(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】建物、構造物のタイル落下防止工法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
E04F13/08 101V
E04F13/08 102F
E04F13/08 102L
E04F13/08 102N
(21)【出願番号】P 2023006489
(22)【出願日】2023-01-19
【審査請求日】2023-01-19
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509270904
【氏名又は名称】冨田 穣
(72)【発明者】
【氏名】冨田 盟子
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-013653(JP,A)
【文献】実開平03-095430(JP,U)
【文献】特開平06-248781(JP,A)
【文献】特開平04-285256(JP,A)
【文献】特開2005-139896(JP,A)
【文献】特開平09-264062(JP,A)
【文献】特開平10-339013(JP,A)
【文献】特開2014-173323(JP,A)
【文献】特開平07-317273(JP,A)
【文献】特開2005-273320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物、構造物の柱、壁コンクリートの表面1にモルタル2または接着剤で裏足あり
3を貼るタイル工事において、複数枚の裏足ありタイルを面的なブロック単位として落下防止を図るとしたもので、タイル裏面において、線材を網目に配し、タイル1枚に少なくとも1箇所の交点を生み出し、交点に交点部材を配してタイル落下防止ネット9とし、前記交点部材はタイル裏面の溝部5に嵌合して固定する平面視が概矩形の塊で成り、前記線材8は前記交点部材から隣接タイルまたは一つ飛びのタイルまでに伸びる水平方向、鉛直方向または斜め方向の線材で、前記タイル落下防止ネット9は方形、ひし形または3角形を基調とする網目を形成するタイル裏面のタイル落下防止ネットであって、前記交点部材、強化プラスチックまたはプラスチックの塊で成り、前記線材は、糸状の強化プラスチック、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ
またはピアノ
線で成り、前記ブロック単位の複数枚の隣接タイルまたは一つ飛びのタイルの裏面の溝部に、前記タイル落下防止ネットの前記交点部材を嵌合して装着することで複数枚分の固定点とし、複数枚の前記隣接タイル間または一つ飛びのタイルの裏面間を結ぶ前記線材とでタイル貼り工事のタイル相互間を連結することを特徴とする建物、構造物のタイル落下防止工法。
【請求項2】
請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに裏面側で連結する工
法であって、前記網目のタイル落下防止ネットを、あらかじめ連結するブロック単位数に応じた水平方向または垂直方向の長さを有する前記タイル落下防止ネットで、あるいは隣接する前記ブロック単位間の切れ目部12に装着する連結用の継手部部分ネット11で、または前記ブロック単位から1網目分を張り出した拡張タイル落下防止ネット13によるタイル落下防止ネットでタイル裏面側から面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする請求項1に記載の建物、構造物のタイル落下防止工法。
【請求項3】
請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間において表面側で結する工
法であって、隣接ブロック単位ごとに裏面側のタイル落下防止ネットの連結が途切れる切れ目部に対して表面側からの線材の敷設により、切れ目部を横切ってまた折り返すことで前記切れ目部の上下または左右のタイル目地部分を周回するとした工法で、前記ブロック単位のタイル貼り付け後の目地材充填前の工程で、前記ブロック単位の中央部付近のタイルの目地部および前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を横切る線材14または縦断する線材15を、隣接ブロック単位のタイルを周回するように配置、あるいは前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を挟む両側タイルの外側目地部において、前記切れ目部を挟んで周回する線材16を敷設し、いずれもその後に目地材を充填することで、途切れる隣接ブロック単位の切れ目部の連結を補完するとした、タイル表面側からの面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする請求項1に記載の建物、構造物のタイル落下防止工法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のタイル落下防止工法に用いるタイル落下防止ネットで、タイルの落下時に掛かる引張強度を有することとし、複数枚のタイルをブロック単位とし、タイル裏面に線材を
方形、ひし形または3角形を基調とした網目に配し、タイル1枚に少なくとも1箇所の交点を生み出し、交点にタイル裏面の溝部に篏合する平面視が概矩形の塊の交点部材を配してなるタイル落下防止ネット
とするもので、交点部材は、強化プラスチックまたはプラスチックの塊で成り、線材は、糸状の強化プラスチック、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ
またはピアノ
線から成り
、うち腐食の恐れがある金属製の線材については、樹脂被覆、あるいは塗装、メッキの腐食防止処理をするとした、ブロック単位のタイル落下防止ネット、前記タイル落下防止ネットを長尺としたロール巻タイル落下防止ネット、
前記タイル落下防止ネットを隣接
する前記ブロック単位間の切れ目部に用いる
こととした連結用の継手部部分ネット、ブロック単位のネットから水平側および垂直側に1網目分を張り出した拡張タイル落下防止ネット、またはブロック単位のネットから垂直側に1網目分を張り出した拡張タイル落下防止ネットを長尺としたロール巻拡張タイル落下防止ネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物等外壁タイルの落下防止工法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物等の外壁タイルの落下、それに伴う事故が多数報告されている。児童の頭に落下すれば大変である。特に、道路歩道沿いのビル、公共建築では落下は許されない。特許情報プラットホームで検索したところ「タイル 落下防止」で、55件あり該当するのは6件であった。特許文献1は、タイルの表面側に粘着テープで貼り、ユニットとするものであり、裏面側で線材を接着しコンクリート面にアンカーで定着し、その後モルタル貼りするので、コンクリートにアンカーした線材が邪魔となり施工が困難、またはコンクリート打設前の鉄筋に固定するものだが、本願はアンカーを取らず、コンクリートはすでに打設済みの固い壁面なので異なる。特許文献2は、タイルの裏足に横断する新たな溝を掘って線材を配するものだが、本願は、裏足に新たな溝を設けない。線材は裏足を跨ぎモルタルとの付着を活かすので異なる。特許文献3はトンネルのタイルパネルで、タイル裏面の表面に帯状の連結材を貼着しているが、本願は、窪みのある溝や裏足間への嵌合を利用しているので付着の経年劣化もなく物理的に脱落しないので異なる。特許文献4もトンネル用で大規模で、壁に穴を明けタッピングネジやアンカーボルトを随所に用いているが、本願は壁に穴を明けてタイルを止めることを基本としてないので異なる。特許文献5は裏足に穴をあけ鉄筋に固縛するもので、そのあとにコンクリートを打設するものだが、本願は、穴をあけず、鉄筋に固縛せず、すでにコンクリートは打たれている時点の壁表面でのモルタルを介した落下防止なので異なる。特許文献6は、厚みのあるタイルパネルに貫通穴を設けるもので、大規模の落下防止となるもので、本願はタイルに穴を明けないので異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-36856
【文献】実登3206490号
【文献】特許第5892529号
【文献】特許第5835763号
【文献】特開2003-74148
【文献】実登第3004150号
【0004】
【文献】平成20国土交通省告示第282号「タイルの10年に1度の全面的打診の義務化」の通達
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物、構造物のタイル落下は大事故を起こす。特に、小学生の頭に当たれば大きなニュースとなる。設計者か、施工業者の施工不良か、はたまた経年劣化によるものか、建物管理者か。責任者を判別しがたいでは済まされない。落下の確率が小さい、品質管理の許容値範囲内である、瑕疵期間を過ぎている、といっても言い逃れは許されない、結果責任である。いずれにしてもタイル建物、構造物の設置数は数えきれないほどであり管理しきれないといっていいほどであるがその事故は重大であるため、建物には10年ごとの法定点検が課せられたが、施工不良、目に見えないところの内部の欠陥の発見、原因特定、将来落下しそうな部位の発見は容易でない。特に、高所となると足場接近によるたたき点検となるが10年ごとの足場設置、経費負担はあまりにも重い。運よく浮き箇所が発見でき、補修できればいいがいつまた劣化しないとも限らない。不安だらけである。基本的には、コンクリートを打設した後の柱や壁の表面と、モルタルや接着剤を介したタイル裏面との付着を期待するものだが、地震による付着の剥がれ、接着力の経年劣化は解決できない。効果的対策が必要だ。そこで、複数枚のタイルをまとめて型枠としてコンクリートを打設する方法、いわゆる先付け工法が考えられているが、タイルを先に板状に組まなくてはいけないので重く、段取りが大変だ。高層ビル建築や大規模工事には採用されているものの一般向きでない。一般には、
図1に示す断面図の、柱や壁のコンクリートを打設した後からその固化、乾燥したコンクリート表面1にモルタル2、接着剤を施し、タイルの裏面との付着力を利用しタイルを貼り付ける後付け工法となる。そのために、タイル3の裏面に裏足4といわれる突起と裏足間の溝5を設けより付着力を高めている。先付け工法では、タイルが大型で、型枠としての機能を持つためしっかりとタイル間を固定している。あるいはコンクリート打設前の鉄筋と結んでいる。後付け工法では絶対的対策がないため施工不良とならないよう管理している。高い建物や、公共建物など影響の大きい建物では後付け工法を避けている。後付け工法の多くは低い箇所の施工になる。しかしそれでも限界がある。接着剤で接着しても10年後、20年後の経年劣化で付着が急激に低下し、あっけなく剥離、剥落する。落下に対して、2重の安全を講じる必要があるといえる。そこで、フェールセーフの考え方で、一枚一枚の個別でタイルの剥がれはあるとしても、それにはタイムラグがあり、残りの全体として落下しなければよいのである。すなわち、複数枚のタイル間をロープ、線材、そのネットで連結することで部分的な施工不良、予期し難い欠陥、タイムラグによる落下を全体として面的にカバーする。一枚であっても落下しないよう相互の連帯で踏みとどまるとする命綱を設ける。幸いにして、タイルの裏面には、モルタルとの付着のために裏足という凸凹がある。その窪みの凹部を固定の基地として、具体的には網目状の
図2,3,4に示すように落下防止ネット9をタイルに張り巡らせネットワークを構築する。ネットの中心は網目の交点となる交点部材7であり、タイルごとに設け裏足間の溝に嵌合、接着して固定点とする。ネットの線材8は、基地の固定点を中心として、タイルを上下方向、左右方向に連結する。タイル1枚の付着がはがれたとしても上下、左右の全体付着、連結により線材でタイル間が網状に連結している状況、ネットワークを作り出すことで、個々のタイル落下を防ぐ課題を解決できる。タイル施工の貼り付け模様、形状は種々あるが、代表として
図2の通し目地貼りでは、目地は水平方向と、垂直方向の直線2方向で、裏面のネットの網目も2方向に沿い水平方向が優先、
図5、
図6の芋目地貼りでは、目地が交互にクロスするので、裏面の網目は主として斜め方向となるが一つ飛ばしの方形もやむを得ない。貼り方向で、タイルの縦貼りの場合は、縦方向が優先となる。
外壁タイルは裏足有タイルが多い。落下原因には、モルタルの付着が弱い場合の、施工不良、経年劣化が考えられる。前提として、これら欠陥は生じ得るものとして、一部付着が外れても命綱の連携作用、チームワークで落下を食い止める。基本として裏足の溝を利用した嵌合効果、あるいは接着による固定点と、そこから交差する線材による2方向の確実な綱の複数枚、広範囲の連結、落下防止ネットによる連結である。1方向は、溝沿いとすれば付着の問題はない。その直角方向、斜め方向では裏足の突起部を跨ぐことになるが、モルタル内に入るので細い線材の連結であればタイル裏面とモルタルとの間の付着面積を減らすことはない。むしろ線材とモルタルの絡み効果が大きい。施工が容易であることも条件だ。さらには、竣工時と、10年後の点検、検査でネット、線材が内在していることの確認が容易であること、特に高所、公共建物では検査記録が残ることが求められる。非破壊検査では、
図16に示す裏面に配置する金属探査が有効である。金属反応のない腐食しない材料選択にも金属片をつけるなど配慮が必要である。穴あけなどの工程が加わるのも好ましくない。粘着テープではその幅で、タイル裏面とモルタル、接着剤との付着面積が減り、将来的にもモルタルとの付着力が落ち剥離する恐れがある。経年劣化で平面的な接着力が失われることを承知していなければならない。
これらを総合的に考慮して、落下防止の方法として、ここでは、タイルは水平方向に長いとし、タイル裏足も水平方向として記す。貼り付け方法は、主に通し目地貼りで説明するが、芋目地貼りなど他はそれを活かした個別の応用で解決できる。
タイル裏面の落下防止ネットは、複数枚のタイルを面的、ネットワークにまとめた
図2に示すブロック単位(タイル3*6=18枚)を基本とする。しかし、そのブロック単位の隣接ブロック間ごとに落下防止ネットの切れ目が生じるので連結が途絶えることが次なる課題である。これには、1つ目の方法は、裏面側の連結施工として、ブロック単位のネットを裏面側(
図7,8,9)で継ぎ足して連結することでネットの連続性を拡大する方法である。水平方向の拡張はタイル枚数が増え重くなり、垂直方向の延伸は、下地のモルタルに負荷がかかり重みで垂れる恐れがある。落下方向は、重力方向なので、一蓮托生となる垂直方向より水平方向への連結を優先する。場合によっては芋目地貼りでは、タイルの目地線が一直線でなく交互となっているので落下しづらいこと、交差する目地線が煩雑なことから、垂直方向の連結を省略してもよいといえる。面的拡大は重くなり取り扱いが難しく作業員の人数増を伴うなどの課題がある。裏面をネットでさらに連結して垂直の壁面まで持ち上げて施工するのは大変である。重みを支える型枠、作業員の補助、訓練などの工夫が必要である。立ち居のまま隣接ブロック間を連結するのも、下地のモルタルがタイル裏面の連結ネット作業時に付着したり、モルタルの固化までの時間の余裕がないので焦った作業となる可能性があり施工不良の原因となる。ブロック単位の連結を延長、拡大するにあたっては、施工性を保つ工夫が必要である。
図18の支持型枠とか、作業員の増、技術習得が必要である。落下防止ネットは、水平方向に延長すれば長尺となり、長尺を生産してロール状に巻くと都度必要長に応じて切断して重宝できる。
2つ目の方法は、表面側からの連結施工として、
図10に示す裏面の落下防止ネットが見えるブロック単位の中央部付近の目地部の上、表面側から線材で押さえる方法、または
図11に示す隣接ブロック単位の落下防止ネットが途切れる目地部を跨いで隣接ブロック単位を連結する方法がある。言い換えれば、ブロック単位の壁への貼り付け作業がコンクリート壁全面、全体的に終わった第一段階工程での、最終の目地材充填施工前に、中央部付近の目地部を線材で囲む方法、またはブロック単位を跨ぐ目地の両サイドのタイル外周の目地間に線材を周回するように敷設し、そのあと最終段階の目地材を目地に充填することで、ブロック単位の連結が得られ連続性の途切れをなくすという課題を解決できる。この方法では、壁にはブロック単位ですでに貼り付けているので、重いとか、作業員の補助の問題が解決される。施工もタイル裏面側と関係なく表面側からなので簡単明瞭である。
また、経年の既設の建物、構造物のタイル落下防止対策も喫緊の課題である。
図12に示すように、まず既設の目地材を除去し、次に目地間にタイル側面に接触し、摩擦抵抗で落下抵抗があるとする小突起を有する線材18、19、20などを敷設し、新しい目地材27を充填することで解決できる。
以上、良質なタイルの落下防止施工ができたとしても、タイル裏面側は隠れて見えないため、実際に落下事故が生じると原因究明、責任者特定とかの課題が残る。落下防止ネットが施工されていることの証明が工事検査時、10年後の点検時に、落下事故時の説明で手抜き工事でない証しのためにも非破壊検査ができることが有効な手段となりうる。
図16に示すように交点部材、線材に金属輪、金属片21絡ませておくと、非破壊検査に役立つ。後悔しなくて済む。全体として、落下防止ネット、その交点部材、線材は材料に応じて防錆に配慮する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明の建物、構造物のタイルの落下防止工法は、建物、構造物の柱、壁コンクリートの表面1にモルタル2、接着剤でタイル3を貼るタイル工事において、複数枚のタイルを面的なブロック単位、
図2参照、として落下防止を図るとしたもので、タイル裏面の溝部5に嵌合または接着して固定する交点部材7と、前記交点部材から隣接タイルまで、または一つ飛びのタイルまでに伸びる水平方向、鉛直方向または斜め方向の線材8とで、方形またはひし形、3角形を基調とする網目を形成するタイル裏面のタイル落下防止ネット9であって、前記タイル落下防止ネットは強化プラスチック、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金網などで成る交点部材と線材の構成で、前記ブロック単位の複数枚の前記隣接タイルまたは一つ飛びのタイルの裏面の溝部に前記交点部材を嵌合または接着して装着することで複枚数分の固定点とし、複数枚の前記隣接タイルまたは一つ飛びのタイルの裏面間を前記線材とで網目状のネットワークに連結するとしたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに裏面側で連結する工法であって、
図7Aに示す水平方向または
図7Bに示す垂直方向の長さを延長したタイル落下防止ネット、
図7Cに示す面的に拡大したタイル落下防止ネット、あるいは
図8に示す隣接する前記ブロック単位間の切れ目部12に装着する連結用の継手部部分ネット11、または
図9に示す1網目分を張り出した拡張ネット13によるタイル落下防止ネットで、タイル裏面側から面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項1に記載のブロック単位を、隣接するブロック単位間でさらに表面側で連結する工法であって、隣接ブロック単位ごとに裏面側の連結が途切れる切れ目部に対して表面側から連続性を延伸する工法で、前記ブロック単位のタイル貼り付け後の目地材充填前の工程で、前記ブロック単位の中央部付近のタイルの目地部および前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を横切る線材14または縦断する線材15を、隣接ブロック単位のタイルを周回するように配置、あるいは前記隣接ブロック単位の前記切れ目部12を挟む両側タイルの外側目地部において、前記切れ目部を挟んで周回する線材16を敷設し、いずれもその後に目地材を充填することで、途切れる隣接ブロック単位の切れ目部の連結を補完するとした、タイル表面側からの面的な連結を拡大するとしたことを特徴とする。
【0009】
また、既設の建物、構造物の柱、壁コンクリートのタイルが経年劣化またはタイルの落下防止対策が図られてない場合のタイル落下防止工法であって、タイル目地間の目地材を除去し、露出した溝にタイルを囲む周回状に線材を敷設することとし、目地幅間のタイル側面壁に接触し摩擦抵抗となる小突起物を、1枚のタイルの長辺方向に少なくとも1か所に加えた線材とし、前記小突起物は、線材自体の随所に設けた線材18、線材の円周方向の周囲に線材方向にスライドできる穴あきの数珠状に設けた線材19、または目地間の線材敷設後に、表面側から別個の小突起物20を線材周りに挿入、装着するとし、前記線材、前記小突起物は樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施したものとし、線材敷設後に新たなタイル目地充填材27を充填することを特徴とする。
【0010】
また、前記ブロック単位の裏面側の前記タイル落下防止ネットまたは表面側施工の前記線材を樹脂被覆または塗装、メッキを施した金属製とし、あるいは樹脂製の金属製でないものにおいては前記タイル落下防止ネットまたは表面側施工の前記線材の少なくとも1ケ所に防錆処理をした金属輪、金属片21を装着し、いずれもこのことで非破壊検査に資するとしたことを特徴とする。
【0011】
また、複数枚のタイルを裏面側で連結する交点部材および線材で構成する網目状のタイル落下防止ネット9または前記タイル落下防止ネットを長尺としロール状に巻いたタイル落下防止ネット、および隣接ブロック単位の切れ目部に用いる連結用の継手部部分ネット11または1網目分を張り出した拡張ネット13あるいは垂直側に1網目分を張り出した前記拡張ネットを長尺としロール状に巻いた拡張ネットは、強化プラスチック、プラスチック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金網などから成り、タイル裏面の溝に嵌合または接着して固定する交点部材と、2方向に伸長する線材の構成で成る方形またはひし形、3角形を基調とした網目状のネットで、前記交点部材は、タイル裏面の溝に嵌合または接着することで固定点となり、前記線材はタイル裏面の溝方向、あるいは溝と直角方向または斜め方向の裏面を這うことで方形またはひし形、3角形の網目を形成し、タイルの落下時に掛かる引張強度を有するとし、腐食の恐れがある材料については、樹脂被覆、あるいは塗装、メッキの腐食防止処理したタイル落下防止ネットまたは前記タイル落下防止ネットを長尺としロール状に巻いたタイル落下防止ネット、および隣接ブロック単位の切れ目部に用いる連結用の継手部部分ネットまたは1網目分を張り出した拡張ネットあるいは垂直側に1網目分を張り出した前記拡張ネットを長尺としロール状に巻いた拡張ネットを使用することを特徴とする。
【0012】
また、既設の建物、構造物のタイル落下防止の補修工事に用いる線材、小突起物で、タイル目地間の目地材撤去後の目地間に設置するもので、タイル目地間のタイル側面壁に接触するとし、線材自体の随所に小突起物を設けた線材18、線材の円周方向の周囲に線材方向にスライドできる穴あきの数珠状の小突起物を有する線材19、または目地間の線材敷設後に、表面側から別個に挿入、装着するとした線材に付加する小突起物20で、いずれも樹脂被覆または塗装、メッキの防さび処理を施すとした小突起を有する線材を使用することを特徴とする。
【0013】
また、タイル裏面のネットを装着したブロック単位を連結するときに負担となる重量を支え、かつタイル裏面側の連結の施工性を補助するための
図18に示すようなタイル貼り付け支持型枠または作業補助型枠であって、前記型枠は、鋼板、またはプラスチック板、木材板で構成し、外周に設けた大枠と、各タイル目地間に設けた網目状小枠から成るタイル落下防止施工用の型枠を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上から物体、タイルが落下するという事故に遭遇すれば、突然で予期せぬことであり防ぎようもない。不運では片づけられない。被害者は通行人だが誰になるか想像もできない。しかし、施工者、管理者は特定できる。タイルの施工不良は、数パーセントといわれ、その程度は許容されているとの言い訳があるが、落下すること、危害に対しては100パーセント結果責任だ。瑕疵期間が過ぎているとしても許されるものでない。彼らも事故が起きないことを祈るばかり。これではいつか大きな社会問題になりかねない、事前に課題が判明しているのに課題が解決できてない。本発明により上から落下する危険性がなくなれば平穏に街を歩ける。10年ごとの費用負担の大きい点検を必要としない。施工者、管理者も枕を高くして眠れる。点検でタイルの浮きが発見されると、落下の予兆である。本工法で連結すれば、タイル1枚の浮き兆候から落下までのタイムラグ、さらにタイルブロック全体の抵抗で予防できる。新築工事、補修箇所は完璧となる。いずれそのうちに本工法による新築が増えると落下問題は徐々に解消されていく。ところが、落下対策、連結対策しているものの、内部が見えなければ、落下対策の施工をしたかどうかは確認できず疑われる。施工したことの証しとして、金属探査機で見えない内部の連結が可視化できることが大事である。安心につながる。さらには、施工が古い建物、建造物のタイル壁は経年劣化していると考えられ、既設のタイル貼りの目地間のモルタル、樹脂を表面から除去し、線材を幾何学的に張り巡らし、新たに目地充填することで落下防止を図る事ができる。これで施工者も建物保有者、管理者も責任のなすりあいをすることなく枕を高くして眠れる。まさしく予防保全の目的とするところである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】通し目地貼りの、タイル裏面の方形の落下防止ネット平面図、
【
図3】タイル裏足の溝に嵌合した交点部材と線材の斜視図
【
図5】芋目地貼りの、ひし形、3角形のネット平面図
【
図7】ネット拡張連結の水平A、垂直B、拡大C方向の説明図
【
図8】隣接のブロック単位間を連結する継手部部分ネット平面図
【
図10】表面側から連結する、ブロック単位の中央付近の線材配置平面図
【
図11】表面側から連結する、ブロック単位の切れ目部を挟む線材配置平面 図
【
図12】既設建物のタイル目地部の線材敷設による補修説明図
【
図13】既設建物の目地溝に敷設する小突起物を有する線材
【
図14】スライドできる数珠状の小突起物を有する線材
【
図15】タイルの溝の敷設線材周囲に挿入、装着する小突起物の断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面及び詳細な説明の全体を通じて同じ要素を示すために共通の参照符号が用いられる。
【0017】
隣接する複数枚のタイルを貼り付けのブロック単位とし、複数枚のタイル間
を、複数枚相当分の固定点を中心とした網目状のネットを張り巡らせたタイル
落下防止ネットで連結することで、全体としてタイルの剥落による落下防止と
する。タイル裏面の溝または裏足間に嵌合または接着する交点部材と、そこで
交差する2方向の線材で成る方形、またはひし形、3角形を基調とした網目状
の落下防止ネットであって、タイル裏面の溝に交点部材を嵌合することにより
固定点となり、2方向に伸びる線材とで隣接のタイル裏面間の連結となり面的
に落下防止ネットワークを形成する。交点部材、線材ともに、裏面側のモルタ
ルに埋もれるので固着力、周辺付着力が働き、さらなる落下抵抗を増し、落下
防止の効果を発揮する。1枚のタイルの短辺4.5cm、長辺9.5cm、目
地間隔3~4mmとして、通し目地貼りを基本として記す。芋目地貼りでは長
辺14.5cmのタイルでそれ以外のタイル、貼り付け方法となっても応用で
きる。
タイル落下防止ネットの交点部材および線材は、強化プラスチック、プラスチ
ック、ステンレス、針金、ワイヤー、より線、ロープ、ピアノ線または溶接金
網などで成り、強化プラスチック、プラスチック、ステンレス以外は、腐食防
止のために、樹脂被覆、塗装、メッキなどを施すものとする。タイルはコンク
リートが固化した柱、壁面にモルタル、接着剤で下地処理した上から貼り付け
る後付け工程とする。平面的な溶接金網では裏足間の固定点として嵌合、接着
するために固形の突起を付加し交点部材とする。
ここでは、(実施例1)で複数枚の前記タイルをブロック単位とし、タイル裏
面側のタイル落下防止ネットにより連結する基本のブロック単位について掲げ
る。ブロック単位は、タイルの大きさ、重さ、施工性、貼り付け模様さらに、
建物の重要度、落下影響度によって異なる。
次に注意しなければならないのは、複数枚のタイルのブロック単位では基本的
には面的に連結施工できているとしても、壁の面積はまだまだ広く、ブロック
単位ごとに連結の切れ目が生じるので、さらなる落下防止を図る。連結の範囲
を拡大する方法として、タイル裏面側のネットを拡張してネットで裏面側を直
接連結する方法(実施例2~5)と、タイル表面側からの方法として、裏面側
をネット連結したブロック単位を線材で上から間接的に2次元、3次元に押さ
えることで連結する方法(実施例6)がある。
また、経年の既設の建物、構造物の落下対策(実施例7)も重要である。
これらは、事故が起きた時の検証として、正しく施工されているかが後に立証されることとして非破壊検査対応(実施例8)も大切である。
全体として、落下防止ネットおよび後に敷設する線材には、防錆性能が求められるのは当然のことである。
【実施例1】
【0018】
図2に示すタイルの通し目地貼りでは、水平に3枚、垂直に6枚配置すると18枚、目地幅を入れて30cm*30cmが単位広さ、ブロック単位とする。タイル1枚1枚に裏面の裏足の溝に嵌合する固定点を形成し、タイル枚数と、網目の交差する固定点の交点部材数が一致する。これがタイル裏面におけるタイル落下防止ネットによる連結となる基本の1ブロック単位である。これにより18枚の複数枚相当のタイルがネットで連結されるので、最小限の基本となるタイル落下対策はできたと評価できる。ここでは、18枚の場合の30cm*30cmを基準とする1ブロック単位を面的標準ブロックとする。
【実施例2】
【0019】
隣接ブロック間に生じるネットの切れ目を連結する方法として、タイル裏面側でネットを連結する方法がある。まず、タイル落下防止ネットを
図7Aの水平方向に、または、
図7Bの垂直方向に、あるいはそれらを含む面拡大
図7Cの方向、にあらかじめ延長、面的に拡張した連続ネットを使用する。注文時にあらかじめ延長、または面的に拡張したネットとする。タイル貼り付け前の製品納品時、現場での準備作業時に、隣接のブロックも含めた連続ネットが嵌合してあるとすれば、切れ目部の連結の手間が省ける。すなわち、2ブロック単位以上の拡大ネットとすれば連結作業は1工程少なくなる。ただし、大きすぎるのでネット製品が可能か、納入時に運搬できるかなどの問題があり、壁に施工する時に持ち上げる重量が単純に倍増の負担となるので、作業性からタイル枚数、ネットの面積を独自に求めてもよい。補助員が必要になる場合もある。納品時にも段ボールは2倍大きいものに入れるか、従来段ボール箱ならブロックの裏面が重なるようにネットを折り返し、タイルブロックをたたみ重ねるかの工夫が必要となる。壁施工時では垂直方向に延長、継ぎ足すより、まず水平方向に延長、継ぎ足すことを考える。垂直方向の延長は、タイル重みで、モルタルが垂れる恐れがある。施工に工夫すれば裏面の嵌合を増やして長さをさらに延長することもできる。できるだけ長く連続としたネット製品となれば、丸太のようなロール状の巻き付けネット製品も可能で、現場の壁寸法に応じて、カットできるので重宝だ。ただし、垂直方向には相変わらず継ぎ目が生じることを忘れてはならない。それでも、連続性が、重さ、施工性で、いつか途絶えるので、重量支持のタイル嵌め込みの
図18の大型の施工型枠、例えば内部に目地間を仕切った特性型枠で平面床に置いたタイルの目地部を嵌め込むことで、持ち上げて壁に向かって施工するときに、形崩れによるタイル落下防止や重量を保持する補助具となり便利で施工が楽になる。現場の必用長に応じた型枠、手配などの工夫である。この場合も壁への施工前に裏面のネットを嵌合しておく。ネット嵌合したままタイル表面側を、枠の裏側から入る、あるいは小枠に
配置したタイルを伏せておき、裏側からネットを嵌合する。さらにはいっそう、ネットを面的に拡大して、継ぎ目を極力少なくし、あるいは無くし、一気に貼り付ける。その面積相当の拡大型枠、作業員が必要と思われるが継ぎ
目連結の作業が少なく、後々の落下の心配がないので考慮に値するといえる。ブロックのタイルはあらかじめ表側に仮シートを貼っておくか、目地
部に小型枠として各タイルを収めた状態で貼り付け、固化前にそのまま外す
方法と兼用することができる。
【実施例3】
【0020】
図8に示す別途の継手部部分ネット11を用いて継ぎ足す方法で、ブロック単位の隣接ブロックとの切れ目部12に裏面側から部分ネットで連結する方法である。貼り付け施工前の準備作業として裏面で、別途の継手部部分ネットをあらかじめ継ぎ足す方法であるが、壁への立ち作業での施工時に順次継ぎ足していく(実施例4)の方法もある。継手部部分ネットは、切れ目の両サイドのタイルに嵌するネットである。この場合、ロール状の巻き付けネット製品であれば、落下防止ネットの両側の交点部材を残しその外側で網目の線材を切断して使用できる。タイル貼り付けの前の準備作業となる。以降は(実施例2)と同じ作業となる。ただし、この場合、交点部材が2個の並びとなったり、線材の長さが長くて余りが出て垂れたりするので、継手部部分ネットは目地間隔の幅を考慮して、短じかめとした方が煩雑でない。
【実施例4】
【0021】
裏面側の準備作業としてできるだけ連続としても、いずれどこかで施工の切れ目、限界が生じ、水平方向、または垂直方向のブロック単位間に途切れ、切れ目12ができ、連続が途切れる。そこで、その次は壁のタイル貼り付け時の立ち作業で連続とする。壁にはモルタルが下地にあること、ブロック単位の切れ目の、隣接する両側のタイル裏面を持ち上げて継手部部分ネット11を嵌合し連続とすることから、タイル裏側での作業は熟練が必要となる。この場合の工夫として、準備作業として、片側端のタイル裏面にあらかじめ継手部部分ネットを嵌合しておき、壁貼り付けの立ち作業時には残りの片側のタイル裏面を持ち上げて嵌合することを考える。連結用の継手部部分ネットは、干渉しないよう、若干短めの線分長とするとよい。あるいは、嵌合する裏足の溝を上段あるいは下段側にずらしてもよい。この場合も、ロール状の巻き付けネット製品であれば、落下防止ネットの両側の交点部材を残しその外側で網目の線材を切断して使用できる。また、貼り付け時に次のブロックの裏面にネットを挿入、装着することになるので端部を持ち上げ、裏足間に装着する必要があり面倒である。片側のタイル裏面を持ち上げて嵌合する作業は、下地のモルタルが付着しやすいので、ネット張り出し部やタイル裏面に剥がしやすい粘着紙、例えばカイロの半分真ん中の切れ目のシールのようなものを貼っておくのも工夫である。継手部部分ネットは、ブロック単位のネットより短めの別途とした方がよいといえる。
【実施例5】
【0022】
ブロック単位のネットを、
図9に示す1網目相当13を延長した長さで張り出した製品、あるいは現場で張り出しの1網目を残してカットする。モルタルへの貼り付け時の作業が半分となり、順次隣接ブロックのタイル裏面に嵌合する。延長方向は、水平方向、鉛直方向の両方となるので、支える人が必要となる。手間となるがタイル施工面の壁全体面積相当、全面が順次連結できる成果は大きい。裏面の嵌合接続とモルタル面への貼り付け作業との同時施工となるので要領を会得する必要がある。ただし、延長する1網目長は、水平距離で若干短くした方が隣接ブロックの嵌合部材との干渉、重複を避けることができる。垂直方向も1裏足の山長さほど短くし手前の裏足の溝に嵌合させる方が嵌合部材の干渉、重複を避けることができる。ただし、網目をあらかじめ捩るか折り返して短くできるならば本来のネット製品のままで利用できる。もしくは網目長さはそのままで、線材部を曲げて、または遠回りして嵌合の交点部材が干渉しない工夫も有効といえる。この場合も、延長分を短くした別途の継手部分ネットをあらかじめ裏面側でセットする方法とで施工性を確認しておくことが望ましい。また、垂直側に1網目分を張り出した拡張ネットを長尺のロール状の巻き付けネット製品とすることも有効である。裏面側で1網目分を延長する場合、裏返しして壁に貼り付けるので上下裏返しでは同じ右側となるが、左右をひっくり返すと右側が左側になるので注意を要する。
【実施例6】
【0023】
タイル表面側でネットを間接的に連結する方法を記す。実施例2、3、4、5の裏面連結は、モルタルの硬化との関係で時間、ネットのモルタルへのくっつき、べたつき、作業の手間など何かと施工があわただしい。そこで、全く別の方法として、ブロック単位の裏面ネットは措置済みで、壁への貼り付け作業、壁の全面的施工は1次的に完了した時点での連結施工を提案する。後施工でも単位ブロックの落下防止ネットより外側の、落下防止効果がある表面側からとなる押さえなので有効である。目地部充填の前のなるべく下地のモルタルが硬化する前の段階で、裏面のブロック単位に施工したネットを目地部の間隔を利用して表面側から、
図10に示すブロック単位の中央部付近の目地間に水平線材14、垂直線材15を挿入する。上から線材で裏面の落下防止ネットの目地間部分を間接的に押さえるので2次元、3次元の立体的に押さえるといえる。隣接ブロック間もそのまま延長して線材を長い周回状に閉じる。これにより独立したブロック単位はさらに落下しないといえる。あるいは、ブロック単位のネット間は切れ目があるので、
図11に示すようにそこの目地間を跨ぐように連結を補完し、隣接タイルの両サイドの外側を周回する比較的長い延長の矩形型に閉じた線材16を敷設する。いずれも、広域的に俯瞰して、全体を網羅する面的な配置を描く。ひとまず全体的に、全面積的にタイルを貼り終わった後の目地材充填までのゆとりがある時間を有効利用できる。すなわち、タイル施工において表面から充填する目地間のもともとの工程時間内を利用して線材を敷設することで、充填材で覆われることとなり線材が保護される。壁全体では長い直線敷設とすると端部の止めでコンクリートアンカーや曲げ上げ定着などが必要となり、端部処理に頭を悩ます。そこで線材は、基本的に切れ目部を跨いだ、あるいは超えた左右、上下のタイル目地間に周回で配置する方法が望ましいといえる。周回する線材は、閉じて、端部処理は重ね継手とするのが望ましい。言わずもがな線材の端部断面は、さび汁の滲み出で美観を損ねるので防錆処理が必要である。
目地材の厚みはタイルの厚みであり、かぶりが浅いので、線材はプラスチック
では紫外線劣化の恐れがあるといえ、樹脂被覆、塗装、メッキした防錆処理の
線材が望ましい。非破壊検査に対応して、金属製の線材は外から見えない内部
の完了検査、後年の法定検査に金属探査で証明されるので有効である。強化プ
ラスチック線材では、線材の途中で部分的に金属を付帯するとよい。防錆には
線材端部の断面処理が必要である。
【実施例7】
【0024】
経年の既設のタイル建物でのタイル落下問題は深刻である。できるだけ対策し
たいところだが、壁全面に剥がすわけにはいかない。そこで、不陸したタイル
は剥がしてやり直すとして、ここでは、タイル目地間の経年劣化した目地材を
除去して、
図11に示す新たに線材17を敷設する方法を考案した。線材は変
化のない細い直線のままでなく、タイル両側の側壁に接触し、摩擦抵抗を増や
した小突起物を設けることとし、線材に小突起物18を設けたもの、線材の周
囲を囲み線材方向にスライド可能な数珠状の小突起物19を有する線材、ある
いは、別個のものとし後付けで目地間に挿入する小突起物20がある。目地部
のタイル厚み分の側面壁とモルタル部、目地充填材との摩擦抵抗を活用するも
のとする。
かぶりが浅いので、線材はプラスチックでは紫外線劣化の恐れがあるといえ、
樹脂被覆、塗装、メッキした線材が望ましい。非破壊検査に対応して、金属製
の線材は外から見えない内部の完了検査、後年の法定検査に金属探査で証明さ
れるので有効である。強化プラスチック線材では、線材の途中で部分的に金属
を付帯するとよい。防錆には端部断面処理に配慮。線材の配置は、劣化状況に
応じて、すべてのタイルの全周辺の目地間とする密なる配置から、順次、疎な
る配置の選択がある。
【実施例8】
【0025】
タイル施工後は、落下防止対策がされているかどうか判定できない。落下事故があっても、にわかには原因特定ができない。そこで、落下防止ネットが施工ざれているかどうかの外部からの非破壊検査が重要となる。完了検査、10年後の点検調査、落下事故後の原因調査に、非破壊検査が有効であり、金属探査結果データが10年間程度以上は保管されることで、いつでも照合も可能となる。プラスチック網、ステンレス網には、樹脂被覆、もしくは塗装した金属片21をつけることできちんと施工した証しとしての金属探査ができる。落下防止ネットに当初から設置できれば良いが、設置が困難な場合は後付けで、
図16に示す固定点となる交点部材に設けるとか、線材間にU字形の金属片を閉じる方法がある。
【実施例9】
【0026】
タイルを連結すればするほど重くなって施工が困難、または作業補助員が必要となり、かつ熟練を要する。施工補助のために、
図18に示す大型型枠が役に立つ。支持部取っ手23、あるいはネットの連結作業時に一時的に取り外しができるとした枠、取り外し可能な枠22は、ネットの拡張、連結の立ち居の作業時に壁のモルタルがネットに付着しないための工夫である。邪魔になる枠を外すことができる。床での準備作業として、タイルを並べ、目地間隔をそろえて裏側からネットを張る作業用型枠、壁に貼る立ち居の場合はすでに裏面側のネットがあるので手前側には崩れない。
【実施例10】
【0027】
そのほかの実施、説明を列記する。柱、壁の端部、角部の水平、垂直部位のいわゆる役物は、落下防止ネットを切断し1本の線分として、芋ずる式の落下防止が可能である。タイルの溝は、裏足間の溝、あるいは裏面が平らな溝無しタイルでは、押出成形の鋳型型枠の上部に突起を設けることで、容易に溝有タイルとして製作できる。ネットの交点部材は、溝に嵌合する部材であるが、継手の連結など施工上ある程度余裕を持たせるとしても、周囲が後にモルタルで覆われるのでその付着で固定するといえる。プラスチックのように少し変形しやすければ挿入、嵌合しやすい。線材の2方向のうち、方形ネットでは1方向は溝間に入るとしてモルタルとの付着が働き、直角方向は裏面上、裏足の上を跨ぐことになるが、断面的にモルタルとの付着に支障をきたすほどのものでなく、むしろモルタルとの周辺付着が有効に働く。2方向の線材は交点部材とは平面的に交差または、交差状となる。交点部材の大きさは、挿入する溝間隔に合わせたもの、線材の太さは、目地間隔より細いものとなるが、タイルの重さ、大きさからも異なるといえる。一般の建物では、径は3~2mm以下、極端には細い糸状の断面で十分と考えられる。引張り強度は、タイルのブロックをぶら下げられる強度があれば十分である。モルタルや接着剤の付着があるので現実には荷重が分散され、タイル間のみならずタイルのブロック単位相互間でも全体付着で落下に抵抗すると考えられる。建物の重要度、公共性、落下時の影響に応じて、落下防止対策の程度を選択する。また、玄関の上、歩道の上、低い位置、植え込みの上とかで選択することができる。
【符号の説明】
【0028】
1コンクリートの柱、壁面
2モルタル部
3裏足付きタイル
4裏足
5裏足間の溝部
6タイルの目地部
7嵌合する交点部材
8線材
9タイル落下防止ネット
10落下防止ネットの水平方向A、垂直方向B、拡大方向C
11継手部部分ネット
12ブロック単位のネットの切れ目部
131網目分の拡張ネット
14ブロック単位の中央付近を横断する線材
15ブロック単位の中央付近を縦断する線材
16隣接ブロック間の切れ目を跨ぐ線材
17既設の建物の目地材を除去した目地間に敷設する線材
18小突起物を設けた線材
19数珠状の小突起物
20タイル間の側壁に接触して後付けで挿入、装着する別個の小突起物
21非破壊検査用の金属輪、金属片
22着脱自在の外枠
23取っ手
24方形の落下防止ネット
25ひし形、3角形の落下防止ネット
26一つ飛びの落下防止ネット
27目地部の目地材充填材、部
【要約】
【課題】
建物、構造物の外壁タイルの落下は重大な結果を伴う可能性がある。10年ごとの点検も法定義務となった。とはいえタイルの枚数は天文学的に多い、既設の建物、構造物を含むと無数である。これらを落下しないよう対策するのは至難の業である。しかし社会的責任は重い。
【解決手段】
タイルの裏面には、モルタルとの付着効果を上げるための溝、裏足がある。この溝間を利用して、嵌合する交点部材を固定中心として線材でタイル間を結ぶネットを構成することで、面的ネットワーク連結が可能である。たとえ一部タイルが剥離しても命綱で結ばれていることで助かるフェールセーフの考え方を取り入れた工法である。経年の既設建物のタイルには目地材を除去し、目地間に新たに線材を敷設し落下防止とする。
【選択図】
図2