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特許7432126積層体およびフレキシブルデバイス作製方法
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  • 特許-積層体およびフレキシブルデバイス作製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】積層体およびフレキシブルデバイス作製方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20240208BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20240208BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240208BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B7/022
G09F9/30 308Z
G09F9/00 342
G09F9/30 310
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022538624
(86)(22)【出願日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 JP2021021947
(87)【国際公開番号】W WO2022018994
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2020124589
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020124591
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 桂也
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】前田 郷司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
(72)【発明者】
【氏名】米虫 治美
(72)【発明者】
【氏名】水口 伝一朗
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120663(JP,A)
【文献】特開2017-124587(JP,A)
【文献】特開2013-010342(JP,A)
【文献】国際公開第2012/050072(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/039928(WO,A1)
【文献】特開2016-083926(JP,A)
【文献】特開2020-100026(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131896(WO,A1)
【文献】特開2018-126922(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110098225(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0167031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 17/10
B32B 7/022
G09F 9/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の高耐熱フィルムおよび無機基板を積層してなる第1の積層体を用いた第2の積層体の製造方法であり、
前記第1の高耐熱フィルムと前記無機基板との間にシランカップリング剤を有し、接着剤が使用されておらず、
前記第1の積層体は、以下の(1)~(4)の特徴を有しており、
前記第2の積層体の製造方法は、
(a)前記第1の積層体から前記第1の高耐熱フィルムを剥離して無機基板を得る工程、
(b)前記無機基板の前記第1の高耐熱フィルムが積層していた面に、第2の高耐熱フィルムを積層して第2の積層体を得る工程、
を有し、下記(6)~(9)の特徴を有する第2の積層体の製造方法。
(1)第1の高耐熱フィルムの引張弾性率が4GPa以上である
(2)第1の高耐熱フィルムと無機基板との接着強度が0.3N/cm以下である
(3)第1の高耐熱フィルムの無機基板と接する面の表面粗さRaが5nm以下である
(4)第1の積層体から第1の高耐熱フィルムを剥離した後の無機基板表面の表面粗さRaが3nm以下である
(6)第2の高耐熱フィルムの引張弾性率が4GPa以上である
(7)第2の高耐熱フィルムと無機基板との接着強度が0.3N/cm以下である
(8)第2の高耐熱フィルムの無機基板と接する面の表面粗さRaが5nm以下である
(9)第2の積層体から第2の高耐熱フィルムを剥離した後の無機基板表面の表面粗さRaが3nm以下である
ここで、
(X)前記(2)、及び、前記(7)の接着強度は、
大気雰囲気下、100℃10分間熱処理した後の90°剥離強度であり、測定条件は、下記の通りであり、
<90°剥離強度の測定条件>
無機基板に対して第1の高耐熱フィルム又は第2の高耐熱フィルムを90°の角度で引き剥がす。
5回測定を行い、平均値を測定値とする。
測定装置 ; 島津製作所社製 オートグラフAG-IS
測定温度 ; 室温(25℃)
剥離速度 ; 100mm/min
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 2.5cm
(Y)前記(3)の表面粗さRa、及び、前記(8)の表面粗さRaは、
原子間力顕微鏡(AFM)を用い、第1の高耐熱フィルム又は第2の高耐熱フィルムを観察ステージ上に固定し、5μm角のエリア内の面粗さを測定し、前記測定は、無機基板と接する箇所において、中心部、各4隅の合計5点を測定し、その平均値であり、
(Z)前記(4)の表面粗さRa、及び、前記(9)の表面粗さRaは、
原子間力顕微鏡(AFM)を用い、無機基板を観察ステージ上に固定し、5μm角のエリア内の面粗さを測定し、前記測定は、第1の高耐熱フィルム又は第2の高耐熱フィルムと接する箇所において、中心部、各4隅の合計5点を測定し、その平均値である。
【請求項2】
さらに、以下の(5)の特徴を有する請求項1に記載の第2の積層体の製造方法。
(5)前記無機基板の前記第1の高耐熱フィルムと貼り付ける面の窒素元素成分比が0.2原子%以上12原子%以下である
【請求項3】
前記第1の高耐熱フィルムのCTEが50ppm/K以下である請求項1または2に記載の第2の積層体の製造方法
【請求項4】
さらに、以下の(10)の特徴を有する請求項1~3のいずれか1に記載の第2の積層体の製造方法。
(10)前記無機基板の前記第2の高耐熱フィルムと貼り付ける面の窒素元素成分比が0.2原子%以上12原子%以下である
【請求項5】
前記第2の高耐熱フィルムのCTEが50ppm/K以下である請求項1~4のいずれか1に記載の第2の積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1に記載の第2の積層体を得た後、
(c)第2の高耐熱フィルム表面に電子素子または配線を形成し、次いで無機基板を剥離する工程
を有することを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機基板上にポリイミド系樹脂等の高耐熱フィルムが形成された積層体およびフレキシブルデバイスの製造方法に関するものである。本発明の積層体は、例えばフレキシブル基板の表面に電子素子を形成したフレキシブルデバイスおよびフレキシブル配線板を製造する際に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機ELディスプレイ(OLED)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)および電子ペーパー等の電子デバイスの分野では、主としてガラス基板等の無機材料からなる基板(無機基板)上に電子素子を形成したものが用いられている。しかしながら、無機基板は剛直であり、しなやかさに欠けるため、フレキシブルになりにくいという問題がある。
【0003】
そこで、フレキシブル性を有しかつ耐熱性を有するポリイミド等の有機高分子材料を基板として用いる方法が提案されている。すなわち、フレキシブル性を有する高耐熱フィルムを、キャリアとして使用する無機基板上に積層し、この高耐熱フィルムを電子素子形成のための基板または配線基板として利用する技術が実用化されている。ここで、例えば、無機基板として光透過性に優れたガラス基板を用いると、電子素子を形成する際および配線基板作成の際の検査工程が容易となる上、既存のガラス基板上に電子素子を形成するフレキシブルデバイス生産用の設備がそのまま転用できるという利点を有する。
【0004】
このような高耐熱フィルムからなるフレキシブル基板層が積層された無機基板においては、無機基板をキャリア用の基板として利用するので、高耐熱フィルムの表面に電子素子を形成後、最後に高耐熱フィルムを無機基板から剥離して分離する必要がある。従い、電子素子を形成後は良好な剥離性が要求される。
【0005】
無機基板に強固に密着している高耐熱フィルムの無機基板からの剥離を工業的に行う方法として、例えば、ガラス基板に接したポリイミド系樹脂等高耐熱フィルムの界面にレーザー光を照射する方法(特許文献1)、ガラス基板に接したポリイミドフィルムの界面をジュール熱で加熱する方法(特許文献2)、誘導加熱する方法(特許文献3)、キセノンランプからのフラッシュ光を照射する方法(特許文献4)等により、剥離を行う方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、その工程が複雑で長時間を要し、設備が高価なため高コストであるだけでなく、無機基板の再利用が困難という問題点があった。
そこで、シランカップリング剤を用いて比較的弱い力で無機基板と高耐熱フィルムを接着させ、無機基板からの剥離を容易にする方法が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2007-512568号公報
【文献】特開2012-189974号公報
【文献】特開2014-86451号公報
【文献】特開2014-120664号公報
【文献】特開2014-100722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献5に開示されているような方法で高耐熱フィルムを剥離した後の無機基板表面は表面が平滑で、再利用が容易である。しかしながら、前記したシランカップリング剤を用いた方法では、高耐熱フィルムの弾性率が低いと無機基板からの剥離時に剥離界面での高耐熱フィルムの変形・破壊を伴い、高耐熱フィルム剥離後の無機基板表面に荒れが生じ、再利用が困難という問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は前記課題を解決するものであって、無機基板と高耐熱フィルムの積層体から高耐熱フィルムを剥離後、無機基板表面が十分に平滑であり、無機基板を再利用可能である積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、無機基板上に積層される高耐熱フィルムが特定の弾性率を有し、無機基板と耐熱樹脂フィルムの剥離強度が一定の値以下であれば前記課題が解決されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の構成を含むものである。
[1] 第1の高耐熱フィルムと無機基板との接着剤を実質的に使わない第1の積層体であって、以下の(1)~(4)の特徴を有する第1の積層体。
(1)第1の高耐熱フィルムの引張弾性率が4GPa以上である
(2)第1の高耐熱フィルムと無機基板との接着強度が0.3N/cm以下である
(3)第1の高耐熱フィルムの無機基板と接する面の表面粗さRaが5nm以下である
(4)第1の積層体から第1の高耐熱フィルムを剥離した後の無機基板表面の表面粗さRaが3nm以下である
[2] さらに、以下の(5)の特徴を有する[1]に記載の積層体。
(5)前記無機基板の前記第1の高耐熱フィルムと貼り付ける面の窒素元素成分比が0.2原子%以上12原子%以下である
[3] 前記第1の高耐熱フィルムのCTEが50ppm/K以下である[1]または[2]に記載の第1の積層体。
[4] (a)[1]~[3]のいずれかに記載の第1の積層体から第1の高耐熱フィルムを剥離して無機基板を得る工程、
(b)前記無機基板の前記第1の高耐熱フィルムが積層していた面に、第2の高耐熱フィルムを積層して第2の積層体を得る工程、
を有し、下記(6)~(9)の特徴を有する第2の積層体の製造方法。
(6)第2の高耐熱フィルムの引張弾性率が4GPa以上である
(7)第2の高耐熱フィルムと無機基板との接着強度が0.3N/cm以下である
(8)第2の高耐熱フィルムの無機基板と接する面の表面粗さRaが5nm以下である
(9)第2の積層体から第2の高耐熱フィルムを剥離した後の無機基板表面の表面粗さRaが3nm以下である
[5] さらに、以下の(10)の特徴を有する[4]に記載の第2の積層体の製造方法。
(10)前記無機基板の前記第2の高耐熱フィルムと貼り付ける面の窒素元素成分比が0.2原子%以上12原子%以下である
[6] 前記第2の高耐熱フィルムのCTEが50ppm/K以下である[4]または[5]に記載の第2の積層体の製造方法。
[7] [4]~[6]のいずれかに記載の第2の積層体を得た後、
(c)第2の高耐熱フィルム表面に電子素子または配線を形成し、次いで無機基板を剥離する工程
を有することを特徴とするフレキシブル電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層体および積層体の製造方法においては、高耐熱フィルムは無機基板から容易に剥離でき、なおかつ高耐熱フィルム剥離後の無機基板表面が十分に平滑であるため、無機基板を繰り返し利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態にかかるシランカップリング剤塗布装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
<高耐熱フィルム>
本発明において、高耐熱フィルムとは、特に断りがない限り、第1の高耐熱フィルムおよび第2の高耐熱フィルムの総称をいう。第1の高耐熱フィルムと第2の高耐熱フィルムとは、それぞれ同じ組成のフィルムであっても構わないし、異なる組成のフィルムであっても構わない。好ましくは同じ組成のフィルムである。また、高耐熱フィルムは単層または複層構造(積層構成)を有しており、物理的強度や無機基板との易剥離性から、2層以上の複層構造を有していることが好ましい。高耐熱フィルムが複層構造を有している場合の層の数は2層以上であれば良く、好ましくは3層以上である。また10層以下であることが好ましく、より好ましくは5層以下である。また、複層構造を有している場合の各層は同じ組成のフィルム層であっても構わないし、異なる組成のフィルム層であっても構わない。好ましくは同じ組成のフィルム層である。また、厚み方向で対称構造を有していることも好ましい。
【0015】
高耐熱フィルムは、好ましくは融点が250℃以上であり、より好ましくは300℃以上であり、さらに好ましくは400℃以上のフィルムである。また、ガラス転移温度が200℃以上であることが好ましく、より好ましくは320℃以上であり、さらに好ましくは380℃以上の高分子によって作られているフィルムである。以下、煩雑さを避けるために単に高分子とも称する。本明細書において、融点、及び、ガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により求めるものである。なお、融点が500℃を超える場合には、該当温度にて加熱した際の熱変形挙動を目視観察することで融点に達しているか否かを判断して良い。また、高耐熱フィルムが複層構造の場合は、高耐熱フィルム全体(すべての複層)の測定値をいう。
【0016】
前記高耐熱フィルム(以下、単に高分子フィルムとも称する)としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素化ポリイミドといったポリイミド系樹脂(例えば、芳香族ポリイミド樹脂、脂環族ポリイミド樹脂);ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレートといった共重合ポリエステル(例えば、全芳香族ポリエステル、半芳香族ポリエステル);ポリメチルメタクリレートに代表される共重合(メタ)アクリレート;ポリカーボネート;ポリアミド;ポリスルフォン;ポリエーテルスルフォン;ポリエーテルケトン;酢酸セルロース;硝酸セルロース;芳香族ポリアミド;ポリ塩化ビニル;ポリフェノール;ポリアリレート;ポリアセタール;変性ポリフェニレンエーテル;ポリフェニレンスルフィド;ポリフェニレンオキシド;ポリスチレン;ポリベンゾオキサゾール;ポリベンゾチアゾール;ポリベンゾイミダゾール;環状ポリオレフィン;液晶ポリマー等のフィルムを例示できる。またこれらを、ガラスフィラー、ガラス繊維などで補強したものが例示できる。
ただし、前記高分子フィルムは、250℃以上の熱処理を伴うプロセスに用いられることが前提であるため、例示された高分子フィルムの中から実際に適用できる物は限られる。前記高分子フィルムのなかでも好ましくは、所謂スーパーエンジニアリングプラスチックを用いたフィルムであり、より具体的には、芳香族ポリイミドフィルム、脂環族ポリイミドフィルム、芳香族アミドフィルム、芳香族アミドイミドフィルム、アミドイミドフィルム、芳香族ベンゾオキサゾールフィルム、芳香族ベンゾチアゾールフィルム、芳香族ベンゾイミダゾールフィルム、環状ポリオレフィン、液晶ポリマー、等が挙げられる。
【0017】
一般的に、ポリアミドイミドフィルムは、溶媒中でジイソシアネート類とトリカルボン類とを反応させて得られるポリアミドイミド溶液を、ポリアミドイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して、例えば1~50質量%の溶媒を含むポリアミドイミドフィルムとなし、さらにポリアミドイミド作製用支持体上で、若しくは該支持体から剥がした状態で1~50質量%の溶媒を含むポリアミドイミドフィルムを高温処理して乾燥させることで得られる。
【0018】
また、一般的に、ポリアミドフィルムは、溶媒中でジアミン類とジカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド溶液をポリアミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して例えば1~50質量%の溶媒を含むポリアミドフィルムとなし、さらにポリアミド作製用支持体上で、若しくは該支持体から剥がした状態で1~50質量%の溶媒を含むポリアミドフィルムを高温処理して乾燥させることで得られる。
【0019】
<ポリイミドフィルム>
以下に前記高分子フィルムの一例であるポリイミド系樹脂フィルム(ポリイミドフィルムと称する場合もある)についての詳細を説明する。一般にポリイミド系樹脂フィルムは、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(以下では「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」ともいう)とし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、あるいは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることによって得られる。ここで、グリーンフィルムとは、溶媒を含有し、自己支持性を有するポリアミド酸のフィルムである。グリーンフィルムの溶媒含有量は、自己支持性を有していれば特に限定されないが、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上であり、さらに好ましくは10質量%以上であり、よりさらに好ましくは20質量%以上であり、特に好ましくは30質量%以上である。また、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下であり、さらに好ましくは60質量%以下であり、特に好ましくは50質量%以下である。
【0020】
ポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液の塗布は、例えば、スピンコート、ドクターブレード、アプリケーター、コンマコーター、スクリーン印刷法、スリットコート、リバースコート、ディップコート、カーテンコート、スリットダイコート等従来公知の溶液の塗布手段を適宜用いることができる。ポリアミド酸溶液を塗布してフィルムを作る方法では材料選択の幅が広いため、易剥離に好ましい材料を見つけるためには検討しやすい反面、イミド化反応の制御の必要がある。これに対して、イミド化反応を伴わないフィルム製膜では、製膜がしやすい利点があるため、適宜使い分けることが必要となる。
【0021】
本発明におけるポリイミドフィルムは、主鎖にイミド結合を有する高分子のフィルムであり、好ましくはポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムであり、より好ましくはポリイミドフィルムである。また、ポリアミドフィルムも好ましい。
【0022】
一般的に、ポリイミドフィルムは、前述の通り、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類を反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルムとなし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、若しくは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることで得られる。また、別の方法として、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類との脱水閉環反応により得られるポリイミド溶液をポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して、例えば1~50質量%の溶媒を含むポリイミドフィルムとなし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、若しくは該支持体から剥がした状態で1~50質量%の溶媒を含むポリイミドフィルムを高温処理して乾燥させることでも得られる。
【0023】
ポリアミド酸を構成するジアミン類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましい。ジアミン類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0024】
ジアミン類としては特に限定はなく、例えばオキシジアニリン(ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン(1,4-フェニレンジアミン)等が挙げられる。
【0025】
ポリアミド酸を構成するテトラカルボン酸類としては、ポリイミド合成に通常用いられる芳香族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂肪族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂環族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)を用いることができる。これらが酸無水物である場合、分子内に無水物構造は1個であってもよいし2個であってもよいが、好ましくは2個の無水物構造を有するもの(二無水物)がよい。テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0026】
テトラカルボン酸としては、特に限定はなく、例えばピロリメット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0027】
本発明における高耐熱フィルムの一例である透明高耐熱フィルムについて説明する。中でも透明ポリイミドフィルムについての詳細を説明する。透明ポリイミドの透明性としては、全光線透過率が75%以上のものであることが好ましい。より好ましくは80%以上であり、さらに好ましくは85%以上であり、より一層好ましくは87%以上であり、特に好ましくは88%以上である。前記透明高耐熱フィルムの全光線透過率の上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには98%以下であることが好ましく、より好ましくは97%以下である。
【0028】
本発明における無色透明性の高いポリイミドを得るための芳香族テトラカルボン酸類としては、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、4,4’-オキシジフタル酸、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-イル)ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(ベンゼン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’-[(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(1,4-キシレン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(4-イソプロピル―トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(ナフタレン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(ベンゼン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’-[(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(1,4-キシレン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(4-イソプロピル―トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(ナフタレン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1、2-ジカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-2,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ジフタル酸、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-3,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ジフタル酸、などのテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の酸無水物構造を有する二無水物が好適であり、特に、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物が好ましい。なお、芳香族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。芳香族テトラカルボン酸類の共重合量は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、なおさらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であっても差し支えない。
【0029】
脂環式テトラカルボン酸類としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、ビシクロ[2,2、1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、テトラヒドロアントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、テトラデカヒドロ-1,4:5,8:9,10-トリメタノアントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロ-1,4-エタノ-5,8-メタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロヘキサノン-6’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロプロパノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロブタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘプタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロオクタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロノナノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロウンデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロドデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロトリデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロテトラデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロペンタノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロヘキサノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、などのテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の酸無水物構造を有する二無水物が好適であり、特に、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がさらに好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。脂環式テトラカルボン酸類の共重合量は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、なおさらに好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であっても差し支えない。
【0030】
トリカルボン酸類としては、トリメリット酸、1,2,5-ナフタレントリカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,3’,4’-トリカルボン酸、ジフェニルスルホン-3,3’,4’-トリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸、或いはヘキサヒドロトリメリット酸などの上記芳香族トリカルボン酸の水素添加物、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート、1,4-ブタンジオールビストリメリテート、ポリエチレングリコールビストリメリテートなどのアルキレングリコールビストリメリテート、及びこれらの一無水物、エステル化物が挙げられる。これらの中でも、1個の酸無水物構造を有する一無水物が好適であり、特に、トリメリット酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物が好ましい。尚、これらは単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
ジカルボン酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、4、4’-オキシジベンゼンカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、或いは1,6-シクロヘキサンジカルボン酸などの上記芳香族ジカルボン酸の水素添加物、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカ二酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、及びこれらの酸塩化物或いはエステル化物などが挙げられる。これらの中で芳香族ジカルボン酸及びその水素添加物が好適であり、特に、テレフタル酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸、4、4’-オキシジベンゼンカルボン酸が好ましい。尚、ジカルボン酸類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
本発明における無色透明性の高いポリイミドを得るためのジアミン類或いはイソシアネート類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成、ポリアミドイミド合成、ポリアミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類、芳香族ジイソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、透明性の観点からは脂環式ジアミン類が好ましい。また、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類及びイソシアネート類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0033】
芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンズアミド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-トリフルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-フルオロフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-メチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-シアノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-ビフェノキシベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、4,4’-[9H-フルオレン-9,9-ジイル]ビスアニリン(別名「9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン」)、スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-2,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ビスアニリン、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-2,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ビスアニリン、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-3,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ビスアニリン等が挙げられる。また、上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシル基、またはシアノ基で置換されても良く、さらに前記炭素数1~3のアルキル基もしくはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換されても良い。また、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、特に限定はなく、例えば、5-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス(5-アミノベンゾオキサゾール)、2,2’-p-フェニレンビス(6-アミノベンゾオキサゾール)、1-(5-アミノベンゾオキサゾロ)-4-(6-アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。これらの中で、特に、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンズアミド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノンが好ましい。尚、芳香族ジアミン類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0034】
脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-エチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-プロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソプロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-sec-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-tert-ブチルシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルシクロヘキシルアミン)等が挙げられる。これらの中で、特に、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサンが好ましく、1,4-ジアミノシクロヘキサンがより好ましい。尚、脂環式ジアミン類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
ジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-または3,3’-または4,2’-または4,3’-または5,2’-または5,3’-または6,2’-または6,3’-ジメチルジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-または3,3’-または4,2’-または4,3’-または5,2’-または5,3’-または6,2’-または6,3’-ジエチルジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-または3,3’-または4,2’-または4,3’-または5,2’-または5,3’-または6,2’-または6,3’-ジメトキシジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-3,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’ -ジイソシアネート、ベンゾフェノン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-(2,2ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン)ジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、及びこれらのいずれかを水素添加したジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート)などが挙げられる。これらの中では、低吸湿性、寸法安定性、価格及び重合性の点からジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネートやナフタレン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネートが好ましい。尚、ジイソシアネート類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本発明の高耐熱フィルムは単層構成であっても構わないし、2層以上の複層(積層)構成であっても構わない。高耐熱フィルムが単層構造の場合は、高耐熱フィルムの物性(引張弾性率、融点、ガラス転移温度、黄色度指数、全光線透過率、ヘイズ、CTE等)は高耐熱フィルム全体の値を指す。高耐熱フィルムが複層構造を有する場合は、高耐熱フィルムの引張弾性率および表面粗さRaは無機基板に接している層単層のみの値を指し、他の物性(融点、ガラス転移温度、黄色度指数、全光線透過率、ヘイズ、CTE等)は高耐熱フィルム全体の値を指す。そのため、無機基板に接していない層(無機基板に接する層以外の全層)の引張弾性率および表面粗さRaは制限されない。
【0037】
前記高耐熱フィルムが、透明高耐熱フィルムである場合、その黄色度指数(以下、「イエローインデックス」または「YI」ともいう。)は10以下が好ましく、より好ましくは7以下であり、さらに好ましくは5以下であり、より一層好ましくは3以下である。前記透明高耐熱フィルムの黄色度指数の下限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.3以上である。
【0038】
本発明における透明高耐熱フィルムの波長400nmにおける光線透過率は70%以上が好ましく、より好ましくは72%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、より一層好ましくは80%以上である。前記透明高耐熱フィルムの波長400nmの光線透過率の上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには99%以下であることが好ましく、より好ましくは98%以下であり、さらに好ましくは97%以下である。
【0039】
本発明における透明高耐熱フィルムのヘイズは1.0以下が好ましく、より好ましくは0.8以下であり、さらに好ましくは0.5以下であり、より一層好ましくは0.3以下である。下限は特に限定されないが、工業的には、0.01以上であれば問題なく、0.05以上であっても差し支えない。
【0040】
なお、本発明の線膨張係数(CTE)を示すポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムの成膜過程において、延伸を行うことでも実現することができる。かかる延伸操作は、ポリイミド溶液をポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して1~50質量%の溶媒を含むポリイミドフィルムとなし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、もしくは該支持体から剥がした状態で1~50質量%の溶媒を含むポリイミドフィルムを高温処理して乾燥させる過程において、MD方向に1.5倍から4.0倍に、TD方向に1.4倍から3.0倍に延伸することによって実現できる。この際にポリイミドフィルム作製用支持体に未延伸の熱可塑性高分子フィルムを用い、熱可塑性高分子フィルムとポリイミドフィルムを同時に延伸した後に熱可塑性高分子フィルムから延伸後のポリイミドフィルムを剥離することにより、特にMD方向の延伸時にポリイミドフィルムに入る傷を防止することができ、より高品位なポリイミドフィルムを得ることができる。
【0041】
高耐熱フィルムの30℃から250℃の間の平均の線膨張係数(CTE)は、50ppm/K以下であることが好ましい。より好ましくは45ppm/K以下であり、さらに好ましくは40ppm/K以下であり、よりさらに好ましくは30ppm/K以下であり、特に好ましくは20ppm/K以下である。また-5ppm/K以上であることが好ましく、より好ましくは-3ppm/K以上であり、さらに好ましくは1ppm/K以上である。CTEが前記範囲であると、一般的な支持体(無機基板)との線膨張係数の差を小さく保つことができ、熱を加えるプロセスに供しても高耐熱フィルムと無機基板とが剥がれるあるいは、支持体ごと反ることを回避できる。ここにCTEとは温度に対して可逆的な伸縮を表すファクターである。なお、前記高耐熱フィルムのCTEとは、高耐熱フィルムの流れ方向(MD方向)のCTE及び幅方向(TD方向)のCTEの平均値を指す。前記高耐熱フィルムのCTEの測定方法は、実施例に記載の方法による
【0042】
また、高耐熱フィルムが2層以上の積層構成を有する場合、各層単独のCTEの差が異なると反りの原因となるため、好ましくない。そのため無機基板と接触する高耐熱フィルム層と、前記無機基板と接触せずに前記高耐熱フィルムと隣接する高耐熱フィルム層のCTE差は好ましくは、40ppm/K以下であり、より好ましくは、30ppm/K以下であり、さらに好ましくは、15ppm/K以下である。高耐熱フィルム積層体を構成する層のうち、最も膜厚の厚い層が前記範囲内であることが好ましい。また、高耐熱フィルムは膜厚方向に対称構造になっていると、反りが発生しにくく好ましい。
【0043】
透明高耐熱フィルムが2層以上の積層構成を有する場合、前記無機基板と接触する透明高耐熱フィルム層は、下記式1および/または下記式2の構造を有するポリイミドを含有することが好ましい。透明高耐熱フィルム層のうち、式1および式2の構造を有するポリイミドの合計量が70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくは95質量%以上であり、100質量%であっても差し支えない。式1および/または式2の構造を有するポリイミドを前記範囲内で含有することで、透明高耐熱フィルムが優れたCTEを発現することができる。
【化1】
【化2】
【0044】
本発明における高耐熱フィルムの厚さは5μm以上が好ましく、より好ましくは8μm以上であり、さらに好ましくは15μm以上であり、より一層好ましくは20μm以上である。前記高耐熱フィルムの厚さの上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには200μm以下であることが好ましく、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは90μm以下である。薄すぎるとフィルム作製、搬送が困難であり、厚すぎるとロール搬送などが困難となってくる。
【0045】
前記高耐熱フィルムの引張弾性率は、4GPa以上であることが必要である。好ましくは5GPa以上であり、さらに好ましくは6GPa以上である。引張弾性率の上限は特に制限されないが、15GPa程度である。前記引張弾性率が、15GPa以下であると、前記高耐熱フィルムをフレキシブルなフィルムとして使用できる。前記引張弾性率が4GPa以上であると、無機基板から高耐熱フィルムを剥離する際、無機基板からの剥離性が良く、スムーズに剥離することが可能であり、無機基板表面の荒れを抑制することができる。高耐熱フィルムが複層構造の場合、無機基板と接する層単層での引張弾性率が4GPaであることが必要である。無機基板と接する層単層での物性評価は、無機基板と接する層と同じ組成のフィルム単層を製膜し、引張弾性率の測定により求めることができる。単層の製膜方法は実施例に記載のいずれかの製造例によるものとする。前記高耐熱フィルムの引張弾性率の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0046】
前記高耐熱フィルムの厚さ斑は、20%以下であることが好ましく、より好ましくは12%以下であり、さらに好ましくは7%以下であり、特に好ましくは4%以下である。厚さ斑が20%を超えると、狭小部へ適用し難くなる傾向がある。なお、高耐熱フィルムの厚さ斑は、例えば接触式の膜厚計にて被測定フィルムから無作為に10点程度の位置を抽出してフィルム厚を測定し、下記式に基づき求めることができる。
フィルムの厚さ斑(%)
=100×(最大フィルム厚-最小フィルム厚)÷平均フィルム厚
【0047】
前記高耐熱フィルムは、その製造時において幅が300mm以上、長さが10m以上の長尺高耐熱フィルムとして巻き取られた形態で得られるものが好ましく、巻取りコアに巻き取られたロール状高耐熱フィルムの形態のものがより好ましい。前記高耐熱フィルムがロール状に巻かれていると、ロール状に巻かれた高耐熱フィルムという形態での輸送が容易となる。
【0048】
前記高耐熱フィルムにおいては、ハンドリング性および生産性を確保する為、高耐熱フィルム中に粒子径が10~1000nm程度の滑材(粒子)を、0.03~3質量%程度、添加・含有させて、高耐熱フィルム表面に微細な凹凸を付与して滑り性を確保することが好ましい。
【0049】
本発明において、特に透明高耐熱フィルムは2層以上積層構成(複層構造)であることが好ましい。物性の異なる材料(樹脂)を2層構成のフィルムとすることで、さまざまな特性を併せ持つフィルムを作製することもできる。さらに、厚さ方向に対称構造に積層(例えば、透明高耐熱フィルム層A/透明高耐熱フィルム層B/透明高耐熱フィルム層A)させることで、フィルム全体のCTEのバランスが良好となり、反りの発生しにくいフィルムとすることができる。また、いずれか一層を紫外や赤外に吸収を持つ層とすることで、分光特性に特徴を持たせることや、屈折率の異なる層によって光の入射出射を制御することなどが考えられる。
【0050】
2層以上の層構成のフィルムを作製する手段として、2層同時吐出可能なTダイによる同時塗工、1層塗布したのちに次の層を塗布する逐次塗工、1層塗布したのちに乾燥を進めてから次の層を塗工する方法、1層のフィルム化を終えてから次の層を塗工する方法、あるいは熱可塑性の層を入れることによる、加熱ラミネートでの多層化など様々な方法が考えられるが、本特許では、既存の様々な塗布方法、多層化手法を適宜取り入れることができる。
【0051】
複層構造の透明高耐熱フィルムを用いる場合、前記無機基板と接する第1の透明高耐熱フィルムの厚さは0.02μm以上が好ましく、より好ましくは0.05μm以上である。第1の透明高耐熱フィルムの厚さを薄くすることでフィルム全体の反りが抑制される。また、透明高耐熱フィルム全体の薄膜化の観点から、10μm以下であることが好ましく、より好ましくは8μm以下であり、さらに好ましくは5μm以下である。
【0052】
本発明における高耐熱フィルムの無機基板と接する面の表面粗さRaは5nm以下であることが必要である。好ましくは4.5nm以下であり、さらに好ましくは4nm以下である。表面粗さRaを5nm以下とすることで、表面が平滑な無機基板との接触面積が大きくなり、貼り合わせが良好となる。また、第1の積層体および/または第2の積層体からの剥離も容易となり、無機基板を再利用することができる。下限は特に限定されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには0.01nm以上であれば十分であり、0.1nm以上でも差し支えない。なお、高耐熱フィルムの表面粗さRaは無機基板に積層する前の値であることが必要であり、積層体から剥離した後も前記の範囲であるとより好ましい。
【0053】
<無機基板>
前記無機基板としては無機物からなる基板として用いることのできる板状のものであればよく、例えば、ガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属等を主体としているもの、および、これらガラス板、セラミック板、半導体ウエハ、金属の複合体として、これらを積層したもの、これらが分散されているもの、これらの繊維が含有されているものなどが挙げられる。
【0054】
前記ガラス板としては、石英ガラス、高ケイ酸ガラス(96%シリカ)、ソーダ石灰ガラス、鉛ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス(パイレックス(登録商標))、ホウケイ酸ガラス(無アルカリ)、ホウケイ酸ガラス(マイクロシート)、アルミノケイ酸塩ガラス等が含まれる。これらの中でも、線膨張係数が5ppm/K以下のものが望ましく、市販品であれば、液晶用ガラスであるコーニング社製の「コーニング(登録商標)7059」や「コーニング(登録商標)1737」、「EAGLE」、旭硝子社製の「AN100」、日本電気硝子社製の「OA10、OA11G」、SCHOTT社製の「AF32」などが望ましい。
【0055】
前記半導体ウエハとしては、特に限定されないが、シリコンウエハ、ゲルマニウム、シリコン-ゲルマニウム、ガリウム-ヒ素、アルミニウム―ガリウム―インジウム、窒素-リン-ヒ素-アンチモン、SiC、InP(インジウム燐)、InGaAs、GaInNAs、LT、LN、ZnO(酸化亜鉛)やCdTe(カドミウムテルル)、ZnSe(セレン化亜鉛)などのウエハが挙げられる。なかでも、好ましく用いられるウエハはシリコンウエハであり、特に好ましくは8インチ以上のサイズの鏡面研磨シリコンウエハである。
【0056】
前記金属としては、W、Mo、Pt、Fe、Ni、Auといった単一元素金属や、インコネル、モネル、ニモニック、炭素銅、Fe-Ni系インバー合金、スーパーインバー合金、といった合金等が含まれる。また、これら金属に、他の金属層、セラミック層を付加してなる多層金属板も含まれる。この場合、付加層との全体の線膨張係数(CTE)が低ければ、主金属層にCu、Alなども用いられる。付加金属層として使用される金属としては、高耐熱フィルムとの密着性を強固にするもの、拡散がないこと、耐薬品性や耐熱性が良いこと等の特性を有するものであれば限定されるものではないが、Cr、Ni、TiN、Mo含有Cuなどが好適な例として挙げられる。
【0057】
本発明におけるセラミック板としては、Al、Mullite、ALN、SiC、結晶化ガラス、Cordierite、Spodumene、Pb―BSG+CaZrO+Al、Crystallized glass+Al3、Crystallized Ca―BSG、BSG+Quartz、BSG+Al、Pb―BSG+Al、Glass―ceramic、ゼロデュア材などの基盤用セラミックスが含まれる。
【0058】
本発明における無機基板は、高耐熱フィルムを貼りつけて剥離後、再び高耐熱フィルムと貼り合わせて使用することができる。一度高耐熱フィルムを貼った基板上には高耐熱フィルムに由来する成分が残存する。具体的にはポリイミドフィルムを剥離した無機基板上ではESCAによる窒素元素成分比は0.2原子%以上12原子%以下であることが好ましい。ESCAによる窒素元素成分比が0.2原子%未満であると、実質的に未使用のガラスといえる。そのため、窒素元素成分比は0.5原子%以上であることが好ましく、より好ましくは0.8原子%以上であり、さらに好ましくは1原子%以上である。また、窒素元素成分比が12原子%を超えると、無機基板上に残存するポリイミドの量が多く、無機基板表面に荒れが生じており、表面が平滑なポリイミドフィルムを貼り合わせたとしても剥離強度が発現しないことがある。そのため、窒素元素成分比は11.5原子%以下であることが好ましく、より好ましくは11原子%以下であり、さらに好ましくは10原子%以下である。
【0059】
前記無機基板の平面部分は、充分に平坦である事が必要である。具体的には、前記高耐熱フィルムを剥離した後の無機基板の表面粗さのRa値が3nm以下であることが必要である。好ましくは2.5nm以下であり、より好ましくは2.1nm以下である。高耐熱フィルム剥離後の表面粗さRaを3nm以下とすることで、無機基板の表面平滑さが維持され、再利用することが可能となる。すなわち、第1の積層体から第1の高耐熱フィルムを剥離し、次いで第2の高耐熱フィルムを好適に積層することができる。下限は特に限定されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには0.1nm以上であれば十分であり、0.5nm以上でも差し支えない。さらに、第2の積層体から第2の高分子フィルム(フレキシブル電子デバイス)を剥離した後の積層体の表面粗さも上記の範囲内であることが好ましい。上記の範囲であることで、さらに再利用することができる。無機基板の表面粗さは、高耐熱フィルムが積層されていた箇所の少なくとも一部が前記範囲内であれば良く、高耐熱フィルムが積層されていた全部が前記範囲内であることがより好ましい。
前記無機基板の厚さは特に制限されないが、取り扱い性の観点より10mm以下の厚さが好ましく、3mm以下がより好ましく、1.3mm以下がさらに好ましい。厚さの下限については特に制限されないが、好ましくは0.07mm以上、より好ましくは0.15mm以上、さらに好ましくは0.3mm以上である。薄すぎると破損しやすくハンドリングが困難となることがある。また厚すぎると重くなりハンドリングが困難となることがある。
【0060】
<積層体>
本発明の積層体は、前記高耐熱フィルムと前記無機基板とを接着剤を実質的に使わないで積層したものである。高耐熱フィルムが2層以上の積層構成を有する場合は、無機基板と接触する高耐熱フィルムと、前記無機基板には接触せずに前記高耐熱フィルム層と隣接する高耐熱フィルム層を含有するものであることが好ましい。なお、本発明において、積層体とは、第1の積層体および第2の積層体の総称をいう。第1の積層体とは前記第1の高耐熱フィルムと前記無機基板との積層体であり、第2の積層体とは前記第2の高耐熱フィルムと前記無機基板(第1の積層体から第1の高耐熱フィルムを剥離したものを含む)との積層体である。
【0061】
第2の積層体は、(a)前記第1の積層体から第1の高耐熱フィルムを剥離して無機基板を得る工程、(b)前記無機基板の前記第1の高分子フィルムが積層していた面に第2の高耐熱フィルムを積層することで得ることができる。
積層体から高耐熱フィルムを剥離する方法としては、特に制限されないが、ピンセットなどで端から捲る方法、高耐熱フィルムに切り込みを入れ、切り込み部分の1辺に粘着テープを貼着させた後にそのテープ部分から捲る方法、高耐熱フィルムの切り込み部分の1辺を真空吸着した後にその部分から捲る方法等が採用できる。なお、剥離の際に、高耐熱フィルムの切り込み部分に曲率が小さい曲がりが生じると、その部分のデバイスに応力が加わることになりデバイスを破壊するおそれがあるため、極力曲率の大きな状態で剥がすことが望ましい。例えば、曲率の大きなロールに巻き取りながら捲るか、あるいは曲率の大きなロールが剥離部分に位置するような構成の機械を使って捲ることが望ましい。
前記高耐熱フィルムに切り込みを入れる方法としては、刃物などの切削具によって高耐熱フィルムを切断する方法や、レーザーと積層体を相対的にスキャンさせることにより高耐熱フィルムを切断する方法、ウォータージェットと積層体を相対的にスキャンさせることにより高耐熱フィルムを切断する方法、半導体チップのダイシング装置により若干ガラス層まで切り込みつつ高耐熱フィルムを切断する方法などがあるが、特に方法は限定されるものではない。例えば、上述した方法を採用するにあたり、切削具に超音波を重畳させたり、往復動作や上下動作などを付け加えて切削性能を向上させる等の手法を適宜採用することもできる。
また、剥離する部分に予め別の補強基材を貼りつけて、補強基材ごと剥離する方法も有用である。
【0062】
積層体の形状は、特に限定されず、正方形であっても長方形であっても差し支えない。好ましくは長方形であり、長辺の長さが300mm以上であることが好ましく、より好ましくは500mm以上であり、さらに好ましくは1000mm以上である。上限は特に限定されないが、工業的には20000mm以下であれば十分であり、10000mm以下でも差し支えない。
【0063】
<接着剤>
本発明の無機基板と高耐熱フィルムの間には実質的に接着剤層が介在しない。ここで本発明でいう接着剤層とはSi(ケイ素)の成分を質量比で10%未満(10質量%未満)のものをさす。また、実質的に使用しない(介在しない)とは、無機基板と高耐熱フィルムの間に介在する接着剤層の厚さが、0.4μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.3μm以下であり、さらに好ましくは0.2μm以下であり、特に好ましくは0.1μm以下であり、最も好ましくは0μmである。
【0064】
<シランカップリング剤(SCA)>
積層体において、高耐熱フィルムと無機基板との間にシランカップリング剤の層を有することが好ましい。本発明において、シランカップリング剤とは、Si(ケイ素)の成分を10質量%以上含有する化合物をいう。シランカップリング剤層を用いることで高耐熱フィルムと無機基板との中間層を薄くできるので加熱中の脱ガス成分が少なく、ウェットプロセスにおいても溶出しにくく、仮に溶出が起きても微量にとどまるという効果が出る。シランカップリング剤は、耐熱性が向上するため酸化ケイ素成分を多く含むもの好ましく、特に400℃程度の温度での耐熱性を有するものであることが好ましい。シランカップリング剤層の厚さは0.2μm未満であることが好ましい。フレキシブル電子デバイスとして使用する範囲としては、100nm以下(0.1μm以下)が好ましく、より望ましくは50nm以下であり、更に望ましくは10nmである。通常に作製すると、0.10μm以下程度となる。また、極力シランカップリング剤が少ないことを望むプロセスでは、5nm以下でも使用可能である。1nm以下では、剥離強度が低下或は、部分的に付かない部分が出るおそれがあるため、1nm以上であることが望ましい。
【0065】
本発明におけるシランカップリング剤は、特に限定されるものではないが、アミノ基或はエポキシ基を持ったものが、好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3―トリエトキシシリルーN-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(3- トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、クロロメチルフェネチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシランなどが挙げられる。このうち好ましいものとしては、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3―トリエトキシシリルーN-(1,3-ジメチルーブチリデン)プロピルアミン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、アミノフェニルトリメトキシシラン、アミノフェネチルトリメトキシシラン、アミノフェニルアミノメチルフェネチルトリメトキシシランなどが挙げられる。プロセスで耐熱性を要求する場合、Siとアミノ基などの間を芳香族でつないだものが望ましい。
【0066】
前記高耐熱フィルムと前記無機基板との接着強度は0.3N/cm以下であることが必要である。これにより、高耐熱フィルム上にデバイスを形成した後、当該高耐熱フィルムと無機基板との剥離が非常に容易となる。そのため、大量生産が可能なデバイス連結体を製造することができ、フレキシブル電子デバイスの製造が容易となる。前記接着強度は、0.25N/cm以下であることが好ましく、より好ましくは0.2N/cm以下であり、さらに好ましくは0.15N/cm以下であり、特に好ましくは0.1N/cm以下である。また、0.01N/cm以上であることが好ましい。高耐熱フィルム上にデバイスを形成する際に積層体が剥離しなくなることから、より好ましくは0.02N/cm以上であり、さらに好ましくは0.03N/cm以上であり、特に好ましくは0.05N/cm以上である。前記接着強度は、高耐熱フィルムと前記無機基板を貼り合わせた後、大気雰囲気下で100℃10分間熱処理した後の積層体の値である(初期接着強度)。また、前記初期接着強度測定時の積層体をさらに窒素雰囲気下で300℃1時間熱処理した後の積層体でも接着強度が前記範囲内であることが好ましい(300℃加熱処理後接着強度)。
【0067】
本発明の積層体は、例えば、以下の手順で作製することができる。あらかじめ無機基板の少なくとも一面をシランカップリング剤処理し、シランカップリング剤処理された面と、高耐熱フィルムとを重ね合わせ、両者を加圧によって積層する積層体を得ることができる。また、あらかじめ高耐熱フィルムの少なくとも一面をシランカップリング剤処理し、シランカップリング剤処理された面と、無機基板とを重ね合わせ、両者を加圧によって積層しても積層体を得ることができる。加圧方法としては、大気中での通常のプレス或はラミネートあるいは真空中でのプレス或はラミネートが挙げられるが、全面の安定した接着強度を得る為には、大きなサイズの積層体(例えば、200mm超)では大気中でのラミネートが望ましい。これに対して200mm以下程度の小サイズの積層体であれば真空中でのプレスが好ましい。真空度は通常の油回転ポンプによる真空で充分であり、10Torr以下程度あれば充分である。好ましい圧力としては、1MPaから20MPaであり、更に好ましくは3MPaから10MPaである。圧力が高いと、基板を破損するおそれがあり、圧力が低いと、密着しない部分が出る場合がある。好ましい温度としては90℃から300℃、更に好ましくは100℃から250℃で温度が高いと、フィルムにダメージを与え、温度が低いと、密着力が弱いことがある。
【0068】
<フレキシブル電子デバイスの作製>
前記積層体を用いると、既存の電子デバイス製造用の設備、プロセスを用いてフレキシブル電子デバイスを容易に作製することができる。具体的には、(c)積層体の高耐熱フィルム上に電子素子または配線(電子デバイス)を形成し、積層体から高耐熱フィルムごと剥離することで、フレキシブル電子デバイスを作製することができる。
本明細書において電子デバイスとは、電気配線を担う片面、両面、あるいは多層構造を有する配線基板、トランジスタ、ダイオードなどの能動素子や、抵抗、キャパシタ、インダクタなどの受動デバイスを含む電子回路、他、圧力、温度、光、湿度などをセンシングするセンサー素子、バイオセンサー素子、発光素子、液晶表示、電気泳動表示、自発光表示などの画像表示素子、無線、有線による通信素子、演算素子、記憶素子、MEMS素子、太陽電池、薄膜トランジスタなどをいう。
【0069】
本発明におけるフレキシブル電子デバイスの製造方法では、上述した方法で作製された積層体の高耐熱フィルム上にデバイスを形成した後、該高耐熱フィルムを前記無機基板から剥離する。
【0070】
<デバイス付き高耐熱フィルムの無機基板からの剥離>
デバイス付きの高耐熱フィルムを無機基板から剥離する方法としては、特に制限されないが、ピンセットなどで端から捲る方法、高耐熱フィルムに切り込みを入れ、切り込み部分の1辺に粘着テープを貼着させた後にそのテープ部分から捲る方法、高耐熱フィルムの切り込み部分の1辺を真空吸着した後にその部分から捲る方法等が採用できる。なお、剥離の際に、高耐熱フィルムの切り込み部分に曲率が小さい曲がりが生じると、その部分のデバイスに応力が加わることになりデバイスを破壊するおそれがあるため、極力曲率の大きな状態で剥がすことが望ましい。例えば、曲率の大きなロールに巻き取りながら捲るか、あるいは曲率の大きなロールが剥離部分に位置するような構成の機械を使って捲ることが望ましい。
前記高耐熱フィルムに切り込みを入れる方法としては、刃物などの切削具によって高耐熱フィルムを切断する方法や、レーザーと積層体を相対的にスキャンさせることにより高耐熱フィルムを切断する方法、ウォータージェットと積層体を相対的にスキャンさせることにより高耐熱フィルムを切断する方法、半導体チップのダイシング装置により若干ガラス層まで切り込みつつ高耐熱フィルムを切断する方法などがあるが、特に方法は限定されるものではない。例えば、上述した方法を採用するにあたり、切削具に超音波を重畳させたり、往復動作や上下動作などを付け加えて切削性能を向上させる等の手法を適宜採用することもできる。
また、剥離する部分に予め別の補強基材を貼りつけて、補強基材ごと剥離する方法も有用である。剥離するフレキシブル電子デバイスが、表示デバイスのバックプレーンである場合、あらかじめ表示デバイスのフロントプレーンを貼りつけて、無機基板上で一体化した後に両者を同時に剥がし、フレキシブルな表示デバイスを得ることも可能である。
【実施例
【0071】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0072】
貼り付けにしたポリイミドフィルムの内以下の4種類については市販されているものを用いた。
F1:ユーピレックス(登録商標)25S(宇部興産株式会社製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)
F2:ゼノマックス(登録商標)F38LR2(東洋紡株式会社製ポリイミドフィルム、厚さ38μm)
F7:カプトン(登録商標)100H/V(東レ・デュポン株式会社製ポリイミドフィルム、厚さ25μm)にプラズマ処理を施したもの。
F9:F2にプラズマ処理を施したもの。
【0073】
<ポリイミドフィルムの真空プラズマ処理>
ポリイミドフィルムにシランカップリング剤処理を行う前工程として、ポリイミドフィルムに真空プラズマ処理を行った。真空プラズマ処理は長尺フィルム処理用の装置を用い、真空チャンバー内を1×10-3Pa以下になるまで真空排気し、真空チャンバー内にアルゴンガスを導入して、放電電力100W、周波数15kHzの条件で20秒間、アルゴンガスのプラズマ処理を行った。プラズマ処理後のフィルムを処理装置内でロール状に巻き取ることにより、フィルムの吸湿状態をほぼプラズマ処理中の吸湿状態と同等に保つことができる。プラズマ処理後のフィルムから直ちに10cm四方程度のサンプルを切り出し吸湿率を測定した。結果、F2の吸湿率は0.21%、F9の吸湿率は0.28%であった。また、F7のプラズマ処理前後の吸湿率はそれぞれ0.20%および0.22%であった。
【0074】
〔製造例1(ポリイミド溶液1の製造)〕
窒素導入管、ディーン・スターク管及び還流管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器に、窒素ガスを導入しながら、19.86質量部の4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、4.97質量部(の3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、80質量部のガンマブチロラクトン(GBL)を加えた。続いて31.02質量部の4,4’-オキシジフタル酸無二水物(ODPA)、24質量部のGBL、13質量部のトルエンを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え、還元粘度0.70dl/gのポリイミド溶液1を得た。
【0075】
〔製造例2(ポリアミド酸溶液1の製造)〕
窒素導入管、還流管、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、22.73質量部の4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABAN)、201.1質量部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)と滑剤としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST-ZL」)とをシリカ(滑剤)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量にて0.4質量%)になるように加え完全に溶解させ、次いで、19.32質量部の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸無二水物(CBDA)を固体のまま分割添加した後、室温で24時間攪拌した。その後、173.1質量部のDMAcを加え希釈し、固形分(NV)10質量%、還元粘度3.10dl/gのポリアミド酸溶液1を得た。
【0076】
〔製造例3(ポリアミド酸溶液2の製造)〕
窒素導入管、還流管、攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、32.02質量部の2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、252.1質量部のN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)と滑剤としてコロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなる分散体(日産化学工業製「スノーテックス(登録商標)DMAC-ST-ZL」)とをシリカ(滑剤)がポリアミド酸溶液中のポリマー固形分総量にて0.4質量%)になるように加え完全に溶解させ、次いで、19.61質量部の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸無二水物(CBDA)を固体のまま分割添加した後、室温で24時間攪拌した。その後、165.7質量部のDMAcを加え希釈し、固形分(NV)11質量%、還元粘度3.50dl/gのポリアミド酸溶液2を得た。
【0077】
〔製造例4(ポリイミドフィルムF3の作製)〕
製造例2で得たポリアミド酸溶液1を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA4100(東洋紡株式会社製)の無滑材面上にコンマコーターを用いて最終膜厚が15μmとなるよう調整してコーティングした。ポリエチレンテレフタレート製フィルムA04100は、熱風炉内に通過して、巻き取られてゆき、この時に100℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性を得たポリアミド酸フィルムを支持体から剥離し、ピンを配置したピンシートを有するピンテンターに通し、フィルム端部をピンに差し込むことにより把持し、フィルムが破断しないように、かつ不必要なたるみが生じないようにピンシート間隔を調整して搬送し、200℃で3分、250℃で3分、300℃で6分の条件で加熱し、イミド化反応を進行させた。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、幅450mmのポリイミドフィルムF3を500m得た
【0078】
〔製造例5(ポリイミドフィルムF4の作製)〕
製造例2で得たポリアミド酸溶液1を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA4100(東洋紡株式会社製)の無滑材面上にコンマコーターを用いて最終膜厚が0.3μmとなるよう調整してコーティングした。ポリエチレンテレフタレート製フィルムA04100は、熱風炉内に通過して、巻き取られてゆき、この時に100℃にて10分間乾燥した。これを巻き取ったのちにコンマコーター側にセットしなおして続いて製造例1で得たポリイミド溶液1をポリアミド酸溶液1の乾燥物上に最終膜厚が25μmとなるよう塗布した。これを100℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性を得たポリアミド酸フィルムを支持体から剥離し、ピンを配置したピンシートを有するピンテンターに通し、フィルム端部をピンに差し込むことにより把持し、フィルムが破断しないように、かつ不必要なたるみが生じないようにピンシート間隔を調整して搬送し、200℃で3分、250℃で3分、300℃で6分の条件で加熱し、イミド化反応を進行させた。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、幅450mmのポリイミドフィルムF4を500m得た。
【0079】
〔製造例6(ポリイミドフィルムF5の作製)〕
製造例2で得たポリアミド酸溶液1を、製造例3で得たポリアミド酸溶液2に変更したこと以外は、製造例5のポリイミドフィルムF4作製時と同じ操作とし、ポリイミドフィルムF5を得た。
【0080】
〔製造例7(ポリイミドフィルムF6の作製)〕
製造例2で得たポリアミド酸溶液1を、ポリエチレンテレフタレート製フィルムA04100(東洋紡株式会社製)の無滑材面上にコンマコーターを用いて最終膜厚が1μmとなるよう調整してコーティングした。これを90~110℃にて10分間乾燥した。これを巻き取ったのちにコンマコーター側にセットしなおして続いて製造例1で得たポリイミド溶液1をポリアミド酸溶液1の乾燥物上に最終膜厚が20μmとなるよう塗布した。これを90~110℃にて10分間乾燥した。これを巻き取ったのちにコンマコーター側にセットしなおして続いて製造例2で得たポリアミド酸溶液1をポリイミド溶液1の乾燥物上に最終膜厚が20μmとなるよう塗布した。これを90~110℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性を得たポリアミド酸フィルムを支持体から剥離し、ピンを配置したピンシートを有するピンテンターに通し、フィルム端部をピンに差し込むことにより把持し、フィルムが破断しないように、かつ不必要なたるみが生じないようにピンシート間隔を調整して搬送し、200℃で3分、250℃で3分、300℃で6分の条件で加熱し、イミド化反応を進行させた。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、幅450mmのポリイミドフィルムF6を500m得た。
【0081】
〔製造例8(ポリイミドフィルムF8の作製)〕
製造例2で得たポリアミド酸溶液1を、製造例1で得たポリイミド溶液1に、最終厚さを25μmに変更したこと以外は、製造例4のポリイミドフィルムF3作製時と同じ操作とし、ポリイミドフィルムF8を得た。
【0082】
<高耐熱フィルムの厚さ測定>
ポリイミドフィルF1~F9の厚さを、マクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0083】
<高耐熱フィルムの引張弾性率>
ポリイミドフィルムF1~F9を、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ 機種名AG-5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率を測定した。結果を表1に示す。
【0084】
<高耐熱フィルムの線膨張係数(CTE)>
ポリイミドフィルムF1~F9を、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)において、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃~45℃、45℃~60℃のように15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。結果を表1に示す。
機器名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 25℃
昇温終了温度 ; 300℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0085】
<全光線透過率>
HAZEMETER(NDH5000、日本電色社製)を用いてフィルムの全光線透過率(TT)を測定した。光源としてはD65ランプを使用した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
【0086】
<イエローインデックス(YI)>
カラーメーター(ZE6000、日本電色社製)およびC2光源を使用して、ASTM D1925に準じてフィルムの三刺激値XYZ値を測定し、下記式により黄色度指数(YI)を算出した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
YI=100×(1.28X-1.06Z)/Y
【0087】
<ヘイズ>
HAZEMETER(NDH5000、日本電色社製)を用いてフィルムのヘイズを測定した。光源としてはD65ランプを使用した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
【0088】
<表面粗さRa>
フィルムの表面粗さ(Ra)は原子間力顕微鏡(AFM)を用いて評価した。フィルムを観察ステージ上に固定し、5μm角のエリア内の面粗さを算出した。測定は無機基板と接する箇所において、中心部、各4隅の合計5点を測定し、Raはその平均値を用いた。また、無機基板のRa測定箇所についても同様とする。無機基板の測定については、純水による超音波洗浄後の値をRaとした。超音波洗浄にはBRANSON3200を使用し、洗浄時間は3分間とした。
【0089】
<窒素元素成分比>
高耐熱フィルム貼り付け前、純水による超音波洗浄後の無機基板50mm×50mmの範囲をESCAにて分析し、無機基板の剥離面に存在する窒素元素の割合を評価した。装置にはK-Alpha (Thermo Fisher Scientific社製)を用いた。測定条件は以下のとおりである。なお、解析の際、バックグラウンドの除去はshirley法にて行った。また、表面組成比は3箇所以上の測定結果の平均値とした。
・測定条件
励起X線:モノクロ化Al Kα線
X線出力:12kV、6mA
光電子脱出角度:90 °
スポットサイズ:400μmφ
パスエネルギー:50eV
ステップ:0.1eV
【0090】
(実施例1)
ガラス基板へのシランカップリング剤の塗布方法は、図1に示す装置を用いて行った。図1は、ガラス基板にシランカップリング剤を塗布する装置の模式図である。ガラス基板1(100mm×100mmサイズに切断した、厚さ0.7mmのOA11Gガラス(NEG社製)を使用した。なおガラス基板は、純水洗浄、乾燥後にUV/O3照射器(LANテクニカル製SKR1102N-03)で1分間照射してドライ洗浄したものを用いた。 容量1Lの薬液タンクの中に3-アミノプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤 信越化学KBM903)150gを入れて、この外側の湯煎を43℃と温めた。そして出てくる蒸気をクリーンドライエアとともにチャンバーに送った。ガス流量は25L/min、基板温度は24℃とした。クリーンドライエアの温度は23℃、湿度は1.2%RHであった。排気は負圧の排気口に接続したため、チャンバーは10Pa程度の負圧となっていることを差圧計によって確認している。
【0091】
次に、前記シランカップリング剤層上に、ポリイミドフィルムF1(70mm×70mmサイズ)を貼り合わせ、積層体を得た。貼り合わせには、MCK社製ラミネーターを用い、貼合条件は、圧縮空気の圧力:0.6MPa、温度:22℃、湿度:55%RH、ラミネート速度:50mm/secとした。このF1/ガラス積層体を110℃にて10min加熱し、F1とガラスとの90°剥離強度測定を実施した。その後、ガラスに純水による超音波洗浄を実施し、再度シランカップリング剤の塗布およびF1の貼り付けを行った。2回目のF1の貼り合わせ面は1回目のF1を貼り合わせていた面と同じ面である。
【0092】
(実施例2)
使用する高耐熱フィルムをフィルムF1からフィルムF2に変更したこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。
【0093】
(実施例3)
最初に貼り付ける高耐熱フィルムをフィルムF2、2回目に貼り付けるフィルムをF1としたこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。
【0094】
(実施例4)
使用する高耐熱フィルムをフィルムF1からフィルムF3に変更したこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。
【0095】
(実施例5)
使用する高耐熱フィルムをフィルムF1からフィルムF4に変更したこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。この時ガラス基板との貼り合わせ面はポリアミド酸溶液1からできたポリイミド面である。
【0096】
(実施例6)
使用する高耐熱フィルムをフィルムF1からフィルムF5に変更したこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。この時ガラス基板との貼り合わせ面はポリアミド酸溶液2からできたポリイミド面である。
【0097】
(実施例7)
使用する高耐熱フィルムをフィルムF1からフィルムF6に変更したこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。
【0098】
(比較例1)
使用する高耐熱フィルムをフィルムF1からフィルムF7に変更したこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。フィルムF7の表面粗さRaが大きく、無機基板との接着強度が高い。また、フィルムF7剥離後の無機基板の表面粗さRaも大きく、無機基板を再利用することができなかった。
【0099】
(比較例2)
使用する高耐熱フィルムをフィルムF1からフィルムF8に変更したこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。フィルムF8剥離後の無機基板の表面粗さRaが大きく、無機基板を再利用することができなかった。
【0100】
(比較例3)
使用する高耐熱フィルムをフィルムF1からフィルムF9に変更したこと以外は実施例1と同じようにして積層体を得た。フィルムF9と無機基板との接着強度が高い。また、フィルムF9剥離後の無機基板の表面粗さRaも大きく、無機基板を再利用することができなかった。
【0101】
(参考例1)
第1の高耐熱フィルムとしてフィルムF2、表面の窒素が14原子%の無機基板を使用した。無機基板のRaが大きく、F2の貼り付けは困難であった。
【0102】
<90°接着強度(剥離強度)の測定>
上記積層体の作製で得られた積層体を、大気雰囲気下、100℃10分間熱処理した。その後、ガラス基板とポリイミドフィルムとの間の90°剥離強度を測定した。結果を表1に示す。
90°初期剥離強度の測定条件は、下記の通りである。
無機基板に対してフィルムを90°の角度で引き剥がす。
5回測定を行い、平均値を測定値とする。
測定装置 ; 島津製作所社製 オートグラフAG-IS
測定温度 ; 室温(25℃)
剥離速度 ; 100mm/min
雰囲気 ; 大気
測定サンプル幅 ; 2.5cm
【0103】
【表1】
【符号の説明】
【0104】
1 フローメーター
2 ガス導入口
3 薬液タンク(シランカップリング剤槽)
4 温水槽(湯煎)
5 ヒーター
6 処理室(チャンバー)
7 基材
8 排気口

図1