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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】手摺のリフォーム方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20240208BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
E04F11/18
E04B1/00 501J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022064057
(22)【出願日】2022-04-07
(65)【公開番号】P2023154615
(43)【公開日】2023-10-20
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【弁理士】
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】中松 保二
(72)【発明者】
【氏名】竹山 忠司
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 俊之
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-012841(JP,U)
【文献】特開平10-219811(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02403233(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04B 1/00
E04G 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地フレームの両側面に固定される壁パネルと、前記下地フレームの上に形成される笠木と、を備える腰壁に新設手摺を固定する手摺固定構造であって、
前記壁パネルは、壁パネル本体と、当該壁パネル本体の裏面に形成され、前記下地フレームに固定するための固定金具を取り付ける取付部と、を有しており、
前記新設手摺の支柱の下端に形成される固定部が前記壁パネルの表面に当接しており、当該壁パネルの表面側から施工可能な貫通固定具が、前記固定部と、前記壁パネル本体と、を貫通して、前記取付部に定着される手摺固定構造を形成する手摺のリフォーム方法であって、
前記下地フレームの両側面にそれぞれ前記壁パネルが固定されるとともに、前記下地フレームの上に既設笠木を固定して形成される前記腰壁に設けられる既設手摺を前記新設手摺に交換するものであり、
前記既設手摺は、前記下地フレームの上端から前記既設笠木を貫通して上方に突出する固定ボルトに固定されて立設される手摺支柱と、当該手摺支柱の間に架設される水平手摺材と、を有しており、
前記既設手摺を前記固定ボルトから取り外す工程と、
前記既設笠木を取り外す工程と、
前記固定ボルトを取り除く工程と、
前記下地フレームの上に固定ボルト挿入用の貫通孔が形成されない新設笠木を取り付ける工程と、
一方の前記壁パネルに前記新設手摺の下端を固定する工程と、を備えることを特徴とする手摺のリフォーム方法。
【請求項2】
前記壁パネルに前記新設手摺の下端を固定する工程は、前記壁パネルの表面側から前記貫通固定具を、前記壁パネルの表面に押し当てられる前記固定部と、前記壁パネル本体と、に貫通させて、前記取付部に定着させることを特徴とする請求項1に記載の手摺のリフォーム方法。
【請求項3】
前記取付部は、前記壁パネル本体の裏面に当該壁パネル本体の側縁から所定の位置で鉛直方向に延びて形成されており、
前記新設手摺は、複数の前記固定部と、前記固定部から上方に延びる複数の新設支柱と、前記新設支柱の間に水平に架設される新設水平材と、を備えており、
前記新設支柱は前記新設水平材に対して移動可能に形成されており、前記壁パネルの裏面に前記取付部が形成されている位置に前記新設支柱の位置を移動させて調整することを特徴とする請求項2に記載の手摺のリフォーム方法。
【請求項4】
前記固定ボルトを取り除いた後、且つ、前記新設笠木を取り付ける前に、弾性を有する笠木取付金具を前記下地フレームの上に設置し、当該笠木取付金具に前記新設笠木を嵌合により固定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の手摺のリフォーム方法。
【請求項5】
前記既設笠木を取り外した後に、当該既設笠木の下側に設けられた既設水切材を取り外す工程と、
前記固定ボルトを取り除いた後で、且つ前記笠木取付金具を取り付ける前に、新設水切材を設置する工程と、
をさらに備え、
前記新設水切材は、前記腰壁の幅方向に沿って複数並べて配置されるものであり、隣接する前記新設水切材の端部同士が互いに重なって配置されるとともに、当該重なった部分に防水シーリング処理を行うことを特徴とする請求項4に記載の手摺のリフォーム方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外の腰壁に設けられる手摺を固定する手摺固定構造、及び、当該手摺のリフォーム方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バルコニー等の屋外床の周縁に設けられる腰壁に転落を防止するための手摺が設置されることがある。そして、このような手摺としては、例えば腰壁の上面を構成する笠木の上に立設される手摺支柱と、当該手摺支柱に架設される水平な手摺材と、により構成されて腰壁に固定されるものが知られている(特許文献1参照)。このような手摺支柱を固定するためにはある程度の強度が必要となるため、手摺支柱自体が笠木を貫通するようにして、下地フレームに当該手摺支柱の下端をボルト固定するか、又は、下地フレームに上方に向けて固定されたボルトが笠木を貫通するようにして、当該ボルトに手摺支柱の下端を固定することで、手摺支柱の下端を下地フレームに固定する必要がある。
【0003】
また、別の形態では、腰壁のバルコニーの内側となる側面に形成された壁パネルに手摺支柱が固定されるものが知られている(特許文献2参照)。この形態の手摺支柱は、腰壁を形成する下地フレームの間にステー取付用プレートを差し込んでボルト固定しており、壁パネルの縦目地の間から外側に突出するステー取付用プレートが手摺支柱の下端に固定されることで、手摺を所望の強度で腰壁に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-199882号公報
【文献】特開平10-102719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、笠木の上に手摺支柱を立設して形成された腰壁は、手摺支柱を固定するために笠木に固定穴が設けられることとなるので、長年の使用により固定穴から水が浸入し、手摺支柱の下端部や腰壁内部に錆が発生するなどの劣化の要因となる問題がある。
【0006】
また、特許文献2のように側面に手摺が固定される腰壁において、既設腰壁における手摺の交換や既設腰壁に新たに手摺を追加する場合には、手摺支柱を固定するために、一旦壁パネルを取り外し、内側の下地フレームに手摺を取り付けるためのプレートを固定した後、再度壁パネルを取り付けて、手摺支柱を固定する必要があり、作業が大掛かりとなる問題があった。
【0007】
そこで本発明は、壁パネルを取り外すことなく手摺の支柱を取り付けることができ、笠木に固定穴を貫通させる必要がない手摺固定構造を形成する手摺のリフォーム方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
手摺のリフォーム方法は、下地フレームの両側面に固定される壁パネルと、前記下地フレームの上に形成される笠木と、を備える腰壁に新設手摺を固定する手摺固定構造であって、前記壁パネルは、壁パネル本体と、当該壁パネル本体の裏面に形成され、前記下地フレームに固定するための固定金具を取り付ける取付部と、を有しており、前記新設手摺の支柱の下端に形成される固定部が前記壁パネルの表面に当接しており、当該壁パネルの表面側から施工可能な貫通固定具が、前記固定部と、前記壁パネル本体と、を貫通して、前記取付部に定着される手摺固定構造を形成する手摺のリフォーム方法であって、前記下地フレームの両側面にそれぞれ前記壁パネルが固定されるとともに、前記下地フレームの上に既設笠木を固定して形成される前記腰壁に設けられる既設手摺を前記新設手摺に交換するものであり、前記既設手摺は、前記下地フレームの上端から前記既設笠木を貫通して上方に突出する固定ボルトに固定されて立設される手摺支柱と、当該手摺支柱の間に架設される水平手摺材と、を有しており、前記既設手摺を前記固定ボルトから取り外す工程と、前記既設笠木を取り外す工程と、前記固定ボルトを取り除く工程と、前記下地フレームの上に固定ボルト挿入用の貫通孔が形成されない新設笠木を取り付ける工程と、一方の前記壁パネルに前記新設手摺の下端を固定する工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
手摺のリフォーム方法は、前記壁パネルに前記新設手摺の下端を固定する工程は、前記壁パネルの表面側から前記貫通固定具を、前記壁パネルの表面に押し当てられる前記固定部と、前記壁パネル本体と、に貫通させて、前記取付部に定着させることを特徴としている。
【0011】
手摺のリフォーム方法は、前記取付部は、前記壁パネル本体の裏面に当該壁パネル本体の側縁から所定の位置で鉛直方向に延びて形成されており、前記新設手摺は、複数の前記固定部と、前記固定部から上方に延びる複数の新設支柱と、前記新設支柱の間に水平に架設される新設水平材と、を備えており、前記新設支柱は前記新設水平材に対して移動可能に形成されており、前記壁パネルの裏面に前記取付部が形成されている位置に前記新設支柱の位置を移動させて調整することを特徴としている。
【0012】
手摺のリフォーム方法は、前記固定ボルトを取り除いた後、且つ、前記新設笠木を取り付ける前に、弾性を有する笠木取付金具を前記下地フレームの上に設置し、当該笠木取付金具に前記新設笠木を嵌合により固定することを特徴としている。
【0013】
手摺のリフォーム方法は、前記既設笠木を取り外した後に、当該既設笠木の下側に設けられた既設水切材を取り外す工程と、前記固定ボルトを取り除いた後で、且つ前記笠木取付金具を取り付ける前に、新設水切材を設置する工程と、をさらに備え、前記新設水切材は、前記腰壁の幅方向に沿って複数並べて配置されるものであり、隣接する前記新設水切材の端部同士が互いに重なって配置されるとともに、当該重なった部分に防水シーリング処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の手摺のリフォーム方法によると、壁パネルは、壁パネル本体と当該壁パネル本体の裏面に形成される取付部とを有しており、当該取付部に取り付けられる固定金具によって、壁パネルが下地フレームに固定されるものである。したがって、取付部は壁パネルを下地フレームに取り付けるために必要な強度を有するものである。そして、新設手摺の支柱の下端に形成される固定部が壁パネルの表面に当接して、貫通固定具が、壁パネルの表面側から固定部及び壁パネル本体を貫通して、取付部に定着されるので、新設手摺の取り付けは、壁パネルを下地フレームから取り外すことなく、壁パネルの表面側から施工することができ、しかも取付部に定着することで、手摺としての十分な取付強度で固定することができる。
【0015】
手摺のリフォーム方法によると、既設手摺及び既設笠木を取り外した後、既設手摺の手摺支柱を固定するために既設笠木を貫通して上方に突出する固定ボルトを取り除く工程を有しており、固定ボルトを取り除いた後、固定ボルトを挿入する貫通孔が設けられていない新設笠木を取り付け、一方の壁パネルに新設手摺の下端を固定するので、笠木に貫通孔が設けられることなく、新設手摺を固定することができるので、笠木の下に水が浸入することを防止し、腰壁内部が劣化することを抑制することができる。
【0016】
手摺のリフォーム方法によると、壁パネルの表面側から貫通固定具を、壁パネルの表面に押し当てられる固定部と、壁パネル本体と、に貫通させて、取付部に定着させるので、壁パネルを取り外す必要がなく、作業を容易にすることができるとともに、別途下地を設けることなく既存の取付部に定着させることで、簡単に十分な取付強度で固定することができる。
【0017】
手摺のリフォーム方法によると、取付部が壁パネル本体の裏面に鉛直方向に延びて壁パネル本体の側縁から所定の位置に形成されているので、直接取付部が視認できなくても、壁パネルの側縁から所定距離離れた位置に取付部が設けられていることが認識でき、確実に壁パネルの当該取付部が設けられている位置の表面に新設支柱の位置を調整して固定することができる。
【0018】
手摺のリフォーム方法によると、新設笠木は下地フレームの上に設置される笠木取付金具に嵌合されることによって固定されるので、新設笠木に固定のための孔を形成する必要がなく、腰壁内部への水の浸入を抑制でき、防水性を保つことができる。
【0019】
手摺のリフォーム方法によると、既設水切材を取り外して、新設水切材を設置するものであり、新設水切材は、腰壁の幅方向に沿って複数並べて配置されるものであり、隣接する前記新設水切材の端部同士が互いに重なって配置されるとともに、当該重なった部分に防水シーリング処理が行われるので、腰壁内部への水の浸入をより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】手摺固定構造の全体構成を示す断面図。
図2】腰壁の壁パネル及び下地フレームの構成を説明する分解斜視図。
図3】既設手摺が固定されている腰壁を説明する断面図。
図4】腰壁から既設手摺を取り外す状態を説明する断面図。
図5】腰壁から既設手摺を取り外した状態を説明する斜視図。
図6】腰壁から既設笠木、笠木固定部材、及び既設水切材を取り外す状態を説明する断面図。
図7】腰壁から固定ボルトを取り除く状態を説明する断面図。
図8】腰壁に新設水切材を固定するとともに、新設手摺の固定部を取り付ける状態を説明する断面図。
図9】腰壁に新設水切材を固定する途中の状態を説明する斜視図。
図10】腰壁に新設手摺の固定部を取り付けた状態を説明する断面図。
図11】新設手摺の固定部を取り付けた状態の壁パネル及び固定部を説明する一部省略拡大斜視図。
図12】固定部に新設支柱を固定した状態を説明する断面図。
図13】固定部に新設支柱を固定するとともに、新設水切材の上に笠木取付金具及び新設笠木を取り付ける状態を説明する斜視図。
図14】笠木取付金具に新設笠木を嵌合する状態を説明する斜視図。
図15】新設笠木の突合せ部分にジョイント金具を設ける状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る手摺固定構造1及び手摺のリフォーム方法の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。手摺固定構造1は、図1に示すように、図示しないバルコニーの外縁に形成される腰壁2に手摺を固定する構造であり、本実施形態においては、既設の腰壁2から既設手摺3及び既設笠木4を取り外して、新たに新設手摺5及び新設笠木6を取り付けた構造である。手摺を固定する腰壁2はバルコニーの外縁に限定されるものでなく、例えば屋上や外廊下に設けられる腰壁2であってもよく、建築物の屋外に設けられる屋外床の縁に形成されて当該屋外床からの転落を防止することができる腰壁2であればよい。
【0022】
腰壁2は、図1及び図2に示すように、下端が建築物の躯体に固定される鋼製の下地フレーム7と、下地フレーム7に固定されて腰壁2のバルコニー外側面及びバルコニー内側面を形成するぞれぞれの壁パネル8と、下地フレーム7の上側に配置される笠木4,6と、を備えている。
【0023】
下地フレーム7は、バルコニーの縁に立設される複数の鉛直材70と、当該鉛直材70の上端に架け渡される上部水平材71と、鉛直材70の高さ方向の中間で隣接する鉛直材70同士の間に架設される中間水平材72と、を有する。下地フレーム7は、リップ溝形鋼を溶接又はボルト固定して形成されており、鉛直材70の下端が建築物のバルコニーを構成する構造躯体に固定されている。
【0024】
壁パネル8は、窯業系基材により形成された壁パネル本体80と、壁パネル本体80の裏面に形成され、当該壁パネル本体80の両側縁からそれぞれ所定の位置で鉛直方向に延びて形成される取付部81と、を有する。壁パネル本体80は矩形平板状であり、上端面が表面側よりも裏面側が突出する段差82を形成している。ここで、壁パネル8の「表面」とは、壁パネル8を固定して腰壁2を形成したときに外部に露出する面をいい、「裏面」とは、腰壁2を形成したときに腰壁2の内部に配置される下地フレーム7に向き合い、外部に露出しない面をいう。取付部81は壁パネル本体80に埋設されて、開口を裏面側に露出させるリップ溝形鋼により形成されている。壁パネル8には2本の取付部81が、壁パネル本体80の両側縁から120mmの位置にそれぞれ鉛直方向に延びて壁パネル本体80の高さ方向の全長に亘って形成されている。
【0025】
壁パネル8は、下地フレーム7に固定金具83を介して取り付けられる。固定金具83は、壁パネル8の取付部81の上端部に取付られるとともに、下地フレーム7の上部水平材71にボルト固定される外壁押え板83aと、壁パネル8の取付部81の下端部に取り付けられて、壁パネル8の荷重を受ける外壁受けプレート83bとを有している。
【0026】
既設の腰壁2には、図3に示すように、下地フレーム7の上部水平材71に既設手摺3を固定するための固定板9が固定されている。固定板9は上部水平材71の上面にボルト固定されており、当該固定板9の上面には、上方に向かって突出する4本の固定ボルト10が形成されている。既設腰壁2は固定板9が固定された下地フレーム7の上に既設水切材11が形成されている。既設水切材11は、上面部12と上面部12の両側から垂れ下がる側垂部13とにより形成されて、下方に向かって開かれた溝形であり上面部12に固定ボルト10が挿入可能なボルト挿入孔14が設けられている。既設水切材11は、両側の側垂部13が壁パネル8の上面に設けられた段差82の位置まで垂れ下がって形成されており、壁パネル8の上端に吹き付ける風雨が腰壁2内に浸入することを抑制している。既設水切材11の上には笠木固定部材15が既設水切材11を覆うように形成されており、当該笠木固定部材15の上に、既設笠木4が配置されている。既設笠木4には固定ボルト10を挿入可能な貫通孔16が形成されている。
【0027】
既設手摺3は、手摺支柱17と、手摺支柱17の上端に架設される水平手摺材18とを有する。手摺支柱17は、例えば鉄製で鉛直方向に長い支柱材であり、下端が水平方向に広がってフランジ部19が形成されている。フランジ部19には、固定ボルト10を挿入する固定孔20が形成されており、固定ボルト10が固定孔20に挿入された状態でナット21を締め付けることによって、手摺支柱17が既設の腰壁2に固定される。なお、本実施形態においては水平手摺材18は手摺支柱17の上端に架設されているが、水平手摺材18は、手摺支柱17の間に架設されるものであれば上端に限られるものではない。
【0028】
手摺固定構造1を形成する腰壁2は、既設の腰壁2から下地フレーム7の上方に配置される固定ボルト10、既設手摺3、既設笠木4、及び既設水切材11を取り外し、新たに新設水切材22、新設笠木6などを取り付けて形成される。新設の腰壁2は、図1に示すように、上述した既設の腰壁2に設置されている下地フレーム7と、下地フレーム7に固定されて腰壁2のバルコニー外側面及びバルコニー内側面を形成するぞれぞれの壁パネル8と、下地フレーム7の上端に取付られる下地木23と、下地木23の上に固定される新設水切材22と、新設水切材22の上に配置されて下地木23に固定される笠木取付金具24と、笠木取付金具24に嵌合する新設笠木6と、腰壁2の幅方向に隣接して形成される新設笠木6同士の突合せ部を覆うジョイント金具25と、を備えている。
【0029】
下地木23は、下地フレーム7の上部水平材71の上面に固定される長尺な平板状である。新設水切材22は、下地木23の上面に当接する上板部26と、上板部26の両側から垂れ下がる垂下部27と、により形成されて、下方に向かって開かれた溝形であり、両側の垂下部27が壁パネル8の上面に設けられた段差82の位置まで垂れ下がって形成されており、壁パネル8の上端に吹き付ける風雨が腰壁2内に浸入することを抑制している。新設水切材22は、腰壁2の幅方向に並べて複数設置されており、新設水切材22同士の端部が互いに100mm重なり合っており、当該重なった部分にシーリング剤28が塗布されて防水シーリング処理が施されている。笠木取付金具24は、新設水切材22の上板部26の上に当接されて、当該笠木取付金具24及び新設水切材22を貫通するビス29で下地木23に固定されている。笠木取付金具24は、弾性を有しており、新設笠木6が嵌合固定可能な形状である。
【0030】
新設笠木6は、上面がバルコニーの内側に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面30を形成し、傾斜面30の上端縁及び下端縁はそれぞれ下方に延びる下延部31を形成している。両側の下延部31は壁パネル8の段差82を越えて表面の上端にまで延びており、それぞれの下縁部は壁パネル8に接近する方向に突出する嵌合突条32を形成している。新設笠木6は、新設水切材22及び笠木取付金具24を覆うようにはめ込まれている。新設笠木6は、笠木取付金具24の下端に嵌合突条32が係止されて、嵌合固定されている。ジョイント金具25は新設笠木6の外側の面よりも僅かに大きく形成されており、新設笠木6の突合部に固定されている。
【0031】
手摺固定構造1により固定される新設手摺5は、壁パネル8の表面に当接する固定部33と、固定部33を腰壁2に固定する貫通固定具34と、下端が固定部33にボルト固定される新設支柱35と、を腰壁2の幅方向に距離を開けて複数設けるとともに、複数の新設支柱35の間に架設される新設水平材36を設けて形成されている。固定部33は、矩形平板状に形成されており、壁パネル8の表面に当接する固定プレート37と、2つの矩形板状で固定プレート37に溶接されており、壁パネル8の面外方向に突出する突出プレート38と、を有する。固定プレート37には3つの貫通固定具34を挿入可能な取付孔39が鉛直方向に並べて配置されている。また、突出プレート38には壁パネル8と平行な水平孔40が形成されており、当該水平孔40にボルトを挿入して新設支柱35の下端を固定する。
【0032】
貫通固定具34は、図8に示すように、壁パネル8の表面から施工可能な例えばシーリングテクスビスなどの締結具である。貫通固定具34は、挿入後に操作することで壁パネル8内でハンガー部が引っ掛かるように形成されたITハンガーボルトなどのワンサイドボルトであってもよい。貫通固定具34は、図11に示すように、先端が壁パネル8の取付部81を貫通しており、貫通固定具34の先端が取付部81に螺着され、又は貫通固定具34の先端に形成されたハンガー部が取付部81の内部に係止されることで、貫通固定具34は取付部81に定着している。
【0033】
新設支柱35は、図1に示すように、下端に突出プレート38を挿入可能な受入孔41を有し、当該受入孔41に突出プレート38を挿入した状態で、ボルトで突出プレート38に固定される。新設支柱35は下端から湾曲して上方に向かって延びており、中間部に小径の新設水平材36を固定可能な2つの中間手摺受け42を有し、上端部に大径の新設水平材36を固定可能な上部手摺受け43を有している。2つの中間手摺受け42及び上部手摺受け43はそれぞれ新設水平材36に対して移動可能に形成されており、新設支柱35を新設手摺5に沿って所望の位置に移動させることができる。
【0034】
このように、本実施形態の手摺固定構造1は、壁パネル本体80の裏面に形成される取付部81に、貫通固定具34が定着されるものであり、取付部81は壁パネル8を下地フレーム7に取り付けるために必要な強度を有するものであるので、貫通固定具34によって新設手摺5の下端の固定部33を十分な取付強度で壁パネル8の表面に固定することができる。
【0035】
既設手摺3が配置された既設の腰壁2が、例えば経年劣化により、手摺の交換を含むリフォームが必要となった場合に、既設の腰壁2の既設手摺3を新設手摺5に交換する手摺のリフォーム方法は、まず、図4及び図5に示すように、既設手摺3のフランジ部19の上に突出している固定ボルト10からナット21を取り外し、既設手摺3を持ち上げて、フランジ部19の固定孔20を固定ボルト10から離脱させて、既設手摺3を固定ボルト10から取り外す。
【0036】
次に、図6に示すように、既設笠木4を笠木固定部材15から取り外して持ち上げ、既設笠木4の貫通孔16に挿入されている固定ボルト10から当該既設笠木4を取り外す。そして、既設笠木4を固定していた笠木固定部材15を既設水切材11から取り外し、さらに、既設水切材11を持ち上げて、当該既設水切材11のボルト挿入孔14に挿入されている固定ボルト10から取り外す。
【0037】
そして、次に、図7に示すように、固定板9から上方に突出する固定ボルト10を切断して取り除く。そして、固定ボルト10を取り除いた後に、図8に示すように、下地フレーム7の上部水平材71に下地木23をボルト固定し、その上に、固定ボルト10挿入用のボルト挿入孔14が形成されていない新設水切材22を、腰壁2の幅方向に沿って複数並べて配置する。このとき、図9に示すように、新設水切材22は互いの端部同士が100mm重なり合うように配置され、当該重なった部分にシーリング剤28を塗布して防水シーリング処理を行う。
【0038】
そして、図8図10、及び図11に示すように、新設手摺5の下端を固定するための固定部33の固定プレート37を、壁パネル8の裏面に取付部81が設けられている位置における壁パネル8の表面に固定プレート37の位置を調整して、固定プレート37を当該表面に押し当てる。そして、固定プレート37の3つの取付孔39にそれぞれ貫通固定具34を挿入し、当該貫通固定具34を壁パネル本体80を貫通して取付部81にそれぞれ定着させることで、固定部33を壁パネル8の表面に固定する。貫通固定具34は、壁パネル8の表面側から操作して壁パネル8の裏面側に形成された取付部81に定着できるので、新設手摺5の取り付けは、壁パネル8を下地フレーム7から取り外すことなく、壁パネル8の表面側から施工することができ、しかも取付部81に定着することで、手摺としての十分な取付強度で固定できるので、施工性に優れる。そして、新設手摺5を壁パネル8の表面に固定することで、腰壁2の新設笠木6に手摺を固定するための固定ボルト10が不要となり、新設笠木6に当該固定ボルト10が挿入される貫通孔16を設ける必要がなくなるので、新設笠木6の防水性を高めることができる。
【0039】
固定部33が壁パネル8の表面に固定されると、図12に示すように、新設支柱35の下端が固定部33の突出プレート38に整合するように、新設支柱35を新設水平材36に固定する位置を調整する。そして、新設支柱35の下端の受入孔41に突出プレート38を挿入してボルト固定することで、新設支柱35を固定部33に固定し、新設支柱35の2つの中間手摺受け42、及び、上部手摺受け43からそれぞれ新設水平材36に貫通するようにビスを打ち込んで、新設支柱35と新設水平材36とを固定して、新設手摺5を腰壁2に固定する。
【0040】
そして、図13に示すように、笠木取付金具24を新設水切材22の上にはめ込んで、笠木取付金具24及び新設水切材22を貫通するようにビスを下地木23に打ち込んで、笠木取付金具24及び新設水切材22を固定する。そして、図13及び図14に示すように、新設笠木6の嵌合突条32を笠木取付金具24に嵌合させて、新設笠木6を固定する。新設笠木6は、腰壁2の幅方向に沿って複数設けられており、図15に示すように、当該新設笠木6の端部同士が互いに突き合わせられるように配置され、新設笠木6の端部を突き合わせた部分にジョイント金具25が固定されて、手摺リフォーム方法を完了する。
【0041】
以上のように、本実施形態の手摺リフォーム方法を用いると、新設笠木6及び新設水切材22は固定ボルト10を挿入する貫通孔16やボルト挿入孔14を設ける必要がないので、リフォームによって腰壁2の防水性を高めることができ、新設手摺5は壁パネル8の表面側から操作可能な貫通固定具34によって壁パネル8の表面に固定されるので、手摺の交換を含むリフォームの際に壁パネル8を取り外すことなく新設手摺5を十分な強度で取り付けることができるので施工性に優れる。
【0042】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る手摺固定構造1及び手摺リフォーム方法は、例えば住宅のバルコニーの外周縁に形成される腰壁2に設けられる手摺の固定構造及びリフォーム方法として好適である。
【符号の説明】
【0044】
1 手摺固定構造
2 腰壁
3 既設手摺
4 既設笠木
5 新設手摺
6 新設笠木
7 下地フレーム
8 壁パネル
10 固定ボルト
11 既設水切材
22 新設水切材
24 笠木取付金具
34 貫通固定具
81 取付部
図1
図2
図3
図4
図5
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図9
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図13
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図15