(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】クーラントの浄化装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B23Q11/00 U
(21)【出願番号】P 2020022788
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】393026892
【氏名又は名称】株式会社白山機工
(74)【代理人】
【識別番号】100105809
【氏名又は名称】木森 有平
(72)【発明者】
【氏名】内藤 昌則
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-000650(JP,A)
【文献】特開2010-064166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00;
B03C 1/00,1/02,1/10;
C02F 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械から排出された切り屑が混在するクーラントを濾過するとともに切り屑を排出するクーラントの浄化装置において、ダーティ液を受け入れるダーティ液槽と、ダーティ液槽
内に配されて切り屑を
切り屑排出口へ搬送する第1の搬送コンベヤと、
前記第1の搬送コンベヤで切り屑を搬送する方向と並列になるように前記ダーティ液槽に隣接して設けられたクリーン液槽を備え、
前記ダーティ液槽と前記クリーン液槽とを隔てる側壁にクーラント流路としての開口部を設け、前記開口部のクリーン液槽側には、前記ダーティ液槽に配される第1の搬送コンベヤによる切り屑の搬送方向と回転軸が沿うように回転ドラム式濾過手段を配するとともに、前記回転ドラム式濾過手段によって吸着した切り屑を前記ダーティ液槽の下流側に搬送するチップ移載手段を配することを特徴とするクーラントの浄化装置。
【請求項2】
前記回転ドラム式濾過手段がマグネットドラムと、前記マグネットドラムの外周に吸着した切り屑を掻き取るスクレーパを備え、前記マグネットドラムの上部側が液面よりも突出して配され、前記マグネットドラムの液面より突出した上部側で前記スクレーパによって吸着した切り屑を掻き取る構成となっていることを特徴とする請求項1に記載のクーラントの浄化装置。
【請求項3】
前記チップ移載手段は、チップ受容器と、前記チップ受容器に収容した切り屑をダーティ液槽の下流側に搬送するための搬送用突起を有する第2の搬送コンベヤを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のクーラントの浄化装置。
【請求項4】
前記チップ移載手段は、前記マグネットドラムに吸着した切り屑をスクレーパにより補足して前記ダーティ液槽の下流側へ流れ落ちるようにして、前記切り屑がダーティ液槽に戻らないように集積するチップ受容器と、前記チップ受容器に収容した微細な切り屑をダーティ液槽の下流側に搬送する搬送突起を有する第2の搬送コンベヤを備えることを特徴とする
請求項2に記載のクーラントの浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械から排出される切り屑や砥粒等の混合異物が混在するクーラントから、混合異物を除去し、再使用可能なクーラントに再生するクーラントの浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械においては、切削・研削工具と被加工物(ワーク)とが接触する加工部位にクーラントを供給して当該加工部位の発熱を抑えながら加工を行う湿式タイプが主流である。この湿式タイプの工作機械には、使用済みのクーラントから加工時に発生する切り屑や砥粒などの混合異物を除去、排出するためのクーラント浄化装置が用いられており、混合異物を除去したクーラントはクリーン液として、再度工作機械に供給される。
【0003】
切り屑や砥粒等(以下切り屑と表現)が混在する使用済みのクーラント(以下ダーティ液と表現)から、切り屑を除去するクーラント浄化装置には、多種多様なものが存在する。
一般的にはチェーンコンベヤに切り屑を掻き取る掻き板(スクレーパ)が取り付けられているスクレーパ式コンベヤが挙げられ、工作機械から排出されるダーティ液が供給・蓄積されるダーティ液槽に、周回駆動するチェーンコンベヤを備え、液槽底部に沈殿した切り屑をチェーンコンベヤに取り付けられたスクレーパで掻き取り外部へ排出するが、切り屑が研削盤等に由来する微細なものである場合には、沈殿しにくく、ダーティ液中を浮遊するため、スクレーパ式コンベヤだけでは切り屑の除去が困難である。
そのため、切り屑が磁性を有するものである場合には、前記ダーティ液槽の底部に磁石などの磁性体を配し、浮遊する微細な切り屑をダーティ液槽底部に吸引・吸着させ、掻き板での掻き取り効率向上を志向するものも見られる。
【0004】
特許文献1には、ダーティ液槽内を浮遊し、沈殿しない切り屑を除去するものとして、「工作機械(6)からの切り屑が混入したクーラントがダーティ液として投入されるダーティ液槽(2)、ダーティ液槽の底面に沿って走行する送り行程でダーティ液槽の底面に沈殿した切り屑を掻き取って外部に排出するスクレーパコンベヤ(10)、及びスクレーパコンベヤの戻り行程で掻き寄せられた浮遊切り屑を含むダーティ液を濾過してクーラントとして再使用可能なクリーン液に再生する濾過機構から構成され」た、浸炭焼入材用クーラント装置が開示され、前記濾過機構(30)として、「切り屑と共に掻き寄せられたダーティ液が導入される濾過槽に回転可能に配置された回転ドラム(33)、浮遊切り屑を回転ドラムの外周面に吸着させるため回転ドラムの内部に配設された磁石(35)、回転ドラムの外周面に吸着された浮遊切り屑を掻き取るスクレーパ(36)、及び浮遊切り屑が取り除かれた上澄み液をクリーン液として取り出すため濾過槽に形成された溢出部を備える構造」が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、「濾過装置の濾過槽内に、動力源からの動力の伝達を受けて回転するマグネットドラム」を収容し、「濾過槽内に投入された使用済切削油中で浮遊状態にある比較的小さな自重の軽い切粉を、前記した使用済切削油中から効率よく取り除き、その切粉を回収しやすく、且つ、前記切粉を取り除いた濾過済み切削油を回収しやすくする濾過機具」が開示されている。
また、特許文献3には、その請求項4記載において「処理すべき液を収容するダーティー槽と、前記ダーティー槽の液面よりも高い位置に設けられた排出部と、前記ダーティー槽の底部に沈んでいる除去対象物を前記排出部に向けて掻き出すスクレーパを有しかつ前記ダーティー槽の底部に沿って前記排出部に向けて移動する下側部分と前記下側部分の上を通って前記下側部分の始端に向う上側部分を有するコンベアと、前記ダーティー槽の内部と外部とを連通させる液流通部(32)と、前記ダーティー槽内で回転駆動されるマグネットドラム(42)を有するスラッジ除去機構と、前記ダーティー槽の前記液面を前記液流通部とマグネットドラムよりも高い位置に保つ液面保持手段(オーバーフロ槽31)と、前記ダーティー槽の内部に設けられ、前記マグネットドラム(42)の外周面に接することによってスラッジを掻き取りかつこのスラッジを前記コンベアの前記下側部分に向けて落とす掻き取り部材とを具備し、前記スラッジ除去機構によって濾過された液が導入される濾過槽(120)と、前記濾過槽に収容されるフィルタドラム(130)とをさらに備え、前記フィルタドラムは、多数の流通孔が形成された多孔板を筒形に成形してなり該多孔板の外周面に前記流通孔の流入口が開口し該多孔板の内周面に流出口が開口するフィルタを有していることを特徴とするダーティー液処理装置」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-11059号公報
【文献】特開2010-64166号公報
【文献】特許第4668830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
クーラントの浄化装置においては、比較的大きな金属等の切り屑は、ダーティ槽において掻き取り手段を有する搬送コンベヤにより搬送されて回収される。しかし、ダーティ液中を浮遊するような微細な切り屑は、除去することは難しく、別途マグネットドラム等を配して除去している例が見受けられる。特に、ダーティ液中を浮遊するような微細な切り屑は、ダーティ液槽の両側の壁に付着したり、両側の壁付近に浮遊して滞留して、除去することは難しかった。
ここで、ダーティ液槽の側方側にクリーン液槽を配置した装置(複数槽隣接して配置した装置)がある(特許文献3では2槽のクリーン液槽を配置)。そして、複数槽隣接したクリーン液槽に回転ドラム式濾過手段を配置する装置がある。
しかしながら、上記マグネットドラム等の濾過手段を配置した場合、その濾過手段で捕捉した切り屑をそのままダーティ液槽に戻すと、再び側方配置の回転ドラム式濾過手段により捕捉されるという堂々巡り(切り屑の循環)が生じていた。このような現象は、ダーティ液槽に含まれる微細な切り屑の密度が高くなっていき、搬送式濾過手段である搬送コンベヤの流れ方向では、効率の良いクーラント浄化が阻害されてしまうこと意味する。
また、クリーン液槽に、単に回転ドラム式濾過手段にマグネットドラムを採用すると、チップ受容器に集積した微細な切り屑が磁化することがある。磁化した微細な切り屑は、相互に引き合い密集しチップ受容器に滞留することにより、ダーティ液槽の下流側へ誘導がスムーズに行われない場合が生じる。
さらに、上記強力なマグネットドラムを側方配置した複数槽を隣接配置したとしても、その吸着した切り屑を除去した除去切り屑を別の駆動手段で所定位置まで搬送すると、その切り屑の移載のための大きな設備や電力が必要になる。なお、特許文献3のようにクリーン槽を複数槽配置すると、装置が大型化する。そして、ダーティ液槽の側方側のクリーン液槽の役割としては、ダーティ液槽の切り屑の濾過を補助することが期待される。
【0008】
そこで本発明の目的は、マグネットドラムのような強力な回転ドラム式濾過手段を側方配置したとしても、切り屑の堂々巡り(切り屑の循環)が防止できるとともに、切り屑の堂々巡りを防止する手段のために、別途大きな設備やその駆動のための動力や電力を別途必要になることがない省スペース化と省エネルギー化を実現するクーラントの浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者の実験によれば、上記複数槽隣接タイプにおいては、クリーン液槽内へ流れるような微細な切り屑を補足した場合、そのままダーティ液槽に戻すと、切り屑の堂々巡りが生じるが、この切り屑を切り屑排出口に近い端部側に(排出口に運ぶための傾斜手段を有する搬送コンベヤの場合は、その傾斜の基端側に)、捕捉した切り屑を戻すと、そのまま回収される方向に流れて、切り屑の堂々巡りを防止できることを明らかにした。ここで、ダーティ液槽内に配され第1の搬送コンベヤを構成するチェーンコンベヤの切り屑排出口から遠い端部側を「ダーティ液槽の上流側」、切り屑排出口に近い端部側を「ダーティ液槽の下流側」と定義する。
そこで、本発明は、旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械から排出された切り屑が混在するクーラントを濾過するとともに切り屑を排出するクーラントの浄化装置において、ダーティ液を受け入れるダーティ液槽と、ダーティ液槽の切り屑を搬送する第1の搬送コンベヤと、前記ダーティ液槽に隣接して設けられたクリーン液槽を備え、前記ダーティ液槽と前記クリーン液槽とを隔てる側壁にクーラント流路としての開口部を設け、前記開口部のクリーン液槽側には、前記ダーティ液槽に配される第1の搬送コンベヤによる切り屑の搬送方向と回転軸が沿うように回転ドラム式濾過手段を配するとともに、前記回転ドラム式濾過手段によって吸着した切り屑を前記ダーティ液槽の下流側に搬送するチップ移載手段を配することを特徴とするクーラントの浄化装置である。
ここで、前記回転ドラム式濾過手段は、前記開口部を介して、その一部が前記ダーティ液槽側に突出しているものでも良い。また、回転ドラム式濾過手段は、前記開口部からその一部がダーティ槽に臨んでいるものでも良い。
本発明によれば、第1の搬送コンベヤによる搬送排出では除去しきれないクーラント中に浮遊する微細な切り屑も、クリーン液槽の側方側に配置される回転ドラム式濾過手段で吸着されるとともに、スクレーパ(掻き取り手段)等で捕捉・除去が行われると、チップ移載手段により、ダーティ液槽の下流側に送られて、ダーティ液槽に戻される。戻された切り屑は、ダーティ液槽で第1の搬送コンベヤにより搬送されるので、回転ドラム式濾過手段により切り屑が堂々巡りすることがなくなる。そして、回転ドラム式濾過手段に強力なマグネットドラムを配置すると、ダーティ液槽の切り屑を除去する補助的な役割まで果たすことになる。
本発明としては、回転ドラム式濾過手段は、前記ダーティ液槽に配される第1の搬送コンベヤにより搬送される切り屑の方向に沿うように配置されているか、又は、前記開口部にその外周の長手方向が沿うように配され、かつ、前記開口部の長手方向の両端側に配置され流路を形成する側壁部に前記回転ドラム式濾過手段の軸部が取り付けられることを特徴とする。
本発明によれば、前記ダーティ液槽に配される第1の搬送コンベヤにより搬送される切り屑の方向に沿うように配置されていることにより、装置全体をコンパクトな設計にすることができる。また、前記開口部からの流れを制御しながら濾過するので、ダーティ液槽で浮遊するような細かな切り屑や、側壁に付着したり側壁側で滞留するような切り屑のみならず、ダーティ液槽に沈殿するような大きな切り屑も回収して、ダーティ液槽の搬送式濾過手段による濾過を補助して効率的な濾過が実現することとなる。なお、前記側壁部は、回転ドラム式濾過手段の軸受けを兼用して、ダーティ液の流れを制御する。
【0010】
本発明としては、前記回転ドラム式濾過手段がマグネットドラムであり、その下方側において前記開口部からのダーティ液を導入しながら濾過するとともに、上方側が液面よりも突出して配され、その外周上部側でスクレーパを用いて前記回転ドラム式濾過手段の外周に吸着した切り屑を捕捉することを特徴とする。
本発明によれば、前記開口部からのダーティ液の流れを制御しながらダーティ液の切り屑を回転ドラム式濾過手段の全周囲で回収するとともに、その外周上部側でスクレーパを用いて前記回転ドラム式濾過力手段の外周に吸着した切り屑を捕捉することにより、前記前記チップ移載手段によりダーティ液槽の下流側に搬送することを効率的に行うことができる。
【0011】
本発明としては、前記チップ移載手段は、前記マグネットドラムに吸着した切り屑をスクレーパにより補足して前記ダーティ液槽の下流側へ流れ落ちるようにするチップ受容器と、前記チップ受容器に収容した微細な切り屑をダーティ液槽の下流側に搬送する搬送突起を有する第2の搬送コンベヤを備えることを特徴とする。
本発明によれば、マグネットドラムにより吸着された切り屑はスクレーパ(掻き取り手段)により捕捉されて、チップ受容器に移載されて、ダーティ液槽の下流側に搬送されるので、切り屑が滞留したり、壁に付着したり、切り屑が堂々巡りすることがなくなる。そして、強力なマグネットドラムを取り付けるので、浮遊するような細かな切り屑や側壁側で滞留するような切り屑のみならず、ダーティ液槽に沈殿するような大きな切り屑も回収して下流側に移載されることとなる。
【0012】
本発明としては、前記チップ移載手段は、チップ受容器と、前記チップ受容器に収容した切り屑をダーティ液槽の下流側に搬送するための搬送用突起を有する第2の搬送コンベヤを備えることを特徴とする。
また、本発明としては、前記マグネットドラムに吸着した切り屑をスクレーパにより補足して前記ダーティ液槽の下流側へ流れ落ちるようにして、前記切り屑がダーティ液槽に戻らないように集積するチップ受容器と、前記チップ受容器に収容した微細な切り屑をダーティ液槽の下流側に搬送する搬送突起を有する第2の搬送コンベヤを備えることを特徴とする。
例えば、回転ドラム式濾過手段にマグネットドラムを採用すると、チップ受容器に集積した微細な切り屑が磁化することがある。磁化した微細な切り屑は、相互に引き合い密集しチップ受容器に滞留することにより、ダーティ液槽の下流側へ誘導がスムーズに行われない場合が生じる。本発明によれば、チップ受容器に微細な切り屑が滞留し、あふれ出すのを防ぎダーティ液槽の下流側へ誘導するので、円滑なクーラント浄化と切り屑排出が可能となる。
マグネットドラムとする利点としては、捕捉する切り屑が磁性を有する金属の場合、メッシュ等を使用した他の濾過手段と比較し、部品点数が少なく、目詰まりもなくメンテナンスも容易で、微細な切り屑を捕捉することができ、スクレーパを用いてマグネットドラム表面に吸着した微細な切り屑を掻き取るので、チップ受容器の設置にも好適である。
【0013】
本発明としては、前記回転ドラム式濾過手段の回転動力が前記第1の搬送コンベヤの駆動力から抽出されるか、及び/又は、前記第2の搬送コンベヤの動力が前記第1の搬送コンベヤの駆動力から抽出されることを特徴とする。また、前記第2の搬送コンベヤの駆動を前記第1の搬送コンベヤの駆動と同期して駆動させことも可能になる。
本発明によれば、第2の搬送コンベヤの動力を、第1の搬送コンベヤを構成する搬送コンベヤの駆動力から抽出することにより、第2の搬送コンベヤの動力源を新たに付加する必要がなく、省エネルギー化にも貢献する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、強力な吸着力を有するマグネットドラムをダーティ液槽の側方のクリーン液槽側に配置することから、第1のコンベヤの流れ方向では、効率の良いクーラント浄化が阻害されてしまうような事態を生じることがなく、搬送式濾過手段の濾過効率を上昇させることができるとともに、ダーティ液槽を小型にすることが可能になる。また、回転ドラム式濾過手段からの切り屑はチップ移載手段を介してダーティ液槽の下流側に搬送されるので、第2の搬送手段の駆動により回収した切り屑が再度ダーティ液槽に戻されるという堂々巡り(切り屑の循環)が防止されて、浮遊する細かなスラッジのみならずダーティ液槽に沈殿するような大きなスラッジを回収できるので、搬送式濾過手段の小型化やダーティ液槽の小型化を図ることが可能になる。また、クリーン液槽に、単に回転ドラム式濾過手段にマグネットドラムを採用すると、チップ受容器に集積した微細な切り屑が磁化することがあり、磁化した微細な切り屑は、相互に引き合い密集しチップ受容器に滞留することがあるが、本発明によれば、チップ移載手段により下流側に搬送するので、上記のような事態を防止することができる。
さらに、上記強力なマグネットドラムを側方配置しても、その駆動源を同じくしているので、強力なマグネットドラムを駆動する大きな設備や駆動させる電力が必要になるようなことがなく、連携した動作が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態であるクーラントの浄化装置を示す斜視図である。
【
図2】上記第1の実施の形態のクーラントの浄化装置を示す斜視図である。
【
図3】上記第1の実施の形態のクーラントの浄化装置の蓋をした状態を示す斜視図である。
【
図4】上記第1の実施の形態のクーラントの浄化装置を示す分解斜視図である。
【
図5】上記第1の実施の形態のクーラントの浄化装置を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第2の実施の形態であるクーラントの浄化装置を示す分解斜視図である。
【
図7】上記第2の実施の形態のクーラントの浄化装置を示す分解斜視図である。
【
図8】上記第2の実施の形態のクーラントの浄化装置を示す分解斜視図である。
【
図9】上記各実施形態の回転ドラム式濾過手段と側壁の開口部に流れる流路との関係を説明する図である。
【
図10】上記各実施の形態の他の例を示す図である。
【
図11】本発明のクーラントの浄化装置の切り屑の除去工程を示すブロック図である。
【
図12】本発明のクーラントの浄化装置を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら以下、詳細に説明する。
【0017】
(第1の実施の形態)
図1~
図2は、本発明の第1の実施の形態であるクーラントの浄化装置を示す斜視図である。
図3は、上記第1の実施の形態のクーラントの浄化装置の蓋をした状態を示す斜視図である。
図4は上記第1の実施の形態のクーラントの浄化装置を示す分解斜視図である。
図5は上記第1の実施の形態のクーラントの浄化装置を示す斜視図である。
第1の実施形態は、ダーティ液槽2に隣接するクリーン液槽に回転ドラム式濾過手段11としてマグネットドラム11が取り付けられているとともに、回転ドラム式濾過手段11に吸着した切り屑を前記ダーティ液槽2の下流側に搬送するチップ移載手段12を配した構成である。そして、回転ドラム式濾過手段11であるマグネットドラムをクリーン液槽10に沈めて配置することにより、ダーティ槽液2やクリーン液槽10に蓋2f,12fをして、ダーティ液槽2やクリーン液槽10の上を平坦にして、工作機械に取り付けが行いやすくした構成になっている(
図3(a)(b))。以下、ダーティ液槽内に配され第1の搬送コンベヤ5を構成するチェーンコンベヤの切り屑排出口から遠い端部側を「ダーティ液槽の上流側」、切り屑排出口8に近い端部側を「ダーティ液槽の下流側」と定義する。
【0018】
第1の搬送コンベヤ5は、チェーンコンベヤが使用されており、チェーンコンベヤは、左右一対の無端状チェーンベルトをダーティ液槽2の上流側2bと下流側2aの切り屑排出口付近とを動力により周回させる。これら一対の無端状チェーンベルト5の間に前記掻き取り手段4である掻き板が一定の間隔をあけて複数枚取り付けられ、第1の搬送コンベヤ5の周回運動に伴い、ダーティ液槽内を移動し、堆積した切り屑を掻き取り、切り屑排出口8へ搬送する。
【0019】
回転ドラム式濾過手段11は、クリーン液槽10に配置されるマグネットドラム11と、マグネットドラム11の表面に吸着した微細な切り屑を剥離・除去するスクレーパ13により構成される(
図5)。また、従来搬送式濾過手段の上に配置されることが多かったマグネットドラムをダーティ液槽の側方に配置したことにより、ダーティ液槽の上を平坦することができるので、旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械に組み込むこと行いやすくなる(
図3)。
【0020】
マグネットドラム11は、強力な磁力を有し、また磁力を保持することが可能なものが好ましく、本実施例では、永久磁石のうち、磁力が強力なネオジム磁石を用い、円柱状に形成され動力により中心を軸にして回転させるものを使用している。第2の濾過ドラムであるマグネットドラム11の回転軸の向きは第1の搬送コンベヤにより切り屑が搬送される方向に沿わせて配されており、その回転方向は、ダーティ液槽2の方向への回転方向F(
図1~
図4の第2の濾過ドラム11では、反時計回りF)である(
図10)。第1の実施の形態のマグネットドラム11は、クリーン液槽10に沈めるようにして配されており、その上部側が液面に突出するように取り付けられており、その上部側でスクレーパ13により、吸着した切り屑が掻き取られる。
【0021】
スクレーパ13は、マグネットドラム11の側壁に吸着した微細な切り屑を剥離・除去するためのプレート状の掻き取り手段である。側壁7の開口部7aは、マグネットドラム11の側壁の長さよりも短く(
図5)、その先端がマグネットドラム11の側壁に接するように配されている(
図9(a)(b))。第1の実施の形態のスクレーパ13は、マグネットドラム11の長手方向に沿って配されるほぼ同じ長さを有しており、素材としては、耐摩耗性を有し、欠けや折れが生じ難い非磁性体の金属製や炭素繊維が好適である。さらに、効率的な切り屑除去を目的として、ダーティ液槽底部に磁石を配し、切り屑の堆積を促進することもでき、堆積した切り屑の搬送を妨げない程度の磁力を有するフェライト磁石等が好適である。
【0022】
上記マグネットドラム11とスクレーパ13により構成された回転ドラム式濾過手段11は、ダーティ液槽2と隣接するクリーン液槽10を隔てる壁7に開口部7aを穿ち形成されたクーラント流路のクリーン液槽側に、マグネットドラム11の回転軸11aと、第1の搬送コンベヤ5の切り屑搬送方向が沿うように設けられている。従来装置では、クーラントの浄化装置100をコンパクトにし、省スペースを実現するための構造であり、回転ドラム式濾過手段11で除去された微細な切り屑は、その構造上、ダーティ液槽側へ戻り、再度回転ドラム式濾過手段11を経由して捕捉されるという堂々巡りが生じてしまい濾過効率が低下する。しかし、第1の実施の形態では、スクレーパ13で除去された微細な切り屑を開口部7aに戻さないようにチップ受容器12をスクレーパ13の下方に設けただけでなく、チップ受容器12により集積した微細な切り屑を切り屑排出口8に近いダーティ液槽2の下流側2aへ搬送するための第2の搬送コンベヤ15も備える。
本実施形態のチップ受容器12は断面矩形の樋のような形状を呈し、その内部に収納可能なサイズの搬送用突起14を有しており、第2の搬送コンベヤからなる第2のチェーンコンベヤ15により駆動する
が、この駆動により、前記チップ受容器(チップ移載手段)12の内部に配された第2の搬送コンベヤ(第2のチェーンコンベヤ)の前記搬送用突起14も駆動する(図1、図4(a)(b))。この無端状チェーンベルト
(第2のチェーンコンベヤ)15に搬送用突起14が一定の間隔で複数取付けられており、チェーンコンベヤの周回運動に伴い、チップ受容器12に集積した微細な切り屑を切り屑排出口に近い、ダーティ液槽2の下流側2aへ誘導する。そして、切り屑をチップ受容器12の下流側に移動させるとともに、ダーティ液槽2に排出する。第2の搬送コンベヤ15は、第1の搬送コンベヤ5のチェーンベルトからの駆動力を得て、チップ受容器12の上流側と下流側とを動力により周回する(
図4(a)(b))。
【0023】
本実施例においてクーラント浄化装置100は、第1の搬送コンベヤ5を構成するチェーンコンベヤの運動エネルギーが回転ドラム式濾過手段11を構成するマグネットドラムの回転及び、第2の搬送コンベヤ15の運動の動力に利用されている。すなわち、搬送式濾過手段1の傾斜部の先端側に配置された動力源であるモータM1からの駆動力を搬送式濾過手段1の軸部19とそのギアMa等を介して、ギアMaと回転ドラム式濾過手段11の連結軸である回転軸20によって、回転ドラム式濾過手段11のマグネットドラムの軸部11aを回転駆動させている。図中符号11bは、軸部11aを支持する支持部材であるとともに、開口部7aからのダーティ液の流れを制御する側壁部11bである(前記軸受け兼用)。この側壁部11b,11bの間においてダーティ液が流れるので、開口部を介してクリーン液槽10に流れ込むダーティ液をほぼ全部回転ドラム式濾過手段11が吸着する(
図12)。このような流れを制御する側壁部は、前記軸受け兼用のものである他、開口部7aの周囲において設けることができる。また、第1の搬送コンベヤ5と第2の搬送コンベヤ15を同時に駆動することで、省エネルギー化も実現している。また、搬送式濾過手段1は、搬送式濾過手段1の軸部18と、回転ドラム式濾過手段11のマグネットドラムの軸部11aを回転駆動させている。そして、モータM1からの駆動力により、第1の搬送コンベヤ5と第2の搬送コンベヤ15を同時に駆動することで、省エネルギー化も実現している(
図1、2、4)。また、搬送式濾過手段1の傾斜部の基端側に工作機械へクリーン液を送るポンプモータM2が配置されている。
なお、第1の搬送手段5の上流側の軸部18としては、第2の搬送手段15の軸部に連携するものであるが、この位置に排出されるマグネットドラム11からの切り屑を素早く第1の搬送手段の傾斜部1aに掬い上げるために、下流側の軸19に、回転羽根を取り付けるなどすることができる。
【0024】
次に、第1の実施の形態の濾過方法について
図11(a)(b)を用いて説明する。
図11(a)は本実施例のクーラントの浄化装置100において、ダーティ液中の切り屑がどのように除去され、クーラントが浄化されるかを示すブロック図である。
図11(b)は、工作機械と連結させた場合のクーラントの流れを説明する図である。
まず、本実施の形態において、発熱や切り屑の飛散防止のため旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械で使用されたクーラントは、切り屑が混在するダーティ液となって、クーラント浄化装置100を構成するダーティ液槽2に供給される。工作機械から流出された切り屑を含有したクーラントは、比較的大きな切り屑が含まれるクーラントは、ダーティ液槽2に送られ、ダーティ液槽2の底部に徐々に堆積する。このため、駆動手段であるモータM1を駆動させて、第1の搬送コンベヤ5を搬送駆動させると、掻き上げ手段4は、スタート位置からダーティ液槽2の底部に至り、それから立ち上がり傾斜部1aにむかって斜め上昇して行き、立ち上がり傾斜部1aの上方の排出口8から切り屑を排出させる。
【0025】
ダーティ液槽2に供給されたダーティ液に混在する切り屑のうち、堆積せずダーティ液中を浮遊する微細な切り屑は、ダーティ液槽2に隣接して設けられたクリーン液槽10に、ダーティ液槽2とクリーン液槽10を隔てる壁7に開口部7aを穿ち形成したクーラント流路を経由し供給される。そして、クーラント流路のクリーン液槽10側に設けられた回転ドラム式濾過手段11により捕捉され、除去される。
【0026】
上記スクレーパ13によりマグネットドラム11から除去された微細な切り屑は、ダーティ液槽2に戻らないように設けられたチップ受容器12に集積され、ダーティ液槽2の下流側2aへ誘導される。また、チップ受容器12に滞留し、あふれ出すことを防止するための第2の搬送コンベヤ15を設けることで、微細な切り屑がスムーズにダーティ液槽2の下流側2aへ導かれ、最終的に第1の搬送コンベヤ5を構成する掻き上げ手段4により排出口8から排出される。上記のような工程を経て、ダーティ液中の切り屑が除去され、再利用可能なクーラントとして再び工作機械に供給される。
【0027】
そして、本実施の形態では、ダーティ液槽2の側方側にクリーン液槽10を配置した2槽の隣接のみで構成しているので、その側方側に配されたマグネットドラム11によっても、濾過される。ここでは、比較的細かな切り屑(チップ)が主な濾過の対象になるが、ダーティ液槽2において浮遊するものがあるところ、従来装置では、この比較的細かな切り屑は、ダーティ液槽との境の壁に付着したり、壁7の付近に浮遊する微細な切り屑は、滞留して、除去することは難しかった。
しかし、本実施の形態では、前記マグネットドラム11に吸着した切り屑をスクレーパ13により捕捉して、その切り屑をダーティ液槽2の下流側2aに移動させて戻すチップ移載手段12を配したことから、壁7に付着したり壁7の近くで滞留するような細かな浮遊切り屑は、マグネットドラム11により吸着される。マグネットドラム11の上方側は、液面よりも上方であり、また、掻き上げ手段4もその上方位置に吸着したスクレーパ13で除去する。
【0028】
ここで、回転ドラム式濾過手段11は、前記クリーン液槽2に配置されるとともに、前記開口部7aに対して回転ドラム式濾過手段11の外周面が大きくして設けられている。すなわち、
図9(a)(b)に示すように、前記ダーティ液槽2とクリーン液槽10とを隔てる側壁7に流路として設けられる開口部7aの長手方向の長さH2が前記回転ドラム式濾過手段の長手方向の長さH1よりも短いかほぼ同じ長さとされ、また、その幅間隔も、前記開口部7aの方が小さく、これにより搬送式濾過手段からのクーラントの流れが回転ドラム式濾過手段11の外周面にかかるように流路が形成されている。また、前記開口部7aからの流路が連続するように、マグネットドラム11の下方に円弧状の流路形成部21,22が設けられている(
図5)。
また、
図10(a)(b)に示すように、前記開口部7aの形状としては、壁7の周囲に形成された開口部7aであっても良い。すなわち、開口部7aとしては、壁7の下方側の他、上方側に設けても良く、又、下流側に近づけて形成しても良い。そして、チップ移載手段12による切り屑の排出としては、前記開口部7aの位置よりも下流側2aに排出することが好ましい。
図9(a)は、開口部7aの長手方向の長さH2が前記回転ドラム式濾過手段の長手方向の長さH1とほぼ同じ長さの図であり、
図9(b)は、開口部7aの長手方向の長さH2が前記回転ドラム式濾過手段11の長手方向の長さH1よりも短い場合の例である。これらいずれの場合も、余分な流れや、開口部の方が回転ドラム式濾過手段よりも大きい場合に比較して、濾過効率に優れた濾過が可能になっている。したがって、マグネットドラム11を回転させると(約1.3m/分)、ダーティ液を強い回収力で濾過してクリーン液槽10へ送り込むこととなる。なお、前記回転ドラム式濾過手段11の回転速度を前記ダーティ液槽2の第1の搬送コンベヤ3の速度よりも早い速度になるように回転させることも可能である。
そして、第1の実施の形態では、マグネットドラム11は、壁7の下方側に設けた開口部7aに横付けされるので、上方側が液面よりも突出して配されたとしても、ダーティ液槽2もクリーン液槽10も蓋体2f,12fにより覆うことができるように構成されている(
図3(a))。
【0029】
(第2の実施の形態)
図6~
図8は、本発明の第2の実施形態の斜視図である。第2の実施形態の装置101は、ダーティ液槽2に隣接するクリーン液槽10に回転ドラム式濾過手段11としてマグネットドラムが取り付けられてとともに、前記回転ドラム式濾過手段11に吸着した切り屑を前記ダーティ液槽2の下流側2aに搬送するチップ移載手段12のチップ受容器を下流側に向けて傾斜させたり、又は、ホースからの水流(クリーン液など)により搬送式濾過手段2の下流側2aに搬送される、非駆動式の構成としたものである。なお、前記第1の実施の形態とは異なり、回転ドラム式濾過手段11が片側の配置であるが、同じように両側は位置にすることも可能である。
回転ドラム式濾過手段11はマグネットドラム11と、マグネットドラム11の表面に吸着した微細な切り屑を剥離・除去するスクレーパ13により構成される。また、ダーティ液槽の下流側への排出をスムーズに行うため、チップ受容器12の上流側から水等の液体を下流側へ流している。このように、チップ移載手段12としては、駆動手段ではなく、上流側から下流側に向かって傾斜させたり、クリーン液槽等の液体を流しで、下流側に移動させることも可能である。
チップ移載手段12は、樋のような形状をしており、ダーティ液槽2の下流側2aへ誘導する誘導路15aを曲げ調整可として設けられており、流体を流すホースを着脱する脱着部15bが上流側に設けられている。なお、上記樋形状のチップ移載手段12は、除去された切り屑がスクレーパ13上に滞留するのを防ぐため、傾斜をつけてガイド板の役割を持たせて配されるものでも良い。
【0030】
以上、本発明は上記実施の形態に限らず、例えば、従来のスクレーパ式コンベヤやマグネット式コンベヤを改良して、上記往復駆動やスクレーパ等の数や配置位置などを変更することでも実施することが可能である。また、ダーティ液槽2の立ち上がり傾斜部1aを左右に形成して、掻き上げ手段4の往復動の往動作の場合も復動作の場合も立ち上がり傾斜部2aに押し上げ排出口8から排出させる構造をとることもできる。このように、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。
【符号の説明】
【0031】
100,101 本発明のクーラントの浄化装置、
1 搬送式濾過手段、1a 立ち上がり傾斜部、
2 ダーティ液槽、2a 下流側、2b 上流側、
3 第1の搬送コンベヤ(チェーンコンベヤ)、
4 掻き上げ手段(スクレーパ)、
5 第1の搬送コンベヤ(チェーンコンベヤ)、
7 側壁、7a 開口部(流通路)、
8 排出口、
10 クリーン液槽、
11 回転ドラム式濾過手段(マグネットドラム)、11a 軸部、
12 チップ移載手段(チップ受容器)、
13 スクレーパ(回転ドラム式濾過手段の掻き取り手段)、
14 搬送用突起、
15 第2の搬送コンベヤ(第2のチェーンコンベヤ)、
18,19 搬送式濾過手段の軸部、
20 連結軸、
21,22 流路形成部、
M1 駆動源(モータ)、M2 ポンプモータ、Ma カム、