素のトリップの前の第3のバスにおける分路要素を通る分路電流、および分路要素のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化のみを使用して決定するように動作可能であってよい。
【0076】
本装置またはシステムは、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、分路要素のトリップに応答した第1および第3のバスにおける電圧の変化(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)をさらに使用して決定するように動作可能であってよい。
【0077】
本装置またはシステムは、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、測定値に含まれ、あるいは測定値から計算によって導出される以下の量(使用される他の量が必ずしも実地動作における測定値から決定される必要はないことに注意)、すなわち分路要素のトリップの前の第3のバスにおける分路要素を通る分路電流、および分路要素のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化、および分路要素のトリップに応答した第1および第3のバスにおける電圧の変化の測定値のみを使用して決定するように動作可能であってよい。
【0078】
本装置またはシステムは、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答して、Znp=Zpnを、
【0079】
【数9】
【0080】
【数10】
【0081】
本装置またはシステムは、少なくともZmp、Zpm、およびZppを、少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた2ポート等価回路の等価モデルのインピーダンスおよび修正計算を使用することによって決定するように動作可能であってよい。
【0082】
本装置またはシステムは、測定値を使用して少なくともZmp、Zpm、およびZppを決定するように動作可能であってよい。
【0083】
本装置またはシステムは、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答して、Znp=Zpn、Zmp、ZpmおよびZppを、
【0084】
【数11】
【0085】
【数12】
【0086】
本装置またはシステムは、修正されたバスインピーダンス部分行列
【0087】
【数13】
【0088】
本装置またはシステムは、2ポート等価回路の等価モデルの更新後インピーダンスを、
【0089】
【数14】
【0090】
を満たすように決定するように動作可能であってよい。
本装置またはシステムは、
第2の線路のトリップ、
第3のバスにおける分路要素のトリップ
の少なくとも一方に応答して、等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0091】
本装置またはシステムは、インターフェースに結合し、等価モデルの少なくとも1つの更新後インピーダンスを決定するように動作することができる少なくとも1つの集積回路を備えることができる。
【0092】
インターフェースは、変電所バスに通信可能に結合するように動作可能であってよい。
本装置またはシステムは、少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた等価モデルのインピーダンスおよび/またはバスインピーダンス部分行列要素を記憶するための記憶装置を備えることができる。
【0093】
本装置またはシステムは、記憶装置に通信可能に結合して、記憶装置から少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた等価モデルのインピーダンスおよび/またはバスインピーダンス部分行列要素を取り出すように動作可能であってよい。
【0094】
本装置またはシステムは、変電所コンピュータなどの変電所装置または変電所システムであってよい。
【0095】
一実施形態による電力システムが、第1のバスと、第2のバスと、第3のバスと、第1および第2のバスの間の第1の線路と、第3のバスと第1および第2のバスの一方との間の第2の線路と、2ポート等価回路の等価モデルの更新後インピーダンスを受信した測定値および少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた等価モデルのインピーダンスから決定するためのいずれかの実施形態による装置またはシステムとを備える。
【0096】
装置またはシステムは、第1の線路ならびにトリップする第2の線路または分路要素の少なくとも一方のモデルパラメータを使用して、更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0097】
装置またはシステムは、等価モデルの更新後インピーダンスを使用して少なくとも1つの保護または協調機能を実行するように動作することができる保護または協調システムであってよい。
【0098】
電力システムは、装置またはシステムに通信可能に結合した保護または協調システムを備えることができ、保護または協調システムは、等価モデルの更新後インピーダンスを使用して少なくとも1つの保護または協調機能を実行するように動作することができる。
【0099】
装置またはシステムは、第2の線路のトリップに応答して第1の線路の2ポート等価回路の等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0100】
電力システムは、第3のバスに分路要素を備えることができる。
装置またはシステムは、分路要素のトリップに応答して第1の線路の2ポート等価回路の等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0101】
等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作することができる装置またはシステムは、変電所装置または変電所システムである。
【0102】
一実施形態による電力システムは、複数の変電所を備えることができ、各々の変電所は、2ポート等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作することができる変電所装置またはシステムを備える。
【0103】
更新後インピーダンスを決定するように動作することができる装置またはシステムは、それぞれ一実施形態による装置またはシステムであってよい。
【0104】
電力システムは、変電所装置またはシステムに通信可能に結合し、変電所装置またはシステムを協調させ、かつ/または異なる変電所装置またはシステムから得られた更新後インピーダンスを組み合わせるように動作することができる中央エンティティを備えることができる。
【0105】
変電所装置またはシステムは、互いに独立して等価インピーダンスを更新するように動作可能であってよい。
【0106】
第1の変電所装置またはシステムが、第1のトリップ事象に応答して、変電所ならびに随意により隣接するバスおよび入射線路の測定値を使用して、インピーダンスを更新するように動作可能であってよい。第1の変電所装置またはシステムが更新後インピーダンスを決定する時点は、他の変電所装置またはシステム(例えば、第2の変電所の第2の変電所装置またはシステムならびに/あるいは第3の変電所の第3の変電所装置またはシステム)のいずれかが更新後インピーダンスを決定する時点とは無関係であってよい。
【0107】
第2の変電所装置またはシステムが、第2のトリップ事象に応答して、変電所ならびに随意により隣接するバスおよび入射線路の測定値を使用して、インピーダンスを更新するように動作可能であってよい。第2の変電所装置またはシステムが更新後インピーダンスを決定する時点は、他の変電所装置またはシステム(例えば、第2の変電所の第1の変電所装置またはシステムならびに/あるいは第3の変電所の第3の変電所装置またはシステム)のいずれかが更新後インピーダンスを決定する時点とは無関係であってよい。
【0108】
実地動作の最中に更新される第1、第2、および存在する場合にはさらなる変電所装置またはシステムのインピーダンスは、互いに独立した時点において、かつ/または互いに独立した値に更新されてよい。
【0109】
中央エンティティは、変電所装置またはシステムから更新後インピーダンスを受信するように動作可能であってよい。
【0110】
中央エンティティは、変電所装置またはシステムからの更新後インピーダンスを組み合わせるように動作可能であってよい。
【0111】
中央エンティティは、変電所装置またはシステムからの更新後インピーダンスを使用してバス行列を更新するように動作可能であってよい。
【0112】
中央エンティティは、異なる変電所の変電所装置またはシステムの動作を協調させるように動作可能であってよい。
【0113】
中央エンティティは、中央コントローラであってよい。
中央エンティティならびに/あるいは変電所装置またはシステムは、解析、保護、および/または協調機能のために、更新後インピーダンスを使用するように動作可能であってよい。
【0114】
中央エンティティならびに/あるいは変電所装置またはシステムは、距離継電器の動作特性を設定すること、電力動揺ブラインダおよび/または脱調ロジックを設定すること、シングルエンド測定値のみの使用の場合に線路上の故障の位置を特定することのうちの1つまたは複数のために、更新後インピーダンスを使用するように動作可能であってよい。
【0115】
電力システムの伝送線路の等価モデルの更新後インピーダンスを決定する方法が提供される。電力システムは、第1のバスと、第2のバスと、第3のバスと、第1および第2のバスの間の第1の線路と、第3のバスと第1および第2のバスの一方との間の第2の線路とを有する。本方法は、装置またはシステムによって、バスのうちの1つまたは複数に関する電圧測定値を含む測定値、およびスイッチ状態情報を受信することを含む。本方法は、装置またはシステムによって、少なくとも1つのトリップ事象に応答して、等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、受信した測定値および少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された等価モデルのインピーダンスから決定することを含む。
【0116】
本方法において、等価モデルのオンライン更新を、実地動作の最中に、1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定することによって実行することができる。
【0117】
本方法において、更新後インピーダンスを決定するために、第1の線路ならびにトリップする第2の線路または分路要素の少なくとも一方のモデルパラメータ。
【0118】
測定値は、電流測定値を含むことができる。
電流測定値は、第1および第2の線路の少なくとも一方または少なくとも1つの分路要素についての電流測定値を含むことができる。
【0119】
等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値および随意によるスイッチ状態情報は、第1の線路の近隣で取得されてよい。
【0120】
等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値および随意によるスイッチ状態情報は、変電所プロセスバスレベルの測定値であってよい。
【0121】
測定値が更新後インピーダンスを決定するために使用される第1の線路の近隣は、第1および第2の線路、第1、第2、および第3のバス、ならびに関連のスイッチおよび/または回路遮断器を含むバスに接続された分路要素を含むことができる。
【0122】
等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値および随意によるスイッチ状態情報は、第1および第2の線路、第1、第2、および第3のバス、ならびに関連のスイッチおよび/または回路遮断器を含むバスに接続された分路要素を含む第1の線路の近隣から取得されてよい。
【0123】
等価モデルの更新後インピーダンスは、第1および第2の線路、第1、第2、および第3のバス、ならびに関連のスイッチおよび/または回路遮断器を含むバスに接続された分路要素を含む第1の線路の近隣から取得される測定値以外の測定値を必要とすることなく、決定されてよい。
【0124】
測定値(電圧および/または電流測定値など)および/またはスイッチ状態情報は、変電所自動化通信ネットワークを介して受信されてよい。
【0125】
測定値および/またはスイッチ状態情報は、変電所自動化通信プロトコルによるメッセージにて受信されてよい。
【0126】
測定値および/またはスイッチ状態情報は、変電所自動化通信プロトコルによるメッセージにて受信されてよい。
【0127】
測定値および/またはスイッチ状態情報は、IEC 61850によるメッセージ、またはIEC 61850に適合するメッセージにて受信されてよい。
【0128】
測定値および/またはスイッチ状態情報は、IEC 61850:8-1、IEC 61850:8-2、および/またはIEC 61850:9によるメッセージ、あるいはIEC 61850:8-1、IEC 61850:8-2、および/またはIEC 61850:9に適合するメッセージにて受信されてよい。
【0129】
測定値および/またはスイッチ状態情報は、IEC 61850:8-1(2011)、IEC 61850:8-2(2018)、ならびに/あるいはIEC 61850:9(2011)および/またはIEC 61850:9/AMD 1:2020(2020)によるメッセージ、もしくはこれらに適合するメッセージにて受信されてよい。
【0130】
スイッチ状態情報は、スイッチ状態(トリップまたは非トリップなど)の測定値であってよく、あるいはそれらを含むことができる。
【0131】
スイッチ状態情報は、少なくとも1つのインテリジェント電子装置(IED)によって送信され、現時点または迫り来るスイッチ状態(トリップまたは非トリップなど)を表すメッセージであってよく、あるいはそのようなメッセージを含むことができる。スイッチ状態情報を、少なくとも1つのIEDによって送信されるメッセージを解析することによって取得することができる。メッセージは、GOOSEメッセージまたはIEC 61850による他のメッセージであってよい。
【0132】
スイッチ状態情報は、関心対象の線路の末端バスのうちの1つに入射する線路上のスイッチのトリップを示す情報を含むことができる。
【0133】
スイッチ状態情報は、関心対象の線路の末端バスに隣接するバスに接続された分路要素のトリップを示す情報を含むことができる。
【0134】
少なくとも1つのトリップ事象を、スイッチ状態情報に基づいて検出することができ、より具体的には、スイッチ状態の変化(例えば、非トリップからトリップへ)に基づいて検出することができる。
【0135】
等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスは、少なくとも1つのトリップ事象の後の第1の線路の2ポート等価回路の更新後インピーダンスであってよい。
【0136】
少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された等価モデルのインピーダンスは、少なくとも1つのトリップ事象の前の2ポート等価回路の等価モデルのインピーダンスを含むことができる。
【0137】
等価モデルの更新後インピーダンスは、更新後の第1の等価ソースインピーダンス、更新後の第2の等価ソースインピーダンス、および更新後の等価伝達経路インピーダンスを含むことができる。
【0138】
本方法は、測定値を使用してインピーダンス部分行列の少なくとも1つの行列要素を決定し、インピーダンス部分行列の直列および/または分路ブランチ修正を実行して、修正されたインピーダンス部分行列の行列要素を決定し、修正されたインピーダンス部分行列を使用して、2ポート等価回路の等価モデルの更新後インピーダンスを決定することを含むことができる。
【0139】
本方法は、測定値を使用してバスインピーダンス部分行列の少なくとも1つの行列要素を決定し、バスインピーダンス部分行列の直列および/または分路ブランチ修正を実行して、修正されたバスインピーダンス部分行列の行列要素を決定し、修正されたバスインピーダンス部分行列を使用して、2ポート等価回路の等価モデルの更新後インピーダンスを決定することを含むことができる。
【0140】
バスインピーダンス部分行列は、
【0141】
【数15】
【0142】
インピーダンス部分行列要素Znp=Zpnを、測定値を使用して決定することができる。
【0143】
少なくともZmm、Zmn、Znm、およびZnnを、少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた2ポート等価回路の等価モデルのインピーダンスおよび修正計算から決定することができる。
【0144】
本方法は、第2の線路のトリップに応答して等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定することを含むことができる。
【0145】
装置またはシステムが、第2の線路のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、第2の線路のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化の測定値、および第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける第2の線路上の電流(測定されても、計算されてもよい)、および第2の線路のトリップの前の第2の線路の充電電流(計算される)を使用して決定することができる。
【0146】
本方法は、測定値から得られる以下のさらなる量(測定値から計算によって導出される量を含む)、すなわち(i)第2の線路のトリップに応答した第1および第3のバスにおける電圧の変化、または(ii)第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける第2の線路の電流を使用して決定することを含むことができる。
【0147】
本方法は、第2の線路のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、第2の線路のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化の測定値、および第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける第2の線路上の電流(測定されても、計算されてもよい)、ならびに(i)第2の線路のトリップに応答した第1および第3のバスにおける電圧の変化(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)、または(ii)第2の線路のトリップの前の第1のバスにおける第2の線路の電流(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)のみを使用して決定することを含むことができる。
【0148】
本方法は、第2の線路のトリップに応答して、Znp=Zpnを、
【0149】
【数16】
【0150】
を満たすように決定することを含むことができ、
ここで、
【0151】
【数17】
【0152】
であり、
【0153】
【数18】
【0154】
本方法は、ImcおよびIpc
【0155】
【数19】
【0156】
に従って決定することを含むことができる。
本方法は、Imp+Imcを電流測定値から決定することを含むことができる。
【0157】
本方法は、Imp+Imc
【0158】
【数20】
【0159】
本方法は、少なくともZmp、Zpm、およびZppを、少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた2ポート等価回路の等価モデルのインピーダンスおよび修正計算を使用することによって決定することを含むことができる。
【0160】
本方法は、少なくともZmp、Zpm、およびZppを測定値を使用して決定することを含むことができる。
【0161】
本方法は、第2の線路のトリップに応答して、Znp=Zpn、Zmp=ZpmおよびZppを、
【0162】
【数21】
【0163】
を満たすように決定することを含むことができ、
ここで
【0164】
【数22】
【0165】
本方法は、Imp+Imcを電流測定値から決定することを含むことができる。
本方法は、Imp+Imc
【0166】
【数23】
【0167】
本方法は、第3のバスの分路要素のトリップに応答して等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定することを含むことができる。
【0168】
本方法は、第3のバスの分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、分路要素のトリップの前の第3のバスにおける分路要素を通る分路電流(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)、および分路要素のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)を使用して決定することを含むことができる。
【0169】
本方法は、第3のバスの分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、測定値に含まれ、あるいは測定値から計算によって導出される以下の量(使用される他の量が必ずしも実地動作における測定値から決定される必要はないことに注意)、すなわち分路要素のトリップの前の第3のバスの分路要素を通る分路電流、および分路要素のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化のみを使用して決定することを含むことができる。
【0170】
本方法は、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、分路要素のトリップに応答した第1および第3のバスにおける電圧の変化(測定されても、測定値から計算によって導出されてもよい)をさらに使用して決定することを含むことができる。
【0171】
本方法は、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答した等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを、測定値に含まれ、あるいは測定値から計算によって導出される以下の量(使用される他の量が必ずしも実地動作における測定値から決定される必要はないことに注意)、すなわち分路要素のトリップの前の第3のバスの分路要素を通る分路電流(電流測定値から得ることができ、あるいは電圧測定値から計算によって決定することができる)、および分路要素のトリップに応答した第2のバスにおける電圧の変化、および分路要素のトリップに応答した第1および第3のバスにおける電圧の変化の測定値のみを使用して決定することを含むことができる。
【0172】
本方法は、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答して、Znp=Zpnを、
を、
【0173】
【数24】
【0174】
本方法は、分路要素のトリップの前の分路電流測定値からI shを決定することを含むことができる。
【0175】
【数25】
【0176】
本方法は、少なくともZmp、Zpm、およびZppを測定値を使用して決定することを含むことができる。
【0177】
本方法は、第3のバスにおける分路要素のトリップに応答して、Znp=Zpn、Zmp、ZpmおよびZppを、
【0178】
【数26】
【0179】
本方法は、分路要素のトリップの前の分路電流測定値からI shを決定することを含むことができる。
【0180】
【数27】
【0181】
本方法は、修正されたバスインピーダンス部分行列
【0182】
【数28】
【0183】
を、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)から、ノードmおよびpの間およびノードmおよびnの間のブランチを除去することを含む直列ブランチ修正を実行することによって決定することを含むことができる。
【0184】
本方法は、2ポート等価回路の等価モデルの更新後インピーダンスを、
【0185】
【数29】
【0186】
を満たすように決定することを含むことができる。
本方法は、
第2の線路のトリップ、
第3のバスにおける分路要素のトリップ
の少なくとも一方に応答して、等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定することを含むことができる。
【0187】
装置またはシステムは、インターフェースに結合し、等価モデルの少なくとも1つの更新後インピーダンスを決定する少なくとも1つの集積回路を備えることができる。
【0188】
インターフェースは、変電所バスに通信可能に結合することができる。
少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた等価モデルのインピーダンスおよび/またはバスインピーダンス部分行列要素を、記憶装置から取り出すことができる。
【0189】
記憶装置は、等価モデルの更新後インピーダンスを決定する装置またはシステムに統合されてもよく、あるいはそれから分離されてもよい。
【0190】
装置またはシステムは、変電所コンピュータなどの変電所装置または変電所システムであってよい。
【0191】
少なくとも1つの保護機能を実行する方法が、一実施形態の方法を使用して等価モデルの更新後インピーダンスを決定することと、等価モデルの更新後インピーダンスを使用することとを含むことができる。
【0192】
等価モデルの更新後インピーダンスを、
・距離継電、
・適応的継電、
・故障位置の判定(これに限られるわけではないが、シングルエンドの故障位置判定など)、
・システム不均質性係数の決定、
・距離継電器到達判定、
・随意によりフェーザ、重畳量、または進行波に基づく方法を含むシステム保護のための相選択方法の適応的選択、
・短絡率(SCR)の決定、
・過電流継電器協調
のうちの少なくとも1つのために使用することができる。
【0193】
本方法を実行する装置またはシステムは、等価モデルの更新後インピーダンスを使用して少なくとも1つの保護または協調機能を実行するように動作することができる保護または協調システムであってよい。
【0194】
本方法を実行する装置またはシステムは、第2の線路のトリップに応答して第1の線路の2ポート等価回路の等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定することができる。
【0195】
本方法を実行する装置またはシステムは、第3のバスの分路要素のトリップに応答して第1の線路の2ポート等価回路の等価モデルの1つまたは複数の更新後インピーダンスを決定することができる。
【0196】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの処理装置、とくにはデジタル変電所装置またはデジタル変電所システムの少なくとも1つの集積回路によって実行可能な命令コードであって、少なくとも1つの処理装置にいずれかの実施形態による方法を自動的に実行させる命令コードが提供される。
【0197】
本発明の別の態様によれば、命令コードを格納した記憶媒体が提供され、命令コードは、少なくとも1つの処理装置、とくにはデジタル変電所装置またはデジタル変電所システムの少なくとも1つの集積回路によって実行可能であり、少なくとも1つの処理装置にいずれかの実施形態による方法を自動的に実行させる。
【0198】
記憶媒体は、非一時的な記憶媒体であってよい。
実施形態による装置、システム、および方法によって、さまざまな効果および利点が達成される。
【0199】
本装置、システム、および方法は、更新後等価インピーダンスを、線路末端およびトポロジ内の1つ上のレベルのバスにおける変電所および/またはプロセスバスデータを使用して決定することを可能にする。データを、デジタル変電所における測定および通信インフラストラクチャを使用して取得することができる。
【0200】
本装置、システム、および方法は、入射線路のトリップおよび隣接バスにおける分路要素のトリップなどのトポロジに関連する事象の場合に等価インピーダンスの更新を実行することを可能にする。
【0201】
本装置、システム、および方法は、末端バスの短絡レベルおよび関心の線路自体からの故障電流の寄与の情報を必要とすることなく、等価モデルの更新後インピーダンスを決定する。
【0202】
本装置、システム、および方法は、段階的なバス故障についての情報を必要とすることなく、等価モデルの更新後インピーダンスを決定する。
【0203】
本装置、システム、および方法は、完全なネットワークトポロジ情報を必要とすることなく、等価モデルの更新後インピーダンスを決定する。
【0204】
本装置、システム、および方法は、等価モデルの更新後インピーダンスの決定の単純かつ非反復的な実施を可能にする。
【0205】
本装置、システム、および方法は、インピーダンス部分行列の推定において、ベース等価パラメータ、関心対象の伝送線路およびトリップ要素(第2の線路または隣接するバスの分路要素など)のパラメータ、ならびに限られた量の電圧測定値、および随意による電流測定値などの情報を使用し、したがって本技術は変電所レベルに好適である。使用されるパラメータは、具体的には、関心対象の伝送線路およびトリップ要素(第2の線路または隣接するバスの分路要素など)の基本周波数モデル表現のインピーダンスを含むことができ、あるいはそのようなインピーダンスであってよい。
【0206】
実施形態による装置、方法、およびシステムは、三相伝送システムに関連して、とくには再生可能エネルギー源を有する送電網について使用することが可能である。
【0207】
図面の簡単な説明
本発明の主題は、添付の図面に示されている好ましい例示的な実施形態を参照して、さらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0208】
図1】デジタル変電所装置を有する電力システムの概略の部分図である。
図2】電力システムの概略の部分図である。
図3図2の伝送線路の2ポートテブナン等価回路の概略図である。
図4】変電所装置のブロック図である。
図5】一方法のフローチャートである。
図6】入射線路トリップ後の単線図である。
図7】一方法のフローチャートである。
図8】一方法のフローチャートである。
図9】入射線路トリップ前の電流を示す単線図である。
図10図9に示したシステムの等価回路を示す単線図である。
図11】一方法のフローチャートである。
図12】分路要素トリップ後の単線図である。
図13】一方法のフローチャートである。
図14】一方法のフローチャートである。
図15】一方法のフローチャートである。
図16】試験システムの単線図である。
図17】変電所装置の概略の部分図である。
図18】電力システムの概略の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0209】
実施形態の詳細な説明
本発明の例示的な実施形態を、図面を参照して説明するが、図面において、同一または類似の参照符号は、同一または類似の要素を指している。いくつかの実施形態が、の文脈において説明されるが、以下で詳しく説明される方法および装置は、幅広くさまざまなシステムにおいて使用可能である。
【0210】
実施形態の特徴は、とくに明記されない限りは、互いに組み合わせることが可能である。
【0211】
本発明の実施形態によれば、等価モデルのインピーダンス(本明細書において、「等価インピーダンス」とも呼ばれる)のオンライン更新を実行するように動作することができる装置、システム、および方法が提供される。これらの装置、システム、および方法は、伝送線路の2ポートテブナン等価回路の等価インピーダンスのオンライン更新を実行するように動作可能であってよい。
【0212】
これらの装置、システム、および方法は、少なくとも以下の種類のネットワークトポロジの変化に応答して、更新後インピーダンス(伝送線路の2ポートテブナン等価回路における2つの更新後ソースインピーダンスおよび更新後伝送経路インピーダンスなど)を決定するように動作することができる。
【0213】
・関心対象の伝送線路の末端バスの一方に入射する線路のトリップ。
・関心対象の伝送線路の末端バスに隣接するバスに接続された分路要素のトリップ。
【0214】
これらの装置、システム、および方法は、少なくとも1つのトリップ事象の前に取得されたインピーダンスに関する情報(少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された関心対象の伝送線路の2ポートテブナン等価回路のインピーダンスおよび入射伝送線路の2ポートテブナン等価回路のベースインピーダンスなど)を測定値と組み合わせて使用することによってオンライン更新を実行するように動作することができる。関心対象の線路ならびに少なくとも1つの入射線路または分路要素のモデルパラメータも、更新後インピーダンスの決定に使用される。
【0215】
オンライン更新を実行するために必要な測定値は、関心対象の伝送線路の近隣からの測定値である。オンライン更新を実行するために使用される測定値は、関心対象の伝送線路、入射線路、関心対象の伝送線路の末端バス、関心対象の伝送線路の末端バスに隣接するバスの電圧(および、随意により電流)、ならびに関心対象の伝送線路の末端バスおよび/または隣接するバスの分路要素の電流を含み得る。電流測定値は随意である。オンライン更新を実行するために使用される測定値は、関心対象の伝送線路、入射線路、関心対象の伝送線路の末端バス、関心対象の伝送線路の末端バスに隣接するバスにおける電流または電圧、ならびに関心対象の伝送線路の末端バスおよび/または隣接するバスの分路要素の電流に限定され得る。関心対象の伝送線路の近隣のみからの測定値を使用することによって、等価インピーダンスのオンライン更新を、制御センタからの更新を必要とせず、かつ/またはトポロジ変化に応答してネットワーク全体の完全なインピーダンス行列を再計算する必要なく、変電所装置によって実行することができ、あるいは他のかたちで変電所レベルにおいて実行することができる。
【0216】
本明細書において使用されるとき、「測定」という用語は、展開された検出装置の出力に対して処理が実行されることを決して排除しないように理解されるべきである。例示として、本明細書において理解されるように、「電圧変化の測定値」は、電圧測定値から(例えば、トリップ事象の前および後に測定された電圧の差として)計算によって導出される電圧変化を包含することを意図している。
【0217】
更新後インピーダンスを決定するために使用される測定値がもたらされる関心対象の伝送線路の近隣は、関心対象の伝送線路(本明細書において、「第1の伝送線路」とも呼ばれる)、その末端、隣接するバス(本明細書において、「第3のバス」とも呼ばれる)、および入射伝送線路(本明細書において、「第2の伝送線路」とも呼ばれる)、ならびに関連する分路要素、回路遮断器、および/またはスイッチに限定され得る。更新後インピーダンスを、この近隣の外部の測定値を必要とせずに決定することができる。
【0218】
測定値および/またはスイッチ状態情報を、例えばIEC 61850によるメッセージ、またはこれに適合するメッセージなど、変電所自動化通信プロトコルによるメッセージにて受信することができる。測定値および/またはスイッチ状態情報を、IEC 61850:8-1、IEC 61850:8-2、および/またはIEC 61850:9によるメッセージ、あるいはこれらに適合するメッセージにて受信することができる。測定値および/またはスイッチ状態情報を、IEC 61850:8-1(2011)、IEC 61850:8-2(2018)、ならびに/あるいはIEC 61850:9(2011)および/またはIEC 61850:9/AMD 1:2020(2020)によるメッセージ、もしくはこれらに適合するメッセージにて受信することができる。
【0219】
本明細書において使用されるとき、「インピーダンスを決定すること」は、等価モデルのインピーダンスを近似する値の決定を包含すると理解されるべきである。測定値の使用を、関心対象の伝送線路の近隣において利用可能な測定値(変電所レベルのバスデータまたは測定値など)に限定することで、何らかの近似が必要になるが、実施形態による装置、システム、および方法は、誤差がわずかでしかない更新後等価インピーダンスをもたらす。
【0220】
図1は、デジタル変電所装置30を有する電力システム10の概略の部分図である。
電力システム10は、第1のバスMと第2のバスNとの間の第1の伝送線路11を有する。第1の伝送線路11は、バスMおよびNの間に延在するため、本明細書において線路MNとも呼ばれ、あるいは、この第1の伝送線路の等価インピーダンスがトポロジの変更に応答して更新されているため、「関心対象の伝送線路」とも呼ばれる。
【0221】
電力システム10は、第3のバスPと第1のバスMとの間の第2の伝送線路12を有する。一般に、第2の伝送線路12は、第1の伝送線路の末端バスM、Nの一方と、第1の伝送線路の末端バスM、Nの一方に隣接する(例えば、ネットワークの階層における1つ上のレベルの)バスPとの間に延在する任意の伝送線路であってよい。第2の伝送線路12は、本明細書において「入射線路」とも呼ばれる。
【0222】
分路要素21、22、23が、バスP、M、Nに設けられる。分路要素21、22、23は、リアクトル、コンデンサバンク、負荷インピーダンスのいずれか1つまたは任意の組み合わせであってよく、あるいはそれらを含むことができる。
【0223】
電力システム10は、選択的にトリップさせることができる遮断器13~19を有する。遮断器13~19は、変電所装置30に測定値(電流測定値など)を提供するように動作可能であってよい。遮断器13~19は、変電所装置30に状態情報(トリップまたは非トリップ)を提供するように動作可能であってよい。
【0224】
変電所装置30は、変電所レベルにおいて他の装置に通信可能に結合したデジタル変電所装置であってよい。変電所装置30は、変電所通信バスを介してデータを受信および/または送信するように動作可能であってよい。
【0225】
変電所装置30は、トリップ事象に応答して第1の伝送線路11の等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作することができる。変電所装置30は、
・第2の線路12(すなわち、関心対象の伝送線路11の末端バスM、Nの一方に入射する線路)のトリップ;
・関心対象の伝送線路11の末端バスM、Nに隣接するバスPに接続された分路要素21のトリップ
に応答して第1の伝送線路11の等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0226】
変電所装置30は、分路要素22または分路要素23のトリップなどの他のトリップ事象に応答して第1の伝送線路11の等価モデルのインピーダンスの更新を実行するように動作可能であってよい。しかしながら、変電所装置30は、好ましくは、上述の2つの状況において第1の伝送線路11の等価モデルの更新後インピーダンスの決定を少なくとも実行するように動作可能である。
【0227】
トリップ事象、すなわち第1の伝送線路11の近隣におけるネットワークトポロジの変化が、更新プロセスの決定をトリガし得る。更新後インピーダンスを、以下でさらに詳細に説明されるように、保護または協調機能の任意の1つまたは任意の組み合わせに使用することができる。
【0228】
発生したトリップに応じて、さまざまな測定値を使用することができる。更新後インピーダンスを決定するために使用されるすべての測定値を、例えば、第1および第2の線路11、12ならびにバスP、M、N、ならびに関連するスイッチ、回路遮断器、および分路要素から取得することができる。
【0229】
例示のために、本明細書においてさらに充分に説明されるように、第2の線路12のトリップに応答して更新後インピーダンスを決定するために、以下の測定値、すなわち
第2の線路のトリップに応答した第2のバス12における電圧の変化、および
第2の線路のトリップ前の第1のバスMにおける第2の線路12の電流、ならびに
(i)第2の線路12のトリップに応答した第1および第3のバスMおよびPにおける電圧の変化、または(ii)第2の線路12のトリップ前の第1のバスMにおいて測定された第2の線路12の電流
を使用することができる。
【0230】
さらなる例示のために、第3のバスPにおける分路要素のトリップに応答して更新後インピーダンスを決定するために、以下の測定値、すなわち
分路要素のトリップ前の第3のバスPの分路要素を通る分路電流、および分路要素のトリップに応答した第2のバスNにおける電圧の変化
を使用することができ、随意により分路要素のトリップに応答した第1および第3のバスM、Pにおける電圧の変化の測定値を使用することができる。
【0231】
本開示の技術は、インピーダンスの更新を実行するために、他の量のオンライン測定を必要とせずに機能する。本開示の技術は、電流測定値を必要とせず、あるいは使用せずに、更新後インピーダンスを決定するように動作可能である。電流を計算によって決定することができる。
【0232】
図2は、本明細書において詳細に説明される更新プロセスの対象の電力システム10の一部分を示している。末端バスM、Nの間の第1の伝送線路11が、等価モデルによって表されており、変電所装置30は、トリップ事象に応答して等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作することができる。概略的にのみ示されている電力システムの残りの部分29が、さまざまな追加の伝送線路、バス、などを含むことが理解されよう。本明細書に記載のインピーダンスの更新は、トリップされていない状態のシステムに対応する等価モデルのインピーダンス値、第1の伝送線路11の近隣のみからの測定値、および第1の伝送線路11の近隣のみからのトポロジ情報を使用する。本明細書に記載のインピーダンスの更新は、第3のバスPおよびその分路要素よりも向こうに配置された電力システム部分のトポロジ情報を必要としない。
【0233】
図3は、第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価回路を示している。等価システムは、それぞれのインピーダンスZsMおよびZsNを有する2つのソースで構成される。さらに、ブランチMN自体を通る直接の経路(インピーダンスZによって表される)を除くバスMおよびNの間の電流の流れに関するネットワークの等価回路を表すインピーダンスZtr MNを有する伝送経路が存在し得る。
【0234】
第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価回路の更新後インピーダンスを決定することは、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後の値を決定することを含む。2ポートテブナン等価回路のインピーダンスのベース値、すなわちベースネットワーク(第2の伝送線路12のトリップがなく、バスPの分路要素のトリップがない)の{ZsM,ZsN,Ztr MN}の値が、更新後インピーダンスを決定する際に使用される。
【0235】
図3には第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価モデルが示されているが、第2の伝送線路12の2ポートテブナン等価回路は、同様のパラメータ{ZsM,ZsP,Ztr MP}を有する。
【0236】
本明細書においてさらに詳細に説明されるように、変電所装置30は、
・少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsN,Ztr MN}(すなわち、初期の未トリップのシステムのインピーダンス)、
・トリップ事象に応答した第2のバスNにおける電圧の変化の測定値、
・トリップ事象前の第1のバスMおよび第3のバスPにおける電圧の測定値
を使用し、
・随意により少なくとも以下の測定値、すなわち
(i)第2の伝送線路12のトリップに応答してインピーダンスを更新する場合の測定値から得られた第2の線路のトリップ前の第1のバスMにおける第2の伝送線路12上の電流、
(ii)分路要素21のトリップに応答してインピーダンスを更新する場合の第3のバスPにおける分路要素21のトリップ前の分路要素電流の測定値
を使用し、
・少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた第2の伝送線路12の2ポートテブナン等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsP,Ztr MP}(すなわち、初期の未トリップのシステムのインピーダンス)、またはトリップ事象に応答した第1のバスMおよび第3のバスPにおける電圧の変化の測定値
を使用するように動作可能であってよい。
【0237】
少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsN,Ztr MN}、および少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された第2の伝送線路12の2ポートテブナン等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsP,Ztr MP}(使用される場合)は、完全なネットワーク解析(すなわち、図1図3に示したバスの向こうに接続された電力システム部分を含む)から取得されたインピーダンス値である。
【0238】
実地動作の最中に更新後インピーダンスを決定する装置またはシステムは、非トリップ状態のシステムのインピーダンス(または、ベースインピーダンス)を入力として受信することができる。この入力を、トリップ事象にそれぞれ応答して実地動作の最中にインピーダンスを何度も決定し直す場合に、再び受信する必要はない。非トリップ状態のシステムのインピーダンス(または、ベースインピーダンス)を、実地動作中の更新後インピーダンスを決定する装置またはシステムに、永続的に保存することができる。
【0239】
例示のために、第1のトリップ事象(第1の入射線路トリップまたは第1の分路要素トリップなど)に応答した実地動作の最中の第1の修正後インピーダンスの決定、および第1のトリップ事象に続く第2のトリップ事象(第2の入射線路トリップまたは第2の分路要素トリップなど)に応答した実地動作の最中の第2の更新後インピーダンスの決定を、制御センタなどからインピーダンスを再度受信することを必要とせずに、実行することができる。
【0240】
第3のバスの分路要素のトリップ(第1のトリップ事象)後の第2の線路のトリップ(第2のトリップ事象)の場合に、(トリップ事象後の)2ポートテブナン等価インピーダンスの更新値を、その後のインピーダンス更新決定(必要な場合)のベースインピーダンスとして使用することができる。
【0241】
ユーザまたはオペレータは、非トリップ状態のシステムのインピーダンス(または、ベースインピーダンス)を、そのようなインピーダンスをネットワークトポロジの全データへのアクセスに基づいて計算できるはずである制御センタ(地域の制御センタまたは主制御センタであってよい)から、1回限りの学習として得ることができる。非トリップ状態のシステムのインピーダンス(または、ベースインピーダンス)を検索して、更新後インピーダンスを決定する装置またはシステムに提供することを、実地動作の前(例えば、変電所の試運転時など、更新後インピーダンスを決定するIEDまたはシステムの試運転時)に行うことができ、あるいは装置またはシステムが実地動作に入った後のシステムメンテナンスの際に行うことができる。
【0242】
次いで、実地動作の最中に決定された(トリップ事象後の)2ポートテブナン等価インピーダンスの更新値を、その後の更新(必要な場合)のためのベースインピーダンスとして使用することができる。
【0243】
結果として、変電所装置30は、第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後の値を決定する。
【0244】
更新後インピーダンスを、解析、保護、および/または協調機能を含むさまざまな目的に使用することができる。例示のために、更新後インピーダンスを、
・距離継電器の性能を改善すること、
・(とくには距離中継のための)適応設定機能を可能にすること、
・シングルエンド故障位置判定を実行すること、
・システム不均質性係数を計算すること、
・距離継電器到達計算、
・再生可能エネルギーの多いシステムを保護するために異なる相選択方法(フェーザまたは重畳量または進行波に基づく)を適応的に切り替えること(ソースインピーダンス情報を適応的な切り替えに使用することができる)、
・短絡比(SCR)を計算すること、
・過電流継電器協調
のいずれか1つまたは任意の組み合わせに使用することができる。
【0245】
図4は、一実施形態による変電所装置またはシステム30のブロック図である。変電所装置またはシステム30は、測定値を受信し、随意により他のデータを受信するように動作することができる第1のインターフェース38を有する。第1のインターフェース38は、遮断器状態情報および電流測定値を受信するために遮断器に通信可能に結合するように動作可能であってよい。第1のインターフェース38は、遮断器状態情報および電流測定値を受信するために遮断器に通信可能に結合するように動作可能であってよい。
【0246】
第1のインターフェース38は、トリップ事象の前および後の第2のバスNにおける電圧の測定値、またはトリップ事象に応答した第2のバスNにおける電圧の変化の決定を変電所装置またはシステム30にとって可能にする他の測定値を受信するように動作可能であってよい。
【0247】
第1のインターフェース38は、第2の線路12のトリップの前の第2の伝送線路12の充電電流、または第2の線路12のトリップの前の第2の伝送線路12の充電電流の決定を変電所装置またはシステム30にとって可能にする他の測定値を受信するように動作可能であってよい。変電所装置またはシステム30は、これらの測定値を処理して、第2の伝送線路12のトリップに応答した更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0248】
第1のインターフェース38は、分路要素21のトリップの前の分路要素21を通る分路要素電流を受信するように動作可能であってよい。変電所装置またはシステム30は、これらの測定値を処理して、分路要素21のトリップに応答した更新後インピーダンスを決定するように動作可能であってよい。
【0249】
第1のインターフェース38は、随意により、トリップ事象の前および後の第1および第3のバスM、Pにおける電圧の測定値、またはトリップ事象に応答した第1および第3のバスM、Pにおける電圧の変化の決定を変電所装置またはシステム30にとって可能にする他の測定値を受信するように動作可能であってよい。
【0250】
変電所装置またはシステム30は、処理機能を実行する1つまたは複数の集積回路(IC)31を有する。1つまたは複数のIC 31は、プロセッサ、マイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0251】
IC 31は、インピーダンス更新モジュール32を実装するように動作することができる。インピーダンス更新モジュール32は、本明細書に開示の処理技術のいずれかを使用し、トリップ事象に応答して第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後の値を決定することができる。
【0252】
IC 31は、解析、保護、または協調機能33を実装するように動作可能であってよい。この機能は、変電所装置30とは別に実装されてもよい。解析、保護、または協調機能33は、保護機能、とくには距離保護機能を実行するように動作可能であってよい。解析、保護、または協調機能33は、(とくには適応的な距離中継のための)適応的設定、シングルエンド故障位置判定の実行、システム不均質性係数の計算、距離継電器到達計算、再生可能エネルギーの多いシステムを保護するための異なる相選択方法(フェーザまたは重畳量または進行波に基づく)の適応的切り替え、短絡比(SCR)の計算、過電流継電器協調のいずれか1つまたは任意の組み合わせなどの種々の機能を実行する動作可能であってよい。
【0253】
IC 31は、決定されたアクションの実行、決定された設定の適用、または決定された情報の出力を生じさせるために、少なくとも1つの第2のインターフェース39を介して信号またはコマンドを発するように動作可能であってよい。
【0254】
IC 31は、出力生成モジュール34を実装するように動作可能であってよい。出力生成モジュール34は、出力(アラーム、警告、通知、または他の情報)をオペレータ、例えば変電所オペレータに出力させることができる。
【0255】
少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された第1の伝送線路11の等価モデルのインピーダンス{ZsM,ZsN,Ztr MN}、直接接続MNの線路インピーダンスZ図3を参照)、ならびに該当する場合には、少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された第2の伝送線路12の等価モデルのインピーダンス{ZsM,ZsP,Ztr MP}、直接接続MPの線路インピーダンスZ(このインピーダンスが直接接続MNの線路インピーダンスとは異なり得ることに留意されたい)、およびトリップ可能な分路要素のインピーダンスに関する情報を、記憶装置35に記憶でき、IC 31による処理のために記憶装置35から取り出すことができる。記憶装置35は、変電所装置30に統合されても、別に設けられてもよい。
【0256】
図5は、方法40のフローチャートである。方法40は、変電所装置またはシステム30によって自動的に実行されてよい。
【0257】
ステップ41において、測定値が受信される。測定値は、電圧測定値を含み得る。電圧測定値は、トリップ事象に応答したバスN、M、およびPのうちの1つまたは複数における電圧の変化を含むことができる。電圧の変化の決定は、変電所装置またはシステム30によって実行されても、または別個のエンティティによって実行されてもよい。
【0258】
ステップ42において、インピーダンス部分行列の行列要素が決定される。インピーダンス部分行列は、3×3の行列であってよい。インピーダンス部分行列は、バスインピーダンス行列の3×3の部分行列であってよい。インピーダンス部分行列の行列要素のいくつかを、少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価回路のインピーダンス値{ZsM,ZsN,Ztr MN}から決定することができる。インピーダンス部分行列の行列要素の少なくとも1つを、受信した測定値を使用して決定することができる。インピーダンス部分行列の残りの行列要素を、少なくとも1つのトリップ事象の前に取得された第2の伝送線路12の2ポートテブナン等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsP,Ztr MP}から決定することができ、あるいは受信した測定値を使用して決定することができる。
【0259】
ステップ43において、第1の伝送線路11の2ポートテブナン等価回路の更新後インピーダンス{ZsM,ZsN,Ztr MN}が、ステップ42で決定されたインピーダンス部分行列を使用して決定される。
【0260】
ステップ44において、解析、保護、および/または協調機能を実行するために、更新後インピーダンスに基づいて出力が生成される。
【0261】
本方法は、解析、保護、および/または協調機能を実行することを含むことができる。解析、保護、および/または協調機能は、(とくには適応的な距離中継のための)適応的設定、シングルエンド故障位置判定の実行、システム不均質性係数の計算、距離継電器到達計算、再生可能エネルギーの多いシステムを保護するための異なる相選択方法(フェーザまたは重畳量または進行波に基づく)の適応的切り替え、短絡比(SCR)の計算、過電流継電器協調のいずれか1つまたは任意の組み合わせを含むことができる。
【0262】
本装置または方法は、2ポート等価回路のオンライン更新を提供するために、変電所レベル測定値の近隣のみからのオンライン情報しか必要としない。本装置または方法は、関心対象の線路に隣接する線路およびバスの情報、すなわち隣接トポロジのネットワーク情報を使用して、関心対象の線路の2ポート等価モデルを更新する。関心対象の線路の近隣におけるトポロジ変化の影響を、その2ポート等価回路を更新することによって考慮することができる。
【0263】
本装置または方法は、関心の線路11の一方の末端バスMに入射する線路12のトリップオフ、またはトポロジにおける1つ上のレベルのバスP(すなわち、隣接バス)の分路要素21(リアクトル/コンデンサ)のトリップオフを考慮する。本装置または方法は、電力システム10全体のバスインピーダンス行列ZBUSの更新を必要とすることなくインピーダンスの更新を実行し、変電所プロセスバスレベルの測定値およびデータとして利用可能であり得るローカル更新情報だけしか使用しない。このローカル測定値およびデータは、関心の線路の両端におけるバス電圧測定値、末端バスに入射する線路上の電流、接続された分路要素を通る電流、ならびに線路および近隣の要素、すなわち入射線路および隣接する分路要素のモデルパラメータであってよい。本装置または方法は、2ポート等価回路を更新するために、切り替え事象に関する測定値ならびに関心の線路およびトリップされた要素のパラメータを利用することができる。電流測定値は随意である。例示として、本明細書においてさらに詳述されるように、電流を計算することもできる。
【0264】
本装置または方法は、伝送線路11の両端およびネットワーク内の1つ上のレベルの変電所におけるデジタル変電所測定値を利用することができる。例えば、関心対象の線路がバスMおよびNの間の線路11である図1図3のシステムの場合、変電所デバイス30は、変電所M、N、およびPからの測定値にアクセスする。記号Pは、関心対象の線路11に対してネットワークトポロジ内で1つ上のレベルにある任意のバスを示す。関心対象の線路およびすべての入射要素(例えば、末端バスの一方に入射する線路およびネットワークトポロジ内の1つ上のレベルのバスに接続された分路要素)のモデルパラメータも、変電所装置30において利用可能である。
【0265】
本装置または方法は、インピーダンス部分行列の行列要素を決定し、あるいは他のかたちで処理することができる。インピーダンス部分行列は、電力ネットワークの完全なインピーダンス行列Zbusの部分行列であってよい。
【0266】
本装置または方法は、電力ネットワーク全体のバスインピーダンス行列Zbusの以下の部分行列、すなわち
【0267】
【数30】
【0268】
線MNを含まない(すなわち、図3のインピーダンスZを含まない)2ポート等価ネットワーク(図3)のアドミタンス行列Ybusを、
【0269】
【数31】
【0270】
によって表すことができる。
インピーダンス部分行列からの2ポート等価回路の更新後インピーダンスの依存性
上記の関係から、ベースネットワークにおける線路MおよびNの2ポート等価回路のインピーダンスを、
【0271】
【数32】
【0272】
として得ることができる。
これを、トリップされた要素が除去されたネットワークに拡張し、修正されたネットワークにおける線路MおよびNの2ポート等価回路を、
【0273】
【数33】
【0274】
として得ることができる。
したがって、本装置または方法は、インピーダンス部分行列Z(mnp)′′を確立でき、式(4)を使用して伝送線路11の2ポート等価モデルの更新後インピーダンスを決定することができる。
【0275】
Z(mnp),Z(mnp) およびZ(mnp) ′′ の要素間の関係の使用
Z(mnp),Z(mnp)およびZ(mnp)′′の要素は関連している。これは、Z(mnp)について直列および分路ブランチ(線路MNの直列インピーダンスおよび分路アドミタンスに対応する)の修正を行うことによってZ(mnp)からZ(mnp)を得ることができるからである。
【0276】
ノードi、j、およびkに対応するネットワークインピーダンス部分行列Z(ijk)は、以下の式(5)によって与えられる。
【0277】
【数34】
【0278】
インピーダンスZbrを有する新たなブランチがバスiおよびjの間に直列にネットワークへと追加される場合、新たなZ(ijk)部分行列を、以下の式
【0279】
【数35】
【0280】
インピーダンスZshの分路要素がバスiにおいてネットワークに追加されるとき、新たなZ(ijk)部分行列を、以下の式
【0281】
【数36】
【0282】
直列(6)および分路ブランチ(7)の修正に関する式を、Z(mnp)からZ(mnp)′′を決定するために、実施形態による変電所装置および方法によって使用することができる。
【0283】
実施形態による変電所装置および方法は、
【0284】
【数37】
【0285】
ように動作可能であってよい。
インピーダンス部分行列Z(mnp)の要素の取得:
【0286】
【数38】
【0287】
関係(3)の結果として、パラメータセット{ZsM、sN、tr MN}(第1の伝送線路11の2ポート等価回路のインピーダンス)がベースネットワーク(すなわち、トリップ事象の前)について既知である場合、要素Zmm 、Zmn 、Znm およびZnn を、以下の式(8)
【0288】
【数39】
【0289】
に従って得ることができ、
ここで、
【0290】
【数40】
【0291】
である。
【0292】
【数41】
【0293】
図7は、方法50のフローチャートである。本方法は、装置30によって自動的に実行されてよい。
【0294】
ステップ51において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素が取得される。行列要素を、{ZsM,ZsN,Ztr MN}および随意により{ZsM,ZsP,Ztr MP}の初期パラメータセット、ならびに線路のパラメータ(分路インピーダンスなど)から取得することができる。
【0295】
ステップ52において、行列要素Znp=Zpnを、変電所バスレベルで入手可能な測定値を使用して決定することができる。これらの行列要素を決定するための実装形態は、以下で詳述される。
【0296】
ステップ53において、インピーダンス部分行列Z(mnp)′′が、修正計算(式(6)および(7))を実行することによってインピーダンス部分行列Z(mnp)から決定される。
【0297】
ステップ54において、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットが、式(4)に従ってインピーダンス部分行列Z(mnp)′′から決定される。
【0298】
本方法は、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットに基づいて解析、保護、または協調機能を実行することをさらに含むことができる。
【0299】
入射線路トリップの場合のZnpおよび更新後インピーダンス値の決定
この状況は、システムが(準)定常状態で動作しており、何らかの事象(例えば、短絡故障)の結果として、第2の伝送線路12(すなわち、バスMP間の線路)がトリップされて、システムが新たな動作状態となる状況に相当する。この新たな動作状態において、第1の線路11、すなわちバスMN間の伝送線路の2ポート等価パラメータが変化しており、更新されなければならない。図6は、トリップ後の単線図を示している。
【0300】
行列要素Znp=Zpnの決定は、以下の入力のうちの1つ、複数、またはすべてを使用することができる。
【0301】
(i)少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた第1の伝送線路11の2ポート等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsN,Ztr MN}(すなわち、トリップ前の初期インピーダンス)と、随意により、少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた第2の伝送線路12の2ポート等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsP,Ztr MP}(すなわち、トリップ前の初期インピーダンス)、
(ii)第2のバスNにおける電圧測定値と、随意により、バスMおよびPにおける電圧測定値、
(iii)随意により、第1のバスMにおける入射線路MP(すなわち、第2の線路12)の電流測定値、
(iv)バスMおよびNの間の第1の線路11ならびに/あるいはバスMおよびPの間の第2の線路12のパラメータ(トリップされた第2の線路12における分路要素の分路要素インピーダンスなど)、
(v)入射線路MP(すなわち、第2の線路12)の遮断器状態信号。
【0302】
【数42】
【0303】
線路MP上の電流を、図9に示されるように、線路MPがネットワーク内に物理的に存在しないシステムのバスMおよびPにおける電流注入と考えることができる。
【0304】
図9において、ImpおよびIpmは線路MPの負荷電流である。Imcは、バスMにおける線路MPの充電電流である。Impは、バスPにおける線路MPの充電電流である。
【0305】
したがって、図10に示されるように、線路MPのトリップを、線路MPのないシステムのバスMおよびバスPにおける電流注入の変化と考えることができる。したがって、線路MPのトリップについて、バスNにおける電圧変化(すなわち、トリップの前および後の電圧の間の差)を以下のように記述することができる。
【0306】
【数43】
【0307】
電流を、以下の関係
【0308】
【数44】
【0309】
得られた式は、本質的に線形であり、以下に従ってZpnを見つけるために便利に解くことができる。
【0310】
【数45】
【0311】
ここで、
【0312】
【数46】
【0313】
であり、ここで
【0314】
【数47】
【0315】
計算される電流は、式(E1)および(E2)を参照して上述したように計算することが可能である。
【0316】
少なくともZmp、Zpm、およびZppを、少なくとも1つのトリップ事象の前に得られた2ポート等価回路の等価モデルのインピーダンスおよび修正計算(式(6))を使用して決定することができる。
【0317】
入射線路トリップの場合の更新後インピーダンス値の決定(第1の技術)
したがって、一実施形態による装置または方法は、入射線路トリップの場合の更新後インピーダンス値を、以下のように決定することができる。
【0318】
・トリップ事象の前のベースネットワーク内の第1の線路11(線路MN)の2ポート等価回路のインピーダンスパラメータ、および線路MNの追加に関する修正計算を使用することによって、Z(mn)(すなわち、Zmm、Znn、およびZmn=Znm)を取得する(式(5)および(6))。
【0319】
・ベースネットワークにおける入射線路12(すなわち、線路MP)の2ポート等価回路のインピーダンスパラメータ、および線路MPの追加に関する修正計算を使用することによって、、Z(mp)(すなわち、ZppおよびZmp=Zpm)を取得する(式(5)および(6))。
【0320】
・線路トリップの前にバスM、Pにおいて測定された電圧を取得し、式(E1)、したがって充電電流の合計を使用して、入射線路12(すなわち、線路MP)上の充電電流を計算し、トリップ前にバスMにおいて入射線路12上で測定された電流を取得または(E2)を使用して計算する。
【0321】
【数48】
【0322】
図8は、方法60のフローチャートである。本方法は、装置30によって自動的に実行されてよい。
【0323】
ステップ61において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素Zmm、Znn、およびZmn=Znmが取得される。行列要素は、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の初期パラメータセット、線路MNの線路インピーダンスZ、および式(6)の修正計算から取得することができる。
【0324】
ステップ62において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素Zpp、およびZmp=Zpmが取得される。行列要素を、{ZsM,ZsP,Ztr MP}の初期パラメータセット、および線路MPのパラメータ(線路インピーダンスZ など)から取得することができる。
【0325】
ステップ63において、行列要素Znp=Zpnを、例えば式(10)に基づいて、変電所バスレベルで入手可能な測定値を使用して決定することができる。
【0326】
ステップ64において、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットが決定される。これは、修正計算(式(6)および(7))を実行することによってインピーダンス部分行列Z(mnp)からインピーダンス部分行列Z(mnp)′′を決定すること、および式(4)に従ってインピーダンス部分行列Z(mnp)′′から{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットを決定することを含むことができる。
【0327】
本方法は、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットに基づいて解析、保護、または協調機能を実行することをさらに含むことができる。
【0328】
入射線路トリップの場合の更新後インピーダンス値の決定(第2の技術)
{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットを決定するために、上述の測定値の処理について、さまざまな修正が可能である。
【0329】
例示のために、式(9)と同様に、同様の表現をバスMおよびPについて以下のように導出することができる。
【0330】
【数49】
【0331】
計算される電流は、式(E1)および(E2)を参照して上述したように計算することが可能である。
【0332】
線路MP上の負荷電流に対する充電電流の比が小さい場合、式(9)、(11)、および(12)を以下のように近似することができる。
【0333】
【数50】
【0334】
線路MPをインピーダンスZ の直列ブランチとしてのみ考え(分路アドミタンスはすでに無視できると仮定されているため)、Z(mnp)およびZ(mnp)′の要素間の以下の関係が得られる。
【0335】
【数51】
【0336】
式(13)および(14)を同時に解いて、以下の(15)に示されるように(Zmm-Zmp),(Znm-Znp)および(Zpm-Zpp)を得ることができる。
【0337】
【数52】
【0338】
したがって、一実施形態による装置または方法は、入射線路トリップの場合の更新後インピーダンス値を、以下のように決定することができる。
【0339】
【数53】
【0340】
図11は、方法70のフローチャートである。本方法は、装置30によって自動的に実行されてよい。
【0341】
ステップ71において、バスインピーダンス部分行列、Z(mnp)の行列要素Zmm、Znn、およびZmn=Znmが取得される。行列要素は、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の初期パラメータセット、線路MNの線路インピーダンスZ、および式(6)の修正計算から取得することができる。
【0342】
ステップ72において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素Zpp、Zmp=ZpmおよびZnp=Zpnが、例えば式(15)に基づいて、変電所バスレベルで入手可能な測定値を使用して決定される。
【0343】
ステップ73において、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットが決定される。これは、修正計算(式(6)および(7))を実行することによってインピーダンス部分行列Z(mnp)からインピーダンス部分行列Z(mnp)′′を決定すること、および式(4)に従ってインピーダンス部分行列Z(mnp)′′から{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットを決定することを含むことができる。
【0344】
本方法は、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットに基づいて解析、保護、または協調機能を実行することをさらに含むことができる。
【0345】
試験システムへの適用
検討される試験システムは、IEEE 39バスNET-NYPSシステム(http://forum.hvdc.ca/1598644/IEEE-Test-Systemsで入手可能なManitoba HVDC Research CentreのIEEE Test Systems)である。単線図が図16に示されている。このシステムは、10個のソース、39個のバス、34本の伝送線路、12個の変圧器、および19個の負荷で構成される。伝送線路は、Bergeronのモデルによって表される。この例示について、以下の場合を考える。線路MN=17-16、線路MP=17-27。図7図10を参照して説明した方法(式(10)の使用を含む)を使用して、図16の線路17-16の2ポート等価回路を更新する。ベース等価インピーダンスパラメータが、ベースネットワークの全体ネットワーク解析手法によって取得される。得られた結果は、修正後のネットワークの全体ネットワーク解析によって得られた等価回路と比較される。ステップバイステップの解析を以下に示す。
【0346】
1.ベースネットワークにおける線路MNの2ポート等価回路のインピーダンスパラメータ、および線路MNの追加に関する修正計算を使用することによって、Z(mn)を求める。線路MNのベース等価インピーダンスパラメータは、
【0347】
【数54】
【0348】
である。式(5)を使用して、
【0349】
【数55】
【0350】
が得られる。以下に示されるように、バスMおよびNの間の直列インピーダンスZを有する線路MNの追加に関するZ(mn)′についての修正計算を実行することによって、Z(mn)が決定される。
【0351】
【数56】
【0352】
2.同様の決定が、線路MPについて、線路MPのベース等価回路インピーダンスパラメータ、および(直列ブランチおよび分路アドミッタンスブランチの両方を有すると考えられる)線路MPの追加に関する修正計算を使用して実行され、
【0353】
【数57】
【0354】
が得られる。
3.(試験のためにシミュレートされた)測定値から、バスNの電圧の変化、トリップされた線路MPのトリップ前のバスM端における線路MP上の電流、および負荷電流に対する充電電流の合計の比は、以下のとおりである。
【0355】
【数58】
【0356】
4.Zpnが、式(10)を使用することによって求められ、Z(mnp)が、Z(mn)、Z(mp)およびZ(pn)を突き合わせることによって構築される。
【0357】
【数59】
【0358】
5.得られたZ(mnp)から、線路MNの影響が下記に示されるように除去される。
【0359】
【数60】
【0360】
が得られる。
6.次いで、式(4)を使用して、線路MNの更新後等価インピーダンスを得る。
【0361】
【数61】
【0362】
比較のために、修正後のネットワークについてネットワーク解析から得られた(すなわち、ネットワーク全体のバスインピーダンス行列の再計算に基づいて得られた)等価インピーダンスは、以下のとおりである。
【0363】
【数62】
【0364】
ステップ6から得られた結果を上述の実際の値と比較すると、推定におけるパーセント誤差は以下のとおりである。
【0365】
【数63】
【0366】
このように、ネットワーク全体のバスインピーダンス行列の再計算に頼らずに、ローカル測定値のみを使用する場合であっても、良好な結果が得られる。
【0367】
分路要素トリップの場合のZnpおよび更新後インピーダンス値の決定
この状況は、システムが(準)定常状態で動作しており、分路要素22(例えば、リアクトル/コンデンサ)がバスPにおいてトリップされて、システムが新たな動作状態になる状況に相当する。この新たな動作状態において、線路MNの2ポート等価パラメータが変化しており、これらを推定すべきである。図12は、この状態を示している。
【0368】
行列要素Znp=Zpnの決定は、以下の入力のうちの1つ、複数、またはすべてを使用することができる。
【0369】
(i)トリップ事象の前の第1の伝送線路11の2ポート等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsN,Ztr MN}(すなわち、トリップ前の初期インピーダンス)と、随意により、トリップ事象の前の第2の伝送線路12の2ポート等価回路のインピーダンス{ZsM,ZsP,Ztr MP}(すなわち、トリップ前の初期インピーダンス)、
(ii)第2のバスNにおける電圧測定値と、随意により、バスMおよびPにおける電圧測定値、
(iii)バスPにおける分路要素22の電流測定値およびインピーダンスパラメータ(電流測定値は随意である)、
(iv)バスMおよびNの間の第1の線路11ならびに/あるいはバスMおよびPの間の第2の線路12のパラメータ(線路インピーダンスZおよびZ など)、
(v)分路要素22の遮断器状態信号。
【0370】
図13は、方法80のフローチャートである。本方法は、装置30によって自動的に実行されてよい。
【0371】
ステップ81において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素が取得される。行列要素を、{ZsM,ZsN,Ztr MN}および随意により{ZsM,ZsP,Ztr MP}の初期パラメータセット、ならびに線路のパラメータ(分路インピーダンスなど)から取得することができる。
【0372】
ステップ82において、行列要素Znp=Zpnを、変電所バスレベルで入手可能な測定値を使用して決定することができる。これらの行列要素を決定するための実装形態は、以下で詳述される。
【0373】
ステップ83において、インピーダンス部分行列Z(mnp)′′が、修正計算(式(6)および(7))を実行することによってインピーダンス部分行列Z(mnp)から決定される。修正計算は、バスPにおける分路要素22ならびにバスMおよびNの間の第1の線路11を除去することを含む。
【0374】
ステップ84において、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットが、式(4)に従ってインピーダンス部分行列Z(mnp)′′から決定される。
【0375】
本方法は、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットに基づいて解析、保護、または協調機能を実行することをさらに含むことができる。
【0376】
以下が、提案される装置によって実行される処理の説明であり、インピーダンス部分行列Z(mnp)′が、ベースネットワークから(インピーダンスZshの)バスPにおける分路要素が除去されたネットワークに対応する。インピーダンス部分行列Z(mnp)′′は、線路MNがさらに除去されたネットワークに対応する。バスPにおける分路要素上の電流(I sh)を、分路要素がネットワーク内に物理的に存在しないシステムのバスPにおける電流注入と考えることができる。したがって、分路要素22のトリップを、バスPの分路要素が存在しないシステムのバスPにおける電流注入の変化と考えることができる。
【0377】
バスPにおける分路要素のトリップについて、バスNにおける電圧変化を、以下の式によって表すことができる。
【0378】
【数64】
【0379】
電流I shを直接測定することができる。
電流I shを以下の式(E3)のように計算してもよく、これにより、本技術は、いかなる電流測定値も使用することなく、更新後インピーダンスを決定できるようになる。
【0380】
【数65】
【0381】
インピーダンス部分行列Z(mnp)′の要素は、バスPにおける分路要素に関係する分路ブランチの修正によってZ(mnp)の要素に関連する。具体的には、以下の関係が当てはまる。
【0382】
【数66】
【0383】
これは、バスPにおける分路ブランチの除去に関する修正計算によって得られる。式(15)および(16)を解いて、Zpnを以下の式(17)に示されるように決定することができる。
【0384】
【数67】
【0385】
分路要素トリップの場合の更新後インピーダンス値の決定(第1の技術)
したがって、一実施形態による装置または方法は、入射線路トリップの場合の更新後インピーダンス値を、以下のように決定することができる。
【0386】
・ベースネットワーク内の線路MNの2ポート等価回路のインピーダンスパラメータ、および線路MNの追加に関する修正計算を使用することによって、Z(mn)を取得する。
【0387】
・ベースネットワーク内の線路MPの2ポート等価回路のインピーダンスパラメータ、および線路MPの追加に関する修正計算を使用することによって、Z(mp)を取得する。
【0388】
・バスPにおける分路要素トリップに起因するバスNの電圧の変化を測定値から取得し、トリップ前の分路要素を通る電流を(電流測定値または例えば式(E3)を用いた計算による電圧測定値からの導出のいずれかによって)取得する。
【0389】
【数68】
【0390】
図14は、方法90のフローチャートである。本方法は、装置30によって自動的に実行されてよい。
【0391】
ステップ91において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素Zmm、Znn、およびZmn=Znmが取得される。行列要素を、式(6)および(7)の修正計算を使用して、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の初期パラメータセットから取得することができる。
【0392】
ステップ92において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素Zpp、およびZmp=Zpmが取得される。行列要素を、式(6)および(7)の修正計算を使用して、{ZsM,ZsP,Ztr MP}の初期パラメータセットから取得することができる。
【0393】
ステップ93において、行列要素Znp=Zpnを、例えば式(17)に基づいて、変電所バスレベルで入手可能な測定値を使用して決定することができる。
【0394】
ステップ94において、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットが決定される。これは、修正計算(式(6)および(7))を実行することによってインピーダンス部分行列Z(mnp)からインピーダンス部分行列Z(mnp)′′を決定すること、および式(4)に従ってインピーダンス部分行列Z(mnp)′′から{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットを決定することを含むことができる。
【0395】
本方法は、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットに基づいて解析、保護、または協調機能を実行することをさらに含むことができる。
【0396】
分路要素トリップの場合の更新後インピーダンス値の決定(第2の技術)
あるいは、装置および方法は、2ポート等価回路の更新後インピーダンスを、トリップ事象の前の線路MPの2ポート等価回路のインピーダンスに関する情報を必要とせずに決定することができる。この場合、Zpnに加えて、ZmpおよびZppも測定値から決定することができる。例えば、以下の関係を使用することができる。
【0397】
【数69】
【0398】
装置および方法は、式(18)を使用してZppを決定することができる。得られたZppの値を使用して、ZmpおよびZnpについて式(17)および(18)をそれぞれ解くことができる。したがって、更新後ソースインピーダンスを、より少ないベース情報で、とくにはトリップ事象の前の線路MPの2ポート等価回路のインピーダンスを必要とせずに得ることができる。しかしながら、装置および方法は、分路要素のトリップに応答したバスPおよびMからの測定値を必要とする。
【0399】
したがって、一実施形態による装置または方法は、入射線路トリップの場合の更新後インピーダンス値を、以下のように決定することができる。
【0400】
【数70】
【0401】
図15は、方法100のフローチャートである。本方法は、装置30によって自動的に実行されてよい。
【0402】
ステップ101において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素Zmm、Znn、およびZmn=Znmが取得される。行列要素を、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の初期パラメータセットおよび式(6)、(7)の修正計算から取得することができる。
【0403】
ステップ102において、バスインピーダンス部分行列Z(mnp)の行列要素Zpp、Zmp=ZpmおよびZnp=Zpnが、例えば式(17)~(19)に基づいて、変電所バスレベルで入手可能な測定値を使用して決定される。
【0404】
ステップ103において、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットが決定される。これは、修正計算(式(6)および(7))を実行することによってインピーダンス部分行列Z(mnp)からインピーダンス部分行列Z(mnp)′′を決定すること、および式(4)に従ってインピーダンス部分行列Z(mnp)′′から{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットを決定することを含むことができる。
【0405】
本方法は、{ZsM,ZsN,Ztr MN}の更新後パラメータセットに基づいて解析、保護、または協調機能を実行することをさらに含むことができる。
【0406】
試験システムへの適用
検討される試験システムは、IEEE 39バスNETS-NYPSシステム(図16)である。以下の場合:線路MN=5-8、線路MP=5-6、バス6に接続された定格200MVarの分路リアクトルのトリップ。上記で説明した技術が、線路5-8の2ポート等価回路を更新するために適用される。ベース等価インピーダンスパラメータが、ベースネットワーク(バス6の分路リアクトルが存在すると考えられる)の全体ネットワーク解析手法によって取得される。得られた結果は、変更後のネットワークの全体ネットワーク解析によって得られた等価回路と比較される。
【0407】
1.ベースネットワークにおける線路MNの2ポート等価回路のインピーダンスパラメータ、および線路MNの追加に関する修正計算を使用することによって、Z(mn)を求める。線路MNのベース等価インピーダンスパラメータは、ZsM=0.0038+0.0221i、ZsN=0.0171+0.0410i、Ztr MN=0.0011+0.0173iである。式(5)を使用して、
【0408】
【数71】
【0409】
が得られる。Z(mn)が、線路MNの追加に関するZ(mn)′についての修正計算を行うことによって決定される。
【0410】
【数72】
【0411】
2.同様の処理が、線路MPについて、線路MPのベース等価回路インピーダンスパラメータ、および(直列ブランチおよび分路アドミッタンスブランチの両方を有すると考えられる)線路MPの追加に関する修正計算を使用して実行され、
【0412】
【数73】
【0413】
が得られる。
3.(試験のためにシミュレートされた)測定値から、バスNの電圧の変化、およびトリップされる前の分路要素を通る電流が取得される。
【0414】
【数74】
【0415】
4.Zpnが、(16)、(17)を解くことによって求められ、Z(mnp)が、Z(mn)、Z(mp)およびZpnを突き合わせることによって構築される。
【0416】
【数75】
【0417】
5.得られたZ(mnp)から、線路MNおよびMPの影響が除去され、
【0418】
【数76】
【0419】
が得られる。
6.式(4)を使用して、線路MNの更新後等価インピーダンスが、以下のように得られる。
【0420】
【数77】
【0421】
ネットワーク解析から変更後のネットワークについて得られた等価インピーダンス:
【0422】
【数78】
【0423】
ステップ6から得られた結果を上述の実際の値と比較すると、推定におけるパーセント誤差は以下のとおりである。
【0424】
【数79】
【0425】
このように、ネットワーク全体のバスインピーダンス行列の再計算に頼らずに、ローカル測定値のみを使用する場合であっても、良好な結果が得られる。
【0426】
更新後の等価モデルを、さまざまな解析、保護、および/または協調機能に使用することができる。例えば、“IEEE Guide for Protective Relay Applications to Transmission Lines,”in IEEE Std C37.113-2015(Revision of IEEE Std C37.113-1999),pp.1-141,30 June 2016に記載の技術などを使用して、関心対象の伝送線路を保護する距離継電器の動作特性の設定、および継電器のソース対線路インピーダンス比(SIR)の決定に使用することが可能である。更新後のモデルを、例えば“POWER SWING AND OUT-OF-STEP CONSIDERATIONS ON TRANSMISSION LINES”,IEEE PSRC WG D6,2005,pp.45-48に記載の技術を使用して、電力動揺ブラインダおよび脱調ロジックを設定するために使用することもできる。さらに、更新後のモデルは、例えばL.Eriksson,M.M.Saha and G.D.Rockefeller,“An Accurate Fault Locator with Compensation for Apparent Reactance in The Fault Resistance Resulting from Remote-End Infeed,” in IEEE Transactions on Power Apparatus and Systems,vol.PAS-104,no.2,pp.423-436,Feb.1985に記載の技術を使用して、シングルエンドの測定値のみを使用する場合の線路上の故障の位置特定などの解析を助けることができる。
【0427】
2ポート等価回路のパラメータは、ネットワークのトポロジに依存する。本発明の実施形態による装置、システム、および方法は、ネットワークのトポロジが変化するときに、ネットワーク全体のバスインピーダンス行列を再計算することを必要とせずに、2ポート等価回路のパラメータをオンラインで更新することを可能にする。
【0428】
本明細書に開示された技術は、保護装置である変電所装置30によって実行されてよい。これに代え、あるいはこれに加えて、伝送線路の2ポート等価回路の更新後インピーダンスを決定する装置30は、図17に示されるように、保護継電器121、122、故障位置特定装置123、および/または変電所システム120の他の要素に通信可能に結合することができる。変電所装置30を、変電所通信バスを介して、保護継電器121、122、故障位置特定装置123、および/または変電所システム120の他の要素に通信可能に結合させることができる。
【0429】
図18は、電力システム130の概略図である。電力システム130は、複数の変電所131~133を有し、各々の変電所は、本明細書に開示の技術を使用して2ポート等価モデルの更新後インピーダンスを決定するように動作することができる変電所装置またはシステム141~143を備える。
【0430】
電力システム130は、変電所装置またはシステム141~143に通信可能に結合した中央エンティティ150を備えることができる。中央エンティティ150は、変電所装置またはシステム141~143を協調させるように動作可能であってよい。これに代え、あるいはこれに加えて、中央エンティティ150は、異なる変電所装置またはシステム141~143から得られた更新後インピーダンスを組み合わせるように動作可能であってよい。
【0431】
変電所装置またはシステム141~143は、互いに独立して等価インピーダンスを更新するように動作可能であってよい。例示のために、第1の変電所装置またはシステム141が、第1のトリップ事象に応答して、関連の第1の変電所131ならびに随意により隣接するバスおよび入射線路の測定値を使用して、インピーダンスを更新するように動作可能であってよい。第1の変電所装置またはシステム141が更新後インピーダンスを決定する時点は、他の変電所装置またはシステム142、143(例えば、第2の変電所132の第2の変電所装置またはシステム142ならびに/あるいは第3の変電所133の第3の変電所装置またはシステム143)のいずれかが更新後インピーダンスを決定する時点とは無関係であってよい。実地動作の最中に更新される第1、第2、および存在する場合には追加の変電所装置またはシステム141~143のインピーダンスは、互いに独立した時点において、かつ/または互いに独立した値に更新されてよい。
【0432】
中央エンティティ150は、変電所装置またはシステム141~143から更新後インピーダンスを受信するように動作可能であってよい。
【0433】
中央エンティティ150は、変電所装置またはシステムからの更新後インピーダンスを組み合わせるように動作可能であってよい。中央エンティティ150は、変電所装置またはシステム141~143からの更新後インピーダンスを使用してバス行列を更新するように動作可能であってよい。
【0434】
中央エンティティ150は、異なる変電所の変電所装置またはシステム141~143の動作を協調させるように動作可能であってよい。
【0435】
中央エンティティ150ならびに/あるいは変電所装置またはシステム141~143は、解析、保護、および/または協調機能のために、更新後インピーダンスを使用するように動作可能であってよい。中央エンティティ150ならびに/あるいは変電所装置またはシステム141~143は、距離継電器の動作特性を設定すること、電力動揺ブラインダおよび/または脱調ロジックを設定すること、線路上の故障の位置を特定すること(例えば、シングルエンド測定のみを使用する場合、または故障位置特定を実行する他の技術に関して)のうちの1つまたは複数のために、更新後インピーダンスを使用するように動作可能であってよい。
【0436】
本発明の実施形態は、伝送線路の2ポートテブナン等価回路を更新するための装置、システム、および方法を提供する。本装置および方法は、関心の線路の近傍でトポロジの変化が生じたときに等価モデルを更新するために、線路末端およびトポロジ内の1つ上のレベルの変電所からのデータおよび測定値を照合するように動作可能であってよい。考慮される状況は、入射線路のトリップおよび隣接するバスにおける分路要素のトリップである。これらの状況に対応するさまざまな解決策が提供される。本装置、システム、および方法は、適応保護機能をサポートするためのデジタル変電所に実装することができるが、これに限られるわけではない。
【0437】
実施形態による装置、方法、およびシステムは、線路が少なくとも50km、少なくとも100km、少なくとも150km、少なくとも200kmの長さを有し得る伝送ネットワークのための改善された距離保護を提供するために使用されてもよいが、これに限られるわけではない。例示として、実施形態による装置、方法、およびシステムは、電力システムのための多種多様な保護、監視、および/または解析機能を実行するために使用されてよい。
【0438】
本方法、装置、およびシステムにおいて、保護機能および/または出力の生成を、更新後インピーダンスを使用して自動的にトリガすることができる。
【0439】
実施形態による装置、方法、およびシステムは、再生可能エネルギー源を含む送電網の伝送ネットワークに距離保護を提供するために使用されてよい。
【0440】
本発明を図面および以上の説明において詳細に説明してきたが、そのような説明は例示または典型であり、限定ではないと考えられるべきである。図面、開示、および添付の特許請求の範囲を検討することで、当業者であれば、特許請求される発明を実施することによって、開示された実施形態に対する変形を理解および達成することができる。特許請求の範囲において、「・・・を含む(comprising)」という語は、他の要素またはステップを排除せず、不定冠詞「a」または「an」は、複数であることを排除しない。単に特定の要素またはステップが別々の請求項に記載されているという事実は、これらの要素またはステップの組み合わせを好都合に使用することができないという意味ではなく、具体的には、実際の請求項の従属関係に加えて、任意のさらなる意味のある請求項の組み合わせが開示されていると見なされるべきである。
図1
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図18