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特許7432203眉墨鉛筆芯材の製造方法、育眉毛眉墨鉛筆材の製造方法および育眉毛眉墨鉛筆芯材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】眉墨鉛筆芯材の製造方法、育眉毛眉墨鉛筆材の製造方法および育眉毛眉墨鉛筆芯材
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20240208BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020027689
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021130640
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】520061608
【氏名又は名称】株式会社G・PLAN
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】二瓶 一裕
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-225111(JP,A)
【文献】実開平06-010333(JP,U)
【文献】特開2003-160444(JP,A)
【文献】Brow Lift,ID 4943007,Mintel GNPD[online],2017年7月,[検索日2023.11.08],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眉墨鉛筆芯材を製造する方法であって、
前記眉墨鉛筆芯材の原料と、ナノバブル水または発泡剤とを混錬する混錬工程と、
前記混錬工程によって得られた混錬材を硬質化させる硬質化工程と、
前記硬質化工程によって前記混錬材が硬質化されてなる硬質化体に、液体の育眉毛剤を担持可能な負圧の微細な空隙を多数形成する負圧空隙形成工程と、
を含むことを特徴とする眉墨鉛筆芯材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の眉墨鉛筆芯材の製造方法によって得られた眉墨鉛筆芯材に、真空加圧含浸法により液体の育眉毛剤を含浸させることによって、前記眉墨鉛筆芯材中の多数の微細な負圧の空隙に、前記育眉毛剤を液体の状態で担持させることを特徴とする育眉毛眉墨鉛筆芯材の製造方法。
【請求項3】
微細な空隙を多数有する眉墨鉛筆芯材と、負圧にされた前記空隙に入り込んで、前記空隙に液体の状態で担持された育眉毛剤とを含み、
前記育眉毛剤は、前記空隙に前記育眉毛剤の表面張力によって前記眉墨鉛筆芯材と混ざることなく液体の状態で担持されていることを特徴とする育眉毛眉墨鉛筆芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質な芯による繊細な描眉を実現しながら、育眉(育毛)成分の皮膚への含浸性を高めることができる眉墨鉛筆芯材の製造方法、育眉毛眉墨鉛筆材の製造方法および育眉毛眉墨鉛筆芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
眉墨鉛筆は、本来、不足する眉毛を視覚的に補う道具であるため、眉毛を自然に見える形で一本一本、描画再現できる硬質な眉墨鉛筆芯を、芯材として使用するのが有効である。
さらに、芯材が硬質タイプの眉墨鉛筆では、筆圧と塗布回数に比例して、顔料等、着色成分の定着量が増加し、描眉の濃度が上がるため、描眉の濃度を描眉時の筆圧と塗布回数で調整できる。
逆に、描眉の塗布効率を上げるために、芯材を軟化させ、なおかつ粘度を上げて眉墨の定着率を高める場合は、低い筆圧や少ない重ね塗りでも、高濃度の塗布が実現してしまい、筆圧による濃度コントロールが難しくなり、概ね、濃厚で一様なクレヨンで書いたような絵画的な疑似眉が出来上がる。
【0003】
そのため、粘度の高い軟質芯材の眉墨によって、均質で平面的に仕上がった疑似眉の場合は、ブラシ等を使って暈し、自然な眉に近づける作業等の、二度手間が発生する。
芯材を使用せずに、育眉毛成分が溶けている液体の方に、描眉用の顔料を溶かし込み、二つの成分を液体として供給する、完全液体方式の育眉毛眉墨も、登場しているが、描画された眉が、フェルトペンや筆ペンで描いたような、平面的で漫画の様な疑似眉に成ってしまうため、軟質芯材の眉墨同様、ブラシ等を使って暈し、自然な眉に近づける二度手間の作業が発生する。
【0004】
また、眉を描きたい領域は、元々、眉が存在して欲しい領域であり、育眉毛剤を塗布したい領域と、完全に一致する為、眉墨鉛筆の同じ位置から、育眉毛成分と描眉成分を同時に繰り出す事で、目視可能な描眉成分による描眉が、目視しづらい育眉毛成分の塗布位置の目標として正確に塗布が誘導され、同時に描眉の濃度が、育眉毛成分の塗布濃度の正確な目安となる。
【0005】
そこで、当初、別々な商品として、個別に製品化されていた、塗布型の育眉毛剤と、描眉目的の眉墨鉛筆の芯材の成分とが、混錬されたハイブリッド型の育眉毛眉墨鉛筆や、両成分が混溶した一体化した液体を塗布する、完全液体方式の育眉毛眉墨が提供されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかし、育眉毛成分と描眉成分とでは、最適使用硬度が異なるため、混錬や混溶することで、どちらの成分の最適使用硬度からも遠ざかる上に、混錬や混溶工程の中で、分子レベルで他の素材と接触する確率が増え、化学反応等による成分変質や成分劣化促進のリスクが高まる。
例えば、高筆圧が必要な細密描写では、最適使用硬度が、筆記具の鉛筆並みの硬度と成るが、混錬によって軟化した芯では、芯そのものが細く研ぎ出せず、強引に研ぎ出しても、容易に折れてしまう。同様に、混溶で液体インク化した眉墨では、圧力による濃度差が表現できない。
さらに、混錬で柔軟化した芯や混溶で液体インク化した眉墨では、描眉濃度と筆圧及び塗布回数が比例しない為、筆圧と塗布回数に比例する育眉毛成分の塗布量の、目視による把握も困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2003-160444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の育眉毛眉墨鉛筆において、育眉毛剤と描眉材とが、それぞれの最適硬度で、同時に同じ位置から提供された場合、育眉毛剤の塗布希望位置と、描眉材の塗布希望位置は完全に一致し、育眉毛剤の塗布量の状態と、描眉材の塗布量の状態も完全に重なるため、使用者は、二つの成分の最適な位置と最適な量を、目視しながら、二つの成分を筆圧で、同時にコントロールしつつ、一回の描眉行為で、二つの目的を同時に達成できる。
【0009】
しかし、従来の育眉毛眉墨鉛筆では、混錬という形で、最適使用硬度も目的も違う成分を纏めて一つの芯材を形成しているので、混錬法による育眉毛剤の有効成分の熱変性等の虞があるとともに、互いの最適条件が失われ、異なる目的の成分が、同時に同じ位置から提供されるメリットが著しく損なわれる。
さらに、目的が違う成分の混錬工程によって、目的が違う成分の変質と劣化促進のリスクが著しく高まる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、育眉毛剤の有効成分の化学変性と熱変性等を防止しながら、目的の異なる、固体である描眉材と液体である育眉毛剤とを、それぞれの最適使用硬度と最適使用状態で、同時に機能させることがきる眉墨鉛筆芯材の製造方法、育眉毛眉墨鉛筆材の製造方法および育眉毛眉墨鉛筆芯材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明に係る眉墨鉛筆芯材の製造方法は、
前記眉墨鉛筆芯材の原料と、ナノバブル水または発泡剤とを混錬する混錬工程と、
前記混錬工程によって得られた混錬材を硬質化させる硬質化工程と、
前記硬質化工程によって前記混錬材が硬質化されてなる硬質化体に、微細でかつ液体の育眉毛剤を担持可能な負圧の空隙を多数形成する負圧空隙形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
ここで、前記眉墨鉛筆芯材の原料(描眉材)は、例えば、油脂、蝋類、着色材、体質材、水溶性結合材およびエマルジョンワックス等によって構成されるが、これに限るものではない。また、原料(描眉材)に可塑剤を混合してもよい。
前記発泡剤としては、分解残渣が無毒の重曹系や、重曹とクエン酸塩系の発泡剤が挙げられるが、これに限るものではない。また、このような発泡剤を可塑剤に混合したものを眉墨鉛筆芯材の原料と混錬してもよい。
また、硬質化工程によって混錬材を硬質化させるには、例えば、当該混錬材を乾燥凝結させたり、乾燥焼結させたりする方法があるが、これに限るものでない。
さらに、負圧空隙形成工程によって混錬材中に微細な負圧の空隙を多数形成するには、例えば、混錬材を密閉容器に封入したうえで、当該密閉容器を真空引きして、空隙中の空気を吸引除去する方法があるが、これに限るものではない。
【0013】
本発明においては、混錬工程によって、眉墨鉛筆芯材の原料と、ナノバブル水または発泡剤とを混錬し、硬質化工程によって混錬材を硬質化させて硬質化体を得た後、負圧空隙形成工程によって、硬質化体に、微細でかつ液体の育眉毛剤を担持可能な負圧の空隙を多数形成するので、製造された眉墨鉛筆芯材は、ポロシティが増加した上で、液体である育眉毛剤の担体となる硬質かつ多孔質な芯材となる。
したがって、この眉墨鉛筆芯材の空隙に育眉毛剤を液体の状態で担持させることによって、育眉毛剤の有効成分の化学変性と熱変性等を防止しながら、目的の異なる、固体である描眉材と液体である育眉毛剤とを、それぞれの最適使用硬度と最適使用状態で、同時に機能させることがきる。
【0014】
また、本発明に係る育眉毛眉墨鉛筆芯材の製造方法は、上述した眉墨鉛筆芯材の製造方法によって得られた眉墨鉛筆芯材に、真空加圧含浸法により液体の育眉毛剤を含浸させることによって、前記眉墨鉛筆芯材中の多数の微細な空隙に、前記育眉毛剤を液体の状態で担持させることを特徴とする。
【0015】
ここで、育眉毛剤としては、例えば、リデンシル(ピロ亜硫酸ナトリウム、塩化亜鉛、濃グリセリン、チャエキス、マツエキス、グリシン等を成分としている。)、眉毛毛母細胞の新生を促す化学成分や、熱で変性しやすいを生薬の成分が挙げられるが、これに限るものではない。例えば、米国の製薬会社アラガン社が開発製造した緑内障の治療薬で、緑内障に効果があると米国食品医薬品局(以下FDA)から認定された医薬品のルミガンであってもよい。ルミガンの育眉毛有効成分は、ビマトプロストである。
緑内障の薬であったルミガンにはまつげに影響を及ぼす副作用があり、その副作用が目元の美容にはとても理想的な結果を生んだ実績がある。
したがって、育眉毛剤としては、リンデンシルやビマトプロストを使用してもよい。
【0016】
本発明においては、眉墨鉛筆芯材の製造方法によって得られた眉墨鉛筆芯材に、真空加圧含浸法により液体の育眉毛剤を含浸させることによって、眉墨鉛筆芯材中の多数の微細な空隙に、前記育眉毛剤を液体の状態で担持させるので、育眉毛剤の有効成分の化学変性と熱変性等を防止しながら、目的の異なる、固体である描眉材と液体である育眉毛剤とを、それぞれの最適使用硬度と最適使用状態で、同時に機能させることがきる。
【0017】
本発明に係る育眉毛眉墨鉛筆芯材は、微細な空隙を多数有する眉墨鉛筆芯材と、前記空隙に、液体の状態で担持された育眉毛剤とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明においては、眉墨鉛筆芯材と、この眉墨鉛筆芯材が多数有する微細な空隙に液体の状態で担持された育眉毛剤とを含むので、育眉毛剤の有効成分の化学変性と熱変性等を防止しながら、目的の異なる、固体である描眉材と液体である育眉毛剤とを、それぞれの最適使用硬度と最適使用状態で、同時に機能させることがきる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、育眉毛剤の有効成分の化学変性と熱変性等を防止しながら、目的の異なる、固体である描眉材と液体である育眉毛剤とを、それぞれの最適使用硬度と最適使用状態で、同時に機能させることがきる
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る眉墨鉛筆芯材の製造方法を説明するためのもので、眉墨鉛筆芯材を製造する際に使用される押出装置の概略構成を示す断面図である。
図2】同、硬質化工程を説明するための図である。
図3】同、眉墨鉛筆芯材の空隙に育眉毛剤を担持させるための真空加圧含浸装置の概略構成を示す断面図である。
図4】同、眉墨鉛筆芯材の空隙から空気を除去している状態を示す真空加圧含浸装置の概略構成を示す断面図である。
図5】本発明の実施形態に係る育眉毛眉墨鉛筆芯材の製造方法を説明するためのもので、眉墨鉛筆芯材の真空になった空隙に負圧で育眉毛剤を吸引して含浸させている状態を示す真空加圧含浸装置の概略構成を示す断面図である。
図6】同、眉墨鉛筆芯材の空隙に加圧によりさらに育眉毛剤を含浸させている状態を示す真空加圧含浸装置の概略構成を示す断面図である。
図7】同、容器から余剰の育眉毛剤を除去した状態を示す真空加圧含浸装置の概略構成を示す断面図である。
図8】本発明の実施形態に係る育眉毛眉墨鉛筆の製造方法を説明するためのもので、分解斜視図である。
図9】同、軸板を貼り付けた状態を示す斜視図である。
図10】同、貼り付けた軸板に溝を形成した状態を示す斜視図である。
図11】同、育眉毛眉墨鉛筆を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る眉墨鉛筆芯材を製造する際に使用される押出装置10の概略構成を示す断面図である。
図1において、押出装置10は、先端部(図1において左端部)にダイス11aを有するシリンダ11と、シリンダ11の内部に軸回りに回転自在に配置されたスクリュー12と、スクリュー12を軸回りに回転させるモータ13と、第1ホッパー14と、第2ホッパー15と、第3ホッパー16とを備えている。
【0022】
第1ホッパー14は、眉墨鉛筆芯材の主原料となる描眉材が投入されるもので、その排出管14aは第3ホッパー16の上部開口に接続されている。また、排出管14aの途中にはコック14bが設けられ、このコック14bによって排出管14aの流路が開閉されるようになっている。
第2ホッパー15は、発泡剤を混合した可塑剤(発泡剤入り可塑剤)が投入されるもので、その排出管15aは第3ホッパー16の上部開口に接続されている。また、排出管15aの途中にはコック15bが設けられ、このコック15bによって排出管15aの流路が開閉されるようになっている。
第3ホッパー16は、描眉材と発泡剤入り可塑剤とを混錬するもので、混錬翼16bが図示しないモータ等によって回転可能となっている。また、第3ホッパー16の排出管16aはシリンダ11の基端部に接続されている。
【0023】
このような押出装置10では、まず、第1ホッパー14に眉墨鉛筆芯材の主原料である描眉材を投入する。この描眉材は固体(粉体)となっている。この描眉材として、例えば、油脂、蝋類、着色材、体質材、水溶性結合材およびエマルジョンワックス等を第1ホッパー14に投入する。なお、最初に第1ホッパー14に描眉材を投入する際はコック14bを閉状態としておいてもよい。
一方、第2ホッパー15に発泡剤入り可塑剤を投入する。この発泡剤入り可塑剤は液体となっており、例えば、分解残渣が無毒の重曹系や、重曹とクエン酸塩系の発泡剤を使用し、この発泡剤と可塑剤とを混合したもの(発泡剤入り可塑剤)を第2ホッパー15に投入する。なお、最初に第2ホッパー15に発泡剤入り可塑剤を投入する際はコック15bを閉状態としておいてもよい。可塑剤は、化粧品の押出成形に通常使用されるカオリンなど無毒成分の水溶液を使用してもよいし、油性やアルコール系の可塑剤や樹脂系製品の可塑剤を使用してもよい。
また、可塑剤としてナノバブル水を使用し、このナノバブル水を第2ホッパー15に投入してもよい。また、ナノバブル水に可塑剤を混合したものを第2ホッパー15に投入してもよい。また、可塑剤は第1ホッパー14に投入してもよい。
【0024】
次に、コック14b,15bを開けて、第3ホッパー16に、第1ホッパー14から描眉材を排出管14aを通して投入するとともに、第2ホッパー15から発泡剤入り可塑剤を排出管15aを通して投入する。
第3ホッパー16に所定量の描眉材と発泡剤入り可塑剤とを投入したら、または投入しつつ、混錬用の混錬翼16bを回転させて描眉材と発泡剤入り可塑剤を混錬する(混錬工程)。なお、第3ホッパー16の排出管16aに、図示しないコックを設けるとともに、このコックを閉状態としておき、最初に第3ホッパー16が所定量の描眉材と発泡剤入り可塑剤によって満たされた後、混錬翼16bを回転させて描眉材と発泡剤入り可塑剤が混錬されたら、コックを開いて、当該混錬材をシリンダ11の内部に供給するようにしてもよい。その後は、コックを開いた状態のままとして、混錬材を連続的にシリンダ11の内部に供給してもよい。
【0025】
シリンダ11の内部にその基端部から供給された混錬材はスクリュー12によってさらに混錬されつつ(混錬工程)、シリンダ11の先端部側に搬送され、当該先端部に設けられたダイス11aを通ることによって、円柱状に成形された成形体S1となる。この成形体S1は、成形直後は柔軟性を有しており、多数の空隙kを有している。
【0026】
なお、本実施形態では、混錬材を押出装置10によって押し出して成形体S1を形成したが、これに限ることはない。例えば、混錬材を成形型に充填または射出することによって、円柱状の成形体を形成してもよい。
【0027】
次に、図2に示すように、前記成形体S1を硬質化させる(硬質化工程)。この硬質化工程では、例えば、成形体S1を乾燥室Rに所定時間保持することによって、乾燥凝結により硬質化させてもよいし、電気炉Dで加熱することによって、乾燥焼結により硬質化させてもよい。これによって、柔軟性を有している成形体S1が硬質化し、硬質化体S2となる。この硬質化体S2は多数の空隙kを有しており、当該空隙kは安定したものとなる。
しかし、この空隙kには空気が入っているので、当該空隙kに液体の育眉毛剤を担持させることはそのままでは容易ではない。
【0028】
このため、前記硬質化工程によって硬質化された硬質化体S2に、以下の負圧空隙形成工程によって、微細でかつ液体の育眉毛剤を担持可能な負圧の空隙kを多数形成する。
すなわちまず、図3に示すように、硬質化体S2を真空加圧含浸装置20にセットする。
真空加圧含浸装置20は、密閉可能な容器21と、この容器21の内部に設けられたテーブル22と、容器21に接続された気圧計23および真空ポンプ24と、タンク25とを備えている。
【0029】
テーブル22は、硬質化体S2が横向きで略水平状態に載置される底板22aと、この底板22aの周縁部に立設された複数の側板22bとを備えた箱状に形成され、上部が開口している。
気圧計23は容器21内の気圧を測定するもので、本実施形態では、針23aが真上を向いている状態が大気圧、この状態から針23aが左側に向いた状態が負圧状態、右側に向いた状態が加圧状態を示す。
真空ポンプ24は、容器21内を真空引きできるものであり、配管24aによって容器21内に接続されている。また、配管24aの途中にはコック24bが設けられ、このコック24bによって配管24aの流路が開閉されるようになっている。
タンク25は内部に液体の育眉毛剤が貯留されるものであり、配管25aによって容器21内のテーブル22に接続されている。つまり、配管25aの一端部はタンク25の底部に接続され、他端部は容器21の底壁およびテーブル22の底板22aを貫通して、底板22aの上面に開口している。また、配管25aの途中にはコック25bが設けられ、このコック25bによって配管25aの流路が開閉されるようになっている。
【0030】
そして、硬質化体S2を容器21内のテーブル22にセットする。すなわち、硬質化体S2をテーブル22の底板22aにほぼ水平に載置する。なお、本実施形態では2本の硬質化体S2,S2を積み重ねて底板22aに載置しているが、1本の硬質化体S2を底板22aに載置してもよく、さらには、底板22aの面積が大きい場合、底板に複数の硬質化体S2を並べて載置してもよい。
また、図示は省略するが、容器21は硬質化体S2を搬入・搬出可能とするような開閉蓋を備えており、この開閉蓋を開けることによって、硬質化体S2を容器21に搬入してテーブル22にセットし、その後、開閉蓋を閉じることによって、容器21内を密閉する。
硬質化体S2をテーブル22にセットした状態において、容器21内は大気圧となっており、真空ポンプ24は未作動、コック25bは閉状態となっている。
【0031】
次に、図4に示すように、コック24bを開けたうえで真空ポンプ24を作動させることによって、容器21内を減圧して負圧とする。これによって、硬質化体S2中の多数の空隙k内の空気が吸引されることで、当該空隙kから空気が除去される。これによって、当該空隙kが真空状態となり、液体の育眉毛剤を担持可能な多数の負圧の空隙kを有する眉墨鉛筆芯材S3が得られる。
【0032】
次に、図5に示すように、真空ポンプ24のコック24bを閉じて容器21内を負圧に保持した状態で、タンク25のコック25bを開く。すると、タンク25の育眉毛剤が配管25aを通って容器21内に吸引され、当該育眉毛剤はテーブル22の底板22aと側板22bとで囲まれた空間に流入して、眉墨鉛筆芯材S3が育眉毛剤に浸される。眉墨鉛筆芯材S3内の多数の空隙kは空気が吸引除去されて負圧となっているので、当該負圧の空隙kに育眉毛剤Lが吸引されて入り込み、当該空隙kに担持される。
【0033】
次に、図6に示すように、真空ポンプ24のコック24bを開けたうえで、真空ポンプ24を逆向きに作動させて、容器21内を加圧する。また、当該加圧の前にタンク25のコック25bを閉じる。すると、容器21内が加圧されるので、当該加圧によって空隙kへの育眉毛剤Lの含浸量(担持量)を増量させる。このようにして、多数の空隙kに育眉毛剤Lが液体の状態で担持された育眉毛眉墨鉛筆芯材S4を製造する。製造された育眉毛眉墨鉛筆芯材S4は、多数の微細な空隙kに、育眉毛剤Lを表面張力によって眉墨鉛筆芯材S3と混ざることなく液体の状態で担持させたものとなる。
【0034】
次に、図7に示すように、タンク25のコック25bを開けるとともに、真空ポンプ24を停止させたうえで、真空ポンプ24のコック24bを開けることによって、容器21内を大気圧とする。すると、テーブル22の底板22aと側板22bとで囲まれた空間から余剰の育眉毛剤が配管25aを通ってタンク25に回収される。なお、タンク25を容器21より低い位置に配置しておけば、育眉毛剤は重力によってタンク25に流入する。
最後に、このようにして製造された育眉毛眉墨鉛筆芯材S4を容器21から取り出して、育眉毛眉墨鉛筆芯材S4の製造を終了する。この育眉毛眉墨鉛筆芯材S4の表面には、描眉材Bが露出するとともに、前記空隙kに担持された育眉毛剤Lが均一に露出している。
【0035】
このようにして製造された育眉毛眉墨鉛筆芯材S4によって、以下のようにして育眉毛眉墨鉛筆を製造する。
すなわち、図8に示すように、育眉毛眉墨鉛筆芯材S4を複数本、平行に配置したうえで、これら複数の育眉毛眉墨鉛筆芯材S4を鉛筆の軸板30,30によって上下から挟み込む。軸板30は鉛筆の軸となる部分を形成する矩形板状のもので、木材や樹脂によって形成されている。
軸板30の、育眉毛眉墨鉛筆芯材S4を挟み込む対向する面には、育眉毛眉墨鉛筆芯材S4の軸方向に沿って延びる断面半円形状の溝31が複数平行に形成されている。この溝31は、育眉毛眉墨鉛筆芯材S4の断面の半分程度の大きさの断面を有している。
【0036】
そして、溝31の表面を含む軸板30の対向する面(溝31が形成された面)に、育眉毛剤(液体)Lの軸板30側への浸透を防ぎながら軸板30,30を接着する、樹脂系のシールド剤兼接着剤32を塗布したうえで、一方(下方)の軸板30の溝31に育眉毛眉墨鉛筆芯材S4の半分をはめ込み、次に、当該育眉毛眉墨鉛筆芯材S4を挟み込むようにして他方(上方)の軸板30を配置したうえで、当該軸板30の溝31に育眉毛眉墨鉛筆芯材S4の残り半分をはめ込んで、図9に示すように、両軸板30,30を貼り合わせることによって育眉毛眉墨鉛筆芯材S4を挟み込んで固定する。
【0037】
次に、図10に示すように、貼り合わされた軸板30,30の表面に断面V字状の溝34,34を形成して裁断することによって、軸板30,30から鉛筆形の六角形状の育眉毛眉墨鉛筆35を複数製造する。
このようにして製造された育眉毛眉墨鉛筆35は、図11に示すように、前記軸板30,30によって形成された断面六角形状の軸部35aと、この軸部35aの内部に設けられた眉毛眉墨鉛筆芯材S4と備えたものとなる。そして、このような育眉毛眉墨鉛筆35の先端部を鉛筆同様、円錐状に削り出して、使用に供される。先端部が削り出された育眉毛眉墨鉛筆35は、育眉毛眉墨鉛筆芯材S4の表面に描眉剤Bと多数の空隙kに担持された育眉毛剤Lが露出するので、眉を描きつつ眉毛を育毛できる。
また、育眉毛眉墨鉛筆35は、液体成分(育眉毛剤L)の乾燥を防ぐために、円錐状の先端部に、図示しないキャップが着脱可能に装着され、後端部(後端面)は樹脂系塗料でシールドされる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態によれば、混錬工程によって、眉墨鉛筆芯材の原料と、ナノバブル水または発泡剤とを混錬し、この混錬材を円柱状に成形してなる成形体S1を硬質化工程によって硬質化させて硬質化体S2を得た後、負圧空隙形成工程によって、硬質化体S2中に、微細でかつ液体の育眉毛剤Lを担持可能な負圧の空隙kを多数形成するので、製造された眉墨鉛筆芯材S3は、ポロシティが増加した上で、液体である育眉毛剤Lの担体となる硬質かつ多孔質な芯材となる。
したがって、この眉墨鉛筆芯材S3の空隙kに育眉毛剤Lを担持させることによって、育眉毛剤の有効成分の化学変性と熱変性等を防止しながら、目的の異なる、固体である描眉材Bと液体である育眉毛剤Lとを、それぞれの最適使用硬度と最適使用状態で、同時に機能させることがきる。
【0039】
また、眉墨鉛筆芯材S3に、真空加圧含浸法により液体の育眉毛剤Lを含浸させることによって、眉墨鉛筆芯材S3中の多数の微細な空隙kに前記育眉毛剤Lを液体の状態で担持させるので、育眉毛剤Lの有効成分の化学変性と熱変性等を防止しながら、目的の異なる、固体である描眉材Bと液体である育眉毛剤Lとを、それぞれの最適使用硬度と最適使用状態で、同時に機能させることがきる。
【符号の説明】
【0040】
S1 成形体
S2 硬質化体
S3 眉墨鉛筆芯材
S4 育眉毛眉墨鉛筆芯材
k 空隙
10 押出装置
20 真空加圧含浸装置
35 育眉毛眉墨鉛筆
図1
図2
図3
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図5
図6
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図8
図9
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図11