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特許7432170アテレクトミーシステムの電流検出、処理および表示
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】アテレクトミーシステムの電流検出、処理および表示
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A61B17/3207
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2023546544
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 US2022070832
(87)【国際公開番号】W WO2022183208
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】63/153,689
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/652,381
(32)【優先日】2022-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523073404
【氏名又は名称】カーディオウヴァスキュラァ システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(72)【発明者】
【氏名】エラリング,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ドラクスラー,ジェイコブ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ティルストラ,マシュー タブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】ヒギンス,ジョセフ ピー.
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520280(JP,A)
【文献】特表2021-506367(JP,A)
【文献】特表2019-518486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/073447(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0286791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 13/00-18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長く可撓性を有するドライブシャフトと、前記ドライブシャフトの遠位端またはその周辺に配置された研削セクションとを備え、前記ドライブシャフトは、前記ドライブシャフトにトルクを印加することにより、電気モータによって近位端で回転駆動される回転式アテレクトミー装置と、
前記電気モータと作動可能に接続され、メモリと、予めプログラムされた実行可能な命令を有し、前記メモリと作動可能に接続されたプロセッサと、前記メモリ、プロセッサおよび/またはモータと作動可能に接続され、前記電気モータにより生成された電流を検出するように構成された電流センサとを有する制御ユニットと、
前記制御ユニットと接続されたディスプレイと、を備え、
前記制御ユニットは、リアルタイムで、前記検出された電流対時間の個々のプロットを生成するように構成され、前記検出された電流対時間の複数の前記生成された個々のプロットのそれぞれが、病変部を横断する前記研削セクションを有する複数の回転式アテレクトミーの治療通過のそれぞれについて、リアルタイムで前記ディスプレイに重ね合わされて表示され、
最大モータ電流閾値および最大電流変化率閾値が設定され、前記メモリまたはプロセッサ内に格納され、
前記検出された電流が前記最大モータ電流閾値および前記最大電流変化率閾値の両方を同時に超える場合、前記プロセッサは、前記病変部内の前記研削セクションの差し迫った失速を検出する命令を実行するように構成されている、医療機器システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記ディスプレイに警告を表示することによって、前記検出された差し迫った失速を知らせる命令を実行するように構成されている、請求項1に記載の医療機器。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記電気モータが前記ドライブシャフトへの回転トルクの印加を全て停止するように、前記電気モータへの電圧を自動的に遮断する命令を実行するように構成されている、請求項1に記載の医療機器。
【請求項4】
前記検出された電流対時間の前記重ね合わせて表示された複数の個々のプロットは、前記アテレクトミー回転治療の進行状況を判定するために術者によって使用される、請求項1に記載の医療機器システム。
【請求項5】
前記プロセッサは、前記病変部を通る前記治療通過中の前記研削セクションの軸方向位置の変化を検出するように構成された線形位置センサと作動可能に接続され、前記プロセッサは、前記複数の治療通過のそれぞれについて、前記検出された電流対検出された軸方向位置のリアルタイムの個々のプロットを生成する命令を実行するように構成されている、請求項1に記載の医療機器システム。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記検出された電流対検出された軸方向位置の前記生成された個々のプロットのそれぞれを重ね合わせ、前記検出された電流対検出された軸方向位置の前記重ね合わせたプロットをリアルタイムで前記ディスプレイに表示する命令を実行するように構成されている、請求項5に記載の医療機器。
【請求項7】
前記検出された電流対軸方向位置の前記重ね合わせた複数の個々のプロットは、前記アテレクトミー回転治療の進行状況を判定するために術者によって使用される、請求項4に記載の医療機器システム。
【請求項8】
前記制御ユニットは、一定期間にわたる前記検出された軸方向位置に基づいて、前記回転式アテレクトミー装置の複数の線形移動速度を計算するようにさらに構成されている、請求項5に記載の医療機器システム。
【請求項9】
前記制御ユニットは、複数の前記治療通過について、前記検出された電流対線形移動速度のリアルタイムの個々のプロットを生成し、表示するようにさらに構成されている、請求項8に記載の医療機器システム。
【請求項10】
前記制御ユニットは、所定の最大電流閾値をさらに有し、前記検出された電流が前記最大電流閾値を超えた場合、前記制御ユニットは、前記アテレクトミー装置の前記線形移動速度を減少させるように術者に警告するように構成されている、請求項8に記載の医療機器システム。
【請求項11】
前記制御ユニットは、電流変化率を監視するように構成され、所定の最大電流変化率をさらに有し、前記所定の最大電流変化率を超えた場合、前記制御ユニットは、前記線形移動速度を減少させ、前記電気モータの回転速度を減少させ、および/または前記電気モータへの電力/電圧を遮断するように術者に警告するように構成されている、請求項8に記載の医療機器システム。
【請求項12】
前記制御ユニットは、自動的に前記モータの回転速度を減少させる、および/または前記電気モータへの電圧を遮断するように構成されている、請求項10に記載の医療機器システム。
【請求項13】
細長く可撓性を有するドライブシャフトと、前記ドライブシャフトの遠位端またはその周辺に配置された研削セクションとを有し、前記ドライブシャフトは、前記ドライブシャフトにトルクを印加することにより、電気モータによって近位端で回転駆動される回転式アテレクトミー装置と、
前記電気モータと作動可能に接続され、メモリと、前記メモリと作動可能に接続されたプロセッサと、前記メモリおよび/またはプロセッサと作動可能に接続され、前記電気モータにより生成された電流を検出するように構成された電流センサとを有する制御ユニットと、
前記制御ユニットと接続されたディスプレイと、を備え、
前記プロセッサは、リアルタイムで、前記検出された電流対時間の個々のプロットを生成する命令を発行するように構成され、前記検出された電流対時間の複数の前記生成された個々のプロットのそれぞれが、病変部を横断する前記研削セクションを有する複数の回転式アテレクトミーの治療通過のそれぞれについて、リアルタイムで前記ディスプレイに重ね合わされて表示され、
前記プロセッサは、前記検出されたモータ電流に基づいて治療の進行状況を判定し、前記判定された前記治療の前記進行状況を前記ディスプレイに表示する命令を実行するようにさらに構成されている、医療機器システム。
【請求項14】
前記プロセッサは、前記検出されたモータ電流に基づいて前記治療を修正するための推奨事項を提供する命令を実行するようにさらに構成されている、請求項13に記載の医療機器システム。
【請求項15】
前記提供された推奨事項は、モータの回転速度を減少させること、回転速度を増加させること、線形横断速度を増加させること、線形横断速度を減少させること、および前記モータの回転を停止させること、から構成される群のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の医療機器システム。
【請求項16】
前記判定された進行状況は、前記治療が完了したことである、請求項13に記載の医療機器システム。
【請求項17】
前記提供された推奨事項は、少なくとも1つの追加の治療通過の実行を含む、請求項14に記載の医療機器システム。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記病変部を通る前記治療通過中の前記研削セクションの軸方向位置の変化を検出するように構成された線形位置センサと作動可能に接続され、前記プロセッサは、前記複数の回転式アテレクトミーの治療通過のそれぞれについて、前記検出された電流対検出された軸方向位置のリアルタイムの個々のプロットを生成する命令を実行するように構成されている、請求項13に記載の医療機器システム。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記検出されたモータ電流に基づいて前記治療を修正するための推奨事項を提供する命令を実行するようにさらに構成されている、請求項18に記載の医療機器システム。
【請求項20】
前記提供された推奨事項は、モータの回転速度を減少させること、回転速度を増加させること、線形横断速度を増加させること、線形横断速度を減少させること、前記モータの回転を停止させること、から構成される群のうちの少なくとも1つを含む、請求項18に記載の医療機器システム。
【請求項21】
前記判定された進行状況は、前記治療が完了したことである、請求項18に記載の医療機器システム。
【請求項22】
前記提供された推奨事項は、少なくとも1つの追加の治療通過の実行を含む、請求項13に記載の医療機器システム。
【請求項23】
前記制御ユニットは、一定期間にわたる前記研削セクションの前記検出された軸方向位置に基づいて、前記回転式アテレクトミー装置の複数の線形移動速度を計算するようにさらに構成されている、請求項18に記載の医療機器システム。
【請求項24】
前記プロセッサは、前記検出されたモータ電流に基づいて前記治療を修正するための推奨事項を提供する命令を実行するようにさらに構成されている、請求項23に記載の医療機器システム。
【請求項25】
前記提供された推奨事項は、モータの回転速度を減少させること、回転速度を増加させること、線形横断速度を増加させること、線形横断速度を減少させること、前記モータの回転を停止させること、から構成される群のうちの少なくとも1つを含む、請求項24に記載の医療機器システム。
【請求項26】
前記判定された進行状況は、前記治療が完了したことである、請求項23に記載の医療機器システム。
【請求項27】
前記提供された推奨事項は、少なくとも1つの追加の治療通過の実行を含む、請求項24に記載の医療機器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者
ニコラス・エラリング(Nicholas Ellering)、クリスタル在住、米国民
ジェイコブ・P・ドラクスラー(Jacob P. Draxler)、セントポール在住、米国民
マシュー・W・ティルストラ(Matthew W. Tilstra)、ミネソタ州ロジャーズ在住、米国民
ジョセフ・P・ヒギンス(Joseph P. Higgins)、ミネソタ州ミネトンカ在住、米国民
関連出願の相互参照
本願は、2022年2月24日に出願され、「アテレクトミーシステムの電流検出、処理および表示(Atherectomy System Current Sensing, Processing and Display)」と題された米国非仮特許出願第17/652381号に対する優先権を主張し、また、2021年2月25日に出願され、「アテレクトミーシステムの電流検出、処理および表示(Atherectomy System Current Sensing, Processing and Display)」と題された米国仮特許出願第63/153689号の利益を主張するものであり、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
連邦政府による支援を受けた研究開発に関する記載
該当なし
【背景技術】
【0002】
一般に、回転式および/または軌道アテレクトミー装置(「OAD」)を含むがこれらに限定されないアテレクトミー装置およびシステムは、電気モータを使用して、一般にドライブシャフトの遠位位置に配置されている回転ドライブシャフトおよび関連する研削、切削または研磨要素(ツール)に動力を供給する。
【0003】
これらの手順では、とりわけ、病変部を通る各治療通過について、重なり合うモータ電流対時間のグラフを使用した治療の進行の視覚的な表示、いつ治療が完了するか、または完了に近づいているか、いつ移動速度を減速すべきかまたは増速してもよいか、または減速する必要があるか、または移動速度を増速してもよいか、および装置が患者の血管内で失速しそうになった場合の警告を示すデータを有することは、装置を操作する医療専門家にとって非常に有利である。
【0004】
本明細書中に開示される本発明は、とりわけ、これらの問題に対処する。
【0005】
発明の分野
【0006】
概して、回転式および軌道アテレクトミー装置を含むがこれらに限定されない血管内アテレクトミー装置。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態を示す。
図2】対象病変部を通る2つの連続した通過における例示的なモータ電流対時間のグラフを示す。
図3】モータ電流対時間のグラフを重ね合わせた、対象病変部を通る例示的な一連の通過を示す。
図4】モータ電流およびRPM対時間のグラフを重ね合わせた、対象病変部を通る例示的な一連の通過を示す。
図5】対象病変部を通る2つの連続した通過におけるモータ電流対線形位置の例示的なグラフを示す。
図6】対象病変部を通る横断速度対線形位置の例示的なグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
【0009】
本発明は、様々な変更および代替的な形態に適しているが、その詳細は、図面に例として示され、本明細書中で詳細に説明されている。しかしながら、説明された特定の実施形態に本発明を限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。むしろ、本発明の精神および範囲内にある全ての変形例、等価物および代替物を含むことが意図されている。
【0010】
本発明の様々な実施形態は、モータ電流を検出、監視、および表示することを少なくとも備え、モータ電流は、その後、回転式アテレクトミー装置の様々な実施形態において、とりわけ、治療の進行、治療の完了、最適な回転速度、治療中の最適な前進または移動速度、失速が差し迫っているかどうか、および/または失速が生じる前にモータの回転を停止するために反応することを判定および/または予測するために使用される。実施形態によっては、判定または予測により、回転ドライブシャフトおよび関連するツールの回転速度の制御ユニットによる自動的な、または予めプログラムされた調整が行われる。
【0011】
図1は、先行技術の回転式アテレクトミー装置の一例を示し、これは、軌道アテレクトミー装置であってもよく、そうでなくてもよい。本装置は、ハンドル部分10と、研削セクション28を有する細長く可撓性を有するドライブシャフト20と、ハンドル部分10から遠位に延びている細長いカテーテル13とを含む。研削セクション28は、当技術分野で周知のように少なくとも一部がダイヤモンド粉末等の研削コーティングで覆われた、研削クラウンまたはドライブシャフトの拡大部分等の単一の研削要素を備えていてもよい。代替的に、研削セクション28は、複数の研削要素を備えていてもよく、各研削要素は、隣接する研削要素から軸方向に間隔を空けていてもよい。研削セクション28は、ドライブシャフト20の遠位端、またはその付近に配置されていてもよい。
【0012】
一般に、回転式アテレクトミー装置は、ドライブシャフト20の回転軸に位置する重心を有し、実施形態によってはドライブシャフト20の端部に配置され得る研削セクションを備えていてもよい。軌道アテレクトミー装置の場合、研削セクション28は、ドライブシャフト20の回転軸から半径方向にオフセットされた重心を有していてもよく、ドライブシャフト20の高速回転中に不均衡を生じさせる。次に、軌道アテレクトミーの研削セクション28によりトレースされる作動直径は、その静止直径よりも大きくてもよい。
【0013】
ドライブシャフト20は、当技術分野で周知のように、らせん状に巻かれたワイヤで構成され、研削要素28がそれに固定的に取り付けられている。公知のドライブシャフトは、操作中の伸びまたは短縮を最小限に抑えるために反対方向に巻かれた糸を含み得る複数の糸が巻かれたコイルから製造されるが、当技術分野でよく理解されているように、ドライブシャフト20において糸が反対方向に巻かれている必要はない。
【0014】
カテーテル13は、拡大された研削ヘッド28と、研削要素28の遠位の短いセクションとを除いて、ドライブシャフト20の長さの大部分が配置される内腔を有する。ドライブシャフト20はまた、内側内腔を含み、ドライブシャフト20をガイドワイヤ15上で前進および回転させることができる。冷却および潤滑液(典型的には生理食塩水または他の生体適合性の流体)をカテーテル13内に導入するための流体供給ライン17が設けられていてもよい。
【0015】
ハンドル10は、望ましくは、ドライブシャフト20を高速で回転させるための電気モータ等の原動機(モータ)、またはタービン(または同様の回転駆動機構)を含む。ハンドル10は、典型的には、チューブ16を介して送達される圧縮空気等の動力源に接続されていてもよい。タービンおよびドライブシャフト20の回転の速度を監視するために、一対の光ファイバーケーブル25が設けられていてもよく、代替的には単一の光ファイバーケーブルを使用してもよい。ハンドル10はまた、望ましくは、カテーテル13、ハンドルの本体、およびドライブシャフト20の遠位端に近接する研削セクション28に対してドライブシャフト20を前進および後退させるための制御ノブ11を含む。
【0016】
図1は、モータおよびディスプレイと作動可能に接続されている制御ユニットをさらに含む。制御ユニットは、プログラム化された命令を含み得るプロセッサを備え、プロセッサは、規定された状況下でプログラム化された命令を実行するように構成されている。制御ユニットは、治療通過中に得られた検出データおよび/または治療通過中に得られた検出データを比較するための参照テーブルデータを格納するように構成されたメモリをさらに備える。メモリは、プロセッサと作動可能に接続されている。
【0017】
制御ユニットは、モータの電流を監視するための電流センサをさらに備え、電流センサは、プロセッサおよびメモリと作動可能に接続されている。
【0018】
さらに、特定の実施形態は、ハンドル10の制御ノブ11と作動可能に接続され得るか、または作動可能に通信し得る位置センサを備え、位置センサは、さらに制御ユニットのプロセッサおよび/またはメモリと作動可能に接続されているか、または通信可能となっている。さらに、位置センサは、ドライブシャフト20上またはそれに沿った任意のポイント、または研削セクションに配置され、制御ユニットのプロセッサおよび/またはメモリと作動可能に通信を行うように構成されていてもよい。特定の実施形態では、位置センサが制御ユニット内にあり、制御ノブ11、ドライブシャフト20および/または研削セクション28と作動可能に通信していてもよい。一般に、例えば位置センサが制御ノブ11と接続されている場合等の実施形態では、ドライブシャフト20および/または他の介在する構造の長さを考慮する必要がある病変部を通る通過中の研削セクション28の位置を追跡して、通過中の研削セクション28について相対的な出発、中間および終了横断位置を導き出すことが望ましい。例示的な横断速度は1mm/秒であり得るが、他の速度も当業者には容易に明らかであり、病変部の組成、研削セクションの回転速度および/または研削セクションの構造を含むがそれらに限定されない多くの要因によって決まり得る。
【0019】
したがって位置センサは、図5に示すように、治療中の研削セクション28の相対的な位置対時間のように、通過開始前および通過中の線形または軸方向位置を追跡する。これにより、ひいては対象の内腔を通る横断速度の生成が可能になり、これは、時間に対してグラフ化され、ディスプレイに表示されると同時に、図6に示すようなさらなる分析のためにプロセッサに伝えられ得る。
【0020】
モータ、ドライブシャフト20および研削セクション28の回転速度もまた、監視され、ディスプレイに表示されてもよい。回転速度は、モータ電流、時間、および/または研削セクション28の線形位置に対してグラフ化されてもよく、これらのグラフの何れかがディスプレイに表示されてもよい。
【0021】
ここで図2を参照すると、病変部を通る2つの治療通過中の経時的なモータ電流の理論上のグラフの一例が提供されている。示されているように、通過1(病変部を通る研削セクション28の1つの前進通過を示す)は、通過2(病変部を通る研削セクション28の次の前進通過を示す)よりも大きいモータ電流を発生させる。概して、同期間の通過1と比較して通過2でモータ電流が減少していることは、病変部が侵食および/または研削されていることを示す。病変部が侵食または研削されると、研削セクション28が受ける抵抗が減少し、モータは、研削セクション28の同じ回転速度を生成するためにより低い電流で作動する。
【0022】
このように、通過1および2は共に、時点1~3および13~15において、本質的に平坦で、安定しており、モータ電流レベルが増加しないまたは減少しないものを示す。時点1~3は、研削セクションが対象の血管内で回転しているが、対象病変部の近位側にある、すなわち、病変部がまだ研削セクション28に遭遇していない場合のモータ電流レベルである。同様に、時点13~15もまた、研削セクション28が対象病変部による抵抗を受けていない、平坦かつ安定したモータ電流レベルを示す。時点3から13の間は、経時的にグラフ化された場合、研削要素28が受ける抵抗の傾向に応じて正または負の勾配を含むモータ電流値を含む。このように、時点3から13の間のモータ電流は、研削要素28が病変部を通る前進通過で移動していることを説明しており、モータ電流のピーク値は、時点3から13の間のほぼ中間点で実現される。したがって、時点13~15は、研削セクション28が対象病変部の遠位にあり、対象病変部から離れている場合のモータ電流値を提供している。
【0023】
当業者は、示されている通過1および2を超える追加的な通過が行われると、病変部がさらに侵食され、モータ電流が減少し続けることを認識するであろう。実際には、時点13~15において、少なくともいくつかの通過は、少なくとも理論上は、時点1~3よりも大きい、おそらくわずかに大きいモータ電流をもたらすことが可能であり、すなわち、研削セクション28が病変部の遠位にあるとき、研削セクションが病変部の近位にあるときと比較して、モータ電流がより大きくなる可能性がある。これは、いくつかの通過では、ドライブシャフト20自体が病変部による回転抵抗を受け得るからである。したがって、回転する研削セクション28による病変部の研削または侵食の完了を示す最適なモータ電流は、例示の時点1~3のベースライン値、すなわち、図示のグラフでは、例示の約0.1アンペアのモータ電流で示されている。
【0024】
ここで図3を参照すると、4つの示されている通過1、2、4および6に対して、実際に測定された病変部を通るモータ電流対時間がグラフ化されている。通過3および5は、図示のデータの明瞭さを提供し、説明を促進するために省略されている。本発明の特定の実施形態は、図3と同様に電流対時間のデータを表示してもよく、閉塞した血管病変の治療中に術者がリアルタイムで観測できるように、通過の全てまたは一部がグラフで表示される。
【0025】
このように、図2と同様に、図3の通過のデータは、図示の各通過のモータ電流の減少、すなわち、通過2のモータ電流よりも大きい通過1のモータ電流を示している。したがって、研削セクション28は、通過2と比較すると、通過1の間に病変部においてより大きな抵抗を受ける。図2と同様に、病変部に近位のポイント、ここではサンプル番号およそ1~およそ118での通過1および2のモータ電流は、相対的に平坦かつ概ね同じであり、すなわち、0.53または0.52アンペアである。そして、通過4および6もまた、1~118に対応するサンプル番号を通して同じ電流レベルの平坦性を示しており、モータ電流のアンペアは約0.51~0.50である。
【0026】
サンプル番号118からおよそ361の間は、モータ電流は、サンプル118より前のポイントで測定されたモータ電流よりも上に上昇し、研削セクション28が対象病変部内で抵抗を受けていることを示しており、通過1のモータ電流が通過2のモータ電流よりも大きい。
【0027】
通過4および6は、通過4のサンプル番号127からおよそ370の間の最大電流値と最小電流値との差が、通過6の最大電流値と最小電流値との差よりも大きく見える点で例示的であり、研削セクション28が通過4の間に病変部内でいくつかの別々の抵抗領域に遭遇し、通過6のモータ電流に示されるように、これらの領域が消散または平滑化されるように見えることを示している。例えば、通過4は迅速に、すなわち、高い変化率で、サンプル番号154の0.51アンペアのやや下からサンプル164の0.53アンペアまで移動する。この高い変化率での非平滑な最小値から最大値の他の例は、通過4の残りの部分を通して提供されている。それに対して、通過6は大幅に平滑に見え、最小値から最大値の差がより小さい。このように、測定され、図示されているモータ電流は、相対的に、追加の治療を必要とする可能性のある病変部内の別々の領域または長さの影響を受けやすい。
【0028】
一般に、モータ電流および回転モータ速度および/またはドライブシャフトの回転速度(RPM)は、病変部を通る個々の通過について経時的にグラフ化され得る。このデータは、起こり得るドライブシャフトおよび/または研削セクション28の失速への早期警告として利用されてもよく、この場合、研削セクション28が病変部内で実質的に詰まっている一方で、モータがドライブシャフトの近位端にトルクを加え続け、多量の蓄積されたポテンシャルエネルギーにより、バネのようにドライブシャフトを巻き上げるか、または圧縮し得る。継続された場合、失速した研削セクション28が突然解放され、ひいては、取り付けられたドライブシャフト20の蓄積されたポテンシャルエネルギーを解放し、患者に外傷を引き起こす可能性がある。場合によっては、ドライブシャフト20の巻線構造、すなわち、例えば反対方向に巻かれた、または非反対方向に巻かれた糸に応じて、このような失速後のエネルギー解放の後、ドライブシャフト20が前方または後方に「跳ねる」可能性があり、研削セクション28が病変部内で前方または後方に跳ねることを引き起こす。加えて、ドライブシャフト20は、失速から解放された後に「輪状になる」可能性があり、ドライブシャフト20は、均衡を得ようとして巻いたり巻き戻ったりする。場合によっては、輪状になっているドライブシャフト20は、短縮および延長し、研削セクション28の関連する軸方向移動を生じさせ得る。これらの管理されていない失速解放は全て制御されておらず、患者に外傷を引き起こす可能性がある。
【0029】
したがって、図4の失速への早期警告は非常に望ましい。
【0030】
図2および3のように、通過1のモータ電流は、概して通過3よりも大きいモータ電流を含む通過2のモータ電流よりも概して大きい。ここで、病変部の始まりは、およそサンプル番号13に示されている。通過1、2および3のそれぞれは最終的に失速する。通過1はおよそサンプル番号37で、通過2はおよそサンプル番号52で、通過3はおよそサンプル番号88で失速している。各通過の失速後、RPMは事実上直ちにゼロまで低下し、残りのサンプル番号を通してゼロにとどまる。これらのグラフ化されたデータの全ては、術者が電流の動きをリアルタイムで可視化できるように、ディスプレイに表示されてもよい。
【0031】
特定の実施形態、例えば図3では、プロセッサのプログラム化された命令によって表示され、さらに分析された際に、重なり合って表示された通過がより容易におよび正確に比較され得るように、各通過の開始時間を揃えている。
【0032】
他の実施形態では、検出された電流対研削セクションの検出された線形または軸方向位置のグラフを表示してもよく、それによって術者が進行状況を監視してもよく、および/または、所定の最大電流閾値および/または線形位置の関数としての所定の電流変化率を超えた場合に、制御ユニット、具体的にはプロセッサがモータへの電力/電圧を自動的に遮断するように構成されてもよい。
【0033】
図4には、2つの早期失速警告要素が示され、起こり得る差し迫った失速を警告するために、これらは一緒に用いられてもよく、制御ユニットおよび/または術者が、電圧および/または電流の印加を停止して、失速が起こる前にドライブシャフト20および取り付けられた研削セクション28の回転を停止することを可能にする。この意味では、本発明の実施形態は、失速の事象を予測し、制御ユニットおよび/または術者がモータへの電圧の印加を中断または停止することを可能にし、その結果、モータ、ドライブシャフト20および研削セクション28の回転を停止させる。
【0034】
第1の早期失速警告要素は、モータ電流閾値を設定することを含み、これは、設定されたモータ電流のベースライン、すなわち、研削セクション28が病変部に遭遇する前の相対的に平坦および変化しないモータ電流値を上回る所定のモータ電流レベルに設定された所定の電流レベルである。図4では、これは、病変部の始まりが示されているサンプル番号1から約13までの領域である。概して、ベースラインモータ電流はおよそ0.48アンペアであり、ベースラインモータ電流に基づき、閾値は、この場合0.55アンペアに設定されている。このように、例示の事例では、閾値はベースラインモータ電流を約0.07アンペア上回って設定されている。ただし、閾値は、ベースラインモータ電流を約0.05アンペア、または0.10アンペア、または0.15アンペア上回るモータ電流で設定してもよい。概して、閾値モータ電流は、ベースラインモータ電流を0.02~0.20アンペア上回る任意の場所に設定してもよい。実施形態によっては、参照ライブラリが制御ユニットのメモリに格納されていてもよく、または有線または無線通信を介してアクセスされるリモートサーバまたはデータベースに格納されていてもよく、これは任意の回転式および/または軌道回転式アテレクトミーシステムの構成要素に適し得る閾値モータ電流レベルを導き出すためにプロセッサによって使用され、いくつかの潜在的な関連要素を挙げると、病変部の近位のポイントで流れるベースライン電流レベル(詳細は後述する)、ドライブシャフト20の外径およびその長さ、対象病変部の位置、患者の体内のアクセスポイント、研削セクション28の種類および構造を含むが、これらに限定されない。このように、プロセッサは、参照ライブラリのルックアップを実行して、所与の手順のための1つ以上の閾値モータ電流レベルを取得してもよい。
【0035】
ベースラインモータ電流は、病変部の抵抗なしで血管系の中を走行する特定の回転式および/または軌道アテレクトミーシステムの参照ライブラリまたはデータセットを参照することによって、事前の実験により設定されてもよく、または、病変部の近位および遠位の両方の患者の血管系の中のポイントで実際の回転式および/または軌道アテレクトミーシステムを回転させることにより、特定の患者のために設定されてもよい。実施形態によっては、ベースラインモータ電流は、実際の回転式および/または軌道アテレクトミーシステムの走行電流のベースライン、すなわち、さらにシステムの走行抵抗を考慮した治療レベルのRPMの電流を提供する。実際の患者では、走行抵抗は多くの装置および/または患者固有の要因の原因となる可能性があり、いくつかの要因を挙げると、例えば、限定されないが、特定の患者の血管分布およびその蛇行、アクセス部位の位置、すなわち大腿骨対橈骨等、ドライブシャフトおよび研削セクションの外径寸法、ドライブシャフトの長さ、研削セクションの長さ、1つまたは複数の研削要素を備える研削セクション、研削セクションが軌道状であるか、すなわち重心がドライブシャフトの回転軸から半径方向に間隔を空けて離れているか、または非軌道状であるか、すなわち重心がドライブシャフトの回転軸上にあるか、ドライブシャフトの遠位端に対する研削セクションの位置等が挙げられる。これらの各要因は対象病変部内の装置またはシステムの挙動とは無関係であり、むしろ各要因は個々の患者および/または使用されている特定の装置またはシステムに関連している。
【0036】
代替的に、ベースライン電流レベルは、参照ライブラリの使用を通して設定されてもよいし、または暫定的に設定されてもよい。参照ライブラリは、制御ユニットのメモリに格納されていてもよく、または有線または無線通信を介してアクセスされるリモートサーバまたはデータベースに格納されていてもよく、任意の回転式および/または軌道回転式アテレクトミーシステムの構成要素に適し得る1つ以上の適したベースライン電流レベルを導き出すためにプロセッサによって使用され、いくつかの潜在的な関連要素を挙げると、病変部の近位のポイントで流れるベースライン電流レベル(詳細は後述する)、ドライブシャフト20の外径およびその長さ、対象病変部の位置、患者の体内のアクセスポイント、研削セクション28の種類および構造を含むが、これらに限定されない。このように、プロセッサは、参照ライブラリのルックアップを実行して、所与の手順のための1つ以上のベースライン電流レベルを取得してもよい。
【0037】
第2の早期警告失速要素は、点線の楕円で示されるように、経時的な電流の変化率が所定の変化率閾値を超える1つまたは一連の「di/dtイベント」である電流変化率を含む。所定の変化率は、特定のアテレクトミー装置またはシステムを使用して事前に得られるデータに基づいて設定されてもよいし、または参照データライブラリを参照して設定されてもよい。
【0038】
当業者によって理解されるように、本明細書中に説明されている参照データライブラリは、効果的に閉じられたデータのライブラリとして設定されてもよいし、または最初に設定されてもよいが、患者、病変部、位置、装置等の範囲にわたって治療が実行されるにつれて、参照データライブラリは、次の治療データセットをより効果的にすることを助けるために、より精密およびより正確になるように更新され得る。
【0039】
点線の楕円が示すように、図4の各経過には、経時的な電流変化率が所定の変化率閾値を超える「di/dtイベント」が少なくとも1つ存在する。
【0040】
示されているように、閾値モータ電流レベルおよび所定の変化率閾値の両方を超えた場合、システムは術者に警告を発し、および/またはモータへの電圧を自動的に遮断してもよく、予測される失速が発生する前に、モータによるドライブシャフト20および研削セクション28へのトルクの印加を停止させる。検出されたモータ電流閾値の超過と所定の変化率閾値との間の時間量は、通過1では約900ms、通過2では約900ms、通過3では約1000msである。これは、システムおよび/または術者が、ドライブシャフトおよび研削セクション28へのモータのトルクの印加を停止するためにモータへの電圧を遮断しなければならない時間量、すなわち、警告後、失速前の時間窓である。当業者が認識するように、警告後ではあるが失速前の時間窓の大きさは様々であり、多くの要因によって決まり、要因は、病変部を通る研削セクション28の並進速度、研削セクションの回転速度、病変部の組成、特定の病変部に対する研削セクション28の構造および有効性、および/またはドライブシャフト20のトルク能力および他の特性を含むが、これらに限定されない。
【0041】
特定の実施形態は、上述のように検出された電流および/または時間および/または位置データを受信し、上述のように受信したデータをベースライン電流に対して比較するプログラム化された命令を含んでもよい。例えば、1回または一連の時点で、および/または(一般に病変部内の)線形位置(単数または複数)で検出された電流が、ベースライン電流よりも大きい場合、例えば、所定の認められた電流差よりも大きい場合、制御ユニットのプロセッサは、表示された命令を開始して、少なくとももう1つの治療通過を継続し、および/または横断速度または回転速度を増加または減少させることを推奨してもよい。他の実施形態は、病変部内で検出された電流の最大値と最小値との差が、ベースライン電流の最大値と最小値との所定の許容差よりも大きいかどうかの判定を含んでもよく、その後、制御ユニットのプロセッサは、表示された命令を開始して、少なくとももう1つの治療通過を継続し、および/または横断速度または回転速度を増加または減少させることを推奨してもよい。さらに、特定の実施形態は、プロセッサが病変部内で検出された電流の標準偏差を計算することを含んでもよく、標準偏差が所定の大きさまたは算出されたベースライン電流の標準偏差のいずれかよりも大きい場合、その後、制御ユニットのプロセッサは、表示された命令を開始して、少なくとももう1つの治療通過を継続し、および/または横断速度または回転速度を増加または減少させることを推奨してもよい。
【0042】
制御ユニットのプロセッサのプログラム化された命令により、病変部内で検出された電流に基づいて、失速を回避するために回転速度を減少させる必要があるという判定が行われる実施形態では、例えば、プロセッサは、回転速度を推奨レベルまで減少させるようにモータへの命令を開始してもよく、それによって、モータは、術者の介入なしで自動的に回転速度の減速を実行する。図4に関連して説明したように、このようなモータの回転速度の自動的な減速または停止は、望ましくない潜在的に有害な研削セクション28の病変部内での失速を防止するために重要であり得る。
【0043】
特定の実施形態は、通過内で検出されたモータ電流が所定の限度内であると判定してもよい。この場合、制御ユニットのプロセッサは、治療が完了したという表示された命令を開始してもよい。
【0044】
本発明および本明細書に記載されたその用途の説明は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。様々な実施形態の特徴は、この発明の解釈内で他の実施形態と組み合わされてもよい。本明細書に開示された実施形態の変形および修正が可能であり、実施形態の様々な要素の実用的な代替物および等価物が、この特許文献の研究の上、当業者に理解され得る。本明細書に開示された実施形態のこれらのおよび他の変形ならびに修正は、本発明の範囲および精神から逸脱することなくなされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6