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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】スートブロワ用回転機
(51)【国際特許分類】
   F23J 3/00 20060101AFI20240208BHJP
   F01C 1/344 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F23J3/00 101Z
F01C1/344 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020102269
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021196103
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大樹
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-132538(JP,U)
【文献】特開昭61-271079(JP,A)
【文献】特開平03-249391(JP,A)
【文献】実開昭63-190501(JP,U)
【文献】特開昭57-175806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J3/00
F28G1/00-15/10
F01C1/344
F16K31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火力発電所のスートブロワの回転軸に取り付けられてランス管の移動又は回転に用いられるスートブロワ用回転機であって、
流量調整バルブが設置されたエアホースと、
このエアホースから供給される圧縮空気によって駆動されるエアモータと、
前記スートブロワの前記回転軸に対して着脱可能に取り付けられる連結具と、
この連結具を保持するとともに前記エアモータの出力軸に設置されて前記エアモータの回転を前記連結具に伝達する保持具と、を備え
前記スートブロワは、ボルト孔を有して前記回転軸に設置される接続具を備えており、
前記連結具は、
ボルト挿通孔を有するとともに、このボルト挿通孔を前記ボルト孔に一致させた状態で前記スートブロワの前記回転軸の中心軸上に円の中心が配置されるように前記接続具に一方の面が固定される円板と
この円板の他方の面に垂直に立設された円柱体と、
この円柱体の中心軸に垂直な断面が多角形をなし、前記円柱体の端面に設けられた突起部と、を備え、
前記円板の前記円の中心は前記円柱体の前記中心軸上に配置され、
前記保持具は、前記突起部が嵌挿される係合孔が前記連結具に面する側の端部に設けられていることを特徴とするスートブロワ用回転機。
【請求項2】
前記エアモータは、
内周面が円筒の側面を形成するロータ収容室と、
前記円筒の両端面が閉塞されるように前記ロータ収容室が内部に設けられた筐体と、
外周面に周方向へ均等な間隔をあけて形成された複数の嵌合溝を有し、前記ロータ収容室の内部に設置されるロータと、
前記ロータの両端に設けられ少なくとも一方が前記出力軸として機能する一対のシャフトと、
前記嵌合溝から突出した外側面が前記ロータ収容室の前記内周面に当接するように、前記ロータの半径方向へ摺動可能に少なくとも一部が前記嵌合溝の内部に配置されるベーンと、
前記筐体の内部に設置されて一対の前記シャフトをそれぞれ回転可能に支持する一対のベアリングと、を備え、
前記ロータの回転の中心軸は前記シャフトの回転の中心軸と同軸であって、かつ、前記ロータ収容室の前記内周面の中心軸に対して偏心した状態にあり、
前記ロータ収容室の前記内周面、前記ロータの前記外周面及び隣り合う2枚の前記ベーンによって区切られることによって形成される第1の空気室と第2の空気室に対して、それぞれ開口するように給気口及び排気口が前記ロータ収容室の前記内周面に設けられており、
前記ロータは、前記ロータ収容室の前記中心軸回りに一対の前記シャフトを介して一対の前記ベアリングによって回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1に記載のスートブロワ用回転機。
【請求項3】
直方体をなし、内部に細長い中空部が設けられたハウジングと、
前記中空部に開口するように前記ハウジングの第1の側面に設けられ排気管を介して前記排気口に接続された第1の出力ポート及び給気管を介して前記給気口に接続された第2の出力ポートと、
前記第1の側面に平行な第2の側面に対して前記中空部に開口するように設けられた第1の排気ポート、第2の排気ポート及び前記エアホースが接続された給気ポートと、
前記中空部の長手方向へ摺動可能に前記中空部の内部に設置され電磁力によって移動する弁体と、を備え、
前記給気ポートは、
前記第1の排気ポートと前記第2の排気ポートの間に設けられ、
前記第1の出力ポート及び前記第2の出力ポートは、
前記中空部の前記長手方向と平行な方向に見て、前記第1の排気ポートと前記給気ポートの間、及び前記給気ポートと前記第2の排気ポートの間にそれぞれ設けられており、
前記弁体は、
前記中空部に嵌合する第1の幅広部及び第2の幅広部と、
貫通孔を有し、前記第1の幅広部及び前記第2の幅広部が両端にそれぞれ設けられた幅狭部と、からなり、
前記第1の幅広部によって前記給気ポートから前記第1の出力ポートに至る流路が遮断され、かつ、前記第2の幅広部によって前記第2の排気ポートから前記第2の出力ポートに至る流路が遮断された状態で前記給気ポートから前記第2の出力ポートに至る流路が前記幅狭部の前記貫通孔を介して連通し、かつ、前記第1の排気ポートから前記第1の出力ポートに至る流路が連通するとともに、
前記第1の幅広部によって前記第1の排気ポートから前記第1の出力ポートに至る流路が遮断され、かつ、前記第2の幅広部によって前記給気ポートから前記第2の出力ポートに至る流路が遮断された状態で前記給気ポートから前記第1の出力ポートに至る流路が前記幅狭部の前記貫通孔を介して連通し、かつ、前記第2の排気ポートから前記第2の出力ポートに至る流路が連通するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載のスートブロワ用回転機。
【請求項4】
前記エアホースと前記エアモータを繋ぐ管路に介設されたリュブリケータを備え、
このリュブリケータによって、前記エアモータに供給される前記圧縮空気中に霧状の潤滑油が混入されることを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のスートブロワ用回転機。
【請求項5】
前記エアホースは前記火力発電所に既設の雑用空気配管であり、前記流量調整バルブは前記雑用空気配管に設けられる既設の雑用空気入口弁であり、前記雑用空気配管によって前記エアモータに前記圧縮空気を供給することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のスートブロワ用回転機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所における熱交換器の伝熱エレメントに付着した煤塵を除去するスートブロワの回転軸に取り付けられてランス管の移動又は回転に用いられるスートブロワ用回転機に係り、特に、圧縮空気を駆動源とし、既設の電動モータの代用品として利用可能なスートブロワ用回転機に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所で使用される空気予熱器では、炉内に設置された伝熱エレメントに煤や灰などの煤塵が付着する。この煤塵が堆積すると、熱交換器の伝熱効率が低下する原因となるため、スートブロワによって蒸気を吹き付けるなどして、煤塵を定期的に除去する必要がある。
【0003】
ここで、スートブロワについて図7を用いて説明する。図7(a)は回転再生式空気予熱器と呼ばれる熱交換器にスートブロワが設置された状態を模式的に示した図であり、図7(b)は図7(a)において破線で丸く囲まれた部分(E部)を拡大した図である。
なお、図7(a)では熱交換器の内部構造を見易くするために手前側の炉壁の図示を省略している。
【0004】
図7(a)に示すように、熱交換器51では、伝熱エレメント(図示せず)が収容されたロータ52がポスト53を中心として回転可能に円筒容器54の内部に設置されており、複数のひだを有する矩形状の板材からなる伝熱エレメントがポスト53を囲むとともにポスト53の回転の中心軸方向に対して板材が平行をなすように配置されている。なお、ロータ52はポスト53の中心軸が鉛直方向に対して平行となるように設置されている。
【0005】
熱交換器51では、セクター板(図示せず)によって完全に分離された状態のロータ52に対し、互いに逆方向から矢印で示すように流れ込んだ排出ガスと燃焼空気に伝熱エレメントを交互に接触させる構造となっている。伝熱エレメントを通過した排出ガスは、ロータ52の出口(排出ガスの出口側の気体流路)付近で最も温度が低下するため、ロータ52の低温側には凝縮した微粒子等が集中して付着する。この微粒子等を圧縮空気や乾燥蒸気によって吹き飛ばすために、ロータ52の低温側には、スートブロワ55が設置されている。
【0006】
スートブロワ55は、蒸気を供給するパイプが内部に設置されたランス管56と、このランス管56の基端部に設置された電動モータ57を備えている。ランス管56は、鉛直方向と平行をなす炉壁51aに形成された挿通孔から熱交換機51の内部に挿入されており、炉壁51aには、熱交換器51の内部においてランス管56を支持するための支持具58が設置されている。
【0007】
支持具58は、一端に転動体が回転自在に取り付けられるとともに他端がランス管56に連結された連結部材59と、上記転動体を転動可能に支持して連結部材59を長手方向に案内するレール60からなる。すなわち、ランス管56は支持具58によって水平方向へ移動可能に支持されており、電動モータ57によって駆動され、レール60に沿って水平方向へ移動する構造となっている。
ランス管56の基端部と電動モータ57は、図7(a)に破線で示すようにハウジング61によって囲まれている。また、熱交換器51の炉壁51aには、図7(b)に示すようにスートブロワ55のランス管56を貫入させる箇所において、ランス管56を覆うようにウォールボックス62が内面側と外面側にそれぞれ設置されている。
【0008】
電動モータ57が故障すると、スートブロワ55のランス管56が移動不能又は回転不能な状態になるため、スートブロワ55を稼働させることができず、熱交換器51における差圧が上昇する。そして、押込通風機の運転性能が上限に達してしまうと、発電機の運転を停止せざるを得なくなる。このような事態を避けるためには、故障した電動モータ57を速やかに新しい電動モータに交換することが必要である。
スートブロワ55に用いられる電動モータ57は、減速機のギヤ比に応じて回転数を調整できる構造でなければならないことから、汎用の電動モータで代用することは困難である。予備の電動モータを準備しておくという方法もあるが、スートブロワ専用の電動モータは高価であり、スートブロワごとに予備の電動モータを準備すると、設備費用が嵩んでしまうという問題がある。
【0009】
このような課題を解決するための技術について記載された文献は、現時点では発見されていない。なお、スートブロワについては、例えば、特許文献1に「スートブロワ装置およびそれを備えたボイラ装置」という名称で、運転時の蒸気温度特性を向上させることが可能なスートブロワ装置に関する発明が開示されている。
そして、特許文献1の明細書には、スートブロワ電動機の回転数を制御するスートブロワインバータが内蔵された駆動制御部を備えたスートブロワが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-111578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1には、スートブロワに設置されている電動モータが故障した場合に、その代用品として利用できる回転機構について何も記載されていない。したがって、特許文献1に開示された発明では、スートブロワに設置された電動モータの故障に伴って発生し得る発電機の停止という事態を回避するという課題を解決することができない。
【0012】
本発明は、上述の課題に対処してなされたものであり、製造コストが安く、スートブロワに設置されている電動モータが故障した場合に、その代用品として利用することが可能なスートブロワ用回転機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、第1の発明は、火力発電所のスートブロワの回転軸に取り付けられてランス管の移動又は回転に用いられるスートブロワ用回転機であって、流量調整バルブが設置されたエアホースと、このエアホースから供給される圧縮空気によって駆動されるエアモータと、スートブロワの回転軸に対して着脱可能に取り付けられる連結具と、この連結具を保持するとともにエアモータの出力軸に設置されてエアモータの回転を連結具に伝達する保持具と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
このような構造のスートブロワ用回転機においては、スートブロワの回転軸に連結具が取り付けられた状態でエアホースから圧縮空気をエアモータに供給すると、エアモータが回転し、この回転がエアモータの出力軸、保持具及び連結具を介してスートブロワの回転軸に伝達されるという作用を有する。また、エアモータの回転数は、エアホースの流量調整バルブを操作してエアモータへの圧縮空気の供給量を変更することによって調整されるという作用を有する。さらに、連結具がスートブロワの回転軸に対して着脱可能な構造であることから、連結具を介してエアモータの出力軸をスートブロワの回転軸に取り付ける作業及びエアモータの出力軸をスートブロワの回転軸から取り外す作業が容易である。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、エアモータは、内周面が円筒の側面を形成するロータ収容室と、円筒の両端面が閉塞されるようにロータ収容室が内部に設けられた筐体と、外周面に周方向へ均等な間隔をあけて形成された複数の嵌合溝を有し、ロータ収容室の内部に設置されるロータと、ロータの両端に設けられ少なくとも一方が出力軸として機能する一対のシャフトと、嵌合溝から突出した外側面がロータ収容室の内周面に当接するように、ロータの半径方向へ摺動可能に少なくとも一部が嵌合溝の内部に配置されるベーンと、筐体の内部に設置されて一対のシャフトをそれぞれ回転可能に支持する一対のベアリングと、を備え、ロータの回転の中心軸はシャフトの回転の中心軸と同軸であって、かつ、前記ロータ収容室の内周面の中心軸に対して偏心した状態にあり、ロータ収容室の内周面、ロータの外周面及び隣り合う2枚のベーンによって区切られることによって形成される第1の空気室と第2の空気室に対して、それぞれ開口するように給気口及び排気口がロータ収容室の内周面に設けられており、ロータは、中心軸回りに一対のシャフトを介して一対のベアリングによって回転可能に支持されていることを特徴とするものである。
なお、第1の空気室と第2の空気室は、給気口と排気口がそれぞれ別の空気室に設けられることを意味しており、第1の空気室と第2の空気室がロータの回転に伴って移動することを意味するものではない。すなわち、ロータの回転に伴って移動した空気室のうち、給気口又は排気口が設けられている個所に移動したものが、それぞれ第1の空気室及び第2の空気室となるのである。
【0016】
このような構造のスートブロワ用回転機においては、第1の発明の作用に加え、エアホースから給気口を経て第1の空気室に圧縮空気が供給されると、一方のベーンが圧縮空気に押されて移動し、ロータが回転するという作用を有する。このとき、ロータの回転に伴う遠心力によって、ベーンはロータの半径方向の外側に向かって嵌合溝から突出し、その外側面がロータ収容室の内周面に当接した状態になることで、第1の空気室や第2の空気室の気密性が確保される。
なお、第1の空気室に供給された圧縮空気は、ロータの回転に伴ってロータの外周面に沿って移動し、第2の空気室に設けられた排気口からエアモータの外部へ排出される。
【0017】
第3の発明は、第2の発明において、直方体をなし、内部に細長い中空部が設けられたハウジングと、中空部に開口するようにハウジングの第1の側面に設けられた第1の出力ポート及び第2の出力ポートと、第1の側面に平行な第2の側面に対して中空部に開口するように設けられた第1の排気ポート、第2の排気ポート及び給気ポートと、中空部の長手方向へ摺動可能に中空部の内部に設置され電磁力によって移動する弁体と、を備え、給気ポートは、第1の排気ポートと第2の排気ポートの間に設けられ、第1の出力ポート及び第2の出力ポートは、中空部の長手方向と平行な方向に見て、第1の排気ポートと給気ポートの間、及び給気ポートと第2の排気ポートの間にそれぞれ設けられており、弁体は、中空部に嵌合する第1の幅広部及び第2の幅広部と、貫通孔を有し、第1の幅広部及び第2の幅広部が両端にそれぞれ設けられた幅狭部と、からなり、第1の幅広部によって給気ポートから第1の出力ポートに至る流路が遮断され、かつ、第2の幅広部によって第2の排気ポートから第2の出力ポートに至る流路が遮断された状態で給気ポートから第2の出力ポートに至る流路が幅狭部の貫通孔を介して連通し、かつ、第1の排気ポートから第1の出力ポートに至る流路が連通するとともに、第1の幅広部によって第1の排気ポートから第1の出力ポートに至る流路が遮断され、かつ、第2の幅広部によって給気ポートから第2の出力ポートに至る流路が遮断された状態で給気ポートから第1の出力ポートに至る流路が幅狭部の貫通孔を介して連通し、かつ、第2の排気ポートから第2の出力ポートに至る流路が連通するように形成されていることを特徴とするものである。
なお、第3の発明において、直方体をなすハウジングには、略直方体をなすもの含まれるものとする。
【0018】
このような構造のスートブロワ用回転機においては、第2の発明の作用に加え、給気ポートにエアホースを接続するとともに、第1の出力ポート及び第2の出力ポートと排気口及び給気口をそれぞれ接続した後、弁体を移動させると、エアホースから送出された圧縮空気が給気ポート及び第2の出力ポートを経由して給気口からエアモータ内に供給されるとともに、エアモータ内の空気が排気口から第1の出力ポートを経由して第1の排気ポートから排出される状態と、エアホースから送出された圧縮空気が給気ポート及び第1の出力ポートを経由して排気口からエアモータ内に供給されるとともに、エアモータ内の空気が給気口から第2の出力ポートを経由して第2の排気ポートから排出される状態が相互に切り換わるという作用を有する。
第2の発明においてロータ収容室内に供給される圧縮空気が排気口からロータ収容室内に供給されると、ロータは逆方向に回転する。すなわち、第3の発明においては、弁体を操作することで、ロータの回転方向が切り換わるという作用を有する。
【0019】
第4の発明は、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明において、スートブロワは、ボルト孔を有して回転軸に設置される接続具を備えており、連結具はボルト挿通孔を有するとともに、このボルト挿通孔をボルト孔に一致させた状態でスートブロワの回転軸の中心軸に円の中心が配置されるように接続具に一方の面が固定される円板と、この円板の他方の面に垂直に立設された円柱体と、この円柱体の中心軸に垂直な断面が多角形をなし、円柱体の端面に設けられた突起部と、を備え、円板の円の中心は円柱体の中心軸上に配置され、保持具は、突起部が嵌挿される係合孔が連結具に面する側の端部に設けられていることを特徴とするものである。
このような構造のスートブロワ用回転機においては、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の作用に加えて、ボルトを用いて円板を接続具に固定することにより連結具がスートブロワの回転軸に対して容易に取り付けられるとともに、ボルトを取り外すことにより連結具がスートブロワの回転軸から容易に取り外し可能な状態になるという作用を有する。また、第4の発明に係るスートブロワ用回転機は、連結具を保持部から取り外すことにより、係合孔をソケットとするエアーレンチとして機能する。また、係合孔にドライバービットを嵌挿した場合、上記スートブロワ用回転機は、エアドライバーとして機能する。
【0020】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、エアホースとエアモータを繋ぐ管路に介設されたリュブリケータを備え、このリュブリケータによって、エアモータに供給される圧縮空気中に霧状の潤滑油が混入されることを特徴とするものである。
このような構造のスートブロワ用回転機においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加えて、ロータ収容室の隅々にまで潤滑油が行き渡るため、ロータの焼き付けが発生し難いという作用を有する。
【0021】
第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明において、エアホースは火力発電所に既設の雑用空気配管であり、流量調整バルブは雑用空気配管に設けられる既設の雑用空気入口弁であり、雑用空気配管によってエアモータに圧縮空気が供給されることを特徴とするものである。
このような構造のスートブロワ用回転機においては、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の作用に加えて、雑用空気入口弁が流量調整バルブとして機能するため、雑用空気配管はエアホースと同様の作用を有する。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、エアモータの回転がスートブロワの回転軸に伝達されることから、故障した既設の電動モータの代わりに第1の発明に係るスートブロワ用回転機を用いることができる。
なお、スートブロワのランス管の移動や回転に用いられる既設の電動モータは、減速機のギヤ比に応じて回転数を調整できる構造でなければならないため、汎用の電動モータを上記電動モータの代わりに使用することは困難である。しかしながら、第1の発明では、エアホースの流量調整バルブの開度を調整することにより、エアモータの回転数を所望の値に設定できるため、汎用の電動モータとは異なり、故障した既設の電動モータの代用品として利用することが可能である。
また、スートブロワの回転軸にエアモータの出力軸を取り付けたり、スートブロワの回転軸からエアモータの出力軸を取り外したりする作業が容易であることから、故障した既設の電動モータとの交換を安価に、かつ、効率よく行うことができる。
さらに、スートブロワ用の電動モータが設置されている場所は、エアノズルから噴射される圧縮空気を吹き付けるなどして粉塵等の清掃を行う目的で、エアノズルを取り付け可能であって、かつ、流量調整バルブを有するエアホースが設置されている場合が多い。この場合、第1の発明によれば、既設の電動モータとは異なり、モータの回転数を調整する機構を新たに製造する必要がないため、製造コストが大幅に削減される。
【0023】
第2の発明によれば、第1の発明の効果に加え、エアモータの小型化及び軽量化が可能であり、しかも、エアモータを安価に製造できるという効果を奏する。
【0024】
第3の発明によれば、弁体を操作することでロータの回転方向が切り換わるため、第2の発明の効果に加え、エアホースを給気管から排気管に接続し直す作業を行うことなく、容易にランス管を逆方向に移動させたり、逆回転させたりすることができるという効果を奏する。
【0025】
第4の発明によれば、第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明の効果に加え、スートブロワの回転軸にエアモータの出力軸を取り付けたり、スートブロワの回転軸からエアモータの出力軸を取り外したりする作業が容易であり、故障した既設の電動モータとの交換を安価に、かつ、効率よく行うことができるという第1の発明の効果がより一層発揮される。また、第4の発明は、既設の電動モータが正常に稼働している場合には、エアレンチやエアドライバーとして利用できるため、経済性に優れている。
【0026】
第5の発明によれば、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の効果に加え、ロータの焼き付けによるエアモータの故障を防ぐことができるという効果を奏する。
【0027】
第6の発明では、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の効果に加え、雑用空気配管という既存の設備を用いること、及び、電動モータの場合のようにモータの回転数を調整する機構を新たに設ける必要がないなどの理由から、製造コストが大幅に削減されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係るスートブロワ用回転機の外観の一例を示す斜視図である。
図2】(a)は図1に示したスートブロワ用回転機を構成する連結具の外観斜視図であり、(b)は同図(a)におけるA方向矢視図である。
図3】(a)は図1に示したスートブロワ用回転機を構成するエアモータの外観斜視図であり、(b)は同図(a)におけるB-B線矢視断面図である。
図4】(a)は図3(a)に示したエアモータの平面図であり、(b)は同図(a)におけるC-C線矢視断面図である。
図5】(a)は図1に示したスートブロワ用回転機にソレノイドバルブが取り付けられた状態を示す平面図であり、(b)は同図(a)に示したソレノイドバルブの外観斜視図であり、(c)は同図(a)に示したエアモータの断面図である。
図6】(a)及び(b)は図5(b)におけるD-D線矢視断面図であり、(c)は同図(a)又は(b)における弁体を拡大して示した外観図である。
図7】(a)は回転再生式空気予熱器にスートブロワが設置された状態を示した模式図であり、(b)は同図(a)におけるE部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明のスートブロワ用回転機は、ランス管の移動又は回転に用いられる既設の電動モータが故障した場合にその代用品としてスートブロワに設置されるものである。以下、その具体的な構造と、それに基づいて発揮される作用及び効果について、図1乃至図6を参照しながら詳細に説明する。
【実施例
【0030】
図1は本発明のスートブロワ用回転機の外観斜視図であり、スートブロワに取り付けられた状態を示している。図2(a)は図1に示したスートブロワ用回転機を構成する連結具の外観を示した斜視図であり、図2(b)は図2(a)におけるA方向矢視図である。
なお、図1では連結具をスートブロワに固定するために用いられる締結具の図示を省略している。また、図7を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付することにより、それらの説明の一部を適宜省略する。
【0031】
本発明のスートブロワ用回転機1は、電動モータ57(図7(a)参照)の代わりに用いられるものであり、図1に示すように、電動モータ57の回転軸とスートブロワ55の回転軸を繋ぐ接続具63にボルト(図示せず)を用いて固定される連結具2と、この連結具2を介して接続具63に連結されるエアモータ3を備えている。
エアモータ3は、略直方体をなす中空の筐体3aと、筐体3aの平行な2つの側面にそれぞれ垂直に立設された給気管4及び排気管5と、筐体3aの残りの2つの側面のうちの一方に対して垂直に立設された保持部6と、上記残りの2つの側面のうちの他方に設けられたシャフトカバー7を備えている。
また、給気管4はエアホース8を接続可能に構成されており、エアホース8には流量調整バルブ9が設置されている。すなわち、エアモータ3の駆動源である圧縮空気はエアホース8を通して供給される。なお、圧縮空気の供給量は、流量調整バルブ9の上部に設けられた摘み9aを手で回して、内蔵された弁体(図示せず)の開度を変えることによって調整される。
【0032】
連結具2は、図2(a)及び図2(b)に示すように大径部と小径部からなる段付き構造をなす円柱体2aと、円柱体2aの大径部側の端面に設けられた円板2bと、細長い直方体をなしており、円柱体2aの中心軸に長手方向が平行をなし、かつ、長手方向に直交する断面によって形成される矩形の中心が円柱体2aの中心軸上に配置されるように円柱体2aの小径部側の端面に設けられた突起部2cからなる。
円板2bは、円の中心が円柱体2aの中心軸上に配置されるように、その片面に円柱体2aが垂直に立設されるとともに、4つのボルト挿通孔2dが円の中心に対して点対称をなすように設けられている。
そして、連結具2は、スートブロワ55の回転軸の中心軸に円柱体2aの中心軸が一致するように接続具63に取り付けられる。なお、4つのボルト挿通孔2dは、円柱体2aが立設されていない側の面を接続具63の当接面に接触させるようにして円板2bが接続具63に取り付けられる際に、接続具63に設けられた4つのボルト挿通孔(図示せず)に符合する位置にそれぞれ設けられている。
【0033】
図3(a)はエアモータ3の外観斜視図であり、図3(b)は図3(a)におけるB-B線矢視断面を拡大した図である。また、図4(a)はエアモータ3の平面図であり、図4(b)は図4(a)におけるC-C線矢視断面を拡大した図である。なお、嵌合溝12とベーン13については、図が煩雑になるのを避けるため、代表的なものについてのみ符号を付している。
図3(a)及び図3(b)並びに図4(a)及び図4(b)に示すように、エアモータ3の筐体3aの内部には、内周面10aが円筒の側面を形成するロータ収容室10が設けられている。また、ロータ収容室10aの内部には、外周面11aに周方向へ互いに均等な間隔をあけた状態で半径方向へ形成された4つの嵌合溝12を有するロータ11が回転可能に設置されており、嵌合溝12の内部には、板状をなすベーン13の少なくとも一部が配置されている。なお、ロータ収容室10は円筒の両端面に相当する部分が筐体3aによって閉塞されている。
【0034】
ロータ11は、回転の中心軸がロータ収容室10の内周面の中心軸に対して偏心した状態となるように配置されている。5つの嵌合溝12は、ロータ11の中心軸と平行をなし、かつ、ロータ11の外周面11aから中心軸へ向かうようにそれぞれ放射状に形成されている。
ベーン13は、ロータ11の中心軸から遠い側の外側面13aと、ロータ11の中心軸に近い側の内側面13bを有しており、嵌合溝12の内部においてロータ11の半径方向へ摺動可能となっている。
【0035】
ロータ11の両端に設けられた一対のシャフト14,14は、一対のベアリング15,15によってそれぞれ回転可能に支持されており、筐体3aから突出した一方のシャフト14の端部は、シャフトカバー7によって覆われている。
保持部6は、段付き構造の略円柱状をなすとともに連結具2の突起部2cが嵌挿される係合孔16bが端面16aに設けられたチャック16と、筐体3aの側面に固定された状態でチャック16を回転可能に保持するスリーブ17からなり、チャック16は、中心軸をシャフト14の中心軸に一致させた状態で筐体3aから一部が突出した他方のシャフト14に連結されている。
すなわち、ロータ11の中心軸は一対のシャフト14,14の回転の中心軸と同軸であり、ロータ11は、中心軸回りに回転可能に一対のシャフト14,14を介して一対のベアリング15,15によって支持されている。
このような構造により、スートブロワ用回転機1は、係合孔16bに突起部2cが嵌挿された状態でロータ11が回転すると、チャック16と連結具2が一体となって回転するという作用を有する。
なお、筐体3aから一部が突出した上記シャフト14は、エアモータ3の出力軸としての機能を有している。
【0036】
ロータ収容室10の内周面10aには、給気口18a、排気口19a及び残圧排気口20aが設けられており、エアモータ3の筐体3aには、給気管4の開口部と給気口18aを繋ぐ給気流路18と、排気管5の開口部と排気口19aを繋ぐ排気流路19と、残圧排気口20aと排気流路19の途中部分を繋ぐ残圧排気流路20が形成されている。
ロータ収容室10の内周面10aとロータ11の外周面11aの間には、外側面13aがロータ収容室10の内周面10aに当接した状態にある5枚のベーン13によって区切られた5つの空気室21a~21eが形成される。
なお、給気口18aと残圧排気口20aは互いに所定の間隔をあけた状態で、ロータ収容室10の内周面10aとロータ11の外周面11aの間隔が最も狭い空気室21a,21eに対してそれぞれ開口するように設けられており、排気口19aはロータ収容室10の内周面10aとロータ11の外周面11aの間隔が最も広い空気室21cに対して開口するように設けられている。
【0037】
給気管4によって給気口18aから空気室21aに圧縮空気が供給されると、ベーン13が圧縮空気に押されて移動し、ロータ11が矢印Fで示す方向へ回転する。このロータ11の回転に伴う遠心力によって、ベーン13はロータ11の半径方向の外側に向かって嵌合溝12から突出し、その外側面13aがロータ収容室10の内周面10aに当接した状態になる。
空気室21aに供給された後、ロータ11の回転に伴ってロータ11の外周面11aに沿って移動する圧縮空気は、最終的に排気口19aから排気流路19と排気管5を経由してエアモータ3の外部へ排出される。
また、空気室21cに残留した空気は、ロータ11の外周面11aに沿って移動した後、残圧排気口20aから残圧排気流路20を通って排気流路19に流入し、上述の圧縮空気とともに排気管5を経由してエアモータ3の外部へ排出される。
【0038】
このような構造により、スートブロワ用回転機1においては、エアホース8から圧縮空気をエアモータ3に供給すると、エアモータ3が回転し、この回転がエアモータ3の出力軸、保持具6及び連結具2を介してスートブロワ55の回転軸に伝達される。そして、エアモータ3の回転数は、エアホース8の流量調整バルブ9を操作してエアモータ3への圧縮空気の供給量を変更することによって調整される。また、連結具2がスートブロワ55の回転軸に対して着脱可能な構造であることから、連結具2を介してエアモータ3の出力軸をスートブロワ55の回転軸に取り付ける作業及びエアモータ3の出力軸をスートブロワ55の回転軸から取り外す作業が容易である。
【0039】
上述のとおり、スートブロワ用回転機1では、エアモータ3の回転がスートブロワ55の回転軸に伝達されることから、故障した既設の電動モータ57の代わりに用いることができる。また、スートブロワ用回転機1は、連結具2を保持部6から取り外すと、係合孔16bをソケットとするエアーレンチとして機能する。さらに、係合孔16bにドライバービットを嵌挿した場合、スートブロワ用回転機1は、エアドライバーとして機能する。
なお、スートブロワ55のランス管56の移動や回転に用いられる既設の電動モータ57は、減速機のギヤ比に応じて回転数を調整できる構造でなければならないため、汎用の電動モータをその代わりに使用することは困難である。しかしながら、スートブロワ用回転機1では、エアホース8の流量調整バルブ9の開度を調整することにより、エアモータ3の回転数を所望の値に設定できるため、汎用の電動モータとは異なり、故障した既設の電動モータ57の代用品として利用することができる。
【0040】
また、スートブロワ55の回転軸にエアモータ3の出力軸を接続したり、スートブロワ55の回転軸とエアモータ3の出力軸の接続状態を解消したりする作業が容易であることから、故障した既設の電動モータ57との交換を安価に、かつ、効率よく行うことができる。
さらに、火力発電所内には建屋内で行う作業で必要な圧縮空気を供給する雑用空気配管が設けられている。スートブロワ用の電動モータ57が設置されている場所においても同様で、エアガンから噴射される圧縮空気を吹き付けるなどして粉塵等の清掃を行う目的で、雑用空気入口弁を有し、先端にエアガンを取り付け可能に形成された雑用空気配管が設けられている。配管継手を用いれば、給気管4に雑用空気配管を接続することは容易である。この場合、雑用空気入口弁が流量調整バルブ9として機能するため、雑用空気配管はエアホース8と同様の作用を有する。このようにスートブロワ用回転機1では、雑用空気配管という既存の設備を用いることが可能であり、電動モータ57の場合のようにモータの回転数を調整する機構を新たに設ける必要がないため、製造コストが大幅に削減される。
加えて、スートブロワ用回転機1は、エアモータ3がベーン13を備えた構造であるため、小型化及び軽量化が可能である。したがって、製造コストを安くすることができる。
【0041】
図5(a)はエアモータ3の代わりにエアモータ27を備えたスートブロワ用回転機1にソレノイドバルブ22が取り付けられた状態を示しており、図5(b)はソレノイドバルブ22の外観を示している。また、図5(c)はエアモータ3の変形例に係るエアモータ27の断面図であり、図4(b)に相当する図である。さらに、図6(a)及び図6(b)は、いずれも図5(b)におけるD-D線矢視断面図であり、図6(c)は図6(a)又は図6(b)における弁体24を拡大して示した外観図である。
図5(a)及び図5(b)並びに図6(a)及び図6(b)に示すように、ソレノイドバルブ22は、細長い直方体をなす中空のハウジング23に内蔵された弁体24を電磁力によって移動させることで流体の流れ方向を切り換える構造となっている。ハウジング23の内部には、弁体24を側面23a,23bと平行な方向へ案内する中空部23cが設けられている。また、ハウジング23には中空部23cに繋がるように、給気管4や排気管5が接続される第1の出力ポート25a及び第2の出力ポート25bが中空部23cの長手方向に沿って側面23aに設けられるとともに、側面23aと平行な側面23bには、第1の排気ポート26b、給気ポート26a及び第2の排気ポート26cが中空部23cの長手方向に沿って設けられている。
【0042】
給気ポート26aは中空部23cの長手方向の略中央に設けられており、第1の排気ポート26b及び第2の排気ポート26cは給気ポート26aを間に挟むような位置に設けられている。また、第1の出力ポート25a及び第2の出力ポート25bは、中空部23cの長手方向と平行な方向に見て、第1の排気ポート26bと給気ポート26aの間、及び給気ポート26aと第2の排気ポート26cの間にそれぞれ設けられている。
【0043】
図5(c)に示すように、エアモータ27は圧縮空気がロータ収容室10に給気管4から供給される場合と排気管5から供給される場合とで、ロータ11の回転性能に差が生じないように、給気口18aと排気口19aがロータ収容室10の中心軸とロータ11の中心軸を含む平面に関して対称に設けられるとともに、残圧排気流路20及び残圧排気口20aが設けられていない構造となっている。
なお、給気管4からロータ収容室10に供給された圧縮空気は、矢印Kで示す方向にロータ11を回転させた後、排気口19aから排気流路19を通って筐体27aの外部に排出される。一方、排気管5からロータ収容室10に供給された圧縮空気は、矢印Kで示す方向とは逆の方向にロータ11を回転させた後、給気口18aから給気流路18を通って筐体27aの外部に排出される。
【0044】
図6(c)に示すように、弁体24は、中空部23cに嵌合する第1の幅広部24a及び第2の幅広部24bが幅狭部24cの両端に設けられた段付き構造をなしており、幅狭部24cには、貫通孔24dが形成されている。
そして、ソレノイドバルブ22は、第1の幅広部24aによって給気ポート26aから第1の出力ポート25aに至る流路が遮断され、かつ、第2の幅広部24bによって第2の排気ポート26cから第2の出力ポート25bに至る流路が遮断された状態で給気ポート26aから第2の出力ポート25bに至る流路が幅狭部24cの貫通孔24dを介して連通し、かつ、第1の排気ポート26bから第1の出力ポート25aに至る流路が連通するとともに(図6(a)参照)、第1の幅広部24aによって第1の排気ポート26bから第1の出力ポート25aに至る流路が遮断され、かつ、第2の幅広部24bによって給気ポート26aから第2の出力ポート25bに至る流路が遮断された状態で給気ポート26aから第1の出力ポート25aに至る流路が幅狭部24cの貫通孔24dを介して連通し、かつ、第2の排気ポート26cから第2の出力ポート25bに至る流路が連通するように形成されている(図6(b)参照)。
【0045】
スートブロワ用回転機1において、給気ポート26aにエアホース8を接続し、図5(a)に示すように給気管4を介して第2の出力ポート25bと給気口18a(図4(b)参照)を接続するとともに排気管5を介して第1の出力ポート25aと排気口19a(図4(b)参照)を接続すると、弁体24が図6(a)に示した位置にある場合、エアホース8から送出された圧縮空気が矢印Gで示すように給気ポート26a及び第2の出力ポート25bを経由して給気口18aからエアモータ27に供給されるとともに、排気口19aからソレノイドバルブ22に送出されたエアモータ27の内部の空気が矢印Hで示すように第1の出力ポート25aを経由して第1の排気ポート26bからソレノイドバルブ22の外へ排出される。
一方、弁体24が図6(b)に示した位置にある場合、エアホース8から送出された圧縮空気が矢印Iで示すように給気ポート26a及び第1の出力ポート25aを経由して排気口19aからエアモータ27に供給されるとともに、給気口18aからソレノイドバルブ22に送出されたエアモータ27の内部の空気が矢印Jで示すように第2の出力ポート25bを経由して第2の排気ポート26cからソレノイドバルブ22の外へ排出される。
なお、本実施例では、給気ポート26aに接続されたエアホース8に流量調整バルブ9が設けられているが、エアホース8の代わりに、給気管4と排気管5に対して流量調整バルブ9がそれぞれ設けられた構成とすることもできる。また、通常、排気管5は給気管4に比べて内部を流れる空気の圧力が低く、給気管4ほどの強度を必要としないため、排気管5の肉厚は給気管4の肉厚よりも薄い場合が多い(図1図3及び図4を参照)。しかしながら、上述のようにソレノイドバルブ22を用いる場合、エアモータ3に供給される圧縮空気が排気管5の内部を流れるようになるため、排気管5にも給気管4と同程度の強度が必要になる。そこで、図5(a)では、排気管5の肉厚を給気管4と同程度にしているのである。
【0046】
スートブロワ用回転機1において、ロータ収容室10に対して給気口18aから圧縮空気が供給される場合と、排気口19aから供給される場合とでは、ロータ11の回転方向が逆になる。すなわち、スートブロワ55のランス管56を逆方向に移動させたり、逆回転させたりするためには、給気管4に接続されたエアホース8を給気管4から外して排気管5に接続し直す必要がある。
これに対し、ソレノイドバルブ22を用いることによれば、弁体24を操作することでロータ11の回転方向が切り換わるため、エアホース8を給気管4から排気管5に接続し直す作業を行うことなく、容易にランス管56を逆方向に移動させたり、逆回転させたりすることが可能である。
【0047】
なお、本実施例では、エアモータ3やエアモータ27がベーン13を備えた構造となっているが、本発明のスートブロワ用回転機を構成するエアモータは、このような構造に限定されるものではない。例えば、エアモータを、給気口と排気口が設けられた筐体と、この筐体の内部に収容される回転羽根と、この回転羽根の回転軸に取り付けられるソケット部と、回転羽根にオイルを少しずつ供給して回転羽根の焼き付けを防ぐリュブリケータ(潤滑油を霧化して添加する機器:lubricator)を備え、ソケット部を介してエアモータの回転が連結具に伝達される構造とすることもできる。この場合、エアホースを給気口に接続して圧縮空気を筐体内に供給すると、圧縮空気によって回転した回転羽根の回転駆動力がソケット部を介してスートブロワの回転軸に伝達される。したがって、エアモータがこのような構造であっても、既に説明したスートブロワ用回転機1の作用及び効果は同様に発揮される。
また、前述のベーン13を備えたエアモータ3やエアモータ27の給気管4にリュブリケータを介設し、エアモータ3やエアモータ27に供給される圧縮空気の中に適量の潤滑油を霧状にして混入させる構造とすることもできる。このような構造によれば、ロータ収容室10の隅々にまで潤滑油が行き渡るため、ロータ11の焼き付けによるエアモータ3やエアモータ27の故障を防ぐことができる。
【0048】
また、突起部2cは細長い直方体をなしているが、このような構造に限定されるものではなく、例えば、突起部2cは、円柱体2aの中心軸に垂直な断面が多角形をなすとともに、チャック16の端面16aに設けられて突起部2cが嵌挿される係合孔16bも中心軸に垂直な断面が多角形をなす構造であっても良い。このような構造であってもロータ11の回転に伴ってチャック16と連結具2が一体となって回転するという既に説明したスートブロワ用回転機1の作用及びそれに基づく効果は同様に発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のスートブロワ用回転機は、伝熱エレメントに付着した煤塵を除去するために熱交換器に設置されたスートブロワにおいて、既設の電動モータが故障した場合に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…スートブロワ用回転機 2…連結具 2a…円柱体 2b…円板 2c…突起部 2d…ボルト挿通孔 3…エアモータ 3a…筐体 4…給気管 5…排気管 6…保持部 7…シャフトカバー 8…エアホース 9…流量調整バルブ 9a…摘み 10…ロータ収容室 10a…内周面 11…ロータ 11a…外周面 12…嵌合溝 13…ベーン 13a…外側面 13b…内側面 14…シャフト 15…ベアリング 16…チャック 16a…端面 16b…係合孔 17…スリーブ 18…給気流路 18a…給気口 19…排気流路 19a…排気口 20…残圧排気流路 20a…残圧排気口 21a~21e…空気室 22…ソレノイドバルブ 23…ハウジング 23a,23b…側面 23c…中空部 24…弁体 24a…第1の幅広部 24b…第2の幅広部 24c…幅狭部 24d…貫通孔 25a…第1の出力ポート 25b…第2の出力ポート 26a…給気ポート 26b…第1の排気ポート 26c…第2の排気ポート 27…エアモータ 27a…筐体 51…熱交換器 51a…炉壁 51b…挿通孔 52…ロータ 53…ポスト 54…円筒容器 55…スートブロワ 56…ランス管 57…電動モータ 58…支持具 59…連結部材 60…レール 61…ハウジング 62…ウォールボックス 63…接続具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7