(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16J 15/3232 20160101AFI20240208BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F16J15/3232 101
F16J15/18 A
(21)【出願番号】P 2019155255
(22)【出願日】2019-08-28
【審査請求日】2022-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【氏名又は名称】高橋 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100187034
【氏名又は名称】夏目 洋子
(74)【代理人】
【識別番号】100198971
【氏名又は名称】木地本 浩和
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 渉
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-183165(JP,U)
【文献】実開昭61-170768(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105042077(CN,A)
【文献】特開平01-030974(JP,A)
【文献】特開2009-216168(JP,A)
【文献】特開2013-040683(JP,A)
【文献】特開2015-194217(JP,A)
【文献】米国特許第05480163(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3232
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、前記軸部材が挿入される軸孔が設けられた軸受部材の内周面との間の隙間を密封する密封装置であって、
前記軸部材の軸に沿う第1方向に開口する第1凹部、および、前記第1方向と反対方向の第2方向に開口する第2凹部を有する環状の本体部材と、
前記第1凹部および前記第2凹部のうちの前記第1凹部のみに設けられ、前記第1凹部の表面に接合された付勢部材とを備え、
前記本体部材は、
前記軸受部材と前記第1凹部との間に位置し、前記軸受部材に接触する第1部分と、
前記軸部材と前記第1凹部との間に位置し、前記軸部材に対して摺動する第2部分と、
前記軸受部材と前記第2凹部との間に位置し、前記軸受部材に接触する第3部分と、
前記軸部材と前記第2凹部との間に位置し、前記軸部材に対して摺動する第4部分とを備え、
前記付勢部材は、
樹脂により形成された弾性体であり、
前記第1部分を前記軸受部材側に付勢し、
前記第2部分を前記軸部材側に付勢すし、
前記第1方向は、
前記密封装置が
前記軸受部材に装着された状態において、前記軸部材の軸に沿う方向のうち、前記密封装置から大気側に向かう方向である
ことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
軸部材と、前記軸部材が挿入される軸孔が設けられた軸受部材の内周面との間の隙間を密封する密封装置であって、
前記軸部材の軸に沿う第1方向に開口する第1凹部、および、前記第1方向と反対方向の第2方向に開口する第2凹部を有する環状の本体部材と、
前記第1凹部および前記第2凹部のうちの前記第1凹部のみに設けられ、前記第1凹部の表面に接合された付勢部材とを備え、
前記本体部材は、
前記軸部材と前記第1凹部との間に位置し、前記軸部材に接触する第1部分と、
前記軸受部材と前記第1凹部との間に位置し、前記軸受部材に対して摺動する第2部分と、
前記軸部材と前記第2凹部との間に位置し、前記軸部材に接触する第3部分と、
前記軸受部材と前記第2凹部との間に位置し、前記軸受部材に対して摺動する第4部分とを備え、
前記付勢部材は、
樹脂により形成された弾性体であり、
前記第1部分を前記軸部材側に付勢し、
前記第2部分を前記軸受部材側に付勢し、
前記第1方向は、
前記密封装置が
前記軸部材に装着された状態において、前記軸部材の軸に沿う方向のうち、前記密封装置から大気側に向かう方向である
ことを特徴とする密封装置。
【請求項3】
前記樹脂は、ナイロン樹脂である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記本体部材の半径方向に沿う前記付勢部材の幅は、前記本体部材の半径方向に沿う前記第2部分の幅より短い
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧シリンダ等の油圧機器では、外部からのダスト等の異物の進入を防ぐダストシール、および、内部からの油の漏れを防ぐオイルシール等のシール(以下、密封装置とも称する)が用いられる。例えば、特許文献1には、ピストンが挿入される軸孔を有する筒状のシリンダに装着され、軸孔とピストンとの間の環状の隙間を封止するための密封装置が開示されている。また、特許文献2には、内周側のシールリップと外周側のシールリップとの間に形成された環状の凹部に金属スプリングが装着された密封装置が開示されている。金属スプリングによって、内周側のシールリップは内径方向に付勢され、外周側のシールリップは、外形方向に付勢される。これにより、例えば、シリンダに装着された密封装置のシールリップと軸との密着性が向上する。また、特許文献3には、ダストシールとして機能するリップ(以下、ダストシール部とも称する)とオイルシールとして機能するリップ(以下、オイルシール部とも称する)とを1つの本体部材に形成した密封装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-190661号公報
【文献】特開2009-216168号公報
【文献】特開2012-215188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダストシールとして機能するダストシール部とオイルシールとして機能するオイルシール部とを1つの本体部材に形成した場合、オイルシール部で受けた油圧によって、ダストシール部のリップ形状が崩れ、ダストシール部のシール性が低下するおそれがある。ダストシール部のシール性が低下すると、外部から進入したダスト等の異物によりオイルシール部が損傷し、オイルシール部のシール性が低下する可能性がある。以上の事情を考慮して、本発明は、ダストシール部とオイルシール部とを1つの本体部材に形成した密封装置の耐圧を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明の一態様に係る密封装置は、軸部材と、前記軸部材が挿入される軸孔が設けられた軸受部材の内周面との間の隙間を密封する密封装置であって、前記軸部材の軸に沿う第1方向に開口する第1凹部、および、前記第1方向と反対方向の第2方向に開口する第2凹部を有する環状の本体部材と、前記第1凹部の表面に接合された付勢部材とを備え、前記本体部材は、前記軸受部材と前記第1凹部との間に位置し、前記軸受部材に接触する第1部分と、前記軸部材と前記第1凹部との間に位置し、前記軸部材に対して摺動する第2部分と、前記軸受部材と前記第2凹部との間に位置し、前記軸受部材に接触する第3部分と、前記軸部材と前記第2凹部との間に位置し、前記軸部材に対して摺動する第4部分とを備え、前記付勢部材は、硬質樹脂により形成された弾性体であり、前記第1部分を前記軸受部材側に付勢し、前記第2部分を前記軸部材側に付勢する。
【0006】
本発明の他の態様に係る密封装置は、軸部材と、前記軸部材が挿入される軸孔が設けられた軸受部材の内周面との間の隙間を密封する密封装置であって、前記軸部材の軸に沿う第1方向に開口する第1凹部、および、前記第1方向と反対方向の第2方向に開口する第2凹部を有する環状の本体部材と、前記第1凹部の表面に接合された付勢部材とを備え、前記本体部材は、前記軸部材と前記第1凹部との間に位置し、前記軸部材に接触する第1部分と、前記軸受部材と前記第1凹部との間に位置し、前記軸受部材に対して摺動する第2部分と、前記軸部材と前記第2凹部との間に位置し、前記軸部材に接触する第3部分と、前記軸受部材と前記第2凹部との間に位置し、前記軸受部材に対して摺動する第4部分とを備え、前記付勢部材は、硬質樹脂により形成された弾性体であり、前記第1部分を前記軸部材側に付勢し、前記第2部分を前記軸受部材側に付勢する。
【0007】
なお、「環状」は、空間を包囲するようにループする直線または曲線により構成される形状を意味する。例えば、「環状」は、円形状でもよいし、多角形状(例えば、矩形状)でもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダストシール部とオイルシール部とを1つの本体部材に形成した密封装置の耐圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る密封装置がハウジングに装着された状態を示す模式的断面図である。
【
図2】実施形態に係る密封装置の模式的断面図である。
【
図3】変形例1に係る密封装置が軸に装着された状態を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法および縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0011】
[1.実施形態]
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
図1は、実施形態に係る密封装置10がハウジング30に装着された状態を示す模式的断面図である。密封装置10は、例えば、円柱形状を有するピストンロッド等の軸20(「軸部材」の一例)と、軸20が挿入される軸孔32が設けられたハウジング30(「軸受部材」の一例)の内周面との間の隙間GPを密封する。例えば、軸孔32に挿入された軸20は、軸20の中心軸Z(「軸部材の軸」の一例)に沿って往復移動する。すなわち、密封装置10は、軸20とハウジング30とが相対的に移動する機構を含む油圧シリンダ等の機器1(全体は図示せず)に用いられる。
図1に示す例では、機器1は、ハウジング30と、ハウジング30に設けられた軸孔32に挿入される軸20と、ハウジング30の内周面に設けられた環状の凹部34に装着された環状の密封装置10とを有する。本実施形態では、機器1内(
図1の油側A)に密封される流体が油である場合を想定するが、流体は油に限定されない。
【0013】
例えば、密封装置10は、軸20の中心軸Zに沿う第1方向D1に開口する環状の第1凹部110、および、第1方向D1と反対方向の第2方向D2に開口する環状の第2凹部120を有する環状の本体部材100と、第1凹部110の表面に接合された環状の付勢部材140とを有する。例えば、密封装置10がハウジング30に装着された状態において、密封装置10から中心軸Zに沿って大気側Bに向かう方向が第1方向D1に対応し、密封装置10から中心軸Zに沿って油側Aに向かう方向が第2方向D2に対応する。また、密封装置10がハウジング30に装着された状態において、中心軸Zに垂直な方向は、密封装置10の半径方向R(
図1では、半径方向R1およびR2を図示)に対応する。密封装置10の半径方向Rは、「本体部材の半径方向」に該当する。
【0014】
本体部材100は、例えば、樹脂により形成された弾性体であり、第1シールリップ111(「第1部分」の一例)、第2シールリップ112(「第2部分」の一例)、第3シールリップ121(「第3部分」の一例)および第4シールリップ122(「第4部分」の一例)を有する。本体部材100の材料としては、例えば、ウレタン樹脂およびフッ素樹脂等の弾性材料が挙げられる。
【0015】
第1シールリップ111は、ハウジング30と第1凹部110との間に位置する本体部材100の部分であり、ハウジング30に設けられた凹部34の底面34btに接触する。第2シールリップ112は、軸20と第1凹部110との間に位置する本体部材100の部分であり、軸20の表面に対して摺動する。このため、第2シールリップ112は、ダストシールとして機能する。例えば、第2シールリップ112は、大気側Bからのダスト等の異物の進入を防ぐとともに、軸20に付着した異物を掻き落とす。第3シールリップ121は、ハウジング30と第2凹部120との間に位置する本体部材100の部分であり、ハウジング30に設けられた凹部34の底面34btに接触する。第4シールリップ122は、軸20と第2凹部120との間に位置する本体部材100の部分であり、軸20の表面に対して摺動する。このため、第4シールリップ122は、油側Aからの油漏れを防ぐオイルシールとして機能する。
【0016】
付勢部材140は、樹脂により形成された弾性体であり、第1シールリップ111をハウジング30側に付勢し、第2シールリップ112を軸20側に付勢する。付勢部材140の材料としては、例えば、ナイロン樹脂等の硬質の弾性材料が挙げられる。付勢部材140は、本体部材100の第1凹部110の表面と接着されてもよいし、本体部材100の第1凹部110の表面と融着されてもよい。
【0017】
付勢部材140は、ナイロン樹脂等の硬質の弾性材料で形成されるため、第1方向D1よりも、密封装置10の半径方向R(より詳細には、密封装置10の中心から外側に向かう半径方向R)に変形しやすい。したがって、付勢部材140は、第1方向D1への力に対する第2シールリップ112の剛性を向上させる。すなわち、密封装置10では、付勢部材140が第2シールリップ112に接合されていない密封装置(以下、対比例1の密封装置とも称する)に比べて、第1方向D1への力に対する第2シールリップ112の剛性が高くなる。以下では、密封装置10が油圧を受けた場合の第2シールリップ112の状態について、対比例1の密封装置と比較しながら、簡単に説明する。
【0018】
対比例1の密封装置では、密封装置が受けた油圧によって、第2シールリップ112は、油圧の方向である第1方向D1に変形する。したがって、比較例の密封装置では、密封装置が油圧を受けた場合、第2シールリップ112の大気側Bの端部112edが軸20とハウジング30の内周面との間の隙間GPにはみ出す。このため、対比例1の密封装置における第2シールリップ112は、第2シールリップ112の端部112edが隙間GPにはみ出ない構成に比べて、損傷または磨耗しやすい。第2シールリップ112の形状が崩れると、第2シールリップ112のシール性が低下し、大気側Bから進入した異物により第4シールリップ122が損傷する。第4シールリップ122が損傷すると、第4シールリップ122のシール性が低下し、油側Aからの油漏れが発生する。すなわち、油側Aからの圧力によって第2シールリップ112の端部112edが隙間GPにはみ出す対比例1の密封装置では、第2シールリップ112の端部112edが隙間GPにはみ出ない構成に比べて、油側Aからの圧力に対する耐圧が低い。
【0019】
これに対し、本実施形態では、上述したように、第1方向D1への力に対する第2シールリップ112の剛性が向上しているため、第2シールリップ112は、第1方向D1への圧力を密封装置10が受けた場合でも、第1方向D1よりも、密封装置10の半径方向Rに変形しやすい。このため、密封装置10の第2シールリップ112は、密封装置10が油圧を受けた場合、密封装置10の半径方向Rに変形する。これにより、本実施形態では、対比例1の密封装置に比べて、第2シールリップ112の大気側Bの端部112edが、軸20とハウジング30の内周面との間の隙間GPにはみ出すことを低減できる。したがって、本実施形態では、対比例1の密封装置に比べて、油側Aからの圧力に対する耐圧を高くすることができる。すなわち、本実施形態では、ダストシールとして機能する第2シールリップ112とオイルシールとして機能する第4シールリップ122とを1つの本体部材100に形成した密封装置10の耐圧を向上させることができる。
【0020】
また、本実施形態では、第2シールリップ112が第1方向D1よりも密封装置10の半径方向Rに変形しやすいため、第2シールリップ112の摺動面の圧力が過度に高くなることを防止することができる。この結果、本実施形態では、第2シールリップ112の摺動面の磨耗を低減することができる。なお、第2シールリップ112の摺動面としては、例えば、第2シールリップ112と軸20との接触部分が該当する。
【0021】
また、金属スプリングの付勢部材が第1凹部110の表面に配置された密封装置(以下、対比例2の密封装置とも称する)も考えられるが、金属スプリングの付勢部材は、ナイロン樹脂等の硬質の弾性材料で形成された付勢部材140に比べて、塑性変化しやすい。換言すれば、密封装置10の付勢部材140は、金属スプリングの付勢部材に比べて、塑性変形しにくい。このため、密封装置10の付勢部材140では、金属スプリングの付勢部材に比べて、第2シールリップ112を軸20側に付勢する機能が低下することを低減できる。すなわち、密封装置10では、対比例2の密封装置に比べて、第2シールリップ112のシール性が低下することを低減することができる。
【0022】
また、本実施形態では、ダストシールとして機能する第2シールリップ112とオイルシールとして機能する第4シールリップ122とが1つの本体部材100に形成されるため、ダストシールとオイルシールとが異なる密封装置に形成される態様(以下、対比例3とも称する)に比べて、製品コスト等を低減することができる。具体的には、本実施形態では、対比例3に比べて、製品コスト、密封装置の装着スペース、密封装置を装着するための凹部(例えば、凹部34)の加工工数および密封装置の装着工数等を低減することができる。また、本実施形態では、従来のダストシールが装着される位置に密封装置10を装着することにより、対比例3に比べて、密封装置10の交換作業にかかる工数を低減することができる。
【0023】
図2は、実施形態に係る密封装置10の模式的断面図である。
図2は、ハウジング30に装着されていない状態における密封装置10の模式的断面図を示す。
図2に示す胴体部分102は、例えば、第1凹部110の底面と第2凹部120の底面との間に位置する本体部材100の部分である。
図2に示す例では、第2シールリップ112は、胴体部分102から、密封装置10の中心に向かう半径方向Rと第1方向D1との間の方向に延在する。これにより、第2シールリップ112は、密封装置10の半径方向Rに変形可能となる。また、第4シールリップ122は、胴体部分102から、密封装置10の中心に向かう半径方向Rと第2方向D2との間の方向に延在する。これにより、第4シールリップ122は、密封装置10の半径方向Rに変形可能となる。
【0024】
例えば、密封装置10がハウジング30に装着されていない状態では、第1凹部110の開口部における半径方向Rに沿う長さL1oは、密封装置10がハウジング30に装着された状態における第1凹部110の開口部の長さL1f(
図1の長さL1f)より大きい。したがって、密封装置10がハウジング30に装着された状態では、付勢部材140は、半径方向Rに圧縮され、弾性変形する。このため、付勢部材140は、弾性変形により生じる弾性力によって、第2シールリップ112を軸20側に押圧するとともに、第1シールリップ111をハウジング30側に押圧する。この結果、第2シールリップ112のシール性が向上する。
【0025】
なお、密封装置10の半径方向Rに沿う付勢部材140の幅W1は、密封装置10の半径方向Rに沿う第2シールリップ112の幅W2より短い。このため、付勢部材140は、
図1で説明したように、第1方向D1よりも、密封装置10の半径方向R(より詳細には、密封装置10の中心から外側に向かう半径方向R)に変形しやすくなる。
【0026】
また、密封装置10がハウジング30に装着されていない状態では、第2凹部120の開口部における半径方向Rに沿う長さL2oは、密封装置10がハウジング30に装着された状態における第2凹部120の開口部の長さL2f(
図1の長さL2f)より大きい。したがって、密封装置10がハウジング30に装着された状態では、第4シールリップ122は、半径方向Rに弾性変形し、弾性変形により生じる弾性力によって、第4シールリップ122を軸20側に押圧するとともに、第3シールリップ121をハウジング30側に押圧する。この結果、第4シールリップ122のシール性が向上する。
【0027】
また、第3シールリップ121の外径L3は、ハウジング30の凹部34の内径(中心軸Zから凹部34の底面34btまでの距離を2倍した値)より大きくてもよい。この場合、密封装置10をハウジング30の凹部34に装着する際の締め代が確保される。
【0028】
以上、本実施形態では、密封装置10に含まれる環状の本体部材100は、軸20の中心軸Zに沿う第1方向D1に開口する第1凹部110と、第1方向D1と反対方向の第2方向D2に開口する第2凹部120とを有する。さらに、本体部材100は、ハウジング30と第1凹部110との間に位置し、ハウジング30に接触する第1シールリップ111と、軸20と第1凹部110との間に位置し、軸20に対して摺動する第2シールリップ112とを有する。また、本体部材100は、ハウジング30と第2凹部120との間に位置し、ハウジング30に接触する第3シールリップ121と、軸20と第2凹部120との間に位置し、軸20に対して摺動する第4シールリップ122とを有する。また、本体部材100の第1凹部110の表面には、樹脂により形成された弾性体の付勢部材140が接合される。付勢部材140は、第1シールリップ111をハウジング30側に付勢し、第2シールリップ112を軸20側に付勢する。
【0029】
本実施形態では、樹脂により形成された弾性体の付勢部材140が本体部材100の第1凹部110の表面に接合されるため、第2シールリップ112は、第1方向D1への力に対する剛性が向上する。このため、第2シールリップ112は、密封装置10が油圧を受けた場合、第1方向D1に変形するより、密封装置10の半径方向Rに変形しやすくなる。これにより、本実施形態では、例えば、第2シールリップ112の隙間GPへのはみ出し、および、第2シールリップ112の摺動面の磨耗を低減することができる。この結果、本実施形態では、密封装置10の耐圧を向上させることができる。すなわち、本実施形態では、ダストシールとオイルシールとを1つの本体部材100に形成した密封装置10の耐圧を向上させることができる。
【0030】
[2.変形例]
以上に例示した実施形態は多様に変形され得る。前述の実施形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で併合してもよい。
【0031】
[変形例1]
上述した実施形態では、密封装置10がハウジング30に装着される態様を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、
図3に示す密封装置10Aは、軸20に装着されてもよい。
【0032】
図3は、変形例1に係る密封装置10Aが軸20Aに装着された状態を示す模式的断面図である。
図1および
図2で説明した要素と同様の要素については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。例えば、機器1A(全体は図示せず)は、ハウジング30A(「軸受部材」の一例)と、ハウジング30Aに設けられた軸孔32Aに挿入される軸20A(「軸部材」の一例)と、軸20Aの外周面に設けられた環状の凹部24Aに装着された環状の密封装置10Aとを有する。密封装置10Aは、密封装置10と同様に、軸20Aとハウジング30Aの内周面との間の隙間GPを密封する。なお、変形例1では、密封装置10Aが軸20Aに装着されるため、ハウジング30Aには
図1に示した凹部34は設けられない。
【0033】
密封装置10Aは、第1方向D1に開口する第1凹部110A、および、第2方向D2に開口する第2凹部120Aを有する環状の本体部材100Aと、第1凹部110Aの表面に接合された付勢部材140Aとを有する。本体部材100Aの材料としては、本体部材100と同様に、例えば、ウレタン樹脂およびフッ素樹脂等の弾性材料が挙げられる。また、付勢部材140Aの材料としては、付勢部材140と同様に、例えば、ナイロン樹脂等の硬質の弾性材料が挙げられる。付勢部材140Aは、本体部材100Aの第1凹部110Aの表面と接着されてもよいし、本体部材100Aの第1凹部110Aの表面と融着されてもよい。
【0034】
また、本体部材100Aは、軸20Aと第1凹部110Aとの間に位置し、軸20Aに設けられた凹部24Aの底面24Abtに接触する第1シールリップ111A(「第1部分」の一例)と、ハウジング30Aと第1凹部110Aとの間に位置し、第1凹部110Aの内周面に対して摺動する第2シールリップ112A(「第2部分」の一例)とを有する。さらに、本体部材100Aは、軸20Aと第2凹部120Aとの間に位置し、軸20Aに設けられた凹部24Aの底面24Abtに接触する第3シールリップ121A(「第3部分」の一例)と、ハウジング30Aと第2凹部120Aとの間に位置し、ハウジング30Aの内周面に対して摺動する第4シールリップ122A(「第4部分」の一例)とを有する。
【0035】
また、付勢部材140Aは、第1シールリップ111Aを軸20A側に付勢し、第2シールリップ112Aをハウジング30A側に付勢する。また、
図3に示す変形例1においても、密封装置10Aの半径方向Rに沿う付勢部材140Aの幅W1は、密封装置10Aの半径方向Rに沿う第2シールリップ112Aの幅W2より短い。このため、変形例1においても、付勢部材140Aは、第1方向D1よりも、密封装置10Aの半径方向R(より詳細には、密封装置10Aの中心から外側に向かう半径方向R)に変形しやすくなる。
【0036】
変形例1においても、樹脂により形成された弾性体の付勢部材140Aが本体部材100Aの第1凹部110Aの表面に接合されるため、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
また、第3シールリップ121の内径は、軸20Aに設けられた凹部24Aの内径(中心軸Zから凹部24Aの底面24Abtまでの距離を2倍した値)より小さくてもよい。この場合、密封装置10Aを軸20Aに設けられた凹部24Aに装着する際の締め代が確保される。
【符号の説明】
【0038】
1…機器、10、10A…密封装置、20、20A…軸、24…凹部、24bt…底面、30、30A…ハウジング、32…軸孔、34…凹部、34bt…底面、100、100A…本体部材、102…胴体部分、110、110A…第1凹部、110A…本体部材100Aの第1凹部、111、111A…第1シールリップ、112、112A…第2シールリップ、112ed…端部、120、120A…第2凹部、121、121A…第3シールリップ、122、122A…第4シールリップ、140、140A…付勢部材、D1…第1方向、D2…第2方向、GP…隙間、R1、R2…半径方向。