IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 陝西康源化工有限責任公司の特許一覧

特許7432222細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法
<>
  • 特許-細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法 図1
  • 特許-細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法 図2
  • 特許-細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法 図3
  • 特許-細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/00 20060101AFI20240208BHJP
   A61K 31/775 20060101ALI20240208BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240208BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
C08G8/00 D
A61K31/775
A61P13/12
A23L33/10
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019226288
(22)【出願日】2019-12-16
(65)【公開番号】P2020111725
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】201910031737.2
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519448290
【氏名又は名称】陝西康源化工有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】SHAANXI KANGYUAN CHEMICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】邱軍良
(72)【発明者】
【氏名】邱臻
(72)【発明者】
【氏名】龍谷 栄一
(72)【発明者】
【氏名】金霞
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-341578(JP,A)
【文献】特開2000-256431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G,A61K,A61P,A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電防止剤、開孔剤、及び乳化分散剤の存在下にフェノール類とアルデヒド類の縮合反応を行った後、減圧下に硬化反応を行うことを特徴とする、細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項2】
触媒を使用してフェノール類とアルデヒド類の縮合反応を行う、請求項1に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項3】
触媒が有機アミン類である、請求項2に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項4】
有機アミン類がトリエチレンテトラミンである、請求項3に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項5】
開孔剤が縮合反応中に気体を生成する、請求項1に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項6】
開孔剤が縮合反応中にCOを生成する、請求項5に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項7】
開孔剤が炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムである、請求項1に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項8】
帯電防止剤が硫黄、塩素、及び重金属を含有せず、且つ高温で完全に分解する、請求項1に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項9】
帯電防止剤が炭素原子数8乃至9の化合物を主成分とする天然油脂誘導体である、請求項7に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項10】
乳化分散剤がメチルセルロース類、又はヒドロキシエチルセルロース類である、請求項1に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項11】
フェノール類がフェノールである、請求項1に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項12】
アルデヒド類がホルムアルデヒドである、請求項1に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【請求項13】
無溶媒で硬化反応を行う、請求項1に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法、特に細孔を有する球状フェノール樹脂を一段階反応で製造する方法、当該方法によって得られる球状フェノール樹脂、及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂はフェノールとメタノールが酸とアルカリ触媒で縮合反応で形成した高分子の縮合物であり、世界中最も早く研究され、商業化生産できた熱固性縮合物の代表物である。通常、縮合には2つの方法があり、アルカリ触媒でホルマリン過剰量との方法と、酸触媒でフェノール過剰量との方法で、それぞれレゾール型とノボラック型のフェノール樹脂の製造方法である。二十年来、フェノール樹脂は機械性強度が高い、球体の回転性がよい、球形度がよい、表面滑らかで均一などの優良性能で環境保護及び生物医薬、軍事、化工、分析、貯能などの面で幅広く応用されている。特に、近年、球状フェノール樹脂は医薬と美容などに使われて、用途が幅広く増えていて、商業価値もますます高くなってきている。
【0003】
現在、球状フェノール樹脂の製造方法には主に二つがある。
(1)フェノール樹脂とメタノールを一定なモル比で混合した後に酸またはアルカリの触媒でフェノール樹脂を得て、その後、機械加工で一定な粒度な顆粒にする。
(2)特許文献1は熱可塑性のフェノール樹脂を原料とし、球状フェノール樹脂を製造する方法を開示した。当該方法は熱可塑性のフェノール樹脂と硬化剤を一定な比率で溶媒に溶解、均一まで混合して、混合液は減圧で溶媒を取り除き、硬化剤含有の個体フェノール樹脂を得る。上述の固体混合物を定まった粒子径の顆粒とする。成球原料として、分散溶媒に分散し、110~150℃に加熱して球状フェノール樹脂に生成させる。
【0004】
以上の二つの球状フェノール樹脂の製造方法については、一方の製造方法は粒子径をコントロールしにくい、手間がかかるのに球形が悪い、という欠点があり、他方は工程が多く、反応周期が長い、成球過程が複雑で、分散剤も加えるので、製品の品質が保証できない、という欠点がある。
【0005】
なお、特許文献2と特許文献3が開示する球状フェノール樹脂の製造方法で得た球状フェノール樹脂の粒度は両方とも0.3~0.55mmに入っていない。球体は光亮透明で、細孔がない。そのため、医薬原料としては使えない。それに、攪拌回転数500~800回/分であるが、製造中はなかなかできない、といった欠点がある。
【0006】
特許文献4には、加圧下に縮合反応を行い、有機溶媒中で硬化反応を行う、フェノール樹脂球形粒子の硬化物の製造方法が開示されている。従来の熱風による硬化反応に比べ、有機溶媒中で硬化反応を行えば、溶液中で、均一でしかも一定の温度を保つことが可能なため、安定した硬化反応が望める。しかし、有機溶媒を加えて処理するため、溶媒の回収処理等の工程が発生するのが欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】CN1240220A公報
【文献】CN101481446A公報
【文献】CN1443792A公報
【文献】特開2010-70738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は上述の技術の欠点を避け、一段階反応での細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法を提供することにある。同時に当該球状樹脂の用途をも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下を包含する。
[1] 帯電防止剤、開孔剤、及び乳化分散剤の存在下にフェノール類とアルデヒド類の縮合反応を行うことを特徴とする、細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[2] 触媒を使用してフェノール類とアルデヒド類の縮合反応を行う、[1]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[3] 触媒が有機アミン類である、[2]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[4] 有機アミン類がトリエチレンテトラミンである、[3]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[5] 開孔剤が縮合反応中に気体を生成する、[1]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[6] 開孔剤が縮合反応中にCOを生成する、[5]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[7] 開孔剤が炭酸アンモニウム又は炭酸水素アンモニウムである、[1]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[8] 帯電防止剤が硫黄、塩素、及び重金属を含有せず、且つ高温で完全に分解する、[1]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[9] 帯電防止剤が炭素原子数8乃至9の化合物を主成分とする天然油脂誘導体である、[7]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[10] 乳化分散剤がメチルセルロース類、又はヒドロキシエチルセルロース類である、[1]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[11] フェノール類がフェノールである、[1]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[12] アルデヒド類がホルムアルデヒドである、[1]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[13] 縮合反応を行った後、減圧下に硬化反応を行う、[1]乃至[12]のいずれか一項に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[14] 無溶媒で硬化反応を行う、[13]に記載の細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法。
[15] 粒子密度が1.22~1.26g/mLである球状フェノール樹脂。
[16] 医薬品製造のための、[15]に記載の球状フェノール樹脂の使用。
[17] 健康食品製造のための、[15]に記載の球状フェノール樹脂の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来製造法で高沸点有機溶媒を使用して得られる硬化粒子の、細孔が大きく、数が少なくて不均一であるという欠点を避けられる。本発明では、従来技術とは異なり、硬化を減圧下に行うので、溶媒を使用する必要がなく、またコニカルドライヤーを用いることで、通常の化学製品の乾燥と同様に、加熱むらもなく硬化できる点で極めて有利である。この結果、操作が簡単化、かつ、細孔のサイズと数及び顆粒のサイズをコントロールできる。粒子の細孔が変わらず、サイズが小さく数が多い。これは、本発明によれば、生成する細孔が数多く細かいため、減圧下で硬化しても閉孔せず、細孔が破裂することもなく硬化できたためであり、本発明が従来にはなかった技術だからである。
【0011】
本発明は既存技術と比べ、下記の優位性がある。
1.本発明が提示した製造方法は簡単に操作できる。
2.得られる球状フェノール樹脂の外観は円潤、球形が滑らかで直径が0.30~0.55のものが80%以上を占める。
3.得られる球状フェノール樹脂は細孔があり、かつ、分布が均一で、空間に占める率は5%を超えない。
4.細孔率はコントロールできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】光学顕微鏡で撮った実施例1の微孔球状フェノール樹脂の写真である。
図2】光学顕微鏡で撮った比較例1の球状フェノール樹脂の写真である。
図3】光学顕微鏡で撮った比較例2の球状フェノール樹脂の写真である。
図4】実施例2で得た微孔球状フェノール樹脂について、相対圧力を変化させてN吸脱着量を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の目的は、帯電防止剤、開孔剤、及び乳化分散剤の存在下にフェノールとホルマリンの縮合反応を行うことを特徴とする、細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法によって達成できる。以下に順に説明する。
【0014】
一般的なフェノール樹脂の製造方法は、フェノール類とアルデヒド類を、例えば酸又は塩基のような触媒の存在下又は不存在下に、100℃程度に加熱し、常圧で数時間付加縮合反応を行い、その後、脱水、未反応モノマー除去等の操作を行う。
工業的なフェノール樹脂の製造方法では、フェノール類とアルデヒド類を酢酸亜鉛、酢酸鉛、ナフテン酸亜鉛等の金属塩触媒により弱酸性下で付加縮合反応させた後、そのまま、又は酸触媒を更に追加して、脱水を行いつつ縮合反応を進め、必要により未反応物を除去する。
本発明に係る細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法は、本発明の効果を損なわない限り、いかなるフェノール樹脂の製造方法にも適用可能である。
【0015】
本発明に係るフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを縮合反応に供することにより得ることができる。
【0016】
フェノール類は特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール類、スチレン化フェノール、ビスフェノール類、クレゾール、オキソクレゾール、フェニルフェノール、カテコール、ピロガロール、キシレノール、レゾルシノール、レゾルシン等が挙げられる。これらは各々単独に使用してもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくはフェノールである。
【0017】
アルデヒド類は特に限定されないが、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フルフラール等が挙げられる。ホルマリンはホルムアルデヒド水溶液のことであるが、濃度37%以上のものの使用が好ましく、更に好ましくは濃度40%以上である。これらは各々単独に使用してもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくはホルムアルデヒド、又はホルマリンである。
【0018】
縮合反応における仕込み比率は、フェノール類1モルに対してアルデヒド類が通常1~4モル、好ましくは1~3モル、より好ましくは1~2.5モルの範囲である。
縮合反応は、水の沸点以下の温度で行うことができる。
【0019】
触媒は使用しなくてもよいが、反応速度を上げるためには使用することが推奨される。
触媒の種類は、フェノール類とアルデヒド類の縮合を促進するものであれば、特に限定されない。好ましくは、触媒は有機アミン類である。例えば、ポリアルキレンポリアミンであり、具体例としては、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N-(2-アミノエチル)プロパノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘキサミン等が挙げられる。これらは各々単独に使用してもよく、2種以上を併用してもよい。好ましくはトリエチレンテトラミンである。
触媒の仕込み量は、フェノール類の仕込み量100重量部に対し、通常0.5~50重量部、好ましくは1~30重量部、より好ましくは2~20重量部である。
【0020】
溶媒を用いる場合には、水、水との溶解性が高いアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミドの中の1種又は2種以上の混合物が好ましい。
溶媒の使用量は特に限定されないが、フェノール樹脂100重量部に対して通常100~1000重量部である。
【0021】
本発明に係る細孔を有する球状フェノール樹脂の製造方法においては、帯電防止剤、開孔剤、及び乳化分散剤の存在下にフェノール類とアルデヒド類の縮合反応を行うことが重要である。これらは、球状フェノール樹脂の粒子に微細な細孔を生じさせ、しかも、その後の処理を経ても細孔が閉じずに維持されることに寄与する。
【0022】
帯電防止剤としては、公知のアニオン系帯電防止剤、カチオン系帯電防止剤、非イオン系帯電防止剤、両性系帯電防止剤等の低分子型帯電防止剤、及び高分子型帯電防止剤の中から任意のものを適宜選択して使用することができる。
好適なアニオン系帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびアルキルホスフェートを挙げることができる。アルキル基としては、炭素数が4~20の直鎖状のアルキル基が好ましく用いられる。
好適なカチオン系帯電防止剤としては、アルキルスルホン酸ホスホニウム、アルキルベンゼンスルホン酸ホスホニウムおよび4級アンモニウム塩化合物を挙げることができる。アルキル基としては、炭素数が4~20の直鎖状のアルキル基が好ましく用いられる。
好適な非イオン系帯電防止剤としては、ポリオキシエチレン誘導体、多価アルコール誘導体およびアルキルエタノールアミンを挙げることができる。ポリオキシエチレン誘導体として、例えばポリエチレングリコールは、数平均分子量が500~100000のものが好ましく用いられる。
好適な両性系帯電防止剤としては、アルキルベタインおよびスルホベタイン誘導体を挙げることができる。
好適な高分子型帯電防止剤としては、ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルアミドイミド、ポリアルキレンオキシド共重合体、ポリエチレンオキシドーエピクロルヒドリン共重合体およびポリエーテルエステルを挙げることができる。
これらは各々単独に使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
好ましくは硫黄及び塩素、重金属を含有しない、且つ高温で完全に分解できる帯電防止剤である。ここで「高温」とは炭化の際の温度であって、800℃以上を意味し、「完全に分解できる」とは、帯電防止剤の実質的に全部がCO、及びHOに変わり、残存しないことを意味する。
市販の帯電防止剤としては、炭素原子数8乃至9の化合物を主成分とする天然油脂誘導体であって、広州沙索化工科技有限公司、又は山東博興県沙索新材料有限公司から入手可能なA163がある。
帯電防止剤の仕込み量は、フェノール類の仕込み量100重量部に対し、通常0.1~20重量部、好ましくは0.2~10重量部、より好ましくは0.3~5重量部である。
【0023】
本発明における開孔剤とは、上記縮合反応の間に気体を生成できる物質をいう。例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ドライアイス、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、過酸化カルシウム等が挙げられる。好ましくは、気体としてCOを生成できる炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ドライアイス、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウムであり、より好ましくは、取扱いに便利な炭酸塩類である。最も好ましくは、炭化の際に残存する可能性の低い炭酸アンモニウム、及び炭酸水素アンモニウムである。これらは各々単独に使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
開孔剤の仕込み量は、フェノール類の仕込み量100重量部に対し、通常0.1~20重量部、好ましくは0.2~10重量部、より好ましくは0.3~5重量部である。
【0024】
乳化分散剤としては、公知の乳化分散剤の中から任意のものを適宜選択して使用することができる。
好適な乳化分散剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースカチオン化物等の水溶性セルロース誘導体、ポリビニルアルコール、アルギン酸、グアガム及びアラビアガム等が挙げられる。
これらは各々単独に使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
好ましくは、メチルセルロース類、又はヒドロキシエチルセルロース類であり、より好ましくは、粘度が50~500cpsの医薬用メチルセルロース類、又は粘度が50~500cpsの医薬用ヒドロキシエチルセルロース類である。
乳化分散剤の仕込み量は、フェノール類の仕込み量100重量部に対し、通常0.1~20重量部、好ましくは0.2~10重量部、より好ましくは0.3~5重量部である。
【0025】
より具体的な操作手順の一例は以下の通りである。
【0026】
ヒドロキシエチルセルロース、ホルマリン、フェノール、及びトリエチレンテトラミンをそれぞれ反応総重量の0.4~1.1%、35~45%、33~46%、1~4%の比率で均一に混合する。ホルマリンは37~50%水溶液を使用する。
【0027】
この混合物に、反応総重量の0.4~1.1%の帯電防止剤と0.4~1.1%の炭酸水素アンモニウムを徐々に添加する。添加は40~120分以内、好ましくは60~100分以内に完了させる。
【0028】
この反応混合液を加熱して、6~10時間、好ましくは8~10時間、攪拌しながら反応させる。攪拌は、例えば反応器中の攪拌翼の回転数を30~300回/分として継続的に行う。加熱は例えばジャケット蒸気加熱で行う。反応温度は例えば70~90℃とする。
【0029】
反応液から液体成分を濾過して取り除く。
【0030】
濾物をイオン交換水で4~6回洗浄した後、濾過して球状フェノール樹脂を得る。
【0031】
得られた球状フェノール樹脂を硬化する。硬化は例えば真空条件下で行う。真空度は例えば0.018~0.022MPaである。本発明によれば、減圧下で硬化を行っても、生成した細孔は閉孔せずに維持され、細孔を有する球状フェノール樹脂を生成することができる。硬化温度は例えば120~220℃の範囲内とする。
【0032】
硬化したフェノール樹脂を篩分けして目的物を得る。篩分けの方法は特に限定されず、当業界において公知の方法の中から適宜選択して実施することができる。
【0033】
本発明によれば、粒子密度が1.22~1.26g/mLである球状フェノール樹脂を得ることができる。また、本発明によれば、顆粒度が0.3~0.55mmであり、嵩密度が0.5~0.85g/cmであり、細孔率が5%±1%である球状フェノール樹脂を得ることができる。
【0034】
顆粒度とは粒子径と同義である。顆粒度の測定は、メッシュの異なる篩で粒子を篩分ける公知の方法によって行うことができる。本発明に係る方法によれば、目開き0.3mmのメッシュ上、目開き0.55mmのメッシュ下に得られる粒子を全体の80%以上の収率で製造することができる。
【0035】
嵩密度とは、一定容積内に充填した粉体質量を,容積で除した値をいう。
【0036】
粒子密度とは、表面に凹凸がある粒子の外周を体積とした場合の密度のことをいい、この場合の体積は、粒子自体の体積、粒子表面の凹凸部の空隙の体積、及び粒子内の閉細孔の体積を合計したものである。したがって、空隙や細孔の体積が小さい場合は粒子密度は大きくなり、逆に空隙や細孔の体積が大きい場合は粒子密度は小さくなる。このように、粒子密度は、粒子の空隙や細孔の状態を良く反映する指標であり、実際の納入規格でも採用されている。粒子密度は、JIS Z 8837:2018 (ISO 12154:2014) に規定のピクノメーター法に準拠して求めることができる。
細孔率とは、多孔質材料内に存在する細孔体積の総和を、多孔質材料の見掛け体積で除した比率をいう。細孔率は、公知の方法、例えば、ガス吸着法、X線小角散乱法、画像処理法などにより測定することができる。
【0037】
本発明により得られる細孔を有する球状フェノール樹脂は、医薬及び環境保護、クロマトグラフィ分析、美容などの領域に適用可能である。本発明により得られる細孔を有する球状フェノール樹脂は、医薬品(例えば、尿毒症の予防用又は治療用製剤、血中尿毒症物質の低減用製剤のような血液病治療用医薬品)の製造、(例えば、体内毒素除却用の)健康補助食品、保健機能食品、サプリメント等の製造のために使用することができる。
【0038】
尿毒症とは広く尿毒症物質に起因する症状又は疾患をいい、そのような症状又は疾患としては、例えば、食欲不振、悪心、嘔吐、口臭、口内炎、腸炎等の消化器系異常;無欲、無関心、記銘力低下、うつ状態、傾眠、昏睡、多発神経炎、(発達性)協調運動障害、食思不振等の神経系異常;動脈硬化症(例えば、アテローム性動脈硬化症、細動脈硬化症、中膜石灰化硬化症)、貧血、赤血球造血障害、高血圧、虚血性心疾患、心膜炎、心筋炎、(血液)凝固異常、心不全、心血管障害、心筋梗塞、心筋症、不整脈、動脈硬化性腎動脈狭窄、動脈硬化性腎症、脳梗塞、頚部血管狭窄等の循環器系異常;色素沈着、掻痒(感)、皮下出血、皮膚萎縮、感染、アトピー、脱毛等の皮膚異常(疾患);アルブミン尿、急性腎不全、急性尿細管壊死、腎性貧血、慢性腎不全、尿細管間質障害、急性腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ、糖尿病性腎症、腎性骨異常症(例えば、腎性骨異栄養症)、溢水等の腎機能障害;IgA腎症、嚢胞腎、肝機能障害(例えば、劇症肝炎、脂肪肝、NASH、NAFLD)、癌(例えば、胆汁発がん)等のLPSが関与する症状又は疾患;潰瘍性大腸炎、クローン病等の炎症性腸疾患;ループス、強皮症、リウマチ等の自己免疫疾患;
肥満;メタボリックシンドローム;糖尿病;栄養不良;炎症;震戦;自閉症;パーキンソン病;アルツハイマー病;サルコペニアを挙げることができる。
【0039】
本発明によれば、従来製造法で高沸点有機溶媒を使用して得られる硬化粒子の、細孔が大きく、数が少なくて不均一であるという欠点を避けられる。本発明では、従来技術とは異なり、硬化を減圧下に行うので、溶媒を使用する必要がなく、またコニカルドライヤーを用いることで、通常の化学製品の乾燥と同様に、加熱むらもなく硬化できる点で極めて有利である。この結果、操作が簡単化、かつ、細孔のサイズと数及び顆粒のサイズをコントロールできる。粒子の細孔が変わらず、サイズが小さく数が多い。これは、本発明によれば、生成する細孔が数多く細かいため、減圧下で硬化しても閉孔せず、細孔が破裂することもなく硬化できたためであり、本発明が従来にはなかった技術だからである。
【0040】
本発明は既存技術と比べ、下記の優位性がある。
1.本発明が提示した製造方法は簡単に操作できる。
2.得られる球状フェノール樹脂の外観は円潤、球形が滑らかで直径が0.30~0.55のものが80%以上を占める。
3.得られる球状フェノール樹脂は細孔があり、かつ、分布が均一で、空間に占める率は5%を超えない。
4.細孔率はコントロールできる。
【実施例
【0041】
次に実施例等を挙げ本発明の内容を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、密度は、JIS Z 8837:2018 (ISO 12154:2014) に規定のピクノメーター法に準拠して求めた。
【0042】
[実施例1]
ホルマリン100g(37%)、フェノール100g、炭酸水素アンモニウム1g、帯電防止剤(A163)1g、ヒドロキシエチルセルロース1g、及びトリエチレンテトラミン9gを用意した。
ヒドロキシエチルセルロース1gを水25gに溶解し、攪拌しながら、ホルマリン100g、フェノール100g、及びトリエチレンテトラミン9gを加え、帯電防止剤(A163)と炭酸水素アンモニウム水溶液を滴加した。40℃で30分間反応させ、更に85~90℃に昇温して6時間反応させた後、50℃まで冷却した。反応生成物を反応液から濾別し、イオン交換水で8回充分に洗浄した。生成物を洗浄液から濾別し、真空度0.020MPa、125℃で6時間硬化し、更に篩分けして0.3~0.55mmの製品85gを得た。嵩密度は0.797g/cm、粒子密度は1.24g/mLであった。
得られた微孔球状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を図1に示す。粒子が、均一、かつ小さな細孔を多数有していることがわかる。
【0043】
[実施例2]
ホルマリン110g(37%)、フェノール100g、ヒドロキシエチルセルロース0.9g、トリエチレンテトラミン8.5g、炭酸水素アンモニウム1g、及び帯電防止剤(A163)1gを用意した。
ヒドロキシエチルセルロース0.9gを水25gに溶解し、攪拌しながら、ホルマリン110g、フェノール100g、及びトリエチレンテトラミン8.5gを加え、30~35℃で帯電防止剤(A163)と炭酸水素アンモニウム水溶液を滴加して、40分間反応させた。更に85~90℃に昇温して10時間反応させた後、50℃まで冷却し、反応生成物を濾別した。反応生成物をイオン交換水で6回洗浄し、洗浄液から濾別した。生成物を真空度0.021MPa、130℃で8時間硬化し、更に冷却、篩分けして、0.3~0.55mmの製品90gを得た。粒子密度は1.23g/mLであった。
【0044】
[実施例3]
ホルマリン105g、フェノール100g、ヒドロキシエチルセルロース0.8g、炭酸水素アンモニウム1g、及び帯電防止剤(A163)1gを用意した。
ヒドロキシエチルセルロース0.8gを水25gに溶解し、攪拌しながら、ホルマリン105g、フェノール100g、及びトリエチレンテトラミン8.5gを加え、40℃で帯電防止剤(A163)と炭酸水素アンモニウム水溶液を滴加して、50分反応させた。80~90℃に昇温して8時間反応させ、50℃まで冷却し、反応生成物を濾別した。反応生成物をイオン交換水で4回洗浄して、生成物を水相から濾別し、真空度0.019MPa、125℃で6時間硬化させ、更に冷却、篩分けして、0.3~0.55mmの製品90gを得た。粒子密度は1.24g/mLであった。
【0045】
[比較例1]
本例は開孔剤を入れない例である。
ホルマリン105g(37%)、フェノール100g、帯電防止剤(A163)1g、及びヒドロキシエチルセルロース0.8gを用意した。
ヒドロキシエチルセルロース0.8gを25g水に溶解し、攪拌しながらそれぞれホルマリン105g、フェノール100g、及びトリエチレンテトラミン8.5gを加え、帯電防止剤(A163)を滴加して、40℃で40分反応させた。80~90℃に昇温し、6時間を反応させて50℃以下に冷却してからろ過した。生成物をイオン交換水で4回洗浄し、水相をろ過除却して、真空度0.020MPa、125℃で生成物を6時間硬化させた。その後更に冷却、篩過して直径が0.3~0.55mmの目的物の85gを得た。粒子密度は1.30g/mLであった。
得られた球状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を図2に示す。粒子がほとんど細孔を有していないことがわかる。
【0046】
[比較例2]
本例は開孔剤が過剰の場合の例である。
ホルマリン100g(37%)、フェノール100g、炭酸水素アンモニウム2g、帯電防止剤(A163)1g、ヒドロキシエチルセルロース1g、及びトリエチレンテトラミン9gを用意した。
ヒドロキシエチルセルロース1gを25g水に溶解し、攪拌しながらそれぞれホルマリン100g、フェノール100g、及びトリエチレンテトラミン9gを加え、帯電防止剤(A163)と炭酸水素アンモニウム水溶液を滴加して、40℃で30分反応させた。85~90℃に昇温し、6時間を反応させて50℃以下に冷却し、ろ過して水相を除却した。生成物をイオン交換水で4回洗浄し、洗浄液をろ過除却し、真空度0.020MPa、125℃で6時間硬化させた。篩過して直径が0.3~0.55mmの目的物の86gを得た。粒子密度は1.19g/mLであった。
得られた球状フェノール樹脂の光学顕微鏡写真を図3に示す。粒子が、大小さまざまな大きさの細孔を無秩序に有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、従来製造法で高沸点有機溶媒を使用して得られる硬化粒子の、細孔が大きく、数が少なくて不均一であるという欠点を避けられる。本発明では、従来技術とは異なり、硬化を減圧下に行うので、溶媒を使用する必要がなく、またコニカルドライヤーを用いることで、通常の化学製品の乾燥と同様に、加熱むらもなく硬化できる点で極めて有利である。この結果、操作が簡単化、かつ、細孔のサイズと数及び顆粒のサイズをコントロールできる。粒子の細孔が変わらず、サイズが小さく数が多い。これは、本発明によれば、生成する細孔が数多く細かいため、減圧下で硬化しても閉孔せず、細孔が破裂することもなく硬化できたためであり、本発明が従来にはなかった技術だからである。
図1
図2
図3
図4