(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20240208BHJP
F25B 39/04 20060101ALI20240208BHJP
F28F 9/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60H1/32 613A
B60H1/32 613F
F25B39/04 S
F28F9/02 E
(21)【出願番号】P 2019218295
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】竹尾 勝哉
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-332227(JP,A)
【文献】特開2017-223141(JP,A)
【文献】特開2019-167015(JP,A)
【文献】特開平11-211276(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10032677(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
F25B 39/04
F28F 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられ、車幅方向に延びるバンパメンバと、該バンパメンバの車両後方側に配置されたコンデンサと、を有し、該コンデンサは、空調用の冷媒が流通するコア部及びリキッドタンクを備えている、車両前部構造において、
前記コア部は、車両前方視で車両上下方向に延びる略四角形状であり、
前記リキッドタンクは、前記コア部を上下に分割し、前記バンパメンバに対して車両正面視で重なるように配置されて
おり、
前記リキッドタンクは、前記バンパメンバに接合されていることを特徴とする、車両前部構造。
【請求項2】
前記コンデンサの車両後方側には、外気を車両内部に取り込む冷却ファンが設けられ、
前記冷却ファンのファンモータの回転軸は、車両正面視で、前記リキッドタンクに重なるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記バンパメンバの車両前方側には、ナンバープレートが設けられ、該ナンバープレートは、車両正面視で、前記バンパメンバ及び前記リキッドタンクに少なくとも一部が重なるように配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
前記コア部は、前記リキッドタンクの車両上方側に配置される上側コア部と、前記リキッドタンクの車両下方側に配置される下側コア部と、を有
し、
前記コンデンサには、前記下側コア部を上下に分割するように仕切部が設けられ、
前記上側コア部内の前記冷媒の流れ方向は、前記仕切部の車両上方側に位置する前記下側コア部内の前記冷媒の流れ方向とは逆向きに設定されており、
前記仕切部の車両上方側に位置する前記下側コア部内における前記冷媒の流れ方向は、前記仕切部の車両下方側に位置する前記下側コア部内における前記冷媒の流れ方向とは逆向きに設定されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両前部に位置するエンジンルーム内には、例えば、特許文献1に開示されているように、熱交換器等が配置されている。熱交換器は、エンジン冷却水(流体)を循環して冷却するためのラジエータと、空調冷媒(流体)を凝縮させるためのコンデンサと、を有している。コンデンサは、ラジエータの車両前方側に近接して設けられている。ラジエータのコア部には、冷媒が流通する流路が形成されており、当該流路は、車幅方向に延びている。
【0003】
特許文献1には、熱交換用の流体を出し入れする複数の導入配管が、フードロックステーの車両後方側に設けられている。複数の導入配管が、コンデンサ及びラジエータの車幅方向のほぼ中央に配置されているため、熱交換器の取り扱いが容易で、熱交換器をエンジンルーム内に設置する作業が容易である。また、特許文献1に開示されている構造では、配管類と、エンジンや空調作業についても、熱交換器の車幅方向のほぼ中央でのみ行うことができ、作業効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記例のような構造では、車両上下方向に延びるリキッドタンクを、コンデンサの車幅方向の中央に配置している。すなわち、コンデンサのコア部は、リキッドタンクの左右両側のそれぞれに配置されている。この場合、コア部内の冷媒の流れ方向が車幅方向であるのに対して、リキッドタンク内は車両上下方向に流れるため、当該構造を小型車や比較的小さい車両のように、コア部の面積を車両幅方向へ向かうように広げることができない車両に適用した場合、コア部の中央に配置されたリキッドタンクが、コア部内の冷媒の流れを妨げることになる。したがって、コンデンサ等の冷却性能を向上させる上で、上記例のような構造には、改善の余地があった。
【0006】
また、近年の車両においては、小型車の需要がますます多くなっていることと、車両室内の拡充による乗員の快適性向上の需要が相まって、広い室内を有する小型車のニーズが高まっている。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、熱交換器のコンデンサの冷却性能を向上させることを可能にしつつ、エンジンルームの省スペース化することで、広い室内を実現することができる車両前部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車両前部構造は、車両前部に設けられ、車幅方向に延びるバンパメンバと、該バンパメンバの車両後方側に配置されたコンデンサと、を有し、該コンデンサは、空調用の冷媒が流通するコア部及びリキッドタンクを備えている。当該車両前部構造において、前記コア部は、車両前方視で車両上下方向に延びる略四角形状であり、前記リキッドタンクは、前記コア部を上下に分割し、前記バンパメンバに対して車両正面視で重なるように配置されており、前記リキッドタンクは、前記バンパメンバに接合されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車両前部構造によれば、熱交換器のコンデンサの冷却性能の向上及びエンジンルームの省スペース化による広い室内を得ることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図1のコンデンサ及びその周辺を拡大して示す正面図である。
【
図3】
図1の熱交換器及びその周辺機器の配置を概略的に示す概略平面図で、冷媒の流れ方向を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両前部構造の一実施形態について、図面(
図1~
図4)を参照しながら説明する。
【0012】
なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印R,Lは、それぞれ車幅方向の右側、左側を示しており、本実施形態における「左右」は、乗員が車両前方を向いたときの「左側」及び「右側」に対応している。よって、
図1及び
図2では、車両前方から後方を見ているので、
図1及び
図2における右側は、以下の説明において左側を示し、
図1及び
図2における右側は、以下の説明おいて左側を示している。
【0013】
本実施形態の車両前部構造は、
図1~
図4に示すように、エンジンルーム1内の熱交換器20と、該熱交換器20の周辺に配置される車体構造部材と、を備えた構造である。エンジンルーム1は、車両前部に設けられており、エンジンルーム1の内部には、エンジン1Aが設置されている。エンジンルーム1の後部には、ダッシュパネル18等が配置され、ダッシュパネル18等によって、エンジンルーム1と車両室2内とが仕切られている。また、本実施形態の車体構造部材は、エンジンルーム1の前部に配置されており当該車体構造部材の一部に、熱交換器20が取り付けられている。
【0014】
先ず、本実施形態の車体構造部材について説明する。車体構造部材には、
図1に示すように、フードロックメンバ11と、バンパメンバ10と、ロアクロスメンバ12と、フードラッチブラケット13と、フードロックブレース14と、ランプサポートブレース15と、エプロンサイドエクステンション16と、ラジエータメンバ17と、が含まれる。これらの部材は、
図4に示すバンパ45の車両後方側に配置されている。
【0015】
フードロックメンバ11は、エンジンルーム1の前部における上部に配置され、車幅方向に延びている金属製の部材であり、車両のフロントフード(図示せず)等を支持する剛性の高い部材である。フードロックメンバ11の車両上下方向位置(高さ)は、車種や意匠によって異なる。本実施形態では、フードロックメンバ11の車両下方側に熱交換器20が配置されている。
【0016】
バンパメンバ10は、フードロックメンバ11の車両下方側に間隔を空けて配置され、車幅方向に延びている金属製の部材である。バンパメンバ10は、フードロックメンバ11よりもやや車両前方側に配置されている。バンパメンバ10の車幅方向両外側部は、サイドメンバ19の前部に例えばボルト等の締結部材により締結されている。バンパメンバ10の車両後方側には、熱交換器20が配置されている。この例では、バンパメンバ10は、熱交換器20のコンデンサ23の後述するコア部25,26の車両上下方向の中間部に位置している。
【0017】
ロアクロスメンバ12は、バンパメンバ10の車両下方側に間隔を空けて配置され、車幅方向に延びている部材で、例えば樹脂製である。ロアクロスメンバ12の上部には、熱交換器20のコンデンサ23の下部が取り付けられる取付部12aが設けられている。
【0018】
ランプサポートブレース15は、フードロックメンバ11の車幅方向両外側のそれぞれに、一対となるように配置されており、フードロックメンバ11の車幅方向の外側端から車両下方に延びている金属製の部材である。ランプサポートブレース15の前部には、ヘッドランプ(図示せず)を取り付けるためのヘッドランプブラケット(図示せず)等が、溶接により取り付けられている。
【0019】
図1に示すように、ランプサポートブレース15の上部は、フードロックメンバ11に接合されており、ランプサポートブレース15の下部は、サイドメンバ19の前部にボルト等の締結部材により締結されている。サイドメンバ19は、車両前後方向に延びる金属製の部材で、車体の骨格をなす剛性の高い部材であり、車幅方向に間隔を空けて一対となるように配置されている。
【0020】
エプロンサイドエクステンション16は、
図1に示すように、サイドメンバ19の前部における下部に接合されており、当該接合部から、車両下方に延びている部材である。エプロンサイドエクステンション16は、サイドメンバ19と同様に、車幅方向に間隔を空けて一対に配置されている。また、エプロンサイドエクステンション16は、ランプサポートブレース15の車両下方側に配置されており、車両前方視で、ランプサポートブレース15とエプロンサイドエクステンション16は、サイドメンバ19の前部を挟んで、車両上下方向に延びるブレースを構成している。
【0021】
フードロックブレース14は、バンパメンバ10の車幅方向の中間部、この例ではバンパメンバ10のほぼ中央に配置され、車両上下方向に延びている部材である。フードロックブレース14の下部には、ロアクロスメンバ12の車幅方向の中央部が取り付けられている。
【0022】
フードロックブレース14は、バンパメンバ10と交差するように配置されている。フードロックブレース14におけるバンパメンバ10が交差する部分には、
図2に示すように、接続用ブラケット14Aが溶接されている。フードロックブレース14とバンパメンバ10は、接続用ブラケット14Aを介して、ボルト等の締結部材により締結されている。また、フードロックブレース14の上部には、車両上下方向に延びるフードラッチブラケット13の下部が、ボルト等の締結部材により締結されている。フードラッチブラケット13の上部は、フードロックメンバ11の車幅方向のほぼ中央部にボルト等の締結部材により締結されている。
【0023】
ラジエータメンバ17は、車幅方向に延びている金属製の部材であり、フードロックメンバ11の車両下方側で、熱交換器20のラジエータ21の車両上方側に配置されている。ラジエータメンバ17の車幅方向の右側部は、フードラッチブラケット13に接合され、左側部は、左側のランプサポートブレース15に接合されている。
【0024】
続いて、熱交換器20について説明する。熱交換器20は、エンジンルーム1の前部に配置されている装置で、本実施形態では、ラジエータメンバ17の車両下方側に配置されている。また、熱交換器20は、フードロックブレース14と、左側のランプサポートブレース15及びエプロンサイドエクステンション16との間に配置されている。
【0025】
本実施形態の熱交換器20は、
図3及び
図4に示すように、ラジエータ21と、コンデンサ23と、冷却ファン30と、を有している。ラジエータ21は、主にエンジン1Aを冷却する冷却水が内部を循環させて冷却するための装置である。図示による説明は省略しているが、ラジエータ21は、車両前方視で略長方形状の装置である。なお、
図3では、エンジンとラジエータ21とが接続される配管を省略している。
【0026】
コンデンサ23は、空調用の冷媒(流体)を凝縮させるための装置であり、
図1、
図3及び
図4に示すように、バンパメンバ10の車両後方側に配置され、ラジエータ21の車両前方側に近接して配置されている。なお、この例では、フードロックブレース14の左側部は、ラジエータ21に当接しないように、すなわち、干渉を避けるため車幅方向左側にやや凹んでいる。
【0027】
コンデンサ23は、車両室2の空調装置3に設けられたエバポレータ4に、配管5A,5Bによって接続されている。当該配管5A,5Bは、コンデンサ23によって凝縮された冷媒をエバポレータ4に送る送り配管5Aと、エバポレータ4からコンプレッサ6を介してコンデンサ23に戻される戻り配管5Bと、を有している。なお、コンプレッサ6は、エンジン1Aによりベルト7を介して駆動される(
図3)。
【0028】
コンデンサ23は、全体で車両上下方向に延びる略長方形状であり、左側ヘッダ28と、右側ヘッダ27と、コア部25,26と、車幅方向に延びるリキッドタンク24と、を備えている。左側ヘッダ28は、略長方形状の左縦辺に相当する位置に設けられ、車両上下方向に延びているパイプ状の部材で、内部を空調用の冷媒が流通するように構成されている。右側ヘッダ27は、略長方形状の右縦辺に相当する位置に設けられ、左側ヘッダ28と同様に構成されている。この例では、左側ヘッダ28及び右側ヘッダ27は、コンデンサ23の上端から下端まで連続して延びている。リキッドタンク24は、左側ヘッダ28と右側ヘッダ27との間に配置され、車幅方向に延びている略直方体状のタンクである。また、リキッドタンク24は、バンパメンバ10の車両後方側に配置され、バンパメンバ10に対して車両正面視で重なるように配置されている。
【0029】
コア部25,26は、上側コア部25と、下側コア部26とを有し、上側コア部25及び下側コア部26は、車幅方向で、左側ヘッダ28と右側ヘッダ27との間に配置されている。上側コア部25は、リキッドタンク24の車両上方側に配置され、下側コア部26は、リキッドタンク24の車両下方側に配置されている。すなわち、コア部25,26は、リキッドタンク24によって、上側コア部25と下側コア部26とに分割されている。
【0030】
図示による説明は省略しているが、上側コア部25は、複数のチューブと、放熱フィンとを有している。複数のチューブは、車幅方向に延び、車両上下方向に並んで配置されており、左側ヘッダ28及び右側ヘッダ27に流体連通されている。放熱フィンは、上下に並ぶチューブの間に配置されている。複数のチューブには、空調用の冷媒が流通し、冷媒がチューブ内を流れているとき、冷媒は、放熱フィンによって
図3及び
図4で示された矢印X1の方向に流れる走行風(外気)との間で熱交換され、凝縮される。下側コア部26も、上側コア部25と同様に、複数のチューブと放熱フィンとを有している。
【0031】
バンパメンバ10の車両後方側の領域、詳細には、車両正面視でバンパメンバ10の裏側の領域は、車両内部に取り込む走行風が流れにくい。このため、車両正面視でバンパメンバ10に重なる位置にコア部が配置される場合、当該コア部に走行風があたるようにするために、バンパメンバ10に車両正面視で重なる位置のコア部と、バンパメンバ10との間の車両前後方向の距離をある程度確保する必要がある。
【0032】
これに対して本実施形態では、車両正面視でバンパメンバ10に重なる位置にリキッドタンク24を配置しているため、コア部が当該位置に配置される場合に比べて、走行風により冷却することを考慮する必要性が低くなる。これにより、バンパメンバ10とリキッドタンク24との間の車両前後方向の距離は、車両正面視でバンパメンバ10に重なる位置にコア部が配置される場合のバンパメンバ10とコア部との間の距離に比べて、短く設定されることが可能である。その結果、熱交換器20全体を、バンパメンバ10に近接させることが可能となる。さらに、バンパメンバ10にリキッドタンク24を当接させることも可能となる。
【0033】
これにより、エンジンルーム1内における熱交換器20の車両後方側の機器等も、より車両前方側に配置でき、エンジンルーム1と車両室2との境界となるダッシュパネル18等も車両前方側に配置することが可能となる。その結果、エンジンルーム1の省スペース化が可能となり、さらに、車両室2内をより広くすることが可能となる。または、エンジンルーム1のスペースを広くすることも可能となる。
【0034】
また、走行風が当たりにくい位置にコア部25,26が配置されないため、コア部25,26による冷媒の凝縮性能を向上させることができる。また、従来例のようにリキッドタンク24を縦置きにする場合とは異なり、リキッドタンク24内の冷媒の流れ方向及びコア部の内部の冷媒の流れ方向は、共に車幅方向に設定されるため、コア部25,26の冷媒の流れを妨げることが抑制される。さらに、リキッドタンク24が縦置きの場合に比べて、本実施形態のリキッドタンク24の内部の冷媒の流れは、重力の影響を軽減されるため、冷媒は、リキッドタンク24内を流れやすい。
【0035】
また、例えば、リキッドタンク24がコア部の車幅方向外側端に縦置きされた場合に比べて、コア部を車幅方向外側に拡大することも可能となる。これにより、バンパメンバ10に重なる位置に配置されていたコア部に相当する部分を、車幅方向外側に配置することができ、バンパメンバ10に重なる位置に配置される場合に比べてコア部25,26の冷却効率が上がるため、コンデンサ23の全体の冷却効率も向上する。
【0036】
さらに、本実施形態の下側コア部26の左側ヘッダ28には、仕切板29が設けられており、下側コア部26は、仕切板29によって、互いに流れ方向が異なる中間コア部26aと最下コア部26bとに上下に分割されている。ただし、この場合には、1つの下側コア部26の内部において、中間コア部26aと最下コア部26bとの2つの領域に分割され、これらの領域が互いに冷媒の流れ方向が異なるように設定されている。以下、冷媒の流れについて説明する。
【0037】
本実施形態では、上側コア部25は、
図2に示すように、冷媒が車幅方向の右側から左側に向かって流れる。下側コア部26における中間コア部26aは、車幅方向の左側から右側に向かって流れる。また、下側コア部26における最下コア部26bは、車幅方向の右側から左側に向かって流れる。
【0038】
図3に示す空調装置3のエバポレータ4から戻り配管5Bに流れ込んだ冷媒は、コンプレッサ6を介し、コンデンサ23の右側ヘッダ27の上部に流入する。右側ヘッダ27に流入した冷媒は、右側ヘッダ27の内部を車両下方に向かって流れるとともに、上側コア部25の内部に設けられたチューブ内(流路内)に流れ込む。上側コア部25を流れる冷媒は、左側ヘッダ28に流れ込む。右側ヘッダ27の内部において、リキッドタンク24の車両上下方向位置に対応する右側ヘッダ27の内部は、冷媒がリキッドタンク24よりも車両下方に流れないように堰き止められている。
【0039】
左側ヘッダ28に流入された冷媒は、左側ヘッダ28の内部を車両下方に向かって流れ、リキッドタンク24の車両下方側に配置された仕切板29まで流れる。冷媒は、リキッドタンク24と仕切板29との間に位置する左側ヘッダ28の内部を流れている間に、中間コア部26aのチューブ内に流れ込む。中間コア部26aに流れ込んだ冷媒は、右側ヘッダ27に向かって流れる。
【0040】
右側ヘッダ27に流れ込んだ冷媒は、右側ヘッダ27の内部を車両下方に向かって流れ、右側ヘッダ27を流れている間に、最下コア部26bのチューブ内に流れ込む。最下コア部26bから左側ヘッダ28に流れ出た冷媒は、左側ヘッダ28の下部とリキッドタンク24とを接続する図示しない配管内を流れ、リキッドタンク24に流れ込む。リキッドタンク24の内部の冷媒は、タンク長手方向(車幅方向)に流れ、その後、
図3に示す送り配管5Aの内部に流れ込み、エバポレータ4に向かって送り配管5Aの内部を流れる。なお、コア部の各部25,26a,26bを流れる順番がこれに限らない。
【0041】
本実施形態の熱交換器20におけるコンデンサ23の車両後方側には、車両内部に外気を取り込む冷却ファン30が設けられている。詳細には、冷却ファン30は、熱交換器20のラジエータ21の車両後方側に配置されている。冷却ファン30は、羽部31と、ファンモータ33と、を有している。ファンモータ33は、車両前後方向に延びる回転軸34を有しており、回転軸34は、車両正面視で、リキッドタンク24に重なるように配置されている。
【0042】
ファンモータ33の回転軸34は、羽部31の周辺に比べて風量が少なくなる。風量が少なる部分を、リキッドタンク24と重なる位置に設定することにより、コア部25,26の放熱性能を向上させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、リキッドタンク24の車両前方側には、車両正面視で、リキッドタンク24に重なるように、ナンバープレート40が配置されている。ナンバープレート40は、バンパ45に取り付けられている。ナンバープレート40により車両前方側からエンジンルーム1内に取り込む空気の流れをナンバープレート40が阻害するため、ナンバープレート40の車両後方側は、熱交換器20に吹き付けられる風量が少なくなる。この部分に、リキッドタンク24を配置することで、コア部25,26の放熱性能の低下を抑制することが可能となる。
【0044】
また、コア部は、上記したように、リキッドタンク24によって、上側コア部25と下側コア部26とに分割され、さらに、下側コア部26には、冷媒の流れ方向が互いに異なる中間コア部26aと最下コア部26bとに分割するように仕切板(仕切部)29が設けられているので、上側コア部25を流れた冷媒が、下側コア部26の中間コア部26aに再び流すことができる。バンパメンバ10の車両上下方向の位置が車種によって異なっても、コンデンサ23の性能を維持することができる。
【0045】
仕切板29を設けない場合、例えば、上側コア部25の車両上下方向長さと、下側コア部26の車両上下方向長さとの比率は、7対3とすることが望ましい。このような場合、例えば、上側コア部25を流通した冷媒をリキッドタンク24に流入させ、その後に下側下部26に流入するように構成するとよい。
【0046】
しかし、バンパメンバ10の車両上下方向位置によっては、上記比率のように構成することが困難な場合がある。この場合、仕切板29を用いて、上記したように下側コア部26を上下に分割し、上側コア部25の車両上下方向長さと中間コア部26aの車両上下方向長さの合計(
図2のL1)と、最下コア部26bの車両上下方向長さ(
図2のL2)との比率を、上記のように7対3に設置することが可能となる。この場合、冷媒は、上側コア部25、中間コア部26aを流れた後に、リキッドタンク24に流入し、その後、最下コア部26bに流れ込み、その後、エバポレータ4に向かって流れるように構成してもよい。
【0047】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0048】
例えば、本実施形態では、最下コア部26bを流れ出た冷媒がリキッドタンク24に流れるように構成されているが、これに限らない。例えば、中間コア部26aを流れた後に、リキッドタンク24に流入させ、その後に、最下コア部26bを流れ、送り配管5Aに流れ込むように構成してもよい。
【0049】
また、本実施形態では、バンパメンバ10とリキッドタンク24を近接配置または当接するように配置しているが、これに限らない。例えば、リキッドタンク24とバンパメンバ10を接合してもよい。これにより、車外で、熱交換器20とバンパメンバ10とを一体的に組み立てた後に、この組立体をエンジンルーム1に設置することができる。その結果、車両の組み立て作業を効率よく行うことが可能となるため、設計の自由度も向上する。
【0050】
また、本実施形態の右側ヘッダ27及び左側ヘッダ28は、コンデンサ23の上端から下端まで連続して延びているが、これに限らない。例えば、上側コア部25に連結されるヘッダと、下側コア部26に連結されるヘッダを個別に設けて、上下のヘッダを別の配管で接続してもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 エンジンルーム
1A エンジン
2 車両室
3 空調装置
4 エバポレータ
5A 送り配管
5B 戻り配管
6 コンプレッサ
7 ベルト
10 バンパメンバ
11 フードロックメンバ
12 ロアクロスメンバ
12a 取付部
13 フードラッチブラケット
14 フードロックブレース
14A 接続用ブラケット
15 ランプサポートブレース
16 エプロンサイドエクステンション
17 ラジエータメンバ
18 ダッシュパネル
19 サイドメンバ
20 熱交換器
21 ラジエータ
23 コンデンサ
25 上側コア部
26 下側コア部
26a 中間コア部
26b 最下コア部
27 右側ヘッダ
28 左側ヘッダ
29 仕切板(仕切部)
30 冷却ファン
31 羽部
33 ファンモータ
34 回転軸
40 ナンバープレート
45 バンパ