(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システム
(51)【国際特許分類】
B65G 47/14 20060101AFI20240208BHJP
B25J 13/08 20060101ALN20240208BHJP
【FI】
B65G47/14 101Z
B25J13/08 A
(21)【出願番号】P 2021065233
(22)【出願日】2021-04-07
【審査請求日】2023-01-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 国際物流総合展2021、令和3年3月9日~令和3年3月12日(資料1,2参照) 国際物流総合展2021 バーチャル物流展、令和3年3月9日~令和3年5月31日(資料3,4参照)
(73)【特許権者】
【識別番号】392017705
【氏名又は名称】アラインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】隅田 章
(72)【発明者】
【氏名】田中 克弘
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008343(JP,A)
【文献】特開2002-255343(JP,A)
【文献】特開2018-202599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 47/00 - 47/96
B65G 27/00 - 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された複数のワークを支持するプレートと、このプレートの下面を支える支持脚と、この支持脚の下方の設置面に固定配置され、上方に向けた駆動シャフトを介して前記支持脚及び前記プレートに上下振動をそれぞれ独立して印加する複数基のアクチュエータと、この複数基のアクチュエータを制御する制御装置と、を有し、複数基の前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間にそれぞれフローティングジョイントを備え、前記制御装置は、複数基の前記アクチュエータのうち少なくとも1基の前記アクチュエータを停止させ、少なくとも1基の残りの前記アクチュエータに前記上下振動を印加して、前記上下振動に伴う前記プレートの傾動の中心が、停止させた前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントのジョイント部に存在するように制御することを特徴とするワーク姿勢制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、少なくとも1基の残りの前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントのジョイント部の上下振動中心が、停止させた前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントの前記ジョイント部よりも上側に存在するように前記上下振動を制御することを特徴とする請求項1記載のワーク姿勢制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、少なくとも1基の残りの前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントのジョイント部の上下振動中心が、停止させた前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントの前記ジョイント部よりも下側に存在するように前記上下振動を制御することを特徴とする請求項1記載のワーク姿勢制御装置。
【請求項4】
供給された複数のワークを支持するプレートと、このプレートの下面を支える支持脚と、前記プレートの下方の設置面に固定配置され、下方に向けた駆動シャフトを介して前記支持脚及び前記プレートに上下振動をそれぞれ独立して印加する複数基のアクチュエータと、この複数基のアクチュエータを制御する制御装置と、を有し、複数基の前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間にそれぞれフローティングジョイントを備え、前記制御装置は、複数基の前記アクチュエータのうち少なくとも1基の前記アクチュエータを停止させ、少なくとも1基の残りの前記アクチュエータに前記上下振動を印加して、前記上下振動に伴う前記プレートの傾動の中心が、停止させた前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントのジョイント部に存在するように制御することを特徴とするワーク姿勢制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のワーク姿勢制御装置の上流に前記ワークを前記プレートの上面に搬送するために設けられる搬送装置と、前記プレート上の前記ワークをピッキングするロボットと、前記ロボットがピッキングした前記ワークを受け取る受取装置と、を有することを特徴とするワーク供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送路によって運搬されたワーク(部品)が密集したり、表裏の反転や重なり合う現象を解消してロボットによるピッキングを高精度に短時間で効率的に実行するために用いられるワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクス分野における半導体チップの生産ラインや各種産業における生産ラインにおいて、ワークを供給するためのワーク供給装置や部品供給のためのパーツフィーダが設置され、ワークや部品の接触や重なり、表裏反転を防止するための装置の発明も数多くなされてきた。
例えば、特許文献1には「バネほぐし機」という名称で、組込作業工程において絡まったバネを自動でほぐす機械が開示されている。
このバネほぐし機においては、容器の下方に打撃を加えるためのハンマーを設けて容器の底から打撃を加え、その衝撃でバネを飛び跳ねさせて絡まったバネをほぐすことが可能である。
また、カメラを用いてワークの状態を画像処理し、その結果を用いてワークの表裏反転や重なりを無くしたり向きを調整する制御を行うことも一般的となっている。それによって、ワークの確実なピッキング(取り出し)を可能とし、さらにはピッキングに要する時間を短縮することが可能となり、ピッキングの精度や効率を高めてきた。
例えば、特許文献2に開示されるのは「部品ピックアップ方法及び部品供給装置」という名称で、可動トレイ上に置かれた複数の部品を撮影し、その画像を用いて部品の一つをロボットハンドでピックアップする部品供給装置が開示されている。また、この発明では部品の重なりが発見されるとアクチュエータを駆動させて可動トレイを傾斜させることで重なりを解消することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-160513号公報
【文献】特開2018-8343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示される発明では、ハンマーの打撃によって振動を与える技術であることからバネを収納しておく容器は予め傾斜させておく必要がある。本発明ではバネをほぐすことを目的としていることから、バネの移動方向に対する要求はなく、いずれの方向でもよいことから傾斜させた容器は固定されており、振動によって移動させるワークに対しては方向を自由に変更できないという課題があった。また、移動を目的としていないことから単に振動させることができればよく、その振動当たりに移動させることが可能な距離は打撃力の大小によるものであり、打撃力が小さい場合には移動距離を大きくすることができないという課題があった。
また、特許文献2に開示される発明では、ワークが載っている可動トレイをアクチュエータによって傾斜させるのみでワークを移動させることから、移動量が少なく部品によっては表裏の反転や重なりを解消させることが難しい場合が生じる可能性があるという課題があった。また、傾斜させたり傾斜を戻したりする動作に時間がかかり迅速で効率的なワーク姿勢の矯正が困難であるという課題があった。
【0005】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、搬送路によって運搬されたワーク(部品)が密集して、接触したり、表裏の反転や重なり合ったりする現象を解消することでロボットによるピッキングを高効率に実行するために、ワークが支持されるプレートを複数のアクチュエータで上下振動をそれぞれ独立に印加する際に、フローティングジョイントを備えることで、そのフローティングジョイントを上下振動に伴う傾動中心としてプレートを傾動させるように制御することで、ワークに対してワークの移動方向成分を備えた力を加えることが可能なワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明であるワーク姿勢制御装置は、供給された複数のワークを支持するプレートと、このプレートの下面を支える支持脚と、この支持脚の下方の設置面に固定配置され、上方に向けた駆動シャフトを介して前記支持脚及び前記プレートに上下振動をそれぞれ独立して印加する複数基のアクチュエータと、この複数基のアクチュエータを制御する制御装置と、を有し、複数基の前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間にそれぞれフローティングジョイントを備え、前記制御装置は、複数基の前記アクチュエータのうち少なくとも1基の前記アクチュエータを停止させ、少なくとも1基の残りの前記アクチュエータに前記上下振動を印加して、前記上下振動に伴う前記プレートの傾動の中心が、停止させた前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントのジョイント部に存在するように制御することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御装置では、駆動しているアクチュエータが印加する上下振動によって、停止しているアクチュエータの駆動シャフトと支持脚の間のフローティングジョイントのジョイント部を中心としてプレートが傾動するように作用する。
また、このプレートの傾動が上方への傾動の場合には、プレートの上面に載置されるワークに対してプレート面に垂直上向き方向の力が作用することで、傾いたプレート面に対する水平方向分力が作用し、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ、プレート上面でのワークの水平方向移動に付勢するという作用を有する。
一方、プレートの傾動が下方への傾動の場合には、プレート上面のワークには直接力は作用しないものの、プレートが下方へ傾動することで自由落下するワークに対して見かけ上プレート面に対する水平方向分力が作用し、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ、プレート上面でのワークの水平方向移動に付勢するという作用を有する。
したがって、駆動しているアクチュエータによる上下振動によって、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ連続してプレート上面に水平方向分力あるいは見かけ上の水平方向分力が作用し、連続的にワークを移動及び分散させるように作用する。
【0007】
また、第2の発明であるワーク姿勢制御装置は、第1の発明において、前記制御装置は、少なくとも1基の残りの前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントのジョイント部の上下振動中心が、停止させた前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントの前記ジョイント部よりも上側に存在するように前記上下振動を制御することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御装置では、第1の発明の作用に加え、駆動している少なくとも1基の残りのアクチュエータの駆動シャフトと支持脚の間のフローティングジョイントのジョイント部の上下振動中心が、停止させたアクチュエータの駆動シャフトと支持脚の間のフローティングジョイントのジョイント部よりも上側に存在することで、上下振動によってプレートの上方への傾動の影響の方が下方への傾動の影響よりも大きくなり、プレートの上面に載置されるワークに対してプレート面に垂直上向き方向の力が優勢に作用することで、傾いたプレート面に対する水平方向分力が優勢に作用し、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ、プレート上面でのワークの水平方向移動に付勢するという作用を有する。
【0008】
第3の発明であるワーク姿勢制御装置は、第1の発明において、少なくとも1基の残りの前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントのジョイント部の上下振動中心が、停止させた前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントの前記ジョイント部よりも下側に存在するように前記上下振動を制御することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御装置では、第1の発明の作用に加え、駆動している少なくとも1基の残りのアクチュエータの駆動シャフトと支持脚の間のフローティングジョイントのジョイント部の上下振動中心が、停止させたアクチュエータの駆動シャフトと支持脚の間のフローティングジョイントのジョイント部よりも下側に存在することで、上下振動によってプレートの下方への傾動の影響の方が上方への傾動の影響よりも大きくなり、自由落下するワークに対して見かけ上プレート面に対する水平方向分力が優勢に作用し、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ、プレート上面でのワークの水平方向移動に付勢するという作用を有する。
【0009】
第4の発明であるワーク姿勢制御装置では、供給された複数のワークを支持するプレートと、このプレートの下面を支える支持脚と、前記プレートの下方の設置面に固定配置され、下方に向けた駆動シャフトを介して前記支持脚及び前記プレートに上下振動をそれぞれ独立して印加する複数基のアクチュエータと、この複数基のアクチュエータを制御する制御装置と、を有し、複数基の前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間にそれぞれフローティングジョイントを備え、前記制御装置は、複数基の前記アクチュエータのうち少なくとも1基の前記アクチュエータを停止させ、少なくとも1基の残りの前記アクチュエータに前記上下振動を印加して、前記上下振動に伴う前記プレートの傾動の中心が、停止させた前記アクチュエータの前記駆動シャフトと前記支持脚の間の前記フローティングジョイントのジョイント部に存在するように制御することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御装置においても第1の発明と同様に、駆動しているアクチュエータが印加する上下振動によって停止しているアクチュエータの駆動シャフトと支持脚の間のフローティングジョイントのジョイント部を中心としてプレートが傾動するように作用する。
また、このプレートの傾動として上方への傾動の場合には、プレートの上面に載置されるワークに対してプレート面に垂直上向き方向の力が作用することで、傾いたプレート面に対する水平方向分力が作用し、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ、プレート上面でのワークの水平方向移動に付勢するという作用を有する。
一方、プレートの傾動として下方への傾動の場合には、プレート上面のワークには直接力は作用しないものの、プレートが下方へ傾動することで自由落下するワークに対して見かけ上プレート面に対する水平方向分力が作用し、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ、プレート上面でのワークの水平方向移動に付勢するという作用を有する。
したがって、第1の発明と同様に、駆動しているアクチュエータによる上下振動によって、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ連続してプレート上面に水平方向分力又は見かけ上の水平方向分力が作用し、連続的にワークを移動及び分散させるように作用する。
【0010】
第5の発明であるワーク供給システムは、第1乃至第4のいずれか1つの発明であるワーク姿勢制御装置の上流に前記ワークを前記プレートの上面に搬送するために設けられる搬送装置と、前記プレート上の前記ワークをピッキングするロボットと、前記ロボットがピッキングした前記ワークを受け取る受取装置と、を有することを特徴とするものである。
上記構成のワーク供給システムでは、第1乃至第4のワーク姿勢制御装置を備えてそれぞれの作用を発揮し、さらに、搬送装置がワークをワーク姿勢制御装置に供給し、ロボットがワーク姿勢制御装置のプレート上で効率的にワークをピッキングし、受取装置はピッキングされたワークを受け取るように作用する。
なお、本願における「ピッキング」とは、ロボットのハンド(エンドエフェクタ)等によるワークの把持、吸着の動作と受取装置までの移動の動作を意味する。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明に係るワーク姿勢制御装置では、駆動しているアクチュエータが印加する上下振動によって、停止しているアクチュエータの駆動シャフトと支持脚の間のフローティングジョイントのジョイント部を中心としてプレートが傾動することで、上方及び下方への傾動のいずれでも傾いたプレート面上で駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ連続的にワークにプレート面に対して水平方向に付勢することが可能であり、効率的にワークを移動させることができる。
フローティングジョイントを用いることで、アクチュエータを停止させた場合に、少なくとも1基の残りの駆動しているアクチュエータの上下振動によって傾動するプレートに伴って停止させているアクチュエータに係る支持脚が傾動しても、そのフローティングジョイントのジョイント部が支持脚の傾動を吸収することができる。したがって、そのジョイント部が傾動するプレートの傾動中心として機能することが可能であり、その結果もあってプレート面が傾動できる。
【0012】
第2の発明に係るワーク姿勢制御装置では、第1の発明の効果に加え、プレートの上面に載置されるワークに対してプレート面に垂直上向き方向の力が優勢に作用することで、傾いたプレート面に対する水平方向分力が優勢に作用し、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ、プレート上面でのワークの水平方向移動に付勢することが可能である。
【0013】
第3の発明に係るワーク姿勢制御装置では、第1の発明の効果に加え、自由落下するワークに対して見かけ上プレート面に対する水平方向分力が優勢に作用し、駆動しているアクチュエータ側から停止しているアクチュエータ側へ、プレート上面でのワークの水平方向移動に付勢することが可能である。
【0014】
第4の発明に係るワーク姿勢制御装置では、第1の発明の効果と同様である。
【0015】
第5の発明に係るワーク供給システムでは、密集するワークを効率的に分散又は反転させることができるワーク姿勢制御装置を採用することから、このワーク姿勢制御装置にワークを搬出し、ロボットによってワークをピッキングし、受取システムによってワークを受け取る一連の作業の効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1のワーク姿勢制御装置の概念図である。
【
図2】本発明の実施例2のワーク供給システムの概念図である。
【
図3】実施例1のワーク姿勢制御装置と実施例2のワーク供給システムのシステム構成図である。
【
図4】実施例1のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータの上下振動の上振れが支持脚の短いプレートに印加された場合にワークへ作用する力を説明するための概念図である。
【
図5】実施例1のワーク姿勢制御装置のフローティングジョイントのジョイント部における作用を説明するための概念図である。
【
図6】実施例1のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータの上下振動の上振れが支持脚の長いプレートに印加された場合にワークへ作用する力を説明するための概念図である。
【
図7】実施例1のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータの上下振動の下振れが支持脚の長いプレートに印加された場合にワークへ作用する力を説明するための概念図である。
【
図8】(a)-(c)は実施例1のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータによって印加される上下振動によるその振動アクチュエータが配置されている側のフローティングジョイントのジョイント部の高さの変化と上下振動することなくプレートに固定されている振動アクチュエータ側のフローティングジョイントのジョイント部の高さの関係を示す概念図である。
【
図9】(a)-(f)はいずれも実施例1のワーク姿勢制御装置のプレート上方からワークの分布を示しているが、(a)は振動アクチュエータ4a,4dを駆動させる前のワーク分布を示し、(b)は駆動後にプレートの中央へ移動・分散させたワーク分布を示している。(c)は振動アクチュエータ4c,4dを駆動させる前のワーク分布を示し、(d)は駆動後にプレートの中央へ移動・分散させたワーク分布を示している。(e)は振動アクチュエータ4dを駆動させる前のワーク分布を示し、(f)は駆動後にプレートの中央へ移動・分散させたワーク分布を示している。
【
図10】実施例3のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータの上下振動の上振れがL字形の支持脚を介してプレートに印加された場合にワークへ作用する力を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施例1及び実施例2)
以下に、本発明の実施例1のワーク姿勢制御装置及び実施例2のワーク供給システムについて
図1-
図9を参照しながら説明する。
本願発明の実施例では、画像解析部、アクチュエータ制御部あるいはピッキングロボット制御部等、「部」という語を含んだ構成要素を採用しているが、この「部」とは、手段あるいは機能を意味し、具体的な構成要素としては、特定の動作を実行するための「素子」や「電子回路」、あるいは「構成物のユニット」又は「それらが集合した装置」であり、これらを概念化して「部」として示すものである。
図1は実施例1のワーク姿勢制御装置の概念図であり、
図2は実施例2のワーク供給システムの概念図である。
図3は実施例1のワーク姿勢制御装置と実施例2のワーク供給システムのシステム構成図である。
図1において、ワーク姿勢制御装置1は設置面(台座)3の上に立設される4本の振動アクチュエータ4a-4dと、その振動アクチュエータ4a-4dに支持され、ワーク(図示せず)の供給を受けるプレート2と、このプレート2の下方で直接プレート2を支持する4本の支持脚7a-7dと、振動アクチュエータ4a-4dによって駆動され上方に向かって上下振動する駆動シャフト5a-5dと、この駆動シャフト5a-5dと支持脚7a-7dの間に設置されるフローティングジョイント6a-6dを備えている。フローティングジョイント6a-6dのジョイント部(図示せず)は支持脚7a-7dの傾動を吸収することができるという特徴を有しているが、その点については後述する。
なお、
図1中、符号dを付した振動アクチュエータ等の構成はプレート2の陰に隠れて図では表れていないが、符号bを付した振動アクチュエータ4b等の構成とプレート2の対角線上に存在している。
振動アクチュエータ4a-4dは上下振動をプレート2に対して下面からそれぞれ独立に印加することが可能である。また、その振動における強さ(加速度)や振幅は後述するアクチュエータ制御部19によって独立して所望に設定され、制御される。
【0018】
また、
図2及び
図3において、ワーク供給システム8は、
図1に示されるワーク姿勢制御装置1と、プレート2上のワーク15を撮影するカメラ16、カメラ16で撮影された画像を解析する画像解析部17、ワーク15をピッキングするピッキングロボット12とそのピッキングロボット12に対してピッキングの指令信号を発信するピッキングロボット制御部18を備えたピッキングロボットシステム11とを含んで構成される。
また、ワーク供給システム8の上流側にはワーク搬送装置9、下流側にワーク受取装置10を備えている。
図3の実施例ではワーク搬送装置9としてワーク搬送コンベア21を、ワーク受取装置10としてワーク受取部22を採用し、ワーク流れ20として示されるように、ワーク搬送コンベア21でワーク15をワーク供給システム8に供給し、ワーク供給システム8からワーク受取部22へワーク15が受け渡される。
ワーク供給システム8は、ワーク搬送装置9によってワーク姿勢制御装置1に搬送されるワーク15を、プレート2の上方に設けられたカメラ16で撮影し、画像解析部17で画像解析を行ってワーク15の位置や向き、あるいは表裏を認識した上で、その情報をピッキングロボット制御部18へ送信し、ピッキングロボット制御部18はその情報に基づいて、ピッキングロボット12のハンド13の先端に備えられているエンドエフェクタ14に対してピッキングの指令を発信し、エンドエフェクタ14が指令に基づいてワーク15をピッキングして、ワーク受取装置10へ渡す。
ワーク受取装置10とは、ワーク15をさらに搬送するための搬送装置である場合やワーク15を収容するための番重等の容器の場合もあり、特に限定するものではない。なお、ピッキングロボット12によるピッキングでは、ワーク15が表面(おもてめん)を上に向けているもののみをピッキングする場合と側面も含めて表裏構わずピッキングする場合がある。
また、ピッキングロボット12によるワーク15のピッキングが容易に実行されるためには、ワーク15同士が重なっていたり、表裏反転していたりするのではなく、複数のワーク15がそれぞれ個片として分散している状態が望ましい。
そこで、ワーク姿勢制御装置1では、振動アクチュエータ4a-4dを駆動させプレート2に対して振動を印加することで、重なっていたり表裏反転していたりするワーク15を移動させて分散させるが、その振動アクチュエータ4a-4dの駆動を制御すべくアクチュエータ制御部19を備えている。
【0019】
次に、
図4-
図9を参照しながら、ワーク姿勢制御装置1において、アクチュエータ制御部19が振動アクチュエータ4a-4dに対して上下振動の印加を制御することで、ワーク15の移動、分散を図ることについて説明する。
図4は実施例1のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータの上下振動の上振れが支持脚の短いプレートに印加された場合にワークへ作用する力を説明するための概念図である。
図5は実施例1のワーク姿勢制御装置のフローティングジョイントのジョイント部における作用を説明するための概念図である。
図4において、設置面3上の振動アクチュエータ4aの駆動シャフト5aは、符号Lで示される振動アクチュエータ4aの振動ストロークほど伸びているが、振動アクチュエータ4aから符号Wで示される距離をあけて設置されている振動アクチュエータ4bの駆動シャフト5bは停止しており伸びていない。この状態において、プレート2は駆動シャフト5aの伸びにしたがって支持脚7a,7bと共に傾斜しているが、
図5に示すとおり、フローティングジョイント6a,6bのジョイント部6a’,6b’では支持脚7a,7bの球面に成形された下端を球状の凹面で受けることで、互いに球面接触させて支持脚7a,7bの軸の傾斜を吸収している。
したがって、振動アクチュエータ4bの駆動シャフト5bと支持脚7bの間に設置されたフローティングジョイント6bのジョイント部6b’を傾動の中心として、上下振動を印加している振動アクチュエータ4a側の支持脚7aとプレート2は円弧を描くように傾動することができる。
また、プレート2と支持脚7a,7bが傾動しても、フローティングジョイント6a,6b及び駆動シャフト5a,5bは設置面3あるいは振動アクチュエータ4a,4bに対して垂直に保持されたままである。
図4に戻って、このような状態で支持脚7aの位置に相当するプレート2上面にワーク15が存在した場合にそのワーク15に作用する力Fについて検討する。傾動するプレート上に載置されたワークに作用するプレート面に水平方向の力と垂直方向の力の合力
まず、ジョイント部6a’,6b’からプレート2までの高さをHとし、振動アクチュエータ4aによる上下振動印加によって駆動シャフト5aが上昇して上振れすることに伴うフローティングジョイント6bのジョイント部6b’を中心とした傾動の半径をRとすると、RはWに等しい。したがって、プレートの傾動角をα、傾動中心のジョイント部からプレート上の支持脚7aの位置に相当するプレート上面での位置を結ぶ線と水平線が傾動後になす角をβ、傾動中心のジョイント部からプレート上の支持脚7aの位置に相当するプレート上面での位置を結ぶ線と水平線が傾動前になす角をγとすると、
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
また、プレート2上のワーク15に作用する力Fのプレート2面に対する水平方向成分Fxと垂直方向成分Fyは以下のとおり表せる。
【0024】
【0025】
【0026】
したがって、支持脚7aの位置に相当するプレート2上面の位置に存在するワーク15は振動アクチュエータ4a側から振動アクチュエータ4b側に向かって式(4)で示される力Fsinβの付勢を受けることになる。
ここで、これらの式(1)-(5)において、αはプレート2が傾いたことによる角度そのものであり、γは支持脚7a,7bの長さに基づく角度であり、βはその和であることから、フローティングジョイント6bのジョイント部6b’を中心としてプレート2及び支持脚7a,7bを傾動させるとワーク15に作用する水平方向の力としてプレート2の傾き角度のみならず支持脚7a,7bの長さに基づく角度も加えた角度の正弦とFの積が付勢されることになる。
第1象限ではsin関数は角度が大きくなるにつれて正弦も大きくなることからプレート2上面を移動させるための付勢力としては、単に振動アクチュエータ4aの駆動シャフト5aが伸びることによるプレート2の傾きのみよりも、傾動によってプレート2と支持脚7a,7bが同時に傾くことによる増加が見込まれる。
しかも、フローティングジョイント6a,6bのジョイント部6a’,6b’による支持脚7a,7bの軸の傾斜の吸収がない場合には、駆動シャフト5aが伸びることによるプレート2の傾動はプレート2の可撓性に基づくものであり、プレート2の剛性が高い場合には傾くこと自体も制限される可能性がある。なお、第1象限ではcos関数は角度が大きくなるにつれて余弦は小さくなることから、式(5)のFy、すなわちプレート2に対して垂直方向分力は小さくなり、ワーク15が傾動によってプレート2から浮き上がる力は小さくなる。
力Fは、ワーク15の質量mと振動アクチュエータ4aによる印加される振動の加速度aの積のmaで表されるので、ワーク15を共通とし振動の加速度aも一定の場合には、プレート2の支持脚7a,7bの長さが長いほどプレート2上面でワーク15に対する水平移動のための付勢力が強くなり、垂直移動のための付勢力は弱くなる。
したがって、ワーク姿勢制御装置1のアクチュエータ制御部19が振動アクチュエータ4a,4bを制御する上でフローティングジョイント6a,6bのジョイント部6a’,6b’の存在や支持脚7a,7bの長さが重要であることが理解できる。
なお、本願でいう傾動とは、駆動する振動アクチュエータの上下振動によって、停止している振動アクチュエータに接続されるフローティングジョイントのジョイント部を中心として半径Rで弧を描くように傾けることを意味している。
【0027】
次に、
図6を参照してプレート2の支持脚7a,7bが
図4に比べて長い場合について説明を加える。
図6は、実施例1のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータの上下振動の上振れが支持脚の長いプレートに印加された場合にワークへ作用する力を説明するための概念図である。既に
図4で説明した構成と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
図6において、
図4の支持脚7a,7bよりも長いものを採用することで、駆動シャフト5a,5bの振動ストロークLを同一としても、式(4)で表されるFのプレート2上面に平行な成分F
xが
図4中に示されるF
xよりも大きくなっていることが理解できる。これが角度γの寄与分であり、フローティングジョイント6a,6bのジョイント部6a’,6b’によって支持脚7a,7bの軸の傾斜が吸収されていることによる効果でもある。
【0028】
さらに、
図7を参照しながらプレート2が振動アクチュエータ4aによる上下振動を受けて、駆動シャフト5aの振動ストローク分下振れした場合にワーク15へ作用する力について説明を加える。
図7は実施例1のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータの上下振動の下振れが支持脚の長いプレートに印加された場合にワークへ作用する力を説明するための概念図である。
図7においても既にこれまでの図で説明した構成と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
図7においては、振動アクチュエータ4aの駆動シャフト5aが振動ストロークL分ほど下がっており、プレート2が角度αほど傾斜している。
プレート2が振動アクチュエータ4a側に下り傾斜で下がったことでワーク15aが自由落下するとプレート2上面のワーク15bの位置に着地する。もし、自由落下せずにそのままプレート2上面に載ったままの状態であればワーク15cの位置となることから、ワーク15aはプレート2上面でのワーク15cとワーク15bの差の距離δほど振動アクチュエータ4b側に移動したことになる。
停止している振動アクチュエータに接続される支持脚のプレート面上での位置とプレート面上に載置されるワークの位置間の距離を符号Dで表し、傾動中心のジョイント部からプレート上のワーク15aの位置を結ぶ線と水平線が傾動前になす角をβ’、傾動中心のジョイント部からプレート上のワーク15cの位置を結ぶ線と水平線が傾動後になす角をγ’とすると、プレート面上に載置されたワーク15aのプレートの傾動による移動距離δは、以下の式(8)で表される。
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
したがって、プレート2上面に存在するワーク15aは振動アクチュエータ4a側から振動アクチュエータ4b側に向かって見かけ上の力を付勢されて、式(8)で示される距離δほど移動することになる。
ここで、これらの式において、
図4及び
図6に示される場合と同様に、αはプレート2が傾いたことによる角度そのものであり、γ’は支持脚7a,7bの長さに基づく角度であり、β’はその和である。cos関数では第1象限で角度が大きくなるにつれて余弦が小さくなることからδは正値であり、δの大きさはβ’が第1象限に含まれる限り、γ’が大きくなるほど大きくなる。
したがって、フローティングジョイント6bのジョイント部6b’を中心としてプレート2及び支持脚7a,7bを傾動させるとワーク15aに見かけ上水平方向の力が作用し、その作用にプレート2の傾き角度αが影響を与えるのと同時に、支持脚7a,7bの長さに基づく角度γ’も大きい方が作用に大きく影響を与えることがわかる。
【0033】
次に、
図8(a)-(c)を参照しながらワーク姿勢制御装置1におけるアクチュエータ制御部19による振動アクチュエータ4a-4dの振動制御について説明する。
図8(a)-(c)は、実施例1のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータによって印加される上下振動によるその振動アクチュエータが配置されている側のフローティングジョイントのジョイント部の高さの変化と、上下振動することなくプレートに固定されている振動アクチュエータ側のフローティングジョイントのジョイント部の高さの関係を示す概念図である。(a)は上下振動している振動アクチュエータ側のジョイント部の振動中心の位置の高さと停止している振動アクチュエータ側のジョイント部の高さが一致している場合であり、(b)は停止している振動アクチュエータ側のジョイント部が低い場合であり、(c)は停止している振動アクチュエータ側のジョイント部が高い場合である。
図8(a)において、横軸は時間の経過を示しており、縦軸はそれぞれのジョイント部の高さを示しているが、上下振動中のジョイント部の最も高い位置と最も低い位置との差(2ν)は駆動シャフトの駆動ストロークを示している。
図8(a)では、上下振動しているジョイント部をジョイント部6a’として停止中のジョイント部をジョイント部6b’としてその高さを比較すると、ジョイント部6a’は、振動の振幅が0の場合には振幅が常に0で停止しているジョイント部6b’と同じ位置であり、その位置を中心として、高い位置と低い位置が交番的に制御されている。
したがって、プレート2は、振幅が0からνの間では振動アクチュエータ4a側から振動アクチュエータ4b側へ下り傾斜しており、ワーク15に作用する力Fxは式(4)で表されるとおりで傾斜に沿って振動アクチュエータ4a側から振動アクチュエータ4b側へ向かう方向に作用する。
一方、振幅が0から-νの間では逆に振動アクチュエータ4bから振動アクチュエータ4aへ下り傾斜しているが、ワーク15に作用する見かけの力は傾斜の下りの向きとは逆に作用する。したがって、上下振動中のジョイント部6a’の振幅がいずれの場合であっても、プレート2上面のワーク15へ作用する力の向きは常に振動アクチュエータ4a側から振動アクチュエータ4b側となり、ワーク15をプレート2面上で効率的に運搬することが可能である。
但し、この運搬では振幅のνの場合はワーク15がプレート2から浮いて移動するかワーク15とプレート2間の摩擦が小さいことで移動するかのいずれかであり、振幅が-νの場合はワーク15がプレート2上面から浮いて移動することが前提となっているので、アクチュエータ制御部19は、ワーク15の形状や重量を考慮しながら振動アクチュエータ4a-4dの振動周波数がこれらの条件を満足するように制御する必要がある。
【0034】
次に、
図8(b)の場合は、停止している振動アクチュエータ側のジョイント部6b’の高さが低く制御されている。この場合も上下振動中のジョイント部6a’の振幅がいずれの場合であっても、プレート2上面のワーク15へ作用する力の向きは常に振動アクチュエータ4a側から振動アクチュエータ4b側となるが、νと-νの同じ振幅でもプラス側、すなわち0からνの振幅によるワーク15の移動への効果がマイナス側、すなわち0から-νの振幅によるワーク15の移動への効果よりも大きい場合には上下振動中のジョイント部6a’の振動中心の位置を停止中のジョイント部6b’の位置よりも高く制御することで、振動アクチュエータ4aから振動アクチュエータ4bへ下り勾配となる時間を多く取り、より効率的にプレート2上面での振動アクチュエータ4b側へのワーク15の移動を実行することが可能である。
逆に、
図8(c)の場合は、停止している振動アクチュエータ側のジョイント部の高さを高く制御しているが、この場合は
図8(b)とは逆に0からνの振幅によるワーク15の移動の効果が0から-νの振幅によるワーク15の移動の効果よりも小さい場合のアクチュエータ制御部19による制御を示している。
このような場合は、上下振動中のジョイント部6a’の振動中心の位置を停止中のジョイント部6b’の位置よりも低く制御することで、振動アクチュエータ4aから振動アクチュエータ4bへ上り勾配となる時間を多く取り、より効率的にプレート2上面での振動アクチュエータ4
a側へのワーク15の移動を実行することが可能である。
【0035】
次に、
図9を参照しながら、実際にプレート2上面のワーク15を移動させつつ分散するアクチュエータ制御部19の制御について説明する。
まず、
図9(a)のようにワーク15が振動アクチュエータ4a,4d側に集まって分布しているような場合には、ワーク供給システム8のカメラ16がワーク15を撮影し、撮影された画像を画像解析部17で解析し、画像解析部17はアクチュエータ制御部19に対して、解析結果に関する情報を送信し、アクチュエータ制御部19は振動アクチュエータ4a,4dを駆動させてプレート2に上下振動を印加するように制御信号を送信し、振動アクチュエータ4b,4cは停止したままとする。このように制御することで、これまで説明したとおりワーク15は振動アクチュエータ4a,4d側から振動アクチュエータ4b,4c側へ移動するが、プレート2の中央付近まで進み、ワーク供給システム8のカメラ16で撮影されたワーク15の画像に対し、画像解析部17が解析しピッキングロボット12によってピッキングするのに望ましいエリアに分布していると判断すると、画像解析部17は解析結果に関する情報をアクチュエータ制御部19に対して送信し、アクチュエータ制御部19は振動アクチュエータ4a,4dによる上下振動の印加を停止するように制御信号を送信する。
そして、振動アクチュエータ4a,4dによる上下振動の印加が停止され、その場合のワーク15の分布は
図9(b)に示されるとおりである。
図9(c)のように、ワーク15が振動アクチュエータ4c,4d側に集まって分布しているような場合には、振動アクチュエータ4c,4dを駆動させてプレート2に上下振動を印加し、振動アクチュエータ4a,4bは停止したままとする。その制御は
図9(a)の場合と同様であり、振動アクチュエータ4c,4dによる上下振動の印加が停止された後のワーク15の分布は
図9(d)に示されるとおりである。
図9(e)のように、ワーク15が振動アクチュエータ4d側に集まって分布しているような場合には、振動アクチュエータ4dを駆動させてプレート2に上下振動を印加し、振動アクチュエータ4a-4cは停止したままとする。その制御は
図9(a)の場合と同様であり、振動アクチュエータ4dによる上下振動の印加が停止された後のワーク15の分布は
図9(f)に示されるとおりである。
なお、
図9(e)に示されるように4隅の振動アクチュエータ4a-4dのうち1つのみ(
図9(e)では振動アクチュエータ4dのみ)傾動させてプレート2上面で対角線上にワーク15を移動させたい場合には、対角線上の移動させたい方向にある振動アクチュエータ4bを停止させ、対角線上にない振動アクチュエータ4a,4cを振動アクチュエータ4dと同位相でストロークを半分にするようにアクチュエータ制御部19が制御することで、振動アクチュエータ4dから振動アクチュエータ4bへの傾斜面を形成することが可能である。
【0036】
以上説明したとおり、実施例1に係るワーク姿勢制御装置1では、設置面3上の振動アクチュエータ4a-4dの駆動シャフト5a-5dとプレート2を下方で支えている支持脚7a-7dを、フローティングジョイント6a-6dを介して接続し、ジョイント部6a’-6d’で支持脚7a-7dの軸の傾斜を吸収することで、上下振動を印加している振動アクチュエータの符号を4a、停止している振動アクチュエータの符号を4bとすると、振動アクチュエータ4bの駆動シャフト5bと支持脚7bの間に設置されたフローティングジョイント6bのジョイント部6b’を傾動の中心として、上下振動を印加している振動アクチュエータ4a側の支持脚7aとプレート2は円弧を描くように傾動することができる。
フローティングジョイントを採用しない場合では、プレート2の撓みによって振動が印加されるのみであり、停止している振動アクチュエータ4b側の支持脚7bは動くことなく固定されたままであることから、プレート2の傾斜は限定的である。
一方、プレート2と共に支持脚7a,7bが傾動する実施例1のワーク姿勢制御装置1では、支持脚7a,7bの傾動によってプレート2上面のワーク15に水平方向へ移動させるために付勢される力が大きくなり、あるいは見かけ上の力が大きくなり、移動量を大きくすることが可能となる。すなわち、上下振動の振幅や加速度を小さくしても、ワーク15に対する付勢力や見かけの力を効率的に発揮させることが可能であり、ワーク15のプレート2上面での移動量を増加させることが可能である。
また、実施例1のワーク姿勢制御装置1を採用するワーク供給システム8では、 ワーク姿勢制御装置1は複数のワーク15を移動させながらプレート2の中央寄りに分散させる状態を効率的かつ迅速に形成可能であるので、ワーク15の重なりや表裏反転も低減可能であり、カメラ16によるワーク15の撮影をはじめ、画像解析部17によるワーク15の画像解析や画像解析に基づくピッキングロボット12によるワーク15のピッキングが容易かつ短時間で終了可能である。
したがって、実施例2のワーク供給システム8では、ワーク搬送装置9によるワーク姿勢制御装置1へのワーク15の搬送からピッキングロボット12のピッキングによるワーク15のワーク受取装置10への受け渡しまでの作業の流れもスムースに効率的に短時間で終了させることが可能である。
なお、本実施例ではプレート2の形状を矩形としてその四隅に振動アクチュエータ4a-4dを設置しているが、形状は矩形に限定されることなく、振動アクチュエータの配置や数も限定するものではない。ワーク15が存在する近傍の振動アクチュエータを上下振動させて、プレート2の中央を挟んで対角に存在する振動アクチュエータを停止させることで、ワーク15を効率的にプレート2の中央へ移動させながら分散させることが可能である。
【0037】
(実施例3)
次に、実施例3に係るワーク姿勢制御装置1aについて
図10を参照しながら説明する。
図10は実施例3のワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータの上下振動の上振れがL字形の支持脚を介してプレートに印加された場合にワークへ作用する力を説明するための概念図である。
図10においても既にこれまでの図で説明した構成と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
実施例3のワーク姿勢制御装置1aでは、実施例1とは異なり、振動アクチュエータ4a-4dが上下逆に設置される構成となっており、駆動シャフト5a-5dが下方に向かって上下振動を印加し、プレート2の下面を支える支持脚7a-7dはプレート2の下面から鉛直方向に伸び、下端をL字状に湾曲させた後さらに上方へ向かって伸びる形状でフローティングジョイント6a-6dに接続されている。
したがって、位置関係はプレート2の下方に振動アクチュエータ4a-4d、そして振動アクチュエータ4a-4dから下方に伸びる駆動シャフト5a-5dの下端にフローティングジョイント6a-6dが設置され、フローティングジョイント6a-6dの下端に支持脚7a-7dが設置され、その支持脚7a-7dは設置面3に支持されることなく、反り返って上方のプレート2の下面に設置されている。支持脚7a-7dの端部は球形に形成され、この球形と球面接触可能に球状凹面に形成されたフローティングジョイント6a-6dのジョイント部6a’-6d’に接続され、支持脚7a-7dの軸の傾斜を吸収することが可能である。
図10中には図示しないが、ワーク姿勢制御装置1aは振動アクチュエータ4a-4dを支持する支持材を備えており、その支持材が強固に設置面3に固定されることで、振動アクチュエータ4a-4dが固定された状態で駆動シャフト5a-5dを介して上下振動を印加する。支持材は、支持脚7a-7dの下端が駆動シャフト5a-5dによる上下振動の印加によっても設置面3へ接触しないような高さを備えている。
図10には、振動アクチュエータ4aが上下振動を印加し、振動アクチュエータ4bが停止している状態を示している。実施例3のワーク姿勢制御装置1aでも振動アクチュエータ4aの上下振動とは上方へ駆動シャフト5aが移動する場合に上下振動の上振れとし、下方へ移動する場合を上下振動の下振れとする。したがって、
図10に示される状態は上下振動の上振れの状態である。その振幅は
図4等と同じくLであり、フローティングジョイント6a,6bのジョイント部6a’,6b’からプレート2までの高さもHであり、その他の符号も同一符号を用いており、
図4を参照しながら説明した式(1)-(5)も適用することが可能であり、駆動シャフト5aによってジョイント部6a’が振動アクチュエータ4bのジョイント部6b’の位置からLほど下振れした場合には、
図7を参照しながら説明したとおり、ワーク15aの位置とDを定めることで、式(6)-(8)も適用することが可能である。
したがって、実施例3に係るワーク姿勢制御装置1aにおいても、実施例1に係るワーク姿勢制御装置1と同様の作用及び効果を発揮することが可能である。
なお、本実施例3も実施例1に代えて実施例2のワーク供給システム8に採用することが可能であり、ワーク供給システム8としても同様の効果を発揮することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明の請求項1-請求項5に記載された発明は、様々な産業分野における組立、加工、生産のために必要なワーク(部品)を供給するためのワーク姿勢制御装置及びワーク供給システムとして広く利用が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,1a…ワーク姿勢制御装置 2…プレート 3…設置面 4a-4d…振動アクチュエータ 5a-5d…駆動シャフト 6a-6d…フローティングジョイント 6’a-6’d…ジョイント部 7a-7d…支持脚 8…ワーク供給システム 9…ワーク搬送装置 10…ワーク受取装置 11…ピッキングロボットシステム 12…ピッキングロボット 13…ハンド 14…エンドエフェクタ 15,15a-15c…ワーク 16…カメラ 17…画像解析部 18…ピッキングロボット制御部 19…アクチュエータ制御部 20…ワーク流れ 21…ワーク搬送コンベア 22…ワーク受取部 α…プレートの傾動角 β…傾動中心のジョイント部からプレート上の支持脚7aの位置に相当するプレート上面での位置を結ぶ線と水平線が傾動後になす角 β’…傾動中心のジョイント部からプレート上のワーク15aの位置を結ぶ線と水平線が傾動前になす角 γ…傾動中心のジョイント部からプレート上の支持脚7aの位置に相当するプレート上面での位置を結ぶ線と水平線が傾動前になす角 γ’…傾動中心のジョイント部からプレート上のワーク15cの位置を結ぶ線と水平線が傾動後になす角 δ…プレート面上に載置されたワーク15aのプレートの傾動による移動距離 H…ジョイント部からプレートまでの高さ L…振動アクチュエータの振動ストローク W…振動アクチュエータ設置間距離 R…振動アクチュエータの上下振動印加に対する傾動半径 F…傾動するプレート上に載置されたワークに作用するプレート面に水平方向の力と垂直方向の力の合力 Fx…Fのプレート面に対する水平方向成分 Fy…Fのプレート面に対する垂直方向成分 D…停止している振動アクチュエータに接続される支持脚のプレート面上での位置とプレート面上に載置されるワークの位置間の距離