(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】2つのバランスシャフトを有するマスバランスギアを備えた内燃機関
(51)【国際特許分類】
F02B 77/00 20060101AFI20240208BHJP
F01M 1/06 20060101ALI20240208BHJP
F16F 15/26 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
F02B77/00 L
F02B77/00 Q
F01M1/06 K
F16F15/26 L
F16F15/26 N
(21)【出願番号】P 2021560751
(86)(22)【出願日】2020-04-14
(86)【国際出願番号】 EP2020000083
(87)【国際公開番号】W WO2020224796
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】102019003288.8
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592007771
【氏名又は名称】ドイツ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】ジョイステン-ピーリッツ,ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】クラインシュミット,トニ
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-142788(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102012001043(DE,A1)
【文献】米国特許第3710774(US,A)
【文献】特開2007-239521(JP,A)
【文献】実開平6-16748(JP,U)
【文献】特開2001-280422(JP,A)
【文献】特開2003-130136(JP,A)
【文献】実開昭58-20750(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/26
F02B 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケースを備え、このクランクケースはベアリングキャップ(2)を有し、このベアリングキャップ(2)のベアリングにはクランクシャフトが回転自在に取り付けられ、クランクシャフトにはピストンを支持する少なくとも1つのコネクティングロッドが関節結合し、ピストンはシリンダー中を移動可能であり、シリンダーはシリンダーヘッドで覆われて燃焼室を形成し、シリンダーヘッドにはガス交換バルブが配置され、ガス交換バルブは少なくとも1つのカムシャフトによって作動され、カムシャフトはギヤを介してクランクシャフト上に配置されたギヤ駆動ギヤに接続され、2つのバランスシャフト(4)を有するマスバランスギヤを有する内燃機関において、
クランクケースの底にギヤフレーム(17)が取付けられ、
上記マスバランスギヤはクランクシャフトの下側でギヤフレーム(17)に取り付けられ、
上記の2つのバランスシャフト(4)は中間ギヤ(3)に作動接続され、この中間ギヤ(3)は中間ギヤ軸受を介して
ベアリングキャップ(2)に取付られ、
2つのバランスシャフト(4)はクランクシャフトに取付けたクランクシャフトギヤ(1)とクランクシャフトギヤ(1)の隣に配置された中間ギヤ(3)とによって駆動され、
中間ギヤ軸受には上記ベアリングキャップ(2)の環状ギャップ(11)から潤滑油が供給される、
ことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
環状ギャップ(11)からオイル供給路(13)を介して中間ギヤ軸受へ潤滑油が供給される請求項1に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケースを備え、クランクケース中にはクランクシャフトが回転自在に取り付けられ、クランクシャフトにはピストンを支持する少なくとも1本のコネクティングロッドが関節結合し、ピストンは燃焼室を形成するシリンダー内を移動可能であり、シリンダーはシリンダーヘッドで覆われ、シリンダーヘッド中にはガス交換弁が配置され、ガス交換弁は少なくとも1つのカムシャフトによって駆動され、このカムシャフトはトランスミッションを介してクランクシャフト上に配置されたギアドライブギアに接続され、2つのバランスシャフトを有するマスバランスギアを有する内燃機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のマスバランスギアはクランクシャフトウェブに取り付けられたギアを介して駆動される。このシステムではギアが非常に大きく、組立ても困難である。設置スペースが極めて限られているため、複雑でコストのかかるドライブを変更することは制限される。潤滑油ポンプはクランクケースに組み込まれた中間ギアベアリングを介して部分的に駆動される。これによって公差チェーンが高くなり、中間ホイールベアリングへの潤滑油の供給不足という問題が生じる。場合によっては、オイルポンプとマスバランシングギアとを同時に駆動できるようにするために、両方のシステムを同時に設置する必要がある。
【0003】
上記のような内燃機関は[特許文献1](ドイツ出願公開第DE4128432A1号公報)で公知である。この内燃機関はそのクランクケースに直接組み込まれたマスバランスギアを有している。この場合、クランクケースを機械加工するときに、例えばクランクシャフト、中間ギアおよびカムシャフトのベアリングを機械加工または製造する際の一般的な操作でマスバランスギアのバランスシャフトベアリングポイントを製造することもできる。それによって個々のベアリングポイント間の距離を極めて正確に維持できるが、特に産業用エンジン、商用車用エンジン、建設機械用エンジンとして使用される内燃機関ではマスバランスギアは必要に応じて用いられ、マスバランスギアが必要でない場合には、少なくともクランクケース内のマスバランスギアのベアリングポイントの機械加工は追加費用になり、追加コストを発生させる。
【0004】
[特許文献2](ドイツ出願公開第DE10240713A1号公報)には、クランクシャフト速度の2倍で反対方向に作動する2つのカウンターバランスシャフトを有する内燃機関の慣性バランス装置が記載されている。このバランス装置はクランクケースの下に取り付けられたオイルパン内のクランクシャフトの下に配置されている。しかし、この装置はバリアントがかさばり、高価であるという点で不利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】ドイツ出願公開第DE4128432A1号公報
【文献】ドイツ出願公開第DE10240713A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、内燃機関の潤滑油ポンプまたはマスバランスギアあるいはその両方を駆動するための空間的に最適化され、費用効果の高い駆動構造を有する内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は、マスバランスギアをクランクシャフトの下側に配置されたギアフレームによってクランクケースに取り付け、クランクシャフトに取り付けたドライブギアによって駆動することによって達成される。これによって、ギアフレームにネジ山を取り付けるだけのわずかな加工だけで製造ができ、クランクケースに不必要な機械加工操作を行う必要はない。
【0008】
本発明では、潤滑油ポンプおよび/またはマスバランスギアを駆動するための中間ホイールベアリングを主軸受ブラケット(Hauptlagerstuhl)に一体化できるという利点がある。その結果、オイルポンプおよび/またはマスバランスギアを限られた設置スペースで駆動できる。
【0009】
中間ギアを潤滑するの必要な量のオイルは主軸受ブラケットから供給される。別の設計では中間ホイールにローラーベアリングを装備する。この場合、主軸受ブラケットから潤滑剤を積極的に供給する必要はない。
【0010】
本発明の別の利点は、ギアの角度誤差が最小限に抑えられ、クランクシャフト上のドライブギアへのバックラッシュが最小限に抑えられることにある。
【0011】
別の有利な設計では、中間ホイールベアリングへの潤滑油の供給をクランクケース側のメインベアリングへの潤滑油の供給を利用して行うことができる。
【0012】
本発明の1つの変形例では、クランクケース側のベアリングブラケットに供給ボアをドリル加工し、そこにメインベアリングカバーと一体化した中間ギアベアリングを収容する。
【0013】
本発明の別の変形例では、クランクケース側に設置されたベアリングシェルの背面に給油溝を設けて中間ホイールベアリングへの給油を実現する。
【0014】
本発明の別の変形例では、中間ホイールベアリングにオイルを供給するために、メインベアリングのスクリューパイプの1本に加圧されたオイルを供給し、中間ホイール潤滑用のオイルをベアリングジャーナルに供給する。
【0015】
本発明のさらなる発展形では、互いに噛み合う2つのバランサーシャフトギアを設け、バランサーシャフトギアの軸方向隣にドライブギアを配置し、中間のバランサーシャフトギアを介してマスドライブギアと噛み合わせる。この組み合わせによって変速比の設定が可能になる一方で、中間バランスシャフトホイールがクランクシャフトと2本のバランスシャフトの中心距離を埋めることになる。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態では、オイルポンプギアがギア駆動ギアと直接係合する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1aはディファレンシャルギアとローラーベアリング
で支持された中間ギア
とを備えた部分的に組み立てられたギアドライブを有する内燃機関の正面図
、図1bは図1aのA-A線に沿った断面図。
【
図2】
図2aはディファレンシャルギアとすべり軸受とを有する中間ギアを備えた部分的に組み立てられたギアドライブを有する内燃機関の正面図
、図2bは図2aのB-B線に沿った断面図、図2cは図2aのC-C線に沿った断面図。
【
図3】
図3aはディファレンシャルギアとローラーベアリング
で支持された中間ギア
とを備えた部分的に組み立てられたギアトレインを有する内燃焼エンジンの正面図
、図3bは図1aのA-A線に沿った断面図。
【
図4】
図4aはデファレンシャルギアとすべり軸受
で支持された中間ギア
とを備えた部分的に組み立てたギアドライブをを有する内燃機関の正面図
、図4bは図4aのB-B線に沿った断面図、図4cは図4aのC-C線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のさらに有利な実施形態は図面から理解できよう。以下、図に示した例示的な実施形態がをり詳細に説明さする。
【0019】
[
図1a]に示すように、ギアドライブギアとマスシャフトドライブギアはクランクシャフトの延長上で回転固定されている。ギアドライブギアはステップギアと噛み合い、ステップギアはカムシャフトギアと噛み合う。オイルポンプギアもギアドライブギアによって駆動される。オイルポンプギアはギアドライブハウジングに配置されたオイルポンプの一部である。
【0020】
クランクシャフトギア1はクランクシャフト19に取り付けられ、中間ギアを介してベアリングカバー2に螺合されたマスバランスシャフト4と作動可能に接続されている。ベアリングカバー2ではセンタリングレセプタクル5がベアリングキャップ内に配置される。クランクシャフトに取り付けられたクランクシャフトギア1はオイルポンプの中間ホイール6と作動可能に接続され、中間ホイールは、オイルポンプの駆動ホイール7と作動可能に接続されている。ベアリングピン8はローラーベアリング中間ギア3を受け、ネジ16とローラーベアリング15とを介してベアリングカバー2に螺合される。
【0021】
[
図2a]は、ディファレンシャルギアとスライドベアリングとを備えた中間ギアを備えた部分的に組み立てられたギアドライブを有する内燃機関の正面図で、マスバランスギアはバランスシャフトアイドラーホイールを介して駆動され、このホイールは、2番目のバランスシャフトギアと噛み合うバランスシャフトギアの前に軸方向に配置されたドライブギアを駆動する。
【0022】
これらの2つのバランスシャフトギアはバランスギアのギアフレーム17に取り付けられたバランスシャフト
20([図1a])に接続されている。ギアフレーム17はクランクケース
18([図1a])の下側に直接螺合されている。クランクシャフトギア1はクランクシャフトに取り付けられ、ベアリングカバー2に螺合された中間ギア3を介してマスバランスギアシャフト4に動作可能に接続される。クランクシャフトに固定されたクランクシャフトギア1は中間ギア3とも作動可能に接続されており、中間ギア3はオイルポンプの駆動ギア7と作動可能に接続されている。キャストオンベアリングピン(angegossene Lagerbolzen)9はすべり軸受け式の中間ギア3を収容する。この中間ギア3はスラストワッシャー10とネジ16を用いてベアリングカバー2に螺合される。オイル供給用の環状ギャップ11はオイル入口12を介してベアリングブロックボアから環状ギャップ11にオイルを供給する。環状ギャップ11からオイル供給路13を介してすべり軸受14にオイルが供給される。
【0023】
[
図3a]は、ディファレンシャルギアとローラーベアリング中間ギア3とを有する部分的に組み立てられたギアドライブを備えた内燃機関の正面図を示している。ベアリングカバー2では、センタリングレセプタクル5がベアリングキャップ内に配置される。クランクシャフトに固定されたクランクシャフトギア1はオイルポンプの中間ギア6と作動可能に接続され、中間ギアはオイルポンプの駆動ギア7と作動可能に接続される。ベアリングピン8はローラーベアリング中間ギア3を受け、ネジ16とローラーベアリング15とを介してベアリングカバー2に螺合される。
【0024】
[
図4a]は、ディファレンシャルギアとスライドベアリングとを備えた部分的に組み立てられたギアドライブを有する中間ギア3を備えた内燃機関の正面図を示している。クランクシャフトに取り付けられたクランクシャフトギア1は中間ホイール3と作動可能に接続され、中間ホイール3はオイルポンプの駆動ホイール7と作動可能に接続されている。キャストオンベアリングピン9はスライド式中間ギア3を受け、スラストワッシャー10とネジ16を用いてベアリングカバー2に螺合される。オイル供給用の環状ギャップ11はオイル入口12を介してベアリングブロックボアから環状ギャップ11にオイルを供給する。環状ギャップ11からオイル供給路13を介してすべり軸受14にオイルが供給される。
【符号の説明】
【0025】
1 クランクシャフトギア
2 ベアリングキャップ
3 ベアリングカバーに螺合された中間ギア
4 マスバランスシャフト
5 ベアリングカバーのセンタリングレセクタプル
6 オイルポンプのアイドラーギア
7 オイルポンプの駆動ギア
8 ボルト螺合ベアリングピン
9 ベアリングカバーに鋳造されたキヤストベアリングピン
10 スラストワッシャー
11 オイル供給用環状ギャップ
12 ベアリングブラケットボアから環状ギャップへのオイル入口
13 環状ギャップからすべり軸受へのオイル供給路
14 中間歯車のすべり軸受
15 中間歯車の転がり軸受
16 ネジ
17 ギアフレーム
18 クランクケース
19 クランクシャフト
20 マスバランスシャフト