(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】異なる部分領域を有する側面を備えた半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/74 20060101AFI20240208BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L29/74 V
H01L29/06 301M
(21)【出願番号】P 2023532389
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2021081856
(87)【国際公開番号】W WO2022112059
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-08-04
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コミン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】アクラティ,クランティ・クマール
(72)【発明者】
【氏名】ドブジンスカ,ヤゴダ
【審査官】脇水 佳弘
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第0532941(EP,A1)
【文献】独国特許出願公開第102016124670(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第0715351(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0151841(US,A1)
【文献】国際公開第2012/041836(WO,A1)
【文献】特開平1-91463(JP,A)
【文献】特開昭60-224268(JP,A)
【文献】特開昭62-79667(JP,A)
【文献】特表2013-542597(JP,A)
【文献】国際公開第98/13881(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0321034(US,A1)
【文献】特開平1-91464(JP,A)
【文献】実開昭54-163883(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/74
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体本体(2)を有する半導体装置(1)であって、前記半導体本体(2)は、第1の主面(21)と、前記第1の主面(21)の反対側の第2の主面(22)との間で、鉛直方向に延在し、
前記半導体本体(2)は、第1の導電型の第1の半導体層(31)と、前記第1の導電型と異なる第2の導電型の第2の半導体層(32)とを含むことにより、第1のpn接合(41)を形成し、
前記第1の半導体層(31)は前記第2の半導体層(32)よりも高濃度にドープされ、
前記第1の主面(21)と前記第2の主面(22)との間に延在する前記半導体本体(2)の側面(5)が、横方向において前記半導体本体(2)の境界を定めており、
前記半導体本体(2)の前記側面(5)は、第1の部分領域(51)と
、第2の部分領域(52)とを含み、
前記第1の部分領域(51)および前記第2の部分領域(52)は、前記第1の半導体層(31)の領域の境界を定めており、
前記第1の部分領域(51)は、前記横方向において前記第1のpn接合(41)の境界を定めており、
前記第2の部分領域(52)は、前記第1のpn接合(41)から前記鉛直方向に離間しており、
前記第1の部分領域(51)は、前記第1のpn接合(41)に対して第1の角度(α)で配置され、前記第2の部分領域(52)は、前記第1のpn接合(41)に対して第2の角度(β)で配置され、前記第1の角度(α)は前記第2の角度(β)よりも大きく、
前記側面(5)は第3の部分領域(53)を含み、前記第1の部分領域(51)は前記第2の部分領域(52)と前記第3の部分領域(53)との間に配置され、前記第3の部分領域(53)は前記第1の部分領域(51)に直接隣接し、
前記半導体本体(2)は第2のpn接合(42)をさらに含み、前記第3の部分領域(53)は、前記横方向において前記第2のpn接合(42)の境界を定めており、
前記第3の部分領域(53)は、前記第1のpn接合(41)に対して第3の角度(γ)で配置され、前記第3の角度(γ)は前記第1の角度(α)よりも大きく、前記第3の角度(γ)は20°以上60°以下であり、
前記第1の角度(α)は前記第1の部分領域(51)内で一定であり、前記第2の角度(β)は前記第2の部分領域(52)内で一定であり、前記第3の角度(γ)は前記第3の部分領域(53)内で一定である、半導体装置(1)。
【請求項2】
前記第1の角度(α)は5°以上20°以下である、請求項1に記載の半導体装置(1)。
【請求項3】
前記第2の角度(β)は0.8°以上5°以下である、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記鉛直方向に沿って見たときに、前記第1の部分領域(51)の前記横方向の大きさ(w1)は、前記第2の部分領域(52)の前記横方向の大きさ(w2)よりも小さい、
請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置(1)。
【請求項5】
前記第1の部分領域(51)および前記第2の部分領域(52)は、機械的アブレーション法の痕跡(55)を示す、
請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体装置(1)。
【請求項6】
前記第1の部分領域(51)および前記第2の部分領域(52)は、レーザアブレーション法の痕跡(55)を示す、請求項1~
4のいずれか1項に記載の半導体装置(1)。
【請求項7】
前記第2のpn接合(42)は、前記第2の半導体層(32)と、前記第1の導電型の第3の半導体層(33)との間に形成される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の半導体装置(1)。
【請求項8】
前記半導体装置(1)はサイリスタである、
請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体装置(1)。
【請求項9】
前記サイリスタは正負ベベル設計を有し、前記
負ベベルは前記第1および第2の部分領域を含む、請求項
8に記載の半導体装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
異なる部分領域を有する側面を備えた半導体装置が特定される。
【背景技術】
【0002】
半導体装置において、側面における表面電界は、装置の性能に強力な影響を与える場合がある。バイポーラ装置において、ベベル加工されたpn接合終端を用いることにより、表面電界を低減することができ、この場合、負のベベル設計および正のベベル設計の両方を適用することができる。正のベベル設計の場合、半導体本体の断面積は、より低濃度にドープされた層に向かう方向に減少する。これに対し、負のベベル設計の場合、この断面積は、より低濃度にドープされた層に向かって増加する。
【0003】
サイリスタのような対称ブロッキング装置は、順方向および逆方向のブロッキングのために2つのブロッキングpn接合を必要とする。例として、文献US3,437,886およびUS3,575,644は、正ベベル加工された2つの接合を有するサイリスタについて記述している。負-負または正-負のベベル設計を適用することもできる。
【0004】
しかしながら、逆方向ブロッキング電圧は、正-負ベベルサイリスタにおいて、正のベベルの隣の上に向けられた電界によって生じるパンチスルー効果により、制限される可能性があることが、わかっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決すべき課題は、逆方向ブロッキング電圧機能が高められた半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、特に請求項1に記載の半導体装置によって達成される。発展形態および好都合な手段は他の請求項の主題である。
【0007】
少なくとも1つの実施形態に従うと、半導体装置は、第1の主面と、第1の主面の反対側の第2の主面との間で鉛直方向に延在する半導体本体を含む。半導体本体は、第1の導電型の第1の半導体層と、第1の導電型とは異なる第2の導電型の第2の半導体層とを含むことにより、第1のpn接合を形成する。第1の半導体層は第2の半導体層よりも高濃度にドープされる。第1の主面と第2の主面との間に延在する半導体本体の側面が、横方向において半導体本体の境界を定める。半導体本体の側面は、第1の部分領域および第2の部分領域を含み、第1の部分領域および第2の部分領域は、第1の半導体層の領域の境界を定めている。たとえば、第2の部分領域は第1の部分領域に直に隣接する。第1の部分領域は、横方向において第1のpn接合の境界を定める。第2の部分領域は、第1のpn接合から鉛直方向に離間している。第1の部分領域は第1のpn接合に対して第1の角度で配置され、第2の部分領域は第1のpn接合に対して第2の角度で配置され、第1の角度は第2の角度よりも大きい。
【0008】
たとえば、側面は第3の部分領域を含み、第1の部分領域は第2の部分領域と第3の部分領域との間に配置され、第3の部分領域は第1の部分領域に直接隣接する。半導体本体は、第2のpn接合をさらに含み、第3の部分領域は、横方向において第2のpn接合の境界を定めており、第1の部分領域、第2の部分領域、および第3の部分領域は、断面視において平坦である。
【0009】
言い換えると、横方向において半導体本体の境界を定める側面は、少なくとも2つの異なる部分領域、すなわち第1の部分領域および第2の部分領域を有し、これらの部分領域は、横方向において第1の半導体層の境界を定め、第1のpn接合に対して異なる角度を形成する。たとえば、第1の角度は、第2の角度よりも、少なくとも1°または少なくとも2°または少なくとも5°大きい。よって、第1のpn接合は、第1のpn接合からさらに離れて配置された第2の部分領域の角度よりも大きな角度で終端をなす。
【0010】
第1のpn接合が逆方向に働く場合、これは、電界をさらに上に向けて拡げてパンチスルーを防止し逆ブロッキング電圧を増加させるのに役立つことが、わかっている。よって、逆ブロッキング電圧は、半導体本体の側面の修正された成形によって増加させることができる。
【0011】
さらに、鉛直方向に沿って見たときに、第1のpn接合に使用可能な半導体装置の領域は、特に第2の角度と比較した場合に大きな第1の角度によって増加する。
【0012】
たとえば、第1の半導体層は、第1の主面と第1のpn接合との間に配置される。第2の半導体層は、第1のpn接合と第2の主面との間に配置されてもよい。第1の主面は半導体本体のカソード側を表していてもよく、第2の主面は半導体本体のアノード側を表していてもよく、またはその逆であってもよい。
【0013】
第1および第2の半導体層に加えて、さらに他の半導体層および/またはさらに他のドープされた半導体領域が、第1の主面と第2の主面との間に存在してもよい。半導体本体は、例としてケイ素を含む。炭化ケイ素または窒化ガリウムのような他の半導体材料を使用することもできる。
【0014】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、第1の角度は5°以上20°以下である。
【0015】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、第2の角度は0.8°以上5°以下である。
【0016】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、鉛直方向に沿って見たときに、第1の部分領域の横方向の大きさは、第2の部分領域の横方向の大きさよりも小さい。例として、第1の部分領域は、第2の部分領域よりも、少なくとも5%、最大で90%小さい。
【0017】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、第1の角度は第1の部分領域内で一定であり、第2の角度は第2の部分領域内で一定である。言い換えると、第1および第2の角度は、それぞれの部分領域内で変化しない。
【0018】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、第1の部分領域および第2の部分領域の少なくとも一方は、たとえば第1の部分領域および第2の部分領域は、機械的アブレーション法の痕跡を示す。例として、痕跡は、研削方法の痕跡である。機械的アブレーション法を使用することで、ベベル加工された側面が、確実かつ効率的に得られる。エッチングのような化学的方法を省くことができる。しかしながら、適切な場合には、機械的アブレーション法の代わりに、または機械的アブレーション法に加えて、化学的方法を使用してもよい。
【0019】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、第1の部分領域および第2の部分領域のうちの少なくとも一方は、例として第1の部分領域および第2の部分領域は、レーザアブレーション法の痕跡を示す。
【0020】
半導体本体は、第1のpn接合に加えて、2つ以上のpn接合、例として第2のpn接合をさらに含み得る。
【0021】
たとえば、第1のpn接合および第2のpn接合の少なくとも一方は、断面視において、半導体本体の対向する2つの側面間に連続的に延在する。
【0022】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、第2のpn接合は、第2の半導体層と、第1の導電型の第3の半導体層との間に形成される。そのため、第1のpn接合および第2のpn接合の順方向は、互いに反対方向である。例として、第3の半導体層は、第2の半導体層よりも高濃度にドープされる。
【0023】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、側面は第3の部分領域を含む。例として、第1の部分領域は、第2の部分領域と第3の部分領域との間に配置される。例として、第3の部分領域は、横方向において第2のpn接合の境界を定める。第3の部分領域は、第1のpn接合から鉛直方向に離間している。たとえば、第3の部分領域は第1の部分領域に直接隣接している。
【0024】
第1のpn接合に対する第3の部分領域の角度は、第1の部分領域と異なっていてもよい。例として、第2の角度は第1の角度と第3の角度との間である。
【0025】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、第3の角度は20°以上60°以下である。第3の部分領域は、たとえば第2のpn接合に対して正のベベルを形成する。
【0026】
代わりに負のベベルを第2のpn接合に対して使用してもよい。この場合、角度は、例として、0.8°と20°の間である。
【0027】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、第1のpn接合は、少なくとも1000Vの逆方向ブロッキング電圧のために構成される。たとえば、半導体装置は、例として5000V超または8000V超の高電圧用途のために、たとえば8500Vの定格ブロッキング電圧のために構成される。
【0028】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、半導体装置はサイリスタである。たとえば、サイリスタは、位相制御サイリスタ(PCT:phase control thyristor)として構成される。しかしながら、異なる部分領域を有する側面の上記構成は、pn接合を有する他の半導体装置にも適用することができる。
【0029】
半導体装置の少なくとも1つの実施形態に従うと、サイリスタは正負ベベル設計を有し、負のベベルは第1および第2の部分領域を含む。例として、正のベベルは第3の部分領域によって形成される。代わりに、サイリスタは、負-負ベベル設計を有していてもよい。この場合、第1の半導体層、第1の部分領域および第2の部分領域に関して説明した特徴は、第3の半導体層にも当てはまる。
【0030】
例示される実施形態および図面において、同様のまたは同様に機能する構成要素には同一の参照符号が付されている。全般的に、個々の実施形態に関する相違点についてのみ説明する。特に明記されない限り、ある実施形態における部分または態様の説明は、別の実施形態における対応する部分または態様にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】半導体装置の例示される実施形態を断面図で示す。
【
図2】半導体装置の例示される他の実施形態を断面図で示す。
【
図3A】本明細書に記載の半導体装置のある実施形態に係る半導体装置の電界のシミュレーション結果を示す図である。
【
図3B】参照半導体装置の電界のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】異なる半導体装置のブロッキング電圧Vdcの測定値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面に示される要素およびそれらのサイズの相互の関係は、必ずしも正しい縮尺ではない。むしろ、個々の要素または層の厚さは、より適切に表現できるようにするために、および/またはより適切な理解のために、誇張されたサイズで表される場合がある。
【0033】
半導体装置1の例示される実施形態が、
図1において断面図で示される。この例示される実施形態において、半導体装置1は、順方向および逆方向のブロッキングのために2つのブロッキングpn接合を有する半導体装置として実施される。しかしながら、本発明は、pn接合を1つだけ有するまたは3つ以上のpn接合を有する半導体装置に使用することもできる。
【0034】
カソード、アノードおよびゲート電極等の半導体装置1の金属電極は、図面では明示されていない。
【0035】
半導体装置1は、第1の主面21と第2の主面22との間で鉛直方向に延在する半導体本体2を含む。半導体本体2は、異なる濃度にドープされた複数の部分領域を含む。単に単純化するために、第1の半導体層31、第2の半導体層32、および第3の半導体層33が示されている。しかしながら、半導体本体は、4つ以上の半導体層または異なる濃度にドープされた半導体領域を含み得る。
【0036】
半導体本体2は基材6の上に配置される。例として、半導体本体2は、接着剤またははんだ(図面では明示されていない)等の接続層によって基材6に固定される。
【0037】
たとえば、基材6はモリブデンを含むまたはモリブデンからなる。しかしながら、他の材料を基材6に使用することもできる。
【0038】
第1半導体層31と第2半導体層32との間には第1のpn接合41が形成されている。例として、第2の半導体層32はnドープされ、第1の半導体層31および第3の半導体層33はpドープされている、または、その逆である。例として、半導体本体2は半導体ディスクとして構成される。半導体ディスクは、たとえばケイ素ウエハである。しかしながら、炭化ケイ素または窒化ガリウム等の他の半導体材料を使用することもできる。
【0039】
第1のpn接合41および第2のpn接合42は、第1のpn接合41および第2のpn接合42の横方向における境界を定める側面5の間において、横方向に延在する。側面5は、第1の部分領域51と、第2の部分領域52と、第3の部分領域53とを含む。これらの部分領域は、各領域における、第1のpn接合41に対する側面5の角度が、互いに異なる。
【0040】
第1のpn接合41は、横方向において、第1の部分領域51によって境界が定められる。そのため、第1の部分領域51は、横方向において、第1の半導体層31および第2の半導体層32の領域の境界を定める。第2の部分領域52は、第1の部分領域と第1の主面21との間に延在する。第2の部分領域52は、第1のpn接合41から鉛直方向に離間している。
【0041】
第1の角度α(
図2参照)は、5°以上20°以下であり、例として、たとえば10°または14°である。第2の角度βは、0.8°以上5°以下であり、例として、たとえば1°である。
【0042】
第1の半導体層31は、第2の半導体層32よりも高濃度にドープされ、半導体装置の断面は、より高濃度にドープされた層に向かって小さくなる。結果として、第1の部分領域51は、第2の部分領域52とともに、第1のpn接合41に対して負のベベル設計を形成する。
【0043】
第3の半導体層33は、第2の半導体層32よりも高濃度にドープされ、第3の部分領域53は、第2のpn接合42に対して正のベベル設計を形成する。第3の部分領域53と第1のpn接合41との間の第3角度γは、たとえば、20°以上60°以下である。
【0044】
第1の部分領域51、第2の部分領域52および第3の部分領域53内において、第1のpn接合41に対する側面5の角度は一定である。断面視において平坦である側面5の部分領域を、機械的アブレーション法を用いて効率的に形成することができる。そのような方法は、研削法等のそれぞれのアブレーション法に特徴的な痕跡55をもたらす場合がある。痕跡は、
図1の側面5の拡大断面に模式的に示されている。
【0045】
研削は、基材6の側面60の少なくとも一部が、第3の部分領域53と、第1のpn接合41に対する角度が同じになるように、基材6の材料も除去するように行われてもよい。他のアブレーション法、たとえばレーザアブレーション法も使用することができ、結果として特徴的な痕跡55が生じる。
【0046】
図2は、半導体装置1の例示される実施形態を示し、半導体本体の構造がより詳細に示されている。
図1の説明は、特に明記されない限り、
図2にも当てはまる。
【0047】
第1の主面21から第2の主面22に向かって見たときに、半導体本体2は、n+層として作用する第4の半導体層34と、p-層としての第1の半導体層31と、n-層としての第2の半導体層32と、p-層としての第3の半導体層33と、p+層としての第5の半導体層35とを含む。
【0048】
第4の半導体層34と第1の半導体層との間に、さらに他のpn接合が形成されている。しかしながら、このさらに他のpn接合は、横方向において側面5まで延びていない。
【0049】
上記層構造は、例としてPCTサイリスタに用いてもよい。しかしながら、半導体装置1の用途に応じて、この層構造を広い範囲の中で修正してもよい。
【0050】
例として、第1の主面21は半導体本体2のカソード側を表し、第2の主面22は半導体本堤2のアノード側を表す。
【0051】
第1の部分領域51は、第2の部分領域52によって形成された浅いベベル領域を、深く拡散させたカソード側の第1のpn接合41を通して延長するために用いられる。
【0052】
半導体本体2の側面5は、ゴム等の絶縁体7により、さもなければ側面5で露出する第1および第2のpn接合41、42を保護するために、囲まれている。
【0053】
鉛直方向に沿って見たときの、第1の部分領域51の横方向の大きさw1は、第2の部分領域の横方向の大きさw2よりも小さい。
【0054】
たとえば、8.5kVの定格逆方向ブロッキング電圧用に構成されたサイリスタの場合、1.42mmの厚さ(すなわち鉛直方向の大きさ)を有する半導体本体について、横方向の大きさw1は1mmであり、第2の部分領域52の横方向大きさw2は2.1mmである。
【0055】
図3Aは、7kVの電圧が逆方向に印加された場合の、
図2に関して説明した半導体装置の電界の電気的シミュレーションの結果を示す。このシミュレーションは、第1の角度αが10°の装置に基づいている。
【0056】
比較のために、
図3Bは、第2の部分領域52と第3の部分領域53との間に第1の部分領域がない参照構造についてのシミュレーション結果を示す。
【0057】
図3Bは、正のベベルに移行する部分の近くで、すなわち側面5の2つの異なる部分領域間で、電界が上に向くことにより、7kVの電圧で電界のパンチスルーが発生することを示す。
【0058】
これに対し、
図3Aに示されるシミュレーション結果は、半導体本体2の側面5について説明した構成を使用すると、パンチスルーを回避できるので、高いブロッキング能力が得られることを、立証している。
【0059】
これはまた、
図4において説明されている実験結果によって示されるように、実験的に確認されている。測定のために、第1の部分51の横方向の大きさについて異なる値w1を有するサンプルが使用され、0mmという値は、2つの異なるベベルのみを有する従来の装置に対応する。いずれの場合も第1の角度αは14°である。
【0060】
25℃で、DCブロッキング電圧は、1mmまたは1.6mmのベベル長および14°の角度を有するサンプルの場合、w1=0mmである参照サンプルと比較すると、大幅に増加する。
【0061】
結果として、提案されている、半導体本体の表面5の設計は、半導体本体の修正された側面により、高いブロッキング電圧特性を有するサイリスタのような半導体装置1を得ることを可能にする。そのため、パンチスルー電圧が装置の最大定格電圧を超えるまでサイリスタのnベース(第2半導体層)の幅を大きくする必要がない。この解決策には、nベースの厚さの増加がサイリスタの性能を低下させることになる、という欠点がある。
【0062】
本願は、欧州特許出願第20210372.7号に基づく優先権を主張し、その開示内容全体を本明細書に引用により援用する。
【0063】
本明細書で説明される発明は、例示される実施形態を参照しながら与えられる説明によって限定されない。むしろ、本発明は、どの新規の特徴も、特に請求項におけるどの特徴の組み合わせも含むどの特徴の組み合わせも、たとえこの特徴またはこの組み合わせそのものが請求項または例示される実施形態に明示的に示されていなくても、包含する。
【符号の説明】
【0064】
参照符号のリスト
1 半導体装置
2 半導体本体
21 第1の主面
22 第2の主面
31 第1の半導体層
32 第2の半導体層
33 第3の半導体層
34 第4の半導体層
35 第5の半導体層
41 第1のpn接合
42 第2のpn接合
5 側面
51 第1の部分領域
52 第2の部分領域
53 第3の部分領域
55 痕跡
6 基材
60 基材の側面
7 絶縁体
α 第1の角度
β 第2の角度
γ 第3の角度
w1 第1の部分領域の横方向の大きさ
w2 第2の部分領域の横方向の大きさ