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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】酸性乳飲料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20210101AFI20240208BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240208BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A23L2/38 P
A23L2/00 B
A23L2/52
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019213114
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021083340
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591152584
【氏名又は名称】高梨乳業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】水畑 謙二
(72)【発明者】
【氏名】上村井 一輝
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-042644(JP,A)
【文献】特開2015-143653(JP,A)
【文献】特開2016-086789(JP,A)
【文献】特開2009-291081(JP,A)
【文献】特開2004-275072(JP,A)
【文献】特開2005-245217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/
A23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性乳飲料の製造方法であって、
乳成分と、カルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液に、第1の酸性原料を添加し、混合する工程と、
第1の酸性原料を添加、混合した乳調製液に、比重が、前記乳調製液の比重よりも大きく、かつ、前記乳調製液との比重差が、前記第1の酸性原料と前記乳調製液との比重差よりも大きい第2の酸性原料を添加する工程と、を有
製造される酸性乳飲料における無脂乳固形分の含有量が、5質量%以上10質量%以下であり、
製造される酸性乳飲料におけるカルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量が、0.03質量%以上0.28質量%以下であり、
前記第1の酸性原料の粘度が、前記乳調製液の粘度よりも小さく、前記第1の酸性原料と前記乳調製液との粘度の差が100cP以下であり、
前記第2の酸性原料の粘度が、前記乳調製液の粘度よりも大きく、前記第2の酸性原料と前記乳調製液との粘度の差が10cP以上である、酸性乳飲料の製造方法。
【請求項2】
前記第1の酸性原料と前記乳調製液との比重差が、0.02g/cm以下であり、
前記第2の酸性原料と前記乳調製液との比重差が、0.01g/cm以上である、請求項1に記載の酸性乳飲料の製造方法。
【請求項3】
前記第1の酸性原料のpHが、前記第2の酸性原料のpHよりも低い、請求項1又は2に記載の酸性乳飲料の製造方法。
【請求項4】
前記第1の酸性原料のpHが、1.5以上2以下であり、
前記第2の酸性原料のpHが、3以上4以下である、請求項に記載の酸性乳飲料の製造方法。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の酸性乳飲料の製造方法。
【請求項6】
前記乳調製液が、発酵セルロースをさらに含有する、請求項1からのいずれかに記載の酸性乳飲料の製造方法。
【請求項7】
前記乳調製液が、加熱殺菌され、その後冷却されたものである、請求項1からのいずれかに記載の酸性乳飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性乳飲料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸性原料(酸成分)を含有する酸性乳飲料において、無脂乳固形分の構成の1つであるタンパク質が凝集すると、外観及び風味が損なわれることが知られている。そのため、酸性原料を含有する酸性乳飲料の製造方法に関して、タンパク質の凝集を抑制する方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、乳成分を含む乳原料および酸成分を含む酸原料を別々に調製する調製工程、前記乳原料または前記酸原料のいずれかにカルボキシメチルセルロースまたはその塩を配合する配合工程、前記乳原料および前記酸原料を別々に殺菌する殺菌工程、ならびに、殺菌した前記乳原料と殺菌した前記酸原料とを混合して、タンパク質の凝集が抑制されている弱酸性乳飲料を調製する混合工程を含む、弱酸性乳飲料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-86789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、酸性乳飲料の保存期間中のタンパク質の凝集を抑制する効果を有し、タンパク質の凝集が抑制されることで、酸性乳飲料の外観及び風味の低下は抑制される。しかしながら、カルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量が大きい場合には、該乳飲料を飲む際に、べとつく食感が強くなり、口当たりが低下してくることがある。
【0006】
一方、一般的に、乳中の無脂乳固形分の約35%前後がタンパク質であり、乳飲料中のタンパク質の含有量は、この乳中の無脂乳固形分に含まれるタンパク質の含有量に依存する。ここで、無脂乳固形分は、タンパク質の他に、乳糖、ミネラル等も含み、乳の独特の風味に寄与する成分である。
【0007】
このため、乳飲料中の無脂乳固形分の含有量を減らせば、タンパク質の含有量も減るが、その分、乳独自の風味が低下するため、乳飲料全体としての風味も損なわれることになる。すなわち、乳飲料中の無脂乳固形分の含有量を減らし、乳飲料中のタンパク質の含有量を減らすことは望ましくない。
【0008】
したがって、本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、タンパク質の凝集が良好に抑制され、風味及び口当たりが良好な酸性乳飲料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上記課題に鑑み、鋭意研究を行った。その結果、2種の酸性原料を、特定の順序で、別々に乳調製液に添加することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0010】
(1) 酸性乳飲料の製造方法であって、乳成分と、カルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液に、第1の酸性原料を添加し、混合する工程と、第1の酸性原料を添加、混合した乳調製液に、比重が、前記乳調製液の比重よりも大きく、かつ、前記乳調製液との比重差が、前記第1の酸性原料と前記乳調製液との比重差よりも大きい第2の酸性原料を添加する工程と、を有する、酸性乳飲料の製造方法。
【0011】
(2) 前記第1の酸性原料と前記乳調製液との比重差が、0.02g/cm以下であり、前記第2の酸性原料と前記乳調製液との比重差が、0.01g/cm以上である、上記(1)に記載の酸性乳飲料の製造方法。
【0012】
(3) 前記第1の酸性原料の粘度が、前記乳調製液の粘度よりも小さく、前記第1の酸性原料と前記乳調製液との粘度の差が100cP以下であり、前記第2の酸性原料の粘度が、前記乳調製液の粘度よりも大きく、前記第2の酸性原料と前記乳調製液との粘度の差が10cP以上である、上記(1)又は(2)に記載の酸性乳飲料の製造方法。
【0013】
(4) 前記第1の酸性原料のpHが、前記第2の酸性原料のpHよりも低い、上記(1)から(3)のいずれかに記載の酸性乳飲料の製造方法。
【0014】
(5) 前記第1の酸性原料のpHが、1.5以上2以下であり、前記第2の酸性原料のpHが、3以上4以下である、上記(4)に記載の酸性乳飲料の製造方法。
【0015】
(6) 製造される酸性乳飲料における無脂乳固形分の含有量が、5質量%以上10質量%以下である、上記(1)から(5)のいずれかに記載の酸性乳飲料の製造方法。
【0016】
(7) 製造される酸性乳飲料におけるカルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量が、0.03質量%以上0.28質量%以下である、上記(1)から(6)のいずれかに記載の酸性乳飲料の製造方法。
【0017】
(8) 前記乳調製液が、発酵セルロースをさらに含有する、上記(1)から(7)のいずれかに記載の酸性乳飲料の製造方法。
【0018】
(9) 前記乳調製液が、加熱殺菌され、その後冷却されたものである、上記(1)から(8)のいずれかに記載の酸性乳飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タンパク質の凝集が良好に抑制され、風味及び口当たりが良好な酸性乳飲料を製造することができる。
【0020】
なお、本明細書において、タンパク質の凝集が抑制されている状態とは、目視にてタンパク質の凝集が見られないこと、より具体的には、内容物(酸性乳飲料の全ての原料)を透明容器に充填した後に静置させた、内容物を混合する前の状態において、酸性乳飲料中の第1の酸性原料と乳調製液の混合液(第1の酸性原料が添加、混合された乳調製液)と第2の酸性原料の界面、及び、酸性乳飲料の全体を目視にて観察した際に、凝集物が見られないことを指す。また、製品である酸性乳飲料の保存期間は、殺菌の温度及び時間による影響を受けるものであるが、通常、概ね15日以内であり、この保存期間において、タンパク質の凝集が良好に抑制されれば、通常、十分である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<酸性乳飲料の製造方法>
本発明の酸性乳飲料の製造方法は、
乳成分と、カルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液に、第1の酸性原料を添加し、混合する工程(工程C1)と、
第1の酸性原料を添加、混合した乳調製液に、比重が、前記乳調製液の比重よりも大きく、かつ、前記乳調製液との比重差が、前記第1の酸性原料と前記乳調製液との比重差よりも大きい第2の酸性原料を添加する工程(工程C2)と、
を有する。
本発明の酸性乳飲料の製造方法は、さらに、
乳成分と、カルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液を調製する工程(工程A)と、
調製した乳調製液を殺菌し、その後冷却する工程(工程B)と、
を有してもよく、この殺菌・冷却した乳調製液に第1の酸性原料を添加し、混合した後、第2の酸性原料を添加することもできる(工程C1、工程C2)。
【0022】
本発明の酸性乳飲料の製造方法は、配合される酸性原料を一度に全て乳原料、あるいは乳成分とカルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液に添加し、均一に混合・分散させる方法よりも、酸性乳飲料の保存期間中のタンパク質の凝集が抑制され、また、風味及び口当たりが良好になる。
【0023】
なお、本発明の酸性乳飲料の製造方法においては、通常、乳酸菌等の微生物による発酵工程は含まれないものとする。
【0024】
[工程A]
工程Aは、乳成分と、カルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液を調製する工程である。なお、乳調製液は、通常、水分も含有する。
【0025】
乳調製液は、撹拌機等が設けられたタンク等を用い、従来公知の方法で調製することができる。具体的には、タンク等の容器に乳原料、カルボキシメチルセルロース又はその塩、水等を加え、撹拌して、乳調製液を調製することができる。撹拌温度、撹拌圧力、及び撹拌時間等の撹拌条件は、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0026】
(乳成分)
本発明における乳成分には、後述する無脂乳固形分と乳脂肪分のいずれも含まれることが好ましいが、乳脂肪分については必ずしも含むものでなくてもよい。乳成分としては、従来公知の乳原料、例えば、生乳又はその加工品(例えば、牛乳、成分調整牛乳、加工乳、脱脂乳、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂粉乳、調製粉乳、脱脂粉乳、練乳、クリーム、バター等)を配合することにより添加することができる。用いる乳原料は1種であってもよいし、複数の乳原料を組み合わせてもよい。
【0027】
本発明においては、最終的に得られる酸性乳飲料における無脂乳固形分の含有量が5質量%以上10質量%以下、より好ましくは6質量%以上9質量%以下となるように、乳原料を配合して乳調製液を調製することが好ましい。前述のように、無脂乳固形分は、タンパク質を構成成分の一つとしているため、無脂乳固形分の含有量が大きすぎると、タンパク質の含有量が大きくなり、酸性乳飲料の保存期間中にタンパク質の凝集が起こりやすくなる。一方で、無脂乳固形分は、タンパク質の他に、乳糖、ミネラル等も含み、乳の独特の風味に寄与する成分でもあるため、無脂乳固形分の含有量が小さすぎると、乳の風味が低下し、乳飲料全体としての風味も損なわれることになる。最終的に得られる酸性乳飲料における無脂乳固形分の含有量を上記の範囲に調整することにより、タンパク質の凝集を抑制しながら、より良好な乳成分由来の風味を有する酸性乳飲料を得ることができる。酸性乳飲料の保存期間中のタンパク質の凝集の抑制と風味のバランスの観点から、最終的に得られる酸性乳飲料における無脂乳固形分の含有量が、6質量%以上8質量%以下であることが特に好ましい。
【0028】
なお、前述のように、製品である酸性乳飲料の保存期間は、殺菌の温度及び時間による影響を受けるものであるが、通常、概ね15日以内である。
【0029】
また、最終的に得られる酸性乳飲料における乳脂肪分の含有量が、3質量%以上4質量%以下であることが好ましい。最終的に得られる酸性乳飲料における乳脂肪分の含有量が上記の範囲であることにより、酸性乳飲料に乳脂肪由来のコクやボディ感を付与でき、乳の風味を高めることができる。
【0030】
(カルボキシメチルセルロース又はその塩)
本発明において用いることができるカルボキシメチルセルロース又はその塩としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
【0031】
本発明においては、最終的に得られる酸性乳飲料におけるカルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量が0.03質量%以上0.28質量%以下、より好ましくは0.04質量%以上0.25質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上0.2質量%以下となるように、カルボキシメチルセルロース又はその塩を配合して乳調製液を調製することが好ましい。前述のように、カルボキシメチルセルロース又はその塩は、酸性乳飲料の保存期間中のタンパク質の凝集を抑制する効果を有するが、一方で、その含有量が大きすぎると、該酸性乳飲料を飲む際に、べとつく食感が強くなり、口当たりが低下してくる。最終的に得られる酸性乳飲料におけるカルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量を上記の範囲に調整することにより、タンパク質の凝集を抑制しながら、口当たりがより良好な酸性乳飲料を得ることができる。酸性乳飲料の保存期間中のタンパク質の凝集の抑制と良好な口当たりのバランスの観点から、最終的に得られる酸性乳飲料におけるカルボキシメチルセルロース又はその塩の含有量が、0.08質量%以上0.18質量%以下であることが特に好ましい。
【0032】
(発酵セルロース)
工程Aにおいて調製する乳調製液は、発酵セルロースを含有することが好ましい。本発明の酸性乳飲料の製造方法の工程C2においては、乳調製液よりも比重が大きく、かつ、その比重差も大きい第2の酸性原料を乳調製液に添加するため、本発明により得られる酸性乳飲料は、後述するように、静置すると当該第2の酸性原料が容器の底に沈殿しやすい傾向があるので、飲む直前に容器を振盪するなどして、内容物を混合することが想定されるものである。乳調製液に発酵セルロースを添加することにより、内容物を混合する際に泡を抱き込みやすくなり、かつ、形成された泡を良好に維持することができ、得られる酸性乳飲料の口当たりをより向上させることができる。
【0033】
特に限定されないが、最終的に得られる酸性乳飲料における発酵セルロースの含有量が0.02質量%以上0.05質量%以下となるように、発酵セルロースを配合することが好ましい。
【0034】
(その他の原料)
乳調製液には、上記の原料の他に、必要に応じて、糖類、増粘剤、乳化剤、pH調整剤等を含有させてもよい。乳調製液には、その他に、香料、着色料、保存料等を含有させてもよいが、通常、風味等の観点から、これらは添加しないことが好ましい。
【0035】
(糖類)
乳調製液に糖類を添加することにより、嗜好性を高め、酸性乳飲料の風味全体にボディ感を与えることができる。なお、ここで、添加してもよい糖類には、無脂乳固形分由来の乳糖は含まれないものとする。
【0036】
特に限定されないが、最終的に得られる酸性乳飲料における糖類の含有量が7質量%以上10質量%以下となるように、糖類を配合することが好ましい。
【0037】
糖類としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、異性化液糖、グリチルリチン、ステビア、アスパルテーム、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、水飴、エリスリトール、スクラロース、マルチトール、ソルビトール、サッカリンナトリウム、アセスルファムカリウム等が挙げられるが、風味の観点から、ショ糖を用いることが好ましい。
【0038】
(増粘剤)
乳調製液に増粘剤を添加することにより、適度な粘度が酸性乳飲料に付与され、ボディ感を与えることができる。
【0039】
特に限定されないが、最終的に得られる酸性乳飲料における増粘剤の含有量が0.04質量%以上0.3質量%以下となるように、増粘剤を配合することが好ましい。
【0040】
増粘剤としては、特に限定されないが、グァーガム、ジェランガム、カラギナン、キサンタンガム、アラビアガム、ペクチン、ローストビーンガム、タマリンドシードガム、大豆多糖類、加工澱粉等を用いることができる。
【0041】
[工程B]
工程Bは、工程Aで調製した乳調製液を殺菌し、その後冷却する工程である。
【0042】
乳調製液を殺菌する前に、例えばプレートによる予備加熱を行い、乳脂肪及びタンパク質の凝集を抑制するために、ホモジナイザー等の機器を用いて、均質化処理を行うことが好ましい。
【0043】
乳調製液を殺菌する方法としては、特に限定されず、直接加熱殺菌(インジェクション式、インフュージョン式)、間接加熱殺菌(プレート式、チューブラー式、シェル&チューブ式、バッチ式)等の従来公知の殺菌方法いずれも用いることができる。加熱温度、及び加熱時間等の加熱殺菌条件も、特に限定されず、所望の風味や賞味期限に合わせて適宜選択することができ、超高温殺菌(UHT)や高温短時間殺菌法(HTST)等を適宜選択すればよい。
【0044】
殺菌後に乳調製液を冷却する方法としては、特に限定されず、プレート式やチューブラー式等の従来公知の冷却方法いずれも用いることができる。冷却条件も、特に限定されず、適宜選択することができるが、通常、乳調製液を10℃以下にまで冷却することが好ましい。
【0045】
乳調製液を殺菌、冷却した後は、本発明の酸性乳飲料の製造方法の必須の工程である、次の工程C1と工程C2にそのまま進むこともでき、また、殺菌、冷却した乳調製液を衛生的なタンク等に一時的に保管した後、次の工程C1と工程C2に進むこともできる。
【0046】
[工程C(工程C1と工程C2)]
本発明の酸性乳飲料の製造方法の必須の工程である工程Cは、乳成分とカルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液に、第1の酸性原料を添加し、混合する工程(工程C1)と、その後、第1の酸性原料を添加、混合した乳調製液に、比重が、前記乳調製液の比重よりも大きく、かつ、前記乳調製液との比重差が、前記第1の酸性原料と前記乳調製液との比重差よりも大きい第2の酸性原料を添加する工程(工程C2)とを含む。本発明の酸性乳飲料の製造方法が上記の工程A及び工程Bを含む場合は、第1の酸性原料及び第2の酸性原料が添加される、乳成分とカルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液は、工程Aで調製され、工程Bで殺菌、冷却された乳調製液である。
【0047】
乳調製液への第1の酸性原料の添加・混合、及び第2の酸性原料の添加は、従来公知の方法、装置で行うことができる。添加・混合時の乳調製液及び酸性原料の温度、及び混合時間等の添加・混合条件は、特に限定されず、適宜選択することができる。
【0048】
工程Cにおいて、工業的には、乳調製液に第1の酸性原料をライン中で定量的に混合し(工程C1)、一方で、第2の酸性原料を充填容器に充填し、この第2の酸性原料が充填された充填容器に第1の酸性原料と乳調製液の混合液を充填(添加)する(工程C2)ことが好ましい。また、乳調製液に第1の酸性原料をライン中で定量的に混合し(工程C1)、第1の酸性原料と乳調製液の混合液を充填容器に充填した後、この充填容器に第2の酸性原料を充填(添加)する(工程C2)こともできる。後述するように、本発明の製造方法により製造される酸性乳飲料は、通常、プラスチックパックや紙パック等の容器に入れられて市販されるが、この容器が、第2の酸性原料と、第1の酸性原料と乳調製液の混合液(第1の酸性原料が添加、混合された乳調製液)とが充填される充填容器になる。
【0049】
具体的には、まず、好ましくは殺菌及び冷却された、乳成分とカルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液がラインを通過する際に、ミキサー等を用いて、好ましくは予め殺菌処理された第1の酸性原料をライン中に定量的に添加、混合する。これにより、第1の酸性原料が均一に乳調製液に混合・分散される。その後、一度、第1の酸性原料を添加、混合した乳調製液を衛生的なタンク等に一時的に保管してもよく、その場合、タンク等の容器内で乳調製液を緩やかに撹拌してもよい。
【0050】
また、例えば、好ましくは殺菌及び冷却された、乳成分とカルボキシメチルセルロース又はその塩とを含有する乳調製液が貯蔵されたタンク等の容器に第1の酸性原料を投入し、容器内で撹拌して、混合・分散させることもできる。
【0051】
一方で、第2の酸性原料は、充填容器に定量的に充填する。第2の酸性原料が充填容器に充填された後に、又は充填される前に、第1の酸性原料と乳調製液の混合液が充填容器に充填される。ここで、第2の酸性原料は、第1の酸性原料と乳調製液の混合液(第1の酸性原料が添加、混合された乳調製液)と混合する必要はない。全ての原料が充填された状態において、比重が大きい第2の酸性原料は、乳調製液に均一に混合・分散せずに、容器の底に沈殿しやすい。そのため、酸性乳飲料の製造時、つまり、第2の酸性原料と、第1の酸性原料と乳調製液の混合液(第1の酸性原料が添加、混合された乳調製液)とを充填容器に充填する時にこれらを均一に混合しても、その状態が保たれにくい傾向があり、タンパク質の凝集の抑制の観点から、この段階では第2の酸性原料はラインやタンク等の容器中で、又は充填容器中で混合しないことが好ましい。
【0052】
(酸性原料等の比重)
本発明において、第1の酸性原料は、その比重が乳調製液の比重よりも大きくても小さくてもよいが、第2の酸性原料は、その比重が乳調製液の比重よりも大きいものである。また、第2の酸性原料と乳調製液との比重差が、第1の酸性原料と乳調製液との比重差よりも大きいものである。なお、ここでの乳調製液は、第1の酸性原料が添加・混合される前の乳調製液である。
【0053】
より具体的には、第1の酸性原料と乳調製液の比重の差は、0.02g/cm以下であることが好ましい。第1の酸性原料と乳調製液の比重は同じ、すなわち、第1の酸性原料と乳調製液の比重の差は0g/cmであってもよい。第1の酸性原料と乳調製液の比重の差が小さく、上記の範囲であることにより、第1の酸性原料と乳調製液とをより良好に、均一に混合することができ、その結果として、酸味のムラをあまり感じない、より良好な風味を有する酸性乳飲料とすることができる。
【0054】
第2の酸性原料の比重は乳調製液の比重よりも大きく、かつ、第2の酸性原料と乳調製液の比重の差は、0.01g/cm以上であることが好ましい。第2の酸性原料と乳調製液の比重の差が大きく、上記の範囲であることにより、第2の酸性原料と乳調製液とが均一に混合しにくくなり、酸性乳飲料の保存期間中において、より良好にタンパク質の凝集を抑制することができる。
【0055】
第1の酸性原料と第2の酸性原料が添加・混合される前の乳調製液の比重は、特に限定されないが、通常、1.05g/cm以上1.07g/cm以下であることが好ましい。なお、本発明における乳調製液の比重は、浮秤法により温度10℃で測定した場合の比重である。
【0056】
なお、第1の酸性原料および第2の酸性原料は、果肉等の不溶性の原料、すなわち不溶性固形分を含有するものであってもよく、その場合、比重(10℃)は、酸性原料全体の体積と質量から算出することができる。また、粘度が高い場合等、浮秤法により適切に比重の測定ができない場合も、酸性原料全体の体積と質量から算出することができる。
【0057】
(酸性原料等のpH)
本発明においては、乳調製液に均一に混合される第1の酸性原料のpHが、第2の酸性原料のpHと同じ、又は第2の酸性原料のpHより高くてもよいが、第1の酸性原料のpHが、第2の酸性原料のpHよりも低いことが好ましい。乳調製液に均一に混合される第1の酸性原料のpHが第2の酸性原料のpHよりも低い、すなわち、第1の酸性原料が第2の酸性原料よりも酸性が強いことにより、タンパク質の凝集を良好に抑制しながら、酸味のムラをあまり感じない、より良好な風味を有する酸性乳飲料とすることができる。
【0058】
より具体的には、第1の酸性原料のpHは、1.5以上2以下であることが好ましく、第2の酸性原料のpHは、3以上4以下であることが好ましい。また、乳調製液と第1の酸性原料の混合液(第1の酸性原料が添加、混合された乳調製液)のpHは、特に限定されないが、通常、4.8以上5.3以下であることが好ましい。
【0059】
最終的に得られる酸性乳飲料のpHは、通常、4.2以上4.8以下であることが好ましい。酸性乳飲料のpHを上記の範囲に調整することにより、内容物を混合して飲む際に適度な酸味を感じる酸性乳飲料とすることができる。
【0060】
なお、第1の酸性原料および第2の酸性原料が果肉等の不溶性の原料、すなわち不溶性固形分を含有するものである場合、このpHは、例えばホモミキサー、ストマッカー等の機器を用いて、全ての成分を均一に混合・分散させた状態で測定したpHである。最終的に得られる酸性乳飲料のpHも、例えばホモミキサー、ストマッカー等の機器を用いて、全ての原料を均一に混合・分散させた状態で測定したpHである。
【0061】
(酸性原料等の粘度)
本発明においては、乳調製液に均一に混合される第1の酸性原料の粘度が、乳調製液の粘度よりも小さく、かつ、第1の酸性原料と乳調製液との粘度の差が100cP以下であることが好ましい。第1の酸性原料の粘度が乳調製液の粘度よりも小さく、かつ、第1の酸性原料と乳調製液の粘度の差が上記の範囲であることにより、第1の酸性原料と乳調製液とをより良好に、均一に混合することができ、その結果として、酸味のムラをあまり感じない、より良好な風味を有する酸性乳飲料とすることができる。また、第1の酸性原料の粘度と乳調製液の粘度は同じであってもよい。
【0062】
本発明においては、また、第2の酸性原料の粘度が、乳調製液の粘度よりも大きく、かつ、第2の酸性原料と乳調製液との粘度の差が10cP以上であることが好ましい。第2の酸性原料の粘度が乳調製液の粘度よりも大きく、かつ、第2の酸性原料と乳調製液の粘度の差が上記の範囲であることにより、第2の酸性原料と乳調製液とが均一に混合しにくくなり、酸性乳飲料の保存期間中において、より良好にタンパク質の凝集を抑制することができる。
【0063】
なお、本発明における粘度は、B型粘度計を用いて、温度10℃で測定した場合の粘度である。また、第1の酸性原料および第2の酸性原料が果肉等の不溶性の原料、すなわち不溶性固形分を含有するものである場合、この粘度は、例えばホモミキサー、ストマッカー等の機器を用いて、全ての成分を均一に混合・分散させた状態で測定した粘度である。
【0064】
なお、第2の酸性原料が果肉等の不溶性固形分を含有するものである場合、第2の酸性原料と乳調製液の粘度の差は大きくなる傾向があり、例えば、1000cP以上であることが好ましい。
【0065】
(第1の酸性原料)
第1の酸性原料としては、特に限定されず、任意のものを用いることができるが、例えば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、グルコン酸、コハク酸等の酸味料を水に溶解したものを用いることができる。また、果汁やコーヒー等の食品素材を用いることもできる。
【0066】
(第2の酸性原料)
第2の酸性原料としては、特に限定されず、任意のものを用いることができるが、例えば、果肉を含有する酸性原料、濃縮果汁、粘調性を有する乳製品を用いることができる。
【0067】
果肉を含有する酸性原料としては、例えば、イチゴの果肉が配合されたイチゴソース、マンゴーの果肉が配合されたマンゴーソース等の、各種果肉が配合されたソースを用いることができる。また、果肉ピューレを用いることもできる。果肉を含有する酸性原料には、果肉から搾汁した果汁を更に配合することもできる。なお、果皮や種子については、果実の態様に合わせて、含まれていても、含まれていなくてもよい。
【0068】
濃縮果汁としては、例えば、ストレート果汁を5倍~10倍まで濃縮した、レモン、リンゴ、オレンジ等に由来した濃縮果汁を用いることができる。
【0069】
粘調性を有する乳製品としては、例えば、ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料等を用いることができる。
【0070】
第2の酸性原料には、必要に応じて、粘度を調整するために、増粘剤を含有させることができる。増粘剤としては、上記の乳調製液に添加することができる増粘剤として挙げたものと同様のものが挙げられる。増粘剤を添加する場合、第2の酸性原料中の増粘剤の含有量は、特に限定されないが、0.2質量%以上1.1質量%以下であることが好ましい。
【0071】
第2の酸性原料には、風味の調整のために、糖類を含有させてもよい。また、第2の酸性原料にも、第1の酸性原料と同様に、酸味料を含有させてもよい。
【0072】
なお、第2の酸性原料の固形分は、特に限定されないが、通常、60質量%以上80質量%以下であることが好ましい。
【0073】
(酸性乳飲料)
本発明の製造方法により製造される酸性乳飲料は、通常、プラスチックパックや紙パック等の容器に入れられて市販される。本発明の酸性乳飲料は、前述のように、この容器に、第2の酸性原料と、第1の酸性原料と乳調製液の混合液(第1の酸性原料が添加、混合された乳調製液)とが充填されて製造され、静置すると、比重が大きい第2の酸性原料が容器の底に沈殿しやすい傾向があるので、飲む直前に手で容器を振盪するなどして、内容物を混合して飲むことが想定されるものである。混合する態様としては、具体的には、容器を手で持ちながら、10回程度回転させて混和させる、又は、10回程度上下に振って混和させることが想定される。
【0074】
なお、混合する態様、例えば、回転させる回数、振る回数、強さ、速度等によって、第2の酸性原料の混合の度合いには差異が生じる可能性がある。そのため、第2の酸性原料が乳調製液に十分に均一に混合されなかったとしても、酸性乳飲料を飲む際に、酸味のムラをあまり感じないように、本発明のように、第1の酸性原料を先に乳調製液と均一に混合しておくことが好ましい。
【0075】
以上、本発明を、実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の実施形態に記載の発明の範囲には限定されないことは言うまでもなく、上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例
【0076】
以下、本発明について、実施例を挙げて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
(乳調製液の調製)
原料乳としての乳脂肪分3.5質量%、無脂乳固形分8.3質量%の生乳100質量部と、乳脂肪分47質量%、無脂乳固形分4.5質量%の生クリーム48.74質量部と、無脂乳固形分32質量%の脱脂濃縮乳153.97質量部と、上白糖42.25質量部と、乳化剤製剤(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製;ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルを含有する、水相の乳化剤)0.70質量部と、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬株式会社製)0.81質量部と、発酵セルロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)0.24質量部と、pH調整剤(旭硝子株式会社製)0.07質量部と、水(残部)と、をバッチ式で攪拌しながら分散混合させ、さらに、攪拌しながら60℃まで加熱して、15MPaの圧力下で均質化し、その後、85℃まで加熱してバッチ殺菌した後、約10℃まで冷却して、乳調製液を得た。
調製した乳調製液の比重は1.06g/cm、粘度は27cP、pHは6.7であった。
【0078】
(第1の酸性原料の調製)
クエン酸(昭和化工株式会社製)を10質量%となるように水に溶解し、85℃まで加熱してバッチ殺菌した後、約10℃まで冷却して、第1の酸性原料を得た。
調製した第1の酸性原料の比重は1.05g/cm、粘度は2.9cP、pHは1.53であった。
【0079】
(第2の酸性原料)
いちご果肉を配合したソース(アヲハタ株式会社製)を購入し、第2の酸性原料として使用した。
この第2の酸性原料の比重は1.08g/cm、粘度は3191cP、pHは3.63であった。
【0080】
(酸性乳飲料の調製)
乳調製液124.6gを攪拌しながら、pH5.0になるまで、第1の酸性原料4.4gを少量ずつ滴下、混合して、乳調製液と第1の酸性原料の混合物を得た。次に、あらかじめ第2の酸性原料21.0gを充填したスクリュー式キャップの付いた透明ボトル(250ml容量)に、乳調製液と第1の酸性原料の混合物129.0gを、ボトルの壁面を伝って滴下されるように、静かに投入して、酸性乳飲料を得た。
得られた酸性乳飲料中のカルボキシメチルセルロースの含有量(質量%)と無脂乳固形分の含有量(質量%)を表1に示す。なお、無脂乳固形分の含有量は、配合した原料乳および脱脂濃縮乳の無脂乳固形分含有量から算出した数値である。最終的な酸性乳飲料中における乳脂肪分の含有量は、3.2質量%となるように調整した。
【0081】
(タンパク質の凝集の確認・評価)
得られた酸性乳飲料を15日間、静置保管した後、酸性乳飲料中における第1の酸性原料と乳調製液の混合液と、第2の酸性原料の界面、及び、酸性乳飲料の全体を目視確認し、凝集物の有無を確認した。その結果を表1に示す。
【0082】
(官能評価)
得られた酸性乳飲料を15日間、静置保管した後、試飲直前に大きく10回振り混合し、この混合液をプラスチック製のカップに分けて注ぎ、官能評価パネラー4名に試飲してもらい、美味しさ(風味・口当たり)について、5点満点で評価してもらった。点数が高いほど(5点に近いほど)美味しく、点数が低いほど(1点に近いほど)美味しくないことを示す。4名の総合点を人数で割った平均点を官能評価の点数とし、その結果を表1に示す。
【0083】
[比較例1]
酸性乳飲料の調製において、第1の酸性原料4.4gと第2の酸性原料21.0gとを混合した混合物を先に透明ボトルに充填した後、乳調製液124.6gを、ボトルの壁面を伝って滴下されるように、静かに投入した以外は実施例1と同様にして、酸性乳飲料を得た。
【0084】
得られた酸性乳飲料について、実施例1と同様にして、タンパク質の凝集の確認・評価と、官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0085】
[実施例2]
乳調製液の調製における配合割合について、カルボキシメチルセルロースを0.33質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、酸性乳飲料を得た。得られた酸性乳飲料中のカルボキシメチルセルロースの含有量(質量%)と無脂乳固形分の含有量(質量%)を表1に示す。本実施例で調製した乳調製液の比重は1.06g/cm、粘度は15cP、pHは6.7であった。
【0086】
得られた酸性乳飲料について、実施例1と同様にして、タンパク質の凝集の確認・評価と、官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0087】
[実施例3]
乳調製液の調製における配合割合について、カルボキシメチルセルロースを1.26質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、酸性乳飲料を得た。得られた酸性乳飲料中のカルボキシメチルセルロースの含有量(質量%)と無脂乳固形分の含有量(質量%)を表1に示す。本実施例で調製した乳調製液の比重は1.06g/cm、粘度は47cP、pHは6.7であった。
【0088】
得られた酸性乳飲料について、実施例1と同様にして、タンパク質の凝集の確認・評価と、官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0089】
[参考例1]
乳調製液の調製における配合割合について、カルボキシメチルセルロースを0.16質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、酸性乳飲料を得た。得られた酸性乳飲料中のカルボキシメチルセルロースの含有量(質量%)と無脂乳固形分の含有量(質量%)を表1に示す。本参考例で調製した乳調製液の比重は1.06g/cm、粘度は14cP、pHは6.6であった。
【0090】
得られた酸性乳飲料について、実施例1と同様にして、タンパク質の凝集の確認・評価と、官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0091】
[参考例2]
乳調製液の調製における配合割合について、カルボキシメチルセルロースを2.38質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、酸性乳飲料を得た。得られた酸性乳飲料中のカルボキシメチルセルロースの含有量(質量%)と無脂乳固形分の含有量(質量%)を表1に示す。本参考例で調製した乳調製液の比重は1.06g/cm、粘度は97cP、pHは6.7であった。
【0092】
得られた酸性乳飲料について、実施例1と同様にして、タンパク質の凝集の確認・評価と、官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0093】
[参考例3]
乳調製液の調製における配合割合について、脱脂濃縮乳68.20質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、酸性乳飲料を得た。得られた酸性乳飲料中のカルボキシメチルセルロースの含有量(質量%)と無脂乳固形分の含有量(質量%)を表1に示す。本参考例で調製した乳調製液の比重は1.05g/cm、粘度は19cP、pHは6.9であった。
【0094】
得られた酸性乳飲料について、実施例1と同様にして、タンパク質の凝集の確認・評価と、官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0095】
[参考例4]
乳調製液の調製における配合割合について、脱脂濃縮乳243.71質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、酸性乳飲料を得た。得られた酸性乳飲料中のカルボキシメチルセルロースの含有量(質量%)と無脂乳固形分の含有量(質量%)を表1に示す。本参考例で調製した乳調製液の比重は1.07g/cm、粘度は39cP、pHは6.6であった。
【0096】
得られた酸性乳飲料について、実施例1と同様にして、タンパク質の凝集の確認・評価と、官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例1から3の酸性乳飲料は、15日間、静置保管した後も、タンパク質の凝集が確認されなかった。また、官能評価でも、風味及び口当たりが良好で、美味しいと評価された。
【0099】
比較例1の酸性乳飲料は、官能評価で、酸味のムラが大きく、風味が劣り、美味しくないと評価された。
【0100】
カルボキシメチルセルロースの含有量が少ない参考例1の酸性乳飲料は、15日間、静置保管した後には、タンパク質の凝集が起こり、官能評価では、この乳凝集物のために、実施例の酸性乳飲料よりも口当たりが劣ると評価された。
【0101】
カルボキシメチルセルロースの含有量が多い参考例2の酸性乳飲料は、15日間、静置保管した後も、タンパク質の凝集が確認されなかったが、官能評価では、実施例の酸性乳飲料よりも口当たりが劣ると評価された。
【0102】
無脂乳固形分の含有量が少ない参考例3の酸性乳飲料は、15日間、静置保管した後も、タンパク質の凝集が確認されなかったが、官能評価では、乳の風味が低下していて、実施例の酸性乳飲料よりも風味が劣ると評価された。
【0103】
無脂乳固形分の含有量が多い参考例4の酸性乳飲料は、15日間、静置保管した後には、タンパク質の凝集が起こり、官能評価では、この乳凝集物のために、実施例の酸性乳飲料よりも口当たりが劣ると評価された。