(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】中周波変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/28 20060101AFI20240208BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20240208BHJP
H01F 27/06 20060101ALI20240208BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01F27/28 128
H01F27/30 130
H01F27/06
H01F30/10 T
H01F30/10 F
(21)【出願番号】P 2021516631
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2019075231
(87)【国際公開番号】W WO2020064514
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-31
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドロフェニック,ウーベ
(72)【発明者】
【氏名】グラディンガー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ブンシュ,ベルンハルト
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特許第6278153(JP,B1)
【文献】特開2018-101749(JP,A)
【文献】特開平02-162708(JP,A)
【文献】特開平06-181135(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02075806(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0248808(US,A1)
【文献】米国特許第04459575(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/28
H01F 27/30
H01F 27/06
H01F 30/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器(100)、特に中周波変圧器であって、
変圧器コア(110)を備え、前記変圧器コア(110)は、第1の長手方向軸(11)を有する第1のコアレッグ(111)と、第2の長手方向軸(12)を有する第2のコアレッグ(112)とを有し、前記変圧器(100)はさらに、
前記第1のコアレッグ(111)の周囲に配置された第1の低電圧(LV)巻線(121)を備え、前記第1のLV巻線(121)は、第1の長さ(L1)に沿って前記第1の長手方向軸(11)の方向に延在しており、前記変圧器(100)はさらに、
前記第1のLV巻線(121)の周囲に配置された第1の高電圧(HV)巻線(131)を備え、前記第1のHV巻線(131)は、第2の長さ(L2)に沿って前記第1の長手方向軸(11)の方向に延在しており、前記第2の長さ(L2)は、前記第1の長さ(L1)よりも短く、前記変圧器(100)はさらに、
前記第2のコアレッグ(112)の周囲に配置された第2の低電圧(LV)巻線(122)を備え、前記第2のLV巻線(122)は、第3の長さ(L3)に沿って前記第2の長手方向軸(12)の方向に延在しており、前記変圧器(100)はさらに、
前記第2のLV巻線(122)の周囲に配置された第2の高電圧(HV)巻線(132)を備え、前記第2のHV巻線(132)は、第4の長さ(L4)に沿って前記第2の長手方向軸(12)の方向に延在しており、前記第4の長さ(L4)は、前記第3の長さ(L3)よりも短く
、
前記第1のHV巻線(131)は、第1のHVコネクタ(133)および第2のHVコネクタ(134)を備え、前記第1のHVコネクタ(133)および前記第2のHVコネクタ(134)の各々は、前記第1の長手方向軸(11)から離れて実質的に垂直に延在しており、
前記第2のHV巻線(132)は、第3のHVコネクタ(135)および第4のHVコネクタ(136)を備え、前記第3のHVコネクタ(135)および前記第4のHVコネクタ(136)の各々は、前記第2の長手方向軸(12)から離れて実質的に垂直に延在しており、前記第2のHVコネクタ(134)および前記第4のHVコネクタ(136)は、互いに接続されて、前記変圧器の同一の端部に配置されて
おり、
前記変圧器(100)はさらに、
間に前記第1のHVコネクタ(133)の端部が配置される2つの板要素を有する第1の磁場グレーダ(151)と、間に前記第3のHVコネクタ(135)の端部が配置される2つの板要素を有する第2の磁場グレーダ(152)と、間に前記第2のHVコネクタ(134)の端部および前記第4のHVコネクタ(136)の端部が配置される2つの板要素を有する第3の磁場グレーダ(153)とを備える、変圧器(100)。
【請求項2】
前記第1のHV巻線(131)の前記第2のHVコネクタ(134)は、前記第2のHV巻線(132)の前記第4のHVコネクタ(136)に接続されている、請求項1に記載の変圧器(100)。
【請求項3】
前記第1のHV巻線(131)の前記第1のHVコネクタ(133)および前記第2のHV巻線(132)の前記第3のHVコネクタ(135)は、前記変圧器(100)のHV接続を提供する、請求項1または請求項2に記載の変圧器(100)。
【請求項4】
前記第1のHVコネクタ(133)は、前記第1のHV巻線(131)の第1の端部(131A)に設けられ、前記第2のHVコネクタ(134)は、前記第1のHV巻線(131)の前記第1の端部(131A)とは反対側の前記第1のHV巻線(131)の第2の端部(131B)に設けられ、前記第3のHVコネクタ(135)は、前記第2のHV巻線(132)の第1の端部(132A)に設けられ、前記第4のHVコネクタ(136)は、前記第2のHV巻線(132)の前記第1の端部(132A)とは反対側の前記第2のHV巻線(132)の第2の端部(132B)に設けられる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の変圧器(100)。
【請求項5】
前記第1のHVコネクタ(133)は、前記第1の長手方向軸(11)から離れて実質的に垂直にD1≧0.3×L2の第1の距離D1にわたって延在する第1のHV接続部分(133C)を備え、前記第2のHVコネクタ(134)は、前記第1の長手方向軸(11)から離れて実質的に垂直にD2≧0.3×L2の第2の距離D2にわたって延在する第2のHV接続部分(134C)を備え、前記第3のHVコネクタ(135)は、前記第2の長手方向軸(12)から離れて実質的に垂直にD3≧0.3×L4の第3の距離D3にわたって延在する第3のHV接続部分(135C)を備え、前記第4のHVコネクタ(136)は、前記第2の長手方向軸(12)から離れて実質的に垂直にD4≧0.3×L4の第4の距離D4にわたって延在する第4のHV接続部分(135C)を備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の変圧器(100)。
【請求項6】
前記第1の距離D1は、前記第3の距離D3と実質的に等しく、前記第2の距離D2は、前記第4の距離D4と実質的に等し
い、請求項5に記載の変圧器(100)。
【請求項7】
前記第1の距離D1、前記第2の距離D2、前記第3の距離D3および前記第4の距離D4は全て実質的に等しい、請求項6に記載の変圧器(100)。
【請求項8】
前記第1のLV巻線(121)は、第1のLVコネクタ(123)および第2のLVコネクタ(124)を備え、前記第1のLVコネクタ(123)および前記第2のLVコネクタ(124)の各々は、実質的に前記第1の長手方向軸(11)の方向に延在しており、前記第2のLV巻線(122)は、第3のLVコネクタ(125)および第4のLVコネクタ(126)を備え、前記第3のLVコネクタ(125)および前記第4のLVコネクタ(126)の各々は、実質的に前記第2の長手方向軸(12)の方向に延在している、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の変圧器(100)。
【請求項9】
前記第1のLVコネクタ(123)は、前記第1のLV巻線(121)の第1の端部(121A)から離れて延在しており、前記第2のLVコネクタ(124)は、前記第1のLV巻線(121)の第2の端部(121B)から離れて延在しており、前記第3のLVコネクタ(125)は、前記第2のLV巻線(122)の第1の端部(122A)から離れて延在しており、前記第4のLVコネクタ(126)は、前記第2のLV巻線(122)の第2の端部(122B)から離れて延在している、請求項
8に記載の変圧器(100)。
【請求項10】
前記第1のLV巻線(121)の前記第1のLVコネクタ(123)は、第1の電線路(141)を介して前記第2のLV巻線(122)の前記第4のLVコネクタ(126)に接続され、前記第1のLV巻線(121)の前記第2のLVコネクタ(124)は、第2の電線路(142)を介して前記第2のLV巻線(122)の前記第3のLVコネクタ(125)に接続されている、請求項
8または請求項
9に記載の変圧器(100)。
【請求項11】
前記第1のHV巻線(131)の周囲、ならびに、前記第1のLV巻線(121)の周囲、ならびに、少なくとも部分的に前記第1のHVコネクタ(133)および前記第2のHVコネクタ(134)の周囲に設けられた絶縁材料からなる第1のキャスティング(161)と、前記第2のHV巻線(132)の周囲、ならびに、少なくとも部分的に前記第3のHVコネクタ(135)および前記第4のHVコネクタ(136)の周囲に設けられた絶縁材料からなる第2のキャスティング(162)とをさらに備える、請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載の変圧器(100)。
【請求項12】
前記第1のHV巻線(131)の周囲、ならびに、前記第1のLV巻線(121)の周囲、ならびに、少なくとも部分的に前記第1のHVコネクタ(133)および前記第2のHVコネクタ(134)の周囲に設けられた絶縁材料からなる第1のキャスティング(161)と、前記第2のHV巻線(132)の周囲、ならびに、少なくとも部分的に前記第3のHVコネクタ(135)および前記第4のHVコネクタ(136)の周囲に設けられた絶縁材料からなる第2のキャスティング(162)とをさらに備え、
前記第1のキャスティング(161)は、前記第1のHV接続部分(133C)を取り囲む第1の延長部(161A)と、前記第2のHV接続部分(134C)を取り囲む第2の延長部(161B)とを備え、前記第2のキャスティング(162)は、前記第3のHV接続部分(135C)を取り囲む第3の延長部(162A)と、前記第4のHV接続部分(136C)を取り囲む第4の延長部(162B)とを備える
、請求項
5に記載の変圧器(100)。
【請求項13】
前記第1の磁場グレーダ(151)および前記第2の磁場グレーダ(152)の下方に配置され
、支持ロッド(155)によって前記第1の磁場グレーダ(151)および前記第2の磁場グレーダ(152)に接続された板要素を有する第4の磁場グレーダ(154)をさらに備える、請求項1から請求項1
2のいずれか1項に記載の変圧器(100)。
【請求項14】
前記第1の磁場グレーダ(151)と前記第3の磁場グレーダ(153
)との間
に支持ロッド(155)が設けられ、前記第2の磁場グレーダ(152)と前記第3の磁場グレーダ(153
)との間
に支持ロッド(155)が設けられている、請求項
13に記載の変圧器(100)。
【請求項15】
前記変圧器は、中周波変圧器、特に乾式鋳造中周波変圧器である、請求項1から請求項
14のいずれか1項に記載の変圧器(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示の実施形態は、変圧器、特に中周波変圧器(MFT)、より特定的に乾式鋳造MFTに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
中周波変圧器(MFT)は、さまざまなパワーエレクトロニクスシステムにおける重要な構成要素である。鉄道車両における例は、補助コンバータ、および、かさばる低周波輸送変圧器に取って代わるソリッドステート変圧器である。たとえば再生可能エネルギ源、EV充電インフラストラクチャ、データセンタ、または船に乗っているパワーグリッドのグリッド統合のために、SSTのさらなる適用が検討されている。SSTが将来ますます重要な役割を果たすようになることが期待されている。
【0003】
電気絶縁は、MFTにおける重要な課題である。なぜなら、一方では動作電圧が高い(10kV~100kV、特に50kV~100kVの範囲内)可能性があり、他方では従来の低周波配電および電力変圧器と比較して個々のMFTの電力がやや低い(数百kVAの範囲内)からである。
【0004】
上記のMFTの電力および電圧範囲では、コンパクトで単純な低コストの中周波変圧器(MFT)を設計するための主な課題は、効率的な冷却、近接効果による巻線損失の低減、および高電圧巻線のブッシングの位置である。
【0005】
したがって、従来技術の問題のうちの少なくともいくつかを克服するか、または、従来の変圧器のマイナスの影響を少なくとも減少させることができる変圧器、特に乾式鋳造中周波変圧器が引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
上記に鑑みて、独立請求項に係る変圧器が提供される。さらなる局面、利点および特徴は、従属請求項、明細書および添付の図面から明らかである。
【0007】
特に、本開示に従って、変圧器が提供され、上記変圧器は、変圧器コアを含み、上記変圧器コアは、第1の長手方向軸を有する第1のコアレッグと、第2の長手方向軸を有する第2のコアレッグとを有する。上記変圧器はさらに、上記第1のコアレッグの周囲に配置された第1の低電圧(LV)巻線を含む。上記第1のLV巻線は、第1の長さL1に沿って上記第1の長手方向軸の方向に延在している。上記変圧器はさらに、上記第1のLV巻線の周囲に配置された第1の高電圧(HV)巻線を含む。上記第1のHV巻線は、第2の長さL2に沿って上記第1の長手方向軸の方向に延在している。上記第2の長さL2は、上記第1の長さL1よりも短い。上記変圧器はさらに、上記第2のコアレッグの周囲に配置された第2のLV巻線を含む。上記第2のLV巻線は、第3の長さL3に沿って上記第2の長手方向軸の方向に延在している。上記変圧器はさらに、上記第2のLV巻線の周囲に配置された第2のHV巻線を含む。上記第2のHV巻線は、第4の長さL4に沿って上記第2の長手方向軸の方向に延在している。上記第4の長さL4は、上記第3の長さL3よりも短い。上記第1のHV巻線は、第1のHVコネクタおよび第2のHVコネクタを備え、上記第1のHVコネクタおよび上記第2のHVコネクタの各々は、上記第1の長手方向軸から離れて実質的に垂直に延在している。上記第2のHV巻線は、第3のHVコネクタおよび第4のHVコネクタを備え、上記第3のHVコネクタおよび上記第4のHVコネクタの各々は、上記第2の長手方向軸から離れて実質的に垂直に延在している。
【0008】
したがって、有利なことに、本開示の変圧器は、特にコンパクトさ、近接効果による巻線損失の低減、変圧器設計の単純さ、頑強さ、高電圧巻線のコネクタの位置、およびコストの点で先行技術よりも向上している。よりよく理解するために、「近接効果」に関して以下に記載する。交流を搬送する導体では、しっかりと巻き付けられたワイヤコイル内などの1つまたは複数の他の隣接する導体を電流が流れている場合、第1の導体内での電流の分配は、より小さな領域に限定されることになる。結果として生じる電流の密集を近接効果と呼ぶ。この密集は、回路の実効抵抗を増加させ、周波数とともに増加する。
【0009】
より具体的には、本明細書に記載されている変圧器は、コンパクトで単純な低コストの変圧器、特に中周波変圧器を設計することの以下の主な課題に対処する。
【0010】
第1の課題は、絶縁要件および機械的安定性のために一般的には鋳造しなければならない巻線の効率的な冷却を提供することである。
【0011】
第2の課題は、絶縁要件のために一般的に大きな距離が必要である巻線の交互配置が困難であることである。この点について、交互配置でない巻線は一般に高周波巻線損失を増加させるということに注意されたい。
【0012】
第3の課題は、高電圧巻線のブッシング、すなわちコネクタの位置である。一般に、接地されたコアおよび当該コアの端縁ならびに低電圧巻線との大きな距離が必要である。
【0013】
第1の点は、数百kWの範囲内の頑強で信頼性のある変圧器、特に乾式MFTを構築することに非常に関係がある。
【0014】
第2の点は、(50Hz配電変圧器と比較して)MFTでは特に重要である。なぜなら、近接効果による巻線損失は、動作周波数とともに大幅に増加するからである。将来的に、この問題は、高速スイッチングワイドバンドギャップ半導体の導入によりますます重要になるであろう。
【0015】
ブッシングに関する第3の点は、MFTが非常にコンパクトでなければならない(これは、一般にMFT設計の目標である)場合には実現することがますます困難である。なぜなら、ブッシングは、変圧器設計を左右し始めることになるからである。
【0016】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上に簡潔にまとめられている本開示のより特定的な説明が実施形態を参照することによりなされ得る。添付の図面は、本開示の実施形態に関連しており、以下に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本明細書に記載されている実施形態に係る変圧器の概略図である。
【
図2】本明細書に記載されているさらなる実施形態に係る絶縁体を含む変圧器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態の詳細な説明
ここで、さまざまな実施形態を詳細に参照し、これらの実施形態の1つまたは複数の例は各図面に示されている。各例は、説明の目的で提供されており、限定することを意図したものではない。たとえば、一実施形態の一部として示されまたは記載されている特徴は、その他の実施形態で使用して、またはその他の実施形態と併用して、さらに別の実施形態を生み出すことができる。本開示は、このような変形例および変更例を包含するよう意図されている。
【0019】
図面の以下の説明において、同一の参照番号は同一または類似の構成要素を指す。概して、個々の実施形態についての相違点のみを説明する。別段の定めがない限り、一実施形態における部分または局面の説明は、別の実施形態における対応する部分または局面にも当てはめることができる。
【0020】
図1を例示的に参照して、本開示に係る変圧器100について説明する。本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、変圧器100は、変圧器コア110を含み、変圧器コア110は、第1の長手方向軸11を有する第1のコアレッグ111と、第2の長手方向軸12を有する第2のコアレッグ112とを有する。特に、第2の長手方向軸12は、通常、第1の長手方向軸11と実質的に平行である。本開示では、「実質的に平行」という表現は、厳密な平行からの偏差角DがD≦±10°、特にD≦±5°、より特定的にD≦±2°の範囲内で平行であるものとして理解することができる。
【0021】
また、
図1に例示的に示されているように、変圧器100は、第1のコアレッグ111の周囲に配置された第1の低電圧(LV)巻線121を含む。第1のLV巻線121は、第1の長さL1に沿って第1の長手方向軸11の方向に延在している。さらに、変圧器100は、第1のLV巻線121の周囲に配置された第1の高電圧(HV)巻線131を含む。第1のHV巻線131は、第2の長さL2に沿って第1の長手方向軸11の方向に延在している。第2の長さL2は、第1の長さL1よりも短い。特に、
図1に例示的に示されているように、第1のLV巻線121の両端は、第1のHV巻線131の端部を越えて延在している。
【0022】
さらに、
図1に例示的に示されているように、変圧器100は、第2のコアレッグ112の周囲に配置された第2のLV巻線122を含む。第2のLV巻線122は、第3の長さL3に沿って第2の長手方向軸12の方向に延在している。また、変圧器100は、第2のLV巻線122の周囲に配置された第2のHV巻線132を含む。第2のHV巻線132は、第4の長さL4に沿って第2の長手方向軸12の方向に延在している。第4の長さL4は、第3の長さL3よりも短い。特に、
図1に例示的に示されているように、第2のLV巻線122の両端は、第2のHV巻線132の端部を越えて延在している。
【0023】
さらに、
図1に例示的に示されているように、第1のHV巻線131は、第1のHVコネクタ133および第2のHVコネクタ134を備える。第1のHVコネクタ133および第2のHVコネクタ134の各々は、第1の長手方向軸11から離れて実質的に垂直に延在している。第2のHV巻線132は、第3のHVコネクタ135および第4のHVコネクタ136を備える。第3のHVコネクタ135および第4のHVコネクタ136の各々は、第2の長手方向軸12から離れて実質的に垂直に延在している。
【0024】
本開示では、「実質的に垂直」という表現は、厳密な垂直からの偏差角DがD≦±10°、特にD≦±5°、より特定的にD≦±2°の範囲内で垂直であるものとして理解することができる。
【0025】
特に、本明細書に記載されている変圧器100は、中周波変圧器であってもよい。特に、変圧器100は、乾式鋳造中周波変圧器であってもよい。
【0026】
したがって、有利なことに、本開示の変圧器は、特にコンパクトさ、近接効果による巻線損失の低減、変圧器設計の単純さ、頑強さ、高電圧巻線のコネクタの位置、およびコストの点で先行技術よりも向上している。
【0027】
なお、従来技術のコア型およびシェル型変圧器は、HV巻線およびLV巻線の交互配置を提供せず、その結果、近接効果による損失が高くなる可能性がある。したがって、コア型およびシェル型変圧器のHV巻線では、1つの目標は、接地されたコアおよびLV巻線に対する絶縁距離を最小にすることである。交互配置でない従来技術の巻線スキームの中には、たとえばLV巻線とHV巻線との間の対流冷却による巻線の効率的な冷却およびHV巻線との比較的単純な接続(ブッシング)を可能にするものもある。
【0028】
巻線の分割および再配置(交互配置された巻線とも称される)によって、巻線窓内の漂遊磁場を減少させることができ、近接効果による巻線における高周波損失を大幅に減少させることができる、ということが分かった。しかし、交互配置が適用されると、HV巻線の冷却が非常に困難になり、コネクタ(ブッシング)をHV巻線に取り付けることが非常に困難になる。なぜなら、コネクタ(ブッシング)は、LV巻線および/またはコアならびに関連付けられた幾何学上の端縁に非常に近いからである。
【0029】
図1を例示的に参照して、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、第1のHV巻線131の第2のHVコネクタ134は、第2のHV巻線132の第4のHVコネクタ136に接続されている。したがって、第2のHVコネクタ134および第4のHVコネクタ136は、第1のHV巻線131および第2のHV巻線132の直列接続を提供するように電気的に接続されている。一般に、第1のHV巻線131の第1のHVコネクタ133および第2のHV巻線132の第3のHVコネクタ135は、変圧器のHV接続を提供する。たとえば、第1のHVコネクタ133は、HV
inコネクタであってもよく、第3のHVコネクタ135は、HV
outコネクタであってもよい。
【0030】
図1に例示的に示されているように、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、第1のHVコネクタ133は、第1のHV巻線131の第1の端部131Aに設けられ、第2のHVコネクタ134は、第1のHV巻線131の第2の端部131Bに設けられている。第1のHV巻線131の第2の端部131Bは、第1のHV巻線131の第1の端部131Aとは反対側にある。
【0031】
さらに、
図1に例示的に示されているように、一般に、第3のHVコネクタ135は、第2のHV巻線132の第1の端部132Aに設けられ、第4のHVコネクタ136は、第2のHV巻線132の第2の端部132Bに設けられている。第2のHV巻線132の第2の端部132Bは、第2のHV巻線132の第1の端部132Aとは反対側に設けられている。
【0032】
図1に例示的に示されているように、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、第1のHVコネクタ133は、第1のHV接続部分133Cを含む。一般に、第1のHV接続部分133Cは、第1の長手方向軸11から離れて実質的に垂直に、D1≧0.3×L2、特にD1≧0.5×L2の第1の距離D1にわたって延在している。一般に、第2のHVコネクタ134は、第2のHV接続部分134Cを含む。一般に、第2のHV接続部分134Cは、第1の長手方向軸11から離れて実質的に垂直に、D2≧0.3×L2、特にD2≧0.5×L2の第2の距離D2にわたって延在している。
【0033】
さらに、
図1に例示的に示されているように、第3のHVコネクタ135は、第3のHV接続部分135Cを含む。一般に、第3のHV接続部分135Cは、第2の長手方向軸12から離れて実質的に垂直に、D3≧0.3×L4、特にD3≧0.5×L4の第3の距離D3にわたって延在している。一般に、第4のHVコネクタ136は、第2の長手方向軸12から離れて実質的に垂直に、D4≧0.3×L4、特にD4≧0.5×L4の第4の距離D4にわたって延在している第4のHV接続部分135Cを含む。
【0034】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、第1の距離D1は、第3の距離D3と実質的に等しくてもよい。さらに、第2の距離D2は、第4の距離D4と実質的に等しくてもよい。一例によれば、第1の距離D1、第2の距離D2、第3の距離D3および第4の距離D4は全て、実質的に等しい。本開示では、「実質的に等しい」という表現は、許容誤差TがT≦10%、特にT≦5%、より特定的にT≦2%の範囲内で等しいものとして理解することができる。
【0035】
図1に例示的に示されているように、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、第1のLV巻線121は、第1のLVコネクタ123および第2のLVコネクタ124を備える。第1のLVコネクタ123および第2のLVコネクタ124の各々は、実質的に第1の長手方向軸11の方向に延在している。さらに、一般に、第2のLV巻線122は、第3のLVコネクタ125および第4のLVコネクタ126を備える。第3のLVコネクタ125および第4のLVコネクタ126の各々は、実質的に第2の長手方向軸12の方向に延在している。本開示では、「実質的に…方向に」という表現は、上記方向からの偏差角DがD≦±10°、特にD≦±5°、より特定的にD≦±2°の範囲内で上記方向に向けられているものとして理解することができる。
【0036】
特に、
図1に例示的に示されているように、第1のLVコネクタ123は、第1のLV巻線121の第1の端部121Aから離れて延在しており、第2のLVコネクタ124は、第1のLV巻線121の第2の端部121Bから離れて延在している。さらに、一般に、第3のLVコネクタ125は、第2のLV巻線122の第1の端部122Aから離れて延在しており、第4のLVコネクタ126は、第2のLV巻線122の第2の端部122Bから離れて延在している。
【0037】
図1を例示的に参照して、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、第1のLV巻線121の第1のLVコネクタ123は、第1の電線路141を介して第2のLV巻線122の第4のLVコネクタ126に接続されている。また、第1のLV巻線121の第2のLVコネクタ124は、第2の電線路142を介して第2のLV巻線122の第3のLVコネクタ125に接続されている。したがって、第1のLV巻線121および第2のLV巻線122は、並列に接続されている。
【0038】
図2を例示的に参照して、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、変圧器100は、第1のHV巻線131の周囲に設けられた、絶縁材料、特に絶縁性樹脂からなる第1のキャスティング161を含む。さらに、第1のキャスティング161は、少なくとも部分的に第1のHVコネクタ133および第2のHVコネクタ134の周囲に設けられている。特に、
図2と組み合わせた
図1から、第1のキャスティング161が第1のHV接続部分133Cを取り囲む第1の延長部161Aと第2のHV接続部分134Cを取り囲む第2の延長部161Bとを含んでいてもよいということが理解されるべきである。
【0039】
また、
図2に例示的に示されているように、一般に、変圧器100は、第2のHV巻線132の周囲、ならびに、少なくとも部分的に第3のHVコネクタ135および第4のHVコネクタ136の周囲に設けられた、絶縁材料、特に絶縁性樹脂からなる第2のキャスティング162を含む。特に、
図2と組み合わせた
図1から、第2のキャスティング162が第3のHV接続部分135Cを取り囲む第3の延長部162Aと第4のHV接続部分136Cを取り囲む第4の延長部162Bとを含んでいてもよいということが理解されるべきである。
【0040】
図2を例示的に参照して、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができるいくつかの実施形態によれば、変圧器100は、間に第1のHVコネクタ133の端部が配置される2つの板要素を有する第1の磁場グレーダ151を含む。さらに、変圧器100は、間に第3のHVコネクタ135の端部が配置される2つの板要素を有する第2の磁場グレーダ152を含む。また、変圧器100は、間に第2のHVコネクタ134の端部および第4のHVコネクタ136の端部が配置される2つの板要素を有する第3の磁場グレーダ153を含む。
【0041】
さらに、
図2に例示的に示されているように、変圧器は、第1の磁場グレーダ151および第2の磁場グレーダ152の下方に配置された板要素を有する第4の磁場グレーダ154を含み得る。
【0042】
特に、
図2に例示的に示されているように、第1の磁場グレーダ151と第3の磁場グレーダ153および/または第4の磁場グレーダ154との間に1つまたは複数の支持ロッド155を設けることができる。また、第2の磁場グレーダ152と第3の磁場グレーダ153および/または第4の磁場グレーダ154との間に1つまたは複数の支持ロッド155を設けることができる。
【0043】
本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる特定の例によれば、変圧器100は、高電圧絶縁体を有して10kHzで240kVAであるように設計されたMFT(DC50kV、ACrms69kV、雷インパルスLI150kV)である。変圧器コアの高さは、50cmであってもよく、第1のHV巻線131および第2のHV巻線132の各々の外径は、21cmであってもよい。このような変圧器仕様の1つの用途は、たとえば太陽光発電ソーラー要素のグリッド接続(ユーティリティスケール)である。
【0044】
上記に鑑みて、従来技術と比較して、本開示の変圧器の実施形態は、有利なことに、よりコンパクトで、頑強で、費用対効果の高い変圧器を提供する、ということが理解されるべきである。特に、
図2を参照して例示的に説明したように、有利なことに、単相コア型乾式中周波変圧器のブッシング(すなわち、コネクタ)を含む、絶縁システムを有する変圧器が提供され、LV巻線およびHV巻線の各々は、2つの巻線に分割されて各々2つのコイルを形成する。各コイルは、内側LV巻線と外側HV巻線とを有し、鋳造される。コアとの必要な絶縁距離を保証するために、HV巻線はLV巻線よりも高さが低い。
【0045】
図1に例示的に示されているように、巻線窓内の巻線の配列(LV-HV)
COIL_LEFT-(HV-LV)
COIL_RIGHTは、巻線窓内の漂遊磁場を減少させるだけでなく、近接効果、および、通常はMFTにおける損失を左右する関連する高周波巻線損失を大幅に減少させる。
【0046】
各コイルのLV巻線とHV巻線との間の絶縁は、最小距離を規定して、たとえば空気よりもはるかに高い電場に耐える絶縁材料を用いて鋳造を行うことによって実現される。鋳造は、部分放電を防止して、高い機械的強度および頑強さを提供する。提案されている設計では、最外鋳造絶縁層厚み(HVから外側面)は、HV巻線とLV巻線および/または接地との間の必要な絶縁よりもはるかに小さくてもよく、HV巻線の対流空気冷却を大幅に向上させることができる。
【0047】
さらに、本明細書に記載されている他の実施形態と組み合わせることができる実施形態によれば、本明細書に記載されている低電圧巻線および本明細書に記載されているそれぞれの高電圧巻線は、特にそれらの間に空隙を設けることなく一緒に鋳造されるということが理解されるべきである。したがって、一般に、本明細書に記載されている低電圧巻線および本明細書に記載されているそれぞれの高電圧巻線は、一般に、本明細書に記載されている絶縁材料からなるそれぞれのキャスティング内(すなわち、第1のキャスティング161および/または第2のキャスティング162内)で一緒に鋳造される。したがって、有利なことに、非常に省スペースの変圧器設計を提供することができる。
【0048】
図1を参照して例示的に説明したように、2つのHV巻線の各々に対して、2つのコネクタ(ブッシング)がコア-巻線の平面の垂直方向に設置されている。それらのコネクタのうちの2つは、2つのHV巻線を直列接続するように電気的に接続されている。2つの他のコネクタは、MFTのHV接続を提供する。提案されている構成は、LV巻線およびコアならびに関連付けられた幾何学上の端縁からのHVコネクタ(ブッシング)の最大距離を保証する。これにより、低コストで非常にコンパクトな変圧器設計が可能になる。LV巻線コネクタは、コアとの近さに関して重要ではなく、並列接続されることができる。
【0049】
上記は実施形態に向けられているが、基本的な範囲から逸脱することなく他のおよびさらなる実施形態が考案されてもよく、当該範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【符号の説明】
【0050】
100 変圧器、110 変圧器コア、111 第1のコアレッグ、11 第1の長手方向軸、112 第2のコアレッグ、12 第2の長手方向軸、121 第1の低電圧巻線、121A 第1の低電圧巻線の第1の端部、121B 第1の低電圧巻線の第2の端部、122 第2の低電圧巻線、122A 第2の低電圧巻線の第1の端部、122B 第2の低電圧巻線の第2の端部、123 第1のLVコネクタ、123C 第1のLV接続部分、124 第2のLVコネクタ、124C 第2のLV接続部分、125 第3のLVコネクタ、125C 第3のLV接続部分、126 第4のLVコネクタ、126C 第4のLV接続部分、131 第1のHV巻線、131A 第1のHV巻線の第1の端部、131B 第1のHV巻線の第2の端部、132 第2のHV巻線、132A 第2のHV巻線の第1の端部、132B 第2のHV巻線の第2の端部、133 第1のHVコネクタ、133C 第1のHV接続部分、134 第2のHVコネクタ、134C 第2のHV接続部分、135 第3のHVコネクタ、135C 第3のHV接続部分、136 第4のHVコネクタ、136C 第4のHV接続部分、141 第1の電線路、142 第2の電線路、151 第1の磁場グレーダ、152 第2の磁場グレーダ、153 第3の磁場グレーダ、154 第4の磁場グレーダ、155 支持ロッド、161 第1のキャスティング、161A 第1の延長部、161B 第2の延長部、162 第2のキャスティング、162A 第3の延長部、162B 第4の延長部、L1 第1の長さ、L2 第2の長さ、L3 第3の長さ、L4 第4の長さ、D1 第1の距離、D2 第2の距離、D3 第3の距離、D4 第4の距離。