(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】電動車両のパワーユニット搭載部構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20240208BHJP
B62D 21/00 20060101ALI20240208BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20240208BHJP
B60L 9/18 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
B60K1/00
B62D21/00 A
B62D25/08 F
B60L9/18 J
(21)【出願番号】P 2019168398
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】福永 健志
(72)【発明者】
【氏名】近藤 義剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼市 皓太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼砂 雄介
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-25999(JP,A)
【文献】特開2012-96746(JP,A)
【文献】特開2019-85088(JP,A)
【文献】特開2019-48566(JP,A)
【文献】特開2018-83510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00- 6/12
B60K 7/00- 8/00
B60K 16/00
B62D 17/00- 25/08
B62D 25/14- 29/04
B60L 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーユニットが搭載されるパワーユニット搭載部と、該パワーユニット搭載部に配置され、かつ車体部材に取付けられる支持フレームを有し、該支持フレームには前記パワーユニットが設置され、前記パワーユニット搭載部の車両後方側には、前記パワーユニット搭載部と車室内とを区切るダッシュパネルが設けられ、前記支持フレームの後端よりも車両前方側には、前記パワーユニットを構成する要素部品が配置されている電動車両のパワーユニット搭載部構造において、
前記支持フレームの後端には、車両後方側に位置する前記ダッシュパネルへ向かって突出するフレーム突形状部が設けら
れ、
前記パワーユニットの後部の一部には、車両後方の突出する凸部が設けられ、
前記フレーム突形状部は、前記凸部の後方側に配置され、平面視で前記凸部の車幅方向両端の間に配置されていることを特徴とする電動車両のパワーユニット搭載部構造。
【請求項2】
前記ダッシュパネルには、前記ダッシュパネルの基準面から離間して位置し、かつ前記フレーム突形状部と当接可能な平面を有するパネル突形状部が車両前方側に突出して設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電動車両のパワーユニット搭載部構造。
【請求項3】
前記車体部材は、車両前後方向に延びるサイドメンバであり、
前記支持フレームの左右両側には、フレームマウントが配置され、前記フレームマウントは、前記支持フレームを保持し、前記サイドメンバに取付けられており、
前記フレームマウントは、前記サイドメンバの前後中心位置に対して前寄り側に設けられ、前記フレームマウントに対して、前記サイドメンバは、後方側部分が前方側部分よりも車両前後方向の長さが長く形成されており、
前記パネル突形状部は、車両側面視で、前記フレーム突形状部よりも車両上下方向で車両下側に位置していることを特徴とする請求項2に記載の電動車両のパワーユニット搭載部構造。
【請求項4】
パワーユニットが搭載されるパワーユニット搭載部と、該パワーユニット搭載部に配置され、かつ車体部材に取付けられる支持フレームを有し、該支持フレームには前記パワーユニットが設置され、前記パワーユニット搭載部の車両後方側には、前記パワーユニット搭載部と車室内とを区切るダッシュパネルが設けられ、前記支持フレームの後端よりも車両前方側には、前記パワーユニットを構成する要素部品が配置されている電動車両のパワーユニット搭載部構造において、
前記支持フレームの後端には、車両後方側に位置する前記ダッシュパネルへ向かって突出するフレーム突形状部が設けられ、
前記ダッシュパネルには、前記ダッシュパネルの基準面から離間して位置し、かつ前記フレーム突形状部と当接可能な平面を有するパネル突形状部が車両前方側に突出して設けられ、
前記車体部材は、車両前後方向に延びるサイドメンバであり、
前記支持フレームの左右両側には、フレームマウントが配置され、前記フレームマウントは、前記支持フレームを保持し、前記サイドメンバに取付けられており、
前記フレームマウントは、前記サイドメンバの前後中心位置に対して前寄り側に設けられ、前記フレームマウントに対して、前記サイドメンバは、後方側部分が前方側部分よりも車両前後方向の長さが長く形成されており、
前記パネル突形状部は、車両側面視で、前記フレーム突形状部よりも車両上下方向で車両下側に位置しており、
前記ダッシュパネルは、上部に位置する平面部と下部に位置する傾斜面部とから構成され、前記パネル突形状部は、前記平面部と前記傾斜面部との境界部分に設けられていることを特徴とす
るパワーユニット搭載部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のパワーユニット搭載部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動車両は、モータ、ギヤボックス、高電圧部品(電力変換装置)などから構成されるパワーユニットの部品を有している。電力変換装置は、バッテリの出力電力をモータの駆動用の交流電力に変換するデバイスであるインバータを備えており、該インバータは、フロントコンパートメントにおいてカウルパネルの前方に位置している(例えば、特許文献1参照)。
インバータの後部には、インバータの内部に収容されているコンデンサを放電させる放電指令を伝達する信号ケーブルの低電圧コネクタと、バッテリから延びる電力線の高電圧コネクタが取付けられている。カウルパネルには、高電圧コネクタの後方の位置に、当該高電圧コネクタに対向するようにストッパが取付けられており、高電圧コネクタからストッパまでの距離が、低電圧コネクタからその後方のカウルパネルまでの距離よりも短くなっている。これにより、従来の車載構造では、衝突の衝撃でインバータが後退したときに、インバータに接続されているコネクタを保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電動車両の車載構造は、低電圧コネクタからカウルパネルまでの距離や高電圧コネクタからストッパまでの距離が短く設定されているので、前突時にインバータの上部がカウルパネルやストッパに衝突すると、パワーユニットが回転し、フロントコンパートメントと車室内とを区切るダッシュパネルと衝突する可能性が高く、ケーブル等を保護するための空間確保が不十分であり、高電圧部品の安全性を確保できないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、支持フレームの後端にダッシュパネル側へ向かって突出するフレーム突形状部を設け、前突時に支持フレームと共に後退するフレーム突形状部をダッシュパネルに当接させることにより、支持フレームとダッシュパネルとの間に保護空間を確保し、支持フレーム上に配置されたパワーユニットの要素部品がダッシュパネルと接触して損傷するのを防ぐことが可能な電動車両のパワーユニット搭載部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、パワーユニットが搭載されるパワーユニット搭載部と、該パワーユニット搭載部に配置され、かつ車体部材に取付けられる支持フレームを有し、該支持フレームには前記パワーユニットが設置され、前記パワーユニット搭載部の車両後方側には、前記パワーユニット搭載部と車室内とを区切るダッシュパネルが設けられ、前記支持フレームの後端よりも車両前方側には、前記パワーユニットを構成する要素部品が配置されている電動車両のパワーユニット搭載部構造において、前記支持フレームの後端には、車両後方側に位置する前記ダッシュパネルへ向かって突出するフレーム突形状部が設けられ、前記パワーユニットの後部の一部には、車両後方の突出する凸部が設けられ、前記フレーム突形状部は、前記凸部の後方側に配置され、平面視で前記凸部の車幅方向両端の間に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
上述の如く、本発明に係る電動車両のパワーユニット搭載部構造は、パワーユニットが搭載されるパワーユニット搭載部と、該パワーユニット搭載部に配置され、かつ車体部材に取付けられる支持フレームを有し、該支持フレームには前記パワーユニットが設置され、前記パワーユニット搭載部の車両後方側には、前記パワーユニット搭載部と車室内とを区切るダッシュパネルが設けられ、前記支持フレームの後端よりも車両前方側には、前記パワーユニットを構成する要素部品が配置されており、前記支持フレームの後端には、車両後方側に位置する前記ダッシュパネルへ向かって突出するフレーム突形状部が設けられている。
したがって、本発明の電動車両のパワーユニット搭載部構造においては、車両前方からの衝突時に、フレーム突形状部が支持フレームと共に後退し、ダッシュパネルに当接することになるので、支持フレームとダッシュパネルとの間に所定の距離を有する保護空間を確保でき、支持フレーム上に配置されたパワーユニットの要素部品がダッシュパネルと接触することによって生じる損傷を防ぐことができ、電力変換装置などの高電圧部品の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動車両のモータールーム内を車両上方から見た概略平面図である。
【
図2】
図1におけるモータールーム内を車両側方から見た概略側面図である。
【
図3】
図1におけるモータールーム内に配置された支持フレーム、電流変換装置及びその周辺部を車両後方側の斜め上方から見た斜視図である。
【
図4】通常時における
図3の支持フレーム、電流変換装置及びその周辺部を車両側方側の斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】衝突時における
図3の支持フレーム、電流変換装置及びその周辺部を車両側方から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
図1~
図4は本発明の実施形態に係る電動車両のパワーユニット搭載部構造を示すものである。なお、図において、矢印Fr方向は車両前方を示し、矢印O方向は車両外側を示し、矢印U方向は車両上方を示している。また、矢印X方向は車両幅方向を示し、矢印Y方向は車両前後方向を示している。
【0010】
本実施形態の電動車両のパワーユニット搭載部構造は、
図1~
図5に示すように、電流変換装置11及びモータユニット12を有するパワーユニット1が搭載されるパワーユニット搭載部Pと、パワーユニット搭載部Pに配置され、かつ後述のサイドメンバやサスペンションフレームなどの車体部材に取付けられる支持フレーム2を有しており、該支持フレーム2には、パワーユニット1が設置されている。パワーユニット搭載部Pは、車両前端部に配置され、車両幅方向に延びるフロントバンバメンバ(図示せず)と、車両前部の左右両側に配置され、車両前後方向に延びるサイドメンバ3と、車両幅方向全体に亘って延び、モータールームMと車室R内とを区切るダッシュパネル4などによって囲まれる箇所に形成されている。
支持フレーム2の上側には、高電圧部品の電流変換装置11が設けられており、電流変換装置11は、支持フレーム2の上部に載せられた状態で締結具などを用いて取付けられている。また、支持フレーム2の下側には、モータユニット12が保持されて設けられており、モータユニット12は、ゴムブッシュなどのマウント部材10を介して支持フレーム2に取付けられており、モータユニット12がトルク変動による揺動や振動を発生する駆動部品であっても、支持フレーム2にリジットに固定されずに設けられている。
【0011】
本実施形態の支持フレーム2の車両幅方向中央側には、
図1に示すように、高電圧部品であるボックス状の電流変換装置11が設けられているとともに、支持フレーム2の車両幅方向外側には、低電圧部材(低電圧バッテリ)13が設けられており、電流変換装置11と低電圧部材13とは、車両幅方向でほぼ横並びに配置されている。また、モータールームM内には、高電圧部品の電流変換装置11と低電圧部材13との間を接続する低電圧ケーブル14が配索されているとともに、車室R外側(床下)に配置された高電圧バッテリ(図示せず)から電流変換装置11への高電圧ケーブル15が配索されており、低電圧ケーブル14は、コントローラ(図示せず)と電流変換装置11との間の信号配線も兼ねている。
また、支持フレーム2の後端よりも車両前方側には、パワーユニット1を構成する電流変換装置11、モータユニット12などの要素部品や低電圧ケーブル14等が配置されている。低電圧ケーブル14は、低電圧部材13から延びて電流変換装置11の車両外側側面部11aに接続されている一方、高電圧ケーブル15は、高電圧バッテリ(図示せず)から延びて電流変換装置11の後部に接続されている。しかも、低電圧ケーブル14は、支持フレーム2上に固定されており、電流変換装置11の車両後方側を通って配索されているとともに、モータールームMの車両後方に位置するダッシュパネル4と電流変換装置11との間に配索されている。そのため、支持フレーム2の車両後側には、L字状ブラケット16が起立した状態で設けられており、このL字状ブラケット16の先端部には、当該L字状ブラケット16に取付けられたクランプ16aを介して低電圧ケーブル14が固定されている。
【0012】
本実施形態の支持フレーム2は、
図1に示すように、電流変換装置11の車両前部側に配置され、車両幅方向に延びる前側フレーム21と、該前側フレーム21の車両後方側に間隔を空けて平行に配置され、車両幅方向に延びる中間フレーム22と、該中間フレーム22の車両後方側に配置され、左右両端部に位置する前端部23aを除くフレーム中間部分が車両幅方向に延びる上面視で略U字状の後側フレーム23とを有しており、後側フレーム23の前端部23aは、車両前方へ延びている。前側フレーム21と中間フレーム22とは、左右両端部が連結部材(図示せず)を介して連結され、後側フレーム23の左右前端部23aは、中間フレーム22に接合されている。
すなわち、本実施形態のパワーユニット搭載部構造において、支持フレーム2の後端部である後側フレーム23と電流変換装置11の後端部との間には、隙間が設けられている。そして、電流変換装置11は、車両上面視で、支持フレーム2を構成する前側フレーム21、中間フレーム22及び後側フレーム23の車両幅方向中央部側に位置し、支持フレーム2の内側に配置されており、低電圧ケーブル14が確実に固定できる構造にしている。
【0013】
また、
図1~
図5に示すように、車両上面視で、支持フレーム2を構成する後側フレーム23の後壁23bと電流変換装置11の後壁11cとの間の隙間には、所定の長さを有するプロテクタ14Aが設定された低電圧ケーブル14が配索されている。さらに、電流変換装置11の後部には低電圧部材13側に位置する部分に、車両後方へ向かって突出して形成された凸部11Aを有しており、電流変換装置11は、支持フレーム2の外形に対して、車両上面視で所定の間隔を空けて配置されている。そして、低電圧ケーブル14のプロテクタ14Aは、凸部11Aに位置する車両内側側面部11b及び後壁11cに配置されており、ボルト51などの締結具を用いて、プロテクタ14Aの固定片5が電流変換装置11と支持フレーム2の後側フレーム23にブラケット6を介して固定されている。
【0014】
さらに、本実施形態のパワーユニット搭載部構造において、支持フレーム2の後端部である後側フレーム23の後壁23bには、
図1~
図5に示すように、車両後方側に位置するダッシュパネル4へ向かって当該後壁23bから更に突出するフレーム突形状部7が設けられており、該フレーム突形状部7は、電流変換装置11の凸部11A側に位置する後側フレーム23に配置されている。また、フレーム突形状部7は、断面コ字状の本体部71と、該本体部71の左右両側に屈曲形成された側片部72と、本体部71の上部に形成された車両前方へ向かって延びる上片部73を有しており、これら側片部72及び上片部73を後側フレーム23の後壁23b及び上面壁23cにそれぞれ重ね合わせて接合することにより、後側フレーム23に固定されている。
これによって、前突時に、フレーム突形状部7が支持フレーム2の後側フレーム23と共に後退し、フレーム突形状部7がまずダッシュパネル4に当接する構造とし、後側フレーム23とダッシュパネル4との間に所定の距離を有する保護空間Sが確保されるように構成している。
【0015】
一方、本実施形態のパワーユニット搭載部構造におけるダッシュパネル4には、
図2、
図4及び
図5に示すように、当該ダッシュパネル4の基準面4aから所定の距離にわたって離間して位置し、かつ前突時において、支持フレーム2側のフレーム突形状部7の先端部分と当接可能な平面40aを有するパネル突形状部40が車両前方側に突出して設けられている。フレーム突形状部7との被当接部をパネル突形状部40とすることにより、当接時のダッシュパネル4の強度を確保している。また、パネル突形状部40の平面40aをダッシュパネル4の基準面4aから車両前方側に離すことにより、パワーユニット1とダッシュパネル4との間の空間を確実に確保し、支持フレーム2上に配置されたパワーユニット1の要素部品である電流変換装置11などがダッシュパネル4と接触しないように構成している。
本実施形態のパネル突形状部40は、別体である断面略ハット型形状のダッシュクロスメンバの上下フランジ部をダッシュパネル4の下部に接合することによって形成されており、当該ダッシュクロスメンバは、車両幅方向に延び、パワーユニット搭載部Pの左右両側に配置されたサイドメンバ3の間に設けられている。すなわち、強度部材であるダッシュクロスメンバにフレーム突形状部7が当接する被当接部のパネル突形状部40を設けることで、当接時の衝撃荷重によるダッシュパネル4の変形を防ぎ、保護空間Sの確保が可能な構造にしている。
【0016】
また、パネル突形状部40のダッシュクロスメンバは、
図2、
図4及び
図5に示すように、車両側面視で支持フレーム2の後端部である後側フレーム23の後壁23bよりも車両下側に位置している。しかも、フレーム突形状部7の上下幅は、ダッシュクロスメンバで形成されるパネル突形状部40の上下幅よりも狭く設定されており、前突時にフレーム突形状部7とパネル突形状部40とが確実に当接するように構成されている。
なお、本実施形態のパワーユニット搭載部構造においては、フレーム突形状部7の突出長さは、パネル突形状部40の突出長さ(ダッシュクロスメンバの車両前後方向高さ)よりも長く設定されている。また、後側フレーム23の後壁23bからパネル突形状部40の平面40aまでの車両前後方向距離と、後側フレーム23の上面壁23cからパネル突形状部40の上面40bまでの車両前後方向距離とは、ほぼ同じに設定されている。このような大きさに設定することにより、前突時にフレーム突形状部7とパネル突形状部40との当接が確実に行われるようになっている。さらに、支持フレーム2とマウント部材10との間に配置されたマウントブッシュの中心からフレーム突形状部7及びパネル突形状部40までの距離は、ほぼ等しくなるように設定されている。しかも、マウント部材10によるモータユニット12の保持点の高さは、パネル突形状部40と同等か、あるいは低い位置に設定されている。
【0017】
本実施形態のパワーユニット搭載部構造における支持フレーム2の左右両側には、
図1に示すように、車両前後方向へ延びるサイドメンバ3に取付けられるフレームマウント8がそれぞれ配置されている。これらフレームマウント8は、サイドメンバ3の前後中心位置Cに対して前寄り側に設けられており、当該フレームマウント8に対して、サイドメンバ3は、後方側部分31の車両前後方向の長さL1が前方側部分32の車両前後方向の長さL2よりも長く形成されている(L1>L2)。しかも、ダッシュパネル4側のパネル突形状部40は、
図2及び
図4に示すように、車両側面視で、支持フレーム2側のフレーム突形状部7よりも車両上下方向で車両下側に位置している。すなわち、フレーム突形状部7が当接するパネル突形状部40の被当接箇所の平面40aは、車両上下方向において、フレーム突形状部7よりも車両下側に位置している。
このような位置関係でサイドメンバ3及びフレームマウント8を配置するとともに、フレーム突形状部7及びパネル突形状部40を配置する理由として、サイドメンバ3は、前突時の衝撃荷重により、概ね車両上方に折れ曲がって衝撃荷重を吸収する構造に構成され、フレームマウント8はサイドメンバ3に取付けられており、支持フレーム2の前端部が前突によって車両上方に移動し、支持フレーム2の後端部である後側フレーム23の後壁23bが車両下方に移動して車両後方側へ傾斜する変形を生じるからである。そのため、フレーム突形状部7に対してパネル突形状部40が車両下側に位置する構造とすることによって、フレーム突形状部7とパネル突形状部40との当接が確保され、保護空間Sが確実に形成されるように構成している。さらに、フレーム突形状部7がパネル突形状部40に対して車両上側に位置することによって、フレーム突形状部7がパネル突形状部40の上面40bに引っ掛かり、支持フレーム2がそれ以上車両下方側に移動しないように構成している。
【0018】
また、本実施形態のパワーユニット搭載部構造におけるダッシュパネル4は、
図2に示すように、上部に位置する平面部41と下部に位置する傾斜面部42とから構成されており、これら平面部41の下端部と傾斜面部42の上端部で形成される部分が境界部分43となっている。そして、パネル突形状部40は、平面部41と傾斜面部42との境界部分43に設けられている。平面部41は、車両上下方向に延びる縦壁面形状に形成されている一方、傾斜面部42は、境界部分43から車両下方へ向かうに従って車両後方へ延びる傾斜壁面形状に形成されている。
支持フレーム2の後端部である後側フレーム23の後壁23bがダッシュパネル4の境界部分43よりも車両下側に侵入すると、支持フレーム2の後退量が大きくなる可能性を有することから、境界部分43にパネル突形状部40を設けることによって、支持フレーム2に設置されるパワーユニット1がダッシュパネル4の下部に潜り込むことを防ぐように構成している。
【0019】
このように、本発明の実施形態に係る電動車両のパワーユニット搭載部構造は、パワーユニット1が搭載されるパワーユニット搭載部Pと、パワーユニット搭載部Pに配置され、かつ車体部材のサイドメンバ3に取付けられる支持フレーム2を有しており、支持フレーム2には、パワーユニット1が設置されている。パワーユニット搭載部Pの車両後方側には、パワーユニット搭載部Pと車室R内とを区切るダッシュパネル4が設けられ、支持フレーム2の後端よりも車両前方側には、パワーユニット1を構成する要素部品が配置されている。そして、支持フレーム2の後端には、車両後方側に位置するダッシュパネル4へ向かって突出するフレーム突形状部7が設けられている。
すなわち、本実施形態の電動車両のパワーユニット搭載部構造においては、車両前方からの衝突時に、フレーム突形状部7が支持フレーム2と共に後退し、支持フレーム2よりも先にダッシュパネル4の被当接面に当接することになるので、支持フレーム2とダッシュパネル4との間に所定の距離を有する保護空間Sを確保することができる。したがって、本実施形態のパワーユニット搭載部構造によれば、支持フレーム2上に配置されたパワーユニット1の要素部品がダッシュパネル4と接触することで生じる損傷から保護することができ、電力変換装置11などの高電圧部品の安全性を向上させることができる。
【0020】
また、本実施形態の電動車両のパワーユニット搭載部構造において、ダッシュパネル4には、ダッシュパネル4の基準面4aから離間して位置し、かつ支持フレーム2のフレーム突形状部7と当接可能な平面40aを有するパネル突形状部40が車両前方側に突出して設けられているので、フレーム突形状部7との当接時におけるダッシュパネル4の強度を確保することができる。しかも、パネル突形状部40の平面40aがダッシュパネル4の基準面4aから車両前方側に離れているので、パワーユニット1とダッシュパネル4との間の空間を確実に取ることができ、支持フレーム2上に配置されたパワーユニット1の要素部品である電流変換装置11などがダッシュパネル4と接触し、損傷することから効果的に保護することができる。
【0021】
さらに、本実施形態の電動車両のパワーユニット搭載部構造において、支持フレーム2の左右両側には、車体部材であって、車両前後方向へ延びるサイドメンバ3に取付けられるフレームマウント8が配置されている。フレームマウント8は、サイドメンバ3の前後中心位置Cに対して前寄り側に設けられており、フレームマウント8に対して、サイドメンバ3は、後方側部分31が前方側部分32よりも車両前後方向の長さが長く形成されている。パネル突形状部40は、車両側面視で、フレーム突形状部7よりも車両上下方向で車両下側に位置している。一方、サイドメンバ3は、前突時の衝撃荷重が入力されると、概ね車両上方に折れ曲がって衝撃荷重を吸収するようになっている。
したがって、本実施形態のパワーユニット搭載部構造によれば、フレームマウント8がサイドメンバ3に取付けられ、フレーム突形状部7に対してパネル突形状部40が車両下側に位置する構造とし、支持フレーム2の前端部が前突によって車両上方に移動し、支持フレーム2の後端部である後側フレーム23の後壁23bが車両下方に移動して車両後方側へ傾斜する変形を生じることになるので、フレーム突形状部7とパネル突形状部40とを確実に当接させ、パワーユニット1の要素部品の保護空間Sを形成することができる。また、本実施形態のパワーユニット搭載部構造によれば、フレーム突形状部7がパネル突形状部40に対して車両上側に位置し、前突時においてフレーム突形状部7がパネル突形状部40の上面40bに引っ掛かることになるので、支持フレーム2がそれ以上車両下方側に移動しないようにすることができる。
【0022】
そして、本実施形態の電動車両のパワーユニット搭載部構造において、ダッシュパネル4は、上部に位置する平面部41と下部に位置する傾斜面部42とから構成され、パネル突形状部40は、平面部41と傾斜面部42との境界部分43に設けられているので、前突時において、支持フレーム2に設置されるパワーユニット1がダッシュパネル4の下部に潜り込むのを防ぎ、電流変換装置11等の電気部品を保護することができる。支持フレーム2の後端部である後側フレーム23の後壁23bがダッシュパネル4の境界部分43よりも下側に侵入すると、支持フレーム2の後退量が大きくなる可能性を有しているからである。
【0023】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【0024】
例えば、既述の実施の形態では、支持フレーム2が3つの前側フレーム21、中間フレーム22及び後側フレーム23を有しているが、パワーユニット1を確実に保持し、配索した低電圧ケーブル14等をしっかりと固定できれば、支持フレーム2は、2つもしくは4つ以上のフレームを有していても良い。また、フレーム突形状部7は、前突時にダッシュパネル4のパネル突形状部40の平面40aに当接できる形状であれば、本実施形態に記載された突形状以外の他の突形状を有していても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 パワーユニット
2 支持フレーム
3 サイドメンバ(車体部材)
4 ダッシュパネル
4a 基準面
7 フレーム突形状部
8 フレームマウント
21 前側フレーム
22 中間フレーム
23 後側フレーム
23a 前端部
23b 後壁
23c 上面壁
31 サイドメンバの後方側部分
32 サイドメンバの前方側部分
40 パネル突形状部
40a 平面
40b 上面
41 ダッシュパネルの平面部
42 ダッシュパネルの傾斜面部
43 平面部と傾斜面部との境界部分
C サイドメンバの前後中心位置
M モータールーム
P パワーユニット搭載部
R 車室
S 保護空間