(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】車両サイドドア構造
(51)【国際特許分類】
B60J 5/04 20060101AFI20240208BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B60J5/04 Z
B60J5/00 P
(21)【出願番号】P 2020089760
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】大角 拓矢
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-094344(JP,A)
【文献】特開2008-062795(JP,A)
【文献】実開昭63-197726(JP,U)
【文献】米国特許第04648208(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102005014570(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/00
B60J 5/04 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に連結されたリンク部材により回動可能に支持されたインナパネルを有し、前記インナパネルには、開口部が設けられている、車両サイドドア構造において、
前記インナパネルの前記開口部の車両上方側には、車両前後方向に延びるベルトライン部が設けられ、前記開口部の車両下方側には、前記インナパネルの下端より車両内側に突出し、車両前後方向に延びている下側段差部が設けられ、
前記インナパネルの車両外側で、前記開口部の車両前後方向の中間部には、車両上下方向に延びる縦部材が設けられ、該縦部材の上部は前記ベルトライン部に接合され、前記縦部材の下部は前記下側段差部に接合され、
前記インナパネルの車両内側には、前記開口部を車両上下方向に横断する中央パネルが設けられ、
前記リンク部材は、前記縦部材に接合される上側支持部と、該上側支持部の車両下方に位置する前記縦部材に接合される下側支持部と、前記上側支持部及び前記下側支持部の車両前方側または車両後方側に設けられ、前記中央パネルに接合され
、前記上側支持部から前記下側支持部までの間に位置する中間支持部と、を有し、
前記中央パネルは、前記上側支持部及び前記下側支持部の少なくとも一方と、前記中間支持部とを連結するように構成されていることを特徴とする、車両サイドドア構造。
【請求項2】
前記中央パネルの上部は、前記開口部の上部に接合され、前記中央パネルの下部は、前記開口部の下部に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両サイドドア構造。
【請求項3】
前記縦部材の車両外側には、車両前後方向に延びるドアメンバが設けられ、
前記ドアメンバは、前記中間支持部に接合されており、
前記インナパネルの車両外側で、前記開口部の車両前方側には、前側リンフォースメントが接合され、前記開口部の車両後方側には、後側リンフォースメントが接合され、
前記ドアメンバの前部は、前記前側リンフォースメントに接合され、前記ドアメンバの後部は、前記後側リンフォースメントに接合されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両サイドドア構造。
【請求項4】
前記ドアメンバの車両上下方向の中間部には、車両前後方向に延びる補強部が設けられ、
前記補強部は、前記前側リンフォースメント及び前記後側リンフォースメントの少なくとも一方と、前記中間支持部とを繋ぐように延びていることを特徴とする、請求項3に記載の車両サイドドア構造。
【請求項5】
前記中間支持部は、前記中央パネルの車両内側に接合され、
前記中間支持部の周囲に位置する前記中央パネルには、車両外側に凹む凹部が設けられ、
前記中央パネルには、前記凹部から、車両前方または車両後方に延びるビードが設けられていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の車両サイドドア構造。
【請求項6】
前記縦部材の外面の前部及び後部の少なくとも一方には、車両内側に屈曲し車両上下方向に延びる縦壁部が設けられており、
前記縦壁部は、前記縦部材と前記インナパネルとの接合部から、前記上側支持部または前記下側支持部に向かって延びていることを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の車両サイドドア構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両サイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体側部に設けられたドア開口部を開閉するように車体側部に取り付けられたサイドドアには、例えば、特許文献1に開示されているように、ドア開口部を閉鎖する状態(閉状態)から、車幅方向外側に突出するように搖動し、その上で後方にスライドすることによってドア開口部を開閉するスイングスライドドアが知られている。当該スイングスライドドアは、サイドドアが車幅方向外側に平行に迫り出し、前後方向に移動することによってドア開口部を開閉する。
【0003】
上記例のスイングスライドドアは、ドア開閉時に車体側に前アーム及び後アームの一端がレール受けブラケットに回動自在に軸支される平行リンクを備えている。さらに、この例のスイングスライドドアは、インナパネルの内壁に設けられたレールをレール受けブラケットに摺動自在に架設するドア摺動機構を備えている。この例の構造では、平行リンクによるサイドドアの車体前後方向への変位成分を有する状態でサイドドアの閉鎖位置を設定することにより、サイドドアの閉鎖位置側と車体側との間のシール性を確保しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記例のスイングスライドドアのインナパネルには、ドア荷重を支持するためのブラケットが設けられ、該ブラケットには、レールが取り付けられている。スイングスライドドアの回動時に発生する車幅方向及び車両上下方向の荷重を、インナパネルの中央部で支持している。
【0006】
ところが、上記例の構造では、車幅方向の荷重に対して、レールは脆弱性を有するため変形する可能性がある。すなわち、意図しない応力がインナパネルに集中すると、破損や捩り変形を起こし、シール性を損なう可能性がある。そのため、スイングスライドドアのシール性を確保する上で、上記例の構造には改善の余地があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、スイングスライドドアにおいて、シール性を向上することが可能な車両サイドドア構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る車両サイドドア構造は、車体側部に連結されたリンク部材により回動可能に支持されたインナパネルを有し、前記インナパネルには、開口部が設けられている。当該車両サイドドア構造において、前記インナパネルの前記開口部の車両上方側には、車両前後方向に延びるベルトライン部が設けられ、前記開口部の車両下方側には、前記インナパネルの下端より車両内側に突出し、車両前後方向に延びている下側段差部が設けられ、前記インナパネルの車両外側で、前記開口部の車両前後方向の中間部には、車両上下方向に延びる縦部材が設けられ、該縦部材の上部は前記ベルトライン部に接合され、前記縦部材の下部は前記下側段差部に接合され、前記インナパネルの車両内側には、前記開口部を車両上下方向に横断する中央パネルが設けられ、前記リンク部材は、前記縦部材に接合される上側支持部と、該上側支持部の車両下方に位置する前記縦部材に接合される下側支持部と、前記上側支持部及び前記下側支持部の車両前方側または車両後方側に設けられ、前記中央パネルに接合され、前記上側支持部から前記下側支持部までの間に位置する中間支持部と、を有し、前記中央パネルは、前記上側支持部及び前記下側支持部の少なくとも一方と、前記中間支持部とを連結するように構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、スイングスライドドアにおいて、シール性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る車両サイドドア構造の一実施形態の上面図で、サイドドアが開いている途中の状態を示している。
【
図2】
図1のサイドドアの閉状態を、車両内側から見た側面図である。
【
図3】
図3のサイドドアを車両外側から見た側面図である。
【
図4】
図1のサイドドアを単体で示す側面図で、リンク部材が車幅方向に延びた状態を示している。
【
図5】
図3のA-A矢視断面を概略的に示す断面図である。
【
図6】
図2のB-B矢視断面を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る車両の車両サイドドア構造の一実施形態について、図面(
図1~
図6)を参照しながら説明する。なお、図において、矢印Fr方向は車両前後方向における前方を示す。実施形態の説明における「前部(前端)及び後部(後端)」は、車両前後方向における前部及び後部に対応する。また、矢印Inは、車両内側(車幅方向内側)を示している。
【0012】
本実施形態のサイドドア1は、
図1に示すように、サイドドア1が車幅方向外側に平行に迫り出し、前後方向に移動することによって開閉する、スイングスライドドアである。以下、本実施形態では、スイングスライドタイプのドアを、サイドドア1と称して説明する。サイドドア1は、車体側部に設けられたドア開口部51を開閉するように、リンク部材により回動可能に車体側部に連結されている。
【0013】
本実施形態のサイドドア1は、
図1~
図4に示すように、インナパネル10と、アウタパネル18と、リンク部材30,40と、縦部材21と、中央パネル23と、ドアメンバ25と、前側リンフォースメント27と、後側リンフォースメント28と、を有している。以下、各部材について説明する。
【0014】
インナパネル10及びアウタパネル18は、サイドドア1の本体を構成する部品で、
図4に示すように、インナパネル10は、アウタパネル18の車幅方向内側に接合されている。インナパネル10は、
図2~
図4に示すように、窓枠部11と、パネル本体部12と、ベルトライン部13と、開口部14と、下側段差部15と、を有している。
【0015】
窓枠部11は、インナパネル10の車両上下方向の中央よりも上方側で、パネル本体部12の車両上方側に配置されている。ベルトライン部13は、パネル本体部12の上部に設けられ、車両前後方向に延びている。
【0016】
開口部14は、パネル本体部12に設けられ、車両の内側及び外側を連通する貫通孔である。この例では、開口部14の下部は、パネル本体部12の車両上下方向の中心よりやや下方側に位置し、開口部14の上部は、ベルトライン部13よりもやや下方側に位置している。開口部14は、パネル本体部12の後部から車両前方に延びており、開口部14の前端部は、開口部14の車両前後方向の中間部よりも、車両下方に延びている。
【0017】
下側段差部15は、開口部14の車両下方側で、インナパネル10のパネル本体部12の下端より車両内側に突出し、車両前後方向に延びている。当該下側段差部15の後部には、当該後部から車両上方に延びる後側段差部16が設けられている。
【0018】
縦部材21は、
図3に示すように、車両上下方向に延びる金属製の部材で、インナパネル10の車両外側で、開口部14の車両前後方向の中間部に配置されている。該縦部材21の上部はベルトライン部13に接合され、縦部材21の下部は下側段差部15に接合されている。中央パネル23は、金属製の部材で、インナパネル10の車両内側で、開口部14を車両上下方向に横断するように延びている。
【0019】
リンク部材30,40は、車体とサイドドア1とを回動可能に連結する部材であり、車体側の端部が車体側部に回動可能に連結され、ドア側の端部は、サイドドア1を支持している。ドア側の端部には、上側支持部34、下側支持部35及び中間支持部44が設けられ、各支持部34,34,44は、サイドドア1を回動可能に支持している。また、リンク部材30,40は、
図1に示すように、前側リンク部材30と、後側リンク部材40と、を有している。以下、リンク部材30,40の詳細について説明する。
【0020】
前側リンク部材30は、
図1及び
図2に示すように、前側本体部31と、前側車体連結部32と、を有している。前側本体部31は、ドア閉状態で、車両前後方向に延びており、車両上下方向に所定の幅を有している。前側車体連結部32は、車体側部の例えばクォータインナパネル50に取り付けられている。クォータインナパネル50は、ドア開口部51の車両後方側に配置されるパネル部材で、車体側部を構成している。前側車体連結部32は、車両上下方向に延びる回転軸33(
図1)を有し、前側本体部31の車体側の端部は、当該回転軸33の周りを水平に回動可能な状態で、前側車体連結部32に連結されている。
【0021】
上記した上側支持部34及び下側支持部35は、
図1及び
図2に示すように、前側本体部31のドア側の端部に設けられている。上側支持部34及び下側支持部35は、車両上下方向に互いに間隔を空けて、中央パネル23を介在して、縦部材21に接合されている。詳細には、上側支持部34は、前側本体部31のドア側の端部の上部に設けられ、中央パネル23の車両前後方向の中間部(ほぼ中央)を介在した状態で、縦部材21の内面における車両前後方向のほぼ中央に接合されている。
【0022】
下側支持部35は、前側本体部31のドア側の端部の下部に設けられ、上側支持部34の車両下方に位置する縦部材21の内面に、中央パネル23を介在した状態で接合されている。上側支持部34及び下側支持部35は、それぞれ車両上下方向に延びる回転軸(図示せず)を有し、前側本体部31のドア側の端部は、当該回転軸の周りを水平に回動可能な状態で、上側支持部34及び下側支持部35に連結されている。
【0023】
後側リンク部材40は、
図1及び
図2に示すように、後側本体部41と、後側車体連結部42と、を有している。後側本体部41は、前側本体部31と同様に、ドア閉状態で、車両前後方向に延びる長尺の部材である。後側車体連結部42は、図示による詳細な説明は省略しているが、クォータインナパネル50に取り付けられている。後側車体連結部42及び前側車体連結部32は、車両前後方向に並んで配置されている。後側車体連結部42は、前側車体連結部32と同様に、車両上下方向に延びる回転軸43(
図1)を有し、後側本体部41のドア側の端部は、当該回転軸43の周りを水平に回動可能な状態で、後側車体連結部42に連結されている。
【0024】
また、上記した中間支持部44は、
図1及び
図2に示すように、後側本体部41のドア側の端部に設けられている。この例の中間支持部44は、上側支持部34及び下側支持部35の車両後方側に設けられ、中央パネル23の内面における後部に接合される。中間支持部44と中央パネル23との接合部は、縦部材21よりも車両後方側に配置されている。中間支持部44は、車両上下方向に延びる回転軸(図示せず)を有し、後側本体部41のドア側の端部は、当該回転軸の周りを水平に回動可能な状態で、中間支持部44に連結されている。
【0025】
本実施形態の中央パネル23は、上側支持部34及び下側支持部35の少なくとも一方と、中間支持部44とを連結するように構成されている。この例では、中央パネル23は、上側支持部34及び下側支持部35の両方と、中間支持部44とを連結するように構成されている。上側支持部34は、中間支持部44に対して、車両前方且つ上方側(前斜め上方向)に配置され、下側支持部35は、中間支持部44に対して、車両前方且つ下方側(前斜め下方向)に配置されている。
【0026】
上記のように、ベルトライン部13から下側段差部15にかけて縦部材21が接合されることにより、縦部材21に作用する荷重に対して、縦部材21の車両上下方向に対する剛性が向上する。当該縦部材21に、上側支持部34と下側支持部35が接合されているため、サイドドア1の車両上下方向の荷重を効果的に支持できる。
【0027】
また、サイドドア1に回動方向の荷重が入力された場合には、中間支持部44には車両前後方向及び車幅方向の荷重が入力される。これに対して、本実施形態では、中央パネル23が上側支持部34及び下側支持部35と、中間支持部44とを連結している。そのため、中間支持部44が車両前後方向及び車幅方向に移動しようとしても、上側支持部34及び下側支持部35が、中間支持部44を、中央パネル23を介して上記傾斜方向に引っ張るように支持しているため、中間支持部44の移動は抑制される。これにより、サイドドア1の変形が抑制され、その結果、シール性が維持される。
【0028】
また、
図3に示すように、本実施形態の中央パネル23の上部は、開口部14の上部に接合され、中央パネル23の下部は、開口部14の下部に接合されている。中央パネル23の上端部と下端部がインナパネル10と接合することで、中間支持部44が車幅方向に移動したときに、中央パネル23は、斜め上に引っ張られる。その結果、中間支持部44は、中央パネル23によって安定して支持することが可能となる。これにより、サイドドア1の変形が抑制され、シール性が保たれる。
【0029】
また、
図3に示すように、本実施形態のドアメンバ25は、開口部14を車両前後方向に横断するように車両前後方向に延びる金属製の部材で、縦部材21の車両外側に配置されている。当該ドアメンバ25は、中央パネル23の車両上下方向のほぼ中央部を横断するように配置され、中央パネル23を介在した状態で、中間支持部44に接合されている。
【0030】
また、前側リンフォースメント27は、車両上下方向に延びる金属製の部材で、開口部14の車両前方側に位置するパネル本体部12の外面に接合されている。前側リンフォースメント27の前端は、パネル本体部12の前端付近に配置され、前側リンフォースメント27の後端は、開口部14の前縁付近に配置されている。前側リンフォースメント27の上端は、パネル本体部12の上部に配置され、下端は、開口部14の下端よりもやや車両上方に配置されている。
【0031】
後側リンフォースメント28は、前側リンフォースメント27と同様に、車両上下方向に延びる金属製の部材であり、開口部14の車両後方側に位置するパネル本体部12の外面に接合されている。後側リンフォースメント28の前端は、開口部14の後縁付近に配置されている。後側リンフォースメント28の後端は、パネル本体部12の後端付近に配置されている。また、後側リンフォースメント28の上端は、ベルトライン部13よりも車両上方で、窓枠部11の後部の車両上下方向中間部に配置されている。後側リンフォースメント28の下端は、ドアメンバ25の下端付近に配置されている。
【0032】
本実施形態では、ドアメンバ25の前部は、前側リンフォースメント27の後部における車両上下方向中間部に接合されている。また、ドアメンバ25の後部は、後側リンフォースメント28の前部における下部に接合されている。
【0033】
上記のようにドアメンバ25には前側リンフォースメント27及び後側リンフォースメント28が接合されているため、中間支持部44に車幅方向へ荷重が入力された場合には、ドアメンバ25にも車幅方向への荷重が入力される。ドアメンバ25が車幅方向へ変形すると、前側リンフォースメント27及び後側リンフォースメント28に、ドアメンバ25から車両前後方向へ引っ張り荷重が入力される。その結果、中間支持部44をドアメンバ25により支持することができ、サイドドア1の変形を効果的に抑制できる。
【0034】
図3及び
図6に示すように、ドアメンバ25の車両上下方向の中間部には、車両前後方向に延びる補強部が設けられている。この例の補強部は、ドアメンバ25の外面における車両上下方向の中央部が車幅方向外側に突出して、車両前後方向に延びているメンバビード部25aである。メンバビード部25aは、中間支持部44から、後側リンフォースメント28まで延びており、この例では、ドアメンバ25の前端から中間支持部44を経由して後端まで延びている。
【0035】
前側リンフォースメント27または後側リンフォースメント28には、ドアメンバ25から車両前後方向の荷重が入力される。メンバビード部25aを設けることにより、ドアメンバ25の車幅方向及び車両前後方向の剛性が向上するので、サイドドア1のインナパネル10の変形をより効果的に抑制できる。
【0036】
また、本実施形態では、
図4及び
図6に示すように、中間支持部44の周囲に位置する中央パネル23の内面には、車両外側に凹む凹部23aが設けられている。この例では、凹部23aは、中央パネル23の後部における車両上下方向のほぼ中央部に設けられている。また、中央パネル23の内面における車両上下方向の中央部には、凹部23aから中央パネル23の前端まで延びるパネルビード(ビード)23bが設けられている。凹部23aにより、中間支持部44の周囲が補強され、車幅方向及び車両前後方向の荷重を、中央パネル23によって支持することができる。さらに、凹部23aに連続するようにパネルビード23bが形成されることにより、中央パネル23の車両前後方向の剛性を高めることができる。
【0037】
本実施形態では、
図3及び
図5に示すように、縦部材21の外面の前部及び後部には、車両内側に屈曲し車両上下方向に延びる前縦壁部(縦壁部)21a及び後縦壁部(縦壁部)21bが設けられている。前縦壁部21a及び後縦壁部21bは、縦部材21とベルトライン部13との接合部から、上側支持部34に向かって延びている。また、図示による説明は省略しているが、前縦壁部21a及び後縦壁部21bは、縦部材21と下側段差部15との接合部と、下側支持部35とを繋ぐように開口部14の車両下方側にも設けられている。
【0038】
中間支持部44に車幅方向の荷重が入力されると、縦部材21は、上側支持部34を軸として回転しようとする力が発生する。すなわち、当該荷重の入力により縦部材21にねじれが生じる。これに対して、上記のように前縦壁部21a及び後縦壁部21bを設けることにより、ねじり変形を抑制することが可能となる。なお、縦部材21に設ける縦壁部は、前縦壁部21a及び後縦壁部21bのうち、どちらか一方でもよい。
【0039】
本実施形態の説明は、本発明を説明するための例示であって、特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。また、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【0040】
本実施形態では、中間支持部44を、上側支持部34及び下側支持部35の車両後方側に配置しているが、これに限らない。中間支持部44は、上側支持部34及び下側支持部35の車両前方側に配置されてもよい。この場合、前側リンク部材30のドア側の端部に中間支持部44を設けて、後側リンク部材40のドア側の端部に上側支持部34及び下側支持部35を設ければよい。
【0041】
また、中間支持部44を上側支持部34及び下側支持部35の車両前方に配置する場合には、ドアメンバ25の補強部を、中間支持部44から前側リンフォースメント27まで延びるように構成すればよい。また、この場合において、中央パネル23の凹部23aは、中央パネル23の前部に配置され、パネルビード23bを、凹部23aから中央パネル23の後端まで延びるように設けるとよい。
【0042】
また、本実施形態の補強部は、ドアメンバ25に一体的に設けられたメンバビード部25aとしているが、これに限らない。補強部は、ドアメンバ25とは別の補強部材としてもよい。この場合、補強部材を、ハット型の横断面を有する車両前後方向に延びる部材とし、ドアメンバ25の外面と、補強部材とにより閉断面を構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 サイドドア
10 インナパネル
11 窓枠部
12 パネル本体部
13 ベルトライン部
14 開口部
15 下側段差部
16 後側段差部
18 アウタパネル
21 縦部材
21a 前縦壁部(縦壁部)
21b 後縦壁部(縦壁部)
23 中央パネル
23a 凹部
23b パネルビード
25 ドアメンバ
25a メンバビード部(補強部)
27 前側リンフォースメント
28 後側リンフォースメント
30 前側リンク部材
31 前側本体部
32 前側車体連結部
33 回転軸
34 上側支持部
35 下側支持部
40 後側リンク部材
41 後側本体部
42 後側車体連結部
44 中間支持部
50 クォータインナパネル
51 ドア開口部