(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】変圧器の寿命の確率的決定
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240208BHJP
G06Q 10/00 20230101ALI20240208BHJP
G01R 31/62 20200101ALI20240208BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20240208BHJP
H01F 27/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G01M99/00 Z
G06Q10/00
G01R31/62
H01F41/00 D
H01F27/00 H
(21)【出願番号】P 2022548789
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2021059234
(87)【国際公開番号】W WO2021204970
(87)【国際公開日】2021-10-14
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェイム,ルイズ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-308515(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0115335(US,A1)
【文献】WILBUR R. OSSMAN et al.,Substation Expansion, Reliability, and Transformer Loading Policy Analysis,IEEE TRANSACTIONS ON POWER APPARATUS AND SYSTEMS,PAS-88,No.8,1969年08月,1195-1205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045
99/00
G01R 31/50-31/74
G06Q 10/00-10/10
30/00-30/08
50/00-50/20
50/26-99/00
G16Z 99/00
H01F 27/00-27/06
41/00-41/04
41/08
41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器の予想残存寿命を生成する方法であって、
前記変圧器の有効劣化に影響する因子の確率モデルを生成することと、
前記確率モデルに基づいて前記変圧器の有効劣化に影響する前記因子の複数の確率プロファイルを生成することと、
前記変圧器の前記複数の確率プロファイルおよびホットスポット温度特性から複数の確率的ホットスポットプロファイルを生成することと、
前記確率的ホットスポットプロファイルに基づいて前記変圧器の複数の将来の劣化シナリオをシミュレートすることと、
前記複数の将来の劣化シナリオから前記変圧器の予想残存寿命を推定することとを含む方法。
【請求項2】
前記複数の確率プロファイルは、第1の期間にわたって生成され、前記将来の劣化シナリオは、前記第1の期間とは異なる第2の期間にわたって生成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の将来の劣化シナリオをシミュレートすることは、
前記第1の期間にわたる前記変圧器の劣化をシミュレートする複数の劣化プロファイルを生成することと、
前記複数の劣化プロファイルの各々について、複数の有効劣化量を提供するために前記変圧器の有効劣化量を推定することと、
前記第2の期間にわたる推定有効劣化量を提供するために前記複数の有効劣化量を合計することとを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の期間は24時間の期間を含み、前記第2の期間は1年間の期間を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記変圧器の前記有効劣化に影響する前記因子は、負荷条件、周囲温度、前記変圧器内の水分レベル、および/または前記変圧器内の酸素レベルを備える、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の将来の劣化シナリオをシミュレートすることは、前記複数の確率的ホットスポットプロファイルに基づいて将来の劣化シナリオのモンテカルロシミュレーションを実行することを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記変圧器の前記有効劣化に影響する因子の確率プロファイルを生成することは、周囲温度の履歴変化に基づいて複数の周囲温度プロファイルを生成することを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記周囲温度プロファイルは、所定の期間にわたる予想周囲温度を記述する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の期間内の複数の間隔における周囲温度の確率分布に基づいて前記周囲温度プロファイルを生成することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記確率分布は、一様確率分布を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記確率分布は、実際の周囲温度データに基づいて生成された確率分布を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記変圧器の前記有効劣化に影響する因子の確率プロファイルを生成することは、前記変圧器の予測負荷に基づいて複数の予想負荷プロファイルを生成することを含む、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記予想負荷プロファイルは、所定の期間にわたる予想負荷を記述する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記所定の期間内の複数の時間間隔における確率分布に基づいて前記予想負荷プロファイルを生成することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記確率分布は、一様確率分布を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記確率分布は、前記予想負荷の実際の確率分布の推定値を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の将来の劣化シナリオから前記変圧器の将来の劣化を推定することは、シミュレートされた将来の劣化シナリオのヒストグラムを生成することと、
シミュレートされた将来の劣化シナリオの前記ヒストグラムと、前記シミュレートされた将来の劣化シナリオの分布の関連する平均および標準偏差とに基づいて、前記変圧器の予想残存寿命の信頼区間を生成することとを含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記将来の劣化シナリオは、予想年間劣化シナリオを備え、前記方法は、前記変圧器の公称予想寿命および前記予想年間劣化シナリオに基づいて前記変圧器の前記予想残存寿命の推定値を生成することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記変圧器の動作中に前記変圧器の有効劣化に影響する因子を表す動作データを収集することと、
前記変圧器の有効劣化に影響する前記因子の前記確率モデルを更新することと、をさらに含む、
請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記動作データに基づいて前記変圧器の有効現在期間を決定することをさらに含み、
前記変圧器の前記予想残存寿命は、前記複数の将来の劣化シナリオから、前記変圧器の前記有効現在期間および前記変圧器の公称予想寿命から推定される、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記確率モデルは、前記変圧器の劣化に影響する前記因子の確率分布を含む、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記変圧器の劣化に影響する前記因子は周囲温度および負荷を含み、前記確率モデルは一様確率分布を含む、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記変圧器の前記推定された将来の劣化に基づいて、前記変圧器のメンテナンスを実行すること、および/または前記変圧器の負荷を調整することをさらに含む、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
変圧器の劣化に影響する因子の確率モデルに基づいて、前記変圧器の予想残存寿命を推定する方法であって、
前記変圧器の動作中に前記変圧器の有効劣化に影響する前記因子を表す動作データを収集することと、
前記動作データに基づいて前記変圧器の有効劣化に影響する前記因子の前記確率モデルを更新することと、
前記動作データに基づいて前記変圧器の有効現在期間を決定することと、を含み、
前記変圧器の前記予想残存寿命は、前
記因子に基づいて生成された複数の将来の劣化シナリオから、前記変圧器の前記有効現在期間から、および前記変圧器の公称予想寿命から推定される、方法。
【請求項25】
前記動作データを収集することは、前記変圧器内のセンサから前記動作データを収集することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記変圧器の前記有効劣化に影響する前記因子は、負荷条件、周囲温度、前記変圧器内の水分レベル、および/または前記変圧器内の酸素レベルを備える、請求項24または25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
変圧器の将来の劣化を推定するための装置であって、
処理回路と、
前記処理回路に結合されたメモリと、を備え、前記メモリは、前記処理回路によって実行されると、前記装置に動作を実行させるコンピュータプログラム命令を格納し、前記動作は、
前記変圧器の有効劣化に影響する因子の確率モデルを生成することと、
前記確率モデルに基づいて、第1の期間にわたる前記変圧器の有効劣化に影響する前記因子の複数の確率プロファイルを生成することと、
前記変圧器の確率プロファイルおよびホットスポット温度特性から予想ホットスポットプロファイルを生成することと、
第2の期間にわたる前記予想ホットスポットプロファイルに基づいて前記変圧器の複数の将来の劣化シナリオをシミュレートすることと、
前記複数の将来の劣化シナリオから前記変圧器の将来の劣化を推定することとを含む、装置。
【請求項28】
前記変圧器の前記有効劣化に影響する前記因子は、負荷条件、周囲温度、前記変圧器内の水分レベル、および/または前記変圧器内の酸素レベルを備える、請求項27に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本開示は、高電圧変圧器の分析に関する。特に、本開示は、高電圧変圧器の将来の劣化を推定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所で使用されるような高電圧変圧器は、複雑で高価な品目である。そのような変圧器の製造業者および所有者の間では、変圧器の残りの動作寿命を正確に推定することができることに大きな関心が寄せられている。変圧器製造業者は、通常、新しい変圧器の公称予想動作寿命を述べている。例えば、典型的な新しい高電圧変圧器は、その製造業者によって、18万時間、または約20年の公称寿命を有すると評価され得る。そのような定格は、公称周囲温度および公称動作負荷での使用に基づいており、通常、公称周囲温度ならびに公称負荷における変圧器の最高油温を考慮に入れたIEC60076-7規格による式を使用して計算される。
【0003】
しかしながら、変圧器が動作する実際の周囲温度および動作負荷は、日毎におよび季節毎に変化し、両方の量は、変圧器が動作する方法および場所に応じて時々公称値を超えることがある。したがって、製造業者によって提供される定格は、よくても変圧器の実際の寿命の概算である。
【0004】
さらに、変圧器の実際の寿命は、他の因子、特に変圧器内の水分および酸素含有量によって影響を受ける。高電圧変圧器は、冷却剤および/または絶縁体として作用し、かつ変圧器内の固体絶縁体、例えばセルロースまたは紙を化学的攻撃から保護する鉱油などの油で満たされる。油中に水分および/または酸素が存在すると、これらの機能が損なわれ、変圧器の寿命が短くなる可能性がある。
【0005】
変圧器の寿命に影響を及ぼし得る他の因子には、メンテナンス、油漏れ、内部油路閉塞、環境影響(雷、嵐など)、物理的変位などが含まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
変圧器の将来の劣化を推定する方法は、変圧器の有効劣化に影響する因子の確率モデルを生成することと、確率モデルに基づいて変圧器の有効劣化に影響する因子の複数の確率プロファイルを生成することと、確率プロファイルから予想ホットスポットプロファイルを生成することと、予想ホットスポットプロファイルに基づいて変圧器の複数の将来の劣化シナリオをシミュレートすることと、複数の将来の劣化シナリオから変圧器の予想残存寿命を推定することとを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、複数の確率プロファイルは、第1の期間にわたって生成され、将来の劣化シナリオは、第1の期間とは異なる第2の期間にわたって生成される。第1の期間は24時間の期間であってもよく、第2の期間は1年間の期間であってもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、変圧器の有効劣化に影響する因子は、負荷条件、周囲温度、変圧器内の水分レベル、および変圧器内の酸素レベルを備えることができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、複数の将来の劣化シナリオをシミュレートすることは、将来の劣化シナリオのモンテカルロシミュレーションを実行することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、複数の劣化シナリオをシミュレートすることは、第1の期間にわたる変圧器の劣化をシミュレートする複数の劣化プロファイルを生成することと、複数の劣化プロファイルの各々について、複数の有効劣化量を提供するために変圧器の有効劣化量を推定することと、第2の期間にわたる推定有効劣化量を提供するために複数の有効劣化量を合計することとを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、変圧器の有効劣化に影響する因子の確率プロファイルを生成することは、周囲温度の履歴変化に基づいて複数の周囲温度プロファイルを生成することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、周囲温度プロファイルは、所定の期間にわたる予想周囲温度を記述する。
【0013】
いくつかの実施形態は、所定の期間内の複数の時間間隔における確率分布に基づいて周囲温度プロファイルを生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、確率分布は、一様確率分布を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、変圧器の有効劣化に影響する因子の確率プロファイルを生成することは、変圧器の予測負荷に基づいて複数の予想負荷プロファイルを生成することを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、予想負荷プロファイルは、所定の期間にわたる予想負荷を記述する。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、所定の期間内の複数の時間間隔における確率分布に基づいて予想負荷プロファイルを生成することをさらに含む。いくつかの実施形態では、確率分布は、一様確率分布を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、複数の将来の寿命シナリオから変圧器の残存寿命を推定することは、予想劣化シナリオのヒストグラムを生成することと、予想劣化シナリオのヒストグラムに基づいて変圧器の予想残存寿命の信頼区間を生成することとを含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、劣化シナリオは、予想年間劣化シナリオを含み、変圧器の予想残存寿命は、変圧器の公称予想寿命および予想年間劣化シナリオに基づいて推定される。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、変圧器の動作中に変圧器の有効劣化に影響する因子を表す動作データを収集することと、変圧器の有効劣化に影響する因子の確率モデルを更新することとを含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、動作データに基づいて変圧器の有効現在期間を決定することを含み、変圧器の予想残存寿命は、複数の将来の劣化シナリオから、変圧器の有効現在期間および変圧器の公称予想寿命から推定される。
【0021】
いくつかの実施形態では、本方法は、変圧器の推定された将来の劣化に基づいて、変圧器のメンテナンスを実行すること、および/または変圧器の負荷を調整することをさらに含む。
【0022】
いくつかの実施形態による変圧器の劣化に影響する因子の確率モデルに基づいて変圧器を動作させる方法は、変圧器の動作中に変圧器の有効劣化に影響する因子を表す動作データを収集することと、動作データに基づいて変圧器の有効劣化に影響する因子の確率モデルを更新することと、動作データに基づいて変圧器の有効現在期間を決定することとを含み、変圧器の予想残存寿命は、確率的因子に基づいて生成された複数の将来の劣化シナリオから、変圧器の有効現在期間および変圧器の公称予想寿命から推定される。
【0023】
いくつかの実施形態では、動作データを収集することは、変圧器内のセンサから動作データを収集することを含む。
【0024】
変圧器の予想残存寿命を生成するための装置は、処理回路と、処理回路に結合されたメモリとを含む。メモリは、処理回路によって実行されると、変圧器の有効劣化に影響する因子の確率モデルを生成することと、確率モデルから予想ホットスポットプロファイルを生成することと、予想ホットスポットプロファイルに基づいて変圧器の複数の将来の劣化シナリオをシミュレートすることと、複数の将来の劣化シナリオから変圧器の予想残存寿命を推定することとを含む動作を装置に実行させるコンピュータプログラム命令を記憶する。
【0025】
図面の簡単な説明
本開示のさらなる理解を提供するために含まれ、本出願の一部を構成するものに組み込まれる添付の図面は、本発明の概念の特定の非限定的な実施形態を示す。図は以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】熱的に改良された紙を含む変圧器の劣化加速因子に対するホットスポット温度の変化の影響を示すグラフである。
【
図2】変圧器の劣化時間に対する周囲温度の±2%誤差の影響を示すグラフである。
【
図3A】負荷および周囲温度データを使用した24時間にわたる変圧器の等価劣化時間の計算を示すグラフである。
【
図3B】負荷および周囲温度データを使用した24時間にわたる変圧器の等価劣化時間の計算を示すグラフである。
【
図3C】負荷および周囲温度データを使用した24時間にわたる変圧器の等価劣化時間の計算を示すグラフである。
【
図4】代表的な変圧器の温度(402)および負荷(404)プロファイルの時間毎の変化の一例を示すグラフである。
【
図5】変圧器の残存寿命を推定するためにいくつかの実施形態で使用することができる周囲温度変化および負荷変化の確率分布を示す。
【
図6】所与の期間における負荷と周囲温度との組み合わせの3次元確率密度関数である。
【
図7A】モンテカルロシミュレーションによって生成された変圧器の負荷プロファイルのグラフである。
【
図7B】モンテカルロシミュレーションによって生成された変圧器の周囲温度プロファイルのグラフである。
【
図8A】
図7Aおよび
図7Bの負荷および周囲温度プロファイルを使用して生成された確率的ホットスポットプロファイルを示す。
【
図8B】
図8Aの確率的ホットスポットプロファイルを使用して生成された確率的劣化プロファイルを示す。
【
図9】3つの別個の365日間の劣化のシミュレーションの累積劣化を示す。
【
図10】一年間の劣化プロファイルのヒストグラムを示す。
【
図12】サンプルサイズ(n)を増加させたシミュレーション結果の例を示す。
【
図13A】熱的に改良された紙の様々な水分および酸素レベルについてのホットスポット温度の関数としての変圧器の予想寿命のIEC60076-7のグラフである。
【
図13B】変圧器内の水分レベルの関数としての環境因子(A)のグラフである。
【
図14A】変圧器の水分レベルに対する予想変圧器寿命の依存性を示すグラフである。
【
図14B】確率的ホットスポットデータを確率的水分データと組み合わせて使用して生成された確率的劣化プロファイルを示す。
【
図15】異なる含水量に対する1年間の劣化プロファイルのヒストグラムを示す。
【
図16】いくつかの実施形態による動作のフローチャートである。
【
図17】変圧器劣化推定器の機能ブロック図である。
【
図19】いくつかの実施形態による動作のフローチャートである。
【
図20A】いくつかの実施形態による溶存ガス分析を実行するためのシステムを示すブロック図である。
【
図20B】いくつかの実施形態による溶存ガス分析を実行するためのシステムの機能モジュールを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
次に、本発明の概念の実施形態の例が示されている添付の図面を参照して、本発明の概念を以下により完全に説明する。しかしながら、本発明の概念は、多くの異なる形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、当業者に本発明の概念の範囲を十分に伝えるように提供される。また、これらの実施形態は相互に排他的ではないことに留意されたい。一実施形態からの構成要素は、別の実施形態に存在する/使用されると暗黙的に仮定されてもよい。
【0028】
以下の説明は、開示された主題の様々な実施形態を提示する。これらの実施形態は、教示例として提示されており、開示された主題の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。例えば、記載された実施形態の特定の詳細は、記載された主題の範囲から逸脱することなく、修正、省略、または拡張することができる。
【0029】
変圧器のホットスポット温度は、変圧器の劣化に影響する主要な因子であることが一般的に受け入れられている。ホットスポット温度は、変圧器内の最も高温の温度を指す。典型的には、変圧器のホットスポット温度は、直接測定されるのではなく、変圧器の設計(例えば、使用される絶縁、変圧器の冷却装置などのため)に従って適合された熱モデルならびに周囲温度および電気負荷データを使用して推定される。ホットスポット温度およびその経時変化は、変圧器の現場の地理的位置(周囲温度)および変圧器の電気負荷に依存する。したがって、ホットスポット温度値は、変圧器の周囲条件(温度および負荷)および設計に依存する変圧器の特性値である。変圧器の公称動作寿命は、通常、ホットスポット温度値を使用して、IEC60076-7 IEEE C57.19負荷ガイドに記載された式に従って計算される。一例として、110℃の一定のホットスポット温度の場合、変圧器のユニット毎の寿命は、以下の式[1]に従って推定することができる。
【0030】
【0031】
ここで、θHは変圧器のホットスポット温度である。したがって、変圧器(例えば、変圧器の設計)の絶縁として熱的に改良された紙を使用する110℃の一定のホットスポット温度では、変圧器の推定された単位当たりの(正規化された)寿命は1.0である。定格18万時間の変圧器の場合、これは、変圧器が定格負荷で110℃の一定のホットスポット温度で動作する場合に18万時間の予想寿命を有することを意味する。
【0032】
変圧器の劣化は、変圧器が公称ホットスポット温度より高い温度で動作するか低い温度で動作するかに応じて加速または遅延させることができる。これを説明するために、IEC60076-7およびIEEE C57.91規格はまた、式[2]として与えられる、推定ホットスポット温度に基づいて劣化加速係数FAAを推定するための式を指定している。
【0033】
【0034】
式[2]に見られるように、変圧器が110℃を超えるホットスポット温度で動作する場合、指数関数の引数は正であり、劣化加速係数FAAが1より大きい(劣化の加速を示す)ことを意味し、一方、変圧器が110℃を下回るホットスポット温度で動作する場合、指数関数の引数は負であり、劣化加速係数FAAが1未満である(劣化の低減を示す)ことを意味する。実際の劣化は、変圧器の単位当たりの寿命に劣化加速係数を乗算することによって推定することができる。熱的に改良された紙を含む変圧器の劣化加速係数FAAに対するホットスポット温度の変化の影響を
図1に示す。そこに見られるように、110℃から116℃へのホットスポット温度の上昇は、1から約2への劣化加速係数FAAの倍増をもたらし、これは、変圧器が116℃のホットスポット温度で動作する場合に、110℃のホットスポット温度で動作する場合よりも約2倍の速度で劣化すると予想されることを意味する。
【0035】
図1のグラフから、±6℃のホットスポット温度の変化は、劣化加速係数FAAを約0.5から約2まで変化させることができ、これが変圧器の実際の劣化速度が、かなり小さなホットスポット温度の変化に基づいて公称速度の約50%から公称速度の約200%まで変化し得ることを意味することが分かる。
【0036】
ホットスポット温度の推定は、様々な不正確さの影響を受ける可能性がある。例えば、ホットスポットが推定される位置は不正確であり、ホットスポットの不正確な推定につながる可能性があり、変圧器内の温度(例えば、トップオイル温度)を測定するために使用されるセンサは、いくらかの不正確さを有する可能性があり、ホットスポットが連続的に推定されるか断続的に推定されるかは、すべて測定結果に影響する可能性がある。これらの不正確さは、変圧器の劣化推定に影響する可能性がある。
【0037】
IEC60076-7およびIEEE C57.91規格によれば、ホットスポット温度は、式[3]に示すように3つの成分からなると仮定される。
【0038】
【0039】
ここで、θHは巻線の最高ホットスポット温度、θAは調査される負荷サイクル中の平均周囲温度、ΔθTOは周囲温度に対するトップオイルの上昇、ΔθHはトップオイル温度に対する巻線の最高スポット上昇である。トップオイル温度は、式[4]によって与えられる。
【0040】
【0041】
過渡巻線ホットスポット温度は、式[5]によって与えられる。
【0042】
【0043】
ここで、tは負荷の持続時間、ΔθH、Uは負荷Lの場合のトップオイル温度に対する最終的な巻線ホットスポット上昇、ΔθH、iはt=0の場合のトップオイル温度に対する初期巻線最高スポット上昇、τWはホットスポット位置hでの巻線時間定数である。
【0044】
このモデルでは、周囲温度測定/推定の誤差がホットスポット温度計算に影響する可能性があり、これは次に変圧器の劣化加速係数に影響する。例えば、
図2は、図示のような動作負荷プロファイルを与えられた変圧器の劣化時間に対する周囲温度の±2%誤差の影響を示している。
図2に示す例では、単一の2時間以内の変圧器の劣化は、周囲温度の変化に基づいて最大約±2.5時間変化し得る。
【0045】
上述したように、変圧器の実際の劣化は、周囲温度、水分含有量、酸素含有量、動作負荷および他の因子を含む、ホットスポット温度の他の多くの因子によって影響を受ける可能性がある。この複雑さを考慮すると、決定論的負荷および周囲温度因子を使用する熱性能に基づく業界で受け入れられている劣化モデルは、精度が限られている。したがって、変圧器の予想寿命を正確に決定することができるように、変圧器の将来の劣化を正確に推定する方法などの技術上の問題が現在存在する。関連する問題は、変圧器の劣化に影響する複数の因子を将来の劣化の推定値にどのように組み込むかである。
【0046】
本明細書に記載のいくつかの実施形態は、変圧器の動作負荷および周囲温度を含む、変圧器の劣化に影響する様々な因子の確率モデルに基づいて、変圧器の予想される将来の劣化を推定するシステム/方法を提供する。いくつかのさらなる実施形態は、変圧器の動作負荷および周囲温度に加えて、変圧器内の水分含有量および酸素含有量の確率モデルに基づいて、変圧器の予想される将来の劣化を推定するシステム/方法を提供する。またさらなる実施形態は、変圧器の特定の特性(設計特性、地理的位置特性、変圧器の使用に関する履歴データなど)に基づいて、変圧器の劣化推定値を適合させる。
【0047】
いくつかの実施形態は、以前に使用された決定論的モデルに依存するのではなく、変圧器の劣化に影響する因子の確率モデルを考慮する。確率モデルは、変圧器の実際の動作履歴データを使用して適合させることができる。これらの手法は、所与の変圧器について決定論的モデルよりも正確な残存寿命の推定値を提供することができる。
【0048】
本明細書に記載の確率的手法は、変圧器が将来受ける実際の負荷および周囲温度が未知であるという事実を説明するために使用される。本明細書に記載の確率的手法は、(過去および未来の)負荷および周囲の「未知の」決定論的値をそれらの最も可能性の高い確率的値(それらの変化をより良く表す確率分布関数に基づく)に置き換え、モンテカルロシミュレーションを適用して、多数のそれらのシナリオをシミュレートする。シミュレーション結果から、得られた劣化時間の「正規分布」で表される累積劣化(過去および未来)の推定値を得ることができる。
【0049】
図3Aから
図3Cは、負荷および周囲温度データを使用した例示的な24時間(第1の期間)にわたる変圧器の等価劣化時間の計算を示す。特に、
図3Aは、変圧器の時間毎の負荷302および周囲温度304のデータのグラフである。
図3Aに示す負荷プロファイルは、公称負荷が1.0の負荷として表されるように、単位当たりまたは正規化された項で与えられることに留意されたい。
図3Bは、
図3Aに示す負荷および周囲温度データに基づく、問題の変圧器の温度モデルに従って計算されたホットスポット温度(曲線306)のグラフである。
【0050】
図3Cは、
図3Bに示すホットスポット温度曲線に基づいて計算された、24時間の期間にわたる変圧器の劣化加速係数FAA(曲線308)のグラフである。劣化加速係数FAA曲線を積分すると、曲線310として示される、24時間にわたる変圧器の等価劣化時間が得られる。
図3Cに見られるように、
図3Aに示す周囲温度および負荷プロファイルに基づく
図3Bに示すホットスポット温度曲線を考慮すると、変圧器は、24時間で約35劣化時間(有効劣化とも呼ばれる)という累積「年齢」になると予想される。
【0051】
所与の変圧器の負荷および周囲温度プロファイルは可変であることが理解されよう。
図4は、長期間(例えば、数年)にわたって収集されたデータの蓄積から生じる24時間の代表的な変圧器の温度の時間毎の変化のプロファイル402および負荷の時間毎の変化のプロファイル404の一例を示す。各時間間隔の温度の変化は、各時間間隔で上限402Hおよび下限402Lによって境界を定めることができ、各時間間隔の負荷の変化は、各時間間隔で上限404Hおよび下限404Lによって境界を定められる。したがって、例えば、
図4に示す温度プロファイル402の場合、10時間目に、温度は約10℃~25℃の間のどこかに低下し得る。同様に、
図4に示す負荷プロファイル404の場合、10時間目に、温度は約0.6~0.8の間のどこかに低下し得る。
【0052】
図4に示す例示的な例では、周囲温度の変化は最大50%であり、負荷の変化は最大30%である。分析の目的のために、変圧器の周囲温度プロファイルおよび負荷プロファイルは既知であり、および/または第1の期間にわたって各時点の適切な下限および上限(限界)を考慮することによって推定することができると仮定する。例えば、第1の期間データは、時間毎、毎日、毎週、毎月、四半期毎、または毎年の期間であってもよく、同様の/対応する時点で長期間にわたって観察される変化に応じて使用することができる。
図4に示すプロファイルは、所与の24時間の期間のものであり、プロファイルは、通常、周囲温度および/または負荷要件の季節変化のために所与の年を通して変化し、データが第1の期間(この例では、24時間の期間)にわたって編成される特定の時点で周囲温度/負荷値の変化をもたらすことが理解されよう。
【0053】
いくつかの実施形態では、負荷、周囲温度、および/または他のデータは、変圧器監視システムを使用して変圧器について収集することができる。変圧器監視システムは、変圧器の故障を検出し、変圧器の状態評価のためのデータ収集機能を提供するように機能することができる。変圧器監視システムは、変圧器内の温度および電流を監視することができ、それにより変圧器の劣化および寿命評価のために変圧器のホットスポット温度および電気負荷を決定することができる。変圧器監視システムは、IECおよび/またはIEEE規格に従ってホットスポット温度を計算し、そのようなデータを使用して熱挙動をモデル化し、測定された読み取り値と予想される読み取り値との比較を可能にし、変圧器の将来の寿命の推定などの予測サービスを提供することができる。変圧器監視システムからのサービスは、変圧器の一部として、または変圧器および周囲の関連パラメータを測定するために変圧器内および周囲のセンサを使用して変圧器を監視し、監視対象の変圧器(その周囲を含む)を表すために確率モデルを適合させるための情報も有する遠隔変圧器監視システム(デバイスとして、またはデジタルシステム上で提供されるソフトウェアソリューションとして提供され得る)によって可能にされる高度な変圧器サービスとして提供することができる。変圧器監視システムの出力は、ネットワークインターフェースを介してローカルに(変圧器側で)および/または遠隔で(変圧器側以外で)監視することができる。変圧器監視システムは、いくつかの変圧器を監視し、本明細書に記載の方法を使用してそれらの劣化/残存寿命を評価するために使用することができる。本明細書に記載のいくつかの実施形態は、変圧器監視システムによって実行されてもよい。
【0054】
特に、いくつかの実施形態による変圧器監視システムは、周囲温度、変圧器の負荷、水分含有量、酸素含有量などの様々な変圧器関連パラメータに基づいて、変圧器の寿命の予測を含む、変圧器の将来の劣化の予測を生成することができる。変圧器の予測劣化および/または寿命は、変圧器のメンテナンスをスケジュールするため、変圧器の負荷を計画/調整するため、故障の事前警告を提供するため、および/またはアセット管理に関連する他の目的のために使用することができる。いくつかの実施形態による変圧器監視システムについて、
図20Aおよび
図20Bを参照して以下により詳細に説明する。
【0055】
変圧器に関連するパラメータ、例えば変圧器の負荷、および変圧器の周囲温度データは、変圧器内/変圧器側で行われた測定から変圧器監視システムによって取得することができる。水分含有量、溶存酸素含有量、および変圧器の診断/変圧器の寿命評価に有用な他のパラメータを含む変圧器関連パラメータの測定は、変圧器に取り付けられたセンサを用いて行うことができる。そのようなデータは、変圧器監視システム(監視対象の変圧器の履歴データ)によって記憶することができ、変圧器関連パラメータ、例えば変圧器の将来の負荷および周囲温度の予測を生成するために使用することができる。周囲温度データはまた、変圧器監視システムによって変圧器に関連する現場情報に基づいて所与の地理的位置の気象ツールから収集することができ、変圧器の現場での測定によって周囲データが収集されないかどうかの評価に使用することができる。以下でより詳細に説明するように、データの観察可能な変化を効果的に捕捉するために、負荷/周囲温度の確率的な日毎のプロファイルをモンテカルロシミュレーションまたは他の統計的技術によって生成することができ、そのようなプロファイルを使用して年間劣化推定値および寿命評価を計算することができる。モンテカルロシミュレーションによって複数の年間劣化推定値を生成することができる。そのような推定値を分析して、変圧器の予想年間劣化を決定することができる。
【0056】
図5は、変圧器の将来の劣化を予測する/残存寿命を推定するためにいくつかの実施形態で使用することができる周囲温度変化(502)および負荷変化(504)の一様確率分布を示す。
図5に示すように、推定の目的のために、いくつかの実施形態では、負荷および周囲温度の変化は、任意の所与の時間間隔において上限と下限との間に一様に分布すると仮定することができる。いくつかの実施形態では、異なる日毎の温度分布を使用することができることが理解されよう。日毎の最高温度および最低温度は、所与の地理的位置について容易に利用可能であり得る。そのような情報は、一様確率分布を使用して日毎の温度変化をモデル化するために使用することができる。
【0057】
しかしながら、変圧器監視システムは、周囲温度を監視し、変圧器の日毎の温度のより正確な確率分布を生成することができる。すなわち、変圧器監視システムは、現場の変圧器から取得された周囲温度データを履歴データとして使用し、特定の期間(日/月/年)について収集された履歴データに基づいて周囲温度の確率分布を生成することができる。それにより、周囲温度のそのような確率分布は、一様確率分布よりも、時刻および季節に基づく実際の温度条件および温度変化をより良好に表すことができる。
【0058】
例えば、日毎の温度変化の実際の確率分布は、正規分布、対数正規分布、または他の確率分布に従うことが分かり、これらは、一様分布の代わりにさらなる評価に使用することができる。一様分布は、変圧器の劣化を予測/推定する目的で温度変化をモデル化するための伝統的な選択であると現在考えられており、いくつかの実施形態では、本方法は、変圧器パラメータ(例えば、周囲温度および負荷)の測定/予想限界内の一様確率分布の使用を通して示される。
【0059】
これらの仮定に基づいて、負荷および周囲温度の確率モデルが所与の期間に対して生成され得る。確率モデルは、
図6に示す3次元確率密度関数602などの、所与の期間における負荷と周囲温度との組み合わせに対する3次元確率密度関数を提供することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、油温は変圧器の主要な劣化因子である、すなわち、水分および酸素含有量は劣化に著しく寄与せず、変圧器は熱的に改良された紙を使用していると仮定される。
【0061】
これらの仮定に基づいて、負荷-周囲温度プロファイルの可能性のある変化を捕捉するためにモンテカルロシミュレーションを使用して、24時間などの所与の期間(第1の期間)にわたって複数の潜在的な負荷-周囲温度プロファイルを生成することができる。結果として生じる負荷および周囲温度プロファイル702、704の例を、それぞれ
図7Aおよび
図7Bに示す。負荷および周囲温度プロファイルは、確率モデル(利用可能な測定/取得されたデータから作成された確率密度関数)に基づいて生成された、経年変化に影響する因子のプロファイル(確率プロファイルとも呼ばれる)の例である。負荷および周囲温度について可能性のある多くの異なるプロファイルを
図7Aおよび
図7Bに示す。
【0062】
図7Aおよび
図7Bに示す負荷および周囲温度プロファイルは、任意の所与の時間に、負荷が所与の時間に観測された負荷確率分布に基づく確率で変化し得、周囲温度が所与の時間に観測された周囲温度確率分布に基づく確率で変化し得るという仮定に基づいて生成される。すなわち、一様負荷確率分布(仮定)の例として、任意の所与の時間において、(最小から最大までの)範囲内の任意の負荷値が等しく発生する可能性がある。同様に、一様温度確率分布の場合、任意の所与の時間において、その範囲内の任意の周囲温度が同様に発生する可能性がある。先に述べたように、変圧器監視システムは、
図7Aおよび
図7Bに示す負荷および周囲温度プロファイルを計算するために、記憶された履歴データから導出された任意の所与の時間(時間)における観測された負荷および温度確率分布を利用することができ、モンテカルロシミュレーション技術を利用して、将来の負荷および周囲温度の統計的変化を考慮して、変圧器の残存寿命のより堅牢で正確な予測を提供することができる。
【0063】
次に、
図7Aおよび
図7Bに示すような各確率的シナリオについて、対応するホットスポットプロファイルが計算され、
図8Aに示す複数の確率的ホットスポットプロファイル802が得られる。すなわち、モンテカルロシミュレーションによって生成された負荷および周囲温度プロファイル毎に、各時点のホットスポット値を含む確率的ホットスポットプロファイルが生成される。確率的ホットスポットプロファイルは、変圧器で行われた温度測定(周囲温度、最高油温など)に基づいており、問題の変圧器または変圧器設計に固有であり得るホットスポットモデルを使用して計算され(一般モデルの適合)、一意性は、油温定数、巻線温度定数、定格ホットスポット勾配、定格油上昇、および問題の変圧器のホットスポット温度特性を構成する他のパラメータなどの様々な定数で捕捉される。
【0064】
次に、各確率的ホットスポットプロファイルについて、対応する確率的劣化時間プロファイルを、1日(24時間)に得られた対応する劣化加速FAA曲線を計算し積分することによって、その年の各日(365日間)について生成する。得られた確率的劣化時間プロファイル806(有効劣化プロファイルとも呼ばれる)を、24時間の総有効劣化時間値のヒストグラム808と共に
図8Bに示す。
図8Bに見られるように、この例では、確率的に生成された温度および負荷プロファイルに基づいて、24時間にわたる変圧器の有効劣化時間は、約5時間から約31時間まで変化する。
【0065】
したがって、複数のシミュレートされた24時間サイクルのこれらの推定劣化時間を合計して、変圧器の累積劣化を推定するための年間の総有効劣化時間数を決定することができる。例えば、あるシミュレーションでは、変圧器は、1年間の総劣化時間数5785を有すると予測される。これは、1年間(8760時間に等しい)において、変圧器が有効に劣化するのは5785時間だけであると予想されることを意味する。
【0066】
図9は、3つの別個の365日間の劣化時間シミュレーション902の将来の劣化シナリオを示す。
図9に見られるように、シミュレーションは、1年間にわたる約5700時間の同様の累積劣化時間を推定し、ひいては年間劣化シナリオを構成する。したがって、将来の劣化シナリオは、周囲温度および負荷などのランダムに選択された変圧器の劣化因子に基づいて、所与の期間にわたる変圧器の将来の劣化を推定する確率的シナリオである。
【0067】
図8Bに示す複数の確率的劣化時間プロファイルに対する1年間の予想有効劣化を、
図10に示すヒストグラム1002に示す。
図10に示すように、分布は、5700時間を少し上回るピークを有する正規分布として近似することができる。このデータから、変圧器の予想年間有効劣化時間数の平均および標準偏差を計算することができる。正規分布への近似は、中央限界理論に従って行われ、それにより、複数の劣化期間(例えば、365×24時間サイクル)の分布の合計を有し、その結果、計算された劣化(すなわち、時間毎の負荷の統計的分布および時間毎の周囲温度の統計的分布)をもたらす成分を表す元の確率密度関数に関係なく、平均および標準偏差を計算することができる正規分布が得られる。したがって、中央限界理論により、正規分布に関連する計算を使用して、この情報に基づいて1年間の予想有効劣化時間数の95%信頼区間を決定することが可能である。特に、95%信頼区間は、以下の式[6]に従って計算される。
【0068】
【0069】
ここで、nはサンプル数、meanはサンプル平均、σはサンプル標準偏差である。
例えば、
図11に示すように、一例では、100のサンプルについて、平均は5738時間であり、標準偏差(σ)は110時間である。したがって、その場合の劣化の95%信頼区間は、5738±21.6有効劣化時間または239±0.9有効劣化日数である。18万時間の公称予想寿命を考慮すると、これは、問題の変圧器が18万/5738=31.4年の実際の動作寿命を有すると予想されることを意味する。
【0070】
図12は、サンプルサイズ(n)が増加した、すなわちシミュレーションの数が増加した例を示す。
図12(a)は、n=100のシミュレーションの有効年間劣化時間の分布を示し、
図12(b)は、n=500のシミュレーションの有効年間劣化時間の分布を示し、
図12(c)は、n=1000のシミュレーションの有効年間劣化時間の分布を示す。図から分かるように、シミュレーションの数が増えても、平均および標準偏差はごくわずかしか変化しない。
【0071】
上述したように、酸素および/または水分の存在は変圧器内の固体絶縁体の性能に影響する可能性があるため、変圧器の有効劣化は、変圧器内の水分および/または酸素の存在によっても影響を受ける可能性がある。
図13Aは、熱的に改良された紙の様々な水分および酸素レベルについてのホットスポット温度の関数としての変圧器の予想寿命のIEC60076-7のグラフである。
図13Aに見られるように、酸素および水分含有量が増加するにつれて予想寿命曲線は下方にシフトし、寿命が短くなり、酸素の存在は寿命に対してより強い負の影響を有する。
図13Aのグラフは、アレニウスの式を適用することによって生成され、環境因子(A)および活性化エネルギーE
Aのパラメータは、水分および酸素レベルに基づいて選択される。IEC60076-7の式[7]は、
図13のグラフを生成するために使用される式を示し、表1は、使用されるパラメータを示す。
【0072】
【0073】
【0074】
式[7]では、以下の量が使用される。DPendは変圧器の寿命末期における絶縁紙の重合度(200と推定)、DPstartは変圧器の絶縁紙の初期重合度(1100と推定)、Aは1/h単位の表した環境因子、EAはKJ/mol単位の活性化エネルギー、tは時間単位の変圧器の寿命、RはJ/(K-mol)単位のガス定数、およびθhはホットスポット温度である。
【0075】
図13Aに示す曲線は、個別のレベルの水分のみの曲線であることが理解されよう。いくつかの実施形態によれば、これらの曲線は、
図13Bに示すように、断熱紙の含水量と環境因子Aとの間の連続的な関係を得るために補間することができる。すなわち、曲線を補間して、絶縁紙の水分の関数としてAを得ることができる。このデータから、変圧器の予想寿命を水分の関数として示す曲線群を生成することができる。変圧器監視システムは、油中の水分および溶存酸素の測定値を利用して紙絶縁の水分を推定するか、または文献で報告されているデータ範囲を利用して、紙中の水分および酸素の存在を確率的に説明し、上記の適切な曲線を作成し、それによって変圧器の残存寿命の評価においてこれらの因子(水分、酸素)を考慮することができる。
【0076】
変圧器の予想寿命の水分への依存性は
図14Aのグラフに見ることができ、これは、熱的に改良された紙の様々なホットスポット温度に対する変圧器の固体絶縁体の水分レベルの関数としての予想寿命を示す。
【0077】
図14Bを参照すると、変圧器の水分の確率モデルは、変圧器に対して行われた測定から導出された、または特定のタイプの変圧器に対して観察される可能性が高い限界内の水分確率の一様分布を仮定することによって生成することができる。確率的水分レベルと共に
図8に示す確率的ホットスポットプロファイルに基づいていくつかの確率的劣化プロファイルをシミュレートすることにより、
図14Bに示すように、変圧器内の水分を考慮した変圧器劣化のヒストグラム1402を生成することができる。水分確率の実際の分布が既知である場合、そのような分布を一様分布の代わりに使用できることが理解されよう。
【0078】
したがって、水分および酸素含有量の関係を上記の予想寿命推定手順に追加することができ、異なる予想有効劣化プロファイルが得られる。1000個の365日間のシナリオをシミュレートした結果を
図15に示す。そこに示されているように、変圧器内の異なるレベルの水分および酸素に対して異なる有効劣化プロファイルが生成される。
【0079】
いくつかの実施形態によるシステム/方法の動作を
図16に示す。そこに示されているように、変圧器の将来の劣化を推定する方法は、変圧器の有効劣化に影響する因子の確率モデルを生成するステップ(ブロック1602)と、変圧器の劣化に影響する因子の確率プロファイルを生成するステップ(ブロック1604)と、確率プロファイルから予想されるホットスポットプロファイルを生成するステップ(ブロック1606)と、予想ホットスポットプロファイルに基づいて変圧器の複数の将来の寿命シナリオをシミュレートするステップ(ブロック1608)と、複数の将来の寿命シナリオから変圧器の有効な劣化を推定するステップ(ブロック1610)とを含む。
【0080】
変圧器の有効劣化に影響する因子は、負荷条件、周囲温度、変圧器内の水分レベル、および変圧器内の酸素レベルなどの因子のうちの1つまたは複数を含むことができる。複数の将来の寿命シナリオは、将来の寿命シナリオのモンテカルロシミュレーションを使用してシミュレートすることができる。モンテカルロシミュレーションは、システムに含まれる変数において観察可能な統計的変化を考慮して予測することができるプロセスにおける異なる結果の確率をモデル化するために使用される技術である。モンテカルロシミュレーションでは、システムパラメータのランダムサンプルが生成され、複雑なシステムまたはプロセスまたはそのモデルへの入力として提供され、結果として得られる結果が測定/決定される。このプロセスは、異なるランダムに選択された入力で何度も繰り返され、システムまたはプロセスに関する情報は、出力の統計的パラメータを調べることによって収集することができる。様々な実施形態では、モンテカルロシミュレーションは、多数の可能性のある条件(例えば季節/環境の変化について)およびその寿命において変圧器(変圧器条件)をもたらす可能性がある因子(例えば、電気負荷、水分レベル、酸素レベル)の可能性のある値を考慮し、したがって、変圧器の劣化因子および残存寿命の推定におけるこれらの変化を考慮するために、多数のシミュレーションを実行するために使用される。履歴データ(変圧器から収集された測定データ、文献に提供されている挙動曲線/データ範囲、確立された数式の使用などの1つまたは複数の手段から収集される)から導出された確率モデルは、様々な環境条件および変圧器条件のシミュレーションに使用される。このようなシミュレーションのための条件は、より良好な統計的信頼性で変圧器の劣化因子および残存寿命(残存寿命)を推定するための将来の寿命シナリオと呼ばれている。
【0081】
図17は、変圧器の残存寿命の推定値を生成するためのシステムを示す。いくつかの実施形態によれば、寿命末期(EOL)推定値と呼ばれるそのような推定値は、周囲温度および/または動作負荷の予想される変化、または変圧器の動作寿命の間の任意の時間などの予測/予想劣化因子に基づいて、変圧器の寿命の初期に生成することができる。例えば、
図18に示すように、EOLの推定は、変圧器の寿命の開始時(t=0)、またはt=0と変圧器のEOLとの間の時間t1に行われてもよい。任意の所与の時間tにおいて、変圧器の残存寿命の推定値は、時間tまでの推定有効劣化と、時間tと変圧器のEOLとの間の変圧器の将来の有効劣化の予測との組み合わせに基づく。時間tまでの変圧器の推定有効劣化は、時間tまでの既知の負荷および周囲温度変化などの既知または推定劣化因子に基づくことができる。時間tとEOLとの間の変圧器の将来の有効劣化の予測は、予測/予想劣化因子に基づく。
【0082】
予測/推定劣化因子は、劣化因子の既知の過去の値に基づいてもよい。例えば、変圧器の寿命の初期に、EOL推定値は、予想周囲温度および動作負荷変化のモデルに基づいて、将来の変圧器の有効劣化の予測から完全に形成される。変圧器が動作すると、変圧器が受ける実際の周囲温度および動作負荷変化を反映するデータを記録することができる。将来の有効劣化を推定するために使用される予想周囲温度および動作負荷変化のモデルは、記録されたデータを使用して更新されてもよく、これは、経時的にEOL推定の精度を改善し得る。
【0083】
再び
図17を参照すると、変圧器劣化推定器200は、変圧器の実際のまたは推定された劣化因子履歴、例えば、その時点までに変圧器が経験した実際のまたは推定された周囲温度および動作負荷に基づいて、変圧器の過去の有効な劣化の推定値を生成する過去の有効劣化推定器230を含む。変圧器劣化推定器200はまた、変圧器の過去の劣化の推定値および変圧器の将来の劣化の推定値に基づいて変圧器の残存寿命の予測を生成する、将来の有効劣化予測器220を含む。変圧器の将来の劣化の予測は、問題の変圧器の予測劣化因子プロファイル(例えば、履歴または平均周囲温度および/または動作負荷プロファイル)と実際の劣化因子データの両方を考慮に入れることができる劣化因子モデルに基づいている。
【0084】
例えば、公称寿命が18万時間の変圧器の寿命初期に、過去の有効劣化推定器230は、0時間の過去の有効寿命を生成する。将来の有効劣化予測器220は、予測劣化因子プロファイルのみを考慮に入れた劣化因子モデルのみに基づいてEOL推定値を生成する。
【0085】
変圧器の寿命中のしばらく後の時点(例えば、t=t1において)に、過去の有効劣化推定器230は、例えば、変圧器が経験した実際の周囲温度および負荷に基づいて、変圧器の過去の有効劣化の推定値を生成する。一例では、過去の有効劣化推定器230は、10万時間の変圧器の有効寿命を生成することができる。EOL推定値を決定するために、将来の有効劣化予測器220は、予測劣化因子プロファイルに基づいて、変圧器が年間に経験する有効劣化時間数の予測を生成する。引き続き例を続けると、将来の有効劣化予測器220は、予測劣化因子(周囲温度、負荷、水分含有量、酸素含有量など)に基づいて、変圧器が年間6000有効劣化時間の割合で(所定の信頼度内で)劣化すると決定することができる。変圧器の残りの予想寿命は、18万-10万=8万時間と計算される。この量を将来の有効劣化予測器220によって決定される有効劣化率で割ると、EOLまで8万(時間)/6,000(時間/年)=13.33年の値が生成される。
【0086】
図19は、いくつかの実施形態による変圧器劣化推定器200の動作のフローチャートである。本方法は、変圧器の動作中に変圧器の有効劣化に影響する因子を表す動作データを収集するステップ(ブロック1902)と、変圧器の有効劣化に影響する因子の確率モデルを更新するステップ(1904)とを含む。
【0087】
本方法は、動作データに基づいて変圧器の有効現在期間を決定するステップ(ブロック1906)をさらに含む。変圧器の予想残存寿命は、複数の将来の劣化シナリオから、変圧器の有効現在期間および変圧器の公称予想寿命から推定される。したがって、本方法は、有効現在期間および将来の劣化シナリオに基づいて変圧器の残存寿命を決定するステップ(ブロック1908)を含む。
【0088】
図20Aは、変圧器および変圧器10A、10Bの寿命末期(EOL)を推定するための変圧器監視システム30のブロック図である。いくつかの実施形態による変圧器監視システム30は、1つまたは複数の変圧器10A、10Bを監視することができる。いくつかの実施形態では、変圧器監視システム30は、監視および寿命評価のための装置として提供される変圧器10A内に統合され、他の実施形態では、変圧器監視システム30は、監視対象の変圧器10A、10Bとは別個のものである。
【0089】
変圧器監視システム30は、プロセッサ回路34と、プロセッサ回路に結合された通信インターフェース32と、処理回路34に結合されたメモリ36とを含む。メモリ36は、プロセッサ回路によって実行されると、プロセッサ回路に本明細書に記載の動作のいくつかを実行させる機械可読コンピュータプログラム命令を含む。例えば、変圧器監視システム30は、変圧器劣化推定器200の動作を実行することができる。
【0090】
図示されるように、変圧器監視システム30は、有線または無線通信チャネル14を介して、他のデバイス、例えば変圧器10A、10B内のセンサ20との通信を提供するように構成された通信インターフェース32(ネットワークインターフェースとも呼ばれる)を含む。
【0091】
変圧器監視システム30はまた、処理回路34(プロセッサとも呼ばれる)と、処理回路34に結合されたメモリ36(メモリとも呼ばれる)とを含む。他の実施形態によれば、処理回路34は、別個のメモリ回路が必要とされないようにメモリを含むように定義されてもよい。
【0092】
本明細書で説明するように、変圧器監視システム30の動作は、処理回路34および/または通信インターフェース32によって実行することができる。例えば、処理回路34は、通信インターフェース32を制御して、通信インターフェース32を介して通信を1つもしくは複数の他のデバイスに送信し、および/またはネットワークインターフェースを介して通信を1つもしくは複数の他のデバイスから受信することができる。さらに、モジュールはメモリ36に記憶されてもよく、これらのモジュールは、モジュールの命令が処理回路34によって実行されると、処理回路34がそれぞれの動作(例えば、例示的な実施形態に関して本明細書で説明される動作)を実行するように命令を提供してもよい。
【0093】
変圧器10A、10Bは、例えば高電圧変圧器であってもよく、オイル充填チャンバ12を含む。センサ20は、オイル充填チャンバ12内に、またはそれに隣接して設けられる。センサ20は、動作負荷、周囲温度、水分および/または酸素含有量などの変圧器10A、10Bに関連する様々な量を測定し、通信チャネル14を介して変圧器監視システム30に測定値を送信する。通信チャネル14は、有線または無線リンクを含むことができ、いくつかの実施形態では、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)または4Gもしくは5G通信ネットワークなどのセルラー通信ネットワークを含むことができる。
【0094】
変圧器監視システム30は、変圧器10A、10Bから動作負荷、温度、水分および/または酸素含有量のオンラインまたはオフライン測定値を受信し、測定値を処理して変圧器10A、10Bの予想EOLを決定することができる。スタンドアロン装置として示されているが、変圧器監視システム30は、サーバ、サーバクラスタ、および/またはアセット監視を提供するクラウドベースのリモートサーバシステムに実装することができる。測定データは、変圧器監視システム30によって、1つの変圧器および/または複数の変圧器から取得することができる。
【0095】
本明細書に記載の変圧器監視システム30は、多くの異なる方法で実施することができる。例えば、いくつかの実施形態による変圧器監視システム30は、オンライン/オフラインデータを受信することができ、受信データは、様々な実施形態で説明される推定/シミュレーションのために考慮することができる異なる挙動パターン(例えば、季節、電気負荷、または時間に関する変圧器パラメータ)を識別するために学習および分類のために装置に構成された機械学習技術によって使用される。装置は、測定データを受信するために、1つまたは複数の変圧器10に接続可能であってもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、変圧器監視システム30は、いくつかの変圧器10に関する測定データを受信するように接続可能であってもよい。
【0097】
図20Bは、変圧器監視システム30のメモリ36に記憶することができる様々な機能モジュールを示す。モジュールは、通信インターフェース32を介して変圧器10内のセンサ20から測定値を取得するための劣化因子測定モジュール36Aと、変圧器の将来の有効劣化の推定値を生成する将来劣化予測モジュール36Bと、例えば変圧器が経験した実際の劣化因子に基づいて変圧器の過去の劣化の推定値を生成する過去劣化推定モジュール36Cと、将来の劣化因子プロファイルを推定する劣化因子モデル36Dとを含むことができる。
【0098】
本発明の概念の様々な実施形態の上記の説明において、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の概念を限定することを意図するものではないことを理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明の概念が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されているものなどの用語は、本明細書および関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであることがさらに理解されよう。
【0099】
ある要素が別の要素に「接続される」、「結合される」、「応答する」、またはその変形と言及される場合、それは他の要素に直接接続、結合、または応答することができ、または介在要素が存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素に対して「直接接続される」、「直接結合される」、「直接応答する」、またはそれらの変形であると言及される場合、介在する要素は存在しない。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。さらに、本明細書で使用される「結合される」、「接続される」、「応答する」、またはそれらの変形は、無線で結合、接続、または応答することを含むことができる。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことが意図される。周知の機能または構成は、簡潔さおよび/または明瞭さのために詳細に説明されない場合がある。「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0100】
本明細書では、第1、第2、第3などの用語を使用して様々な要素/動作を説明することができるが、これらの要素/動作はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素/動作を別の要素/動作と区別するためにのみ使用される。したがって、いくつかの実施形態における第1の要素/動作は、本発明の概念の教示から逸脱することなく、他の実施形態では第2の要素/動作と呼ぶことができる。同じ参照番号または同じ参照符号は、本明細書全体を通して同じまたは類似の要素を示す。
【0101】
本明細書で使用される場合、「comprise」、「coprising」、「comprises」、「include」、「incluidng」、「includes」、「have」、「has」、「having」という用語、またはそれらの変形はオープンエンドであり、1つまたは複数の述べられた特徴、整数、要素、ステップ、構成要素、または機能を含むが、1つまたは複数の他の特徴、整数、要素、ステップ、構成要素、機能、またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。
【0102】
例示的な実施形態は、本明細書では、コンピュータ実装方法、装置(システムおよび/またはデバイス)および/またはコンピュータプログラム製品のブロック図および/またはフローチャート図を参照して説明される。ブロック図および/またはフローチャート図のブロック、ならびにブロック図および/またはフローチャート図のブロックの組み合わせは、1つまたは複数のコンピュータ回路によって実行されるコンピュータプログラム命令によって実施することができることを理解されたい。これらのコンピュータプログラム命令は、機械を製造するために汎用コンピュータ回路、専用コンピュータ回路、および/または他のプログラマブルデータ処理回路のプロセッサ回路に提供することができ、それにより、コンピュータおよび/または他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令は、ブロック図および/またはフローチャートブロックで指定された機能/動作を実施するために、トランジスタ、メモリ位置に格納された値、およびそのような回路内の他のハードウェア構成要素を変換および制御し、それによりブロック図および/またはフローチャートブロックで指定された機能/動作を実施するための手段(機能)および/または構造を作成することができる。
【0103】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置に特定の方法で機能するように指示することができる有形のコンピュータ可読媒体に記憶されてもよく、その結果、コンピュータ可読媒体に記憶された命令は、ブロック図および/またはフローチャートブロックで指定された機能/動作を実施する命令を含む製品を製造する。したがって、本発明の概念の実施形態は、集合的に「回路」「モジュール」またはその変形形態と呼ばれる場合があるデジタル信号プロセッサなどのプロセッサ上で実行されるハードウェアおよび/またはソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)で実施することができる。
【0104】
いくつかの代替実施態様では、ブロックに記載された機能は、フローチャートに記載された順序とは異なる順序で行われてもよいことにも留意されたい。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際には、実質的に同時に実行されてもよく、またはブロックは、関連する機能/動作に応じて、時には逆の順序で実行されてもよい。さらに、フローチャートおよび/またはブロック図の所与のブロックの機能は、複数のブロックに分離されてもよく、および/またはフローチャートおよび/またはブロック図の2つ以上のブロックの機能は、少なくとも部分的に統合されてもよい。最後に、本発明の概念の範囲から逸脱することなく、図示されているブロック間に他のブロックを追加/挿入することができ、および/またはブロック/動作を省略することができる。さらに、図のいくつかは、通信の主な方向を示すために通信経路上に矢印を含むが、通信は、描かれた矢印とは反対の方向に発生し得ることを理解されたい。
【0105】
本発明の概念の原理から実質的に逸脱することなく、実施形態に対して多くの変形および修正を行うことができる。そのような変形および修正はすべて、本発明の概念の範囲内に含まれることが意図されている。したがって、上記で開示された主題は、限定ではなく例示と見なされるべきであり、実施形態の例は、本発明の概念の精神および範囲内に入るすべてのそのような修正、強化、および他の実施形態を網羅することを意図している。したがって、法律によって許容される最大限の範囲で、本発明の概念の範囲は、実施形態およびそれらの均等物の例を含む本開示の最も広い許容される解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限または限定されるべきではない。