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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】圧縮空気の凝縮装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/16 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
F04B39/16 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022190635
(22)【出願日】2022-11-29
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】517138812
【氏名又は名称】日本エアードライヤー販売株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085110
【弁理士】
【氏名又は名称】千明 武
(72)【発明者】
【氏名】川真田 博康
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-140215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/16
B01D 53/26
B01D 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアーコンプレッサから圧縮空気を導入可能な凝縮筒を設け、該凝縮筒内に複数の通気孔を形成した衝突板を配置し、該突板を介して凝縮筒内を複数の圧縮空気導入室区画、上流側の圧縮空気導入室にエアーコンプレッサで生成した圧縮空気を導入し、該縮空気を下方の衝突板に衝突して凝縮し、および/または突板の通気孔から圧縮空気を噴出させて断熱膨張し、除湿した圧縮空気を下流側のエアーツールへ供給可能にした圧縮空気の凝縮装置において、 凝縮筒を上下端部を閉塞した単一の直管状に形成し、該凝縮筒内の中間位置から下部に亘って1または複数の衝突板を配置し、その最上流の圧縮空気導入室の容積を、他の圧縮空気導入室の容積よりも大きく形成したことを特徴とする圧縮空気の凝縮装置。
【請求項2】
凝縮筒内を、高温高圧の圧縮空気を導入する上部室と、複数の衝突板で区画した中間室と、除湿した圧縮空気をエアーツール側へ送出する下部室とに、区画した請求項1記載の圧縮空気の凝縮装置。
【請求項3】
上部室に導入した圧縮空気を下方に配置した1または複数の衝突板に衝突し、圧縮空気を凝縮可能に設けるとともに、衝突板の通気孔から噴出し、圧縮空気を断熱膨張可能に設けた請求項記載の圧縮空気の凝縮装置。
【請求項4】
上部室の下方に単一の衝突板を配置し、上部室の容積を最大に形成するとともに、多量の圧縮空気を前記衝突板に衝突して凝縮し、および/または通気孔から圧縮空気を噴出させて断熱膨張可能にした請求項記載の圧縮空気の凝縮装置。
【請求項5】
上部室の下方に複数の衝突板を配置し、これらの衝突板に圧縮空気を順次衝突して凝縮させるとともに、これらの衝突板の通気孔から圧縮空気を噴出させて断熱膨張させた請求項2記載の圧縮空気の凝縮装置。
【請求項6】
複数の衝突板を等間隔に配置した一または二組の衝突板で構成した請求項記載の圧縮空気の凝縮装置。
【請求項7】
複数の衝突板を間隔を異にする二組の衝突板で構成した請求項記載の圧縮空気の凝縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気を導入する凝縮筒内を複数の通気板で区画し、その区画スペースの圧縮空気の除湿と凝縮を合理的に実現するとともに、圧縮空気を効率良く除湿し得るようにした圧縮空気の凝縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアーコンプレッサから吐出された圧縮空気には凝縮水や油分が混在し、この圧縮空気をエアードライバーやインパクトレンチ等のエアーツールへ供給すると、空気導管の内部が錆たりエアーツール内部の構成部品が錆びて、機能が低下し故障を起こす惧れがある。
このため、圧縮空気の供給管路に除湿手段として、エアードライヤを取付けて水分を除去し、除湿・乾燥した圧縮空気をエアーツールへ供給するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、エアードライヤは高価で取付けが煩雑なため、その設置場所や個数が制約され、圧縮空気を十分に除湿することが難しいという問題があった。
【0004】
そこで、前記問題を解決するものとして、出願人は、圧縮空気の供給路に複数の管状の凝縮ユニットを連結し、該凝縮ユニットは内部に複数の衝突板を離間して配置し、該衝突板に多数の通気孔を形成し、圧縮空気を衝突板に衝突させて凝縮するとともに、圧縮空気を通気孔から噴出させて断熱膨張させ、圧縮空気中の水分を除去して除湿するようにした圧縮空気の凝縮装置を開発し、これを既に提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、前記凝縮装置は構成が複雑で製作が難しく、高価になるという問題があった。
【0006】
前記問題を解決するものとして、出願人は、凝縮ユニットを1または複数の継手管を用いて長尺の管体に構成し、その内部に複数の衝突板を離間して配置し、該衝突板に多数の通気孔を形成し、圧縮空気を衝突板に衝突させて凝縮するとともに、通気孔から圧縮空気を噴出させて断熱膨張させ、圧縮空気中の水分を除去し除湿するようにした圧縮空気の凝縮装置を開発し、これを前記特許文献2の図10、24、26で提案している。
【0007】
しかし、前記凝縮装置は、複数の衝突板の取付けに手間が掛かるとともに、複数の衝突板を略等間隔に配置しているため、圧縮空気が衝突板間の小スペースに導入されて除湿され、圧縮空気中の水分の除去能力が概して低く、十分な除湿精度を得られない、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6826144号公報
【文献】特開2022-140215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題を解決し、圧縮空気を導入する凝縮筒内を複数の通気板で区画し、その区画スペースの圧縮空気の除湿と凝縮を合理的に実現するとともに、圧縮空気を効率良く除湿し得るようにした、圧縮空気の凝縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、エアーコンプレッサから圧縮空気を導入可能な凝縮筒を設け、該凝縮筒内に複数の通気孔を形成した衝突板を配置し、該突板を介して凝縮筒内を複数の圧縮空気導入室区画、上流側の圧縮空気導入室にエアーコンプレッサで生成した圧縮空気を導入し、該縮空気を下方の衝突板に衝突して凝縮し、および/または突板の通気孔から圧縮空気を噴出させて断熱膨張し、除湿した圧縮空気を下流側のエアーツールへ供給可能にした圧縮空気の凝縮装置において、凝縮筒を上下端部を閉塞した単一の直管状に形成し、該凝縮筒内の中間位置から下部に亘って1または複数の衝突板を配置し、その最上流の圧縮空気導入室の容積を、他の圧縮空気導入室の容積よりも大きく形成し、凝縮筒を上下端部を閉塞した単一の直管状に形成し、容易かつ安価に製作し得るとともに、凝縮筒内における圧縮空気の移動を抑止して圧縮空気の凝縮作用と断熱膨張作用を精密かつ確度良く行ない、また最上流の圧縮空気導入室の容積を、他の圧縮空気導入室の容積よりも大きく形成して、最上流の圧縮空気導入室に多量の圧縮空気を収容し、衝突板による凝縮作用と断熱膨張作用を活発かつ旺盛に行うようにしている。
【0011】
請求項2の発明は、凝縮筒内を、高温高圧の圧縮空気を導入する上部室と、一または複数の衝突板で区画した中間室と、除湿した圧縮空気をエアーツール側へ送出する下部室とに、区画し、これらの各室に圧縮空気を円滑かつ速やかに移動させて、圧縮空気を効率良く凝縮または断熱膨張させて除湿するようにしている。
【0012】
請求項3の発明は、上部室に導入した圧縮空気を下方に配置した一または複数の衝突板に衝突し、多量の圧縮空気を速やかに凝縮させるとともに、衝突板の通気孔から噴出し、多量の圧縮空気を速やかに断熱膨張させて除湿するようにしている。
請求項4の発明は、上部室の下方に単一の衝突板を設け、中間室の容積の低減分、上部室の容積を最大に形成し、大量の圧縮空気を上部室に収容し、これを衝突板に速やかに衝突して凝縮し、および/または通気孔から圧縮空気を噴出させて効率良く除湿するようにしている。
【0013】
請求項5の発明は、上部室の下方に複数の衝突板を配置し、これらの衝突板に圧縮空気を順次衝突させて凝縮させるとともに、これらの衝突板の通気孔から圧縮空気を順次噴出させて断熱膨張させ、上部室内の大量の圧縮空気を精密かつ効率良く除湿するようにしている。
請求項6の発明は、複数の衝突板を等間隔に配置した一組または二組の衝突板で構成し、衝突板を容易かつ速やかに配置し、その製作を容易に行えるようにしている。
請求項7の発明は、複数の衝突板を間隔を異にする二組の衝突板で構成し、衝突板に対する圧縮空気の衝突効果を多様に設定するとともに、衝突板の通気孔から圧縮空気の噴出を多様に設定するようにしている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、凝縮筒を上下端部を閉塞した単一の直管状に形成したから、容易かつ安価に製作できるとともに、凝縮筒内における圧縮空気の移動を抑止して圧縮空気の凝縮作用と熱膨張作用を精密かつ確度良く行なうことができる。
また、最上流の圧縮空気導入室の容積を、他の圧縮空気導入室の容積よりも大きく形成したから、最上流の圧縮空気導入室に多量の圧縮空気を収容でき、この圧縮空気に対する衝突板による凝縮作用と断熱膨張作用を活発かつ旺盛に行うことができる
請求項2の発明は、凝縮筒内を、高温高圧の圧縮空気を導入する上部室と、一または複数の衝突板で区画した中間室と、除湿した圧縮空気をエアーツール側へ送出する下部室とに、区画したから、これらの各室に圧縮空気を円滑かつ速やかに移動させて、高温高圧の圧縮空気を効率良く凝縮または断熱膨張させて除湿することができる。
【0017】
請求項3の発明は、上部室に導入した圧縮空気を下方に配置した一または複数の衝突板に衝突したから、多量の圧縮空気を速やかに凝縮させることができるとともに、衝突板の通気孔から噴出し、多量の圧縮空気を速やかに断熱膨張させて除湿することができる。
請求項4の発明は、上部室の下方に単一の衝突板を設けたから、中間室の容積の低減分、上部室の容積を最大に形成し、大量の圧縮空気を前記衝突板に速やかに衝突して凝縮し、および/または通気孔から圧縮空気を噴出させて効率良く除湿することができる。
【0018】
請求項5の発明は、上部室の下方に複数の衝突板を配置し、これらの衝突板に圧縮空気を順次衝突させて凝縮させるとともに、これらの衝突板の通気孔から圧縮空気を順次噴出させて断熱膨張させたから、上部室内の大量の圧縮空気を効率良く除湿することができる
請求項6の発明は、複数の衝突板を等間隔に配置した一組または二組の衝突板で構成したから、衝突板を容易かつ速やかに配置することができる。
請求項7の発明は、複数の衝突板を間隔を異にする二組の衝突板で構成したから、衝突板に対する圧縮空気の衝突効果を多様に設定することができるとともに、衝突板の通気孔から圧縮空気の噴出を多様に設定することができる。
【0019】
請求項8の発明は、相対する衝突板の間隔を幅広に形成して圧縮空気導入量を増量可能に設け、圧縮空気の凝縮量を増加可能に設けたから、広いスペースの中間室における圧縮空気の凝縮を合理的かつ効率良く行なうことができる。
請求項9の発明は、相対する衝突板の間隔を幅狭に形成して衝突板に対する圧縮空気の衝突圧力を上昇可能に設け、圧縮空気の凝縮効率を上昇可能に設けたから、狭いスペースの中間室における圧縮空気の断熱膨張を合理的かつ効率良く行なうことができる。
請求項10の発明は、上部室に凝縮筒内に導入した約81%の圧縮空気を導入可能にしたから、上部室の下方に単一の衝突板を設けて上部室の容積を最大量に増量し、この圧縮空気の凝縮と断熱膨張を向上することができる。
【0020】
請求項11の発明は、凝縮筒内にエアーツールに連通する空気出口管を配置し、該空気出口管に各衝突板を支持可能にしたから、各衝突板を強固に支持することができる。
請求項12の発明は、凝縮筒の外側に冷却筒を離間して立設し、該冷却筒の下端部に空気孔を形成し、空気を吸入可能に設けるとともに、吸入した空気を冷却筒内を上動させて凝縮筒の外周面を冷却可能に設け、これを冷却筒の上端部の開口部から外部へ排出可能に設けたから、冷却筒の煙突効果によって冷却筒を合理的に冷却し、凝縮筒による凝縮作用と断熱膨張作用を向上することができる。
請求項13の発明は、上部室の下方に複数の衝突板を配置し、該衝突板によって3以上の対向スペースを形成し、各対向スペースによって圧縮空気を凝縮し断熱膨張可能にしたから、圧縮空気を精密かつ能率良く凝縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態の概容を示す説明図である。
図2図1の要部を拡大して示す断面図で、冷却筒の内部に凝縮筒を収容している
図3図2のA-A線に沿う断面図を示している。
図4】本発明の第2の実施形態の要部を示す断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態の要部を示す断面図である。
【0022】
図6】本発明の第4の実施形態の要部を示す断面図である。
図7】本発明の第5の実施形態の要部を示す断面図である。
図8】本発明の第6の実施形態の要部を示す断面図である。
図9】第6の実施形態の応用形態の要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を図示の実施形態について説明すると、図1乃至図3において1は工場等に設置したエアーコンプレッサで、生成した高温高圧の圧縮空気をエアータンク(図示略)に貯留し、その所定量を空気導管2を介して凝縮筒3へ送り出し、該凝縮筒3で除湿し乾燥した圧縮空気を供給管4へ送出し、工場等のエアーツール5へ供給可能にしている。
【0024】
前記凝縮筒3は継手管(図示略)を介して若干長尺の直管状に形成され、その外側に冷却筒6を配置している。
前記冷却筒6は凝縮筒3よりも大径で長尺の管体で構成され、その下端部を地面等の基盤7に立設し、この下端部に設けた空気孔8から空気を吸入して筒内を上動させ、内側の凝縮筒3を冷却可能にしている。
冷却筒6の上端部は凝縮筒3の上方で開口され、この開口部9から導入空気を外部へ排出可能にしている。
すなわち、冷却筒6は煙突機能を備え、下端部の空気孔8から空気を吸入して筒内を上動させ、上端部から熱交換した空気を外部へ排出させて凝縮筒3を冷却可能にしている。
【0025】
前記凝縮筒3の上端部に空気入口管10と空気出口管11とが異方向に突設されて外側に配置され、空気導管2に空気入口管10が接続され、空気出口管11の外側に供給管4が接続されている。
前記空気出口管11の他端部は、エルボ状に折り曲げられて凝縮筒3内の中央下部に配置され、下端の開口部から除湿した圧縮空気を吸入可能にしている。
【0026】
前記凝縮筒3の下部から中間部に亘って複数の衝突板12が配置され、この衝突板12によって凝縮筒3内を区画している。すなわち、凝縮筒3内の全容積は、内径と内面の上下端部の間隔で凡そ決定され、内面の上端部と上側の衝突板12とで最も広い上部室Roを区画し、内面の下端部と最下位置の衝突板12とで下部室Ruを区画し、上下側の2つの衝突板12によって中間室Rmを区画している。中間室Rmの容積は、中間位置の衝突板12によって上下に二分され、その対向間隔dを同一に形成している。
【0027】
上部室Roの上側の衝突板12上面からの高さは略5dに形成され、下部室Ruの下側の衝突板12下面から高さは略1.5dに形成され、中間室Rmの高さは2dに形成されている。したがって、各室の容積は、Ro:Rm:Ruが略5:2:1.5に形成され、この割合で圧縮空気を収容可能にしている。
【0028】
前記衝突板12に小径の複数の通気孔13が形成され、該通気孔13から圧縮空気を噴出して断熱膨張可能にしている。図中、14は凝縮筒3の下端部に取付けたドレンラップで、凝縮筒3の下端部に滞留したドレン(図示略)を外部へ排出可能にしている。
【0029】
このように構成した本発明の圧縮空気の凝縮装置は、凝縮筒3と冷却筒6の製作を要する。このうち、凝縮筒3は一または複数の継手管を用いて鋼製の細長の直管状に構成し、その内部に複数の衝突板12を所定間隔に配置する。
【0030】
図2の実施形態では、3枚の衝突板12を凝縮筒3の中間部のやや下方に配置し、その中間室Rmを凝縮筒3内の全容積の略1/4に構成し、その上側に上部室Roを配置し、下側に下部室Ruを配置している。各室Ro:Rm:Ruの容積を5:2:1.5に形成し、中間室Rmを中間部の衝突板12で上下に二分し、そのそれぞれの衝突板12に複数の通気孔13を形成する。
【0031】
この場合、各室Ro:Rm:Ruの容積配分は、衝突板12,12の間隔dを基準に区画し、凝縮筒3内の空気出口管11の下端部に2枚の衝突板12,12を配置し、上側の衝突板12の上方に衝突板12の対向間隔dの約5倍位置に上部室Roを形成し、最下位置の衝突板12の下方に衝突板12の対向間隔dの約1.5倍位置に下部室Ruを形成する。
【0032】
こうして製作した凝縮筒3は図1および図2のようで、内側上部に上部室Roが広域に区画され、中間部にその1/2以下の中間室Rmが区画され、最下位置に中間室Rmより若干狭い下部室Ruが区画されている。
このうち、上部室Roは、導入した圧縮空気を主に衝突板12との衝突に伴う凝縮に機能させ、中間室Rmは導入した圧縮空気の通気孔13からの断熱膨張と、衝突板12,12間の衝突による凝縮に機能させ、下部室Ruは導入した圧縮空気の湾曲底面に対する衝突による凝縮と、通気孔13からの断熱膨張に機能させている。
【0033】
また、冷却筒6は凝縮筒3よりも大径で長尺の管体に構成し、その下端部を地面等の基盤7に立設し、この下端部に設けた空気孔8から空気を吸入して筒内を上動させ、凝縮筒3を冷却可能にしている。すなわち、冷却筒6に煙突機能を装備させる。
【0034】
こうして製作した冷却筒6内に凝縮筒3を配置し、該凝縮筒3を冷却筒6の中央位置に支持し、凝縮筒3に接続した空気導管10の一端を、エアータンク(図示略)を経てエアーコンプレッサ1の空気出口管2に連通させ、空気出口管11の吐出側を供給管4の上流側に連通させる。
【0035】
このように組み立てた凝縮筒3に、エアーコンプレッサ1で生成された高温高圧の圧縮空気を導入すると、圧縮空気は先ず上部室Roに流入し、この上部室Roに大量の圧縮空気が導入される。
【0036】
この場合、凝縮筒3はエアータンク(図示略)の近接位置に配置されているため、圧縮空気の圧力低下が少なく高圧を維持して上部室Roへ流入し、最上位置の衝突板12に勢い良く衝突して凝縮される。その際、前記圧縮空気は衝突板12に対し高圧で衝突し、前記凝縮が旺盛に行なわれて多量の凝縮水が圧縮空気から除去される。
しかも、上部室Roの圧縮空気量は、凝縮筒3に導入される圧縮空気の単位時間当たり約58%に相当し、この圧縮空気が除湿されて水蒸気が除去されるから、前記凝縮が多量かつ効率良く行なわれる。
【0037】
一方、上部室Roへ流入した圧縮空気は前記凝縮と同時に、通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張し、圧縮空気中の水蒸気が液化して除湿される。
この場合、前記断熱膨張は、上部室Roの圧力が前述のように高圧を維持しているため、圧縮空気の仕事が大きく形成され、この断熱膨張によって能率良く温度低下して液化する。
【0038】
次に、通気孔13から下方へ噴出した圧縮空気は中間位置の衝突板12に衝突して凝縮され、この凝縮と同時に通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張し、圧縮空気中の水蒸気が液化して除湿される。
この後、圧縮空気は最下位置の衝突板12上に移動して衝突し、凝縮されると同時に、通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張し、圧縮空気中の水蒸気が液化して除湿される。
更に、通気孔13から下方へ噴出した圧縮空気は、凝縮筒3内の下端部の湾曲底面に衝突して凝縮され、空気出口管11の下端部への流入を促される。
【0039】
このように、凝縮筒3に導入された圧縮空気は、その約58%が上部室Roに流入し、直下の衝突板12に衝突して凝縮され、水蒸気が除去されて除湿される。
また、中間室Rmでは凝縮筒3に導入された圧縮空気の約23%が衝突板12,12に衝突して凝縮され、通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張し、これらの凝縮作用と断熱膨張を繰り返し受けて、圧縮空気中の水蒸気が液化し除湿される。
【0040】
更に、下部室Ruでは凝縮筒3に導入された圧縮空気の約19%が下端部の湾曲底面に衝突して凝縮され、また通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張し、圧縮空気中の水蒸気が液化して除湿される。
【0041】
こうして、下部室Ruへ噴出した圧縮空気は十分に除湿され、乾燥した圧縮空気が空気出口管11の下端の開口部へ押し込まれ、空気出口管11を上動して上端の開口部から供給管4へ移動し、エアーツール5へ供給される。
各部屋Ro、Rm、Ruで排出された凝縮水は、凝縮筒3内を流下して底部のドレンラップ14に収容される。
【0042】
このような凝縮筒3による圧縮空気の除湿作用の間、外側の冷却筒6では下部の通気孔8から空気が吸入され、これが煙突効果によって冷却筒6と凝縮筒3との間を移動し、凝縮筒3の外周を冷却して凝縮作用と断熱膨張作用を促し、上端の開口部9から外部へ排出される。
【0043】
このように本発明は、凝縮筒3内に複数の衝突板12を合理的に配置し、凝縮筒3内に複数の圧縮空気導入室Ro、Rm、Ruを合理的に区画し、各空気導入室Ro、Rm、Ruに圧縮空気を合理的に導入して凝縮し断熱膨張させているから、凝縮筒3内に複数の衝突板を等間隔に配置して除湿する従来の凝縮装置に比べ、圧縮空気の凝縮と断熱膨張を合理的かつ効率良く行うことができる。
【0044】
その際、例えば圧縮空気を導入する上部室Roの容積を、他の圧縮空気導入室の容積よりも大きく形成すれば、エア-コンプレッサ1で生成された高温高圧の圧縮空気を上部室Roに多量に導入し、該圧縮空気の凝縮と断熱膨張を合理的かつ効率良く行え、凝縮量を増量して圧縮空気を効率良く除湿し、除湿した圧縮空気をエアーツールへ供給し得る。
【0045】
図4乃至図9は本発明の他の実施形態を示し、前述の実施形態と対応する構成部に同一の符号を用いている。このうち、図4は本発明の第2の実施形態を示し、この実施形態では凝縮筒3内の上部室Roと中間室Rmの容積を変更し、それらの容積比を変更している
【0046】
すなわち、衝突板12を3枚から2枚に減少し、上部室Roの下側境界部を下方へ移動するとともに、2つの衝突板12の対向間隔を1/2dに縮小し、上部室Roの容積を増加するとともに、その分、中間室Rmの容積を縮小している。
【0047】
このように構成することで、上部室Roの容積を前述の実施形態の約1.3倍に増加し、凝縮筒3内の容積の約75%に区画し、中間室Rmの容積を前述の実施形態の約1/4に減少し、凝縮筒3内の容積の約6%に区画している。
したがって、上部室Roに導入される圧縮空気量は、前述の実施形態に比べ約1.3倍に増加し、その大半(約75%)を凝縮して除湿し、また中間室Rmでは少量(約6%)の圧縮空気が凝縮されかつ断熱膨張され、下部室Ruでは圧縮空気は約19%の圧縮空気が凝縮され、かつ断熱膨張されて、乾燥した圧縮空気がエアーツール5へ供給される。
【0048】
図5は本発明の第3の実施形態を示し、この実施形態では凝縮筒3内の上部室Roと中間室Rmの容積を更に変更し、それらの凝縮筒3内における容積比を変更している。
すなわち、衝突板12を2枚から1枚に減少し、上部室Roの下側境界部を更に下方へ移動し、凝縮筒3内の上部室Roの容積を約82%に増加するとともに、中間室Rmを消失させ、凝縮筒3内の容積を実質的に上部室Roで構成している。
【0049】
このように構成することで、上部室Roの容積を第1の実施形態の約1.4倍に増加し、衝突板12で区画する中間室Rmの容積を零に構成している。したがって、上部室Roに導入される圧縮空気量は、凝縮筒3に導入される圧縮空気の全量になり、この圧縮空気が衝突板12に勢い良く衝突して凝縮され、通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張し、除湿される。
【0050】
しかも、上部室Roの圧力はエアータンク(図示略)からの圧力低下が僅かで、高圧を維持して単一の衝突板12に勢い良く衝突するため、衝突圧力が高く前記凝縮が効率良く旺盛に行われ、前記圧縮空気から多量の凝縮水が除去される。
また、圧縮空気が通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張され、この断熱膨張による仕事が高圧の圧縮空気に抗して行われるため、この断熱膨張によって能率良く温度低下して液化する。
【0051】
そして、下部室Ruでは凝縮筒3に導入された圧縮空気の約19%が下端部の湾曲底面に衝突して凝縮され、また通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張し、圧縮空気中の水蒸気が液化して除湿される。
【0052】
こうして、下部室Ruへ噴出した圧縮空気は十分に除湿され、乾燥した圧縮空気が空気出口管11の下端の開口部へ押し込まれ、空気出口管11を上動して上端の開口部から供給管4へ移動し、エアーツール5へ供給される。
なお、各部屋Ro、Rm、Ruで排出された凝縮水は、凝縮筒3内を流下して底部のド
レンラップ14に収容される。
【0053】
図6は本発明の第4の実施形態を示し、この実施形態は第2の実施形態の衝突板12の直上に1枚の衝突板12を配置し、これらで同様な中間室Rmを上下に配置し、この上方に上部室Roを配置している。
この実施形態では、上部室Roの容積を第1の実施形態の約1.3倍に形成し、2つの衝突板12で区画する中間室Rmを、第1の実施形態の中間室Rmの容積の1/2に形成している。
【0054】
上部室Roに導入される圧縮空気量は、第1の実施形態の約1.3倍になり、この圧縮空気が衝突板12に勢い良く衝突して凝縮され、多量の凝縮水が発生するとともに、各中間室Rmに導入される圧縮空気量は、第1の実施形態の中間室Rmの1/2になり、全体的には相当量の凝縮水が除去される。
【0055】
図7は本発明の第の実施形態を示し、この実施形態は第1の実施形態の衝突板12の直上に衝突板12をd/2の間隔で配置し、上部室Roに導入された圧縮空気を最上位置の衝突板12に勢い良く衝突して凝縮させる。
そして、前記圧縮空気を通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張させ、この噴出した圧縮空気を直下の衝突板12に衝突させて凝縮する。この後、噴出した圧縮空気を通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張させ、この噴出した圧縮空気を直下の衝突板12に衝突させて凝縮させる。
【0056】
更に、前記圧縮空気を衝突板12の通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張させ、この噴出した圧縮空気を最下位置の衝突板12に衝突させて凝縮し、その通気孔13から前記圧縮空気を下方へ噴出して断熱膨張させる。
こうして、下部室Ruに噴出した圧縮空気を下端部の湾曲底面に衝突して凝縮し、また通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張し、圧縮空気中の水蒸気を液化して除湿する。
そして、前記乾燥した圧縮空気を空気出口管11の下端の開口部へ押し込み、空気出口管11を上動して上端の開口部から供給管4へ移動し、エアーツール5へ供給する。
【0057】
このように第の実施形態は、第1の実施形態に比べ衝突板12を増加して、複数の衝突板12による圧縮空気の凝縮と、通気孔13から圧縮空気を下方へ噴出する断熱膨張とで、圧縮空気中の水蒸気の液化を増進させ、凝縮筒3に導入された圧縮空気の約52%を最上位置の衝突板12に衝突させて凝縮し、上部室Roより下方の圧縮空気の除湿を旺盛にしている。
【0058】
図8は本発明の第の実施形態を示し、この実施形態は第5の実施形態の最上位置の衝突板12の上方に衝突板12を2dの間隔で配置し、この衝突板12の直上にd/2間隔の一対の衝突板12を上下に配置している。
【0059】
そして、上部室Roに圧縮空気の約34%を導入し、これを上方からd/2間隔の一対の中間室Rmと、2d間隔の中間室Rmと、d/2間隔の一対の中間室Rmを移動させ、各室で圧縮空気を衝突板12に衝突して凝縮させ、また通気孔13から下方へ噴出させて断熱膨張させ、最下位置の下部室Ruで凝縮筒3に導入された圧縮空気の約19%を下端部の湾曲底面に衝突させて凝縮し、また通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張させて、圧縮空気中の水蒸気を液化し除湿している。
【0060】
このように、この実施形態では最初に圧縮空気の約34%を凝縮し、その凝縮水を除去後、各室で凝縮と断熱膨張を繰り返して圧縮空気中の水蒸気を液化し、精密に除湿するようにしている。
【0061】
図9は本発明の第7の実施形態の応用形態を示し、この応用形態は第7の実施形態における下方のd/2間隔の一対の中間室Rmを削除し、上方にd/2間隔の一対の中間室Rmを残置させて、凝縮筒3に導入された圧縮空気の約34%を導入して凝縮させ、前記一対の中間室Rmで圧縮空気を凝縮するとともに、通気孔13から下方へ噴出させて断熱膨張させ、最下位置の下部室Ruを凝縮筒3内の約53%に拡張し、下部室Ruに導入した圧縮空気を下端部の湾曲底面に勢い良く衝突させて凝縮し、この凝縮効果を倍増するとともに、通気孔13から下方へ噴出して断熱膨張させて、圧縮空気中の水蒸気を液化し除湿するようにしている。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の圧縮空気の凝縮装置は、圧縮空気を導入する凝縮筒内を複数の通気板で区画し、その区画スペースの圧縮空気の除湿と凝縮を合理的に実現するとともに、圧縮空気を効率良く除湿し得るようにしたものである。
【符号の説明】
【0063】
1 エアーコンプレッサ-
3 凝縮筒
5 エアーツール
6 冷却筒
11 空気出口管
12 衝突板
13 通気孔
Ro 圧縮空気導入室(上部室)
Rm 圧縮空気導入室(中間室)
Ru 圧縮空気導入室(下部室)
【要約】      (修正有)
【課題】圧縮空気を効率良く除湿し得るようにした圧縮空気の凝縮装置を提供する。
【解決手段】エアーコンプレッサ1から圧縮空気を導入可能な凝縮筒3を設ける。凝縮筒3内に複数の通気孔13を形成した複数の衝突板12を離間して配置し、複数の圧縮空気導入室Ro,Rm,Ruを区画する。上流側の空気導入室Ro,Rm,Ruから圧縮空気を順次導入し衝突板12に衝突して凝縮する。および/または通気孔13から圧縮空気を噴出させて断熱膨張する。除湿した圧縮空気を下流側のエア-ツール5へ供給可能にした圧縮空気の凝縮装置であること。圧縮空気を導入する最上流の圧縮空気導入室Roの容積を、他の圧縮空気導入室Rm,Ruの容積よりも大きく形成したこと。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9