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特許7432179眼科用マルチスポットレーザ装置及びその作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】眼科用マルチスポットレーザ装置及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/008 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A61F9/008 120C
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022165434
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2020508627の分割
【原出願日】2018-08-17
(65)【公開番号】P2022188273
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】2017903330
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】503375669
【氏名又は名称】エレックス メディカル プロプライエタリー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELLEX MEDICAL PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】シャ, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】プレビン, ビクター
(72)【発明者】
【氏名】マクウィリアムズ, ロビン
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル, ジョン
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-158331(JP,A)
【文献】特表2008-510529(JP,A)
【文献】特表2013-500769(JP,A)
【文献】特開2007-159740(JP,A)
【文献】特開2012-148071(JP,A)
【文献】特開2012-050571(JP,A)
【文献】特開2012-210287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科用マルチスポットレーザ装置であって、
一つのレーザパルス又は一連の複数のレーザパルスを生成するレーザモジュールであり、前記レーザパルスの各々が、
10ps~20μsの範囲のパルス持続時間、
500nm~900nmの範囲の波長、及び
1パルス当たり10μJ~10mJの範囲のパルスエネルギー
を有するレーザモジュールと、
前記レーザモジュールにおける前記レーザパルスの各々の出力ビームプロファイルを変更して、定められたサイズ及びエネルギーの空間的に分布された複数のレーザスポットを提供する光ビームプロファイリングモジュールと
を備えており
前記レーザスポットの空間分布が、1:2~1:20の範囲のスポット径対空間比によって定められ
前記光ビームプロファイリングモジュールが、前記レーザモジュールの出力ビームプロファイルを変更して均一なビームプロファイルを生成するマルチモード光ファイバと、定められたサイズ及びエネルギーの空間的に分布された複数のレーザスポットを提供するように前記マルチモード光ファイバの出力部に結合された光ファイババンドルとを備え、
前記光ファイババンドルは、前記マルチモード光ファイバの出力部とほぼ同じサイズの断面積を有する束を作製するために、六角形の密に束ねたバンドルの中にグループ化され互いに結合された最大500本のマイクロファイバで構成されており、
各マイクロファイバは、前記エネルギーを個々のマイクロファイバに反射するクラッドによって覆われており、
前記クラッドの厚さは、各マイクロファイバ内に一貫した照射エネルギーを生成しそれによって一貫した照射エネルギーを発するように典型的には1:4であるコア径コア間隔比を決定し、
前記マルチモード光ファイバ及び前記光ファイババンドルが、それらの間の空隙を完全に除去して散乱と反射を最小限に抑えるように互いに融着されている、眼科用マルチスポットレーザ装置。
【請求項2】
前記レーザスポットの空間分布が、1:4~1:8のスポット径対空間比によって定められる、請求項1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
【請求項3】
前記レーザスポットの空間分布が、1:4のスポット径対空間比によって定められる、請求項2に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
【請求項4】
前記レーザスポットの各々が1μm~50μmの直径を有する、請求項1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
【請求項5】
前記レーザパルス間の間隔が2μm~200μmの範囲内にある、請求項1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
【請求項6】
前記マルチモード光ファイバが約400μmのコア径を有する、請求項に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
【請求項7】
前記光ファイババンドルが、1μm~50μmのコア径を有する複数の光ファイバを備える、請求項に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
【請求項8】
前記光ファイババンドルが、10μmのコア径を有する複数の光ファイバを備える、請求項に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
【請求項9】
請求項1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置の作動方法であって、
一つのレーザパルス又は一連の複数のレーザパルスを生成するステップであって、前記レーザパルスの各々が、
10ps~20μsの範囲のパルス持続時間、
500nm~900nmの範囲の波長、及び
1パルス当たり10μJ~10mJの範囲のパルスエネルギー
を有するステップと、
レーザモジュールにおける前記レーザパルスの各々の出力ビームプロファイルを変更して、定められたサイズ及びエネルギーの空間的に分布された複数のレーザスポットを提供するステップと
を含み、
前記レーザスポットの空間分布が、1:2~1:20の範囲のスポット径対空間比によって定められる、作動方法。
【請求項10】
前記レーザスポットの各々が1μm~50μmの直径を有する、請求項に記載の作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ装置の分野に関し、特に、眼疾患を治療するための眼科用レーザ装置に関する。より詳細には、本発明は、マルチスポット眼科用レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザは、組織を凝固させるその能力を主に利用して、網膜障害を治療するために長年使用されてきた。網膜の層及び構造におけるレーザエネルギー吸収の度合いは、使用される波長と、レーザビームの焦点及びエネルギープロファイルを制御する有効性とに大きく依存する。
【0003】
本願出願人によるオーストラリア特許出願第2008255642号明細書には、ヒトの目の網膜の機能を向上させるために有用な眼科用レーザ装置について記載されている。その出願の背景技術の欄では、効果的な網膜治療の必要性が説明され、均一な治療効果を生み出すレーザ治療装置について記載されている。オーストラリア特許出願第2008255642号明細書の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
オーストラリア特許出願第2008255642号明細書に記載されているレーザ治療装置が効果的であることは証明されているが、まだ改善の余地があることもわかっている。本願出願人による以前の特許で説明されているように、目は老化プロセスの自然な結果として劣化する。レーザを使用して、目を活性化し、加齢に伴う変性効果の一部を回復させることができる。特に、網膜色素上皮(RPE)の細胞は、ターゲットレーザ治療によって破壊されると、再生する。しかしながら、効果的にするためには、RPE細胞は適切なエネルギーでターゲットにされる必要があり、同時に、隣接の細胞をレーザエネルギーに晒さないこと、又は、少なくとも、効果が認識できないほどの低レベルのレーザエネルギーに晒すことが必要である。細胞のクラスタをレーザ治療に過度にさらすと、再生プロセスに反する。これは、クラスタの中心に向かう細胞は再生されないためである。同様に、レーザエネルギーが大きすぎると、再生プロセスに有害である熱衝撃波が発生する。
【0005】
オーストラリア特許出願第2008255642号明細書に記載されている装置又は他の先行技術の装置で現在可能であるよりも、細胞毎のエネルギーのより正確な送達が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一つの形態において、それが唯一の又は実際に最も広い形態である必要はないが、本発明は、
一つのレーザパルス又は一連の複数のレーザパルスを生成するレーザモジュールであり、各レーザパルスの各々が、
10ps~20μsの範囲のパルス持続時間、
500nm~900nmの範囲の波長、及び
1パルス当たり10μJ~10mJの範囲のパルスエネルギー
を有するレーザモジュールと、
レーザモジュールにおける各レーザパルスの出力ビームプロファイルを変更して、定められたサイズ及びエネルギーの空間的に分布された複数のレーザスポットを提供する光ビームプロファイリングモジュールと
を備える眼科用マルチスポットレーザ装置であって、
レーザスポットの空間分布が、1:2~1:20の範囲のスポット径対空間比(spot diameter to space ratio)によって定められる、眼科用マルチスポットレーザ装置に関する。
【0007】
好適には、光ビームプロファイリングモジュールは、レーザモジュールの出力ビームプロファイルを変更して実質的に均一なビームプロファイルを生成するマルチモード光ファイバと、定められたサイズ、間隔及びエネルギーの複数のレーザスポットを提供するマルチモード光ファイバの出力に結合された光ファイババンドルとを備える。
【0008】
眼科用マルチスポットレーザは、好適には、レーザモジュールの出力をマルチモード光ファイバに結合するファイバ結合光学系を備える。また。眼科用マルチスポットレーザは、好適には、マルチモード光ファイバの出力を光ファイババンドルの入力に結合するファイバ結合光学系を備える。
【0009】
或いは、光ビームプロファイリングモジュールは、ビームを光学的に変更して高エネルギー強度スポットを生成する、レーザ出力光路内の回折光学素子(回折光学要素)とレンズとを備える。
【0010】
さらなる代替において、光ビームプロファイリングモジュールは、出力ビームプロファイルの一部を遮断しレーザビームの選ばれた領域の透過のみを可能にするマスクと、高強度スポットを形成するためにマスクの後ろにレーザモジュールの出力を画像化する集束レンズとを備える。
【0011】
さらに別の代替形態では、光ビームプロファイリングモジュールは、高強度スポットを形成するためにレーザモジュールの出力を画像化するマイクロレンズアレイと集束レンズとを備える。
【0012】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになろう。
【0013】
本発明の理解を助け、当業者が本発明を実際に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照して、例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】眼科用マルチスポットレーザ装置の第1の実施形態を示す。
図2図1の眼科用マルチスポットレーザ装置の出力先端部の拡大図である。
図3】従来の細隙灯装置において具現化された図1の眼科用マルチスポットレーザ装置を示す。
図4】比較のためのレーザモジュール出力を示す。
図5】比較のための光ファイバ束出力を示す。
図6】マルチスポットエネルギープロファイル及びスポットサイズを示す。
図7】10μmのファイバを使用する本発明の一実施形態の適用例を示す。
図8】7.5μmのファイバを使用する本発明の一実施形態の適用例を示す。
図9】5μmのファイバを使用する本発明の一実施形態の適用例を示す。
図10】回折光学素子を利用する眼科用マルチスポットレーザ装置を示す。
図11】マスクを利用する眼科用マルチスポットレーザ装置を示す。
図12】マイクロレンズアレイを利用する眼科用マルチスポットレーザ装置を示す。
図13図10の実施形態の適用例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による実施形態は、主に、眼科用マルチスポットレーザ装置にある。したがって、本装置の数は、本発明の実施形態を理解するために必要である特定の詳細のみを示し、かつ本説明の恩恵を受ける当業者には容易に理解できるであろう過剰な詳細で開示を不明瞭にしないように、図面に簡潔な略図形式で示されている。
【0016】
本書では、第1、第2、左、右等の形容詞は、必ずしも実際のそのような関係又は順序を必要とせず又は含意せずに、ある要素又は動作を別の要素又は動作から区別するためにのみ使用され得る。「備える」又は「含む」等の語は、複数の要素の或るリストを備える装置、プロセス、方法又は物品がそれらの要素のみを含むのではなく、そのような装置、プロセス、方法又は物品に固有な要素も含み、明示的にリストされていない他の要素を含む場合があるように、非排他的な包含を定めることを意図している。
【0017】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態が示されており、この実施形態は、レーザモジュール11、光学系12、マルチモードファイバ13、カプラ14、マルチファイババンドル15及び出力ヘッド16からなる眼科用マルチスポットレーザ装置10を備えている。
【0018】
レーザモジュールは、適切な出力を生成させる適当なレーザであるならばどのようなものでもよい。レーザモジュール11の好ましい実施形態は、532nmのレーザパルスを生成する、周波数が2倍にされたQスイッチ・フラッシュランプ励起Nd:YAGレーザである。レーザキャビティは、100%反射するエンドミラーと、一部を反射する出力カプラとを有する従来設計のものであることが適切である。レーザロッドは、高電圧電源から給電されるフラッシュランプによって励起される。パッシブ型Qスイッチにより、キャビティエネルギーを非常に短い高エネルギーパルスとして送ることができる。代替的な励起源は、レーザロッドをポンピングするために使用される半導体レーザである。
【0019】
フラッシュランプ励起Nd:YAGレーザは、レーザキャビティに関して好ましい実施形態であるが、本発明は、この特定のキャビティ設計に限定されない。波長が約500nm~約900nmで、パルスエネルギーが約0μm~10mJである20ps~20μsの範囲のパルスを生成することができるいかなるレーザキャビティも適切であろう。これには、Er:YAG、Nd:YLF、Er:YLF、ダイオード励起固体レーザ(DPSSL)等の他の固体材料が含まれる。他の要素も変更され得る。例えば、パッシブQスイッチの代わりにアクティブQスイッチを使用することができる。
【0020】
光学系12は、従来のファイバ入力カプラであってもよく、マルチモードファイバ13の開口数内で適切な焦点距離を有するレンズであってもよい。マルチモードファイバ13は、適切には、約400μmのコア径を有するガラスファイバであるが、これは重要な寸法ではない。マルチモードファイバ13の出力は、ファイバアダプタ14を使用してマルチファイババンドル15に結合され、ファイバアダプタにおいては、両ファイバ表面は、接続により通過光が散乱又は反射されないような態様で整列し近接状態に保たれる。別の結合法としては、2本のファイバを融着することがあり、これは融着接続と呼ばれ、空隙を完全に除去して散乱と反射を最小限に抑える。マルチファイババンドル15は、マルチモードファイバ出力部(名目的には400μm)とほぼ同じサイズの断面積を有する束を作製するためにグループ化され結合された多数(最大500本)のマイクロファイバで構成されている。各マイクロファイバは、エネルギーを個々のマイクロファイバに反射するクラッドで覆われている。また、クラッドの厚さは、コア径とコア間隔の比(典型的には1:4)を決定する。これは治療に応じて異なる場合がある。その結果、各マイクロファイバ内に一貫したエネルギーが生成され、それによって一貫した照射エネルギーを発する。出力ヘッド16は、本願出願人による以前の特許明細書に記載されているような適切な送出光学系への結合を可能にする。
【0021】
光学ヘッド16の端面図が図2に示されている。図2の実施形態では、マルチファイババンドル15は、六角形の密に束ねたバンドルの中に61本のマイクロコア光ファイバ20を含んでいる。クラッド21は個々のファイバを取り囲み、約80μmの厚さのポリマーコーティング22がバンドル15を囲んでいる。各マイクロコアファイバは、1~50μmの直径を有するものとすることができ、10μmが以下で論じられるように特に適切である。ファイバ中心間の間隔は2~200μmの範囲とすることができ、好ましい間隔は、マイクロコアファイバのサイズ、マルチモードファイバのサイズ及び治療計画に関係する。
【0022】
マイクロコアファイバは、1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、10μm、15μm、20μm、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μm又は任意の中間サイズを有するものとすることができる。ファイバ中心間の間隔は、2μm、3μm、4μm、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、75μm、100μm、125μm、150μm、175μm、200μm又は任意の中間距離とすることができる。
【0023】
例えば、成人の眼の黄斑部では、位置と年齢によって細胞のサイズが異なる。中心に向かって細胞は通常10μmであるが、周辺に向かって細胞は相当に平坦になり、幅が広くなり、60μmと同程度になることがある。細胞は通常、眼が老化するにつれて成長する。
【0024】
眼科用マルチファイバレーザ装置10は、図3に示されるように、最も多くは細隙灯アセンブリ30と共に使用されるであろう。レーザモジュール11は、細隙灯アセンブリの基部又はその近傍にあるものとすることができる。マルチモードファイバ及びマルチファイババンドルは、好適には、細隙灯アセンブリのアーム内に配置される。光学ヘッド16は、網膜へのレーザ放射の送達のために細隙灯アセンブリの他の光学系に結合される。
【0025】
光学ヘッド16の送達光学系は、マイクロコアファイバの出力をターゲット領域に画像化する。本発明者らは、レーザスポットの適切な空間分布は、スポット径対空間比によって定められると判断した。上記のファイババンドルは、スポット径対空間比を1:2~1:20の範囲で与え、それは眼科治療において適切であることが分かった。本発明者らは、1:4の比が、細胞再生のために治療された細胞間の少なくとも二つの健全な細胞を維持するために特に適切であることを見出した。
【0026】
図4は、レーザモジュール11からの典型的な出力を示している。この出力は、不均一なエネルギー分布を持つ典型的なガウシアンビームプロファイルである。これは、ホットスポット40において顕著に表れている。マルチモードファイバ13を通過した後、プロファイルは、図5に示されているスペックルパターンを示す。はっきりと分かるように、エネルギープロファイルはより均一になり、ホットスポットが取り除かれている。この出力は、マルチファイババンドル15に結合され、図6に示される最終出力をもたらす。
【0027】
眼科用マルチファイバレーザ装置は、網膜の各ターゲット細胞クラスタに一貫したエネルギーを送達するだけでなく、ターゲット細胞クラスタ間に送達されるエネルギーを最小限に抑える。ターゲット領域と非ターゲット領域との間に送達されるエネルギーの比率は、加齢性疾患の治療を成功させる鍵となる。
【0028】
マイクロファイバの最適な直径と最適な間隔を理解するために、5本のファイバが作製された。理想的な構成では、個々の治療済み細胞の周囲にある全ての隣り合うRPE細胞が損なわれておらず、エネルギー吸収がないことが保証される。これらのファイバは、ブタの外植片で試験された。以下に概要を示した各構成の結果が対応の図に示される。
【表1】
【0029】
32.5μm間隔の5μmファイバが、レーザスポット全体にわたって損傷のない隣り合う細胞を一貫して提供できるという結果をもたらすことが、例示の出力から明らかである。
【0030】
本発明の第2の実施形態が図10に示されている。この実施形態では、光ビームプロファイリングモジュール100は回折光学素子101を利用しており、この回折光学素子は、複数の空間的に分布されたレーザスポットを生成するためにレーザモジュール11の出力11aを光学的に変更するものである。図10を詳細に見ると、レーザモジュール出力11aは、回折光学素子101によって変更され、次いで、集束レンズ102によってターゲット103に集束される。ターゲット103におけるエネルギーピークは、ターゲット103の拡大図103a及びグラフ104に表示されるプロファイルを有する。回折光学素子101は、1:2~1:20の範囲のスポット径対空間比を有するグラフ104のエネルギー強度プロファイルを得るように選ばれる。
【0031】
回折光学素子101についての最適なスポット及び最適な間隔を理解するために、三つの回折光学素子101が作製された。理想的な構成では、個々の治療済み細胞の周囲にある全ての隣り合うRPE細胞が損なわれておらず、エネルギー吸収がないことが保証される。これらの回折光学素子は、ブタの外植片と感熱紙(burn paper)で試験された。各構成の結果の概要を以下に示す。5×5配列の要素は対応の図に示されている。
【表2】
【0032】
本発明の第3の実施形態が図11に示されている。この実施形態では、光ビームプロファイリングモジュール110は、レーザビーム11aの不要な部分を遮断し、レーザビーム11aの所望の部分を透過する、マスクされたコーティング111を有する。光ビームプロファイリングモジュール110はまたビームエキスパンダ/ホモジナイザ111aを含み、このビームエキスパンダ/ホモジナイザは、マスク111の前にトップハットプロファイルを有するようビーム11aのプロファイルを変更する。図11を詳細に見ると、レーザモジュール出力11aは、マスク111によって選択的に遮断され、次いで、集束レンズ112によってターゲット113に集束される。ターゲット113のエネルギーピークは、ターゲット113の拡大図113a及びグラフ114に表示されるプロファイルを有する。マスクされたコーティング111は、入射光を部分的に吸収又は反射して、1:2~1:20の範囲のスポット径対空間比を有するグラフ114のエネルギー強度プロファイルを得ることができる。この実施形態の変形では、マスクを集束レンズに直接適用することができる。
【0033】
本発明の第4の実施形態が図12に示されている。この実施形態では、光ビームプロファイリングモジュール120は、焦点面でマイクロビームを互いに結合するように設計されたマイクロレンズアレイ121を有する。光ビームプロファイリングモジュール120はまた、マイクロレンズアレイ121の前にトップハットプロファイルを有するようにビーム11aのプロファイルを変更するビームホモジナイザ121aを含む。図12を詳細に見ると、レーザモジュール出力11aは、マイクロレンズアレイ121によって複数のマイクロビームに集束され、その後、集束レンズ122によってターゲット123に集束される。ターゲット123におけるエネルギーピークは、ターゲット123の拡大図123a及びグラフ124に表示されるプロファイルを有する。マイクロレンズアレイ121は、1:2~1:20の範囲のスポット径対空間比を有するグラフ124のエネルギー強度プロファイルを得るように選ばれる。
【0034】
本発明の様々な実施形態の上記説明は、当業者への説明の目的で行われている。網羅的であること、又は本発明を単一の開示された実施形態に限定することは意図されていない。上述したように、本発明に対する多くの代替案及び変形は、当業者には明らかであろう。したがって、いくつかの代替実施形態が具体的に説明されたが、他の実施形態があることは当業者にとって明らかであるか、又は比較的容易に想到できるであろう。したがって、本発明は、所望の出力エネルギープロファイルを提供する本発明のすべての代替、変更、及び変形を包含することを意図しており、他の実施形態は、上述の発明の精神及び範囲に含まれる。
[発明の項目]
[項目1]
眼科用マルチスポットレーザ装置であって、
一つのレーザパルス又は一連の複数のレーザパルスを生成するレーザモジュールであり、前記レーザパルスの各々が、
10ps~20μsの範囲のパルス持続時間、
500nm~900nmの範囲の波長、及び
1パルス当たり10μJ~10mJの範囲のパルスエネルギー
を有するレーザモジュールと、
前記レーザモジュールにおける前記レーザパルスの各々の出力ビームプロファイルを変更して、定められたサイズ及びエネルギーの空間的に分布された複数のレーザスポットを提供する光ビームプロファイリングモジュールと
を備えており、
前記レーザスポットの空間分布が、1:2~1:20の範囲のスポット径対空間比によって定められる、眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目2]
前記レーザスポットの空間分布が、1:4~1:8のスポット径対空間比によって定められる、項目1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目3]
前記レーザスポットの空間分布が、1:4のスポット径対空間比によって定められる、項目2に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目4]
前記レーザスポットの各々が1μm~50μmの直径を有する、項目1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目5]
前記レーザパルス間の間隔が2μm~200μmの範囲内にある、項目1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目6]
前記光ビームプロファイリングモジュールが、前記レーザモジュールの出力ビームプロファイルを変更して実質的に均一なビームプロファイルを生成するマルチモード光ファイバと、定められたサイズ及びエネルギーの空間的に分布された複数のレーザスポットを提供するように前記マルチモード光ファイバの出力に結合された光ファイババンドルとを備える、項目1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目7]
前記マルチモード光ファイバが約400μmのコア径を有する、項目6に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目8]
前記光ファイババンドルが、1μm~50μmのコア径を有する複数の光ファイバを備える、項目6に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目9]
前記光ファイババンドルが、10μmのコア径を有する複数の光ファイバを備える、項目6に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目10]
前記光ビームプロファイリングモジュールが、回折光学素子と、集束レンズとを備える、項目1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目11]
前記光ビームプロファイリングモジュールが、出力ビームプロファイルの一部を遮断しレーザビームの小さな領域の透過のみを可能にするマスクと、集束レンズとを備える、項目1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目12]
前記光ビームプロファイリングモジュールが、マイクロレンズアレイと、集束レンズとを備える、項目1に記載の眼科用マルチスポットレーザ装置。
[項目13]
空間的に分布されたエネルギーピークを持つビームプロファイルを有する治療用レーザによりヒトの眼の角膜を通して網膜色素上皮に照射することによって眼の網膜の機能を改善する方法。
[項目14]
一つのレーザパルス又は一連の複数のレーザパルスを生成するステップであって、前記レーザパルスの各々が、
10ps~20μsの範囲のパルス持続時間、
500nm~900nmの範囲の波長、及び
1パルス当たり10μJ~10mJの範囲のパルスエネルギー
を有するステップと、
レーザモジュールにおける前記レーザパルスの各々の出力ビームプロファイルを変更して、定められたサイズ及びエネルギーの空間的に分布された複数のレーザスポットを提供するステップと
を含み、
前記レーザスポットの空間分布が、1:2~1:20の範囲のスポット径対空間比によって定められる、項目13に記載の方法。
[項目15]
前記レーザスポットの各々が1μm~50μmの直径を有する、項目14に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13