(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ゲートランナ付きターンオフパワー半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 29/744 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H01L29/74 C
(21)【出願番号】P 2022559656
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 EP2021058524
(87)【国際公開番号】W WO2021198383
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-05-01
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビクストレーム,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】スティアスニー,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】コミン,ポール
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503978(JP,A)
【文献】特開平04-320374(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104600101(CN,A)
【文献】欧州特許出願公開第02930753(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第00592991(EP,A1)
【文献】米国特許第06570193(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/744
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面(111)と前記第1の主面(111)の反対側の第2の主面(112)とを有する半導体ウェハ(110)と、
複数のサイリスタセルと、
前記第1の主面(111)上に配置されている共通ゲートコンタクト(60)と、
複数のストライプ状の導電性の第1のゲートランナ(70)であって、各第1のゲートランナ(70)が第1の端部(70a)と、前記第1の端部(70a)とは反対側の第2の端部(70b)と、前記第1の端部(70a)と前記第2の端部(70b)とを接続する第1の接続部(70c)とを有し、前記第1の端部(70a)が前記共通ゲートコンタクト(60)に直接接続され、各第1のゲートランナ(70)の長手方向主軸(MA1)が前記共通ゲートコンタクト(60)から離れるように横方向に延びる、複数のストライプ状の導電性の第1のゲートランナ(70)と
を備えるターンオフパワー半導体デバイスであって、
各サイリスタセルは、前記第1の主面(111)から前記第2の主面(112)まで順に、
・第1の導電型の第1のエミッタ層部分(154a)と、
・前記第1の導電型とは異なる第2の導電型の第1のベース層部分(155a)であって、前記第1のエミッタ層部分(154a)が、前記第1のベース層部分(155a)と直接接触して、前記第1のベース層部分(155a)と前記第1のエミッタ層部分(154a)との間に第1のpn接合を形成する、第1のベース層部分(155a)と、
・前記第1の導電型の第2のベース層部分(159a)であって、前記第1のベース層部分(155a)が、前記第2のベース層部分(159a)と直接接触して、前記第1のベース層部分(155a)と前記第2のベース層部分(159a)との間に第2のpn接合を形成する、第2のベース層部分(159a)と、
・前記第2のベース層部分(159a)によって前記第1のベース層部分(155a)から分離された前記第2の導電型の第2のエミッタ層部分(158a)であって、前記第2のベース層部分(159a)が、前記第2のエミッタ層部分(158a)と直接接触して、前記第2のベース層部分(159a)と前記第2のエミッタ層部分(158a)との間に第3のpn接合を形成する、第2のエミッタ層部分(158a)と
を備え、
各サイリスタセルはさらに、
・前記第1のエミッタ層部分(154a)の横に配置され、前記第1のベース層部分(155a)とオーミック接点を形成する第1のゲート電極層部分(161a,171a;161a,171a,181a)と、
・前記第1の主面(111)上に配置され、前記第1のエミッタ層部分(154a)とオーミック接点を形成する第1の主電極層部分(162a,172a;162a,172a,182a)と、
・前記第2の主面(112)上に配置され、前記第2のエミッタ層部分(158a)とオーミック接点を形成する第2の主電極層部分(163a)と
を備え、
前記複数のサイリスタセルは、複数の第1のサイリスタセル(51)及び複数の第2のサイリスタセル(52)を備え、各第1のサイリスタセル(51)の前記第1のエミッタ層部分(154a)は、前記共通ゲートコンタクト(60)から
の第1の距離を有し、各第2のサイリスタセル(52)の前記第1のエミッタ層部分は、前記共通ゲートコンタクト(60)から
の第2の距離を有し、
全ての前記第1のサイリスタセル(51)の全ての前記第1のエミッタ層部分(154a)の前記第1の距離は、各前記第2のサイリスタセル(52)の任意の前記第1のエミッタ層部分の前記第2の距離よりも短く、
全ての第1のサイリスタセル(51)の前記第1のゲート電極層部分(161a)は、全ての第1のサイリスタセル(51)の前記第1の主電極層部分(162a)を横方向に取り囲む第1のゲート電極層(161)として実装され、
全ての第2のサイリスタセル(52)の前記第1のゲート電極層部分(171a)は、第2のゲート電極層(171)として実装され、
前記第1のゲート電極層(161)は、各第1のサイリスタセル(51)の前記第1のゲート電極層部分(161a)が前記共通ゲートコンタクト(60)に電気的に接続されるように、前記共通ゲートコンタクト(60)に直接接続され、
各第1のゲートランナ(70)の前記第2の端部(70b)は、前記第2のゲート電極層(171)に直接接続され、
前記共通ゲートコンタクト(60)は、前記第2の主面(112)に平行な平面上への正投影においてリング形状であり、各第1のゲートランナ(70)の長手方向主軸(MA1)は、前記共通ゲートコンタクト(60)から前記半導体ウェハ(110)の横方向中心(C)に向かって半径方向に延び、
前記第2の主面(112)に平行な平面への正投影において、前記第2のゲート電極層(171)の第1のリング状ゲート電極層部分(171b)は、リング状の前記共通ゲートコンタクト(60)の内側に、前記第2のゲート電極層(171)の残りの部分を横方向に取り囲むように配置され、各第1のゲートランナ(70)は、前記共通ゲートコンタクト(60)を前記第1のリング状ゲート電極層部分(171b)に接続し、
各第1のゲートランナ(70)の少なくとも前記第1の接続部(70c)は、前記第1のゲート電極層(161)から分離されており(95a,96a,95b,96b)、その結果、各前記第1のゲートランナ(70)の前記第1の接続部(70c)から前記第1のゲート電極層(161)までの任意の導電経路は、同じ前記第1のゲートランナ(70)の前記第1の端部(70a)、同じ前記第1のゲートランナ(70)の前記第2の端部(70b)、及び前記半導体ウェハ(110)のうちの1つを少なくとも通過することを特徴とし、
前記第2のゲート電極層(171)の前記第1のリング状ゲート電極層部分(171b)の外周縁部は、前記第2のゲート電極層(171)からの任意の導電経路が少なくとも前記半導体ウェハ(110)又は前記第1のゲートランナ(70)の1つを通過するように、前記第1のゲート電極層(161)から分離される(95a,96a,95b,96b)、ターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項2】
前記第1のゲート電極層(161)、前記第2のゲート電極層(171)、前記共通ゲートコンタクト(60)、及び前記第1のゲートランナ(70)の各々が、金属材料を含む、請求項1に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項3】
前記複数のサイリスタセルが、複数の第3のサイリスタセル(53)を備え、各第3のサイリスタセル(53)の前記第1のエミッタ層部分(154a)の前記共通ゲートコンタクト(60)からの距離が、前記第1のサイリスタセル(51)及び前記第2のサイリスタセル(52)の前記第1のエミッタ層部分(154a)の各々の前記共通ゲートコンタクト(60)からの距離よりも長く、
全ての第3のサイリスタセル(53)の第3のゲート電極層部分(181a)は第3のゲート電極層(181)として実装され、
前記第3のゲート電極層(181)の第2のリング状ゲート電極層部分(181b)は、リング状の前記共通ゲートコンタクト(60)の内側に、前記第3のゲート電極層(181)の残りの部分を横方向に取り囲むように配置され、
前記第1のゲート電極層(161)及び前記第2のゲート電極層(171)は、前記第2のリング状ゲート電極層部分(181b)の外側に配置され、
前記ターンオフパワー半導体デバイスは、複数のストライプ状の導電性の第2のゲートランナ(80)をさらに備え、各第2のゲートランナ(80)は、第3の端部(80a)と、前記第3の端部(80a)とは反対側の第4の端部(80b)と、前記第3の端部(80a)と前記第4の端部(80b)とを接続する第2の接続部(80c)とを有し、
各第2のゲートランナ(80)の前記第3の端部(80a)は、前記第1のリング状ゲート電極層部分(171b)に接続され、各第2のゲートランナ(80)の前記第4の端部(80b)は、前記第2のリング状ゲート電極層部分(181b)に接続され、
各第2のゲートランナ(80)の少なくとも前記第2の接続部(80c)は、各第2のゲートランナ(80)の前記第2の接続部(80c)から前記第2のゲート電極層(171)への任意の導電経路が、同じ前記第2のゲートランナ(80)の前記第3の端部(80a)、同じ前記第2のゲートランナ(80)の前記第4の端部(80b)、及び前記半導体ウェハ(110)のうちの1つを少なくとも通過するように、前記第2のゲート電極層(171)から分離される、請求項1又は2に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項4】
前記第1のゲートランナ(70)の数が、前記第2のゲートランナ(80)の数よりも多い、請求項3に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項5】
各第2のゲートランナ(80)の長手方向主軸(MA2)が、前記第1のゲートランナ(70)の1つにおける前記長手方向主軸(MA1)と整列している、請求項3又は4に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項6】
前記第2の主面(112)に平行な平面への正投影において、前記半導体ウェハ(110)は円形状を有し、前記複数のサイリスタセルの前記第1のエミッタ層部分(154a)はストライプ状であり、前記半導体ウェハ(110)の横方向中心(C)から延びる半径方向に沿ってそれぞれ延在するストライプ状の前記第1のエミッタ層部分(154a)の長手方向主軸を有する同心リングに配置され、各リングにおいて、全ての第1のエミッタ層部分(154a)は前記共通ゲートコンタクト(60)から同じ距離を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項7】
第1のサイリスタセル(51)の最も内側のリングにおいて、前記第1のエミッタ層部分(154a)の長さは、前記第1のゲートランナ(70)のいずれかに隣接する任意の第1のエミッタ層部分が、前記第1のゲートランナ(70)のいずれにも隣接しないこの最も内側のリング内の他の全ての第1のエミッタ部分よりも短い長さを有するように、次の前記第1のゲートランナ(70)までの距離の関数として変化する、請求項6に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項8】
前記第1のサイリスタセル(51)の前記最も内側のリングにおいて、前記第1のエミッタ層部分(154a)の前記長さは、次の前記第1のゲートランナ(70)からの距離が増加するにつれて増加し、それにより、前記最も内側のリングにおける前記第1のエミッタ層部分(154a)の、第2のサイリスタセル(52)のそれぞれの次の前記第1のエミッタ層部分(154a)までの距離は、次の前記第1のゲートランナ(70)までの距離が増加するにつれて増加する、請求項7に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項9】
各第1のゲートランナ(70)の半径方向長さが、任意の第1のサイリスタセル(51)の前記第1のエミッタ層部分(154a)の最大長さの少なくとも2倍又は少なくとも3倍である、請求項1から8のいずれか1項に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項10】
横方向に垂直な方向における各第1のゲートランナ(70)の厚さ(d2)が、2つの隣接する第1のエミッタ層部分(154a)の間の中央の位置で前記第1のゲート電極層(161)の厚さ(d1)よりも少なくとも25%又は少なくとも50%厚く、厚さ方向が前記第2の主面(112)に垂直な方向である、請求項1から9のいずれか1項に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項11】
前記第1のゲートランナ(70)が、前記第1のゲートランナ(70)と前記半導体ウェハ(110)との間に介在する絶縁層(75)によって前記半導体ウェハ(110)から分離され、電気的に絶縁される、請求項1から10のいずれか1項に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【請求項12】
前記第1のゲートランナ及び/又は第2のゲートランナ(70,80)が、回転対称で横方向に配置される、請求項1から11のいずれか1項に記載のターンオフパワー半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
ゲートランナ付きターンオフパワー半導体デバイス
発明の分野
本発明は、共通ゲートコンタクトに全て接続された複数のサイリスタセルを備えるターンオフパワー半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
パワー半導体デバイスの分野では、ゲート転流サイリスタ(GCT)パワーデバイス、特に集積ゲート転流サイリスタ(IGCT)などのターンオフパワー半導体デバイスが知られている。逆導通(RC)IGCTでは、還流ダイオードがデバイスウェハに一体化されている場合がある。
【0003】
GCTパワーデバイスの一例として、従来技術のRC-IGCT1を
図1A及び
図1Bに示す。そのようなRC-IGCTは、例えば国際公開第2012/041958号パンフレットに記載されている。
図1Aは、公知のRC-IGCT1の一部を断面で示し、
図1Bは、デバイスのレイアウトを上面図で示す。RC-IGCT1は、複数のサイリスタセル2と、一体型還流ダイオード3とを備える。全てのサイリスタセル2及び一体型還流ダイオード3は、RC-IGCT1のカソード側である第1の主面11及びRC-IGCT1のアノード側である第2の主面12を有する単一のウェハ10内に形成される。
【0004】
図1Aに見られるように、各サイリスタセル2は、ウェハ10の第1の主面11から第2の主面12まで、第1のカソード電極21と、n
+ドープカソード半導体層部分22と、pドープベース半導体層23と、n
-ドープドリフト半導体層24と、nドープバッファ半導体層25と、p
+ドープされた第1のアノード半導体層26と、第1のアノード電極27とを備える。複数のサイリスタセル2のカソード半導体層部分22は、第1のカソード半導体層を形成する。その中で、バッファ半導体層25は、第2の主面12に向かって上昇するドーピング濃度を有するが、ドリフト半導体層24は、典型的には一定のドーピング濃度を有する。
【0005】
さらに、各サイリスタセル2はゲート電極20を有し、これはカソード半導体層部分22の横でウェハ10の第1の主面11上に配置され、ベース半導体層23に接触するが、第1のカソード電極21及びカソード半導体層部分22から分離されている。ここで、「横」という用語は、第1の主面11に平行な方向である横方向の位置に関する。
【0006】
ウェハ10の周縁領域には、一体型単一還流ダイオード3が配置されており、
図1Bの線AA’に沿ったその断面も
図1Aに見ることができる。還流ダイオード3は、ウェハ10の第1の主面11から第2の主面12まで、第2のアノード電極31と、pドープされた第2のアノード半導体層32と、pドープされた第2のアノード半導体層32からn
-ドープドリフト半導体層24によって分離されたn
+ドープされた第2のカソード半導体層33と、第2のカソード電極34とを備える。
【0007】
RC-IGCT1における複数のサイリスタセル2の配置は、ウェハ10の第1の主面11上の上面図を示す
図1Bに示されている。RC-IGCT1のカソード半導体層部分22はストリップの形状に形成され、その長手方向は、円形ウェハ10の横方向中心から延びる方向であって、ウェハ10の第1の主面11に平行な方向である、半径方向に整列している。さらに、ストリップは、典型的には互いに平行に配置される2つの長辺を有することによって、長手方向である一方向に他の方向よりも長い延長部を有する層として理解されるべきである。複数のストリップ状のカソード半導体層部分22は、デバイスの中心の周りに同心リング状に配置されている。ウェハ10の中央領域には、複数のサイリスタセル2の全てのゲート電極20が電気的に接続された共通ゲートコンタクト40が配置されている。サイリスタセル2のゲート電極20、共通ゲートコンタクト40、及びそれらの間の接続は、全てのカソード半導体層部分22を取り囲むゲートメタライゼーション層として実装される。
【0008】
RC-IGCTをオフにするために、短い制御ゲート電流パルスが共通ゲートコンタクト40を介して複数のサイリスタセル2のゲート電極20に供給される。複数のサイリスタセル2への電流分布の均一性は、RC-IGCT1のターンオフ性能にとって重要なパラメータである。
図1A及び
図1Bで上述したRC-IGCTでは、共通ゲートコンタクト40は、その中央の第1の主面11に配置されている。外輪のサイリスタセル2は、内輪のサイリスタセルよりも低いゲート電流によってオフする。したがって、内輪のカソード半導体層部分22における電荷は、外輪のカソード半導体層部分22における電荷よりも速く除去される。したがって、外輪のサイリスタセル2はより長くオン状態のままであり、結果として過負荷になる可能性があり、最終的にデバイス全体の破壊をもたらす可能性がある。不均一なゲート電流分布によるサイリスタセル2の不均一なターンオフの同じ問題は、RC-IGCT1だけでなく、複数のサイリスタセルを備える任意の他のターンオフ半導体パワーデバイスにも存在する。
【0009】
電流分布を均一化するために、共通ゲートコンタクトが、ウェハの外周の第1の主面上に位置する同心リングの形状を有する、ターンオフパワー半導体デバイスが知られている。欧州特許出願公開第0592991号明細書に記載されているような別のターンオフパワー半導体デバイスでは、共通ゲートコンタクトは、デバイスの中心と外周との間のどこかでサイリスタセルの2つのリングの間に配置される。しかしながら、この既知の手法は、複数のサイリスタセルに対するゲート電流パルスの局所的な不均一性を緩和することしかできず、それらを回避することができないという欠点を有する。
【0010】
IGCTウェハは、通常、デバイス面積が増大するとゲート回路におけるインピーダンスの増加が避けられないために、デバイス面積と最大制御可能電流との間の線形関係を示さない。一般的な近似は、制御可能な電流がデバイス直径又はデバイス面積の平方根に線形に比例することである。非常に大きなデバイス(直径>70mm)の場合、この効果は、他のほとんどのパラメータがデバイス面積に線形に比例するため、動作が制限される可能性がある。例えば、オン状態損失及び熱抵抗の両方は、デバイス面積と共に線形に減少し、電流の線形増加を容易にする。
【0011】
デバイス面積を増加させると、ウェハ上の距離も増加する。距離は、抵抗性及び誘導性の両方で、ゲートメタライゼーション層内のインピーダンスの増加につながる。その結果、ゲートコンタクトから測定するウェハの最も遠い領域は、ゲート回路において最も高いインピーダンスを経験する。さらに、ゲートメタライゼーションのより近い領域は、ゲートメタライゼーションの異なる領域が通常直列に接続されているため、より高いゲート電流で負荷される。
【0012】
欧州特許出願公開第2930753号明細書から、複数のサイリスタセルを備えるターンオフパワー半導体デバイスが知られており、サイリスタセル内のゲート電極とカソード半導体層部分との間の距離は、共通ゲートコンタクトからのサイリスタセルの距離に依存する。具体的には、第1のサイリスタセルと共通ゲートコンタクトとの間の距離が第2のサイリスタセルと共通ゲートコンタクトとの間の距離よりも短い、複数のサイリスタセルの第1のサイリスタセルと第2のサイリスタセルとの各ペアでは、ゲート電極とカソード半導体層部分との間の最小距離は、第2のサイリスタセルの方が第1のサイリスタセルよりも小さい。共通ゲートコンタクトからサイリスタセルの距離が増加するにつれて、サイリスタセルにおけるゲート電極とカソード半導体層部分との間の距離が減少する結果、ゲート電極をカソード半導体層部分に接続するベース半導体層の直列抵抗が減少する。このようにして、共通ゲートコンタクトからサイリスタセルの距離が増加するにつれて、ゲート電極とカソード半導体層部分との間の距離が減少することにより、共通ゲートコンタクトからの距離が増加するにつれて増加する電圧降下を補償することができる。しかしながら、デバイス内のゲート電流密度の不均一性を回避することができ、サイリスタセルを同時にオフにして、ターンオフパワー半導体デバイスのターンオフ性能を改善することができる一方で、同時にサイリスタセル内のゲート電極とカソード半導体層部分との間の距離を増加させるとインピーダンスが増加し、その結果、カソードからゲートへの伝導電流のより遅い転流が生じる。特に大きなウェハの場合、これは深刻な問題となり、大きなインピーダンスが転流によるターンオフを妨げる可能性があるため、この概念は適用できない。
【0013】
中国特許第104600101号明細書には、サイリスタセルの複数の同心リングによって分離された2つの同心リングを有するゲート電極層を備えるIGCTが開示されており、ゲート電極層の2つの同心リングは、半径方向ゲート電極ストリップを介して互いに接続されている。しかしながら、半径方向ゲート電極ストリップをその側面で残りのゲート電極層から分離又は分断することは開示されておらず、その結果、インダクタンス分布は依然として不平衡であり得る。
【0014】
米国特許第6570193号明細書から、逆導通サイリスタデバイスが知られている。それは電力損失による発熱がエンドフィールド保護ゴムを満たすことを防止し、半導体基板を収納するシースを簡素化することを目的とする。この発明に係る逆導通サイリスタデバイスでは、半導体基板の内側領域に自己消滅型サイリスタ領域が配置され、その外側領域に外周が分離領域で完全に囲まれた逆導通ダイオード領域が少なくとも1つ配置され、その外側部分の半導体基板の最外周領域に外部取り出しゲート電極領域がさらに配置される。これにより、自己消滅型サイリスタ領域のゲート部分層の表面に設けられたゲート電極は、接続領域の表面に形成されたゲート配線パターンを介して、基板の最外周に沿って形成された外部取り出しゲート電極と接続される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
概要
そこで、本発明は、大電流を確実に制御することができるターンオフパワー半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、請求項1に記載のターンオフパワー半導体デバイスによって達成される。本発明のさらなる発展は、従属請求項に明記されている。
【0017】
請求項1に記載のターンオフパワー半導体デバイスは、第1の主面及び第1の主面の反対側の第2の主面を有する半導体ウェハと、複数のサイリスタセルと、第1の主面上に配置された共通ゲートコンタクトと、複数のストライプ状の導電性の第1のゲートランナとを備える。本明細書を通して、ストライプ形状を有する要素は、長手方向主軸に垂直な任意の方向の長さの少なくとも2倍の長さをその長手方向主軸に沿って有する要素を意味するものとする。各第1のゲートランナは、第1の端部と、第1の端部とは反対側の第2の端部と、第1の端部と第2の端部とを接続する第1の接続部とを有する。第1の端部は、共通ゲートコンタクトに直接接続され、各第1のゲートランナの長手方向主軸は、共通ゲートコンタクトから離れて横方向に延びる。各サイリスタセルは、第1の主面から第2の主面まで順に、第1の導電型の第1のエミッタ層部分と、第1の導電型とは異なる第2の導電型の第1のベース層部分と、第1の導電型の第2のベース層部分と、第2の導電型の第2のエミッタ層部分とを備える。第1のエミッタ層部分は、第1のベース層部分に直接接触して、第1のベース層部分と第1のエミッタ層部分との間に第1のpn接合を形成する。第1のベース層部分は、第2のベース層部分に直接接触して、第1のベース層部分と第2のベース層部分との間に第2のpn接合を形成する。第2のエミッタ層部分は、第2のベース層部分によって第1のベース層部分から分離され、第2のベース層部分は、第2のエミッタ層部分に直接接触して、第2のベース層部分と第2のエミッタ層部分との間に第3のpn接合を形成する。各サイリスタセルは、第1のエミッタ層部分の横に配置され、第1のベース層部分とオーミック接点を形成するゲート電極層部分と、第1の主面上に配置され、第1のエミッタ層部分とオーミック接点を形成する第1の主電極層部分と、第2の主面上に配置され、第2のエミッタ層部分とオーミック接点を形成する第2の主電極層部分とをさらに備える。複数のサイリスタセルは、第1のサイリスタセル及び第2のサイリスタセルを備える。各第1のサイリスタセルの第1のエミッタ層部分は、共通ゲートコンタクトから所定の距離よりも短い距離を有する。各第2のサイリスタセルの第1のエミッタ層部分は、共通ゲートコンタクトから所定の距離よりも長い距離を有する。距離は、層又はコンタクト間の最小横方向距離として測定されるものとする。全ての第1のサイリスタセルのゲート電極層部分は、第1のゲート電極層として実装される。全ての第2のサイリスタセルのゲート電極層部分は、第2のゲート電極層として実装される。第1のゲート電極層は、各第1のサイリスタセルのゲート電極層部分が共通ゲートコンタクトに電気的に接続されるように、共通ゲートコンタクトに直接接続される。各第1のゲートランナの第2の端部は、第2のゲート電極層に直接接続されている。各第1のゲートランナの少なくとも第1の接続部は、第1のゲート電極層から分離されており、その結果、各第1のゲートランナの第1の接続部から第1のゲート電極層までの任意の導電経路は、同じ第1のゲートランナの第1の端部、同じ第1のゲートランナの第2の端部、及び半導体ウェハのうちの1つを少なくとも通過する。
【0018】
本明細書を通して、横方向は、第2の主面に平行な方向として理解されるものとする。凹凸のある第2の主面の場合、第2の主面に平行な横方向は、第2の主面と基準面との間の距離の算術平均値が(他の全ての面と比較して)最小である基準面に平行な方向として理解されるべきであり、算術平均値は、第2の主面上の全ての点の距離値から計算される。本明細書を通して、横という用語は、このように定義された横方向を指すものとする。例えば、1つの要素が別の要素の横方向に配置されると記載されている場合、それは、上記で定義されたように横方向に他の要素の位置からシフトした位置に配置される。
【0019】
本発明のターンオフパワー半導体デバイスにおける第1のゲートランナは、共通ゲートコンタクトと第2のサイリスタセルのゲート電極層部分との間の電気接続のインピーダンスを低減するための効率的な手段を提供する。接続部が第1のゲート電極層から分離されているため、ゲートランナは、第1のサイリスタセルのゲート電流を負荷されない。これにより、第2のサイリスタセルが共通ゲートコンタクトから遠く離れていても、転流によって第2のサイリスタセルを流れる電流を効率的にオフにすることができ、本発明のターンオフパワー半導体デバイスを大きなデバイス面積で実装することができ、それによって比較的大きな電流の確実な制御を達成することができる。
【0020】
共通ゲートコンタクトは、第2の主面に平行な平面上への正投影においてリング形状であり、各第1のゲートランナの長手方向主軸は、共通ゲートコンタクトから半導体ウェハの横方向中心に向かって半径方向に延びる。この構成では、半導体ウェハの周縁の比較的大きいデバイス領域は共通ゲートコンタクトまでの距離が短いが、半導体ウェハの横方向中央領域の比較的小さいデバイス領域のみが共通ゲートコンタクトまでの距離が比較的長いため、ゲート制御が特に効率的であり、半導体ウェハの中央領域内のサイリスタセルは、第1のゲートランナを介して共通ゲートコンタクトに接続される。
【0021】
第2の主面に平行な平面への正投影において、第2のゲート電極層の第1のリング状ゲート電極層部分は、リング状共通ゲートコンタクトの内側に、第2のゲート電極層の残りの部分を横方向に取り囲むように配置され、各第1のゲートランナは、共通ゲートコンタクトを第1のリング状電極層部分に接続する。この配置は、第2のサイリスタセルの最も効率的なゲート制御を可能にする。
【0022】
また、第1のリング状ゲート電極層部分は、第2のゲート電極層からの任意の導電経路が少なくとも半導体ウェハ又は第1のゲートランナの1つを通過するように、第1のゲート電極層から分離される。したがって、第1のサイリスタセルのゲート電流のための電気経路は、第2のサイリスタセルのためのゲート電流のための電気経路から最も効率的に切り離される。
【0023】
例示的な実施形態では、第1のゲート電極層、第2のゲート電極層、共通ゲートコンタクト、及び第1のゲートランナの各々は、金属材料を含む。金属材料は、半導体材料よりも著しく大きい導電率を有し、それによって、共通ゲートコンタクトから任意のゲート電極層部分までの任意の電気経路のインピーダンスが比較的低い。
【0024】
例示的な実施形態では、複数のサイリスタセルは第3のサイリスタセルを備え、各第3のサイリスタセルの第1のエミッタ層部分では、共通ゲートコンタクトからの距離は、第1のサイリスタセルの第1のエミッタ層部分の各々の距離よりも長く、共通ゲートコンタクトからの第2のサイリスタセルの各々の距離よりも長い。全ての第3のサイリスタセルのゲート電極層部分は、第3のゲート電極層として実装される。第3のゲート電極層の第2のリング状ゲート電極層部分は、第3のゲート電極層の残りの部分を横方向に取り囲むようにリング状共通ゲートコンタクトの内側に配置される。第1のゲート電極層及び第2のゲート電極層は、いずれも第2のリング状ゲート電極層部分の外側に配置される。この例示的な実施形態によるターンオフパワー半導体デバイスは、複数のストライプ状の導電性の第2のゲートランナをさらに備え、各第2のゲートランナは、第3の端部と、第3の端部とは反対側の第4の端部と、第3の端部と第4の端部とを接続する第2の接続部とを有する。各第2のゲートランナの第3の端部は、第1のリング状電極層部分に接続され、各第2のゲートランナの第4の端部は、第2のリング状電極層部分に接続される。各第2のゲートランナの第2の接続部から第2のゲート電極層までの任意の導電経路が同じ第2のゲートランナの第3の端部、同じ第2のゲートランナの第4の端部、及び半導体ウェハのうちの1つを少なくとも通過するように、各第2のゲートランナの少なくとも第2の接続部は、第2のゲート電極から分離される。この例示的な実施形態では、第2のサイリスタセルのゲート制御は、第1のゲートランナによって容易になり、第3のサイリスタセルのゲート制御は、第1及び第2のゲートランナによって容易になる。
【0025】
後者の例示的な実施形態において、第1ゲートランナの数は、第2ゲートランナの数よりも多くてもよい。このようにして、デバイス内のゲート電流密度の不均一性を回避することができ、第1、第2及び第3のサイリスタセルを同時にオフにして、ターンオフ半導体デバイスのターンオフ性能を改善することができる。
【0026】
各第2のゲートランナの長手方向主軸は、第1のゲートランナの1つの長手方向主軸と整列してもよい。このようにして、第3のサイリスタセルのゲート電極部分から共通ゲートコンタクトまでの電気経路のインピーダンスをさらに低減することができる。
【0027】
例示的な実施形態では、半導体ウェハは、第2の主面に平行な平面への正投影において円形状を有する。また、正投影において、複数のサイリスタセルの第1のエミッタ層部分はストライプ状であり、半導体ウェハの横方向中心から延びる半径方向に沿ってそれぞれ延在するストライプ状の第1のエミッタ層部分の長手方向主軸を有する同心リングに配置され、各リングにおいて、全ての第1のエミッタ層部分は横方向中心から同じ距離を有する。この例示的な実施形態では、全てのサイリスタセルの効率的なゲート制御が容易になる。
【0028】
例示的な実施形態では、最も内側のリングの第1のエミッタ層部分の長さは、第1のゲートランナのいずれかに隣接する任意の第1のエミッタ層部分が、第1のゲートランナの1つに隣接しないこの最も内側のリングの他の全ての第1のエミッタ部分よりも短い長さを有するように、次の第1のゲートランナまで(最も内側のリングに沿って、すなわち半径方向に垂直な方向に延びる線に沿って)の距離の関数として変化する。このような配置は、第2のサイリスタセルのゲート電極層部分から共通ゲートコンタクトまでの電気経路のインピーダンスをさらに低減することを可能にする。その中で、次の第1のゲートランナは、それぞれの第1のエミッタ層部分までの距離が最小である複数のストライプ状の導電性の第1のゲートランナのうちの第1のゲートランナである。本明細書を通して、第1の要素が複数ある場合、第2の要素の隣の第1の要素(「次の第1の要素」)は、複数の第1の要素のうちの第2の要素までの距離が最小である第1の要素を意味する。また、第1の要素が複数ある場合、第2の要素に隣接する第1の要素(「隣接する第1の要素」)は、隣接する第1の要素と第2の要素との間に他の第1の要素がないことを意味する。
【0029】
後の例示的な実施形態では、最も内側のリングの第1のエミッタ層部分の長さは、第2のサイリスタセルのそれぞれの次の第1のエミッタ層部分までの最も内側のリングの第1のエミッタ層部分の距離が、次の第1のゲートランナまでの距離の増加と共に増加するように、次の第1のゲートランナからの距離の増加と共に増加してもよい。
【0030】
例示的な実施形態では、各第1のゲートランナの半径方向長さは、任意の第1のサイリスタセルの第1のエミッタ層部分の最大長さの少なくとも2倍又は少なくとも3倍である。
【0031】
例示的な実施形態では、横方向に垂直な方向における各第1のゲートランナの厚さは、2つの隣接する第1のエミッタ層部分の間の中央の位置で第1のゲート電極層の厚さよりも少なくとも25%厚く、又は少なくとも50%厚く、厚さ方向は第2の主面に垂直な方向である。これは、第2のサイリスタセルのゲート制御をさらに改善するために第1のゲートランナのインピーダンスをさらに低減することができ、一方、比較的薄い第1のゲート電極層は、第1のサイリスタセルの隣接する第1のエミッタ層部分間の短い距離を可能にする。
【0032】
例示的な実施形態では、第1のゲートランナは、第1のゲートランナと半導体ウェハとの間に介在する絶縁層によって半導体ウェハから分離され、電気的に絶縁される。半導体ウェハからの第1のゲートランナのそのような電気的絶縁は、第2のサイリスタセルのゲート制御をさらに容易にする。
【0033】
例示的な実施形態では、第1及び/又は第2のゲートランナは、回転対称で横方向に配置される。このような配置は、デバイス内のゲート電流密度の不均一性を低減することができ、サイリスタセルを同時にオフにして、ターンオフパワー半導体デバイスのターンオフ性能を改善することができる。
【0034】
図面の簡単な説明
以下、添付の図面を参照して、詳細な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】
図1Bの線A-A’に沿った、従来技術から知られているターンオフパワー半導体デバイスの断面図である。
【
図1B】
図1Aに示すターンオフパワー半導体デバイスの上面図である。
【
図2A】第1の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイスの上面図を示す(それ自体は特許請求の範囲に含まれないが、特許請求される発明の特定の態様のより良い理解のために役立つ)。
【
図2C】
図2Bの線I-I’に沿った
図2Aのターンオフパワー半導体デバイスの断面図である。
【
図2D】
図2Bの線II-II’に沿った
図2Aのターンオフパワー半導体デバイスの断面図である。
【
図3】第2の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイスの断面図を示す(それ自体は特許請求の範囲に含まれないが、特許請求される発明の特定の態様のより良い理解のために役立つ)。
【
図4】第3の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイスの上面断面図を示す。
【
図5A】第4の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイスの上面図を示す(それ自体は特許請求の範囲に含まれないが、特許請求される発明の特定の態様のより良い理解のために役立つ)。
【
図5C】
図5Bの線II-II’に沿った第4の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイスの断面を示す。
【
図5D】
図5Bの線III-III’に沿った第4の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイスの断面を示す。
【
図6】第5の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイスの上面断面図を示す。
【
図7】第6の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイスの上面断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図で使用される参照符号及びそれらの意味は、参照符号のリストに要約されている。一般に、類似の要素は、本明細書全体を通して同じ参照符号を有する。記載された実施形態は、例として意図されており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
実施形態の詳細な説明
第3、第5及び第6の実施形態は、特許請求される発明の実施形態である。
図2A~
図2D、
図3、及び
図5A~
図5Dに示される第1、第2、及び第4の実施形態は、それ自体、特許請求の範囲に含まれないが、本発明の特定の態様のより良い理解のために役立つ。
【0038】
以下では、
図2A、
図2B、
図2C、及び
図2Dを参照して、第1の実施形態によるターンオフパワー半導体デバイス100について説明する。
図2Aは、ターンオフパワー半導体デバイス100を上面視で示し、
図2Bは、
図2Aの部分Aの拡大図を示し、
図2Cは、
図2Bの線I-I’に沿ったターンオフパワー半導体デバイス100の縦断面を示し、
図2Dは、
図2Bの線II-II’に沿ったターンオフパワー半導体デバイス100の縦断面を示す。
【0039】
ターンオフパワー半導体デバイス100は、第1の主面111と、第1の主面111の反対側の第2の主面112とを有する半導体ウェハ110を備える。半導体ウェハ110の第1の主面111及び第2の主面112は、それぞれ、対向する2つの側面上の半導体ウェハ110の最も外側の平坦な表面部分を含む平面として理解されるものとする。半導体ウェハ110には、第1のサイリスタセル51と第2のサイリスタセル52とを備える複数のサイリスタセル51、52が一体化されている。
【0040】
第1のサイリスタセル51の各々は、第1の主面111から第2の主面112まで順に、n+型の第1のエミッタ層部分154aと、p型の第1のベース層部分155aと、n型の第2のベース層部分159aと、p+型の第2のエミッタ層部分158aとを備える。第1のエミッタ層部分154aは、第1のベース層部分155aに直接接触して、第1のベース層部分155aと第1のエミッタ層部分154aとの間に第1のpn接合を形成する。第1のベース層部分155aは、第2のベース層部分159aと直接接触して、第1のベース層部分155aと第2のベース層部分159aとの間に第2のpn接合を形成し、第2のエミッタ層部分158aは、第2のベース層部分159aによって第1のベース層部分155aから分離されている。第2のベース層部分159aは、第2のエミッタ層部分158aに直接接触して、第2のベース層部分159aと第2のエミッタ層部分158aとの間に第3のpn接合を形成する。その中で、第2のベース層部分159aは、ドリフト層部分156aと、第2のエミッタ層部分158aをドリフト層部分156aから分離するバッファ層部分157aとを含むことができる。バッファ層部分157aは、ドリフト層部分156aよりもドーピング濃度が高い。これは、第2の主面112に向かって上昇するドーピング濃度を有してもよく、一方、ドリフト層部分156aは一定のドーピング濃度を有してもよい。各第1のサイリスタセル51は、第1のゲート電極層部分161aと、第1の主電極層部分162aと、第2の主電極層部分163aとをさらに備える。第1のゲート電極層部分161aは、第1のエミッタ層部分154aの横に配置され、第1のベース層部分155aとオーミック接点を形成する。第1の主電極層部分162aは、第1の主面111上に配置され、第1のエミッタ層部分154aとオーミック接点を形成する。第2の主電極層部分163aは、第2の主面112上に配置され、第2のエミッタ層部分158aとオーミック接点を形成する。全ての第1のサイリスタセル51の第1のゲート電極層部分161aは、第1のゲート電極層161として実装される。
【0041】
第2のサイリスタセル52は、第1のサイリスタセル51と基本的に同じ構造を有する。
図2Dは、2つの第2のサイリスタセル52の構造を断面で示す。その中の同じ参照符号は、第1のサイリスタセル51について上述したものと同じ特徴及び特性を有する要素を指す。したがって、上記の第1のサイリスタセル51の説明を参照されたい。第2のサイリスタセル52の第2のゲート電極層部分171aは、第2のサイリスタセル52の第1のエミッタ層部分154aの横に配置され、第1のベース層部分155aとオーミック接点を形成する。全ての第2のサイリスタセル52の第2のゲート電極層部分171aは、第2のゲート電極層171として実装される。
【0042】
第1のサイリスタセル51は、第2の主面112に平行であり、かつ半導体ウェハ110の周縁に隣接する平面内に、3つの同心リングに配置されている。したがって、
図2Aの上面図では、第1のサイリスタセル51の第1の主電極層部分162aは、3つの同心リングに配置され、第1のサイリスタセル51の第1の主電極層部分162aを取り囲む白色領域は、全ての第1のサイリスタセル51の第1の主電極層部分162aを横方向に取り囲む第1のゲート電極層161に対応する。
【0043】
第2のサイリスタセル52は、第2の主面112に平行な平面内で、かつ半導体ウェハ110の中央領域内で、3つの同心リングに配置されている。
図2Aの上面図において、第1のサイリスタセル51の3つの同心リングは、第2のサイリスタセル52の3つの同心リングを取り囲む。
図2Aの上面図において、第2のサイリスタセル52の第1の主電極層部分172aは、3つの同心リングに配置され、第2のゲート電極層171に取り囲まれている。具体的には、第2の主面112に平行な平面への正投影において、半導体ウェハ110は円形状であり、複数のサイリスタセルの(すなわち、第1のサイリスタセル51及び第2のサイリスタセル52の)第1のエミッタ層部分154aはストライプ状であり、半導体ウェハ110の横方向中心Cから延びる半径方向に沿ってそれぞれ延在するストライプ状の第1のエミッタ層部分154aの長手方向主軸を有する同心リングに配置される。
【0044】
共通ゲートコンタクト60は、第1の主面111上に配置されている。
図2Aの上面図において、共通ゲートコンタクト60は、リング形状を有し、半導体ウェハ110の周縁に沿って延在する。エミッタ層部分154aが配置された各同心リングにおいて、全ての第1のエミッタ層部分154aは、共通ゲートコンタクト60から同じ距離を有する。
【0045】
各第1のサイリスタセル51の第1のエミッタ層部分154aは、共通ゲートコンタクト60から所定の距離よりも短い距離を有し、各第2のサイリスタセル52の第1のエミッタ層部分は、共通ゲートコンタクト60から所定の距離よりも長い距離を有する。これは、全ての第1のサイリスタセル51の全ての第1のエミッタ層部分154aにおいて、各第2のサイリスタセル52の任意の第1のエミッタ層部分154aよりも共通ゲートコンタクト60からの距離が短いことを意味する。
【0046】
第1のゲート電極層161は、各第1のサイリスタセル51の第1のゲート電極層部分161aが第1のゲート電極層161の内部の電気的経路によって共通ゲートコンタクト60に電気的に接続されるように、共通ゲートコンタクト60に直接接続されている。
【0047】
複数のストライプ状の導電性の第1のゲートランナ70が、第1の主面111において半導体ウェハ110上に配置される。
図2Aでは、第1のゲートランナ70を上面図で見ることができ、
図2Cでは、第1のゲートランナ70を断面図で示している。各第1のゲートランナ70は、第1の端部70aと、第1の端部70aとは反対側の第2の端部70bと、第1の端部70aと第2の端部70bとを接続する第1の接続部70cとを有する。第1の端部70aは、共通ゲートコンタクト60に直接接続され、各第1のゲートランナ70の長手方向主軸MA1は、共通ゲートコンタクト60から離れて横方向に延びる。具体的には、各第1のゲートランナ70の長手方向主軸MA1は、円形のリング状の共通ゲートコンタクト60から半導体ウェハ110の横方向中心Cに向かって半径方向内側に延びる。各第1のゲートランナ70の第2の端部70bは、第2のゲート電極層171に直接接続されている。第1のゲートランナ70は、
図2Aに示すように、回転対称で横方向に配置されている。
【0048】
各第1のゲートランナ70の少なくとも第1の接続部70cは、第1のゲート電極層161から分離されており、その結果、各第1のゲートランナ70の第1の接続部70cから第1のゲート電極層161までの任意の導電経路は、同じ第1のゲートランナ70の第1の端部70a、同じ第1のゲートランナ70の第2の端部70b、及び半導体ウェハ110のうちの1つを少なくとも通過する。
図2Aの上面図において、各第1のゲートランナ70の2つの側面に沿った黒い線は、第1のゲート電極層161からの第1のゲートランナ70の分離を示す。
図2Bでは、第1のゲート電極層161と各第1のゲートランナ70の第1の接続部70cとの間の第1のゲートランナ70の2つの対向する側面の隙間を第1の分離線95aとして示す。
【0049】
第2のゲート電極層171は、第2のゲート電極層171の残りの部分を横方向に取り囲む第1のリング状ゲート電極層部分171bを備える。各第1のゲートランナ70は、共通ゲートコンタクト60とこの第1のリング状電極層部分171bとを接続している。第2のゲート電極層171の任意の箇所は、第2のゲート電極層171の内部の電気的経路により、第1のリング状電極層部分171bと電気的に接続されている。これは、第2のサイリスタセル52の任意の第2のゲート電極層部分171aが、第1のリング状ゲート電極層部分171bに直接電気的に接続されていることを意味する。
【0050】
例示的には、第1のゲート電極層161、第2のゲート電極層171、共通ゲートコンタクト60、及び第1のゲートランナ70の各々は、アルミニウムなどの金属材料を含む。
【0051】
第1のゲートランナ70は、任意の第1のサイリスタセル51の第1のエミッタ層部分154aの最大長さの少なくとも2倍又は少なくとも3倍である半径方向長さを有する。これにより、第1のゲートランナ70は、上面視において、第1のエミッタ層部分154aの複数のリングを横切る。
【0052】
図2Cに示すように、全てのサイリスタセル51、52の第1のエミッタ層部分154aは第1のエミッタ層154に属し、第1のベース層部分155aは連続した第1のベース層155の一部であり、第2のベース層部分159aは連続した第2のベース層159の一部であり、ドリフト層部分156aは連続したドリフト層156の一部であり、バッファ層部分157aは連続したバッファ層157の一部であり、第2のエミッタ層部分158aは連続したエミッタ層158の一部であり、第2の主電極層部分163aは連続した第2の主電極層163の一部である。すなわち、第1のエミッタ層154、第1のベース層155、第2のベース層159、ドリフト層156、バッファ層157、第2のエミッタ層158及び第2の主電極層163は、第1及び第2のサイリスタセル51,52によって共有されてもよい。
【0053】
横方向に垂直な方向(すなわち、第2の主面112に垂直な方向)における各第1のゲートランナ70の厚さd2は、同じであってもよく、あるいは、隣接する2つの第1のエミッタ層部分154aの間の中央の位置における第1のゲート電極層161の厚さd1よりも少なくとも25%又は少なくとも50%厚くてもよい。
【0054】
以下では、ターンオフパワー半導体デバイス200を断面で示す
図3を参照して、第2の実施形態によるターンオフパワー半導体デバイス200について説明する。第1の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス100と第2の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス200とは多くの類似点を有するため、以下では、第2の実施形態と第1の実施形態との相違点についてのみ説明するが、残りの特徴については第1の実施形態の上記説明を参照されたい。特に、
図3で使用される参照符号が
図2A~
図2Dのいずれか1つで使用される参照符号と同一である場合、それらは第1の実施形態と同じ特徴及び特性を有する同じ要素を指す。ターンオフパワー半導体デバイス200の上面図は、
図2Aに示すように、ターンオフパワー半導体デバイス100の上面図と同じである。
図3に示す断面は、
図2Bの線I-I’に沿った断面である。第1の実施形態と第2の実施形態との唯一の違いは、第2の実施形態では、第1のゲートランナ70が、各第1のゲートランナ70と半導体ウェハ110との間に介在する絶縁層75によって半導体ウェハ110からそれぞれ分離され、電気的に絶縁されることである。絶縁層75は、例示的に、各第1のゲートランナ70の底部71と第1のベース層155との間に介在する。第1の実施形態と同様に、横方向に垂直な方向(すなわち、第2の主面112に垂直な方向)における各第1のゲートランナ70の厚さd2は、同じであってもよく、あるいは、隣接する2つの第1のエミッタ層部分154aの間の中央の位置における第1のゲート電極層161の厚さd1よりも少なくとも25%又は少なくとも50%厚くてもよい。
【0055】
以下では、ターンオフパワー半導体デバイス300の上面図の断面を示す
図4を参照して、第3の実施形態によるターンオフパワー半導体デバイス300について説明する。第3の実施形態のターンオフパワー半導体デバイス300と第1の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス100とは多くの類似点を有するため、以下では、第3の実施形態と第1の実施形態との相違点についてのみ説明するが、残りの特徴については上記第1の実施形態の説明を参照されたい。特に、
図2A~
図2Dのいずれかで使用される参照符号と同じ
図4の参照符号は、第1の実施形態について上記で説明したものと同じ特徴及び特性を有する同じ要素を指す。
図4の線I-I’に沿ったターンオフパワー半導体デバイス300の断面は、先の
図2Bに示した断面と同じである。第1の実施形態と第3の実施形態との相違点は、ターンオフパワー半導体デバイス300において、第2のゲート電極層171の第1のリング状ゲート電極層部分171bが第1のゲート電極層161から半径方向に分離されている点のみである。第1のリング状ゲート電極層部分171bと第1のゲート電極層161との間の隙間は、
図4に示す第2の分離線95bで示されている。隣接する2つの第1の分離線95aと接続する第2の分離線95bとが1つの連続する分離線を形成するように、第2の分離線95bは、隣接する2つの第1の分離線95aを接続する。第2の分離線95bに垂直な方向において、第2のゲート電極層171と第1のゲート電極層161とは直接接触していない。結果として、第2のサイリスタセル52からのゲート電流は、第1のゲート電極層161に流入することが防止され、第1のゲートランナ70を通って共通ゲートコンタクト60に向かって流れるように強制される。
【0056】
以下では、
図5A~
図5Dを参照して、第4の実施形態によるターンオフパワー半導体デバイス400について説明する。ここでも、第1の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス100と第4の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス400とは多くの類似点を有するため、以下では、第1の実施形態と第4の実施形態との相違点についてのみ説明する。他の全ての特徴に関しては、第1の実施形態の上記の説明を参照されたい。特に、
図2A~
図2Dで使用された参照符号と同じ
図5A~
図5Dの参照符号は、上記で説明したものと同じ特徴及び特性を有する同じ要素を指す。
図5Aは、ターンオフパワー半導体デバイス400の上面図を示す。
図5Bは
図5Aの部分Bの拡大図を示す。第1のサイリスタセル51は、最も外側の2つの同心リングに配置され、第1のゲートランナ70は、これら2つの同心リングを半径方向に横切る。第1の実施形態と同様に、各第1のゲートランナ70の第1の端部70aは共通ゲートコンタクト60に接続され、各第1のゲートランナ70の第2の端部70bは第2のゲート電極層171の第1のリング状ゲート電極層部分171bに接続されている。第1の実施形態と異なり、第4の実施形態における第1のサイリスタセル51が2つの同心リングのみに配置されているのに対して、第1の実施形態では、第1のサイリスタセル51は、最も外側の3つの同心リングに配置されている。
【0057】
第4の実施形態における第2のサイリスタセル52は、2つの中間同心リングに配置されている。第2のゲートランナ80は、第1のリング状ゲート電極層部分171bから、後述する第3のゲート電極層181の第2のリング状ゲート電極層部分181bまで半径方向に、第2のサイリスタセル52の2つの同心リングを横切る。各第2のゲートランナ80は、第1のゲートランナ70と同様に、第3の端部80aと、第3の端部80aとは反対側の第4の端部80bと、第3の端部80aと第4の端部80bとを接続する第2の接続部80cとを有する。各第2のゲートランナ80の第3の端部80aは、第1のリング状電極層部分171bに接続され、各第2のゲートランナ80の第4の端部80bは、第2のリング状電極層部分181bに接続される。各第2のゲートランナ80の第2の接続部80cから第2のゲート電極層171までの任意の導電経路が、同じ第2のゲートランナ80の第3の端部80a、同じ第2のゲートランナ80の第4の端部80b、及び半導体ウェハ110のうちの1つを少なくとも通過するように、各第2のゲートランナ80の少なくとも第2の接続部80cは、第2のゲート電極層171から分離される。
図5Bでは、第2の接続部80cと第2のゲート電極層171との間の、接続部80cの2つの側面に沿った隙間を、第3の分離線96aとして示している。
図5Cには、
図5Bの線II-II’に沿った断面が示されている。
図5Cの断面では、2つの第2のサイリスタセル52と、これら2つの第2のサイリスタセル52の間に横方向に挟まれたゲートランナ80とが見られる。
【0058】
第3のサイリスタセル53は、最も内側の2つの同心リング内に横方向に配置されている。
図5Bの線III-III’に沿って隣接する2つの第3のサイリスタセル53の断面が、
図5Dに示されている。第3のサイリスタセル53が最も内側の2つの同心リングに配置され、第1の実施形態における第2のサイリスタセル52が最も内側の3つの同心リングに配置されていることを除いて、第4の実施形態における第3のサイリスタセル53の横方向の配置及び構造は、第1の実施形態における第2のサイリスタセル52の横方向の配置及び構造と同じである。第3のサイリスタセル53のストライプ状の第1のエミッタ層部分154aは、全ての第3のサイリスタセル53の第3のゲート電極層部分181aを含む第3のゲート電極層181によって横方向に取り囲まれている。
【0059】
第2のリング状ゲート電極層部分181bは、第1のリング状ゲート電極層部分171bと同様に、第3のゲート電極層181の残りの部分を取り囲む。第2のゲートランナ80は、第1のゲートランナ70と同様の構造を有する。唯一の相違点は、第2のゲートランナ80が、第3の端部80aで共通ゲートコンタクト60に直接接続されておらず、第1のリング状ゲート電極層部分171bに接続されている点である。
図5Aから最も良く分かるように、第1のゲートランナ70の数は、第2のゲートランナ80の数よりも多い。各第2のゲートランナ80は、第1のゲートランナ70の1つの長手方向主軸MA1に整列した長手方向主軸MA2を有する。このようにして、第1のゲートランナ70及び第2のゲートランナ80の対は、それぞれ、共通ゲートコンタクト60を第2のリング状ゲート電極層部分181bに接続するための線形導電経路を形成する。
【0060】
以下では、
図6を参照して、第5の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス500について説明する。第5の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス500と第3及び第4の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス300及び400とは多くの類似点を有するため、以下では、これらの実施形態の相違点についてのみ説明する。
図6は、
図5Aに示す上面図に対応するターンオフパワー半導体デバイス500の上面図の部分Bを示す。第5の実施形態500は、
図4に示す第3の実施形態と同様に、第2のゲート電極層171が第1のゲート電極層161から半径方向に分離されている点で、第4の実施形態と異なる。第1のリング状ゲート電極層部分171bと第1のゲート電極層161との間の隙間は、
図6の第2の分離線95bで示されている。第2の分離線95bは、第3の実施形態と同様に、隣接する2つの第1の分離線95aを接続する。第2の分離線95bに垂直な方向において、第2のゲート電極層171と第1のゲート電極層161とは直接接触していない。結果として、第2のサイリスタセル52からのゲート電流は、第1のゲート電極層161に流入することが防止され、第1のゲートランナ70を通って共通ゲートコンタクト60に向かって流れるように強制される。同様に、第3のゲート電極層181は、第2のゲート電極層171から半径方向に分離されている。第2のリング状ゲート電極層部分181bと第2のゲート電極層171との間の隙間は、第4の分離線96bで示されている。
【0061】
以下では、
図7を参照して、第6の実施形態に係るターンオフパワー半導体デバイス600について説明する。第6の実施形態は、第1のサイリスタセル51の最も内側のリングが第1のエミッタ層部分154a及び対応する第1の主電極層部分162aを有するという点においてのみ、第5の実施形態と異なり、第1のエミッタ層部分154aの長さは、第1のゲートランナ70のいずれか1つに隣接する任意の第1のエミッタ層部分154aが、円形方向で第1のゲートランナ70の1つに隣接しないこの最も内側のリングにおける他の全ての第1のエミッタ部分よりも短い長さを有するように、円形方向(半径方向に垂直)に沿った次の第1のゲートランナ70までの距離の関数として変化する。特に、
図7に示す実施形態では、最も内側のリングにおいて、第1のエミッタ層部分154aの長さは、次の第1のゲートランナ70からの距離が増加するにつれて連続的に増加し、その結果、最も内側のリングの第1のエミッタ層部分154aの、第2のサイリスタセル52のそれぞれの次の第1のエミッタ層部分154aまでの距離は、次の第1のゲートランナ70までの距離が増加するにつれて増加する。このようにして、第1のリング状ゲート電極層部分171bの半径方向幅は、第1のゲートランナ70に向かって円周方向に沿って変化及び増加し、すなわち、第1のリング状ゲート電極層部分171bの半径方向幅は、円周位置が次の第1のゲートランナ70に近いほど大きくなる。第1のエミッタ層部分154aの長さの同じ変化は、第2のサイリスタセル52の最も内側のリングにも当てはまる。
【0062】
添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念から逸脱することなく、上述の実施形態の変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。
【0063】
上記の実施形態は、特定の導電型で説明された。上述の実施形態における半導体層の導電型は、任意の実施形態について、p型層として記載された全ての層がn型層であり、n型層として記載された全ての層がp型層であるように切り替えられてもよい。
【0064】
上述の実施形態では、ターンオフパワー半導体デバイスは、逆導通ターンオフパワー半導体デバイスであってもよく、すなわち、半導体ウェハに一体化された還流ダイオードを備えてもよい。
【0065】
上述のターンオフパワー半導体デバイスは、ドリフト層156及びバッファ層157を備えるものとして説明された。しかしながら、ターンオフパワー半導体デバイスは、バッファ層を備えていなくてもよい。
【0066】
上述のターンオフパワー半導体デバイスは、複数の同心リング内の第1、第2及び第3サイリスタセル51、52及び53の特定の配置を用いて説明された。しかしながら、サイリスタセルは、別の方法で配置されてもよい。例示的には、第1~第3のサイリスタセルが配置されるリングの数は、図に示されるリングの数と異なっていてもよい。
【0067】
上述の実施形態では、共通ゲートコンタクト60は、半導体ウェハ110の周縁に沿って延在するように配置される。しかしながら、共通ゲートコンタクト60は、他の形状であってもよい。また、それは、半導体ウェハの横方向中央領域内などの別の位置に、又はリング状領域の外側のサイリスタセルとリング状領域の内側のサイリスタセルとの間に横方向に挟まれたリング状領域として配置されてもよい。
【0068】
第6の実施形態では、第1のサイリスタセル51及び第2のサイリスタセル52の両方の最も内側のリングは、様々な長さの第1のエミッタ層部分154aを有すると説明された。しかしながら、変更された実施形態では、第1のエミッタセル51又は第2のエミッタセル52の最も内側のリングのみが、第1のエミッタ層部分154の長さの変化を有してもよい。
【0069】
上記実施形態では、第1の分離線95aを横方向の隙間として説明した。しかしながら、第1の接続部70cと第1のゲート電極層161との分離は、第1のゲート電極層161と第1の接続部70cとの間に介在する絶縁層によって、このような隙間なく実現されてもよい。第1のリング状ゲート電極層部分171bと上述した第1のゲート電極層161との第2の分離線95bによる電気的分離、第2の接続部80cと上述した第2のゲート電極層171との第3の分離線96aによる電気的分離、及び第2のリング状ゲート電極層部分181bと上述した第2のゲート電極層171との第4の分離線96bによる電気的分離についても同様である。
【0070】
ターンオフパワー半導体デバイス400,400及び500は、サイリスタセルの2つの異なるグループ、すなわち、それぞれ異なる数のゲートランナ70及び80によって横断される第1のサイリスタセル51及び第2のサイリスタセル52を用いて説明された。しかしながら、追加のゲートランナによって横断されるサイリスタセルのさらなるグループが存在してもよい。
【0071】
「備える(comprising)」という用語は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではないことに留意されたい。また、異なる実施形態に関連して説明した要素を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0072】
参照符号のリスト
1 逆導通IGCT(RC-IGCT)
2 サイリスタセル
3 一体型還流ダイオード
10,110 ウェハ
11,111 第1の主面
12,112 第2の主面
20 ゲート電極
21 第1のカソード電極
22 カソード半導体層部分
23 ベース半導体層
24 ドリフト半導体層
25 バッファ半導体層
26 第1のアノード半導体層
27 第1のアノード電極
31 第2のアノード電極
32 第2のアノード半導体層
33 第2のカソード半導体層
34 第2のカソード電極
40 共通ゲートコンタクト
51 第1のサイリスタセル
52 第2のサイリスタセル
53 第3のサイリスタセル
60 共通ゲートコンタクト
70 第1のゲートランナ
71 (第1のゲートランナ70の)底部
70a (第1のゲートランナ70の)第1の端部
70b (第1のゲートランナ70の)第2の端部
70c (第1のゲートランナ70の)第1の接続部
80 第2のゲートランナ
80a (第1のゲートランナ80の)第3の端部
80b (第1のゲートランナ80の)第4の端部
80c (第1のゲートランナ80の)第2の接続部
95a 第1の分離線
95b 第2の分離線
96a 第3の分離線
96b 第4の分離線
100,200,300,400,500,600 ターンオフパワー半導体デバイス
154a 第1のエミッタ層部分
154 第1のエミッタ層
155a 第1のベース層部分
155 第1のベース層
156a ドリフト層部分
156 ドリフト層
157a バッファ層部分
157 バッファ層
158a 第2のエミッタ層部分
158 第2のエミッタ層
159a 第2のベース層部分
159 第2のベース層
161a 第1のゲート電極層部分
161 第1のゲート電極層
162a,172a,182a 第1の主電極層部分
163a 第2の主電極層部分
163 第2の主電極層
171 第2のゲート電極層
171a 第2のゲート電極層部分
171b 第1リング状ゲート電極部分
181 第3のゲート電極層
181a 第3のゲート電極層部分
181b 第2のリング状ゲート電極層部分
182 第1の主電極
A,B 部分
C (半導体ウェハ110の)横方向中心
d1,d2 厚さ
MA1,MA2 長手方向主軸