(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ループシールの内筒支持構造
(51)【国際特許分類】
F23C 10/04 20060101AFI20240208BHJP
F23C 10/08 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F23C10/04
F23C10/08
(21)【出願番号】P 2020084309
(22)【出願日】2020-05-13
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 伯昭
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020711(JP,A)
【文献】特開2005-288244(JP,A)
【文献】特開2011-083696(JP,A)
【文献】特公昭53-012704(JP,B1)
【文献】実開昭60-017267(JP,U)
【文献】実開昭58-132558(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23C 10/04
F23C 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロンで分離されて該サイクロンの脚管から流下する粒子が一時貯留されるケーシングと、
該ケーシングの内部に前記粒子を導入するよう配設され且つ下部が粒子の内部に埋没される内筒と、
前記ケーシングの上部側面に接続され且つ粒子を排出する返戻管と
を備えたループシールの内筒支持構造において、
前記内筒の上端に形成されるフランジ部と、
該フランジ部が前記サイクロンの脚管の内部に露出して載置されるよう前記脚管の内径を拡張して形成される内側段部と
、
該内側段部が形成されることに伴って前記脚管外周と前記ケーシング外周との間に生じる外側段部に配設される吊下補強材と
を備えたループシールの内筒支持構造。
【請求項2】
前記フランジ部は、
前記内側段部に載置される下フランジと、
該下フランジから上方へ所要間隔をあけて配設される上フランジと、
前記下フランジと上フランジとをつなぐようフランジ部中心から放射状に配設されるリブと
を備えた請求項
1記載のループシールの内筒支持構造。
【請求項3】
前記下フランジは、前記内筒の外周に溶接され、前記上フランジは、前記内筒の外周に溶接される請求項
2記載のループシールの内筒支持構造。
【請求項4】
前記下フランジの外周端上面に内周側から外周側へ向け下り勾配となるよう形成されるテーパを備えた請求項
2又は3記載のループシールの内筒支持構造。
【請求項5】
前記ループシールのケーシング内面から内筒側へ張り出され且つ上下方向へ複数段配設される保持梁と、
該保持梁を周方向両側から挟むよう前記内筒に設けられる受部材と
を備えた請求項1~
4の何れか一項に記載のループシールの内筒支持構造。
【請求項6】
前記サイクロンの脚管の内部には、前記フランジ部の上方に位置し且つ内径が内筒の内径より小さいガイド堰が形成される請求項1~
5の何れか一項に記載のループシールの内筒支持構造。
【請求項7】
前記ループシールは、燃料を燃焼させる火炉と、該火炉から排出される燃焼ガス中の粒子を分離する前記サイクロンとを備えた循環流動層ボイラに設けられ且つ前記返戻管が前記火炉に接続される請求項1~
6の何れか一項に記載のループシールの内筒支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ループシールの内筒支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ループシールは、燃料を燃焼させる火炉と、該火炉から排出される燃焼ガス中の砂や灰等の粒子を分離するサイクロンとを備えた循環流動層ボイラに設けられている。
【0003】
そして、前記ループシールは、ケーシングがサイクロンの脚管から吊り下げられ、前記ケーシングから延びる返戻管が火炉の底部に接続されている。
【0004】
前記ループシールのケーシング内部には、粒子を導入する内筒が設置され、該内筒の下部を粒子の内部に埋没させることにより、前記サイクロンと火炉の圧力差をシールし、火炉内の燃焼ガスがサイクロン側に逆流することを防止しつつ、サイクロンで分離された粒子を火炉内に安定して戻せるようになっている。
【0005】
従来のループシールの場合、ケーシング上端部内面側に円環状の支持金物が張り出され、該支持金物に前記内筒のフランジ部が載置され、該フランジ部の上下面が耐火材で覆われて、前記内筒が支持される構造となっている。
【0006】
尚、循環流動層ボイラのループシールの一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記内筒の内部には高温の燃焼ガスが流れているが、前記ケーシングから張り出された支持金物に載置されているフランジ部は、支持金物を介して外部に熱が奪われるため、内部より温度が低くなる。
【0009】
そのため、相対的に温度が高くなる前記内筒の半径方向の伸びより、前記フランジ部の伸びが小さくなり、結果的には、前記フランジ部が内筒を縮めるように変形する形となる。このような変形が発生すると、前記フランジ部の上下面が耐火材で覆われていても、該フランジ部の外周端部分に隙間が生じて、該隙間に砂や灰等の粒子が入り込み、前記フランジ部の熱伸びが阻害され、該フランジ部が内筒を縮める変形が更に助長される。変形がある程度進行すると、構造的に一番弱いフランジ部の内筒に対する溶接部への負担が大きくなり、改善が望まれていた。
【0010】
そこで、本開示においては、上記従来の問題点に鑑み、フランジ部の温度差を最小限に抑え得るループシールの内筒支持構造を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、サイクロンで分離されて該サイクロンの脚管から流下する粒子が一時貯留されるケーシングと、
該ケーシングの内部に前記粒子を導入するよう配設され且つ下部が粒子の内部に埋没される内筒と、
前記ケーシングの上部側面に接続され且つ粒子を排出する返戻管と
を備えたループシールの内筒支持構造において、
前記内筒の上端に形成されるフランジ部と、
該フランジ部が前記サイクロンの脚管の内部に露出して載置されるよう前記脚管の内径を拡張して形成される内側段部と、
該内側段部が形成されることに伴って前記脚管外周と前記ケーシング外周との間に生じる外側段部に配設される吊下補強材と
を備えたループシールの内筒支持構造に係るものである。
【0013】
前記ループシールの内筒支持構造において、前記フランジ部は、
前記内側段部に載置される下フランジと、
該下フランジから上方へ所要間隔をあけて配設される上フランジと、
前記下フランジと上フランジとをつなぐようフランジ部中心から放射状に配設されるリブと
を備えることが好ましい。
【0014】
又、前記ループシールの内筒支持構造において、前記下フランジは、前記内筒の外周に溶接され、前記上フランジは、前記内筒の外周に溶接されることが好ましい。
【0015】
又、前記ループシールの内筒支持構造においては、前記下フランジの外周端上面に内周側から外周側へ向け下り勾配となるよう形成されるテーパを備えることが好ましい。
【0016】
更に又、前記ループシールの内筒支持構造においては、前記ループシールのケーシング内面から内筒側へ張り出され且つ上下方向へ複数段配設される保持梁と、
該保持梁を周方向両側から挟むよう前記内筒に設けられる受部材と
を備えることが好ましい。
【0017】
又、前記ループシールの内筒支持構造において、前記サイクロンの脚管の内部には、前記フランジ部の上方に位置し且つ内径が内筒の内径より小さいガイド堰が形成されることが好ましい。
【0018】
又、前記ループシールの内筒支持構造において、前記ループシールは、燃料を燃焼させる火炉と、該火炉から排出される燃焼ガス中の粒子を分離する前記サイクロンとを備えた循環流動層ボイラに設けられ且つ前記返戻管が前記火炉に接続されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のループシールの内筒支持構造によれば、フランジ部の温度差を最小限に抑え得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施例によるループシールの内筒支持構造の形態を説明する要部側断面図であって、
図6のI部拡大図である。
【
図2】本開示の実施例によるループシールの内筒支持構造の下フランジ及び吊下補強材を示す平面図であって、
図1のII-II矢視相当図である。
【
図3】本開示の実施例によるループシールの内筒支持構造の下部振止機構を示す要部側断面図であって、
図6のIII部拡大図である。
【
図4】本開示の実施例によるループシールの内筒支持構造の下部振止機構を示す平面図であって、
図3のIV-IV矢視相当図である。
【
図5】本開示の実施例によるループシールの内筒支持構造の上部振止機構を示す側断面図であって、
図2のV-V矢視相当図である。
【
図6】本開示の実施例によるループシールの内筒支持構造が適用される循環流動層ボイラを示す全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示における本発明の実施例の形態を添付図面を参照して説明する。
【0022】
本開示の実施例によるループシールの内筒支持構造は、例えば、循環流動層ボイラに適用される。循環流動層ボイラは、
図6に示す如く、火炉100と、サイクロン200と、ループシール300と、後部伝熱部400とを備えている。
【0023】
前記火炉100は、空気分散ノズル110から吹き出される空気により燃料を砂や石灰石等からなるベッド材と共に流動化させながら燃焼させるようになっている。
【0024】
前記サイクロン200は、前記火炉100の上部に接続され、前記火炉100内での燃焼により発生した燃焼ガスに含まれる砂や灰等の粒子を捕集するようになっている。因みに、前記サイクロン200は、旋回導入部210と、粒子分離回収部220と、出口ダクト230と、内筒240とを備えている。前記旋回導入部210は、粒子を含む気体が旋回流となるよう導入される部位である。前記粒子分離回収部220は、旋回導入部210の下端に設けられ且つ下方へ向け縮径される部位である。前記出口ダクト230は、前記旋回導入部210の上端に接続されている。前記内筒240は、粒子が分離された気体を前記出口ダクト230へ導くよう前記旋回導入部210の内部に設けられている。尚、前記サイクロン200は、支持脚250によって支えられている。又、前記粒子分離回収部220下端には、脚管260が接続されている。
【0025】
前記ループシール300は、ケーシング301と、内筒310と、返戻管330とを備えている。前記ケーシング301は、前記サイクロン200で分離されて前記脚管260から流下する粒子が一時貯留されるようになっている。前記内筒310は、前記ケーシング301の内部に前記粒子を導入するよう配設され且つ下部が粒子の内部に埋没されるようになっている。前記返戻管330は、前記ケーシング301の上部側面に接続され且つ粒子を排出して前記火炉100の底部に戻すようになっている。尚、前記ケーシング301の底部には、空気を吹き出して前記粒子を流動化させる空気分散ノズル320が設けられている。因みに、前記ループシール300は、サイクロン200下部の圧力よりも火炉100内下部の圧力の方が高くなっていても、火炉100内の燃焼ガスがサイクロン200側に逆流することを防止し、且つサイクロン200で分離された砂や灰等の粒子を火炉100内に安定して戻せるようになっている。
【0026】
前記後部伝熱部400は、前記サイクロン200で砂や灰等の粒子が捕集された燃焼ガスが導入され、内部に過熱器、再熱器、節炭器等を構成する伝熱管群410が配設され、前記燃焼ガスの熱を回収して発電に利用するようになっている。
【0027】
そして、本実施例の場合、
図1及び
図2に示す如く、前記内筒310の上端にはフランジ部311が形成され、該フランジ部311が前記サイクロン200の脚管260の内部に露出して載置されるよう前記脚管260の内径を拡張して内側段部261を形成した点を特徴としている。前記脚管260の内径は、該脚管260の上下方向全長に亘り拡張されている。
【0028】
前記内側段部261は、脚管260の内面を覆う耐火材262の内周面位置を、ループシール300のケーシング301内面を覆う耐火材302の内周面位置より外周側へ変位させることで形成され、前記ループシール300のケーシング301上端部内周面に配設される内筒支持部材303の上面を露出させている。前記内筒支持部材303は、前記ループシール300のケーシング301内面側に張り出す支持ブラケット304と、該支持ブラケット304上に載置される環状板305とから構成されている。
【0029】
尚、前記耐火材262及び耐火材302は、
図1、
図3及び
図5において、あえて仮想線で示している。これは、前記内筒支持部材303を明確に示すと共に、前記脚管260下端部内面に配設される補強ブラケット263を明確に示すためである。
【0030】
前記内側段部261が形成されることに伴って脚管260外周とループシール300のケーシング301外周との間には、外側段部264が生じる。このため、前記外側段部264には吊下補強材265を取り付け、該吊下補強材265により前記ループシール300の自重を支持するようにしてある。前記吊下補強材265は、脚管260の外周に上下方向へ延びるよう溶接されるベース材266と、該ベース材266に上部が溶接されて垂下され且つ下端部がループシール300のケーシング301に溶接される保持材267とを備えている。前記ベース材266は、
図2に示す如く、T形鋼で形成され、前記保持材267はH形鋼で形成されている。但し、前記ベース材266及び保持材267はそれぞれ、山形鋼や溝形鋼、或いは金属板材を曲げて形成される部材で構成しても良いことは言うまでもない。
【0031】
又、前記フランジ部311は、一つのフランジで構成することも可能であるが、本実施例の場合、下フランジ312と、上フランジ313と、リブ314とを備えている。前記下フランジ312は、前記内筒310の外周に溶接され、前記内側段部261に載置されるようになっている。より詳細には、
図1に示す如く、環状板305の上面に下フランジ312は載置されている。前記上フランジ313は、前記下フランジ312から上方へ所要間隔をあけて前記内筒310の外周に溶接されている。前記リブ314は、前記下フランジ312と上フランジ313とをつなぐよう溶接され、
図2に示す如く、フランジ部311の内周側から外周側へ向け放射状に配設されている。
【0032】
更に又、前記下フランジ312の外周端上面には、内周側から外周側へ向け下り勾配となるようテーパ315が形成されている。
【0033】
又、前記内筒310の下部は、
図3及び
図4に示す如く、下部振止機構340により旋回方向(周方向)並びに半径方向の動きが抑えられるようになっている。前記下部振止機構340は、保持梁341と、受部材342とを備えている。前記保持梁341は、ループシール300のケーシング301内面から内筒310側へ張り出され、周方向へ複数箇所(例えば、四箇所)、上下方向へ複数段(例えば、二段)配設されている。前記受部材342は、内筒310の下部外周に固定具343を介して取り付けられる筒体344と、該筒体344の外周に前記保持梁341先端部を周方向両側から挟むよう突設される挟持片345とを備えている。
【0034】
尚、前記内筒310の上部は、
図2及び
図5に示す如く、上部振止機構350により旋回方向(周方向)並びに半径方向の動きが抑えられるようになっている。前記上部振止機構350は、突片351と、凹溝352とを備えている。前記突片351は、上部が前記環状板305の上面から突出し且つ下部が環状板305及び耐火材262に埋め込まれるように固定されている。前記凹溝352は、前記突片351に係合するよう下フランジ312に形成されている。
【0035】
前記サイクロン200の脚管260の内部には、
図1及び
図5に示す如く、ガイド堰268が形成されている。前記ガイド堰268は、前記フランジ部311の上方に位置し且つ内径dが内筒310の内径Dより小さくなるよう、耐火材262で形成されている。前記ガイド堰268は、内径が上方から下方へ向け漸次縮小されてdとなる流下円錐面268aと、該流下円錐面268a下端から垂下し内径がdで均一となる円筒面268bと、該円筒面268b下端から内径が下方へ向け漸次拡張される末広円錐面268cとを備えている。
【0036】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0037】
脚管260の内径を拡張して内側段部261を形成したことにより、内筒310の上端に形成されたフランジ部311は、前記脚管260内部に露出して載置される。
【0038】
前記フランジ部311は、内筒310と同じく高温の燃焼ガスに晒され、外部に熱を奪われることなく、温度が低下しなくなる。
【0039】
そのため、前記フランジ部311と内筒310との間で相対的な温度差が生じず、前記内筒310の半径方向の伸びより、前記フランジ部311の伸びが小さくならず、結果的に、前記フランジ部311が内筒310を縮めるように変形することが避けられる。
【0040】
前記フランジ部311と内筒310との間の温度差がなくなって変形が発生しなくなると、構造的に一番弱いフランジ部311の内筒310に対する溶接部への負担が大幅に軽減される。
【0041】
一方、前記内側段部261が形成されることに伴って脚管260外周とループシール300のケーシング301外周との間には外側段部264が生じる。前記外側段部264は、脚管260からループシール300のケーシング301が単純に垂下せずに屈曲する形の言わば不連続となる部分となる。しかしながら、前記脚管260の外周には、吊下補強材265を構成するベース材266が溶接され、該ベース材266には、保持材267の上部が溶接されて垂下され、該保持材267の下端部がループシール300のケーシング301に溶接されている。このため、前記吊下補強材265によりループシール300の自重は安定して支持され、ループシール300のケーシング301が変形することはない。
【0042】
又、前記フランジ部311を構成する下フランジ312は、前記内筒310の外周に溶接され、前記内側段部261に載置されるようになっており、
図1に示す如く、環状板305の上面に載置されている。前記フランジ部311を構成する上フランジ313は、前記下フランジ312から上方へ所要間隔をあけて前記内筒310の外周に溶接されている。前記フランジ部311を構成するリブ314は、前記下フランジ312と上フランジ313とをつなぐよう溶接され、
図2に示す如く、フランジ部311の内周側から外周側へ向け放射状に配設されている。これにより、前記フランジ部311を含む内筒310全体の強度が向上し、変形に強い構造とすることが可能となる。ここで、仮に、前記内筒310の内周部に下フランジ312や上フランジ313の溶接部が存在していた場合、前記内筒310が熱膨張変形した際、溶接部に最大曲げ応力が集中的に作用してしまう。しかしながら、前記下フランジ312及び上フランジ313の溶接部は内筒310の外周に存在しているため、内筒310が熱膨張変形しても、最大曲げ応力が集中的に溶接部に作用することが避けられる。
【0043】
更に又、前記フランジ部311を露出させたことで、該フランジ部311の下フランジ312先端部に砂や灰等の粒子が堆積し、フランジ部311の熱伸びが阻害される可能性が高まる。しかし、仮に前記フランジ部311の下フランジ312先端部に砂や灰等の粒子が堆積したとしても、前記下フランジ312の外周端上面には、内周側から外周側へ向け下り勾配となるようテーパ315が形成されている。このため、前記テーパ315は、楔のように作用して前記粒子の中に入り込みやすくなり、フランジ部311の熱伸びが阻害されなくなる。
【0044】
しかも、前記サイクロン200の脚管260の内部には、
図1及び
図5に示す如く、流下円錐面268aと円筒面268bと末広円錐面268cとを備えたガイド堰268が形成されている。このため、前記粒子は、前記ガイド堰268の流下円錐面268aから円筒面268bを経て内筒310の内部へ安定して導かれ、末広円錐面268c側へは行きにくくなり、フランジ部311に直接当たることが避けられる。
【0045】
又、前記ループシール300に一時貯留される粒子は、空気分散ノズル320から吹き出される空気により流動化されており、内筒310下部が前記粒子の内部に埋没されることから、内筒310の振動が大きくなる。しかし、前記内筒310の下部は、
図3及び
図4に示す如く、下部振止機構340の受部材342の筒体344から突設される挟持片345が、ケーシング301内面から内筒310側へ張り出される保持梁341先端部に係合することにより、旋回方向並びに半径方向の動きが抑えられ、安定して支持される。しかも、前記下部振止機構340の保持梁341は、上下方向へ複数段(例えば、二段)配設されているため、内筒310の振動を更に抑える上で有効となる。
【0046】
尚、前記内筒310の上部は、
図2及び
図5に示す如く、上部振止機構350の凹溝352が、環状板305の上面から突出する突片351に係合することにより、旋回方向並びに半径方向の動きが抑えられ、安定して支持される。
【0047】
こうして、フランジ部311の温度差を最小限に抑え得る。
【0048】
そして、本実施例の場合、前記内側段部261が形成されることに伴って脚管260外周とループシール300のケーシング301外周との間に生じる外側段部264に配設される吊下補強材265を備えている。このように構成すると、脚管260とループシール300との間に外側段部264という、単純に垂下せずに屈曲する形の言わば不連続となる部分が生じていても、前記吊下補強材265によりループシール300の自重は安定して支持される。
【0049】
又、前記フランジ部311は、前記内側段部261に載置される下フランジ312と、該下フランジ312から上方へ所要間隔をあけて配設される上フランジ313と、前記下フランジ312と上フランジ313とをつなぐようフランジ部311の内周側から外周側へ向け放射状に配設されるリブ314とを備えている。このように構成すると、前記フランジ部311を含む内筒310全体の強度を向上させ、変形に強い構造とする上で有効となる。
【0050】
又、前記下フランジ312は、前記内筒310の外周に溶接され、前記上フランジ243は、前記内筒310の外周に溶接されている。仮に、前記内筒310の内周部に下フランジ312や上フランジ243の溶接部が存在していた場合、前記内筒310が熱膨張変形した際、溶接部に最大曲げ応力が集中的に作用してしまうが、前記内筒310の外周に下フランジ312及び上フランジ243の溶接部が存在していれば、前記内筒310が熱膨張変形しても、最大曲げ応力が集中的に溶接部に作用せず有利となる。
【0051】
更に又、前記下フランジ312の外周端上面に内周側から外周側へ向け下り勾配となるよう形成されるテーパ315を備えている。このように構成すると、前記フランジ部311の下フランジ312先端部への粒子の堆積時に、前記テーパ315を楔のように作用させて前記粒子の中に入り込みやすくすることができ、前記フランジ部311を円滑に熱伸びさせる上で有効となる。
【0052】
又、前記ループシール300のケーシング301内面から内筒310側へ張り出され且つ上下方向へ複数段配設される保持梁341と、該保持梁341を周方向両側から挟むよう前記内筒310に設けられる受部材342とを備えている。このように構成すると、下部が粒子の内部に埋没されて振動が大きくなりやすい内筒310を安定して支持することができる。
【0053】
又、前記サイクロン200の脚管260の内部には、前記フランジ部311の上方に位置し且つ内径dが内筒310の内径Dより小さいガイド堰268が形成されている。このように構成すると、前記粒子を内筒310の内部へ安定して導くことができ、フランジ部311に対する粒子の接触を回避することができる。
【0054】
又、前記ループシール300は、燃料を燃焼させる火炉100と、該火炉100から排出される燃焼ガス中の粒子を分離する前記サイクロン200とを備えた循環流動層ボイラに設けられ且つ前記返戻管330が前記火炉100に接続されている。このように構成すると、特に、循環流動層ボイラに設けられるループシール300の運転を安定して行うことができる。
【0055】
尚、本発明のループシールの内筒支持構造は、本開示にて説明した上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
100 火炉
110 空気分散ノズル
200 サイクロン
210 旋回導入部
220 粒子分離回収部
230 出口ダクト
240 内筒
250 支持脚
260 脚管
261 内側段部
262 耐火材
263 補強ブラケット
264 外側段部
265 吊下補強材
266 ベース材
267 保持材
268 ガイド堰
268a 流下円錐面
268b 円筒面
268c 末広円錐面
300 ループシール
301 ケーシング
302 耐火材
303 内筒支持部材
304 支持ブラケット
305 環状板
310 内筒
311 フランジ部
312 下フランジ
313 上フランジ
314 リブ
315 テーパ
320 空気分散ノズル
330 返戻管
340 下部振止機構
341 保持梁
342 受部材
343 固定具
344 筒体
345 挟持片
350 上部振止機構
351 突片
352 凹溝
400 後部伝熱部
410 伝熱管群
D 内径
d 内径