(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 33/52 20060101AFI20240208BHJP
B29C 33/38 20060101ALI20240208BHJP
B29C 39/02 20060101ALI20240208BHJP
B29C 39/26 20060101ALI20240208BHJP
B29C 39/36 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B29C33/52
B29C33/38
B29C39/02
B29C39/26
B29C39/36
(21)【出願番号】P 2019232596
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】320005501
【氏名又は名称】株式会社電通
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】久保田 絵美
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-214240(JP,A)
【文献】特開昭51-081858(JP,A)
【文献】特開平10-314891(JP,A)
【文献】特開平05-337594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00-33/76
B29C 39/00-39/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体内に流動性の材料を流し込む工程と、
前記流動性の材料における所望の位置に、水溶性の紙でできた型が位置決めされた状態で、前記流動性の材料を硬化させる工程と、
水洗により前記型を溶かす工程と、を備え
、
前記型の表面の少なくとも一部は、水溶性材料でコーティングされている成形方法。
【請求項2】
前記水溶性材料は、水溶性の糊である、請求項1に記載の成形方法。
【請求項3】
前記
流動性の材料は、レジンである、請求項1
または2に記載の成形方法。
【請求項4】
前記型は、目的物が有する空洞に相当する形状であり、
前記空洞は、前記目的物の表面における開口部から内部に向かっており、前記空洞の少なくとも一部は、前記開口部より大きい、請求項1乃至
3のいずれかに記載の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性の紙でできた型を用いた成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加工方法の1つとして、鋳造が広く知られている。鋳造は、金属などの材料を融点よりも高い温度で熱して液体にしたあと、鋳型に流し込み、冷やして目的の形状に固めるものである(非特許文献1)。
【0003】
例えば、
図1(a)に示す断面形状を有する目的物100を鋳造によって成形することを考える。この目的物100は内部に空洞1aを有する。空洞1aは、目的物100の表面1bにおける開口部1cからから底面1dに向かって幅狭となっている。すなわち、開口部1cが内部の空洞1aより広い。
【0004】
この場合、
図1(b)に示すように、枠体11内に空洞1aに相当する形状の鋳型12を固定した状態で液状の材料13を流し込み、これを冷やして固める。そして、固まった後に枠体11および型12を取り外すことで、
図1(a)に示す目的物100が得られる。
【0005】
このように、内部に空洞1aを有する場合でも、開口部1cが広い場合には鋳造による加工が容易である。
【0006】
次に、
図2(a)に示す断面形状を有する目的物200を鋳造によって成形することを考える。この目的物200も内部に空洞2aを有する。ただし、空洞2aは、目的物100の表面2bにおける開口部2cからから底面2dに向かって幅広となっている。すなわち、開口部2cが内部の空洞2aより狭い。
【0007】
この場合、仮に
図1(b)と同様、枠体21内に空洞2aに相当する形状の鋳型22を固定した状態で液状の材料23を流し込み、これを冷やして固めたとする(
図2(b))。しかし、開口部2cが内部の空洞2aより狭いため、鋳型22が金型である場合、これを取り外すのは極めて困難である(いわゆる「アンダーカット」の問題)。
【0008】
そこで、鋳型22を砂型とすることも考えられる。砂型であれば、材料が固まった後に砂型をかき出すことによって鋳型22を取り外せる。そのため、砂型を用いることで、複雑な形状の目的物の成形が可能である。しかし、砂型の場合、材料23に制限があるし、砂型を作製するために必要な工程数が多いために製造コストが高くなる傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%8B%B3%E9%80%A0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、複雑な形状の目的物を成形することが可能な成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、枠体内に流動性の材料を流し込む工程と、前記流動性の材料における所望の位置に、水溶性の紙でできた型が位置決めされた状態で、前記流動性の材料を硬化させる工程と、水洗により前記型を溶かす工程と、を備える成形方法が提供される。
なお、本方法によって所定の目的物が成形されるので、本方法は物を製造する方法である。
【0013】
前記型の表面の少なくとも一部は、水溶性材料でコーティングされているのが望ましい。
前記水溶性材料は、例えば水溶性の糊である。
【0014】
前記材料は、例えばレジンである。
【0015】
前記型は、目的物が有する空洞に相当する形状であり、前記空洞は、前記目的物の表面における開口部から内部に向かっており、前記空洞の少なくとも一部は、前記開口部より大きくてもよい。
【発明の効果】
【0016】
複雑な形状の目的物を成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】本発明の一実施形態における目的物300の断面図。
【
図4】
図3に示す目的物300の製造するための成形手順を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0019】
図3は、本発明の一実施形態における目的物300の断面図である。この目的物300も内部に空洞3aを有する。空洞3aは、目的物300の表面3bにおける開口部3cからから底面3dに向かって幅広となっている。すなわち、開口部3cが内部の空洞3aより狭い。
【0020】
なお、本発明における目的物300の形状は
図3に示すものに限られないが、目的物の表面における開口部から内部に向かう空洞(凹部)を有し、空洞の一部が開口部より大きい(幅広である)ような目的物の成形に好適である。また、目的物300は、例えば花瓶であるが、その他アクセサリーやインテリアなどへの展開も可能である。
【0021】
図4は、
図3に示す目的物300の製造するための成形手順を示す工程図である。また、
図5~
図9は目的物300の製造工程図である。
【0022】
まず、本実施形態の大きな特徴として、水溶性の紙を用いて、空洞3aに相当する形状の型32を作製する(ステップS1)。紙であるので、比較的複雑な形状の型32も容易に作成可能である。そして、必要に応じて型32の表面の全体または一部(特に、後述する
図6において、材料33と接する部分)を水溶性材料でコーティング(マスキング)する(ステップS2)。水溶性材料として、例えば水溶性の糊を適用することができる。
【0023】
次いで、
図5(a)に示すように、型32を固定する(ステップS3)。固定の手法は任意であって
図5(a)には示していないが、例えば支持部材を用いて型32と枠体31とを固定すればよい。そして、
図6に示すように、流動性の材料33を枠体31内に流し込む(ステップS4)。これにより、流動性の材料33における所望の位置に型32が位置決めされる。なお、材料33にスポットを付しているのは、材料33が流動性を有する状態であることを示している。
【0024】
材料33に特に制限はないが、型32が水溶性の紙でできていることから、型32を変形させるほど高密度ではなく、型32を溶かすほどの水分を含んでおらず、型32が燃えるほど高温にならないものが望ましい。材料33の具体例としてはレジンが好適であり、その他エポキシ系樹脂、シリコンなども適用可能である。
【0025】
砂型とは異なり、本実施形態の型32は紙製であるから、レジンなどの材料33がしみ込みにくい。また、材料33の表面をコーティングしておくことで、材料33が型32にくっついてしまうのを抑えられる。
【0026】
なお、
図4のステップS3,S4は逆の順でもよい。すなわち、まず
図5(b)に示すように、流動性の材料33を枠体31内に流し込み(ステップS4)、次いで、
図6に示すように、型32を固定してもよい(ステップS3)。いずれにしても、流動性の材料33における所望の位置に型32が位置決めされればよい。
【0027】
このように、
図7に示すように、流動性の材料33における所望の位置に型32が位置決めされた状態において、流動性の材料33を硬化させる(ステップS5)。
図7において、材料33にスポットを付していないのは、材料33が硬化した状態であることを示している。例えば材料33がUV(紫外線)硬化性のレジンである場合、
図6の状態で材料33にUVを照射することによって材料33が硬化し、
図7の状態となる。
【0028】
次いで、
図8に示すように、硬化した材料33を枠体31から取り外す(ステップS6)。続いて、
図9に示すように、水洗して型32を溶かす(ステップS7)。これにより、ステップS2でコーティングされた水溶性材料も溶ける。型32が水溶性であるため、
図3に示すように、開口部3cが内部の空洞3aより狭い場合や、型32が複雑な形状である場合でも、型32を取り外すことができる。その後、必要に応じて、表面にやすり掛けをしてバリを除去したり透明度を高めたりして仕上げる。以上により、
図3に示す目的物300ができる。
【0029】
このように、本実施形態では、水溶性の紙を用いるため、複雑な形状の目的物(特に、目的物の表面における開口部より大きい(幅広である)空洞を有する目的物)を簡易に成形できる。
【0030】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。
【符号の説明】
【0031】
100,200,300 目的物
11,21,31 枠体
12,22,32 型
13,23,33 材料